半導体装置およびその製造方法
【課題】半導体チップと外部基板を接合する接合樹脂による接合応力を均一化し、半導体チップのトランジスタ特性変動が生じない半導体装置を提供する。
【解決手段】フリップチップ組立において、半導体チップ1と外部基板13の間に接合樹脂17を注入して接合させる際、本接合樹脂を2種類にわけ、半導体チップ1の中心部分には低応力接合樹脂23、周辺部分には高応力接合樹脂21を注入したり、半導体チップ1の中心部分にはSiN等をはじめとした第1層表面保護膜とポリイミドやPBO等をはじめとした第2層表面保護膜の2層構造、周辺部分にはSiN等をはじめとした第1層表面保護膜の1層構造とすることにより、半導体チップ1内のトランジスタ特性変動を抑制する。
【解決手段】フリップチップ組立において、半導体チップ1と外部基板13の間に接合樹脂17を注入して接合させる際、本接合樹脂を2種類にわけ、半導体チップ1の中心部分には低応力接合樹脂23、周辺部分には高応力接合樹脂21を注入したり、半導体チップ1の中心部分にはSiN等をはじめとした第1層表面保護膜とポリイミドやPBO等をはじめとした第2層表面保護膜の2層構造、周辺部分にはSiN等をはじめとした第1層表面保護膜の1層構造とすることにより、半導体チップ1内のトランジスタ特性変動を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の構造、特に、基板内部に半導体回路を有する半導体チップが外部基板に実装されてなる半導体装置の構造およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置として、内部に例えばトランジスタ等の半導体回路が形成され、表面に例えばバンプ等の突起電極が形成されてなる半導体チップが、例えばパッケージ基板等の外部基板に突起電極を介して実装されてなる構造のものがある。
【0003】
図15は従来の半導体チップ901の断面構造を示したものである。
半導体チップ901は、本図に示すように、SiやGaAsなどの半導体ウェハ903の中に、後述の半導体装置を構成するトランジスタ905を備える。
【0004】
この半導体チップ901の表面には外部装置との電気的接合をとるための電極パッド907が設けられている。通常、この電極パッド907はAlなどで形成されている。なお、トランジスタ905は、電極パッド907の下方以外の部分にも形成されている。
【0005】
半導体チップ901の表面であって電極パッド907以外の部分は表面保護膜909で覆われている。通常、この表面保護膜909はSiNなどで形成されている。電極パッド907の上部(上面)には、外部装置、具体的にはパッケージ基板をはじめとする外部基板と電気的接合を取るためのバンプ911が形成される。通常、このバンプ911にははんだ、Au、Cuなどが用いられ、通常、めっき方式などで形成される。
【0006】
図16は図15で示した半導体チップ901を外部基板913に接合させた場合の断面構造を示したものである。
通常、複数のチップが形成された半導体ウェハをダイシングなどで個片化して半導体チップ901とし、その後、半導体チップ901上に形成したバンプ911を、外部装置の外部基板913上の外部電極915に圧着させて電気的な接合を行う。
【0007】
そして、半導体チップ901と外部基板913との間に接合樹脂917を注入して接合が完了し、半導体装置919が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−135308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の半導体装置919の構造では、半導体チップ901と外部基板913とを接合する接合樹脂917が半導体チップ901内のトランジスタ905に悪影響を与えるという問題がある。
【0010】
図17は、図16で示したように、従来の構造である半導体チップ901をパッケージ基板である外部基板913に接合させた場合、接合樹脂917による接合応力がトランジスタ905にどのように作用するかを示した図である。
【0011】
本図に示すように、接合樹脂917の熱収縮による応力が半導体チップ901を外部基板913側へと引き上げ方向に作用し、結果的に、トランジスタ905に対して変形させようとする応力が作用する。
【0012】
特に、このような接合に用いられる一般的な接合樹脂917の特性により、接合樹脂917による半導体チップ901に作用する応力のうち、半導体チップ901の周縁に近い外周部分の応力921が、外周部分の内側に位置する内周部分の応力923よりも小さくなってしまう現象が発生する。なお、外周部分に作用する応力を外周部分応力921と、内周部分に作用する応力を内周部分応力923とそれぞれする。
【0013】
これにより、半導体チップ901の外周部分に位置するトランジスタ905aと、内周部分に位置するトランジスタ905bとで、トランジスタ特性が大きく異なり、最終的に回路異常を引き起こす恐れがある。
【0014】
なお、ここでいう「トランジスタ特性」とは、例えば、トランジスタのVt(閾値電圧値)やIdsat(飽和電流値)のことを指し、また、「回路異常」とは、例えば、回路で演算を実施した場合に期待した出力値が出ないようなことを指す。
【0015】
以上の現象を、図18を用いて詳細に説明する。
図18は図17で示した接合樹脂917による内周部分応力923と外周部分応力921とが半導体チップ901内のトランジスタ905にどのように作用するかを示したグラフ図である。
【0016】
なお、縦軸がトランジスタの変動率をパーセンテージで示したもの、横軸が半導体チップの位置を示したものである。また、トランジスタの変動率は組み立てを実施する前を基準とし、Idsat(飽和電流値)の変動率である。
【0017】
通常、図18に示すように、内周部分応力923が外周部分応力921よりも非常に大きい為、半導体チップ901の内周部分にあるトランジスタ905aはNchであればマイナス方向、Pchであればプラス方向に大きく変動する。逆に、外周部分応力921は内周部分応力923よりも小さい為、外周部分にあるトランジスタ905aは大きく変動しない。
【0018】
この結果、半導体チップ901の内周部分にあるトランジスタ905bのトランジスタ特性と、外周部分にあるトランジスタ905aのトランジスタ特性とに大きな差異が発生してしまう現象が発生する。
【0019】
本発明は上記問題点に鑑み、半導体チップと外部基板を接合させた場合に発生する接合樹脂による応力のばらつきにより、半導体チップ内の半導体回路の特性差が大きく変動する等の不具合の生じ難い半導体装置および半導体装置の製造方法を提供するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決する為に、本発明に係る半導体装置は、半導体チップと、前記半導体チップの第1の主面に形成された第1の電極パッドと、外部基板と、前記外部基板の第1の主面に形成された第2の電極パッドと、前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとを電気的に接合する突起電極と、前記半導体チップと前記外部基板との間の隙間に充填されて前記半導体チップと前記外部基板とを接合させる接合材料とを備え、前記接合材料は、前記半導体チップの中心部分に形成された第1の接合材料と、前記半導体チップの外周部分に形成された第2の接合材料との少なくとも2種類があり、前記半導体チップに作用する前記接合材料による引張応力は、前記第2の接合材料の方が前記第1の接合材料よりも高いことを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、第1の主面に第1の電極パッドを有する半導体チップを用意する工程と、第1の主面に第2の電極パッドを有する外部基板を用意する工程と、前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとを突起電極により接合する工程と、前記半導体チップと前記外部基板との間の隙間に接合材料を注入して前記半導体チップと前記外部基板とを前記接合材料で接合させる工程とを備え、前記接合材料で接合させる工程は、前記半導体チップの中心部分に第1の接合材料を注入する工程と、前記半導体チップの外周部分に、前記接合材料によって前記半導体チップに作用する引張応力が前記第1の接合材料よって作用する引張応力よりも高くなる第2の接合材料を注入する工程とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
上記の半導体装置および製造方法では、接合材料を少なくとも2種以上用いることで、半導体チップの内周部分応力と外周部分応力とを均一にできる。このことで半導体チップと外部基板とを接合させた場合に発生する接合樹脂による接合応力のばらつきにより、半導体装置(半導体チップ)内の不具合をなくすことができる。
【0023】
また、前記第1の電極パッドは、複数あり、前記第1の主面に行列状に形成されていることを特徴とし、あるいは、前記第2の接合材料は前記半導体チップのコーナー部に形成されていることを特徴としている。さらには、前記第2の接合材料は前記第1の電極パッドの内、最外周の角に配置されたパッドを含む部分に形成されていることを特徴とし、前記第2の接合材料は前記第1の電極パッドの内、最外周に配置されたパッドを含む部分に形成されていることを特徴としている。
【0024】
また、前記半導体チップの前記第1の主面を、前記第1の電極パッド上に開口を有する状態で覆う第1の保護膜が形成されており、前記中心部分内における前記第1の保護膜上に、前記第1の電極パッド上に開口を有するように第2の保護膜が形成されていることを特徴とし、あるいは、前記第2の保護膜は前記半導体チップのコーナー部を除いた部分に形成されていることを特徴としている。さらには、前記第2の保護膜は前記第1の電極パッドの内、最外周の角に配置されたパッドを除いた部分に形成されていることを特徴とし、前記第2の保護膜は前記第1の電極パッドの内、最外周に配置されたパッドを除いた部分に形成されていることを特徴としている。
【0025】
また、半導体装置の製造方法では、前記半導体チップは、平面視多角形状をし、前記第1の接合材料を注入する工程は、接合材料注入ノズルを前記半導体チップの1辺に沿って当該辺の両端間を移動させて注入することを特徴とし、あるいは、前記半導体チップは、平面視多角形状をし、前記第2の接合材料を注入する工程は、接合材料注入ノズルを前記半導体チップの各辺に沿って一周させて注入することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】半導体装置の断面図である。
【図2】接合樹脂の注入についての説明図である。
【図3】図1で示した半導体チップを外部基板に接合させた半導体装置の場合、接合応力が半導体チップ内のトランジスタにどのように働くかを示した図である。
【図4】図3で示した低応力接合樹脂および高応力接合樹脂による半導体チップの内周部分応力および外周部分応力が半導体チップ内のトランジスタにどのように働くかを示したグラフ図である。
【図5】一般的な半導体チップを、パッケージ基板をはじめとする外部基板と接合させた場合の製造方法のフロー図である。
【図6】本実施の形態に係る半導体装置における低応力接合樹脂と高応力接合樹脂とを注入する方法について詳細に示したフロー図である。
【図7】第2の実施の形態に係る半導体装置について詳細に示したものである。
【図8】第1層表面保護膜と第2層表面保護膜の形成概要の例について説明する図である。
【図9】第1層表面保護膜と第2層表面保護膜の形成概要の例について説明する図である。
【図10】図7で示した半導体チップを外部基板に接合させた半導体装置の場合、接合応力が半導体チップ内のトランジスタにどのように働くかを示した図である。
【図11】図10で示した第1層表面保護膜と第2層表面保護膜による半導体チップの内周部分応力および外周部分応力が半導体チップ内のトランジスタにどのように働くかを示したグラフ図である。
