説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】結晶欠陥が可及的に少なく、従来よりも抵抗率の低い高質のグラフェンを備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の上方に設けられた配線とを具備する。前記助触媒層のうち前記触媒層と接触している部分は、面心立方構造もしくは六方最密構造を有し、かつ、前記面心立方構造の(111)面もしくは前記六方最密構造の(002)面が前記半導体基板の表面と平行になるように配向しているか、または、前記助触媒層のうち前記触媒層と接触している部分は、アモルファス構造もしくは微結晶構造を有する。前記触媒層は、面心立方構造もしくは六方最密構造を有し、かつ、前記面心立方構造の(111)面もしくは前記六方最密構造の(002)面が前記半導体基板の表面と平行になるように配向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSI配線構造において、配線の微細化が進み、電子の界面非弾性散乱による電気抵抗率の上昇、電流密度の増加、ストレスマイグレーションまたはエレクトロマイグレーションによる信頼性の劣化等の問題が生じている。LSIの配線材料として、低抵抗金属である銅が主に用いられているが、配線構造の微細化が進むと、上記問題が依然として発生する。
【0003】
そこで、LSIの配線材料として、グラフェンを用いることが検討されている。グラフェンは、量子化伝導(いわゆる、Ballistic伝導)をすることが知られており、既存の金属材料に替わる超低抵抗材料として期待されている。量子化伝導では、電子はほとんど界面散乱を受けないので、配線構造を微細化しても界面散乱効果による抵抗上昇がほとんど起きない。
【0004】
しかし、粒径の小さな多結晶グラフェンの場合、グラフェン中に粒界等の結晶欠陥が多く存在する。この場合、粒界等の結晶欠陥部分において電子が散乱するため、配線構造を微細化したときに配線抵抗が高くなる可能性がある。従って、結晶欠陥が可及的に少ない高品質のグラフェンを形成することが所望されている。しかし、従来、結晶欠陥を低減させるようにグラフェンの成長を制御することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−164432号公報
【特許文献2】特開2009−70911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
結晶欠陥が可及的に少なく、従来よりも抵抗率の低い高品質のグラフェンを備えた半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態による半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の上方に設けられた配線とを具備する。前記助触媒層のうち前記触媒層と接触している部分は、面心立方構造もしくは六方最密構造を有し、かつ、前記面心立方構造の(111)面もしくは前記六方最密構造の(002)面が前記半導体基板の表面と平行になるように配向しているか、または、前記助触媒層のうち前記触媒層と接触している部分は、アモルファス構造もしくは微結晶構造を有する。前記触媒層は、面心立方構造もしくは六方最密構造を有し、かつ、前記面心立方構造の(111)面もしくは前記六方最密構造の(002)面が前記半導体基板の表面と平行になるように配向する。
【0008】
本実施形態による半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面の上方に、面心立方構造もしくは六方最密構造、または、アモルファス構造もしくは微結晶構造を有する、助触媒層を形成する。ここで、前記助触媒層が前記面心立方構造もしくは前記六方最密構造を有するときは、前記面心立方構造の(111)面もしくは前記六方最密構造の(002)面が前記半導体基板の前記表面と平行に配向するように前記助触媒層を形成する。前記助触媒層上に、面心立方構造もしくは六方最密構造を有する触媒層を形成する。ここで、前記触媒層が前記面心立方構造もしくは前記六方最密構造を有するときは、前記面心立方構造の(111)面もしくは前記六方最密構造の(002)面が前記半導体基板の前記表面と平行に配向するように前記触媒層を形成する。また、前記助触媒層のうち前記触媒層と接触している部分が、前記面心立方構造もしくは前記六方最密構造、または、前記アモルファス構造もしくは前記微結晶構造である。前記触媒層上にグラフェン層を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に従った半導体装置の構成を示す断面図。
【図2】触媒層の六員環およびその上に形成されたグラフェン層の六員環を半導体基板の表面上方から見た概念図。
【図3】面心立方構造の(111)面および六方最密構造の(002)面を示す説明図。
【図4】第1の実施形態に従った半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図5】図4に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図6】図5に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図7】グラフェン層のラマン分光結果を示すグラフ、および、XRD(X-ray Diffraction)法(X線回折法)による触媒層の面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面のピーク高さに対するG/D比を示すグラフ。
【図8】第1または第2の実施形態における助触媒層の構成例を示す断面図。
【図9】助触媒の六員環、助触媒上に形成された触媒層の六員環および触媒層上に形成されたグラフェン層の六員環を半導体基板の表面上方から見た概念図。
【図10】第3の実施形態の半導体装置の製造方法を示す図。
【図11】図10に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図12】図11に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図13】図12に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図14】図13に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図15】図14に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図16】図15に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図17】図16に続く、半導体装置の製造方法を示す断面図。
