説明

半導体装置および電子機器

【課題】積層された各半導体チップが備える導体ポスト同士の接合が、低温下の処理でも、導電性に優れ、かつ、高い寸法精度で強固に行われている信頼性の高い半導体装置、かかる半導体装置を備える電子機器を提供すること。
【解決手段】半導体装置1は、インターポーザー2と、第1の電気配線34および厚さ方向に貫通して設けられた第1の導体ポスト33とを有する第1の半導体チップ3と、第2の電気配線44および厚さ方向に貫通して設けられた第2の導体ポスト43とを有する第2の半導体チップ4とを備える。第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とは、接合膜433を介して接合されている。この接合膜433は、導電性を有し、かつ、所定の処理を施すことにより接着性を発現する特定の材料で構成されており、その表面に発現した接着性によって、これら導体ポスト33、43同士を接合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、小型化にともなって、1つのパッケージ内に複数の半導体チップを積層した多層構造の半導体装置が用いられるようになっている。
中でも、各半導体チップ同士の接続を、各半導体チップが備える基板を貫通する導体ポストを設け、各半導体チップの導体ポスト同士を接合する構成の半導体装置は、設計の自由度が高く、半導体装置の小型化を図れる点から開発が進められている。
【0003】
このような多層構造の半導体装置において、下側の半導体チップが備える導体ポストと、上側の半導体チップが備える導体ポストとの接合は、例えば、半田バンプを介して行われる。
この場合、上側の導体ポストの下端部に半田バンプを予め形成しておき、この半田バンプと、下側の導体ポストの上端部とが接触するように、各半導体チップを位置決めし、半田バンプを溶融固化して、下側の導体ポストに融着させる。これにより、下側の半導体チップの導体ポストと、上側の半導体チップの導体ポストとが接合される。
【0004】
しかしながら、かかる方法では、半田が溶融したときに濡れ広りが生じるため、導体ポストと、その周囲に形成されている配線とが、半田を介して不本意に接続されたり、配線のパターン形状が半田によって潰れるという問題がある。
また、半田が溶融したときに、位置合わせした半導体チップがずれてしまい、十分な寸法精度が得られないという問題もある。
さらに、このような半田バンプによる接合では、半導体装置全体を、260℃程度の高温下で加熱する必要があるが、この加熱の際に、半導体装置内の基板と配線との間に剥離が生じ、その結果、半導体装置にクラックが発生するという問題もある。
【0005】
【特許文献1】特開2003−282819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、積層された各半導体チップが備える導体ポスト同士の接合が、低温下の処理でも、導電性に優れ、かつ、高い寸法精度で強固に行われている信頼性の高い半導体装置、かかる半導体装置を備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、以下の本発明により達成される。
本発明の半導体装置は、平板状の第1の基材と、該第1の基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第1の電気配線と、前記第1の基材の厚さ方向に貫通して設けられ、前記第1の電気配線の一部に接合された第1の導体ポストとを備える第1の半導体チップと、
平板状の第2の基材と、該第2の基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第2の電気配線と、前記第2の基材の厚さ方向に貫通して設けられ、前記第2の電気配線の一部に接合された第2の導体ポストとを備える第2の半導体チップとが、積層された半導体装置であり、
前記第1の導体ポストと前記第2の導体ポストとは、導電性を有する接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記第1の導体ポストと前記第2の導体ポストとを接合していることを特徴とする。
これにより、第1の半導体が備える第1の導体ポストと、第2の半導体チップが備える第2の導体ポストの接合が、低温下の処理でも、導電性に優れ、かつ、高い寸法精度で強固に行われている信頼性の高い半導体装置が得られる。
【0008】
本発明の半導体装置では、前記第1の基材の他方の面側と前記第2の基材の一方の面側とが対向するようにして、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとが積層され、
前記第2の電気配線は、導電性を有する接合膜で構成されており、当該第2の電気配線と前記接合膜とが一体的に形成されていることが好ましい。
第2の電気配線と接合膜とを一体的に形成することにより、製造工程の簡略化を図ることができ、製造コストの削減を図ることができる。
【0009】
本発明の半導体装置では、前記第1の基材の一方の面側と前記第2の基材の他方の面側とが対向するようにして、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとが積層され、
前記第1の電気配線は、導電性を有する接合膜で構成されており、当該第1の電気配線と前記接合膜とが一体的に形成されていることが好ましい。
第1の電気配線と接合膜とを一体的に形成することにより、製造工程の簡略化を図ることができ、製造コストの削減を図ることができる。
【0010】
本発明の半導体装置では、前記金属原子は、インジウム、スズ、亜鉛、チタン、およびアンチモンのうちの少なくとも1種であることが好ましい。
接合膜を、これらの金属原子を含むものとすることにより、接合膜は、優れた導電性を発揮するものとなる。
本発明の半導体装置では、前記脱離基は、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、エネルギーを付与することによって比較的簡単に、かつ均一に脱離する脱離基が得られることとなり、接合膜の接着性をより高度化することができる。
【0011】
本発明の半導体装置では、前記接合膜は、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)に、脱離基として水素原子が導入されたものであることが好ましい。
かかる構成の接合膜は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、このような接合膜は、第1の導体ポストと第2の導体ポストとを強固に接合することができる。
本発明の半導体装置では、前記接合膜中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、第1の導体ポストと第2の導体ポストとをより強固に接合することができるようになる。
【0012】
本発明の半導体装置は、平板状の第1の基材と、該第1の基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第1の電気配線と、前記第1の基材の厚さ方向に貫通して設けられ、前記第1の電気配線の一部に接合された第1の導体ポストとを備える第1の半導体チップと、
平板状の第2の基材と、該第2の基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第2の電気配線と、前記第2の基材の厚さ方向に貫通して設けられ、前記第2の電気配線の一部に接合された第2の導体ポストとを備える第2の半導体チップとが、積層された半導体装置であり、
前記第1の導体ポストと前記第2の導体ポストとは、導電性を有する接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が当該接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記第1の導体ポストと前記第2の導体ポストとを接合していることを特徴とする。
これにより、第1の半導体が備える第1の導体ポストと、第2の半導体チップが備える第2の導体ポストの接合が、低温下の処理でも、導電性に優れ、かつ、高い寸法精度で強固に行われている信頼性の高い半導体装置が得られる。
【0013】
本発明の半導体装置では、前記第1の基材の他方の面側と前記第2の基材の一方の面側とが対向するようにして、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとが積層され、
前記第2の電気配線は、導電性を有する接合膜で構成されており、当該第2の電気配線と前記接合膜とが一体的に形成されていることが好ましい。
第2の電気配線と接合膜とを一体的に形成することにより、製造工程の簡略化を図ることができ、製造コストの削減を図ることができる。
【0014】
本発明の半導体装置では、前記第1の基材の一方の面側と前記第2の基材の他方の面側とが対向するようにして、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとが積層され、
前記第1の電気配線は、導電性を有する接合膜で構成されており、当該第1の電気配線と前記接合膜とが一体的に形成されていることが好ましい。
第1の電気配線と接合膜とを一体的に形成することにより、製造工程の簡略化を図ることができ、製造コストの削減を図ることができる。
【0015】
本発明の半導体装置では、前記接合膜は、有機金属材料を原材料として、有機金属化学気相成長法を用いて成膜されたものであることが好ましい。
かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、かつ、均一な膜厚の接合膜を成膜することができる。
本発明の半導体装置では、前記接合膜は、低還元性雰囲気下で成膜されたものであることが好ましい。
これにより、接合膜として、純粋な金属膜が形成されることなく、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で成膜することができる。すなわち、接合膜および金属膜としての双方の特性に優れた接合膜を形成することができる。