【図12】第3の実施の形態に係る半導体装置について詳細に示したものである。
【図13】図12で示した半導体チップを外部基板と接合させた半導体装置の場合、接合応力がトランジスタにどのように働くかを示した図である。
【図14】図13で示した構造により、半導体チップの内周部分応力と外周部分応力が半導体チップ内のトランジスタにどのように働くかを示したグラフ図である。
【図15】従来の半導体チップの断面構造を示したものである。
【図16】図15で示した半導体チップを外部基板に接合させた場合の断面構造を示した図である。
【図17】図16で示した従来の構造である半導体チップを、パッケージ基板をはじめとする外部基板と接合させた場合、接合樹脂による接合応力がトランジスタにどのように作用するかを示した図である。
【図18】図17で示した接合樹脂による内周部分応力と外周部分応力とが半導体チップ内のトランジスタにどのように作用するかを示したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態について半導体装置の構造、特に電極パッドの下部以外に関わらず半導体チップのすべてにトランジスタ等で構成される半導体回路などの形成を行う半導体装置の構造およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0028】
なお、本発明で使用している、材料、数値は、好ましい例を実施の形態で例示しているだけであり、この形態に限定されることはない。また、本発明の技術的思想の範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。また、他の実施の形態との組み合わせは、矛盾が生じない範囲で可能である。
<第1の実施の形態>
図1〜図4は、本発明に係る第1の実施形態の半導体装置の構造について詳細に示したものである。図1は半導体装置19の断面図であり、図2は接合樹脂17の注入についての説明図である。
1.構成
半導体装置は、半導体チップがバンプを介して外部基板に実装されてなる。
【0029】
つまり、半導体装置19は、半導体チップ1と、半導体チップ1の第1の主面である表面に形成された第1の電極パッド7と、外部基板13と、外部基板13の第1の主面である表面に形成された第2の電極パッドである外部電極15と、第1の電極パッド7と第2の電極パッドである外部電極15とを電気的に接合する突起電極であるバンプ11と、半導体チップ1と外部基板13との間の隙間に充填されて半導体チップ1と外部基板13とを接合させる接合材料である接合樹脂17とを備え、接合樹脂17は、半導体チップ1の中心部分に形成された第1の接合材料である低応力接合樹脂23と、半導体チップ1の外周部分に形成された第2の接合材料である高応力接合樹脂21との少なくとも2種類があり、前記半導体チップ1に作用する前記接合樹脂17による引張応力は、高応力接合樹脂21の方が低応力接合樹脂23よりも高い構成をしている。
【0030】
半導体チップ1は、図1に示すように、基板3内に形成された半導体回路(5)を有する。半導体チップ1は、半導体プロセスを経て形成され、基板3として、通常、SiやGaAsなどの半導体ウェハが用いられる。なお、本実施の形態では、トランジスタ5を半導体回路としている。
【0031】
半導体チップ1の表面には、電極パッド7と表面保護膜9とが形成されている。ここでいう表面とは、外部装置である外部基板13と接合される側の面である。なお、外部基板13の表面は、半導体チップ1と接合される側の面である。
【0032】
電極パッド7は、外部装置との電気的接合をとるためのものである。電極パッド3は、例えばAlなどで形成され、例えば蒸着方式で形成される。なお、電極パッド3は、図2に示すように、例えば平面視(表面と直交する方向から当該表面を見たときである。)円形状をし、例えば半導体チップ12上にマトリクス状に配置している。また、トランジスタ5は、複数あり、電極パッド7の下方および下方以外にも形成されている。
【0033】
表面保護膜9は、半導体チップ1の表面であって電極パッド7の中央部分を除く部分を覆う。つまり、電極パット7は、その周縁を含む周辺部分7aが表面保護膜9に覆われ、周辺部分の内側に位置する内側部分7bが露出している。表面保護膜9は、例えばSiNなどで形成され、例えばプラズマCVD方式により形成されている。
【0034】
電極パッド7の上部(表面)にはバンプ11が形成されている。バンプ11は、半導体チップ1と外部装置12とを電気的に接合するためのものである。具体的には、パッケージ基板をはじめとする外部基板13とで電気的接合を取る。なお、バンプ11は例えばはんだ、Au、Cuなどが用いられ、例えばめっき方式などで形成される。
【0035】
外部基板13は、その表面(図1では下面であり、上述した通り、半導体チップ1との対向面である。)には外部電極15が形成されている。
半導体チップ1は、チップ表面に形成したバンプ11を、外部装置12の外部基板13上の外部電極15に圧着させることで、外部基板13に対して電気的および機械的に接合される。
【0036】
半導体チップ1が外部基板13に接合された状態で、半導体チップ1と外部基板13との間に接合樹脂17を注入して、半導体チップ1と外部基板13との接合が完了し、半導体装置19が完成する。
【0037】
接合樹脂17は、複数種類ある。本実施の形態では、接合樹脂17は2種類ある。具体的には、半導体チップ1と外部基板13との間であって、半導体チップ1の周縁および周縁に近い部分(この部分を「外周部分」という。)には、半導体チップ1を外部電極13側へと引き上げる応力が高くなるような樹脂(この接合樹脂を「高応力接合樹脂」という。)21が充填されている。
【0038】
半導体チップ1と外部基板13との間であって、半導体チップ1の外周部分の内側に位置する部分(この部分を「内周部分」という。)には、半導体チップ1を外部電極13側へと引き上げる応力が低くなるような樹脂(この接合樹脂を「低応力接合樹脂」という。)23が充填されている。
【0039】
このように、本実施の形態に係る半導体装置19は、半導体ウェハをダイシングなどで個片化することで得られる半導体チップ1を、その半導体チップ1上に形成したバンプ11を利用して外部基板13の外部電極15に圧着させて電気的・機械的な接合をとり、半導体チップ1と外部基板13との間に接合樹脂17を注入して接合させる構造になっている。
【0040】
本実施の形態に係る半導体装置19の特徴は、接合樹脂17を、高応力接合樹脂21と低応力接合樹脂23との2種類にわけ、半導体チップ1の中心部分(内周部分)には低応力接合樹脂23を、外周部分には高応力接合樹脂21をそれぞれ用いることである。
【0041】
なお、高応力接合樹脂21と低応力接合樹脂23とにおける「高低」は、互いの接合樹脂間であり、高応力接合樹脂21が低応力接合樹脂23と比較して高応力であれば良い。
2.接合樹脂の注入について
低応力接合樹脂23、高応力接合樹脂21の注入概要の例について説明する。
(1)実施例1
半導体チップ1の表面には複数の電極パッド7がマトリクス状に設けられている。図2は、半導体チップ1の表側を外部基板13側から見た図であって、外部基板13、バンプ11の表示を省略した図である。
【0042】
なお、電極パッド7と接合樹脂17との位置関係および半導体チップ1の周縁(輪郭)が分かるように、これらを実線で記載している。また、図中の複数の円環は、円環の内周より内側が電極パッド7(7b)であり、外周の線は表面保護膜9のうち、電極パッド7の周辺部分7aを覆うことでできる段差を示している。
【0043】
図2の(a)に示すように、マトリクス状に設けられた複数の電極パッド7のうち、最外周の4隅の電極パッド7cより内側に位置する電極パッド7dを含む部分については低応力接合樹脂23で接合させ、低応力接合樹脂23の外側部分については高応力接合樹脂21で接合させている。
【0044】
ここでは、半導体チップ1の平面視形状は正方形状をし、平面視における正方形の内接円が、高応力接合樹脂21と低応力接合樹脂23との境界線となっている。
(2)実施例2
図2の(b)に示すように、マトリクス状に設けられた複数の電極パッド7のうち、最外周の電極パッド7eより内側に位置する電極パッド7fを含む部分については低応力接合樹脂23で接合させ、低応力接合樹脂23の外側部分については高応力接合樹脂21で接合させている。
【0045】
ここでは、最外周に位置する複数の電極パッド7eの内側よりも小さく、最外周に位置する電極パッド7eの1つ内側の電極パッド7fの外側よりも大きな正方形(角が円弧状をしているが、全体の形状が正方形をしている。)が、高応力接合樹脂21と低応力接合樹脂23との境界線となっている。
3.半導体チップ内の応力について
上記図1から図2に示した半導体装置の構造にする意味合いや効果について以下に詳しく説明する。
【0046】
図3は、図1で示した半導体チップ1を外部基板13に接合させた半導体装置19の場合、接合応力が半導体チップ1内、具体的には半導体チップ1内のトランジスタ5にどのように働くかを示した図である。
【0047】
従来は、図17および図18に示すように、1種類の接合樹脂917を用いていたため、当該接合樹脂は単一な応力特性を有することとなり、半導体チップ901において内周部分応力923が外周部分応力921より大きくなってしまう現象が発生していた。
【0048】
しかしながら、本実施の形態では、半導体チップ1の内周部分には低応力接合樹脂23を、外周部分には高応力接合樹脂21を注入している為、半導体チップ1の内周部分に作用する応力(この応力を、「内周部分応力」という。)25と、外周部分に作用する応力(この応力を、「外周部分応力」という。)27とが均一になる(内周部分応力25と外周部分応力との差異が従来よりも小さくなる。)。このことで、半導体チップ1の外周部分に位置するトランジスタ5aのトランジスタ特性と、内周部分に位置するトランジスタ5bのトランジスタ特性とに大きな差異が発生せず、最終的に回路異常を引き起こす恐れが少なくなる。
【0049】
低応力接合樹脂23は、例えば、熱硬化性の低い樹脂、つまり、硬化時の温度が低い樹脂を利用することで、内周部分の応力を小さくできる。より具体的には、低応力接合樹脂23には、低温でも樹脂が軟化し易い性質を有する熱硬化性・熱可塑性樹脂、例えば架橋性の低い材料を使用した樹脂を用いることができる。
【0050】
逆に、高応力接合樹脂21は、例えば、熱硬化性の高い樹脂、つまり、硬化時の温度が高い樹脂を利用することができ、より具体的には、低温でも樹脂が軟化し難い性質を有する熱硬化性・熱可塑性樹脂、例えば架橋性の高い材料を使用した樹脂を用いることができる。
【0051】
以上の現象を、図4を用いて詳細に説明する。
図4は、図3で示した低応力接合樹脂23および高応力接合樹脂21による半導体チップ1の内周部分応力25および外周部分応力27が半導体チップ1内のトランジスタ5にどのように働くかを示したグラフ図である。なお、縦軸がトランジスタ変動率をパーセンテージで示したもの、横軸が半導体チップ1の位置を示したものである。
【0052】
図4に示すように内周部分応力25は内周部分に低応力接合樹脂23を使用している為、トランジスタ5bに作用する応力は非常に小さくなり、内周部分にあるトランジスタ5bのトランジスタ特性は大きく変動しない。逆に外周部分応力27は外周部分に高応力接合樹脂21を使用しているが、もとより外周部分は応力が働き難い為、トランジスタ5aに作用する応力は非常に小さくなり、外周部分にあるトランジスタ5aのトランジスタ特性は大きく変動しない。
【0053】
この結果、半導体チップ1の内周部分にあるトランジスタ5bのトランジスタ特性と、半導体チップ1の外周部分にあるトランジスタ5aのトランジスタ特性とに差異が生じ難くなり、半導体チップ901の内周部分と外周部分とでトランジスタ特性に大きな差異が発生してしまう従来の問題点の改善が可能となる。