【図18】実施形態の助触媒層、触媒層および保護膜を用いたダマシン配線の形成方法を示す図断面図。
【図19】図18に続く、ダマシン配線の形成方法を示す図断面図。
【図20】実施形態の助触媒層および触媒層を用いたダマシン配線の形成方法を示す図断面図。
【図21】図18に続く、ダマシン配線の形成方法を示す図断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に従った半導体装置の構成を示す断面図である。尚、以下の図において、既出の図と対応する部分には既出の図と同一符号を付してあり、詳細な説明は省略する。
【0012】
本実施形態による半導体装置は、半導体基板10と、層間絶縁膜15,20,80と、コンタクトプラグ30と、配線70とを備えている。半導体基板10は、例えば、シリコン基板である。
【0013】
層間絶縁膜15,20,80は、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等の絶縁膜からなる。コンタクトプラグ30は、例えば、銅、タングステン、アルミニウム等の導電性材料からなり、層間絶縁膜15,20を貫通して半導体基板10に接触している。
【0014】
配線70は、助触媒層40と、触媒層50と、グラフェン層60との積層膜である。助触媒層40は、半導体基板10の表面上に設けられた層間絶縁膜20およびコンタクトプラグ30上に設けられている。助触媒層40は、面心立方構造または六方最密構造を有する材料からなる。
【0015】
例えば、助触媒層40は、Ti、Cu、Zn、Zr、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Re、Ir、PtおよびAuからなるグループのいずれかの材料からなる単層膜、前記グループのいずれかの材料の窒化物からなる単層膜、前記グループの中から選択される少なくとも二つの材料を含む合金からなる単層膜、または、Ti、Cu、Zn、Zr、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Re、Ir、Pt、Au、前記複数の金属のそれぞれの窒化物、および、前記複数の金属の任意の二つ以上の金属からなる、前記複数の金属に関しての全ての合金からなるグループの中から選択される材料を二つ以上含む積層膜である。
【0016】
例えば、TiN、Cu、Ptは面心立方構造を有し、Ti、Zn、Ruは六方最密構造を有する。また、TaN膜も助触媒層40として用いることができる。尚、助触媒層40として次のような金属材料を含む膜が用いられ得る。
【0017】
例えば、助触媒層40は、TiN膜(上層)とTaN膜(下層)との積層膜、TiN膜(上層)とTi膜(下層)との積層膜、Ir層を最上層に含む積層膜、Ti単層膜、TiN単層膜、TaN単層膜である。これらの膜は、PVD(Physical Vapor Deposition)法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成される。尚、上層は、触媒層50およびグラフェン層60に近い層であり、下層は、半導体基板10に近い層である。
【0018】
助触媒層40が面心立方構造を有し、(111)面が半導体基板10の表面と平行となるように配向している場合、または、助触媒層40が六方細密構造を有し、(002)面が半導体基板10の表面と平行となるように配向している場合、触媒層50は、面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面が半導体基板10の表面と平行になるように配向される。
【0019】
触媒層50は、助触媒層40上に設けられ、面心立方構造または六方最密構造を有する材料からなる。例えば、触媒層50は、Ni、CoおよびFeからなるグループのいずれかの材料からなる単層膜、前記グループのいずれかの材料の窒化物からなる単層膜、前記グループの中から選択される少なくとも二つの材料を含む合金からなる単層膜、または、Niおよびその窒化物、Coおよびその窒化物、ならびに、Feおよびその窒化物からなるグループの中から選択される互いに材料が異なる二つ以上の膜を含む積層膜である。
【0020】
助触媒層40が面心立方構造を有し、(111)面が半導体基板10の表面と平行となるように配向している場合、または、助触媒層40が六方細密構造を有し、(002)面が半導体基板10の表面と平行となるように配向している場合、触媒層50は面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面が半導体基板の表面と平行になるように配向する。これにより、触媒層50上に結晶欠陥が少なく結晶粒が大きいグラフェン層を形成することができる。
【0021】
尚、助触媒層40の全体が面心立方構造や六方細密構造である必要はない。助触媒層40のうち少なくとも触媒層50と接触している部分が、面心立方構造や前記六方最密構造であればよい。例えば、TaN膜(上層)とTa膜(下層)との積層膜であってもよい。
【0022】
配線70は、半導体基板10の表面に対して平行な面内において延伸している。コンタクトプラグ30は、層間絶縁膜15,20を貫通して半導体基板10と配線70とを電気的に接続する。層間絶縁膜15,20は、隣接する複数のコンタクトプラグ30間を埋め込む。層間絶縁膜80は、隣接する複数の配線70間を埋め込む。
【0023】
グラフェンは、量子化伝導によりほとんど界面散乱を受けないので、界面散乱効果による抵抗上昇が生じない。また、グラフェンは耐熱性に優れており、他の金属材料では耐えることができないような高温の半導体製造プロセスにも適用することができる。
【0024】
このように低抵抗かつ耐熱性に優れたグラフェンは、LSIデバイスの配線として適していると考えられる。例えば、下層配線の表面部を平坦化した後、グラフェンの成長に必要な助触媒層および触媒層を成膜する。そして、触媒層上にグラフェン層を成長させることが考えられている。
【0025】
しかし、グラフェン層は、その下地となる触媒層によって結晶性が大きく変化することが知られている。上述の通り、粒径の小さい多結晶グラフェンでは、電子が、粒界等において散乱し、抵抗が上昇してしまう。