【0016】
本発明の半導体装置では、前記脱離基は、前記有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存したものであることが好ましい。
このように成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基として用いる構成とすることにより、形成された金属膜中に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で接合膜を成膜することができる。
【0017】
本発明の半導体装置では、前記脱離基は、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団で構成されることが好ましい。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、エネルギーを付与することによって比較的簡単に、かつ均一に脱離する脱離基が得られることとなり、接合膜の接着性をより高度化することができる。
【0018】
本発明の半導体装置では、前記脱離基は、アルキル基であることが好ましい。
アルキル基で構成される脱離基は、化学的な安定性が高いため、脱離基としてアルキル基を備える接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
本発明の半導体装置では、前記有機金属材料は、金属錯体であることが好ましい。
金属錯体を用いて接合膜を成膜することにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、確実に接合膜を形成することができる。
【0019】
本発明の半導体装置では、前記金属原子は、銅、アルミニウム、亜鉛および鉄のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
これにより、接合膜を、これらの金属原子を含むものとすることにより、接合膜は、優れた導電性および伝熱性を発揮するものとなる。
本発明の半導体装置では、前記接合膜中の金属原子と炭素原子との存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜の安定性が高くなり、第1の導体ポストと第2の導体ポストとをより強固に接合することができるようになる。また、接合膜を優れた導電性および伝熱性を発揮するものとすることができる。
【0020】
本発明の半導体装置では、前記接合膜は、その少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が、当該接合膜から脱離した後に、活性手が生じることが好ましい。
これにより、第1の導体ポスト等の被着体に対して、化学的結合に基づいて強固に接合可能な接合膜が得られる。
本発明の半導体装置では、前記活性手は、未結合手または水酸基であることが好ましい。
これにより、第1の導体ポスト等の被着体に対して、特に強固な接合が可能となる。
【0021】
本発明の半導体装置では、前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmであることが好ましい。
これにより、接合膜を介して、第1の導体ポストと、第2の導体ポストとを接合した半導体装置の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、これらをより強固に接合することができる。
【0022】
本発明の半導体装置では、前記接合膜は、流動性を有さない固体状をなしていることが好ましい。
これにより、接合膜を用いて得られた半導体装置の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。また、従来に比べ、短時間で強固な接合が可能になる。
本発明の半導体装置では、前記接合膜が接する少なくとも一方の面には、予め、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、接合膜が接する面の表面を清浄化および活性化し、接合膜の接合強度を高めることができる。
【0023】
本発明の半導体装置では、前記表面処理は、プラズマ処理であることが好ましい。
これにより、接合膜が接する面の表面を特に最適化することができる。
本発明の半導体装置では、前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合膜に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
【0024】
本発明の半導体装置では、前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線であることが好ましい。
これにより、接合膜に付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜中の脱離基を確実に脱離させることができる。その結果、接合膜の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜に接着性を発現させることができる。
【0025】
本発明の半導体装置では、前記加熱の温度は、25〜150℃であることが好ましい。
これにより、接合体が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
本発明の半導体装置では、前記圧縮力は、0.2〜10MPaであることが好ましい。
これにより、圧力が高すぎて第1の導体ポスト、第2の導体ポストや各基材に損傷等が生じるのを防止しつつ、半導体装置の接合強度を確実に高めることができる。
【0026】
本発明の半導体装置では、前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われることが好ましい。
これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギーの付与をより簡単に行うことができる。
本発明の半導体装置では、前記第1の導体ポストおよび前記第2の導体ポストは、いずれも透光性を有することが好ましい。
これにより、接合膜に容易にエネルギー線を照射することができる。
【0027】
本発明の半導体装置では、さらに、前記第1の基材と前記第2の基材とを接合する接合膜を有し、
該接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の基材と前記第2の基材とが接合されていることが好ましい。
これにより、より接合強度および寸法精度が高い半導体装置が得られる。
本発明の電子機器は、本発明の半導体装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の半導体装置および電子機器を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<半導体装置>
まず、本発明の半導体装置について説明する。
<<第1実施形態>>
まず、本発明の半導体装置の第1実施形態について説明する。
【0029】
図1は、本発明の半導体装置の第1実施形態を示す縦断面図、図2は、図1に示す半導体装置において、Iの構成の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図3は、図1に示す半導体装置において、Iの構成の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図、図4は、Iの構成の接合膜を形成する被膜の成膜に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図、図5は、図4に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図、図6は、IIの構成の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図7は、IIの構成の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図、図8は、IIの構成の接合膜を形成する被膜の成膜に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図、図9〜図10は、それぞれ、図1に示す半導体装置の製造方法(製造工程)を説明するための図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図10中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0030】
図1に示す半導体装置(マルチチップパッケージ)1は、インターポーザー(基板)2上に、第1の半導体チップ3と、第2の半導体チップ4とが、この順で積層された2層構成の半導体装置である。以下、各部の構成について説明する。
インターポーザー2は、例えば、ポリイミド等の各種樹脂材料で構成された絶縁基板である。
【0031】
インターポーザー2の上面(一方の面)には、所定形状にパターニングされた、導電性を有する配線21が形成されている。
この配線21は、インターポーザー2の厚さ方向に貫通して形成されたビアホール(貫通孔)内に設けられた導体ポスト(図示せず)の上端と電気的に接続されている。そして、この導体ポストの下端は、インターポーザー2の下面に設けられたバンプ(図示せず)と電気的に接続されている。すなわち、配線21は、導体ポストを介して、バンプと電気的に接続されている。
【0032】
第1の半導体チップ3は、インターポーザー2上に配置(積層)され、平板状の第1の基材31と、この第1の基材31の厚さ方向に貫通して設けられた第1のビアホール(貫通孔)32と、第1のビアホール32内に設けられた第1の導体ポスト(電気接続部)33とを備える。
また、第1の基材31の下面(一方の面)は、半導体素子(図示せず)と半導体素子同士を電気的に接続する、所定形状にパターニングされた第1の電気配線34とが形成されることにより能動面(集積回路形成面)35が構成されている。
【0033】