【0054】
また、図2の(a)に示す一例では最外周の4角の電極パッド7cよりも内側部分(電極パッド7dが存在する部分)については低応力接合樹脂23で、内側部分よりも外側の外側部分(電極パッド7cが存在する部分)については高応力接合樹脂21でそれぞれ半導体チップ1と外部基板13とを接合させている。
【0055】
これは、最外周に設けられ且つ正方形状の半導体チップ1の4隅に位置する電極パッド7cの周辺部分は応力差異が激しい部分である為、4角の電極パッド7cよりも内側で低応力接合樹脂23と高応力接合樹脂21の境界としている。
【0056】
また図2の(b)に示す一例では最外周の電極パッド7eよりも内側部分(電極パッド7fが存在する部分)については低応力接合樹脂23で、内側部分よりも外側の外側部分(電極パッド7eが存在する部分)については高応力接合樹脂21でそれぞれ半導体チップ1と外部基板13とを接合させている。
【0057】
これも、上記と同様に最外周に設けられた電極パッド7eの周辺部分は応力差異が激しい部分である為、最外周の電極パッド7eよりも内側で低応力接合樹脂23と高応力接合樹脂21の境界としている。
4.製造方法
次に本実施の形態に係る半導体装置19の製造方法について説明する。
【0058】
図5は一般的な半導体チップ901を、パッケージ基板をはじめとする外部基板913と接合させた半導体装置919の場合の製造方法のフロー図であり、図6は本実施の形態に係る半導体装置19に係る低応力接合樹脂23と高応力接合樹脂21とを注入する方法について詳細に示したフロー図である。
【0059】
図5の(a)に示すようにまずベークしたパッケージ基板である外部基板913に対して半導体チップ901を圧着させる、通称FCB(Flip Chip Bonding)工程を経る。
【0060】
その後、リフロー、洗浄、ベーク、プラズマ照射などの工程を経た後、図5の(b)に示すように接合樹脂注入ノズル925を用いて、半導体チップ901と外部基板913との間の隙間に接合樹脂917を注入する。その後、図5の(c)に示すように熱によるキュアを行い、接合樹脂917を硬化させて、半導体装置919が完成する。
【0061】
次に、実施の形態に係る半導体装置19の特徴である低応力接合樹脂23と高応力接合樹脂21との注入について説明する。
半導体装置19は、上記の、一般的な半導体チップ901を外部基板913と接合させた場合の製造方法のフロー図における図3の(b)以外は同じである。したがって、ここでは、図3の(b)で示した接合樹脂注入工程に相当する工程について、図6を用いて詳細に説明する。
【0062】
まず、図6の(a)に示すように半導体チップ1の方面(外部基板の表面と平行な方向)から半導体チップ1と外部基板13との間であって内部部分29に相当する空間に低応力接合樹脂23を注入する。
【0063】
その際、半導体チップ1と外部基板13との隙間であって内周部分29に相当する空間に低応力接合樹脂23が均一に注入されるよう、接合樹脂注入ノズル31を半導体チップ1の一辺側から半導体チップ1と外部基板13との間に挿入した後、高応力接合樹脂23を注入しながら半導体チップ1の前記一辺を左右(当該一辺の両端)方向に移動させて行う。
【0064】
具体的には、接合樹脂注入ノズル31を半導体チップ1の一辺側から半導体チップ1と外部基板13との間の隙間に挿入し、高応力接合樹脂23を注入しながら半導体チップ1の前記一辺を左右(当該一辺の両端)方向に移動させる注入移動工程と、接合樹脂注入ノズル31が左右方向の端に到達すると接合樹脂注入ノズル31を後退させる後退工程とを交互に繰り返して行う。
【0065】
なお、接合樹脂注入ノズル31の隙間への挿入を、半導体チップ1の一辺の半分に相当する分だけにして、この半分の高応力接合樹脂23の注入が完了した後、反対側の一辺からの接合樹脂注入ノズル31を挿入し、残り半分に高応力接合樹脂23を注入するようにしても良い。
【0066】
その後、図6の(b)に示すように半導体チップ1の各辺から、半導体チップ1と外部基板13との隙間に接合樹脂ノズル31を挿入して、当該ノズル31から高応力接合樹脂21を注入する。
【0067】
その際、半導体チップ1と外部基板13との間であっての外周部分33に相当する空間に均一に高応力接合樹脂21が注入されるよう、接合樹脂注入ノズル31を半導体チップ1の各辺 から挿入して高応力接合樹脂21を注入しながら、各辺に沿って移動させて全周にわたって高応力接合樹脂21の注入を実施する。
<第2の実施の形態>
図7は第2の実施の形態に係る半導体装置101について詳細に示したものである。
【0068】
この図7は半導体チップを外部基板と接合させた場合の半導体装置の断面構造を示した図であり、電極パッドを半導体チップ上にマトリクスに配置した状態の半導体装置を想定している。
【0069】
半導体装置101は、図7に示すように半導体ウェハをダイシングなどで個片化したものを半導体チップ103とし、半導体チップ103の表面に形成したバンプ105と、外部基板107上に形成した外部電極109とを圧着させて電気的な接合をとり、半導体チップ103と外部基板107の間に接合樹脂111を注入して接合させる構造になっている。
【0070】
第2の実施の形態に係る半導体装置101の特徴としては、表面保護膜113を複数(図7では2種類である。)種類に分けていることである。2種類の表面保護膜は、半導体チップ103の中心部分では第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117の2層構造、半導体チップ103の周辺部分では第1層表面保護膜115の1層構造となっていることである。
【0071】
つまり、第1層表面保護膜115は、第1の実施の形態と同様に、半導体チップ103の表面であって半導体チップ103上の電極パッド119の中央部分を除いた部分を被覆し、第2層表面保護膜117は、半導体チップ103の中央に位置する第1層表面保護膜115を被覆する。
【0072】
通常、第1層表面保護膜115にはSiN等の材料が、第2層表面保護膜117にはポリイミドやPBO等の材料がそれぞれ用いられる。
図8から図9は、第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117の形成概要の例について説明する図である。
1.実施例1
図8の(a)に示す一例では、最外周の4角(4隅)の電極パッド119aより内側部分(中心部分であり、最外周の4角の電極パッド119a以外の電極パッド119bがある部分)については第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117の2層構造を、外側部分(つまり、最外周の4角の電極パッド119aがある部分)については第1層表面保護膜115の1層構造をそれぞれ採用している。
【0073】
なお、図8の(a)では、半導体チップ103の中心部分を含んだ中央部分に形成された第1層表面保護層115は、第2層表面保護層117により被覆されているため、中央部分では第2層表面保護層117の符号を付している。
【0074】
図8の(b)に示す一例では最外周の電極パッド119cより内側部分(中央部分であり、最外周の電極パッド119c以外の電極パッド119dがある部分)については第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117の2層構造を、外側部分(周辺部分であり、最外周の電極パッド119cがある部分)については第1層表面保護膜115の1層構造をそれぞれ採用している。
【0075】
なお、図8の(b)では、半導体チップ103の中心部分を含んだ中央部分に形成された第1層表面保護層115は、第2層表面保護層117により被覆されているため、中央部分では第2層表面保護層117の符号を付している。
【0076】
また、半導体チップ103の基板121内には、半導体回路であるトランジスタ123が電極パッド119の位置に関係なく複数形成されている(図7参照)。
2.実施例2
上記実施例1では、表面保護層113は2種類であったが、3種類以上であっても良い。
【0077】
以下、3種類の場合について説明する。
図9の(a)に示す一例では、最外周の4角(隅)の電極パッド119eがある角部分については第1層表面保護膜115の1層構造を、最外周の4角の電極パッド119eより内側部分であって最外周の4角以外の電極パッド119fと最外周から内側に一列入った第2周の4角(隅)の電極パッド119gとがある部分については第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117の2層構造を、第2周の4角(隅)の電極パッド119gより内側部分であって、電極パッド119hがある部分については更に第3層表面保護膜118を被覆した3層構造をそれぞれ採用している。
【0078】
図9の(b)の一例では、最外周の電極パッド119iがある周辺部分については第1表面保護膜115の1層構造を、最外周の電極パッド119iより内側であって最外周より一列内側に入った第2周の電極パッド119jがある部分(中間部分)については第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117の2層構造を、第1週の電極パッド119j(中間部分)より内側の電極パッド119kがある部分(中心を含んだ中央部分)については更に第3層表面保護膜118を被覆した3層構造をそれぞれ採用している。
3.複数構造の保護膜について
上記図7から図9に示す半導体装置の構造にする意味合いや効果について以下に詳しく説明する。
【0079】
図10は、図7で示した半導体チップ103を外部基板107に接合させた場合、接合応力が半導体チップ103内のトランジスタ123にどのように働くかを示した図である。
【0080】
なお、図7に示す半導体装置101では、半導体チップ103の内側部分には第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117との2層構造、外側部分については第1層表面保護膜115の1層構造にそれぞれしている。特に第2層表面保護膜117はポリイミドやPBOを使用しており、このポリイミドやPBOは接合樹脂による応力を緩和させる効果がある。
【0081】
従来は接合樹脂(917)の応力特性により、半導体チップ901の内周部分応力923が半導体チップ901の外周部分応力921と比較してより大きくなってしまう現象が発生していたが、第2の実施の形態に係る半導体装置101では、上記の第2層表面保護膜117の応力緩和効果により半導体チップ103の内周部分応力125と外周部分応力127が均一になり、両応力125,127の差が小さくなる。
【0082】
このことで、半導体チップ103の内側部分のトランジスタ123bのトランジスタ特性と、外側部分のトランジスタ123aのトランジスタ特性とに大きな差異が発生せず、最終的に回路異常を引き起こす恐れがなくなる。
【0083】
以上の現象を、図11を用いて詳細に説明する。
図11は、図10で示した第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117とが形成されている半導体チップ103の内周部分応力125および外周部分応力127が半導体チップ103内のトランジスタ123にどのように働くかを示したグラフ図である。縦軸がトランジスタ変動率をパーセンテージで示したもの、横軸が半導体チップ位置を示したものである。
【0084】
図11に示すように半導体チップ103の内周部分応力125は第2層表面保護膜117による応力緩和により応力は非常に小さくなり、半導体チップ103の内周部分にあるトランジスタ123bは大きく変動しない。逆に外周部分応力127は第2層表面保護膜117による応力緩和は無いが、もとより半導体チップ103の外周部分は応力が働き難い為、応力は非常に小さくなり、外周部分にあるトランジスタ123aは大きく変動しない。
【0085】