【0026】
本実施形態では、触媒層50の表面(半導体基板10の表面に対して平行な面)を、面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面にする。即ち、グラフェンの被堆積面を、面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面にする。
【0027】
面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面は、図2に示すように、グラフェンの結晶構造に類似した構造である。
【0028】
図2は、触媒層50の六員環およびその上に形成されたグラフェン層60の六員環を半導体基板10の表面上方から見た概念図である。図2に示すように、触媒層50の六員環を構成する原子50a〜50gは、グラフェン層60の3つの六員環を構成する原子のうち原子60a〜60gの位置に重複する。従って、結晶欠陥の少ないグラフェン層60が触媒層50上に形成され易いことが分かる。
【0029】
表1に、触媒層50の種々の材料について、触媒層50とグラフェン層60との間の格子不整合度を示す。格子不整合度は以下のように定義される。
【0030】
グラフェン層60の六員環の第2近接原子間の距離(約0.246μm)をA(基準)、触媒層50の面心立方構造の(111)面もしくは六方最密構造の(002)面の近接原子間の距離をBとした場合、格子不整合度は、100(B−A)/A[%]で定義される。
【表1】

【0031】
図2の場合、例えば触媒層の材料にNiを用いた場合、面心立方構造(111)面の近接原子間距離(0.249nm)とグラフェン層60の六員環の第二近接原子間距離(0.246nm)の差が約1.1%と小さいことから結晶欠陥の少ないグラフェン層60が触媒層50上に形成され易い。
【0032】
さらに詳細な検討を行って、例えば、触媒層50の近接原子間距離が、グラフェン層60の六員環の第2隣接原子間距離に対する長さの差が9%以内、望ましくは5%以内である場合に、結晶欠陥の少ないグラフェン層60が触媒層50上に形成され易いことが、ラマン分光分析のG/D比測定により確認された。一方で、例えば9%を超えるRu上には、十分なドメインを持つグラフェンは、ラマン分光分析のG/D比測定からは確認できなかった。
【0033】
触媒層50は、例えばNi、CoおよびFeからなるグループのいずれかの材料からなる単層膜、前記グループのいずれかの材料の窒化物からなる単層膜、前記グループの中から選択される少なくとも二つの材料を含む合金からなる単層膜、または、Niおよびその窒化物、Coおよびその窒化物、ならびに、Feおよびその窒化物からなるグループの中から選択される互いに材料が異なる二つ以上の膜を含む積層膜である。
【0034】
触媒材料であるNi、CoおよびFeは、基本は相互に全率固溶となることができる元素である。そのため、2種類以上の触媒元素を含む合金は、その全体の原子間距離を調整することが可能となる。従って、2種以上の触媒元素を含む触媒層を用いることにより、良好なグラフェン成長を得ることが可能となる。
【0035】
図3(A)および図3(B)は、それぞれ面心立方構造の(111)面および六方最密構造の(002)面を示す説明図である。面心立方構造の(111)面は、六方最密構造の(002)面と原子配列が同じである。これは、図に示した(002)面を延長し、長周期での格子配置を考慮すると理解できる。
【0036】
本実施形態によれば、助触媒層40が面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面を有し、それらの(111)面または(002)面が半導体基板10の表面と平行である。これにより、触媒層50が堆積される助触媒層40の上面が面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面となるので、触媒層50も、面心立方構造を有する場合には、その(111)面が半導体基板10の表面と平行に配向し、六方最密構造を有する場合には、その(002)面が半導体基板10の表面と平行に配向する。
【0037】
さらに、グラフェン層60が堆積される触媒層50の上面が面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面となる。その結果、グラフェン層60が堆積される触媒層50の上面が面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面となる。これにより、結晶欠陥の少ないグラフェン層60が触媒層50上に容易に成長され得る。
【0038】
図2の概念図と同様、助触媒層の積層構造まで記したものを図9に示す。助触媒層、触媒層、グラフェン層との格子整合度が良好なことにより、より高配向化することが理解される。
【0039】
表2は、助触媒層40の種々の材料について、助触媒層40とグラフェン層60との間の格子不整合度を示す。格子不整合度は以下のように定義される。
【0040】
グラフェン層60の六員環の第3近接原子間の距離(約0.285μmm)をA’(基準)、助触媒層40の面心立方構造の(111)面もしくは六方最密構造の(002)面の近接原子間の距離をB’とした場合、格子不整合度は、100(B'−A')/A'[%]で定義される。
【表2】

【0041】
表2に示された材料からなる助触媒層とグラフェン層との間の格子不整合度は10%以下であり、材料によっては格子不整合度は4%以下である。助触媒層とグラフェン層との間の格子不整合のみならず、助触媒層とグラフェン層との間の格子不整合度も小さくすることにより、より高品質な(より欠陥の少ない)グラフェン層を得ることができる。これにより、より低抵抗のグラフェン層を含む配線(グラフェン配線)を形成することが可能となる。
【0042】
図4から図6は、第1の実施形態に従った半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0043】
まず、半導体基板10上にトランジスタもしくはキャパシタ等の半導体素子(図示せず)を形成する。次に、半導体基板10上に層間絶縁膜15,20を堆積する。層間絶縁膜15,20は、例えば、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜である。次に、層間絶縁膜15,20を貫通し、半導体基板10に接触するコンタクトプラグ30を形成する。
【0044】
