説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】ノーマリオフ型の接合FETにおいて、耐圧の向上とオン抵抗の低減とを両立することができる技術を提供する。
【解決手段】炭化シリコンを基板材料として使用した接合FETにおいて、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間のpn接合近傍に、ゲート領域GRに導入されている不純物とは逆導電型であり、チャネル形成領域に導入されている不純物と同じ導電型の不純物を導入する。これにより、pn接合の不純物プロファイルを急峻にするとともに、チャネル形成領域のうち、ゲート領域GRとpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度およびエピタキシャル層EPIの不純物濃度よりも高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、シリコン単体よりもバンドギャップの広い材料を用いた接合FET(Field Effect Transistor)およびその製造技術に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2004−134547号公報(特許文献1)には、比較的低いエネルギーでのイオン注入により、低オン抵抗化とブロッキング効果を向上し、良好な電気特性を実現できる半導体装置を得ることを目的とする技術が記載されている。具体的に、この目的を実現するために、ドリフト領域のソース側の面にトレンチ溝を形成し、トレンチ溝の底部にp型ゲート領域とゲート電極を設け、絶縁膜を介して単位素子全面にソース電極を形成する。また、チャネルの最狭部をp型ゲート領域の接合の1/2よりも深くする。これにより、低いエネルギーでもドレイン側のチャネルの幅を狭くでき、p型ゲート領域のブロッキング効果を高めることができるとしている。
【特許文献1】特開2004−134547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体パワー素子は、半導体基板からなるnドレイン領域と、このnドレイン領域上に形成されたエピタキシャル層からなるnドリフト領域と、このnドリフト領域上に形成されたnソース領域と、このnソース領域を貫通してnドリフト領域に達するトレンチと、このトレンチの底部に形成されたp型ゲート領域を備えている。
【0004】
このように構成されている半導体パワー素子において、オン抵抗の低減と耐圧の向上とは基板材料のバンドギャップで規定されるトレードオフの関係にある。すなわち、耐圧の向上を図るためには、基板材料の絶縁破壊電界強度を確保する必要がある。このため、半導体パワー素子の基板材料としてシリコンを用いる場合には、nドリフト領域の厚さを厚くし、かつ、nドリフト領域の不純物濃度を薄くすることにより、絶縁破壊電界強度を確保して耐圧の向上を図っている。しかし、耐圧を確保するために、nドリフト領域の厚さを厚くし、かつ、nドリフト領域の不純物濃度を低くすると、nソース領域とnドレイン領域との間をオン抵抗が大きくなる。つまり、半導体パワー素子では、耐圧の向上とオン抵抗の低減とはトレードオフの関係がある。
【0005】
このとき、絶縁破壊電圧強度は基板材料のバンドギャップの大きさに依存するため、基板材料としてバンドギャップの大きな材料を使用することにより耐圧の確保が容易となる。すなわち、シリコンよりもバンドギャップの大きな材料を基板材料として使用すれば、シリコンの場合にように、nドリフト領域の厚さを厚くし、かつ、nドリフト領域の不純物濃度を低くしなくても耐圧を確保できるのである。つまり、シリコンよりもバンドギャップの大きな材料を基板材料として使用することにより、シリコンと同等の耐圧を確保する上で、シリコンの場合よりも、nドリフト領域の厚さを薄くし、かつ、nドリフト領域の不純物濃度を高くすることが可能となる結果、nソース領域とnドレイン領域との間のオン抵抗を小さくすることができるのである。
【0006】
このように、半導体パワー素子として広く用いられているシリコン素子の性能を超えるためには、シリコンよりもバンドギャップが大きな基板材料を用いることが有効であることがわかる。特に、炭化シリコン(炭化珪素、SiC)は、シリコンに比べバンドギャップが約3倍と十分に大きいこと、p型およびn型の導電型を容易に形成できること、熱酸化により酸化膜を形成できることなどの特徴を有することから、高性能のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの素子を実現できる可能性があり大きな注目を集めている。
【0007】
しかしながら、炭化シリコン上に形成する酸化シリコン膜には大きな問題がある。それは、炭化シリコンを熱酸化すると酸化シリコン膜中に炭素が残留し高密度の界面準位が形成されてしまうことである。これにより、MOSFETのチャネル移動度は大きく劣化しオン抵抗が著しく上昇してしまう。また、酸化シリコン膜中の炭素は酸化シリコン膜の信頼性劣化の原因ともなり、MOSFETを実現するための大きな障壁となっている。
【0008】
酸化シリコン膜の界面で発生する界面準位の問題を回避する素子の構造として、接合FETがある。接合FETはチャネル形成領域とゲート層との間にpn接合を形成し、このpn接合から延びる空乏層の幅を制御することでチャネルをオン/オフ制御するタイプの素子である。通常は、ゲート層に負の電圧をかけチャネル形成領域中に空乏層を伸ばしてオフさせるノーマリオン型の接合FETが使用される。しかし、ノーマリオン型の接合FETはフェールセーフの観点から用途が限定される。すなわち、ノーマリオン型の接合FETは、通常、チャネルがオンして電流が流れており、チャネルをオフする必要があるときにゲート層に負電圧を印加してpn接合から空乏層を延ばしてチャネルをオフする。したがって、接合FETがなんらかの原因で壊れた場合、チャネルがオンしたまま電流が流れ続けることになる。通常、接合FETが壊れた場合は電流が流れないことが安全性の観点から望ましいが、ノーマリオン型の接合FETでは、接合FETが壊れ場合でも電流が流れ続けるので用途が限定されるのである。
【0009】
したがって、半導体パワー素子では一般にノーマリオフ型が望まれる。このとき、シリコンの接合FETはノーマリオフで高耐圧を持たすことが困難となる。これは、シリコンのpn接合の拡散電位が小さいことから、ゲート層に電圧を印加しない状態では、pn接合からの空乏層の延びが充分とはいえず、チャネルを完全にオフすることができないからである。つまり、シリコンの接合FETでは、チャネルをオフさせるために、ゲート層に負電圧を印加する必要があり、ノーマリオフ状態を実現することが困難となる。これに対し、炭化シリコンを用いた接合FETでは、チャネル幅を狭くすることにより、ノーマリオフ型の接合FETで高耐圧を実現することができる。これは、炭化シリコンのpn接合の拡散電位が約2.5Vと高いため空乏層が充分に延び、ゲート層に負の電圧をかけなくてもチャネルを完全に空乏化できるからである。これにより、ノーマリオフ型の接合FETで酸化シリコン膜の界面に関係のない高性能の半導体パワー素子を実現することが可能となる。
【0010】
一般に、炭化シリコンを用いたノーマリオフ型の接合FETはゲート層をイオン注入により形成している。このため、ゲート層とチャネル間のpn接合がなだらかになっている。これは、炭化シリコン中では不純物がほとんど拡散しないためボックスプロファイルを作るためには高エネルギーのイオン注入が必要だからである。なだらかなpn接合であるとpn接合付近のポテンシャルがブロッキング状態でのドレインバイアスの影響を受けやすいため、耐圧低下の要因となる。耐圧を向上させようとするとチャネルを狭くする必要があり、結果としてオン状態での電流が少なくなってしまう。すなわち、オン抵抗が大きくなってしまう。
【0011】
一方で、pn接合付近のポテンシャルがドレインバイアスの影響を受けにくい構造として、チャネルの不純物濃度の高濃度化が挙げられる。これはチャネル全体をnドリフト層よりも高濃度にすることにより、pn接合付近の不純物濃度を全体的に押し上げ、pn接合付近のポテンシャルの変動を抑えることができるからである。これにより、半導体パワー素子の耐圧が向上する。しかし、チャネルの不純物濃度を高濃度化するとチャネルをより狭くしないと耐圧が確保できなくなる。この結果、半導体パワー素子の寸法ばらつきの影響を受けやすくなり、素子特性のばらつきが大きくなってしまう。
【0012】
本発明の目的は、ノーマリオフ型の接合FETにおいて、耐圧の向上とオン抵抗の低減とを両立することができる技術を提供することにある。
【0013】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0015】
代表的な実施の形態における半導体装置は、(a)ドレイン層となる第1導電型の半導体基板と、(b)前記半導体基板上に形成された第1導電型のエピタキシャル層と、(c)前記エピタキシャル層の表面から内部に達するように形成された複数のトレンチとを備える。そして、(d)隣り合うトレンチに挟まれた前記エピタキシャル層の表面領域に形成された第1導電型のソース層と、(e)前記複数のトレンチのそれぞれの側壁および底部に接するように前記エピタキシャル層内に形成された第2導電型のゲート層とを備える。さらに、(f)隣り合う前記ゲート層間の前記エピタキシャル層内に形成された第1導電型のチャネル形成領域と、(g)前記半導体基板の裏面に形成されたドレイン電極と、(h)前記ソース層と接続するように形成されたソース電極と、(i)前記ゲート層と接続するように形成されたゲート電極とを備える。このとき、前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、前記チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度および前記エピタキシャル層の不純物濃度よりも高いことを特徴とするものである。
【0016】
また、代表的な実施の形態における半導体装置の製造方法は、(a)ドレイン層となる第1導電型の半導体基板を用意する工程と、(b)前記半導体基板上に第1導電型のエピタキシャル層を形成する工程と、(c)前記エピタキシャル層の表面領域に第1導電型のソース層を形成する工程とを備える。そして、(d)前記エピタキシャル層の表面から内部に達する複数のトレンチを形成する工程と、(e)前記複数のトレンチのそれぞれの側壁および底面に接する前記エピタキシャル層内に第2導電型のゲート層を形成する工程とを備える。さらに、(f)隣り合う前記ゲート層に挟まれた第1導電型よりなるチャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する前記チャネル形成領域側の接合領域と、前記pn接合を形成する前記ゲート層側の接合領域とに第1導電型の不純物を導入する工程と、(g)前記ソース層と接続するソース電極を形成する工程とを備える。続いて、(h)前記ゲート層と接続するゲート電極を形成する工程と、(i)前記半導体基板の裏面に前記ドレイン層と接続するドレイン電極を形成する工程と備える。ここで、前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、前記チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度および前記エピタキシャル層の不純物濃度よりも高いことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
ノーマリオフ型の接合FETにおいて、耐圧の向上とオン抵抗の低減とを両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0020】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0021】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0022】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0023】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1における半導体チップCHPを示す平面図である。図1に示すように、本実施の形態1における半導体チップCHPは矩形形状をしており、外周部を囲むようにターミネーション領域TEが形成されている。このターミネーション領域TEは、半導体チップCHPの外周部における電界強度の緩和を目的として形成される領域である。このターミネーション領域TEで囲まれる半導体チップCHPの内側にアクティブ領域Actが形成されており、このアクティブ領域Actに複数の接合FET(Field Effect Transistor)が形成されている。アクティブ領域Actには、接合FETのソース領域と電気的に接続されているソースパッドSPと、接合FETのゲート領域と電気的に接続されているゲートパッドGPが形成されている。なお、図1では図示されないが、半導体チップCHPの裏面がドレインパッドとなっている。これにより、半導体チップCHPには、ソースパッドSP、ゲートパッドGPおよびドレインパッドが形成されていることになり、これらの端子に外部から電気信号を印加することにより、アクティブ領域Act内に形成されている複数の接合FETを動作させることができるようになっている。