この結果、半導体チップ103の内周部分にあるトランジスタ特性と外周部分にあるトランジスタ特性とに大きな差異が発生してしまう現象が発生した従来の問題点の改善が可能となる。
【0086】
また、図8の(a)の一例では、電極パッド119aがある外側部分については表面保護膜113を1層構造にし、電極パッド119bがある内側部分については表面保護膜113を2層構造にしている。これは最外周4隅の電極パッド119aの周辺部分は応力差異が激しい部分である為、第1層表面保護層115と第2層表面保護層117との形成境界としている。
【0087】
図8の(b)の一例では、電極パッド119cがある外側部分については表面保護膜113を1層構造にし、電極パッド119dがある内側部分については表面保護膜113を2層構造にしている。
【0088】
これも上記同図の(a)と同様に最外周の電極パッド119cの周辺部分は応力差異が激しい部分である為、第1層表面保護層115と第2層表面保護層117との形成境界としている。
【0089】
図9の(a)の一例では、電極パッド119eがある外側部分については表面保護膜113を1層構造にし、電極パッド119f,119gがある中間部分については表面保護膜113を2層構造にし、更に電極パッド119hがある中央部分については3層構造にしている。
【0090】
これにより均一な応力緩和を求めた場合、このように表面保護膜113を重ねて応力緩和を実施することを示している。
図9の(b)の一例では、電極パッド119iがある外側部分については表面保護膜113を1層構造にし、電極パッド119jがある中間部分については表面保護膜113を2層構造にし、更に電極パッド119kがある中央部分については3層構造にしている。
【0091】
これも上記同図の(a)と同様により均一な応力緩和を求めた場合、このように表面保護膜を重ねて応力緩和を実施することを示している。
<第3の実施の形態>
図12は第3の実施の形態に係る半導体装置201について詳細に示したものである。
【0092】
この図12は半導体チップを外部基板と接合させた半導体装置の断面構造を示した図であり、具体的には第1の実施の形態、第2の実施の形態で示した構造を組み合わせたものである。
【0093】
半導体装置201は、図12に示すように半導体ウェハをダイシングなどで個片化したものを半導体チップ203とし、半導体チップ203上に形成したバンプ205と、外部基板207上に形成した外部電極209とを圧着させて電気的な接合をとり、半導体チップ203と外部基板207の間に接合樹脂211を注入して接合させる構造になっている。
【0094】
第3の実施の形態に係る半導体装置201の特徴としては、第1の実施の形態のように接合樹脂211を2種類にわけ、半導体チップ203の中央部分には低応力接合樹脂213を、周辺部分には高応力接合樹脂215をそれぞれ注入することと、第2の実施の形態のように表面保護膜217を2種類にわけ、半導体チップ203の中央部分には第1層表面保護膜219と第2層表面保護膜221の2層構造、周辺部分には第1層表面保護膜219の1層構造とすることとをミックスした構造になっていることである。
【0095】
図13は図12で示した半導体チップ203を外部基板207と接合させた場合、接合応力がトランジスタ223にどのように働くかを示した図である。
従来は単一な応力を持った接合樹脂の特性により、半導体チップ901の内周部分応力923が外周部分応力921より大きくなってしまう現象が発生していたが、第3の実施の形態では、半導体チップ203の内周部分には低応力接合樹脂213を、外周部分には高応力接合樹脂215をそれぞれ注入し、加えて、半導体チップ203の内周部分には第1層表面保護膜219と第2層表面保護膜221の2層構造、外側部分については第1層表面保護膜219の1層構造にそれぞれ採用している為、半導体チップ203の内周部分応力225が緩和され、内周部分応力225と外周部分応力227が均一になり、このことで半導体チップ201の外周部分のトランジスタ223aのトランジスタ特性と、内周部分のトランジスタ223bのトランジスタ特性とに大きな差異が発生せず、最終的に回路異常を引き起こす恐れがなくなる。
【0096】
以上の現象を、図14を用いて詳細に説明する。
図14は、図13で示した構造により、半導体チップ203の内周部分応力225と外周部分応力227が半導体チップ203内のトランジスタ223にどのように働くかを示したグラフ図である。縦軸がトランジスタ変動率をパーセンテージで示したもの、横軸が半導体チップ位置を示したものである。
【0097】
図14に示すように、半導体チップ203の内周部分応力225は低応力接合樹脂213と第2層表面保護膜221とを使用している為、応力は非常に小さくなり、半導体チップ203の内周部分にあるトランジスタ223bは大きく変動しない。逆に外周部分応力227は高応力接合樹脂215を使用し、第2層表面保護膜221を使用していないが、もとより半導体チップ203の外周部分は応力が働き難い為、その応力は非常に小さくなり、外周部分にあるトランジスタ223aは大きく変動しない。
【0098】
この結果、半導体チップ203の内周部分にあるトランジスタ223bと外周部分にあるトランジスタ223aとのトランジスタ特性に大きな差異が発生してしまう現象が発生した従来の問題点の改善が可能となる。
<変形例>
1.突起電極
上記実施の形態では、突起電極であるバンプは、半導体チップの電極パッドに形成されていたが、例えば、外部装置側の外部基板の外部電極に形成されていても良い。
【0099】
また、突起電極は、例えば、半導体チップへの電極パッドの形成に合わせて形成しても良いし、外部基板への外部電極の形成に合わせて形成しても良い。さらには、突起電極の形成に合わせて、半導体チップと外部基板とを接合しても良い。
2.電極パッド
上記実施の形態では、電極パッド(半導体チップの電極パッドと外部基板の外部電極である。)の平面視形状は円形状をしていたが、他の形状あっても良い。他の形状としては、三角形等の多角形状、楕円形状等がある。また、多角形状や楕円(円を含む。)の管状であっても良い。
3.半導体チップ
実施の形態では、半導体チップの平面視形状は正方形状をしていたが、他の形状であっても良い。他の形状としては、三角形等の多角形状等がある。
4.電極パッドの配置
実施の形態では、半導体チップに形成された電極パッドは複数あり、これらは、例えば、マトリクス上に配置されていたが、他の形状に配置されていても良い。例えば、同心円状に多重に配されていても良いし、四角形を除く(視角形状はマトリクス上であり、実施の形態で説明している。)、多重の多角形状であって良い。
5.接合樹脂(材料)
第1および第3の実施の形態では、接合樹脂として2種類用いたが、3種類以上用いても良い。3種類用いる例としては、図9における表面保護層のように、外側、中間、内側と接合樹脂を分けて形成しても良い。
【0100】
なお、接合樹脂を複数用いる場合、半導体チップの中央部分から周縁部分に移るに従って、半導体チップに作用する接合樹脂による応力が高くなるようにするのが好ましい。
また、実施の形態では、接合材料として樹脂を用いたが、他の材料で、同様の効果を得ることができる材料であれば、利用できる。
6.表面保護層
第2の実施の形態では、第2層表面保護層における電極パッド上の開口と、第1層表面保護層における電極パッド上の開口とが同じ形状、寸法であったが、例えば、異なる形状、寸法の開口としても良い。
【0101】
例えば、第2層表面保護層における電極パッド上の開口を、第1層表面保護層における電極パッド上の開口よりも大きくしても良い。また、第1層表面保護層における電極パッド上の開口を円形状とし、第2層表面保護層における電極パッド上の開口を、第1層表面保護膜層の開口形状である円の直径を一辺とする正方形状であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は半導体装置の構造、特に電極パッドの下部以外に関わらず半導体チップのすべてにトランジスタで構成される半導体回路などの形成を行う半導体装置の構造およびその製造方法に関して有用なものである。
【符号の説明】
【0103】
1 半導体チップ
3 基板
5 トランジスタ
7 電極パッド
9 表面保護膜
11 バンプ
13 外部基板
15 外部電極
17 接合樹脂
19 半導体装置
21 高応力接合樹脂
23 低応力接合樹脂
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の構造、特に、基板内部に半導体回路を有する半導体チップが外部基板に実装されてなる半導体装置の構造およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置として、内部に例えばトランジスタ等の半導体回路が形成され、表面に例えばバンプ等の突起電極が形成されてなる半導体チップが、例えばパッケージ基板等の外部基板に突起電極を介して実装されてなる構造のものがある。
【0003】
図15は従来の半導体チップ901の断面構造を示したものである。
半導体チップ901は、本図に示すように、SiやGaAsなどの半導体ウェハ903の中に、後述の半導体装置を構成するトランジスタ905を備える。
【0004】
この半導体チップ901の表面には外部装置との電気的接合をとるための電極パッド907が設けられている。通常、この電極パッド907はAlなどで形成されている。なお、トランジスタ905は、電極パッド907の下方以外の部分にも形成されている。
【0005】
半導体チップ901の表面であって電極パッド907以外の部分は表面保護膜909で覆われている。通常、この表面保護膜909はSiNなどで形成されている。電極パッド907の上部(上面)には、外部装置、具体的にはパッケージ基板をはじめとする外部基板と電気的接合を取るためのバンプ911が形成される。通常、このバンプ911にははんだ、Au、Cuなどが用いられ、通常、めっき方式などで形成される。
【0006】
図16は図15で示した半導体チップ901を外部基板913に接合させた場合の断面構造を示したものである。
通常、複数のチップが形成された半導体ウェハをダイシングなどで個片化して半導体チップ901とし、その後、半導体チップ901上に形成したバンプ911を、外部装置の外部基板913上の外部電極915に圧着させて電気的な接合を行う。
【0007】
そして、半導体チップ901と外部基板913との間に接合樹脂917を注入して接合が完了し、半導体装置919が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−135308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の半導体装置919の構造では、半導体チップ901と外部基板913とを接合する接合樹脂917が半導体チップ901内のトランジスタ905に悪影響を与えるという問題がある。
【0010】
図17は、図16で示したように、従来の構造である半導体チップ901をパッケージ基板である外部基板913に接合させた場合、接合樹脂917による接合応力がトランジスタ905にどのように作用するかを示した図である。
【0011】
本図に示すように、接合樹脂917の熱収縮による応力が半導体チップ901を外部基板913側へと引き上げ方向に作用し、結果的に、トランジスタ905に対して変形させようとする応力が作用する。
【0012】
特に、このような接合に用いられる一般的な接合樹脂917の特性により、接合樹脂917による半導体チップ901に作用する応力のうち、半導体チップ901の周縁に近い外周部分の応力921が、外周部分の内側に位置する内周部分の応力923よりも小さくなってしまう現象が発生する。なお、外周部分に作用する応力を外周部分応力921と、内周部分に作用する応力を内周部分応力923とそれぞれする。
【0013】
これにより、半導体チップ901の外周部分に位置するトランジスタ905aと、内周部分に位置するトランジスタ905bとで、トランジスタ特性が大きく異なり、最終的に回路異常を引き起こす恐れがある。