コンタクトプラグ30の材料は、例えば、銅、タングステン、アルミニウム等である。コンタクトプラグ30は、層間絶縁膜20の上面が露出されるまでCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて研磨される。これにより、図4に示す構造が得られる。
【0045】
尚、コンタクトプラグ30に用いられる金属が半導体基板10へ拡散することを防止するために、助触媒層(図示せず)が、コンタクトプラグ30と半導体基板10との間に形成されてもよい。この助触媒層の材料は、例えば、Ta、Ti、Ru、Mn、Co、もしくは、これらの材料のいずれかの窒化物でよい。
【0046】
次に、コンタクトプラグ30および層間絶縁膜20上にグラフェン層60を含む配線を形成する。
【0047】
まず、PVD法またはCVD法を用いて、助触媒層40として、例えば、約1nm〜20nmの厚みのTaN膜を層間絶縁膜20およびコンタクトプラグ30上に堆積する。
【0048】
尚、助触媒層40は、上述の通り、Ti、Cu、Zn、Zr、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Re、Ir、PtおよびAuからなるグループのいずれかの材料からなる単層膜、前記グループのいずれかの材料の窒化物からなる単層膜、前記グループの中から選択される少なくとも二つの材料を含む合金からなる単層膜、または、Ti、Cu、Zn、Zr、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Re、Ir、Pt、Au、前記複数の金属のそれぞれの窒化物、および、前記複数の金属の任意の二つ以上の金属からなる、前記複数の金属に関しての全ての合金からなるグループの中から選択される材料を二つ以上含む積層膜でよい。
【0049】
さらに、助触媒層40として次のような金属材料を含む膜が用いられ得る。例えば、助触媒層40は、TaN膜(上層)とTa膜(下層)との積層膜、TiN膜(上層)とTaN膜(下層)との積層膜、TiN膜(上層)とTi膜(下層)との積層膜、Ir膜を最上層に含む積層膜(例えば下層からTa膜とRu膜とIr膜の積層膜)、Ta膜とRu膜の積層膜、Ti単層膜、TiN単層膜、または、TaN単層膜である。これらの膜は例えばPVD法もしくはCVD法で形成される。
【0050】
これらの材料は、面心立方構造または六方最密構造を有する。従って、助触媒層40は、層間絶縁膜20およびコンタクトプラグ30上に堆積されるときに、表面エネルギーの観点から最緻密面である面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面が半導体基板10の表面と平行に配向するように堆積される。
【0051】
次に、PVD法を用いて、触媒層50の材料として、例えば、約1nm〜50nmの厚みのCoを助触媒層40上に堆積する。尚、触媒層50は、上述の通り、Ni、Co、Feのいずれかの材料からなる単層膜、これらの材料のいずれかの窒化物からなる単層膜、これらの材料うち少なくとも2種類以上を含む合金、または、これらの材料およびこれらの材料の窒化物のうち2種類以上からなる積層膜でよい。
【0052】
これらの材料は、面心立方構造または六方最密構造を有する。従って、触媒層50もまた、面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面が半導体基板10の表面と平行に配向するように堆積される。このとき、助触媒層40は面心立方構造(111)面または六方最密構造の(002)面が半導体基板10の表面と平行に配向するように堆積されている。そのため、従来よりも面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面が半導体基板の表面と平行に強く配向した触媒層50を得ることができる。これにより、図5に示す構造が得られる。
【0053】
このように、本実施形態では、面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面が半導体基板10の表面と平行になるよう配向した助触媒層40を用いることによって、触媒層50の面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面も半導体基板の表面と平行になるように触媒層50を意図的に配向させることができる。
【0054】
そして、図6に示すように、触媒層50上にグラフェン層60を成長させる。グラフェン層60の成膜には、例えばCVD法を用いる。CVD法の炭素源としてはメタン、アセチレン等の炭化水素系ガスまたはその混合ガスを用い、キャリアガスとしては水素や希ガスを用いる。グラフェン層60の形成温度の上限は、約1000℃、下限は約200℃であり、その形成温度は、例えば、約600℃である。リモートプラズマを使用してイオンおよび電子を除去するために、半導体基板10の上部に電極を設置し、電圧を印加してもよい。グラフェン層60を成膜させる印加電圧は、例えば、0〜±100Vである。
【0055】
グラフェン層60上に保護膜としての金属膜または絶縁膜を形成しても構わない。金属膜は例えばスパッタ法により形成する。絶縁膜は例えばCVD法または塗布法で形成する。
【0056】
その後、リソグラフィ技術およびRIE(Reactive Ion Etching)法を用いて、グラフェン層60、触媒層50および助触媒層40を加工することによって、図1に示す配線70が形成される。さらに、CVD法を用いて層間絶縁膜80の材料を堆積し、CMP法を用いて層間絶縁膜80の材料を平坦化することによって、図1に示す構造が得られる。さらに、グラフェン層を用いた多層配線構造を形成してもよい。あるいは、配線70上にさらに従来のW、Cu、Alを用いた配線を形成してもよい。
【0057】
このようにして、本実施形態による半導体装置は完成される。
【0058】
図7(A)は、グラフェン層60のラマン分光結果を示すグラフである。図7(B)は、XRD(X-ray Diffraction)法(X線回折法)による触媒層50の面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面のピーク高さに対するG/D比を示すグラフである。
【0059】
図7(A)のグラフに、DバンドBdおよびGバンドBgのピーク位置を示している。
【0060】
DバンドBdは、グラフェンの結晶欠陥により発光する帯域である。GバンドBgは、グラフェンの六員環により発光する帯域である。
【0061】