さらに、第2の半導体チップ4は、第1の半導体チップ3上に配置(積層)され、平板状の第2の基材41と、この第2の基材41の厚さ方向に貫通して設けられた第2のビアホール(貫通孔)42と、第2のビアホール42内に設けられた第2の導体ポスト(電気接続部)43とを備える。
また、第2の基材41の下面(一方の面)は、半導体素子(図示せず)と半導体素子同士を電気的に接続する、所定形状にパターニングされた第2の電気配線44とが形成されることにより能動面(集積回路形成面)45が構成されている。
【0034】
なお、本実施形態では、第1の半導体チップ3および第2の半導体チップ4は、各基材31、41の下面が能動面35、45とされていることにより、能動面35、45を保護するために樹脂で封止する必要がなく、半導体装置の薄型化を図ることができる。
また、以下の説明では、第1の基材31および第2の基材41において、能動面35、45と反対側の面を、それぞれ、「裏面36、46」と言う。
【0035】
第1の基材(半導体基板)31および第2の基材(半導体基板)41は、それぞれ、例えば、Si、Geのような半導体材料で構成されている。
第1の基材31および第2の基材41の平均厚さは、それぞれ、特に限定されないが、1〜300μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましい。かかる厚さの第1の基材31および第2の基材41を用いることにより、半導体素子を形成するための厚さを十分に確保しつつ、得られる半導体装置1の全体としての厚さを薄くすることができる。
【0036】
第1の基材31の能動面35に設けられた第1の電気配線34、および、第2の基材41の能動面45に設けられた第2の電気配線44は、それぞれ、所定のパターンに形成された導電膜(導体パターン)で構成され、第1のビアホール32および第2のビアホール42の開口付近に設けられた、第1のパッド341および第2のパッド441を備えている。
【0037】
第1の電気配線34および第2の電気配線44の構成材料(導電性材料)としては、それぞれ、例えば、Au、Ag、Cu、または、これらを含む合金のような金属系材料、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)のような酸化物系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
かかる構成の第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4とが、本実施形態では、第1の半導体チップ3の上面(他方の面)側と、第2の半導体チップ4の下面(一方の面)側とが対向するようにして積層され、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とが接合膜433を介して、接合されている。
また、第1の基材31および第2の基材41には、それぞれ、その厚さ方向に貫通して第1のビアホール32および第2のビアホール42が形成されており、これらビアホール32、42内を埋めるようにして、第1の導体ポスト33および第2の導体ポスト43が設けられている。
【0039】
本実施形態では、第1の導体ポスト33および第2の導体ポスト43は、それぞれ、図1に示すように、その縦断面形状が逆T字状をなしており、幅広とされたフランジ状の下端部が各基材31、41の能動面35、45側から突出しており、上端部が各基材31、41の裏面36、46側から突出している。
第1の導体ポスト33の下端部は、第1のパッド341(第1の電気配線34の一部)と接合(接触)するとともに、インターポーザー2の配線21の一部に接合されている。
【0040】
また、第2の導体ポスト43の下端部は、第2のパッド441(第2の電気配線44の一部)と接合(接触)するとともに、第1の導体ポスト33の上端部(他端部)に接合されている。
上述したような、第1のパッド341と第1の導体ポスト43との接続、および、第2のパッド441と第2の導体ポスト43との接続により、各導体ポスト43、44と各半導体チップ3、4に設けられた各半導体素子との電気的な導通が得られる。
【0041】
第1の導体ポスト33および第2の導体ポスト43の構成材料には、各配線の構成材料で挙げたのと同様のものを用いることができる。
また、本実施形態では、第1の導体ポスト33および第2の導体ポスト43の内周面付近は、能動面35および能動面45上から連続して設けられた、例えばSiO等で構成される絶縁膜331および絶縁膜431が形成されており、各部材間での電気的な絶縁状態が確保されている。
なお、半導体装置1には、必要に応じて、第1の半導体チップ3および第2の半導体チップ4を覆うように樹脂材料によるモールドが行われていてもよい。
【0042】
さて、本実施形態では、上述したような構成の半導体装置1において、第2の導体ポスト43は、その下端面に接合膜433が設けられた構成となっている。
この接合膜433は、導電性を有し、かつ、所定の処理を施すことにより接着性を発現するもので構成されている。そのため、接合膜433は、所定の処理を施すことにより、その表面に接着性を発現するので、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とを接合することができる。
このような接合膜433は、次のようなIまたはIIのような構成のものとすることができる。
【0043】
以下、IおよびIIの構成の接合膜433について、それぞれ、詳述する。
I:まず、Iの構成の接合膜433は、金属原子と、この金属原子と結合する酸素原子と、これら金属原子および酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基303とを含むものである(図2参照。)。換言すれば、接合膜433は、金属酸化物で構成される金属酸化物膜に脱離基303を導入したものと言うことができる。
【0044】
このような接合膜433は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜433(金属原子および酸素原子の少なくとも一方)から脱離し、図3に示すように、接合膜433の少なくとも表面430の付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜433の表面(下面)430に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜433は、第1の導体ポスト33に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
また、接合膜433は、金属原子と、この金属原子と結合する酸素原子とで構成されるもの、すなわち主として金属酸化物で構成されるものであることから、変形し難い強固な膜となる。このため、半導体装置1では、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップと4の剥離をより確実に防止することができる。
【0045】
さらに、接合膜433は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の異方性導電ペーストおよび異方性導電シートや、接合時に一旦溶融状態とする半田等に比べて、接合膜433の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、かかる接合膜433を用いて得られる半導体装置1の寸法精度は、異方性導電ペースト、異方性導電シートや半田等を用いる場合に比べて格段に高いものとなる。さらに、異方性導電ペースト、異方性導電シートや半田等のように、硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
【0046】
また、接合膜433で第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とを接合する構成とすれば、後述のように接合膜433を加熱して第1の導体ポスト33と接合する場合、加熱する温度を150℃以下に設定することができ、半田を用いる場合のように、260℃程度となる高温での熱処理を必要としないことから、第1の半導体チップ3および第2の半導体チップ4が高温下に晒されて、半導体チップ3、4内にクラック等が生じるのを確実に防止することができる。
【0047】
なお、脱離基303は、少なくとも接合膜433の表面430付近に存在していればよく、接合膜433のほぼ全体に存在していてもよいし、接合膜433の表面430付近に偏在していてもよい。なお、脱離基303が表面430付近に偏在する構成とすることにより、接合膜433に金属酸化物膜としての機能を好適に発揮させることができる。すなわち、接合膜433に、接合膜としての機能の他に、導電性等の特性に優れた金属酸化物膜としての機能を好適に付与することができるという利点も得られる。
【0048】
以上のような接合膜433としての機能が好適に発揮されるように、金属原子が選択される。
具体的には、金属原子としては、特に限定されないが、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、TiおよびPb等が挙げられる。中でも、In(インジウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)およびSb(アンチモン)のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。接合膜433を、これらの金属原子を含むもの、すなわちこれらの金属原子を含む金属酸化物に脱離基303を導入したものとすることにより、接合膜433は、優れた導電性を発揮するものとなる。なお、かかる接合膜433は、高い透明性も有する。
【0049】
より具体的には、金属酸化物としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)および二酸化チタン(TiO)等が挙げられる。
なお、金属酸化物としてインジウム錫酸化物(ITO)を用いる場合には、インジウムとスズとの原子比(インジウム/スズ比)は、99/1〜80/20であるのが好ましく、97/3〜85/15であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