【0014】
なお、ここでいう「トランジスタ特性」とは、例えば、トランジスタのVt(閾値電圧値)やIdsat(飽和電流値)のことを指し、また、「回路異常」とは、例えば、回路で演算を実施した場合に期待した出力値が出ないようなことを指す。
【0015】
以上の現象を、図18を用いて詳細に説明する。
図18は図17で示した接合樹脂917による内周部分応力923と外周部分応力921とが半導体チップ901内のトランジスタ905にどのように作用するかを示したグラフ図である。
【0016】
なお、縦軸がトランジスタの変動率をパーセンテージで示したもの、横軸が半導体チップの位置を示したものである。また、トランジスタの変動率は組み立てを実施する前を基準とし、Idsat(飽和電流値)の変動率である。
【0017】
通常、図18に示すように、内周部分応力923が外周部分応力921よりも非常に大きい為、半導体チップ901の内周部分にあるトランジスタ905aはNchであればマイナス方向、Pchであればプラス方向に大きく変動する。逆に、外周部分応力921は内周部分応力923よりも小さい為、外周部分にあるトランジスタ905aは大きく変動しない。
【0018】
この結果、半導体チップ901の内周部分にあるトランジスタ905bのトランジスタ特性と、外周部分にあるトランジスタ905aのトランジスタ特性とに大きな差異が発生してしまう現象が発生する。
【0019】
本発明は上記問題点に鑑み、半導体チップと外部基板を接合させた場合に発生する接合樹脂による応力のばらつきにより、半導体チップ内の半導体回路の特性差が大きく変動する等の不具合の生じ難い半導体装置および半導体装置の製造方法を提供するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決する為に、本発明に係る半導体装置は、半導体チップと、前記半導体チップの第1の主面に形成された第1の電極パッドと、外部基板と、前記外部基板の第1の主面に形成された第2の電極パッドと、前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとを電気的に接合する突起電極と、前記半導体チップと前記外部基板との間の隙間に充填されて前記半導体チップと前記外部基板とを接合させる接合材料とを備え、前記接合材料は、前記半導体チップの中心部分に形成された第1の接合材料と、前記半導体チップの外周部分に形成された第2の接合材料との少なくとも2種類があり、前記半導体チップに作用する前記接合材料による引張応力は、前記第2の接合材料の方が前記第1の接合材料よりも高いことを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法は、第1の主面に第1の電極パッドを有する半導体チップを用意する工程と、第1の主面に第2の電極パッドを有する外部基板を用意する工程と、前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとを突起電極により接合する工程と、前記半導体チップと前記外部基板との間の隙間に接合材料を注入して前記半導体チップと前記外部基板とを前記接合材料で接合させる工程とを備え、前記接合材料で接合させる工程は、前記半導体チップの中心部分に第1の接合材料を注入する工程と、前記半導体チップの外周部分に、前記接合材料によって前記半導体チップに作用する引張応力が前記第1の接合材料よって作用する引張応力よりも高くなる第2の接合材料を注入する工程とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
上記の半導体装置および製造方法では、接合材料を少なくとも2種以上用いることで、半導体チップの内周部分応力と外周部分応力とを均一にできる。このことで半導体チップと外部基板とを接合させた場合に発生する接合樹脂による接合応力のばらつきにより、半導体装置(半導体チップ)内の不具合をなくすことができる。
【0023】
また、前記第1の電極パッドは、複数あり、前記第1の主面に行列状に形成されていることを特徴とし、あるいは、前記第2の接合材料は前記半導体チップのコーナー部に形成されていることを特徴としている。さらには、前記第2の接合材料は前記第1の電極パッドの内、最外周の角に配置されたパッドを含む部分に形成されていることを特徴とし、前記第2の接合材料は前記第1の電極パッドの内、最外周に配置されたパッドを含む部分に形成されていることを特徴としている。
【0024】
また、前記半導体チップの前記第1の主面を、前記第1の電極パッド上に開口を有する状態で覆う第1の保護膜が形成されており、前記中心部分内における前記第1の保護膜上に、前記第1の電極パッド上に開口を有するように第2の保護膜が形成されていることを特徴とし、あるいは、前記第2の保護膜は前記半導体チップのコーナー部を除いた部分に形成されていることを特徴としている。さらには、前記第2の保護膜は前記第1の電極パッドの内、最外周の角に配置されたパッドを除いた部分に形成されていることを特徴とし、前記第2の保護膜は前記第1の電極パッドの内、最外周に配置されたパッドを除いた部分に形成されていることを特徴としている。
【0025】
また、半導体装置の製造方法では、前記半導体チップは、平面視多角形状をし、前記第1の接合材料を注入する工程は、接合材料注入ノズルを前記半導体チップの1辺に沿って当該辺の両端間を移動させて注入することを特徴とし、あるいは、前記半導体チップは、平面視多角形状をし、前記第2の接合材料を注入する工程は、接合材料注入ノズルを前記半導体チップの各辺に沿って一周させて注入することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】半導体装置の断面図である。
【図2】接合樹脂の注入についての説明図である。
【図3】図1で示した半導体チップを外部基板に接合させた半導体装置の場合、接合応力が半導体チップ内のトランジスタにどのように働くかを示した図である。
【図4】図3で示した低応力接合樹脂および高応力接合樹脂による半導体チップの内周部分応力および外周部分応力が半導体チップ内のトランジスタにどのように働くかを示したグラフ図である。
【図5】一般的な半導体チップを、パッケージ基板をはじめとする外部基板と接合させた場合の製造方法のフロー図である。
【図6】本実施の形態に係る半導体装置における低応力接合樹脂と高応力接合樹脂とを注入する方法について詳細に示したフロー図である。
【図7】第2の実施の形態に係る半導体装置について詳細に示したものである。
【図8】第1層表面保護膜と第2層表面保護膜の形成概要の例について説明する図である。
【図9】第1層表面保護膜と第2層表面保護膜の形成概要の例について説明する図である。
【図10】図7で示した半導体チップを外部基板に接合させた半導体装置の場合、接合応力が半導体チップ内のトランジスタにどのように働くかを示した図である。
【図11】図10で示した第1層表面保護膜と第2層表面保護膜による半導体チップの内周部分応力および外周部分応力が半導体チップ内のトランジスタにどのように働くかを示したグラフ図である。
【図12】第3の実施の形態に係る半導体装置について詳細に示したものである。
【図13】図12で示した半導体チップを外部基板と接合させた半導体装置の場合、接合応力がトランジスタにどのように働くかを示した図である。
【図14】図13で示した構造により、半導体チップの内周部分応力と外周部分応力が半導体チップ内のトランジスタにどのように働くかを示したグラフ図である。
【図15】従来の半導体チップの断面構造を示したものである。
【図16】図15で示した半導体チップを外部基板に接合させた場合の断面構造を示した図である。
【図17】図16で示した従来の構造である半導体チップを、パッケージ基板をはじめとする外部基板と接合させた場合、接合樹脂による接合応力がトランジスタにどのように作用するかを示した図である。
【図18】図17で示した接合樹脂による内周部分応力と外周部分応力とが半導体チップ内のトランジスタにどのように作用するかを示したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態について半導体装置の構造、特に電極パッドの下部以外に関わらず半導体チップのすべてにトランジスタ等で構成される半導体回路などの形成を行う半導体装置の構造およびその製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0028】
なお、本発明で使用している、材料、数値は、好ましい例を実施の形態で例示しているだけであり、この形態に限定されることはない。また、本発明の技術的思想の範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。また、他の実施の形態との組み合わせは、矛盾が生じない範囲で可能である。
<第1の実施の形態>
図1〜図4は、本発明に係る第1の実施形態の半導体装置の構造について詳細に示したものである。図1は半導体装置19の断面図であり、図2は接合樹脂17の注入についての説明図である。
1.構成
半導体装置は、半導体チップがバンプを介して外部基板に実装されてなる。
【0029】
つまり、半導体装置19は、半導体チップ1と、半導体チップ1の第1の主面である表面に形成された第1の電極パッド7と、外部基板13と、外部基板13の第1の主面である表面に形成された第2の電極パッドである外部電極15と、第1の電極パッド7と第2の電極パッドである外部電極15とを電気的に接合する突起電極であるバンプ11と、半導体チップ1と外部基板13との間の隙間に充填されて半導体チップ1と外部基板13とを接合させる接合材料である接合樹脂17とを備え、接合樹脂17は、半導体チップ1の中心部分に形成された第1の接合材料である低応力接合樹脂23と、半導体チップ1の外周部分に形成された第2の接合材料である高応力接合樹脂21との少なくとも2種類があり、前記半導体チップ1に作用する前記接合樹脂17による引張応力は、高応力接合樹脂21の方が低応力接合樹脂23よりも高い構成をしている。
【0030】
半導体チップ1は、図1に示すように、基板3内に形成された半導体回路(5)を有する。半導体チップ1は、半導体プロセスを経て形成され、基板3として、通常、SiやGaAsなどの半導体ウェハが用いられる。なお、本実施の形態では、トランジスタ5を半導体回路としている。
【0031】
半導体チップ1の表面には、電極パッド7と表面保護膜9とが形成されている。ここでいう表面とは、外部装置である外部基板13と接合される側の面である。なお、外部基板13の表面は、半導体チップ1と接合される側の面である。
【0032】
電極パッド7は、外部装置との電気的接合をとるためのものである。電極パッド3は、例えばAlなどで形成され、例えば蒸着方式で形成される。なお、電極パッド3は、図2に示すように、例えば平面視(表面と直交する方向から当該表面を見たときである。)円形状をし、例えば半導体チップ12上にマトリクス状に配置している。また、トランジスタ5は、複数あり、電極パッド7の下方および下方以外にも形成されている。
【0033】
表面保護膜9は、半導体チップ1の表面であって電極パッド7の中央部分を除く部分を覆う。つまり、電極パット7は、その周縁を含む周辺部分7aが表面保護膜9に覆われ、周辺部分の内側に位置する内側部分7bが露出している。表面保護膜9は、例えばSiNなどで形成され、例えばプラズマCVD方式により形成されている。
【0034】
電極パッド7の上部(表面)にはバンプ11が形成されている。バンプ11は、半導体チップ1と外部装置12とを電気的に接合するためのものである。具体的には、パッケージ基板をはじめとする外部基板13とで電気的接合を取る。なお、バンプ11は例えばはんだ、Au、Cuなどが用いられ、例えばめっき方式などで形成される。
【0035】
外部基板13は、その表面(図1では下面であり、上述した通り、半導体チップ1との対向面である。)には外部電極15が形成されている。