従って、グラフェン(多結晶)に存在する欠陥は、このラマンスペクトルのDバンドBdのピークによって確認することができる。DバンドBdのピークが大きければ大きいほど、グラフェン内に多くの結晶欠陥が存在すると解釈できる。一方、DバンドBdのピークが低い場合には、グラフェン内に欠陥がほとんどないと解釈することができる。
【0062】
また、グラフェンの有無は、このラマンスペクトルのGバンドBgで確認することができる。GバンドBgのピークが大きければ大きいほど、グラフェンが多く形成されていると解釈できる。一方、GバンドBgのピークが低い場合には、グラフェン自体が少ないと解釈することができる。
【0063】
従って、DバンドBdのピークとGバンドBgのピークとの高さの比、つまり、G/D比がグラフェンの品質を表す指標の1つとして使われている。G/D比は、波長532nmの入射光による可視ラマン分析によるラマンスペクトルにおけるDバンドのピークの高さとGバンドのピークの高さの比(G/D)である。G/D比が高いほど欠陥の少ないグラフェンが形成されていると言える。
【0064】
図7(B)のXRD法で用いたサンプルは、助触媒層40としてTiNを約10nm〜15nm堆積し、その上に触媒層50としてCoを約30nm堆積し、さらに、触媒層50上にCVD法にてグラフェン層60を成膜した構造を有する。
【0065】
このようなサンプルの触媒層50の面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面をXRD法によって分析した。
【0066】
面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面のピークは、面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面が半導体基板10の表面に対して平行になっており、半導体基板10の面内に占める面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面の割合が多いときに大きく現れる。
【0067】
図7(B)に示すように、G/D比は、触媒層50のXRD分析による面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面のピークの高さが高いほど大きくなる傾向がある。即ち、触媒層50のXRD分析による面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面のピークの高さが高いほど、その触媒層50上に成長したグラフェンは、高品質であり欠陥結果が少ない。さらに換言すると、触媒層50の面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面を半導体基板10の表面に対して平行にすることによって、高品質なグラフェン層60を得ることができる。
【0068】
例えば、図7(A)および図7(B)に示すサンプルRbにおける触媒層50の面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面のピークの高さは、100cps(count par second)以下であり、そのG/D比は、約1.2である。これに対し、サンプルRaにおける触媒層50の面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面のピークの高さは、1000cps以上であり、そのG/D比は、約2.3である。これにより、触媒層50の面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面のピークの高さが高いほど、グラフェン層60のG/D比が高くなることが分かる。
【0069】
尚、触媒層50の面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面のピークの高さは、その他の面のピーク(例えば、面心立方構造の(001)面に起因するXRD測定のピーク)の高さに対して充分に大きい(例えば、10倍以上)ことが望ましい。
【0070】
本実施形態によれば、助触媒層40が面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面を有し、それらの(111)面または(002)面が半導体基板10の表面と平行である。これにより、触媒層50も、面心立方構造を有する場合には、その(111)面が半導体基板10の表面と平行に配向し、六方最密構造を有する場合には、その(002)面が半導体基板10の表面と平行に配向する。
【0071】
さらに、これにより、グラフェン層60が堆積される触媒層50の上面が面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面となる。これにより、結晶欠陥が少なく抵抗率の低いグラフェン層60が触媒層50上に容易に成長され得る。
【0072】
従って、実施形態の助触媒/触媒/グラフェンの構造を採用することで、素子の微細化が進んでも、欠陥部の電子散乱を抑制でき、これにより、従来よりも抵抗率の低い高品質のグラフェンを備えた半導体装置を実現できるようになる。
【0073】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、助触媒層40が面心立方構造を有する場合には、助触媒層40は、その(111)面が半導体基板10の表面に対して平行になるように配向し、助触媒層40が六方最密構造を有する場合には、その(002)が半導体基板10の表面に対して平行になるように配向する。
【0074】
しかし、助触媒層40は、面心立方構造および六方最密構造を有しない金属で構成されてもよい。
【0075】
例えば、助触媒層40は、体心立方構造を有するV、Cr、Mn、Nb、Mo、TaおよびWからなるグループのいずれかの材料からなる単層膜、前記グループのいずれかの材料の窒化物からなる単層膜、前記グループの中から選択される少なくとも二つの材料を含む合金からなる単層膜、または、V、Cr、Mn、Nb、Mo、Ta、W、前記複数の金属のそれぞれの窒化物、および、前記複数の金属の任意の二つ以上の金属からなる、前記複数の金属に関しての全ての合金からなるグループの中から選択される材料を二つ以上含む積層膜でもよい。尚、WNは、面心立方構造、六法最密構造を有するので、第1の実施形態における助触媒層40に属する。
【0076】
この場合、助触媒層40は、アモルファス状、つまり、アモルファス構造または微結晶構造であることが好ましい。尚、助触媒層40の全体がアモルファス構造や微結晶構造である必要はない。助触媒層40のうち少なくとも触媒層50と接触している部分が、アモルファス構造や微結晶構造であればよい。