【0025】
次に、アクティブ領域Actに形成されている接合FETの構成について説明する。まず、比較例の接合FETの構成について説明し、その問題点を説明した後、この問題点を解決する本実施の形態1における接合FETの構成について説明する。
【0026】
図2は比較例における接合FETの構成を示す断面図である。図2に示すように、ドレイン領域となる半導体基板1S上にドリフト領域となるエピタキシャル層EPIが形成されている。ドレイン領域となる半導体基板1Sと、ドリフト領域となるエピタキシャル層EPIには、ともに、炭化シリコン層から形成され、この炭化シリコン層にn型不純物が導入された半導体領域となっている。このとき、エピタキシャル層EPIに導入されているn型不純物の不純物濃度は、半導体基板1Sに導入されているn型不純物の不純物濃度よりも低くなっている。
【0027】
そして、エピタキシャル層EPIの表面からエピタキシャル層EPIの内部に達する複数のトレンチTRが形成されており、隣り合うトレンチTRに挟まれたエピタキシャル層EPIの表面領域にソース領域SRが形成されている。ソース領域SRは、炭化シリコン層にn型不純物を導入した半導体領域から形成されている。このソース領域SR上には、ソース領域SRと電気的に接続するソース電極SEが形成されている。
【0028】
複数のトレンチTRのそれぞれの側壁(側面)および底面に接するエピタキシャル層EPI内にゲート領域GRが形成されている。ゲート領域GRは炭化シリコン層にp型不純物を導入した半導体領域から形成されている。そして、隣り合うゲート領域GRに挟まれたエピタキシャル層EPIがチャネル形成領域として機能する。つまり、n型半導体領域から形成されているチャネル形成領域と、p型半導体領域から形成されているゲート領域GRの境界にはpn接合が形成されていることになる。なお、半導体基板1Sの裏面にはドレイン電極DEが形成されている。
【0029】
比較例における接合FETは上記にように構成されており、炭化シリコンを用いたノーマリオフ型の接合FETはゲート領域GRをイオン注入により形成している。このため、ゲート領域GRとチャネル形成領域間のpn接合がなだらかになっている。図3は、図2のA−A´における不純物濃度を示すグラフである。図3のA点側がゲート領域GRを示しており、p型不純物が高濃度に導入されている。一方、図3のA´点側がチャネル形成領域(エピタキシャル層EPI)を示しており、n型不純物が導入されている。そして、ゲート領域GRとチャネル形成領域の間にpn接合が形成されている。図3において、曲線X1は、ゲート領域GRからpn接合までのp型不純物の濃度分布を示しており、曲線X2はpn接合からチャネル形成領域までのn型不純物の濃度分布を示している。図3に示すように、pn接合近傍の曲線X1における傾きが裾を引くようになだらかになっていることがわかる。これは、ゲート領域GRとチャネル形成領域間のpn接合がなだらかになっていることに対応している。
【0030】
このように、ゲート領域GRとチャネル形成領域間のpn接合がなだらかになるのは、以下に示す理由による。すなわち、炭化シリコン中では不純物がほとんど拡散しないためボックスプロファイルを作るためには高エネルギーのイオン注入が必要だからである。なだらかなpn接合であるとpn接合付近のポテンシャルがブロッキング状態でのドレインバイアスの影響を受けやすいため、耐圧低下の要因となる。耐圧を向上させようとするとチャネルを狭くする必要があり、結果としてオン状態での電流が少なくなってしまう。すなわち、オン抵抗が大きくなってしまう。このように比較例における接合FETでは、耐圧の確保とオン抵抗の低減の両立が困難となることがわかる。
【0031】
そこで、本実施の形態1では、上述した課題を解決するために接合FETの構造を工夫している。以下では、本実施の形態1における接合FETの構成について説明する。
【0032】
図4は本実施の形態1における接合FETの構成を示す断面図である。図4に示すように、ドレイン領域となる半導体基板1S上にドリフト領域となるエピタキシャル層EPIが形成されている。ドレイン領域となる半導体基板1Sと、ドリフト領域となるエピタキシャル層EPIには、ともに、炭化シリコン層から形成され、この炭化シリコン層にn型不純物が導入された半導体領域となっている。このとき、エピタキシャル層EPIに導入されているn型不純物の不純物濃度は、半導体基板1Sに導入されているn型不純物の不純物濃度よりも低くなっている。
【0033】
そして、エピタキシャル層EPIの表面からエピタキシャル層EPIの内部に達する複数のトレンチTRが形成されており、隣り合うトレンチTRに挟まれたエピタキシャル層EPIの表面領域にソース領域SRが形成されている。ソース領域SRは、炭化シリコン層にn型不純物を導入した半導体領域から形成されている。このソース領域SR上には、ソース領域SRと電気的に接続するソース電極SEが形成されている。
【0034】
複数のトレンチTRのそれぞれの側壁(側面)および底面に接するエピタキシャル層EPI内にゲート領域GRが形成されている。ゲート領域GRは炭化シリコン層にp型不純物を導入した半導体領域から形成されている。そして、隣り合うゲート領域GRに挟まれたエピタキシャル層EPIがチャネル形成領域として機能する。つまり、n型半導体領域から形成されているチャネル形成領域と、p型半導体領域から形成されているゲート領域GRの境界にはpn接合が形成されていることになる。
【0035】
そして、半導体基板1Sの裏面にはドレイン電極DEが形成されている。さらに、図示はしていないが、トレンチTRおよびソース電極SEを形成したエピタキシャル層EPIの表面には層間絶縁膜を介して、例えば、アルミニウム配線よりなる多層配線(例えば、2層)が形成されており、ソース電極SEはソースパッドに接続され、ゲート領域GRはゲート電極と接続され、ゲート電極はゲートパッドと電気的に接続されている。一方、半導体基板1Sの裏面に形成されているドレイン電極DEはドレインパッドと接続されている。
【0036】
ここで、本実施の形態1では、トレンチTRの側壁に形成されているゲート領域GRと、隣り合うゲート領域GRで挟まれたチャネル形成領域の間のpn接合近傍に、n型不純物を導入したn型半導体領域NRが形成されている。このようにn型半導体領域NRを形成する点が本実施の形態1における特徴の1つである。
【0037】
このn型半導体領域NRの不純物濃度はエピタキシャル層EPIの不純物濃度よりも高くなっている。さらに、このn型半導体領域NRも、隣り合うゲート領域GRで挟まれたチャネル形成領域の一部と考えると、隣り合うゲート領域GRで挟まれたチャネル形成領域の間のpn接合近傍にn型半導体領域NRを形成するということは、チャネル形成領域のうち、ゲート領域GRとpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度およびエピタキシャル層EPIの不純物濃度よりも高くするということと同じことになる。
【0038】
本実施の形態1では、n型半導体領域NRを形成することにより、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間に形成されるpn接合近傍の不純物プロファイルを変化させている。つまり、本実施の形態1の特徴的構成であるn型半導体領域NRは、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間に形成されるpn接合近傍の不純物プロファイルを変えるために形成されているのである。以下では、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間にn型半導体領域NRを形成することにより、pn接合近傍の不純物プロファイルがどのように変化するかについて図5を参照しながら説明する。
【0039】
図5は、図4のA−A´における不純物濃度を示すグラフである。図5のA点側がゲート領域GRを示しており、p型不純物が高濃度に導入されている。一方、図5のA´点側がチャネル形成領域(エピタキシャル層EPI)を示しており、n型不純物が導入されている。そして、ゲート領域GRとチャネル形成領域の間にpn接合が形成されている。このとき、本実施の形態1では、pn接合近傍にn型半導体領域NRを形成していることから、図5に示すように、pn接合の近傍にn型不純物が高濃度に導入されている。具体的に、図5では、pn接合の位置を頂点とする上に凸の放物線状の濃度でn型不純物が導入されている。このとき、曲線X1は、ゲート領域GRからpn接合までのp型不純物の濃度分布を示しており、曲線X2はpn接合からチャネル形成領域までのn型不純物の濃度分布を示している。図5に示すように、pn接合近傍の曲線X1における傾きが図3に比べて急峻になっており、かつ、pn接合近傍の曲線X2が盛り上がっていることがわかる。これは、曲線X1について考えてみると、pn接合近傍に裾を引くように形成されていた低濃度のゲート領域GR(テール領域)がn型半導体領域NRを形成することにより相殺され、結果的に、pn接合近傍のp型不純物濃度が急峻になっていると解釈できる。一方、曲線X2について考えてみると、チャネル形成領域側のpn接合近傍にも高濃度のn型不純物が導入された結果、pn接合のチャネル形成領域側の不純物濃度(n型不純物の濃度)が高くなると解釈することができる。このように本実施の形態1では、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間にn型半導体領域NRを形成することにより、ゲート領域GRとチャネル形成領域で形成されるpn接合の不純物プロファイルが急峻になるとともに、pn接合のチャネル形成領域側の不純物濃度を上昇させることができる。この結果、本実施の形態1によれば、pn接合付近のポテンシャルがブロッキング状態でのドレインバイアスの影響を受けにくくすることができるため、耐圧の向上を図ることができ、さらに、オン抵抗の低減も図ることができるのである。
【0040】
以下では、本実施の形態1における接合FETによれば、pn接合付近のポテンシャルがブロッキング状態でのドレインバイアスの影響を受けにくくすることができ、この結果、耐圧の向上とオン抵抗の低減を図ることができることについて説明する。まず、この説明にあたっては、本実施の形態1における接合FETの動作の説明と一緒に説明し、その後、バンド図を用いて詳細に説明する。
【0041】
本実施の形態1における接合FETは上記にように構成されており、続いて、その動作について説明する。ブロッキング状態(接合FETのオフ状態)を考える。ブロッキング状態では、ゲート領域GRに0Vまたは負の電圧が印加された状態で、ドレイン領域(ドレイン電極DE)に100V〜数kVもの電圧が印加される。このとき、チャネル形成領域では、ゲート領域GRとの間に形成されているpn接合からの空乏層がチャネル形成領域全体にわたって広がっている。このため、ソース領域SRとドレイン領域(半導体基板1S)の間は空乏化したチャネル形成領域によって遮断されることになり、接合FETはオフする。このとき、ソース領域SRとチャネル形成領域の間にはエネルギー障壁ができる。このエネルギー障壁は、ドレイン領域からのドレイン電界の影響を受けて高さが低下する。このため、元のエネルギー障壁が高く、かつ、ドレイン電界によるエネルギー障壁の低下が少ないほど耐圧が向上することになる。本実施の形態1では、n型半導体領域NRを形成することにより、ゲート領域GRとチャネル形成領域の間のpn接合の不純物プロファイルを急峻にするとともに、pn接合のチャネル形成領域側のn型不純物の濃度を高くしている。これは、どちらもドレイン電界に影響を受けやすいpn接合の低濃度の不純物領域を狭める効果があることから、ドレイン領域に高電圧が印加されるオフ状態でのエネルギー障壁の低下を抑制することができる。この結果、本実施の形態1によれば、耐圧を向上することができる。
【0042】
一方、接合FETのオン状態を考える。接合FETのオン状態では、ゲート領域GRに2.5V程度、ドレイン領域(半導体基板1S、ドレイン電極DE)に1V〜2V程度の電圧を印加する。これにより、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間の空乏層が狭まってチャネル形成領域の中央部にキャリアの経路であるチャネルが形成される。したがって、ソース領域SRとドレイン領域とはチャネルを介して電気的に接続されることになり、ドレイン領域に印加した電圧により、ソース領域SRからチャネルを介してドレイン領域に向ってキャリアが流れる。このとき、ゲート領域GRに電圧を印加していないときの