半導体チップ1は、チップ表面に形成したバンプ11を、外部装置12の外部基板13上の外部電極15に圧着させることで、外部基板13に対して電気的および機械的に接合される。
【0036】
半導体チップ1が外部基板13に接合された状態で、半導体チップ1と外部基板13との間に接合樹脂17を注入して、半導体チップ1と外部基板13との接合が完了し、半導体装置19が完成する。
【0037】
接合樹脂17は、複数種類ある。本実施の形態では、接合樹脂17は2種類ある。具体的には、半導体チップ1と外部基板13との間であって、半導体チップ1の周縁および周縁に近い部分(この部分を「外周部分」という。)には、半導体チップ1を外部電極13側へと引き上げる応力が高くなるような樹脂(この接合樹脂を「高応力接合樹脂」という。)21が充填されている。
【0038】
半導体チップ1と外部基板13との間であって、半導体チップ1の外周部分の内側に位置する部分(この部分を「内周部分」という。)には、半導体チップ1を外部電極13側へと引き上げる応力が低くなるような樹脂(この接合樹脂を「低応力接合樹脂」という。)23が充填されている。
【0039】
このように、本実施の形態に係る半導体装置19は、半導体ウェハをダイシングなどで個片化することで得られる半導体チップ1を、その半導体チップ1上に形成したバンプ11を利用して外部基板13の外部電極15に圧着させて電気的・機械的な接合をとり、半導体チップ1と外部基板13との間に接合樹脂17を注入して接合させる構造になっている。
【0040】
本実施の形態に係る半導体装置19の特徴は、接合樹脂17を、高応力接合樹脂21と低応力接合樹脂23との2種類にわけ、半導体チップ1の中心部分(内周部分)には低応力接合樹脂23を、外周部分には高応力接合樹脂21をそれぞれ用いることである。
【0041】
なお、高応力接合樹脂21と低応力接合樹脂23とにおける「高低」は、互いの接合樹脂間であり、高応力接合樹脂21が低応力接合樹脂23と比較して高応力であれば良い。
2.接合樹脂の注入について
低応力接合樹脂23、高応力接合樹脂21の注入概要の例について説明する。
(1)実施例1
半導体チップ1の表面には複数の電極パッド7がマトリクス状に設けられている。図2は、半導体チップ1の表側を外部基板13側から見た図であって、外部基板13、バンプ11の表示を省略した図である。
【0042】
なお、電極パッド7と接合樹脂17との位置関係および半導体チップ1の周縁(輪郭)が分かるように、これらを実線で記載している。また、図中の複数の円環は、円環の内周より内側が電極パッド7(7b)であり、外周の線は表面保護膜9のうち、電極パッド7の周辺部分7aを覆うことでできる段差を示している。
【0043】
図2の(a)に示すように、マトリクス状に設けられた複数の電極パッド7のうち、最外周の4隅の電極パッド7cより内側に位置する電極パッド7dを含む部分については低応力接合樹脂23で接合させ、低応力接合樹脂23の外側部分については高応力接合樹脂21で接合させている。
【0044】
ここでは、半導体チップ1の平面視形状は正方形状をし、平面視における正方形の内接円が、高応力接合樹脂21と低応力接合樹脂23との境界線となっている。
(2)実施例2
図2の(b)に示すように、マトリクス状に設けられた複数の電極パッド7のうち、最外周の電極パッド7eより内側に位置する電極パッド7fを含む部分については低応力接合樹脂23で接合させ、低応力接合樹脂23の外側部分については高応力接合樹脂21で接合させている。
【0045】
ここでは、最外周に位置する複数の電極パッド7eの内側よりも小さく、最外周に位置する電極パッド7eの1つ内側の電極パッド7fの外側よりも大きな正方形(角が円弧状をしているが、全体の形状が正方形をしている。)が、高応力接合樹脂21と低応力接合樹脂23との境界線となっている。
3.半導体チップ内の応力について
上記図1から図2に示した半導体装置の構造にする意味合いや効果について以下に詳しく説明する。
【0046】
図3は、図1で示した半導体チップ1を外部基板13に接合させた半導体装置19の場合、接合応力が半導体チップ1内、具体的には半導体チップ1内のトランジスタ5にどのように働くかを示した図である。
【0047】
従来は、図17および図18に示すように、1種類の接合樹脂917を用いていたため、当該接合樹脂は単一な応力特性を有することとなり、半導体チップ901において内周部分応力923が外周部分応力921より大きくなってしまう現象が発生していた。
【0048】
しかしながら、本実施の形態では、半導体チップ1の内周部分には低応力接合樹脂23を、外周部分には高応力接合樹脂21を注入している為、半導体チップ1の内周部分に作用する応力(この応力を、「内周部分応力」という。)25と、外周部分に作用する応力(この応力を、「外周部分応力」という。)27とが均一になる(内周部分応力25と外周部分応力との差異が従来よりも小さくなる。)。このことで、半導体チップ1の外周部分に位置するトランジスタ5aのトランジスタ特性と、内周部分に位置するトランジスタ5bのトランジスタ特性とに大きな差異が発生せず、最終的に回路異常を引き起こす恐れが少なくなる。
【0049】
低応力接合樹脂23は、例えば、熱硬化性の低い樹脂、つまり、硬化時の温度が低い樹脂を利用することで、内周部分の応力を小さくできる。より具体的には、低応力接合樹脂23には、低温でも樹脂が軟化し易い性質を有する熱硬化性・熱可塑性樹脂、例えば架橋性の低い材料を使用した樹脂を用いることができる。
【0050】
逆に、高応力接合樹脂21は、例えば、熱硬化性の高い樹脂、つまり、硬化時の温度が高い樹脂を利用することができ、より具体的には、低温でも樹脂が軟化し難い性質を有する熱硬化性・熱可塑性樹脂、例えば架橋性の高い材料を使用した樹脂を用いることができる。
【0051】
以上の現象を、図4を用いて詳細に説明する。
図4は、図3で示した低応力接合樹脂23および高応力接合樹脂21による半導体チップ1の内周部分応力25および外周部分応力27が半導体チップ1内のトランジスタ5にどのように働くかを示したグラフ図である。なお、縦軸がトランジスタ変動率をパーセンテージで示したもの、横軸が半導体チップ1の位置を示したものである。
【0052】
図4に示すように内周部分応力25は内周部分に低応力接合樹脂23を使用している為、トランジスタ5bに作用する応力は非常に小さくなり、内周部分にあるトランジスタ5bのトランジスタ特性は大きく変動しない。逆に外周部分応力27は外周部分に高応力接合樹脂21を使用しているが、もとより外周部分は応力が働き難い為、トランジスタ5aに作用する応力は非常に小さくなり、外周部分にあるトランジスタ5aのトランジスタ特性は大きく変動しない。
【0053】
この結果、半導体チップ1の内周部分にあるトランジスタ5bのトランジスタ特性と、半導体チップ1の外周部分にあるトランジスタ5aのトランジスタ特性とに差異が生じ難くなり、半導体チップ901の内周部分と外周部分とでトランジスタ特性に大きな差異が発生してしまう従来の問題点の改善が可能となる。
【0054】
また、図2の(a)に示す一例では最外周の4角の電極パッド7cよりも内側部分(電極パッド7dが存在する部分)については低応力接合樹脂23で、内側部分よりも外側の外側部分(電極パッド7cが存在する部分)については高応力接合樹脂21でそれぞれ半導体チップ1と外部基板13とを接合させている。
【0055】
これは、最外周に設けられ且つ正方形状の半導体チップ1の4隅に位置する電極パッド7cの周辺部分は応力差異が激しい部分である為、4角の電極パッド7cよりも内側で低応力接合樹脂23と高応力接合樹脂21の境界としている。
【0056】
また図2の(b)に示す一例では最外周の電極パッド7eよりも内側部分(電極パッド7fが存在する部分)については低応力接合樹脂23で、内側部分よりも外側の外側部分(電極パッド7eが存在する部分)については高応力接合樹脂21でそれぞれ半導体チップ1と外部基板13とを接合させている。
【0057】
これも、上記と同様に最外周に設けられた電極パッド7eの周辺部分は応力差異が激しい部分である為、最外周の電極パッド7eよりも内側で低応力接合樹脂23と高応力接合樹脂21の境界としている。
4.製造方法
次に本実施の形態に係る半導体装置19の製造方法について説明する。
【0058】
図5は一般的な半導体チップ901を、パッケージ基板をはじめとする外部基板913と接合させた半導体装置919の場合の製造方法のフロー図であり、図6は本実施の形態に係る半導体装置19に係る低応力接合樹脂23と高応力接合樹脂21とを注入する方法について詳細に示したフロー図である。
【0059】
図5の(a)に示すようにまずベークしたパッケージ基板である外部基板913に対して半導体チップ901を圧着させる、通称FCB(Flip Chip Bonding)工程を経る。
【0060】
その後、リフロー、洗浄、ベーク、プラズマ照射などの工程を経た後、図5の(b)に示すように接合樹脂注入ノズル925を用いて、半導体チップ901と外部基板913との間の隙間に接合樹脂917を注入する。その後、図5の(c)に示すように熱によるキュアを行い、接合樹脂917を硬化させて、半導体装置919が完成する。
【0061】
次に、実施の形態に係る半導体装置19の特徴である低応力接合樹脂23と高応力接合樹脂21との注入について説明する。
半導体装置19は、上記の、一般的な半導体チップ901を外部基板913と接合させた場合の製造方法のフロー図における図3の(b)以外は同じである。したがって、ここでは、図3の(b)で示した接合樹脂注入工程に相当する工程について、図6を用いて詳細に説明する。
【0062】
まず、図6の(a)に示すように半導体チップ1の方面(外部基板の表面と平行な方向)から半導体チップ1と外部基板13との間であって内部部分29に相当する空間に低応力接合樹脂23を注入する。
【0063】
その際、半導体チップ1と外部基板13との隙間であって内周部分29に相当する空間に低応力接合樹脂23が均一に注入されるよう、接合樹脂注入ノズル31を半導体チップ1の一辺側から半導体チップ1と外部基板13との間に挿入した後、高応力接合樹脂23を注入しながら半導体チップ1の前記一辺を左右(当該一辺の両端)方向に移動させて行う。
【0064】
具体的には、接合樹脂注入ノズル31を半導体チップ1の一辺側から半導体チップ1と外部基板13との間の隙間に挿入し、高応力接合樹脂23を注入しながら半導体チップ1の前記一辺を左右(当該一辺の両端)方向に移動させる注入移動工程と、接合樹脂注入ノズル31が左右方向の端に到達すると接合樹脂注入ノズル31を後退させる後退工程とを交互に繰り返して行う。
【0065】
なお、接合樹脂注入ノズル31の隙間への挿入を、半導体チップ1の一辺の半分に相当する分だけにして、この半分の高応力接合樹脂23の注入が完了した後、反対側の一辺からの接合樹脂注入ノズル31を挿入し、残り半分に高応力接合樹脂23を注入するようにしても良い。
【0066】
その後、図6の(b)に示すように半導体チップ1の各辺から、半導体チップ1と外部基板13との隙間に接合樹脂ノズル31を挿入して、当該ノズル31から高応力接合樹脂21を注入する。
【0067】
その際、半導体チップ1と外部基板13との間であっての外周部分33に相当する空間に均一に高応力接合樹脂21が注入されるよう、接合樹脂注入ノズル31を半導体チップ1の各辺 から挿入して高応力接合樹脂21を注入しながら、各辺に沿って移動させて全周にわたって高応力接合樹脂21の注入を実施する。
<第2の実施の形態>
図7は第2の実施の形態に係る半導体装置101について詳細に示したものである。
【0068】
この図7は半導体チップを外部基板と接合させた場合の半導体装置の断面構造を示した図であり、電極パッドを半導体チップ上にマトリクスに配置した状態の半導体装置を想定している。
【0069】