【0077】
一般的に、アモルファス構造または微結晶構造の下地上に金属を堆積した場合、金属は最も安定となる優先配向をとりやすいことが知られている。本実施形態ではこの特性を利用し、アモルファス構造または微結晶構造を有する補触媒層を形成し、触媒層を面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面へ配向させる。従って、触媒層50が面心立方構造または六方最密構造を有すれば、アモルファス構造または微結晶構造を有する金属からなる助触媒層40上に触媒層50が堆積されたとしても、触媒層50の面心立方構造の(111)面または六方最密構造の(002)面は半導体基板10の表面に対して平行になるように配向し得る。
【0078】
これにより、第1の実施形態と同様にG/D比が高く、結晶欠陥の少ない高品質なグラフェン層60を触媒層50上に形成することができる。第2の実施形態のその他の構成は、第1の実施形態の構成と同様でよい。また、第2の実施形態のその他の製造方法は、第1の実施形態の製造方法と同様でよい。従って、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
図8(A)〜図8(E)は、第1または第2の実施形態における助触媒層40の構成例を示す断面図である。
【0080】
図8(A)は、Ti膜とTiN膜との積層膜を示す。Ti膜は、六方最密構造を有するように形成され、TiN膜は、面心立方構造を有するように形成される。
【0081】
図8(B)は、Ta膜とTaN(タンタルナイトライド)膜との積層膜を示す。PVD法であるバイアススパッタ法、または、CVD法を用いてTa膜を形成する場合、微量の不純物がTa膜中に混入する。CVD法を用いた場合、微量の不純物は、例えば、有機ソース中の炭素を含む。その結果、アモルファス構造もしくは微結晶構造を有するTa膜が形成されうる。
【0082】
Ta膜上には、面心立方構造を有するTaN膜、または、アモルファス構造または微結晶構造を有するTaN膜が形成され得る。後者のTaN膜についてさらに説明する。
【0083】
TaxNyは、タンタル組成(x)および窒素組成(y)によって、例えば、Ta、Ta2 NまたはTaNとなる。Ta膜上にTaN膜を形成する場合、TaN膜はTa、Ta2 NおよびTaNの少なくとも一つを含む混合層とすることができる。そのため、Ta膜上には、少なくとも上面部がアモルファス構造または微結晶構造を有するTaN膜が形成されうる。このような構造の助触媒層でも構わない。この助触媒層上の触媒層は、グラフェン層が形成されやすい結晶構造の結晶面(面心立方構造の(111)面、六方最密構造の(002)面)に対して優先配向を取り易い。上記触媒層上には高品質のグラフェン層が形成される。
【0084】
図8(C)は、Taの単層膜を示す。Ta膜はアモルファス構造を有するように形成される。図8(D)は、TaNの単層膜を示す。TaN膜は、面心立方構造を有するように形成される。図8(E)は、TaN膜とTiN膜との積層膜を示す。TaN膜およびTiN膜は、面心立方構造を有するように形成される。
【0085】
触媒層50は、これらの材料からなる助触媒層40上に形成されたときに、その面心立方構造の(111)面が半導体基板10の表面と平行になるように配向され、もしくは、その六方最密構造の(002)面が半導体基板10の表面と平行になるように配向される。これにより、グラフェン層60が、触媒層50上に容易に形成され得る。
【0086】
従って、実施形態の助触媒/触媒/グラフェンの構造を採用することで、素子の微細化が進んでも、欠陥部の電子散乱を抑制でき、これにより、従来よりも抵抗率の低い高品質のグラフェンを備えた半導体装置を実現できるようになる。
【0087】
尚、第1および第2の実施形態で述べた、助触媒層および触媒層を配向させる構造を採用することにより、以下のメリットを享受することができる。
【0088】
第1のメリットは、成長させるグラフェンの欠陥を少なくでき、その結果として、グラフェンのドメインを大きくできることである。
【0089】
第2のメリットは、グラフェン成長の起点のコントロールにも役立つことである。特に、600℃などの温度で成長を行う場合、触媒層の表面からの成長ではなく、触媒層のファセットの端部からグラフェンが成長していくと考えられる。このファセット端面の角度として、比較的安定に形成されるのが、例えば面心立方構造の(111)配向させた触媒面に対しては、面心立方構造の(100)、(110)面となる。このように、触媒層の配向をコントロールすることにより、ファセット面がそろいやすくなる。基本としては凹凸があるだけでグラフェン層は形成されやすくなり、その角度は、触媒層の配向および助触媒層の配向がそろうことで、比較的均質化する。例えば、特徴的な角度は、それぞれの面に対しておおよそ、34.5度[(111)面と(110)面とがなす角度)]、54.7度[(111)面と(100)面とがなす角度)]であるが、このような視点も含めて、助触媒層(下地)上の触媒層の配向の制御は重要である。
【0090】
第1および第2の実施形態では、助触媒層上に触媒層、グラフェン層を形成した後、加工を行っているが、助触媒層上の触媒層を加工した後、グラフェン層を形成しても構わない。さらに、ダマシン構造の配線を形成し、続いて、助触媒層、触媒層、グラフェン層を形成し、さらに絶縁膜もしくは金属膜をグラフェン層の保護膜として形成し、その後、配線外の余剰な膜を除去する方法で配線を形成しても構わない。
【0091】
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態では、RIE法を用いて形成された配線(RIE配線)を具備する半導体装置について説明したが、本実施形態では、ダマシン法を用いて形成された配線(ダマシン配線)を具備する半導体装置について説明する。
【0092】
まず、第1の実施形態と同様に、図4に示された構造を形成する。
【0093】
次に、図10に示すように、層間絶縁膜20およびコンタクトプラグ30を含む領域上に、溝の形成時にストッパとして機能するストッパ膜85、および、層間絶縁膜90を形成する。ストッパ膜85は、例えば、SiN膜またはSiCN膜である。本実施形態では、ストッパ膜85はSiN膜とする。尚、ストッパ膜85は省くことも可能である。層間絶縁膜90は、単層の絶縁膜(例えば、シリコン窒化膜やシリコン酸化膜)でも構わないし、積層の絶縁膜(例えばシリコン窒化膜とシリコン酸化膜の積層膜)でも構わない。