【0050】
また、接合膜433中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と酸素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜433の安定性が高くなり、接合膜433と第1の導体ポスト33とをより強固に接合することができるようになる。
また、脱離基303は、前述したように、金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、接合膜433に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜433に確実に結合しているものが好適に選択される。
【0051】
かかる観点から、脱離基303には、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種が好適に用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜433の接着性をより高度なものとすることができる。
なお、上記の各原子で構成される原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびスルホン酸基等が挙げられる。
【0052】
以上のような各原子および原子団の中でも、Iの構成の接合膜433では、脱離基303は、特に、水素原子であるのが好ましい。水素原子で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303として水素原子を備える接合膜433は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
以上のことを考慮すると、接合膜433としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)の金属酸化物に、脱離基303として水素原子が導入されたものが好適に選択される。
【0053】
かかる構成の接合膜433は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、このような接合膜433は、第1の導体ポスト33に対して特に強固に接着するとともに、第2の導体ポスト43に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とを強固に接合することができる。
【0054】
また、接合膜433の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、2〜800nm程度であるのがより好ましく、50〜800nm程度であるのがさらに好ましい。接合膜433の平均厚さを前記範囲内とすることにより、半導体装置1の寸法精度が著しく低下するのを防止しつつ、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とをより強固に接合することができる。
【0055】
すなわち、接合膜433の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、接合膜433の材料等によっては、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜433の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とを接合する際の接合条件等によっては、半導体装置1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
【0056】
さらに、接合膜433の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜433にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、導体ポスト43の接合面(接合膜433に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜433を被着させることができる。その結果、接合膜433は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とを接合した際に、接合膜433の第1の導体ポスト33に対する密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜433の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合条件等によって生じ得る半導体装置1の寸法精度の低下が認められない範囲で、接合膜433の厚さをできるだけ厚くすればよい。
【0057】
以上説明したような接合膜433は、接合膜433のほぼ全体に脱離基303を存在させる場合には、例えば、I−A:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜し、得られた被膜をパターニングすることにより形成することができる。また、接合膜433の表面430付近に偏在させる場合には、例えば、I−B:金属原子と前記酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入し、得られた被膜をパターニングすることにより形成することができる。
【0058】
以下、接合膜433にパターニングする被膜を、I−AおよびI−Bの方法を用いて、成膜する場合について、詳述する。
I−A:I−Aの方法では、被膜は、上記のように、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法(PVD法)により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成される。このようにPVD法を用いる構成とすれば、金属酸化物材料を第2の基材41に向かって飛来させる際に、比較的容易に金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することができるため、被膜(接合膜433)のほぼ全体に亘って脱離基303を導入することができる。
【0059】
さらに、PVD法によれば、緻密で均質な被膜を効率よく成膜することができる。これにより、PVD法で成膜された被膜から得られた接合膜433は、第1の導体ポスト33に対して特に強固に接合し得るものとなる。また、PVD法で成膜された被膜は、導体ポスト43に対しても高い密着性を示す。このため、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43との間に高い接合強度が得られる。さらに、PVD法で成膜された被膜は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、半導体装置1の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
【0060】
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気中に、金属酸化物の粒子を叩き出すことができる。そして、金属酸化物の粒子が叩き出された状態で、脱離基303を構成する原子成分を含むガスと接触させることができるため、金属酸化物(金属原子または酸素原子)への脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。
【0061】
以下、PVD法により被膜を成膜する方法として、スパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により、被膜を成膜する場合を代表に説明する。
まず、被膜の形成方法(成膜方法)を説明するのに先立って、第2の基材41(導体ポスト43)上にイオンビームスパッタリング法により被膜を成膜する際に用いられる成膜装置200について説明する。
【0062】
図4に示す成膜装置200は、イオンビームスパッタリング法による被膜の形成がチャンバー(装置)内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置200は、チャンバー(真空チャンバー)211と、このチャンバー211内に設置され、予め第2の半導体ポスト43および第2の配線44が形成された第2の半導体チップ4(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)212と、チャンバー211内に設置され、チャンバー211内に向かってイオンビームBを照射するイオン源(イオン供給部)215と、イオンビームBの照射により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物(例えば、ITO)を発生させるターゲット(金属酸化物材料)216を保持するターゲットホルダー(ターゲット保持部)217とを有している。
【0063】
また、チャンバー211には、チャンバー211内に、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を供給するガス供給手段260と、チャンバー211内の排気をして圧力を制御する排気手段230とを有している。
なお、本実施形態では、基板ホルダー212は、チャンバー211の天井部に取り付けられている。この基板ホルダー212は、回動可能となっている。これにより、第2の基材41上に被膜を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
【0064】
イオン源(イオン銃)215は、図5に示すように、開口(照射口)250が形成されたイオン発生室256と、イオン発生室256内に設けられたフィラメント257と、グリッド253、254と、イオン発生室256の外側に設置された磁石255とを有している。
また、イオン発生室256には、図4に示すように、その内部にガス(スパッタリング用ガス)を供給するガス供給源219が接続されている。