ソース領域SRとチャネル形成領域との間のエネルギー障壁が低いほど、ドレイン電流が流れはじめるゲート電圧、すなわち、しきい値電圧が低くなり、オン電流が大きくなる(オン抵抗が小さくなる)。本実施の形態1では、オフ時において、ドレイン領域に電圧を印加した状態でのエネルギー障壁の低下が小さくなることから、元のエネルギー障壁を低くしても耐圧が向上する。このため、例えば、本実施の形態1における接合FETと比較例における接合FETで同じ耐圧を確保する場合、本実施の形態1における接合FETでは、元のエネルギー障壁が比較例における接合FETに比べて低くなるので、結果的に、オン時のしきい値電圧を低くすることが可能となり、オン電流を増加させることができる。特に、ノーマリオフ型の接合FETでは、チャネル幅が狭くなるため、オン抵抗の低減は顕著になる。以上より、本実施の形態1における接合FETによれば、耐圧の向上とオン抵抗の低減を両立することができるのである。
【0043】
さらに、本実施の形態による接合FETの構成によれば、pn接合付近のポテンシャルがブロッキング状態でのドレインバイアスの影響を受けにくくすることができ、この結果、耐圧の向上とオン抵抗の低減を図ることができることについて、バンド図を使用して説明する。
【0044】
図6は、比較例において、隣り合うゲート領域GRと、この隣り合うゲート領域GRに挟まれるチャネル形成領域CHとの間のバンド構造を示す図である。図6において、ゲート領域GRとチャネル形成領域CHとの境界では、バンドが傾斜しており空乏層が形成されていることがわかる。そして、図6では、チャネル形成領域CHにおいて、空乏層を形成するバンドの底部と、空乏化していない導電状態のバンドとのエネルギー障壁Vaが示されている。このエネルギー障壁Vaが存在する場合が接合FETのオフ状態であり、このエネルギー障壁Vaがなくなる場合が接合FETのオン状態となる。
【0045】
ここで、図6に示すエネルギー障壁Vaはオフ時のドレインバイアス(ドレイン領域に印加されている電圧)の影響を考えていないときを示しているが、実際には、このエネルギー障壁Vaはドレインバイアスの影響を受けて低下するのである。図7は、図6に示すような状態からドレインバイアスの影響を考慮した場合のバンド図である。図7に示すように、実際には、オフ時のドレインバイアスの影響を受けてエネルギー障壁Vaはエネルギー障壁Vbのように低下する。このとき、図6および図7に示す比較例では、ゲート領域GRとチャネル形成領域CHの間に形成されるpn接合がなだらかである。つまり、pn接合がなだらかであるということは、pn接合近傍に低濃度の不純物領域が裾を引くように存在していることを意味している。低濃度の不純物領域のほうが高濃度の不純物領域よりも空乏層が延びることから、このことは、pn接合による空乏層がゲート領域GR側にも延びていることを意味している。これは、図6および図7において、空乏層を示すバンドの傾斜領域がpn接合からゲート領域GR側にも延在していることに表れている。この状態において、ドレインバイアスが印加されると、低濃度の不純物領域がゲート領域GRに延びている分だけ、ドレインバイアスによるエネルギー障壁の低下が顕著になることがわかる。この結果、エネルギー障壁がエネルギー障壁Vaからエネルギー障壁Vbに低下することになるエネルギー障壁が低下するということはその分耐圧が低下してリーク電流が増加することを意味する。このことから、比較例における接合FETでは耐圧の低下が問題となるのである。つまり、一定の耐圧(例えば、エネルギー障壁Vaに対応する耐圧)を確保するためには、ドレインバイアスによる大幅なエネルギー障壁の低下を見込んで、オフ時のエネルギー障壁をエネルギー障壁Vaよりも充分高く設定する必要がある。このことは、オン時におけるしきい値電圧が高くなることを意味し、オン抵抗が増加することになる。つまり、比較例における接合FETでは、耐圧の向上とオン抵抗の低減を両立することが困難になるのである。
【0046】
次に、図8は、本実施の形態1において、隣り合うゲート領域GRと、この隣り合うゲート領域GRに挟まれるチャネル形成領域CHとの間のバンド構造を示す図である。図8において、ゲート領域GRとチャネル形成領域CHとの境界では、バンドが傾斜しており空乏層が形成されていることがわかる。そして、図8では、チャネル形成領域CHにおいて、空乏層を形成するバンドの底部と、空乏化していない導電状態のバンドとのエネルギー障壁Vaが示されている。このエネルギー障壁Vaが存在する場合が接合FETのオフ状態であり、このエネルギー障壁Vaがなくなる場合が接合FETのオン状態となる。
【0047】
ここで、図8と図6の相違は、比較例を示す図6ではpn接合のゲート領域GR側にもかなり空乏層が入りこんでいるのに対し、本実施の形態1を示す図8ではpn接合のゲート領域GR側に空乏層がほとんど入りこんでいない。これは、ゲート領域GRとチャネル形成領域CHとの間に形成されるpn接合の不純物プロファイルが急峻となっており、pn接合近傍の低濃度の不純物領域が消滅して高濃度の不純物領域となっているからである。つまり、図8において、pn接合のゲート領域GR側では低濃度の不純物領域がほとんどなくなり、高濃度の不純物領域となっていることから空乏層がゲート領域GRに延びない結果、図8に示すように、pn接合のゲート領域GR側においてバンドが傾斜している領域(空乏層に対応する)が少なくなっているのである。
【0048】
さらに、pn接合近傍のチャネル形成領域側でも低濃度の不純物領域が高濃度の不純物領域となっている。これは、図8ではバンドの傾斜が急になっていることに対応している。つまり、本実施の形態1では、pn接合の近傍にn型半導体領域を形成している結果、pn接合近傍のチャネル形成領域側でも低濃度の不純物領域が高濃度の不純物領域となるのである。
【0049】
図8に示すエネルギー障壁Vaはオフ時のドレインバイアス(ドレイン領域に印加されている電圧)の影響を考えていないときを示しているが、実際には、本実施の形態1でも、このエネルギー障壁Vaはドレインバイアスの影響を受けて低下する。図9は、図8に示すような状態からドレインバイアスの影響を考慮した場合のバンド図である。図9に示すように、実際には、オフ時のドレインバイアスの影響を受けてエネルギー障壁Vaはエネルギー障壁Vcのように低下する。このとき、図8および図9に示す比較例では、pn接合の近傍にn型不純物が導入されているので、低濃度の不純物領域が少なくなり、ゲート領域GRとチャネル形成領域CHの間に形成されるpn接合が急峻となる。つまり、pn接合が急峻であるということは、pn接合近傍の低濃度の不純物領域が少なくなっていることを意味している。低濃度の不純物領域のほうが高濃度の不純物領域よりも空乏層が延びることから、このことは、本実施の形態1では、pn接合による空乏層がゲート領域GR側にはあまり延びないことを意味している。これは、図8および図9において、空乏層を示すバンドの傾斜領域がpn接合からゲート領域GR側にあまり延在していないことに表れている。さらに、pn接合のチャネル形成領域側にある低濃度の不純物領域も高濃度の不純物領域になっている。この状態において、ドレインバイアスが印加されると、低濃度の不純物領域がゲート領域GRに延びていない分だけ、ドレインバイアスによるエネルギー障壁の低下は少なくなることがわかる。さらに、チャネル形成領域側のpn接合近傍の不純物濃度も高濃度となることから(バンドの傾斜が急となることに対応している)、ドレインバイアスによるエネルギー障壁の低下は少なくなることがわかる。
【0050】
この結果、本実施の形態1でも、エネルギー障壁がエネルギー障壁Vaからエネルギー障壁Vcに低下するが、このエネルギー障壁Vcは、比較例におけるエネルギー障壁Vbよりも高い。このことは、本実施の形態1のほうが比較例に比べて、ドレインバイアスによるエネルギー障壁の低下は少なくなることを意味している。したがって、本実施の形態1における接合FETによれば、比較例における接合FETよりも耐圧を向上することができるのである。つまり、一定の耐圧(例えば、エネルギー障壁Vaに対応する耐圧)を確保するためには、ドレインバイアスによるエネルギー障壁の低下を見込んで、オフ時のエネルギー障壁をエネルギー障壁Vaよりも高く設定する必要があるが、本実施の形態1では、比較例に比べて、一定の耐圧を確保するためのオフセット量を低減できる。このことは、本実施の形態1のほうが比較例に比べて、オン時におけるしきい値電圧が低くなることを意味し、オン抵抗を低減できることになる。つまり、本実施の形態1における接合FETでは、比較例に比べて、耐圧の向上とオン抵抗の低減を両立することが可能となるのである。
【0051】
本実施の形態1における接合FETは、耐圧が600V程度のクラスを想定している。このため、例えば、図4において、エピタキシャル層EPI(ドリフト層)の不純物濃度は2×1016cm−3で厚さは6μmであり、トレンチTRの深さは1.2μm、幅は1μmである。ソース領域SRに幅はデバイス特性(特に、しきい値電圧)に直接関係するため、0.8μm〜1.0μm程度に幅をもたせている。ゲート領域GRは、例えば、アルミニウムを不純物としたp型半導体領域であり、そのピーク濃度は1019cm−3程度である。n型半導体領域NRは、例えば、窒素を不純物とした半導体領域であり、ピーク濃度は半導体基板1Sの基板濃度よりも半桁から1桁程度高いことが望ましい。これは、チャネル形成領域の一部の不純物濃度を効果的に上げるためである。ゲート領域GRとの間でpn接合を形成するチャネル形成領域のうち、pn接合近傍のピーク濃度は、元のエピタキシャル層の不純物濃度あるいはチャネル形成領域の中央部の不純物濃度よりも2倍〜5倍程度高いことが望ましい。これは、チャネル形成領域のうちpn接合近傍のピーク濃度を上げすぎると、チャネル形成領域の幅を狭くしないと耐圧が低下してしまうからである。このとき、チャネル形成領域の幅を狭くするということは、寸法ばらつきの影響を受けやすくなることを意味し、寸法ばらつきによる素子特性のばらつきが増大してしまうため、チャネル形成領域のうちpn接合近傍のピーク濃度を上げすぎないようにすることが望ましいのである。一方、チャネル形成領域のうちpn接合近傍のピーク濃度を2倍以上とすることは、pn接合付近のポテンシャルがブロッキング状態でのドレインバイアスの影響を受けにくくするためである。ただし、チャネル形成領域のうちpn接合近傍のピーク濃度を2倍以下であっても、元のエピタキシャル層の不純物濃度あるいはチャネル形成領域の中央部の不純物濃度よりも高濃度であれば、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間に形成されるpn接合の不純物プロファイルを急峻にする効果があるため、接合FETの特性を向上させることができる。
【0052】
次に、本実施の形態1における接合FETの平面レイアウト構成について説明する。図10および図11は本実施の形態1における接合FETの平面レイアウト構成の一例を示す図である。図10や図11において、トレンチTRがx方向に沿って並んで配置されており、複数のトレンチTRのうち隣り合うトレンチTR間にはソース領域SRが形成されている。このとき、ソース領域SR下に形成されるチャネル形成領域の面積を大きくしてオン抵抗を低減する観点から、ソース領域SRは正方形ではなく、一方向は長くなっているライン形状とすることが望ましい。そして、y方向に延在するソース領域SRの間を分断するようにゲート領域GRと電気的に接続されて引き出すゲート引き出し領域PRが配置されている。このゲート引き出し領域PRでゲート配線とのコンタクトをとることにより、トレンチTRの側壁および底面に形成されているゲート領域が引き出し領域PRを介してゲート配線(ゲートパッド)と電気的に接続されることになる。
【0053】
トレンチTRの終端部としては図10に示す構造と図11に示す構造の2通りが考えられる。この場合、図10に示すように、トレンチTRが長方形となり、トレンチTRがソース領域SRやゲート引き出し領域PRに周囲を囲まれる構造としたほうが望ましい。これは、例えば、図11に示すように、ソース領域SRを長方形にして、トレンチTRでソース領域SRの周囲を囲むようにする場合を考える。すると、トレンチTRの終端部であって図11のx方向に延在するトレンチTRでは、ソース領域SRである遮蔽領域がないため、トレンチTRの底部にn型半導体領域NR(図11では図示されず)を形成する際のn型不純物がトレンチTRの底部に多量に注入されてしまうのである。つまり、本実施の形態1の特徴であるn型半導体領域NR(図11では図示されず)を形成するには、トレンチTRを形成した後、このトレンチTRに対して斜め方向からのイオン注入で形成する。この場合、図11では、x方向に沿う斜め上方向からn型不純物がイオン注入されるが、この場合、図11に示すトレンチTRの終端部(図11のx方向に延在している)では、ソース領域SRが形成されていないため、トレンチTRの底部に多量にn型不純物が導入されてしまうのである。すると、トレンチTRの底部に形成されているpn接合(ゲート領域とエピタキシャル層の間)で耐圧が低下することになる。ただし、トレンチTRの底部において、ゲート領域(p型半導体領域)を深い場所まで形成する場合には、図11に示すようなレイアウト構成でもよい。
【0054】