半導体装置101は、図7に示すように半導体ウェハをダイシングなどで個片化したものを半導体チップ103とし、半導体チップ103の表面に形成したバンプ105と、外部基板107上に形成した外部電極109とを圧着させて電気的な接合をとり、半導体チップ103と外部基板107の間に接合樹脂111を注入して接合させる構造になっている。
【0070】
第2の実施の形態に係る半導体装置101の特徴としては、表面保護膜113を複数(図7では2種類である。)種類に分けていることである。2種類の表面保護膜は、半導体チップ103の中心部分では第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117の2層構造、半導体チップ103の周辺部分では第1層表面保護膜115の1層構造となっていることである。
【0071】
つまり、第1層表面保護膜115は、第1の実施の形態と同様に、半導体チップ103の表面であって半導体チップ103上の電極パッド119の中央部分を除いた部分を被覆し、第2層表面保護膜117は、半導体チップ103の中央に位置する第1層表面保護膜115を被覆する。
【0072】
通常、第1層表面保護膜115にはSiN等の材料が、第2層表面保護膜117にはポリイミドやPBO等の材料がそれぞれ用いられる。
図8から図9は、第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117の形成概要の例について説明する図である。
1.実施例1
図8の(a)に示す一例では、最外周の4角(4隅)の電極パッド119aより内側部分(中心部分であり、最外周の4角の電極パッド119a以外の電極パッド119bがある部分)については第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117の2層構造を、外側部分(つまり、最外周の4角の電極パッド119aがある部分)については第1層表面保護膜115の1層構造をそれぞれ採用している。
【0073】
なお、図8の(a)では、半導体チップ103の中心部分を含んだ中央部分に形成された第1層表面保護層115は、第2層表面保護層117により被覆されているため、中央部分では第2層表面保護層117の符号を付している。
【0074】
図8の(b)に示す一例では最外周の電極パッド119cより内側部分(中央部分であり、最外周の電極パッド119c以外の電極パッド119dがある部分)については第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117の2層構造を、外側部分(周辺部分であり、最外周の電極パッド119cがある部分)については第1層表面保護膜115の1層構造をそれぞれ採用している。
【0075】
なお、図8の(b)では、半導体チップ103の中心部分を含んだ中央部分に形成された第1層表面保護層115は、第2層表面保護層117により被覆されているため、中央部分では第2層表面保護層117の符号を付している。
【0076】
また、半導体チップ103の基板121内には、半導体回路であるトランジスタ123が電極パッド119の位置に関係なく複数形成されている(図7参照)。
2.実施例2
上記実施例1では、表面保護層113は2種類であったが、3種類以上であっても良い。
【0077】
以下、3種類の場合について説明する。
図9の(a)に示す一例では、最外周の4角(隅)の電極パッド119eがある角部分については第1層表面保護膜115の1層構造を、最外周の4角の電極パッド119eより内側部分であって最外周の4角以外の電極パッド119fと最外周から内側に一列入った第2周の4角(隅)の電極パッド119gとがある部分については第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117の2層構造を、第2周の4角(隅)の電極パッド119gより内側部分であって、電極パッド119hがある部分については更に第3層表面保護膜118を被覆した3層構造をそれぞれ採用している。
【0078】
図9の(b)の一例では、最外周の電極パッド119iがある周辺部分については第1表面保護膜115の1層構造を、最外周の電極パッド119iより内側であって最外周より一列内側に入った第2周の電極パッド119jがある部分(中間部分)については第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117の2層構造を、第1週の電極パッド119j(中間部分)より内側の電極パッド119kがある部分(中心を含んだ中央部分)については更に第3層表面保護膜118を被覆した3層構造をそれぞれ採用している。
3.複数構造の保護膜について
上記図7から図9に示す半導体装置の構造にする意味合いや効果について以下に詳しく説明する。
【0079】
図10は、図7で示した半導体チップ103を外部基板107に接合させた場合、接合応力が半導体チップ103内のトランジスタ123にどのように働くかを示した図である。
【0080】
なお、図7に示す半導体装置101では、半導体チップ103の内側部分には第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117との2層構造、外側部分については第1層表面保護膜115の1層構造にそれぞれしている。特に第2層表面保護膜117はポリイミドやPBOを使用しており、このポリイミドやPBOは接合樹脂による応力を緩和させる効果がある。
【0081】
従来は接合樹脂(917)の応力特性により、半導体チップ901の内周部分応力923が半導体チップ901の外周部分応力921と比較してより大きくなってしまう現象が発生していたが、第2の実施の形態に係る半導体装置101では、上記の第2層表面保護膜117の応力緩和効果により半導体チップ103の内周部分応力125と外周部分応力127が均一になり、両応力125,127の差が小さくなる。
【0082】
このことで、半導体チップ103の内側部分のトランジスタ123bのトランジスタ特性と、外側部分のトランジスタ123aのトランジスタ特性とに大きな差異が発生せず、最終的に回路異常を引き起こす恐れがなくなる。
【0083】
以上の現象を、図11を用いて詳細に説明する。
図11は、図10で示した第1層表面保護膜115と第2層表面保護膜117とが形成されている半導体チップ103の内周部分応力125および外周部分応力127が半導体チップ103内のトランジスタ123にどのように働くかを示したグラフ図である。縦軸がトランジスタ変動率をパーセンテージで示したもの、横軸が半導体チップ位置を示したものである。
【0084】
図11に示すように半導体チップ103の内周部分応力125は第2層表面保護膜117による応力緩和により応力は非常に小さくなり、半導体チップ103の内周部分にあるトランジスタ123bは大きく変動しない。逆に外周部分応力127は第2層表面保護膜117による応力緩和は無いが、もとより半導体チップ103の外周部分は応力が働き難い為、応力は非常に小さくなり、外周部分にあるトランジスタ123aは大きく変動しない。
【0085】
この結果、半導体チップ103の内周部分にあるトランジスタ特性と外周部分にあるトランジスタ特性とに大きな差異が発生してしまう現象が発生した従来の問題点の改善が可能となる。
【0086】
また、図8の(a)の一例では、電極パッド119aがある外側部分については表面保護膜113を1層構造にし、電極パッド119bがある内側部分については表面保護膜113を2層構造にしている。これは最外周4隅の電極パッド119aの周辺部分は応力差異が激しい部分である為、第1層表面保護層115と第2層表面保護層117との形成境界としている。
【0087】
図8の(b)の一例では、電極パッド119cがある外側部分については表面保護膜113を1層構造にし、電極パッド119dがある内側部分については表面保護膜113を2層構造にしている。
【0088】
これも上記同図の(a)と同様に最外周の電極パッド119cの周辺部分は応力差異が激しい部分である為、第1層表面保護層115と第2層表面保護層117との形成境界としている。
【0089】
図9の(a)の一例では、電極パッド119eがある外側部分については表面保護膜113を1層構造にし、電極パッド119f,119gがある中間部分については表面保護膜113を2層構造にし、更に電極パッド119hがある中央部分については3層構造にしている。
【0090】
これにより均一な応力緩和を求めた場合、このように表面保護膜113を重ねて応力緩和を実施することを示している。
図9の(b)の一例では、電極パッド119iがある外側部分については表面保護膜113を1層構造にし、電極パッド119jがある中間部分については表面保護膜113を2層構造にし、更に電極パッド119kがある中央部分については3層構造にしている。
【0091】
これも上記同図の(a)と同様により均一な応力緩和を求めた場合、このように表面保護膜を重ねて応力緩和を実施することを示している。
<第3の実施の形態>
図12は第3の実施の形態に係る半導体装置201について詳細に示したものである。
【0092】
この図12は半導体チップを外部基板と接合させた半導体装置の断面構造を示した図であり、具体的には第1の実施の形態、第2の実施の形態で示した構造を組み合わせたものである。
【0093】
半導体装置201は、図12に示すように半導体ウェハをダイシングなどで個片化したものを半導体チップ203とし、半導体チップ203上に形成したバンプ205と、外部基板207上に形成した外部電極209とを圧着させて電気的な接合をとり、半導体チップ203と外部基板207の間に接合樹脂211を注入して接合させる構造になっている。
【0094】
第3の実施の形態に係る半導体装置201の特徴としては、第1の実施の形態のように接合樹脂211を2種類にわけ、半導体チップ203の中央部分には低応力接合樹脂213を、周辺部分には高応力接合樹脂215をそれぞれ注入することと、第2の実施の形態のように表面保護膜217を2種類にわけ、半導体チップ203の中央部分には第1層表面保護膜219と第2層表面保護膜221の2層構造、周辺部分には第1層表面保護膜219の1層構造とすることとをミックスした構造になっていることである。
【0095】
図13は図12で示した半導体チップ203を外部基板207と接合させた場合、接合応力がトランジスタ223にどのように働くかを示した図である。
従来は単一な応力を持った接合樹脂の特性により、半導体チップ901の内周部分応力923が外周部分応力921より大きくなってしまう現象が発生していたが、第3の実施の形態では、半導体チップ203の内周部分には低応力接合樹脂213を、外周部分には高応力接合樹脂215をそれぞれ注入し、加えて、半導体チップ203の内周部分には第1層表面保護膜219と第2層表面保護膜221の2層構造、外側部分については第1層表面保護膜219の1層構造にそれぞれ採用している為、半導体チップ203の内周部分応力225が緩和され、内周部分応力225と外周部分応力227が均一になり、このことで半導体チップ201の外周部分のトランジスタ223aのトランジスタ特性と、内周部分のトランジスタ223bのトランジスタ特性とに大きな差異が発生せず、最終的に回路異常を引き起こす恐れがなくなる。
【0096】
以上の現象を、図14を用いて詳細に説明する。
図14は、図13で示した構造により、半導体チップ203の内周部分応力225と外周部分応力227が半導体チップ203内のトランジスタ223にどのように働くかを示したグラフ図である。縦軸がトランジスタ変動率をパーセンテージで示したもの、横軸が半導体チップ位置を示したものである。
【0097】
図14に示すように、半導体チップ203の内周部分応力225は低応力接合樹脂213と第2層表面保護膜221とを使用している為、応力は非常に小さくなり、半導体チップ203の内周部分にあるトランジスタ223bは大きく変動しない。逆に外周部分応力227は高応力接合樹脂215を使用し、第2層表面保護膜221を使用していないが、もとより半導体チップ203の外周部分は応力が働き難い為、その応力は非常に小さくなり、外周部分にあるトランジスタ223aは大きく変動しない。