【0065】
このイオン源215では、イオン発生室256内に、ガス供給源219からガスを供給した状態で、フィラメント257を通電加熱すると、フィラメント257から電子が放出され、放出された電子が磁石255の磁場によって運動し、イオン発生室256内に供給されたガス分子と衝突する。これにより、ガス分子がイオン化する。このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254との間の電圧勾配により、イオン発生室256内から引き出されるとともに加速され、開口250を介してイオンビームBとしてイオン源215から放出(照射)される。
【0066】
イオン源215から照射されたイオンビームBは、ターゲット216の表面に衝突し、ターゲット216からは粒子(スパッタ粒子)が叩き出される。このターゲット216は、前述したような金属酸化物材料で構成されている。
この成膜装置200では、イオン源215は、その開口250がチャンバー211内に位置するように、チャンバー211の側壁に固定(設置)されている。なお、イオン源215は、チャンバー211から離間した位置に配置し、接続部を介してチャンバー211に接続した構成とすることもできるが、本実施形態のような構成とすることにより、成膜装置200の小型化を図ることができる。
【0067】
また、イオン源215は、その開口250が、基板ホルダー212と異なる方向、本実施形態では、チャンバー211の底部側を向くように設置されている。
なお、イオン源215の設置個数は、1つに限定されるものではなく、複数とすることもできる、イオン源215を複数設置することにより、被膜の成膜速度をより速くすることができる。
【0068】
また、ターゲットホルダー217および基板ホルダー212の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができる第1のシャッター220および第2のシャッター221が配設されている。
これらシャッター220、221は、それぞれ、ターゲット216、第2の基材41および被膜が、不用な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
【0069】
また、排気手段230は、ポンプ232と、ポンプ232とチャンバー211とを連通する排気ライン231と、排気ライン231の途中に設けられたバルブ233とで構成されており、チャンバー211内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
さらに、ガス供給手段260は、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を貯留するガスボンベ264と、ガスボンベ264からこのガスをチャンバー211に導くガス供給ライン261と、ガス供給ライン261の途中に設けられたポンプ262およびバルブ263とで構成されており、脱離基303を構成する原子成分を含むガスをチャンバー211内に供給し得るようになっている。
【0070】
以上のような構成の成膜装置200を用いて、以下のようにして第2の基材41上に被膜が形成される。
まず、予め導体ポスト43および第2の電気配線44が形成された第2の基材41を用意し、この第2の基材41を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
【0071】
次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
さらに、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
【0072】
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
また、チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、金属原子または酸素原子と、前記原子成分を含むガスとの反応が効率良く行われ、金属原子および酸素原子に確実に、前記原子成分を含むガスを導入することができる。
【0073】
次に、第2のシャッター221を開き、さらに第1のシャッター220を開いた状態にする。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
【0074】
このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254とにより加速されて、イオン源215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット216に衝突する。これにより、ターゲット216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出される。このとき、チャンバー211内が脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)であることから、チャンバー211内に叩き出された粒子に含まれる金属原子および酸素原子に脱離基303が導入される。そして、この脱離基303が導入された金属酸化物が第2の基材41上に被着することにより、被膜が形成される。
【0075】
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された被膜に照射されるのがより確実に防止されて、被膜の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
以上のようにして、厚さ方向のほぼ全体に亘って脱離基303が存在する被膜(接合膜433)を成膜することができる。
【0076】
I−B:また、I−Bの方法では、被膜は、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成される。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を偏在させた状態で導入することができ、接合膜および金属酸化物膜としての双方の特性に優れた被膜(接合膜433)を形成することができる。
【0077】
ここで、金属酸化物膜は、いかなる方法で成膜されたものでもよく、例えば、PVD法(物理的気相成膜法)、CVD法(化学的気相成膜法)、プラズマ重合法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により成膜することができるが、中でも、特に、PVD法により成膜するのが好ましい。PVD法によれば、緻密で均質な金属酸化物膜を効率よく成膜することができる。
【0078】
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法およびレーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、雰囲気中に金属酸化物の粒子を叩き出して、第2の基材41上に供給することができるため、特性に優れた金属酸化物膜を成膜することができる。
【0079】
さらに、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を導入する方法としては、各種方法が用いられ、例えば、I−B1:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で金属酸化物膜を熱処理(アニール)する方法、I−B2:イオンインプラテーション法等が挙げられるが、中でも、特に、I−B1の方法を用いるのが好ましい。I−B1の方法によれば、比較的容易に、脱離基303を金属酸化物膜の表面付近に選択的に導入することができる。また、熱処理を施す際の、雰囲気温度や処理時間等の処理条件を適宜設定することにより、導入する脱離基303の量、さらには脱離基303が導入される金属酸化物膜の厚さの制御を的確に行うことができる。
【0080】
以下、金属酸化物膜をスパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により成膜し、次に、得られた金属酸化物膜を、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で熱処理することにより、被膜を得る場合を代表に説明する。
なお、I−Bの方法を用いて被膜を成膜する場合も、I−Aの方法を用いて被膜を成膜する際に用いられる成膜装置200と同様の成膜装置が用いられるため、成膜装置に関する説明は省略する。
まず、予め導体ポスト43および第2の電気配線44が形成された第2の基材41を用意する。そして、この第2の基材41を成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
【0081】
次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、このとき、加熱手段を動作させ、チャンバー211内を加熱する。チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、膜密度の高い金属酸化物膜を成膜することができる。
【0082】
次に、第2のシャッター221を開き、さらに第1のシャッター220を開いた状態にする。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
【0083】
このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254とにより加速されて、イオン源215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット216に衝突する。これにより、ターゲット216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出され、第2の基材41上に被着して、金属原子と、この金属原子に結合する酸素原子とを含む金属酸化物膜が形成される。
【0084】