さらに、ソース領域SRやトレンチTRのラインの向き(図10や図11ではy方向に延在する方向)はどの方向でもよい。ただし、ソース領域SRやトレンチTRのラインの向きを半導体基板のオフ角(半導体基板の表面と格子面のなす角度)の方向と並行するように配置すると、ソース領域SRやトレンチTRのラインへの左右からの斜めイオン注入の角度が等価になるため、チャネル形成領域の両側(両端)に形成されるn型半導体領域NR(図示されず)の不純物プロファイルが同等となる。
【0055】
ソース領域SRやトレンチTRのラインの長さは、あまり短くするとデバイス面積当たりのチャネルの面積が小さくなり電流が小さくなる。一方、ソース領域SRやトレンチTRのラインの長さが、あまり長くなるとゲート抵抗が大きくなり、スイッチング速度が遅くなってしまうため、ソース領域SRやトレンチTRのラインの長さを適切な長さに選択する必要がある。
【0056】
図12は、ソース領域のラインの長さ(ライン長)と単位面積あたりの相対オン抵抗との関係を示す図である。図12では、ラインの長さが無限大であるときのオン抵抗を1とした場合の相対オン抵抗が示されている。図12に示すように、単位面積あたりの相対オン抵抗は、ソース領域のラインの長さが10μm以下になると急激に高くなっていることがわかる。したがって、相対オン抵抗を低減する観点からは、ソース領域のラインの長さは10μm以上であることが望ましいことがわかる。
【0057】
一方、図13は、トレンチのラインの長さ(ライン長)とゲート遅延時間との関係を示す図である。図13に示すように、トレンチのラインの長さが長くなるほどゲート遅延時間が大きくなっていることがわかる。ゲート遅延時間は、10ns以上になるとスイッチング速度が遅くなることが報告されていることから、ゲート遅延時間が10ns以下となるようにトレンチのラインの長さを選択する必要がある。具体的には、ゲート遅延時間が10ns以下となるように、トレンチのラインの長さを50μm以下にすることが望ましい。以上のことから、オン抵抗の低減とゲート遅延時間の縮小を考慮して、本実施の形態1では、ソース領域やトレンチのラインの長さを20μmとしている。
【0058】
ただし、トレンチの底部でゲート領域とのコンタクトをとる構造にすれば、ゲート領域のゲート抵抗を低減できることから(ゲート遅延時間が短くなることを意味している)、この場合は、ソース領域やトレンチのラインの長さを50μm以上に長くしてもよい。
【0059】
トレンチの底部でコンタクトをとる構造としては、トレンチの底部にシリサイド領域を形成する構造と、トレンチの底部に達するプラグを形成して直接コンタクトをとる構成が考えられる。前者は、トレンチの底部にコンタクトホールを開けて、シリサイド領域を形成した後、トレンチの内部を絶縁膜で埋め込むことにより実現できる。一方、後者は、トレンチの底部にコンタクトホールを開け、その後、タングステン膜などによりトレンチを埋め込みプラグを形成する。そして、トレンチからはみ出しているタングステン膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により除去することで実現できる。前者のほうが製造工程は簡単であるが、後者のほうがゲート抵抗を小さくすることができる。したがって、高速でスイッチングを行なう場合には後者の構造を選択することが望ましい。
【0060】
続いて、本実施の形態1における効果について図面を参照しながら説明する。図14は、本実施の形態1における接合FETのドレイン電圧とドレイン電流密度との関係と(曲線(A))、比較例における接合FETのドレイン電圧とドレイン電流密度との関係(曲線(B))とを示すグラフである。本実施の形態1における接合FETと、比較例における接合FETにおいて、耐圧はともに650Vであり、耐圧を確保できる最大のソース幅でソース領域を形成している。そして、ゲート領域から少数キャリアが注入されないように、ゲート電圧は、ともにpn接合の拡散電位以下の2.5Vとしている。この条件で、図14をみると、本実施の形態1における接合FET(曲線(A))は、比較例における接合FET(曲線(B))に比べて、定格電流(ドレイン電圧1V)で約3倍、飽和電流で約5倍の電流密度になることがわかる。したがって、本実施の形態1における接合FETによれば、比較例における接合FETに比べて、耐圧の向上とオン電流の増加(オン抵抗の低減)を実現できていることがわかる。
【0061】
次に、本実施の形態1では、トレンチの側壁に形成されているゲート領域と、隣り合うゲート領域で挟まれたチャネル形成領域の間のpn接合近傍に、n型不純物を導入したn型半導体領域を形成することに特徴があるが、このn型半導体領域をイオン注入で形成する条件について説明する。イオン注入の条件は、打ち込むエネルギーと、打ち込む量であるドーズ量がある。まず、エネルギーを400keVに固定してドーズ量を変化させることにより、チャネル形成領域の端部(n型半導体領域)の不純物濃度の違いによる素子特性への影響を調べる。
【0062】
図15は、チャネル形成領域のピーク濃度(チャネルピーク濃度)とドレイン電流密度との関係を示すグラフである。図15において、横軸はチャネル形成領域のピーク濃度を示しており、縦軸はドレイン電流密度を示している。図15に示すように、チャネル形成領域のピーク濃度が高くなるほど、ドレイン電流密度が高くなっていることがわかる。このとき、エピタキシャル層の濃度の5倍である1×1017cm−3程度になると、ドレイン電流密度は飽和傾向になっているとともに、ばらつきが大きくなっていることがわかる。飽和傾向になる理由は以下に示すことによる。すなわち、ドレイン電流密度が向上する理由はしきい値電圧が低くなったためであるが、チャネル形成領域のピーク濃度(n型半導体領域のピーク濃度)が1×1017cm−3程度では、すでに接合FETのしきい値電圧が1Vを切っており、それ以上、しきい値電圧を下げることが難しいからである。一方、ばらつきが大きくなるのは、チャネル形成領域のピーク濃度が上昇すると、耐圧を確保できるチャネル幅が狭くなるため、少しの寸法シフトでも素子特性に大きな影響がでるからである。以上のことを考慮すると、チャネル形成領域のピーク濃度(n型半導体領域のピーク濃度)は、もとのエピタキシャル層の不純物濃度の2倍〜5倍程度が望ましいといえる。本実施の形態1では、例えば、約4倍となる8×1016cm−3程度になるように設計している。
【0063】
続いて、ピーク濃度を決定してもイオン注入条件はいくつもある。例えば、300keV(エネルギー)、1.2×1013cm−2(ドーズ量)程度の条件や、400keV(エネルギー)、6.0×1012cm−2(ドーズ量)程度の条件や、500keV(エネルギー)、3.0×1012cm−2(ドーズ量)程度の条件でも、チャネル形成領域のピーク濃度は同程度となる。違いとしては、低エネルギーで高ドーズ量であると、pn接合近傍に多量のn型不純物は注入されるため、pn接合は特に急峻となる。一方、高エネルギー低ドーズ量であると、深くまでn型不純物が導入されるため、チャネル形成領域の中央部付近まで高濃度化される。
【0064】
図16は、上述したイオン注入の3条件でのドレイン電流密度を示している。図16に示すように、平均のドレイン電流密度は3条件でほとんど変化しないが、高エネルギー低ドーズ量の条件では素子特性のばらつきが大きくなっている。これは、チャネル形成領域のピーク濃度を上げすぎた場合と同様で、チャネル形成領域の中央部の不純物濃度が上がると、耐圧がでるチャネル幅が狭くなるため、少しのチャネル幅の寸法シフトでも素子特性に大きな影響がでるからである。以上を考慮して本実施の形態1では、イオン注入条件として、400keV(エネルギー)、6.0×1012cm−2(ドーズ量)程度の条件を採用している。
【0065】
本実施の形態1における接合FETは上記のように構成されており、以下にその製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0066】
まず、図17に示すように、半導体基板1S上にn型半導体領域からなるエピタキシャル層EPIを成長させる。このとき、半導体基板1Sの面方位はシリコン面(Si面)でオフ角は8度であるが、面方位はC面でも(11/(バー)20)面でもよく、オフ角は4度でも0度でもよい。つまり、半導体基板1S上にエピタキシャル層EPIが均一に成長すれば問題はない。続いて、酸化シリコン膜を堆積した後、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術を使用することにより酸化シリコン膜を加工する。そして、加工した酸化シリコン膜をハードマスクとしたイオン注入法によりターミネーション領域となるp型半導体領域を形成する(図17では図示されず)。イオン注入法におけるイオン種はアルミニウムで濃度は1×1017cm−3程度である。ターミネーション領域はゲート領域よりも深い必要があるため、イオン注入法においては、2MeVのエネルギーによる多段注入法が必要である。本実施の形態1では、ターミネーション領域の構造としてJTE構造を採用しているが、これに限らず、ターミネーション領域の構造は、ガードリング構造でもメサ構造でもその他の構造でもよい。
【0067】
次に、ターミネーション領域の形成方法と同じ方法で、n型半導体領域となるソース領域となるn型半導体領域NDRおよびゲート領域の引き出し領域となるゲート引き出し領域(p型半導体領域)(図17では図示されず)をエピタキシャル層EPI上に形成する。図17ではエピタキシャル層EPIの全面にn型半導体領域NDRを形成しているが、実際には、ゲート引き出し領域やターミネーション領域も形成されており、このゲート引き出し領域やターミネーション領域には、n型半導体領域NDRは形成されない。イオン注入法のイオン種は、n型半導体領域NDRにおいては窒素であり、ゲート引き出し領域(p型半導体領域)はアルミニウムである。なお、ゲート耐圧を確保するため、n型半導体領域NDRを形成するためのイオン注入は半導体基板1Sを500℃に加熱して行なっている。
【0068】
続いて、図18に示すように、n型半導体領域NDR上に酸化シリコン膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術を使用することにより酸化シリコン膜を加工する。そして、加工した酸化シリコン膜をハードマスクHMとしたドライエッチング技術により、トレンチTRを形成する。トレンチTRは、n型半導体領域NDRを貫通し、エピタキシャル層EPIに達するように形成される。このとき、トレンチTRは、チャネル幅を一定に保つため、できるだけ垂直に近い状態に加工することが望ましい。トレンチTRを形成することにより、隣り合うトレンチTRで挟まれた領域にn型半導体領域NDRよりなるソース領域SRが形成される。
【0069】
次に、図19に示すように、トレンチTRの加工に使用したハードマスクHM(酸化シリコン膜)をそのまま用いて、トレンチTRの側面および底面にp型半導体領域となるゲート領域GRを形成する。このゲート領域はイオン注入法により形成される。例えば、ゲート領域GRを形成するイオン注入法において、イオン種はアルミニウムである。そして、トレンチTRの側壁には斜めイオン注入法によりゲート領域GRを形成し、トレンチTRの底部には垂直イオン注入法によりゲート領域GRを形成する。斜めイオン注入法の角度は25度(垂直軸を基準)で、エネルギーは最大100keVとしている。一方、垂直イオン注入法は、エネルギーを最大150keVとする多段注入としている。このイオン注入法(斜めイオン注入法および垂直イオン注入法)の場合も、ゲート領域GRのゲート抵抗を低減するために、半導体基板1Sを500℃で加熱した状態でイオン注入を行なった。ただし、ゲート領域GRのゲート耐圧が5V程度でよければ、ゲート領域GRを形成するイオン注入を室温で実施してもよい。
【0070】
続いて、図20に示すように、トレンチTRの加工に使用したハードマスクHM(酸化シリコン膜)をそのまま用いて、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間にn型不純物を導入してn型半導体領域NRを形成する。このn型半導体領域NRの形成は斜めイオン注入法により実施される。この斜めイオン注入法において、イオン種は窒素であり、注入エネルギーは400keV、ドーズ量は6×1012cm−2である。これにより、チャネル形成領域のうちゲート領域GRとのpn接合近傍におけるピーク濃度は8×1012cm−2程度となる。斜めイオン注入法の注入角度はゲート領域GRを形成するときと同じ25度である。ただし、トレンチTRの角部(コーナ部)などの余計な場所にn型不純物が打ち込まれないようにするため、注入角度を26度〜30度程度にしてもよい。
【0071】
その後、図21に示すように、1600℃程度の温度で活性化アニールを実施し、トレンチTRの表面を犠牲酸化した後、トレンチTRを絶縁膜ILで埋め込む。トレンチTRの埋め込みは、トレンチTRの内部を含む半導体基板1S上に酸化シリコン膜を形成した後、この酸化シリコン膜をエッチバックすることにより行なうことができる。ただし、エッチバックに限らず、トレンチTRの内部を含む半導体基板1S上に酸化シリコン膜を形成した後、CMP法などの他の平坦化方法で行なってもよい。