【0098】
この結果、半導体チップ203の内周部分にあるトランジスタ223bと外周部分にあるトランジスタ223aとのトランジスタ特性に大きな差異が発生してしまう現象が発生した従来の問題点の改善が可能となる。
<変形例>
1.突起電極
上記実施の形態では、突起電極であるバンプは、半導体チップの電極パッドに形成されていたが、例えば、外部装置側の外部基板の外部電極に形成されていても良い。
【0099】
また、突起電極は、例えば、半導体チップへの電極パッドの形成に合わせて形成しても良いし、外部基板への外部電極の形成に合わせて形成しても良い。さらには、突起電極の形成に合わせて、半導体チップと外部基板とを接合しても良い。
2.電極パッド
上記実施の形態では、電極パッド(半導体チップの電極パッドと外部基板の外部電極である。)の平面視形状は円形状をしていたが、他の形状あっても良い。他の形状としては、三角形等の多角形状、楕円形状等がある。また、多角形状や楕円(円を含む。)の管状であっても良い。
3.半導体チップ
実施の形態では、半導体チップの平面視形状は正方形状をしていたが、他の形状であっても良い。他の形状としては、三角形等の多角形状等がある。
4.電極パッドの配置
実施の形態では、半導体チップに形成された電極パッドは複数あり、これらは、例えば、マトリクス上に配置されていたが、他の形状に配置されていても良い。例えば、同心円状に多重に配されていても良いし、四角形を除く(視角形状はマトリクス上であり、実施の形態で説明している。)、多重の多角形状であって良い。
5.接合樹脂(材料)
第1および第3の実施の形態では、接合樹脂として2種類用いたが、3種類以上用いても良い。3種類用いる例としては、図9における表面保護層のように、外側、中間、内側と接合樹脂を分けて形成しても良い。
【0100】
なお、接合樹脂を複数用いる場合、半導体チップの中央部分から周縁部分に移るに従って、半導体チップに作用する接合樹脂による応力が高くなるようにするのが好ましい。
また、実施の形態では、接合材料として樹脂を用いたが、他の材料で、同様の効果を得ることができる材料であれば、利用できる。
6.表面保護層
第2の実施の形態では、第2層表面保護層における電極パッド上の開口と、第1層表面保護層における電極パッド上の開口とが同じ形状、寸法であったが、例えば、異なる形状、寸法の開口としても良い。
【0101】
例えば、第2層表面保護層における電極パッド上の開口を、第1層表面保護層における電極パッド上の開口よりも大きくしても良い。また、第1層表面保護層における電極パッド上の開口を円形状とし、第2層表面保護層における電極パッド上の開口を、第1層表面保護膜層の開口形状である円の直径を一辺とする正方形状であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は半導体装置の構造、特に電極パッドの下部以外に関わらず半導体チップのすべてにトランジスタで構成される半導体回路などの形成を行う半導体装置の構造およびその製造方法に関して有用なものである。
【符号の説明】
【0103】
1 半導体チップ
3 基板
5 トランジスタ
7 電極パッド
9 表面保護膜
11 バンプ
13 外部基板
15 外部電極
17 接合樹脂
19 半導体装置
21 高応力接合樹脂
23 低応力接合樹脂
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップの第1の主面に形成された第1の電極パッドと、
外部基板と、
前記外部基板の第1の主面に形成された第2の電極パッドと、
前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとを電気的に接合する突起電極と、
前記半導体チップと前記外部基板との間の隙間に充填されて前記半導体チップと前記外部基板とを接合させる接合材料とを備え、
前記接合材料は、前記半導体チップの中心部分に形成された第1の接合材料と、前記半導体チップの外周部分に形成された第2の接合材料との少なくとも2種類があり、
前記半導体チップに作用する前記接合材料による引張応力は、前記第2の接合材料の方が前記第1の接合材料よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の電極パッドは、複数あり、前記第1の主面に行列状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の接合材料は前記半導体チップのコーナー部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の接合材料は前記第1の電極パッドの内、最外周の角に配置されたパッドを含む部分に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の接合材料は前記第1の電極パッドの内、最外周に配置されたパッドを含む部分に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体チップの前記第1の主面を、前記第1の電極パッド上に開口を有する状態で覆う第1の保護膜が形成されており、
前記中心部分内における前記第1の保護膜上に、前記第1の電極パッド上に開口を有するように第2の保護膜が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2の保護膜は前記半導体チップのコーナー部を除いた部分に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2の保護膜は、前記第1の電極パッドの内、最外周の角に配置されたパッドを除いた部分に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2の保護膜は前記第1の電極パッドの内、最外周に配置されたパッドを除いた部分に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項10】
第1の主面に第1の電極パッドを有する半導体チップを用意する工程と、
第1の主面に第2の電極パッドを有する外部基板を用意する工程と、
前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとを突起電極により接合する工程と、
前記半導体チップと前記外部基板との間の隙間に接合材料を注入して前記半導体チップと前記外部基板とを前記接合材料で接合させる工程とを備え、
前記接合材料で接合させる工程は、前記半導体チップの中心部分に第1の接合材料を注入する工程と、前記半導体チップの外周部分に、前記接合材料によって前記半導体チップに作用する引張応力が前記第1の接合材料よって作用する引張応力よりも高くなる第2の接合材料を注入する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記半導体チップは、平面視多角形状をし、
前記第1の接合材料を注入する工程は、接合材料注入ノズルを前記半導体チップの1辺に沿って当該辺の両端間を移動させて注入することを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記半導体チップは、平面視多角形状をし、
前記第2の接合材料を注入する工程は、接合材料注入ノズルを前記半導体チップの各辺に沿って一周させて注入することを特徴とした請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップの第1の主面に形成された第1の電極パッドと、
外部基板と、
前記外部基板の第1の主面に形成された第2の電極パッドと、
前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとを電気的に接合する突起電極と、
前記半導体チップと前記外部基板との間の隙間に充填されて前記半導体チップと前記外部基板とを接合させる接合材料とを備え、
前記接合材料は、前記半導体チップの中心部分に形成された第1の接合材料と、前記半導体チップの外周部分に形成された第2の接合材料との少なくとも2種類があり、
前記半導体チップに作用する前記接合材料による引張応力は、前記第2の接合材料の方が前記第1の接合材料よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の電極パッドは、複数あり、前記第1の主面に行列状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の接合材料は前記半導体チップのコーナー部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の接合材料は前記第1の電極パッドの内、最外周の角に配置されたパッドを含む部分に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の接合材料は前記第1の電極パッドの内、最外周に配置されたパッドを含む部分に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体チップの前記第1の主面を、前記第1の電極パッド上に開口を有する状態で覆う第1の保護膜が形成されており、
前記中心部分内における前記第1の保護膜上に、前記第1の電極パッド上に開口を有するように第2の保護膜が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2の保護膜は前記半導体チップのコーナー部を除いた部分に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2の保護膜は、前記第1の電極パッドの内、最外周の角に配置されたパッドを除いた部分に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2の保護膜は前記第1の電極パッドの内、最外周に配置されたパッドを除いた部分に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項10】
第1の主面に第1の電極パッドを有する半導体チップを用意する工程と、
第1の主面に第2の電極パッドを有する外部基板を用意する工程と、
前記第1の電極パッドと前記第2の電極パッドとを突起電極により接合する工程と、
前記半導体チップと前記外部基板との間の隙間に接合材料を注入して前記半導体チップと前記外部基板とを前記接合材料で接合させる工程とを備え、
前記接合材料で接合させる工程は、前記半導体チップの中心部分に第1の接合材料を注入する工程と、前記半導体チップの外周部分に、前記接合材料によって前記半導体チップに作用する引張応力が前記第1の接合材料よって作用する引張応力よりも高くなる第2の接合材料を注入する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記半導体チップは、平面視多角形状をし、
前記第1の接合材料を注入する工程は、接合材料注入ノズルを前記半導体チップの1辺に沿って当該辺の両端間を移動させて注入することを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記半導体チップは、平面視多角形状をし、
前記第2の接合材料を注入する工程は、接合材料注入ノズルを前記半導体チップの各辺に沿って一周させて注入することを特徴とした請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−156306(P2012−156306A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14068(P2011−14068)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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