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された被膜に照射されるのがより確実に防止されて、被膜の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
【0085】
次に、第2のシャッター221を開いた状態で、第1のシャッター220を閉じる。
この状態で、加熱手段を動作させ、チャンバー211内をさらに加熱する。チャンバー211内の温度は、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303が導入される温度に設定され、100〜600℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、次工程において、第2の基材41および金属酸化物膜を変質・劣化させることなく、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303を導入することができる。
【0086】
次に、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー211内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
このように、前工程でチャンバー211内が加熱された状態で、チャンバー211内を、脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)とすると、金属酸化物膜の表面付近に存在する金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303が導入されて、被膜が形成される。
【0087】
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
なお、チャンバー211内は、前記工程において、排気手段230を動作させることにより調整された減圧状態を維持しているのが好ましい。これにより、金属酸化物膜の表面付近に対する脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。また、前記工程の減圧状態を維持したまま、本工程においてチャンバー211内を減圧する構成とすることにより、再度減圧する手間が省けることから、成膜時間および成膜コスト等の削減を図ることができるという利点も得られる。
【0088】
この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、熱処理を施す時間は、15〜120分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
【0089】
導入する脱離基303の種類等によっても異なるが、熱処理を施す際の条件(チャンバー211内の温度、真空度、ガス流量、処理時間)を上記範囲内に設定することにより、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を選択的に導入することができる。
以上のようにして、表面430付近に脱離基303が偏在する被膜を成膜することができる。
【0090】
II:次に、IIの構成の接合膜433は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303を含むものである(図6参照。)。
このような接合膜433は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜433の少なくとも表面430付近から脱離し、図7に示すように、接合膜433の少なくとも表面430付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜433の表面に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜433は、第1の導体ポスト33に対して、高い寸法精度で強固に効率よく接合可能なものとなる。
【0091】
また、接合膜433は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303とを含むもの、すなわち有機金属膜であることから、変形し難い強固な膜となる。このため、半導体装置1では、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43との剥離をより確実に防止することができる。
このような接合膜433は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、流動性を有する液状または粘液状(半固形状)の異方性導電ペーストおよび異方性導電シートや、接合時に一旦溶融状態とする半田等に比べて、接合膜433の厚さや形状がほとんど変化しない。したがって、かかる接合膜433を用いて得られる半導体装置1の寸法精度は、異方性導電ペースト、異方性導電シートや半田等を用いる場合に比べて格段に高いものとなる。さらに、異方性導電ペースト、異方性導電シートや半田等のように、硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合が可能となる。
【0092】
また、接合膜433で第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とを接合する構成とすれば、後述のように接合膜433を加熱して第1の導体ポスト33と接合する場合、加熱する温度を150℃以下に設定することができ、半田を用いる場合のように、260℃程度となる高温での熱処理を必要としないことから、第1の半導体チップ3および第2の半導体チップ4が高温下に晒されて、半導体チップ3、4内にクラック等が生じるのを確実に防止することができる。
【0093】
以上のような接合膜433としての機能が好適に発揮されるように、金属原子および脱離基303が選択される。
具体的には、金属原子としては、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、各種ランタノイド元素、各種アクチノイド元素のような遷移金属元素、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Tl、Pd、Bi、Poのような典型金属元素等が挙げられる。
【0094】
ここで、遷移金属元素は、各遷移金属元素間で、最外殻電子の数が異なることのみの差異であるため、物性が類似している。そして、遷移金属は、一般に、硬度や融点が高く、電気伝導性および熱伝導性が高い。このため、金属原子として遷移金属元素を用いた場合、接合膜433に発現する接着性をより高めることができる。また、それとともに、接合膜433の導電性をより高めることができる。
【0095】
また、金属原子として、Cu、Al、ZnおよびFeのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いた場合、接合膜433は、優れた導電性および伝熱性を発揮するものとなる。また、接合膜433を後述する有機金属化学気相成長法を用いて形成する場合には、これらの金属を含む金属錯体等を原材料として用いて、比較的容易かつ均一な膜厚の接合膜433を形成することができる。
【0096】
また、脱離基303は、前述したように、接合膜433から脱離することにより、接合膜433に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜433に確実に結合しているものが好適に選択される。
【0097】
具体的には、IIの構成の接合膜433では、脱離基303としては、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団が好適に選択される。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜433の接着性をより高度なものとすることができる。
【0098】
より具体的には、原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基の他、前記アルキル基の末端がイソシアネート基、アミノ基およびスルホン酸基等で終端しているもの等が挙げられる。
以上のような原子団の中でも、脱離基303は、特に、アルキル基であるのが好ましい。アルキル基で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303としてアルキル基を備える接合膜433は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
【0099】
また、かかる構成の接合膜433において、金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜433の安定性が高くなり、接合膜433と第1の導体ポスト33とをより強固に接合することができるようになる。また、接合膜433を優れた導電性を発揮するものとすることができる。
【0100】
また、IIの構成の接合膜433の平均厚さは、Iの構成の接合膜433と同様である。
以上説明したような接合膜433は、いかなる方法で形成してもよいが、例えば、II−A:金属原子で構成される金属膜に、脱離基(有機成分)303を含む有機物を、金属膜のほぼ全体に付与して被膜を得、得られた被膜をパターニングすることにより接合膜433を形成する方法、II−B:金属原子で構成される金属膜に、脱離基(有機成分)303を含む有機物を、金属膜の表面付近に選択的に付与(化学修飾)して被膜を得、得られた被膜をパターニングすることにより接合膜433を形成する方法、II−C:金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて被膜を得、得られた被膜をパターニングすることにより接合膜433を形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、II−Cの方法により接合膜433を形成するのが好ましい。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、かつ、均一な膜厚の接合膜433を形成することができる。
【0101】