【0072】
次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、絶縁膜ILをパターニングする。絶縁膜ILのパターニングはソース領域SRの上部を開口するように行なわれる。そして、開口部内を含む絶縁膜IL上にニッケル膜(Ni膜)を堆積した後、1000度程度の熱処理(アニール)によりニッケルシリサイド膜からなるソース電極SEを形成する。そして、未反応のニッケル膜を除去する。同様に、半導体基板1Sの裏面側においても、半導体基板1Sの裏面にニッケル膜を形成した後、1000℃程度の熱処理を実施することにより、ニッケルシリサイド膜よりなるドレイン電極DEを形成する。
【0073】
最後に、半導体基板1Sの表面に酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜を形成し、この層間絶縁膜の間にアルミニウム配線を形成する。このアルミニウム配線は、例えば、2層で形成する。その後、アルミニウム配線に開口部を形成してソースパッドおよびゲートパッドを形成する。以上のようにして、本実施の形態1における接合FETを製造することができる。
【0074】
なお、本実施の形態1では、ゲート領域GRに導入するp型不純物をアルミニウムとし、n型半導体領域NRに導入するn型不純物を窒素としているが、ゲート領域GRに導入するp型不純物はボロンでもよく、n型半導体領域NRに導入するn型不純物はリンでもよい。ボロンはイオン注入法のダメージが入った状態で活性化アニールを行なうと、外方拡散することが知られている。このため、n型半導体領域NRを形成するためのn型不純物を導入してpn接合近傍にダメージを入れることにより、pn接合はより急峻となる効果が得られる。pn接合近傍にダメージを効果的に形成する観点では、窒素よりも質量の重いリンのほうがダメージを形成しやすいため、ボロンとリンの組み合わせにより、急峻なpn接合を形成することができる。ただし、ボロンの外方拡散によりゲート領域GRの表面付近の濃度も下がるため、ゲート領域GRの表面にアルミニウム(p型不純物)などを追加注入するなどの対策も必要である。
【0075】
(実施の形態2)
図22は本実施の形態2における接合FETの構成を示す断面図である。図22に示す本実施の形態2における接合FETと、図4に示す前記実施の形態1における接合FETとの相違点は、ゲート領域GR がトレンチ構造ではなく、垂直イオン注入によって形成されている点である。本実施の形態2のように、垂直イオン注入だけを使用してゲート領域GRを形成する場合も、注入されるイオンは横方向に回り込むため、何ら対策を施さないと、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間に形成されるpn接合はなだらかな接合となってしまう。このため、本実施の形態2でも、前記実施の形態1と同様に、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間(pn接合近傍)にn型半導体領域NRを形成することにより、ゲート領域GRとチャネル形成領域で形成されるpn接合の不純物プロファイルが急峻になるとともに、pn接合のチャネル形成領域側の不純物濃度を上昇させることができる。
【0076】
図23は、図22のA−A´における不純物濃度を示すグラフである。図23のA点側がゲート領域GRを示しており、p型不純物が高濃度に導入されている。一方、図23のA´点側がチャネル形成領域(エピタキシャル層EPI)を示しており、n型不純物が導入されている。そして、ゲート領域GRとチャネル形成領域の間にpn接合が形成されている。このとき、本実施の形態2では、pn接合近傍にn型半導体領域NRを形成していることから、図23に示すように、pn接合の近傍にn型不純物が高濃度に導入されている。このとき、曲線X1は、ゲート領域GRからpn接合までのp型不純物の濃度分布を示しており、曲線X2はpn接合からチャネル形成領域までのn型不純物の濃度分布を示している。図23に示すように、pn接合近傍の曲線X1における傾きが急峻になっており、かつ、pn接合近傍の曲線X2が盛り上がっていることがわかる。これは、曲線X1について考えてみると、pn接合近傍に裾を引くように形成されていた低濃度のゲート領域GR(テール領域)がn型半導体領域NRを形成することにより相殺され、結果的に、pn接合近傍のp型不純物濃度が急峻になっていると解釈できる。一方、曲線X2について考えてみると、チャネル形成領域側のpn接合近傍にも高濃度のn型不純物が導入された結果、pn接合のチャネル形成領域側の不純物濃度(n型不純物の濃度)が高くなると解釈することができる。このように本実施の形態2では、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間にn型半導体領域NRを形成することにより、ゲート領域GRとチャネル形成領域で形成されるpn接合の不純物プロファイルが急峻になるとともに、pn接合のチャネル形成領域側の不純物濃度を上昇させることができる。この結果、本実施の形態2によれば、pn接合付近のポテンシャルがブロッキング状態でのドレインバイアスの影響を受けにくくすることができるため、耐圧の向上を図ることができ、さらに、オン抵抗の低減も図ることができるのである。
【0077】
本実施の形態2における接合FETは上記のように構成されており、以下に、その製造方法について説明する。図17に示す工程までは前記実施の形態1と同様である。続いて、半導体基板1S上に酸化シリコン膜を形成し、この酸化シリコン膜に対してフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、酸化シリコン膜を加工する。そして、この加工した酸化シリコン膜をハードマスクとした垂直イオン注入法により、図22に示すゲート領域GRを形成する。このゲート領域GRはp型不純物を導入したp型半導体領域である。このとき、ゲート領域GRは、0.5μm以上の深さにすることが望ましいため、垂直イオン注入法のエネルギーは最大500keVとしている。
【0078】
その後、ゲート領域GRを形成する際に使用したハードマスクをそのまま使用したイオン注入法により、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間のpn接合近傍に、n型不純物を導入してn型半導体領域NRを形成する。n型半導体領域NRを形成するためのイオン注入法は、垂直イオン注入法よりも斜めイオン注入法を使用することが望ましい。これは、n型半導体領域NRを形成するn型不純物をpn接合近傍の横方向に注入する必要があるからである。ただし、斜めイオン注入法において、あまり角度をつけすぎると、半導体基板1Sの表面からみて浅い領域にしかn型不純物が導入されず、逆に、あまり角度が小さいと、半導体基板1Sの表面からみて深い領域までn型不純物が導入されてしまうため、適切な角度でn型不純物を導入する必要がある。
【0079】
適切な角度とは、ゲート領域GRの深さを長辺、横方向に広がる距離を短辺とした長方形の対角線の方向である。本実施の形態2では、ゲート領域GRの深さは約0.5μm、横方向の広がりが約0.2μmであることから、斜めイオン注入法の注入角度は約22度(垂直軸を基準)としている。そして、エネルギーは300keV、ドーズ量は5×1012cm−2としている。
【0080】
なお、本実施の形態2では、ハードマスクに酸化シリコン膜を使用しているが、n型半導体領域NRを形成するn型不純物の注入を半導体基板1Sの深さ方向に均一に行なう観点からは、イオン注入法で使用するハードマスクの密度を半導体基板1Sの密度に近い材料を使用することが望ましい。これにより、トレンチにn型不純物を導入する場合と同様に、本実施の形態2でも、n型半導体領域NRの深さ方向に導入されるn型不純物の濃度を均等にすることができる。その後の工程は、前記実施の形態1とほぼ同様であるので省略する。
【0081】
(実施の形態3)
図24は本実施の形態3における接合FETの構成を示す断面図である。図24に示す本実施の形態3における接合FETと、図4に示す前記実施の形態1における接合FETとの相違点は、ゲート領域GRをイオン注入法で形成するのではなく、エピタキシャル成長法により形成している点である。
【0082】
図25は、図24のA−A´における不純物濃度を示すグラフである。図25のA点側がゲート領域GRを示しており、p型不純物が高濃度に導入されている。一方、図25のA´点側がチャネル形成領域(エピタキシャル層EPI)を示しており、n型不純物が導入されている。そして、ゲート領域GRとチャネル形成領域の間にpn接合が形成されている。このとき、本実施の形態3では、pn接合近傍にn型半導体領域NRを形成していることから、図25に示すように、pn接合の近傍にn型不純物が高濃度に導入されている。このとき、曲線X1は、ゲート領域GRからpn接合までのp型不純物の濃度分布を示しており、曲線X2はpn接合からチャネル形成領域までのn型不純物の濃度分布を示している。図25に示すように、ゲート領域GRをエピタキシャル成長法で形成しているので、pn接合近傍の曲線X1の傾きが急峻になっている。さらに、本実施の形態3でも、pn接合近傍にn型半導体領域NRを形成していることから、pn接合近傍の曲線X2が盛り上がっていることがわかる。この結果、本実施の形態3によれば、pn接合付近のポテンシャルがブロッキング状態でのドレインバイアスの影響を受けにくくすることができるため、耐圧の向上を図ることができ、さらに、オン抵抗の低減も図ることができる。そして、本実施の形態3では、ゲート領域GRをエピタキシャル成長法で形成しているため、ゲート領域GRとソース領域SR間のpn接合に、イオン注入法によるダメージが入りにくく、ゲート領域GRとソース領域SRとの間の耐圧を向上させることができる。
【0083】
本実施の形態3における接合FETは上記のように構成されており、以下に、その製造方法について説明する。図24に示すように、半導体基板1S上にエピタキシャル層EPIを形成する。そして、エピタキシャル層EPIにトレンチTRを形成する。このとき、トレンチTR間のスペースが前記実施の形態1に比べて狭くなるように形成する。これは、本実施の形態3では、トレンチTR間のスペースがそのままチャネル幅となるからである。例えば、ノーマリオフ型の接合FETでは、チャネル幅は濃度にもよるが、およそ0.5μm以下にする必要がある。
【0084】
次に、トレンチTRの側壁にn型不純物をイオン注入法により導入する。これにより、トレンチTRの側壁に露出しているエピタキシャル層EPIにn型半導体領域NRを形成することができる。このとき、n型不純物を導入したい領域はトレンチTRの側壁表面近傍であるため、イオン注入法のエネルギーは10keVとしている。その後、ソース領域SRを形成する。なお、ソース領域SRの形成はトレンチTRの形成前でもトレンチTR形成後であってもよいが、本実施の形態3では、例えば、ソース領域SRをトレンチTRの形成後に実施している。
【0085】
続いて、エピタキシャル層EPIに導入した不純物を活性化させるため、アニール処理を実施する。その後、トレンチTRの側壁および底面からエピタキシャル成長法を使用することにより、p型半導体領域を成長させてゲート領域GRを形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術により余分に成長したp型半導体領域を除去する。その後の工程は前記実施の形態1とほぼ同様である。このようにして、本実施の形態3における接合FETを製造することができる。
【0086】
(実施の形態4)
図26は本実施の形態4における接合FETの構成を示す断面図である。図26に示す本実施の形態4における接合FETと、図4に示す前記実施の形態1における接合FETとの相違点は、n型半導体領域NRとゲート領域GRとを、ともに、イオン注入法で形成するのではなく、エピタキシャル成長法により形成している点である。
【0087】
図27は、図26のA−A´における不純物濃度を示すグラフである。図27のA点側がゲート領域GRを示しており、p型不純物が高濃度に導入されている。一方、図27のA´点側がチャネル形成領域(エピタキシャル層EPI)を示しており、n型不純物が導入されている。そして、ゲート領域GRとチャネル形成領域の間にpn接合が形成されている。このとき、本実施の形態4では、pn接合近傍にn型半導体領域NRを形成していることから、図27に示すように、pn接合の近傍にn型不純物が高濃度に導入されている。このとき、曲線X1は、ゲート領域GRからpn接合までのp型不純物の濃度分布を示しており、曲線X2はpn接合からチャネル形成領域までのn型不純物の濃度分布を示している。図27に示すように、ゲート領域GRをエピタキシャル成長法で形成しているので、pn接合近傍の曲線X1の傾きが急峻になっている。同様に、本実施の形態4では、pn接合近傍に形成されるn型半導体領域NRもエピタキシャル成長法で形成していることから、pn接合近傍の曲線X2もステップ状に上昇しているがわかる。この結果、本実施の形態4によれば、pn接合付近のポテンシャルがブロッキング状態でのドレインバイアスの影響を受けにくくすることができるため、耐圧の向上を図ることができ、さらに、オン抵抗の低減も図ることができる。そして、本実施の形態4では、ゲート領域GRおよびn型半導体領域NRをエピタキシャル成長法で形成している。つまり、本実施の形態4によれば、ゲート領域GRの近傍領域においてイオン注入法による不純物の導入を行なわないため、ゲート領域GRのリーク電流を低減することができるという効果が得られる。