【0094】
次に、図11に示すように、フォトリソグラフィ技術およびRIE法を用いて層間絶縁膜90を選択的にエッチングする。次に、コンタクトプラグ30の表面が露出するように、ストッパ膜85をエッチングする。このようにして配線溝が形成される。
【0095】
次に、図12に示すように、層間絶縁膜90の上面、上記配線溝の側面および底面を覆うように助触媒層40を形成する。本実施形態では、助触媒層40としてTiN膜(上層)とTi膜(下層)との積層膜を用いる。この場合、図12に示すように、助触媒層40は段差被覆性良く形成される。配線溝の側壁の形状、配線溝の側壁の角度は、特に限定はない。配線溝の側壁の角度は、例えば、90°以上20°以下の範囲内である。角度が浅い場合は、配線溝を浅く形成することにより、溝段差を確保できる。これにより、角度が浅い場合でも、隣接する配線間のショートを防げるようになる。
【0096】
次に、図13に示すように、助触媒層40上に触媒層50を形成する。助触媒層40を形成する工程と触媒層50を形成する工程との間に、助触媒層40は大気に晒されても構わない。ただし、より高品質の触媒層50を形成する観点からは、助触媒層40は真空雰囲気中に保持されている方が望ましい。
【0097】
次に、図14に示すように、触媒層50に前処理を施し、その後、触媒層50上にグラフェン層60を形成する。上記の前処理は、例えば、Ar,H2 ,N2 等を含む混合ガスを用いリモートプラズマを使用した処理であり、この処理は200から1000℃、例えば、350℃で行う。
【0098】
グラフェン層60を形成するための方法は、第1の実施形態と同様に、例えば、CVD法である。CVD法を用いた場合、炭素源としてはメタン、アセチレン等の炭化水素系ガスまたはその混合ガスを用い、キャリアガスとしては水素や希ガスを用いる。グラフェン層60の形成温度の上限は約1000℃、下限は約200℃であり、その形成温度は、上述の通り、例えば、約600℃である。また、リモートプラズマを使用してイオンおよび電子を除去するために、半導体基板10の上部に電極を設置し、この電極に電圧を印加してもよい。この電極に印加する電圧は、上述の通り、例えば、0〜±100Vである。
【0099】
次に、図15に示すように、配線溝を埋め込むように、グラフェン層60上に保護膜110を形成する。保護膜110は、例えば、絶縁膜である。この場合、保護膜110は、例えば、CVD法または塗布法により形成する。保護膜110は、金属膜でも構わない。この場合、保護膜110は、例えば、スパッタ法により形成する。
【0100】
次に、図16に示すように、配線溝外の助触媒層40、触媒層50、グラフェン層60および保護膜110をCMP法により除去し、ダマシン配線(助触媒層40、触媒層50およびグラフェン層60を含む配線)を得る。
【0101】
この後は、周知の工程が続く。例えば、図17に示すように、第1の層間絶縁膜120を形成する工程、第2の層間絶縁膜130を形成する工程と、ダマシン配線に接続する配線(例えばCu配線またはW配線)140を形成する工程が続く。
【0102】
本実施形態において、配線溝の底上の助触媒層40は、第1の実施形態と同様に、面心立方構造もしくは六方最密構造、または、アモルファス構造もしくは微結晶構造を有する。助触媒層40が面心立方構造もしくは六方最密構造を有するときは、面心立方構造の(111)面もしくは六方最密構造の(002)面が半導体基板10の表面と平行に配向するように助触媒層40を形成する。
【0103】
また、本実施形態において、助触媒層40上の触媒層50は、第1の実施形態と同様に、面心立方構造もしくは六方最密構造を有する。触媒層50が面心立方構造もしくは六方最密構造を有するときは、面心立方構造の(111)面もしくは六方最密構造の(002)面が半導体基板10の表面と平行に配向するように触媒層50を形成する。
【0104】
このような助触媒層40を配線溝の底上に形成し、助触媒層40上に触媒層50を形成することにより、配線溝の底上に抵抗率の低い高品質なグラフェン層60を形成できる。これにより、素子の微細化が進んでも、低抵抗のダマシン配線を実現できるようになる。
【0105】
実施形態の助触媒層40および触媒層50を用いた他のダマシン配線について説明する。
【0106】
図18および図19は、保護膜を用いない場合の他のダマシン配線のプロセスを示している。この例では、図13の工程後に、配線溝を埋め込むようにグラフェン層60を形成する(図18)。そして、配線溝外の助触媒層40、触媒層50およびグラフェン層60をCMP法により除去し、ダマシン配線を得る(図19)。
【0107】
図20および図21は、保護膜を用いた場合の他のダマシン配線のプロセスを示している。この例では、図13の工程後に、配線溝を埋め込むようにグラフェン層60を形成し、続いて、グラフェン層60上に保護膜110を順次形成する(図20)。そして、配線溝外の助触媒層40、触媒層50、グラフェン層60および保護膜110をCMP法により除去し、ダマシン配線を得る(図21)。CMP法の代わりに、薬液処理、RIE法またはダウンフローエッチング法を用いても構わないし、これらを適宜組み合わせても構わない。
【0108】
本実施形態のダマシン配線は下層のコンタクトプラグ30に接続するが、本実施形態のダマシン配線は下層の配線(ダマシン配線またはRIE配線)に接続しても構わない。また、本実施形態はデュアルダマシン法で形成された配線(デュアルダマシン配線)にも適用できる。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0110】
10…半導体基板、15、20、80,90,120,130…層間絶縁膜、30…コンタクトプラグ、40…助触媒層、50…触媒層、60…グラフェン層、70,140…配線、85…ストッパ膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の上方に設けられた配線とを具備し、
前記配線は、助触媒層と、前記助触媒層上に設けられた触媒層と、前記触媒層上に設けられたグラフェン層とを含み、
前記助触媒層のうち前記触媒層と接触している部分は、面心立方構造もしくは六方最密構造を有し、かつ、前記面心立方構造の(111)面もしくは前記六方最密構造の(002)面が前記半導体基板の表面と平行になるように配向しているか、または、前記助触媒層のうち前記触媒層と接触している部分は、アモルファス構造もしくは微結晶構造を有し、