以下、II−Cの方法、すなわち金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて被膜を形成する方法により、接合膜433を得る場合を代表に説明する。
まず、被膜の形成方法(成膜方法)を説明するのに先立って、被膜を成膜する際に用いられる成膜装置500について説明する。
【0102】
図8に示す成膜装置500は、有機金属化学気相成長法(以下、「MOCVD法」と省略することもある。)による被膜の形成をチャンバー511内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置500は、チャンバー(真空チャンバー)511と、このチャンバー511内に設置され、第2の基材41(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)512と、チャンバー511内に、気化または霧化した有機金属材料を供給する有機金属材料供給手段560と、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスを供給するガス供給手段570と、チャンバー511内の排気をして圧力を制御する排気手段530と、基板ホルダー512を加熱する加熱手段(図示せず)とを有している。
【0103】
基板ホルダー512は、本実施形態では、チャンバー511の底部に取り付けられている。この基板ホルダー512は、モータの作動により回動可能となっている。これにより、第2の基材41上に被膜を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
また、基板ホルダー512の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができるシャッター521が配設されている。このシャッター521は、第2の基材41、導体ポスト43および被膜が不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
【0104】
有機金属材料供給手段560は、チャンバー511に接続されている。この有機金属材料供給手段560は、固形状の有機金属材料を貯留する貯留槽562と、気化または霧化した有機金属材料をチャンバー511内に送気するキャリアガスを貯留するガスボンベ565と、キャリアガスと気化または霧化した有機金属材料をチャンバー511内に導くガス供給ライン561と、ガス供給ライン561の途中に設けられたポンプ564およびバルブ563とで構成されている。かかる構成の有機金属材料供給手段560では、貯留槽562は、加熱手段を有しており、この加熱手段の作動により固形状の有機金属材料を加熱して気化し得るようになっている。そのため、バルブ563を開放した状態で、ポンプ564を作動させて、キャリアガスをガスボンベ565から貯留槽562に供給すると、このキャリアガスとともに気化または霧化した有機金属材料が、供給ライン561内を通過してチャンバー511内に供給されるようになっている。
【0105】
なお、キャリアガスとしては、特に限定されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガス等が好適に用いられる。
また、本実施形態では、ガス供給手段570がチャンバー511に接続されている。ガス供給手段570は、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスを貯留するガスボンベ575と、前記低還元性雰囲気下とするためのガスをチャンバー511内に導くガス供給ライン571と、ガス供給ライン571の途中に設けられたポンプ574およびバルブ573とで構成されている。かかる構成のガス供給手段570では、バルブ573を開放した状態で、ポンプ574を作動させると、前記低還元性雰囲気下とするためのガスが、ガスボンベ575から、供給ライン571を介して、チャンバー511内に供給されるようになっている。ガス供給手段570をかかる構成とすることにより、チャンバー511内を有機金属材料に対して確実に低還元な雰囲気とすることができる。その結果、有機金属材料を原材料としてMOCVD法を用いて被膜を成膜する際に、有機金属材料に含まれる有機成分の少なくとも一部を脱離基303として残存させた状態で被膜が成膜される。
【0106】
チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素ガスおよびヘリウム、アルゴン、キセノンのような希ガス等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、有機金属材料として、後述する2,4−ペンタジオネート−銅(II)や[Cu(hfac)(VTMS)]等のように分子構造中に酸素原子を含有するものを用いる場合には、低還元性雰囲気下とするためのガスに、水素ガスを添加するのが好ましい。これにより、酸素原子に対する還元性を向上させることができ、被膜に過度の酸素原子が残存することなく、被膜を成膜することができる。その結果、かかる被膜から得られる接合膜433は、膜中における金属酸化物の存在率が低いものとなり、優れた導電性を発揮することとなる。
【0107】
また、キャリアガスとして前述した窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガスのうちの少なくとも1種を用いる場合には、このキャリアガスに低還元性雰囲気下とするためのガスとしての機能をも発揮させることができる。
また、排気手段530は、ポンプ532と、ポンプ532とチャンバー511とを連通する排気ライン531と、排気ライン531の途中に設けられたバルブ533とで構成されており、チャンバー511内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
【0108】
以上のような構成の成膜装置500を用いてMOCVD法により、以下のようにして第2の基材41上に被膜が形成される。
まず、予め導体ポスト43および第2の電気配線44が形成された第2の基材41を用意する。そして、この第2の基材41を成膜装置500のチャンバー511内に搬入し、基板ホルダー512に装着(セット)する。
【0109】
次に、排気手段530を動作させ、すなわちポンプ532を作動させた状態でバルブ533を開くことにより、チャンバー511内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、ガス供給手段570を動作させ、すなわちポンプ574を作動させた状態でバルブ573を開くことにより、チャンバー511内に、低還元性雰囲気下とするためのガスを供給して、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とする。ガス供給手段570による前記ガスの流量は、特に限定されないが、0.1〜10sccm程度であるのが好ましく、0.5〜5sccm程度であるのがより好ましい。
【0110】
さらに、このとき、加熱手段を動作させ、基板ホルダー512を加熱する。基板ホルダー512の温度は、形成する被膜の種類、すなわち、被膜を形成する際に用いる原材料の種類によっても若干異なるが、80〜300℃程度で有るのが好ましく、100〜275℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、後述する有機金属材料を用いて、優れた接着性を有する被膜を成膜して、接合膜433を得ることができる。
【0111】
次に、シャッター521を開いた状態にする。
そして、固形状の有機金属材料を貯留された貯留槽562が備える加熱手段を動作させることにより、有機金属材料を気化させた状態で、ポンプ564を動作させるとともに、バルブ563を開くことにより、気化または霧化した有機金属材料をキャリアガスとともにチャンバー内に導入する。
【0112】
このように、前記工程で基板ホルダー512が加熱された状態で、チャンバー511内に、気化または霧化した有機金属材料を供給すると、第2の基材41上で有機金属材料が加熱されることにより、有機金属材料中に含まれる有機物の一部が残存した状態で、第2の基材41上に被膜を形成することができる。
すなわち、MOCVD法によれば、有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存するように金属原子を含む被膜を形成すれば、この被膜をパターニングすることにより、有機物の一部が脱離基303としての機能を発揮する接合膜433を導体ポスト43上に形成することができる。
【0113】
このようなMOCVD法に用いられる、有機金属材料としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ペンタジオネート−銅(II)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)、銅フタロシアニン、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(hfac)(VTMS)]、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(hfac)(MHY)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(pfac)(VTMS)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(pfac)(MHY)]のような金属錯体、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、ジエチル亜鉛のようなアルキル金属や、その誘導体等が挙げられる。これらの中でも、有機金属材料としては、金属錯体であるのが好ましい。金属錯体を用いることにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、被膜を確実に形成することができる。
【0114】