【0088】
本実施の形態4における接合FETは上記のように構成されており、以下に、その製造方法について説明する。図26に示すように、半導体基板1S上にエピタキシャル層EPIを形成する。そして、エピタキシャル層EPIにトレンチTRを形成する。このとき、トレンチTR間のスペースが前記実施の形態3に比べて、さらに狭くなるように形成する。これは、本実施の形態4では、トレンチTR間のスペースがそのままチャネル幅となるからである。例えば、ノーマリオフ型の接合FETでは、チャネル幅は濃度にもよるが、およそ0.2μm以下にする必要がある。
【0089】
次に、トレンチTRの側壁および底面からエピタキシャル成長法により、n型半導体領域NRを形成する。このn型半導体領域NRの不純物濃度はエピタキシャル層EPIの不純物濃度よりも高くなっている。これにより、トレンチTRの側壁に露出しているエピタキシャル層EPI上にn型半導体領域NRを形成することができる。その後、ソース領域SRを形成する。なお、ソース領域SRの形成はトレンチTRの形成前でもトレンチTR形成後であってもよいが、本実施の形態4では、例えば、ソース領域SRをトレンチTRの形成後に実施している。
【0090】
続いて、トレンチTRの側壁および底面からエピタキシャル成長法を使用することにより、n型半導体領域NR上にp型半導体領域を成長させてゲート領域GRを形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術により余分に成長したp型半導体領域を除去する。その後の工程は前記実施の形態1とほぼ同様である。このようにして、本実施の形態4における接合FETを製造することができる。
【0091】
(実施の形態5)
図28は本実施の形態5における接合FETの構成を示す断面図である。図28に示す本実施の形態5における接合FETと、図4に示す前記実施の形態1における接合FETとの相違点は、n型半導体領域NRを斜めイオン注入法ではなく、垂直イオン注入法(垂直方向の高エネルギー注入法)で形成している点である。
【0092】
このように本実施の形態5でも、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間にn型半導体領域NRを形成することにより、ゲート領域GRとチャネル形成領域で形成されるpn接合の不純物プロファイルが急峻になるとともに、pn接合のチャネル形成領域側の不純物濃度を上昇させることができる。この結果、本実施の形態5によれば、前記実施の形態1と同様に、pn接合付近のポテンシャルがブロッキング状態でのドレインバイアスの影響を受けにくくすることができるため、耐圧の向上を図ることができ、さらに、オン抵抗の低減も図ることができる。
【0093】
本実施の形態5における接合FETは上記のように構成されており、以下に、その製造方法について説明する。図28に示すように、半導体基板1S上にエピタキシャル層EPIを形成した後、トレンチTRを形成する前に、エピタキシャル層EPI上に酸化シリコン膜を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術を使用することにより、酸化シリコン膜を加工する。この加工した酸化シリコン膜をハードマスクにした垂直イオン注入法により、エピタキシャル層EPI内にn型半導体領域NRを形成する。このn型半導体領域NRを形成する工程は、ソース領域SRなどのエピタキシャル層EPIの表面領域に形成される半導体領域の形成と順序を入れ替えてもよい。n型半導体領域NRを形成する垂直イオン注入法では、n型不純物をトレンチTRの深さ程度まで導入する必要があるため、最大で2MeV程度のエネルギーが必要である。一方、ドーズ量は垂直に導入する分だけ少なくてよく、1×1012cm−2程度でよい。
【0094】
その後、エピタキシャル層EPIにトレンチTRを形成した後、トレンチTRの側壁および底面に接するエピタキシャル層EPI内にゲート領域GRを形成する。このとき、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間に形成されるpn接合近傍に上述したn型半導体領域NRが配置される。この後の工程は前記実施の形態1と同様である。このようにして、本実施の形態5における接合FETを製造することができる。
【0095】
(実施の形態6)
図29は本実施の形態6における接合FETの構成を示す断面図である。図29に示す本実施の形態6における接合FETと、図22に示す前記実施の形態2における接合FETとの相違点は、n型半導体領域NRを斜めイオン注入法ではなく、垂直イオン注入法(垂直方向の高エネルギー注入法)で形成している点である。このとき、垂直イオン注入法によるn型不純物の導入条件は、前記実施の形態5とほぼ同様であるが、ゲート領域GRの深さが相違するので、n型不純物を導入するエネルギーは調整する必要がある。
【0096】
このように本実施の形態6でも、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間にn型半導体領域NRを形成することにより、ゲート領域GRとチャネル形成領域で形成されるpn接合の不純物プロファイルが急峻になるとともに、pn接合のチャネル形成領域側の不純物濃度を上昇させることができる。この結果、本実施の形態6によれば、前記実施の形態2と同様に、pn接合付近のポテンシャルがブロッキング状態でのドレインバイアスの影響を受けにくくすることができるため、耐圧の向上を図ることができ、さらに、オン抵抗の低減も図ることができる。
【0097】
(実施の形態7)
図30は本実施の形態7における接合FETの構成を示す断面図である。図30に示す本実施の形態7における接合FETと、図4に示す前記実施の形態1における接合FETとの相違点は、ゲート領域GRがトレンチTRの側壁には形成されてなく、トレンチTRの底部にだけ形成されている点である。本実施の形態7のように、トレンチTRの底部にだけイオン注入法によりゲート領域GRを形成する場合であっても、n型不純物は横方向に広がるため、ゲート領域GRとチャネル形成領域とのpn接合はなだらかになる。このため、本実施の形態7においても、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間にn型半導体領域NRを形成する構成は有用である。この構成により、ゲート領域GRとチャネル形成領域で形成されるpn接合の不純物プロファイルが急峻になるとともに、pn接合のチャネル形成領域側の不純物濃度を上昇させることができる。この結果、本実施の形態7によれば、pn接合付近のポテンシャルがブロッキング状態でのドレインバイアスの影響を受けにくくすることができるため、耐圧の向上を図ることができ、さらに、オン抵抗の低減も図ることができる。
【0098】
本実施の形態7における接合FETは上記のように構成されており、以下に、その製造方法について説明する。図30に示すように、半導体基板1S上にエピタキシャル層EPIを形成した後、エピタキシャル層EPI上に、例えば、酸化シリコン膜よりなるハードマスクを形成する。そして、このハードマスクをマスクしてエピタキシャル層EPIの表面から内部に達するトレンチTRを形成する。その後、トレンチTRを形成するために使用したハードマスクをそのまま用いて、垂直イオン注入法により、トレンチTRの底部に接するエピタキシャル層EPI内にp型半導体領域よりなるゲート領域GRを形成する。
【0099】
次に、n型不純物を導入することによりn型半導体領域NRを形成する。n型半導体領域NRを形成するためのn型不純物の導入は、ソース領域SRに回り込んだp型不純物を打ち消すために角度をつけた斜めイオン注入法により実施する必要がある。角度については、トレンチTRの底部に形成されているゲート領域GRの深さが0.4μm程度であることを考慮して26度程度としている。ただし、この角度を大きくすると、ハードマスクで遮蔽されてトレンチTRの底部まで不純物が入らない可能性があるため注意が必要である。また、n型半導体領域NRを形成するためのn型不純物のドーズ量は、ゲート領域GRを形成するためのp型不純物のドーズ量に比べて桁で低いため、p型不純物の低濃度領域(テール領域)まで打ち消すように、n型不純物の注入エネルギーは、ゲート領域GRを形成するp型不純物の注入エネルギーよりも、100keV〜200keV程度高いほうがよい。その他の工程については前記実施の形態1と同様である。
【0100】
なお、本実施の形態7では、チャネル形成領域とソース領域SRをつなぐトレンチTRの側壁の一部は、n型半導体領域NRを形成する際のn型不純物が注入されるので、n型不純物が導入されたトレンチTRの側壁領域の抵抗値が下がるという付随的な効果も得られる。
【0101】
(実施の形態8)
図31は本実施の形態8における接合FETの構成を示す断面図である。図31に示す本実施の形態8における接合FETと、図30に示す前記実施の形態7における接合FETとの相違点は、n型半導体領域NRを形成するためのn型不純物の導入を、斜めイオン注入法ではなく、垂直イオン注入法によって実施している点である。本実施の形態8においても、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間にn型半導体領域NRを形成する構成は有用である。この構成により、ゲート領域GRとチャネル形成領域で形成されるpn接合の不純物プロファイルが急峻になるとともに、pn接合のチャネル形成領域側の不純物濃度を上昇させることができる。この結果、本実施の形態8によれば、pn接合付近のポテンシャルがブロッキング状態でのドレインバイアスの影響を受けにくくすることができるため、耐圧の向上を図ることができ、さらに、オン抵抗の低減も図ることができる。
【0102】
本実施の形態8における接合FETは上記のように構成されており、以下に、その製造方法について説明する。図31に示すように、半導体基板1S上にエピタキシャル層EPIを形成した後、トレンチTRを形成する前に、エピタキシャル層EPI上に酸化シリコン膜を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング技術を使用することにより、酸化シリコン膜を加工する。この加工した酸化シリコン膜をハードマスクにした垂直イオン注入法により、エピタキシャル層EPI内にn型半導体領域NRを形成する。このときの垂直イオン注入法によるn型不純物の導入条件は、後述する工程で導入するp型不純物の横方向の広がりに合わせて注入する位置や深さを調整する必要がある。
このn型半導体領域NRを形成する工程は、ソース領域SRなどのエピタキシャル層EPIの表面領域に形成される半導体領域の形成と順序を入れ替えてもよい。
【0103】
その後、エピタキシャル層EPIにトレンチTRを形成した後、トレンチTRの底面に接するエピタキシャル層EPI内にゲート領域GRを形成する。このとき、ゲート領域GRとチャネル形成領域との間に形成されるpn接合近傍に上述したn型半導体領域NRが配置される。この後の工程は前記実施の形態1と同様である。このようにして、本実施の形態8における接合FETを製造することができる。
【0104】
(実施の形態9)
本実施の形態9では、前記実施の形態1〜8で説明した接合FETを使用した製品(半導体装置)の一例について説明する。図32は、前記実施の形態1〜8における接合FETを絶縁基板上に実装した例である。図32に示すように、窒化アルミニウムを材料とする絶縁基板S上に、ソース端子STE、ゲート端子GTEおよびドレイン端子DTEを構成する金属板が配置されており、ドレイン端子DTE上に接合FETJFETとダイオードDが半田によりボンディングされている。接合FETJFETのソース電極はソース端子STEにワイヤで電気的に接続されており、接合FETJFETのゲート電極はゲート端子GTEとワイヤで電気的に接続されている。同様に、ダイオードDのアノードはソース端子STEにワイヤで電気的に接続されている。このとき、ダイオードDはSiC(炭化シリコン)のショットキーバリアダイオードを使用している。SiC(炭化シリコン)のショットキーバリアダイオードは、シリコン(Si)のpn接合ダイオードに比べて、オン電圧が低いだけでなく、ユニポーラ素子であるためにスイッチング損失も小さいためである。このようにして、前記実施の形態1〜8における接合FETは絶縁基板上に実装されている。このとき、前記実施の形態1〜8における接合FETは電流密度が500A/cm程度と大きく、そのまま置き換えると発熱の問題で不具合が生じるため、電流密度を少し落とした400A/cm程度の接合FETを使用している。