前記触媒層は、面心立方構造もしくは六方最密構造を有し、かつ、前記面心立方構造の(111)面もしくは前記六方最密構造の(002)面が前記半導体基板の表面と平行になるように配向することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記助触媒層のうち前記触媒層と接触している部分が、前記面心立方構造もしくは六方最密構造を有する場合、
前記助触媒層は、Ti、Cu、Zn、Zr、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Re、Ir、PtおよびAuからなるグループのいずれかの材料からなる単層膜、前記グループのいずれかの材料の窒化物からなる単層膜、前記グループの中から選択される少なくとも二つの材料を含む合金からなる単層膜、または、Ti、Cu、Zn、Zr、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Re、Ir、Pt、Au、前記複数の金属のそれぞれの窒化物、および、前記複数の金属の任意の二つ以上の金属からなる、前記複数の金属に関しての全ての合金からなるグループの中から選択される材料を二つ以上含む積層膜であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記助触媒層のうち前記触媒層と接触している部分が、前記アモルファス構造もしくは微結晶構造を有する場合、
前記助触媒層は、V、Cr、Mn、Nb、Mo、TaおよびWからなるグループのいずれかの材料からなる単層膜、前記グループのいずれかの材料の窒化物からなる単層膜、前記グループの中から選択される少なくとも二つの材料を含む合金からなる単層膜、または、V、Cr、Mn、Nb、Mo、Ta、W、前記複数の金属のそれぞれの窒化物、および、前記複数の金属の任意の二つ以上の金属からなる、前記複数の金属に関しての全ての合金からなるグループの中から選択される材料を二つ以上含む積層膜であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記触媒層は、Ni、CoおよびFeからなるグループのいずれかの材料からなる単層膜、前記グループのいずれかの材料の窒化物からなる単層膜、前記グループの中から選択される少なくとも二つの材料を含む合金からなる単層膜、または、Ni、Co、Fe、前記複数の金属のそれぞれの窒化物、および、前記複数の金属の任意の二つ以上の金属からなる、前記複数の金属に関しての全ての合金からなるグループの中から選択される材料を二つ以上含む積層膜であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
半導体基板の表面の上方に、面心立方構造もしくは六方最密構造、または、アモルファス構造もしくは微結晶構造を有する、助触媒層を形成すること、前記助触媒層が前記面心立方構造もしくは前記六方最密構造を有するときは、前記面心立方構造の(111)面もしくは前記六方最密構造の(002)面が前記半導体基板の前記表面と平行に配向するように前記助触媒層を形成すること、
前記助触媒層上に、面心立方構造もしくは六方最密構造を有する触媒層を形成すること、前記触媒層が前記面心立方構造もしくは前記六方最密構造を有するときは、前記面心立方構造の(111)面もしくは前記六方最密構造の(002)面が前記半導体基板の前記表面と平行に配向するように前記触媒層を形成すること、前記助触媒層のうち前記触媒層と接触している部分は、前記面心立方構造もしくは前記六方最密構造、または、前記アモルファス構造もしくは前記微結晶構造であること、および、
前記触媒層上にグラフェン層を形成することを具備する半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記助触媒層のうち前記触媒層と接触している部分が、前記面心立方構造もしくは六方最密構造を有する場合、
前記助触媒層は、Ti、Cu、Zn、Zr、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Re、Ir、PtおよびAuからなるグループのいずれかの材料からなる単層膜、前記グループのいずれかの材料の窒化物からなる単層膜、前記グループの中から選択される少なくとも二つの材料を含む合金からなる単層膜、または、Ti、Cu、Zn、Zr、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Re、Ir、Pt、Au、前記複数の金属のそれぞれの窒化物、および、前記複数の金属の任意の二つ以上の金属からなる、前記複数の金属に関しての全ての合金からなるグループの中から選択される材料を二つ以上含む積層膜であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記助触媒層のうち前記触媒層と接触している部分が、前記アモルファスもしくは微結晶の構造を有する場合、
前記助触媒層は、V、Cr、Mn、Nb、Mo、TaおよびWからなるグループのいずれかの材料からなる単層膜、前記グループのいずれかの材料の窒化物からなる単層膜、前記グループの中から選択される少なくとも二つの材料を含む合金からなる単層膜、または、V、Cr、Mn、Nb、Mo、Ta、W、前記複数の金属のそれぞれの窒化物、および、前記複数の金属の任意の二つ以上の金属からなる、前記複数の金属に関しての全ての合金からなるグループの中から選択される材料を二つ以上含む積層膜であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記触媒層は、Ni、CoおよびFeからなるグループのいずれかの材料からなる単層膜、前記グループのいずれかの材料の窒化物からなる単層膜、前記グループの中から選択される少なくとも二つの材料を含む合金からなる単層膜、または、Ni、Co、Fe、前記複数の金属のそれぞれの窒化物、および、前記複数の金属の任意の二つ以上の金属からなる、前記複数の金属に関しての全ての合金からなるグループの中から選択される材料を二つ以上含む積層膜であることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−199520(P2012−199520A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−36376(P2012−36376)
【出願日】平成24年2月22日(2012.2.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】