【0105】
図33は、前記実施の形態1〜8における接合FETJFETにゲートドライバ回路を接続した例である。図33に示すように、正電源と負電源の間にトランジスタTr1とトランジスタTr2が直列に接続されており、トランジスタTr1とトランジスタTr2の間の出力端子が抵抗Rを介して、前記実施の形態1〜8における接合FETJFETのゲート電極と接続されている。そして、前記実施の形態1〜8における接合FETJFETと逆並列にフリーホイールダイオードFDが接続されている。前記実施の形態1〜8における接合FETJFETは、しきい値電圧が1V程度と低いため、スイッチング速度のスピードアップと誤動作の防止を図るため、正負の電源を使用している。ただし、小電流でノイズが小さい場合などにおいては正電源を1つだけ用いる構成でもよい。
【0106】
図34は、前記実施の形態1〜8における接合FETを3相インバータに適用した例である。図34において、接合FETGP1〜GP3、GN1〜GN3が前記実施の形態1〜8における接合FETを使用している。具体的には、1相目においては、端子P1と端子N1の間に接合FETGP1と接合FETGN1が直列に接続されている。さらに、2相目においても、端子P2と端子N2の間に接合FETGP2と接合FETGN2が直列に接続されている。同様に、3相目においても、端子P3と端子N3の間に接合FETGP3と接合FETGN3が直列に接続されている。
【0107】
この図34に示す3相インバータは、600V系で使用されているSi−IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を前記実施の形態1〜8における接合FETに置き換えているものである。これにより、3相インバータにおいて、前記実施の形態1〜8における接合FETはオン抵抗が低いため、導通損失を低減することができ、さらに、ユニポーラ素子であることからスイッチング損失も低減することができる。この結果、Si−IGBTを前記実施の形態1〜8における接合FETに置き換えることにより、3相インバータの損失をトータルで約40%低減することができた。すでに述べたように、本実施の形態9では、電流密度を少し落とした接合FETを使用しているため、今後、実装技術や冷却技術が整備されれば、さらに、回路損失を低減することが可能となる。
【0108】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0109】
本発明は、横チャネル型の接合FETなど、前記実施の形態1〜8以外のあらゆる接合FETに適用することができる。さらに、前記実施の形態1〜8では、すべて、炭化シリコンを基板材料とする例について説明したが、これに限らず、例えば、窒化ガリウムなどのワイドバンドギャップ半導体材料にすべて適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体チップの構成を示す平面図である。
【図2】本発明者が検討した比較例において、接合FETの構成を示す断面図である。
【図3】図2のA−A´線に沿った不純物プロファイルを示すグラフである。
【図4】実施の形態1における接合FETの構成を示す断面図である。
【図5】図4のA−A´線に沿った不純物プロファイルを示すグラフである。
【図6】比較例において、ゲート領域とチャネル形成領域との間のバンド構造を示す模式図である。
【図7】比較例において、ドレインバイアスの影響を受けてバンド構造が変化する様子を示す模式図である。
【図8】実施の形態1において、ゲート領域とチャネル形成領域との間のバンド構造を示す模式図である。
【図9】実施の形態1において、ドレインバイアスの影響を受けてバンド構造が変化する様子を示す模式図である。
【図10】実施の形態1における半導体装置の平面レイアウト構成の一例を示す図である。
【図11】実施の形態1における半導体装置の平面レイアウト構成の一例を示す図である。
【図12】実施の形態1において、ライン長と相対オン抵抗との関係を示すグラフである。
【図13】実施の形態1において、ライン長とゲート遅延時間との関係を示すグラフである。
【図14】実施の形態1と比較例において、ドレイン電圧とドレイン電流密度との関係を示すグラフである。
【図15】チャネルピーク濃度とドレイン電流密度との関係を示すグラフである。
【図16】イオン注入の条件とドレイン電流密度との関係を示すグラフである。
【図17】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図18】図17に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図19】図18に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図20】図19に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図21】図20に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図22】実施の形態2における接合FETの構成を示す断面図である。
【図23】図22のA−A´線に沿った不純物プロファイルを示すグラフである。
【図24】実施の形態3における接合FETの構成を示す断面図である。
【図25】図24のA−A´線に沿った不純物プロファイルを示すグラフである。
【図26】実施の形態4における接合FETの構成を示す断面図である。
【図27】図26のA−A´線に沿った不純物プロファイルを示すグラフである。
【図28】実施の形態5における接合FETの構成を示す断面図である。
【図29】実施の形態6における接合FETの構成を示す断面図である。
【図30】実施の形態7における接合FETの構成を示す断面図である。
【図31】実施の形態8における接合FETの構成を示す断面図である。
【図32】接合FETを絶縁基板上に実装した様子を示す図である。
【図33】実施の形態1〜8における接合FETにゲートドライバ回路を接続した例を示す回路図である。
【図34】実施の形態1〜8における接合FETを使用した3相インバータを示す回路図である。
【符号の説明】
【0112】
1S 半導体基板
Act アクティブ領域
CH チャネル形成領域
CHP 半導体チップ
D ダイオード
DTE ドレイン端子
DE ドレイン電極
EPI エピタキシャル層
FD フリーホイールダイオード
GN1〜GN3 接合FET
GP1〜GP3 接合FET
GP ゲートパッド
GR ゲート領域
GTE ゲート端子
HM ハードマスク
IL 絶縁膜
JFET 接合FET
N1〜N3 端子
NR n型半導体領域
P1〜P3 端子
PR ゲート引き出し領域
R 抵抗
S 絶縁基板
SE ソース電極
SP ソースパッド
SR ソース領域
STE ソース端子
TE ターミネーション領域
TR トレンチ
Tr1 トランジスタ
Tr2 トランジスタ
Va エネルギー障壁
Vb エネルギー障壁
Vc エネルギー障壁
X1 曲線
X2 曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ドレイン層となる第1導電型の半導体基板と、
(b)前記半導体基板上に形成された第1導電型のエピタキシャル層と、
(c)前記エピタキシャル層の表面から内部に達するように形成された複数のトレンチと、
(d)隣り合うトレンチに挟まれた前記エピタキシャル層の表面領域に形成された第1導電型のソース層と、
(e)前記複数のトレンチのそれぞれの側壁および底部に接するように前記エピタキシャル層内に形成された第2導電型のゲート層と、
(f)隣り合う前記ゲート層間の前記エピタキシャル層内に形成された第1導電型のチャネル形成領域と、
(g)前記半導体基板の裏面に形成されたドレイン電極と、
(h)前記ソース層と接続するように形成されたソース電極と、
(i)前記ゲート層と接続するように形成されたゲート電極とを備え、
前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、前記チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度および前記エピタキシャル層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度のピークが、前記エピタキシャル層の不純物濃度の2倍以上5倍以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置であって、
前記エピタキシャル層の不純物濃度は、前記半導体基板の不純物濃度よりも低いことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記半導体基板の基板材料は炭化シリコンであることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体装置であって、
前記第1導電型はn型であり、前記第2導電型はp型であることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置であって、
前記ゲート層に導入されている不純物はアルミニウムまたはホウ素であり、
前記チャネル形成領域に導入されている不純物は窒素またはリンであることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記半導体基板の基板材料は窒化ガリウムであることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
(a)ドレイン層となる第1導電型の半導体基板と、
(b)前記半導体基板上に形成された第1導電型のエピタキシャル層と、
(c)前記エピタキシャル層の表面から内部に達するように形成された複数のトレンチと、
(d)前記複数のトレンチに挟まれた前記エピタキシャル層の表面領域に形成された第1導電型のソース層と、
(e)前記複数のトレンチのそれぞれの底部に接するように前記エピタキシャル層内に形成された第2導電型のゲート層と、
(f)隣り合う前記ゲート層間の前記エピタキシャル層内に形成された第1導電型のチャネル形成領域と、
(g)前記半導体基板の裏面に形成されたドレイン電極と、
(h)前記ソース層と接続するように形成されたソース電極と、
(i)前記ゲート層と接続するように形成されたゲート電極とを備え、
前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、前記チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度および前記エピタキシャル層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項8記載の半導体装置であって、
前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度のピークが、前記エピタキシャル層の不純物濃度の2倍以上5倍以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
(a)ドレイン層となる第1導電型の半導体基板と、
(b)前記半導体基板上に形成された第1導電型のエピタキシャル層と、
(c)前記エピタキシャル層の表面領域に一定間隔をおいて形成された第1導電型のソース層と、
(d)隣り合う前記ソース層の間の前記エピタキシャル層内に形成され、前記ソース層よりも深い第2導電型のゲート層と、
(e)隣り合う前記ゲート層間の前記エピタキシャル層内に形成された第1導電型のチャネル形成領域と、
(f)前記半導体基板の裏面に形成されたドレイン電極と、
(g)前記ソース層と接続するように形成されたソース電極と、
(h)前記ゲート層と接続するように形成されたゲート電極とを備え、
前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、前記チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度および前記エピタキシャル層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項10記載の半導体装置であって、
前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度のピークが、前記エピタキシャル層の不純物濃度の2倍以上5倍以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
(a)ドレイン層となる第1導電型の半導体基板を用意する工程と、
(b)前記半導体基板上に第1導電型のエピタキシャル層を形成する工程と、
(c)前記エピタキシャル層の表面領域に第1導電型のソース層を形成する工程と、
(d)前記エピタキシャル層の表面から内部に達する複数のトレンチを形成する工程と、
(e)前記複数のトレンチのそれぞれの側壁および底面に接する前記エピタキシャル層内に第2導電型のゲート層を形成する工程と、
(f)隣り合う前記ゲート層に挟まれた第1導電型よりなるチャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する前記チャネル形成領域側の接合領域と、前記pn接合を形成する前記ゲート層側の接合領域とに第1導電型の不純物を導入する工程と、
(g)前記ソース層と接続するソース電極を形成する工程と、
(h)前記ゲート層と接続するゲート電極を形成する工程と、
(i)前記半導体基板の裏面に前記ドレイン層と接続するドレイン電極を形成する工程とを備え、
前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、前記チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度および前記エピタキシャル層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(d)工程後に前記(e)工程を実施し、
前記(e)工程は、前記複数のトレンチの底面に第2導電型の不純物を垂直イオン注入し、かつ、前記複数のトレンチの側壁に第2導電型の不純物を斜めイオン注入することにより、前記ゲート層を形成し、
前記(e)工程後に前記(f)工程を実施し、
前記(f)工程は、隣り合う前記ゲート層に挟まれた第1導電型よりなる前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する前記チャネル形成領域側の接合領域と、前記pn接合を形成する前記ゲート層側の接合領域とに第1導電型の不純物を斜めイオン注入することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
(a)ドレイン層となる第1導電型の半導体基板を用意する工程と、
(b)前記半導体基板上に第1導電型のエピタキシャル層を形成する工程と、
(c)前記エピタキシャル層の表面領域に第1導電型のソース層を形成する工程と、
(d)前記エピタキシャル層の表面から前記ソース層の深さよりも深い領域に達する第2導電型のゲート層を一定間隔だけ離間して形成する工程と、
(e)隣り合う前記ゲート層に挟まれた第1導電型よりなるチャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する前記チャネル形成領域側の接合領域と、前記pn接合を形成する前記ゲート層側の接合領域に第1導電型の不純物を導入する工程と、
(g)前記ソース層と接続するソース電極を形成する工程と、
(h)前記ゲート層と接続するゲート電極を形成する工程と、
(i)前記半導体基板の裏面に前記ドレイン層と接続するドレイン電極を形成する工程とを備え、
前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、前記チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度および前記エピタキシャル層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(d)工程は、第2導電型の不純物を垂直イオン注入することにより前記ゲート層を形成し、
前記(e)工程は、隣り合う前記ゲート層に挟まれた第1導電型よりなるチャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する前記チャネル形成領域側の接合領域と、前記pn接合を形成する前記ゲート層側の接合領域とに第1導電型の不純物を斜めイオン注入することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
(a)ドレイン層となる第1導電型の半導体基板を用意する工程と、
(b)前記半導体基板上に第1導電型のエピタキシャル層を形成する工程と、
(c)前記エピタキシャル層の表面から内部に達する複数のトレンチを形成する工程と、
(d)前記複数のトレンチのそれぞれの側壁に接する前記エピタキシャル層内に第1導電型の不純物を導入する工程と、
(e)前記エピタキシャル層の表面領域に第1導電型のソース層を形成する工程と、
(f)前記複数のトレンチのそれぞれの内壁にエピタキシャル成長法により、第2導電型のゲート層を形成する工程と、
(g)前記ソース層と接続するソース電極を形成する工程と、
(h)前記ゲート層と接続するゲート電極を形成する工程と、
(i)前記半導体基板の裏面に前記ドレイン層と接続するドレイン電極を形成する工程とを備え、
隣り合う前記ゲート層に挟まれた前記エピタキシャル層内に第1導電型よりなるチャネル形成領域が形成され、前記チャネル形成領域のうち前記ゲート層とpn接合を形成する前記チャネル形成領域側の接合領域と、前記pn接合を形成する前記ゲート層側の接合領域とに前記(d)工程における第1導電型の不純物が導入されており、
前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、前記チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度および前記エピタキシャル層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
(a)ドレイン層となる第1導電型の半導体基板を用意する工程と、
(b)前記半導体基板上に第1導電型のエピタキシャル層を形成する工程と、
(c)前記エピタキシャル層の表面から内部に達する複数のトレンチを形成する工程と、
(d)前記エピタキシャル層の表面領域に第1導電型のソース層を形成する工程と、
(e)前記複数のトレンチのそれぞれの内壁にエピタキシャル成長法により、前記エピタキシャル層よりも不純物濃度の高い第1導電型の第1半導体領域を形成する工程と、
(f)前記複数のトレンチ内のそれぞれの内壁に形成された前記第1半導体領域上にエピタキシャル成長法により、第2導電型のゲート層を形成する工程と、
(g)前記ソース層と接続するソース電極を形成する工程と、
(h)前記ゲート層と接続するゲート電極を形成する工程と、
(i)前記半導体基板の裏面に前記ドレイン層と接続するドレイン電極を形成する工程とを備え、
隣り合う前記ゲート層に挟まれた前記エピタキシャル層内に第1導電型よりなるチャネル形成領域が形成され、前記チャネル形成領域のうち前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域に前記(e)工程における第1導電型の前記第1半導体領域が形成されおり、
前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、前記チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度および前記エピタキシャル層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
(a)ドレイン層となる第1導電型の半導体基板を用意する工程と、
(b)前記半導体基板上に第1導電型のエピタキシャル層を形成する工程と、
(c)前記エピタキシャル層の表面領域に第1導電型のソース層を形成する工程と、
(d)前記エピタキシャル層内に第1導電型の不純物を垂直イオン注入法により導入する工程と、
(e)前記エピタキシャル層の表面から内部に達する複数のトレンチを形成する工程と、
(f)前記複数のトレンチのそれぞれの側壁および底面に接する前記エピタキシャル層内に第2導電型のゲート層を形成する工程と、
(g)前記ソース層と接続するソース電極を形成する工程と、
(h)前記ゲート層と接続するゲート電極を形成する工程と、
(i)前記半導体基板の裏面に前記ドレイン層と接続するドレイン電極を形成する工程とを備え、
隣り合う前記ゲート層に挟まれた第1導電型よりなるチャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する前記チャネル形成領域側の接合領域と、前記pn接合を形成する前記ゲート層側の接合領域とに、前記(d)工程により第1導電型の不純物が導入されており、
前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、前記チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度および前記エピタキシャル層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
(a)ドレイン層となる第1導電型の半導体基板を用意する工程と、
(b)前記半導体基板上に第1導電型のエピタキシャル層を形成する工程と、
(c)前記エピタキシャル層の表面領域に第1導電型のソース層を形成する工程と、
(d)前記エピタキシャル層の表面から前記ソース層の深さよりも深い領域に達する第2導電型のゲート層を一定間隔だけ離間して形成する工程と、
(e)前記エピタキシャル層内に第1導電型の不純物を垂直イオン注入法により導入する工程と、
(f)前記ソース層と接続するソース電極を形成する工程と、
(g)前記ゲート層と接続するゲート電極を形成する工程と、
(h)前記半導体基板の裏面に前記ドレイン層と接続するドレイン電極を形成する工程とを備え、
隣り合う前記ゲート層に挟まれた第1導電型よりなるチャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する前記チャネル形成領域側の接合領域と、前記pn接合を形成する前記ゲート層側の接合領域に、前記(e)工程による第1導電型の不純物が導入されており、
前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、前記チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度および前記エピタキシャル層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
(a)ドレイン層となる第1導電型の半導体基板を用意する工程と、
(b)前記半導体基板上に第1導電型のエピタキシャル層を形成する工程と、
(c)前記エピタキシャル層の表面領域に第1導電型のソース層を形成する工程と、
(d)前記エピタキシャル層の表面から内部に達する複数のトレンチを形成する工程と、
(e)前記複数のトレンチのそれぞれの底面に接する前記エピタキシャル層内に第2導電型のゲート層を形成する工程と、
(f)隣り合う前記ゲート層に挟まれた第1導電型よりなるチャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する前記チャネル形成領域側の接合領域と、前記pn接合を形成する前記ゲート層側の接合領域とに第1導電型の不純物を斜めイオン注入法により導入する工程と、
(g)前記ソース層と接続するソース電極を形成する工程と、
(h)前記ゲート層と接続するゲート電極を形成する工程と、
(i)前記半導体基板の裏面に前記ドレイン層と接続するドレイン電極を形成する工程とを備え、
前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、前記チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度および前記エピタキシャル層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項21】
(a)ドレイン層となる第1導電型の半導体基板を用意する工程と、
(b)前記半導体基板上に第1導電型のエピタキシャル層を形成する工程と、
(c)前記エピタキシャル層の表面領域に第1導電型のソース層を形成する工程と、
(d)前記エピタキシャル層内に第1導電型の不純物を垂直イオン注入法により導入する工程と、
(e)前記エピタキシャル層の表面から内部に達する複数のトレンチを形成する工程と、
(f)前記複数のトレンチのそれぞれの底面に接する前記エピタキシャル層内に第2導電型のゲート層を形成する工程と、
(g)前記ソース層と接続するソース電極を形成する工程と、
(h)前記ゲート層と接続するゲート電極を形成する工程と、
(i)前記半導体基板の裏面に前記ドレイン層と接続するドレイン電極を形成する工程とを備え、
隣り合う前記ゲート層に挟まれた第1導電型よりなるチャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する前記チャネル形成領域側の接合領域と、前記pn接合を形成する前記ゲート層側の接合領域とに、前記(d)工程による第1導電型の不純物が導入されており、
前記チャネル形成領域のうち、前記ゲート層とpn接合を形成する接合領域の不純物濃度が、前記チャネル形成領域の中央領域の不純物濃度および前記エピタキシャル層の不純物濃度よりも高いことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2010−147405(P2010−147405A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325724(P2008−325724)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】