また、本実施形態では、ガス供給手段570を動作させることにより、チャンバー511内を低還元性雰囲気下となっているが、このような雰囲気下とすることにより、第2の基材41(導体ポスト43)上に純粋な金属膜が形成されることなく、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で被膜を成膜することができる。したがって、接合膜および金属膜としての双方の特性に優れた接合膜433を得ることができる。
【0115】
気化または霧化した有機金属材料の流量は、0.1〜100ccm程度であるのが好ましく、0.5〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、均一な膜厚で、かつ、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で、被膜を成膜することができる。
以上のように、被膜を成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基303として用いる構成とすることにより、形成した金属膜等に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で、接合膜433とすべき被膜を成膜することができる。
【0116】
なお、有機金属材料を用いて形成された被膜に残存する前記有機物の一部は、その全てが脱離基303として機能するものであってもよいし、その一部が脱離基303として機能するものであってもよい。
以上のようにして、第2の基材41(導体ポスト43)上に被膜を成膜することができる。
【0117】
なお、導体ポスト43の少なくとも接合膜433を設けるべき(形成すべき)領域には、上記の方法により接合膜433を形成するのに先立って、導体ポスト43の構成材料に応じて、予め、導体ポスト43と接合膜433との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、導体ポスト43の接合膜433を形成すべき領域を清浄化するとともに、該領域を活性化させることができる。これにより、接合膜433と導体ポスト43との接合強度を高めることができる。
また、これらの各表面処理の中でもプラズマ処理を用いることにより、接合膜433を形成するために、導体ポスト43の表面を特に最適化することができる。
次に、本実施形態の半導体装置1の製造方法、すなわち、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43との接合方法について説明する。
【0118】
[1]まず、図9(a)に示すように、第1の半導体チップ3および第2の半導体チップ4を用意する。
これら第1の半導体チップ3および第2の半導体チップ4は、例えば、次のようにして得ることができる。なお、第1の半導体チップ3および第2の半導体チップ4は、同様の方法を用いて形成することができるため、以下では、第1の半導体チップ3を形成する場合を代表に説明する。
【0119】
[1−A] まず、公知の方法を用いて、各半導体素子および第1の電気配線34が形成された第1の基材31に、第1の基材31を貫通する第1のビアホール32を形成する。
この第1のビアホール32は、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウエットエッチング法等の化学的エッチング法のようなエッチング法を用いて形成することができる。
【0120】
[1−B] 次に、第1のビアホール32内に第1の導体ポスト33を形成する。この導体ポスト33は、例えば、導電性材料を含有する液状導電材料(ペースト)を、ビアホール32内に供給した後、乾燥さらには必要に応じて焼成することにより形成することができる。
なお、前記液状導電材料としては、例えば、銀ペースト、ITO粒子のような金属酸化物粒子の分散液等を用いることができる。
【0121】
また、前記液状導電材料をビアホール32内に供給する方法としては、例えば、液滴吐出法(インクジェット法)、スピンコート法、マイクロコンタクトプリンティング法のような各種塗布法等が挙げられるが、特に、インクジェット法を用いるのが好ましい。インクジェット法によれば、前記液状導電材料を容易かつ確実に第1のビアホール32(選択的)に供給することができる。
その他、導体ポスト33は、気相成膜法を用いて形成することも可能である。
【0122】
[2]次に、前記工程[1]で得た第2の半導体チップ4を用意し、その後、第2の基材41の能動面(下側の面)45に、前述したような方法で、被膜を形成した後、この被膜を所定の形状にパターニングすることにより、第2の導体ポスト43の下面に接合膜433を形成することができる。
[3]次に、接合膜433の表面430に対してエネルギーを付与する。なお、表面430へのエネルギーの付与は、第2の基材41の第1の基材31と接合される側の面全体にわたってエネルギーを付与することにより行われてもよいし、接合膜433の表面430に選択的にエネルギーを付与することにより行われてもよい。
【0123】
ここで、接合膜433にエネルギーを付与すると、接合膜433では、脱離基303の結合手が切れて接合膜433の表面430付近から脱離し、脱離基303が脱離した後には、活性手が接合膜433の表面430付近に生じる。これにより、接合膜433の表面430に、第1の導体ポスト33との接着性が発現する。
このような状態の接合膜433は、第1の導体ポスト33と、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
【0124】
ここで、接合膜433に付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与されるものであってもよいが、例えば、接合膜433にエネルギー線を照射する方法、接合膜433を加熱する方法、接合膜433に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、接合膜433をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、接合膜433をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。中でも、本実施形態では、接合膜433にエネルギーを付与する方法として、特に、接合膜433にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。かかる方法は、接合膜433に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギーを付与する方法として好適に用いられる。
【0125】
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図9(b)参照)。かかる範囲内の紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜433中の脱離基303を確実に脱離させることができる。これにより、接合膜433の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜433に接着性を確実に発現させることができる。
【0126】
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、脱離基303の脱離を効率よく行わせることができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜433の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜433との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
【0127】
また、紫外線を照射する時間は、接合膜433の表面430付近の脱離基303を脱離し得る程度の時間、すなわち、接合膜433に必要以上に紫外線が照射されない程度の時間とするのが好ましい。これにより、接合膜433が変質・劣化するのを効果的に防止することができる。具体的には、紫外線の光量、接合膜433の構成材料等に応じて若干異なるものの、0.5〜30分程度であるのが好ましく、1〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
【0128】
一方、レーザ光としては、例えば、エキシマレーザのようなパルス発振レーザ(パルスレーザ)、炭酸ガスレーザ、半導体レーザのような連続発振レーザ等が挙げられる。中でも、パルスレーザが好ましく用いられる。パルスレーザでは、接合膜433のレーザ光が照射された部分に経時的に熱が蓄積され難いので、蓄積された熱による接合膜433の変質・劣化を確実に防止することができる。すなわち、パルスレーザによれば、接合膜433の内部にまで蓄積された熱の影響がおよぶのを、防止することができる。
【0129】
また、パルスレーザのパルス幅は、熱の影響を考慮した場合、できるだけ短い方が好ましい。具体的には、パルス幅が1ps(ピコ秒)以下であるのが好ましく、500fs(フェムト秒)以下であるのがより好ましい。パルス幅を前記範囲内にすれば、レーザ光照射に伴って接合膜433に生じる熱の影響を、的確に抑制することができる。なお、パルス幅が前記範囲内程度に小さいパルスレーザは、「フェムト秒レーザ」と呼ばれる。
【0130】
また、レーザ光の波長は、特に限定されないが、例えば、200〜1200nm程度であるのが好ましく、400〜1000nm程度であるのがより好ましい。
また、レーザ光のピーク出力は、パルスレーザの場合、パルス幅によって異なるが、0.1〜10W程度であるのが好ましく、1〜5W程度であるのがより好ましい。
さらに、パルスレーザの繰り返し周波数は、0.1〜100kHz程度であるのが好ましく、1〜10kHz程度であるのがより好ましい。パルスレーザの周波数を前記範囲内に設定することにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、脱離基303を接合膜433の表面430付近から確実に切断することができる。
【0131】
なお、このようなレーザ光の各種条件は、レーザ光を照射された部分の温度が、好ましくは常温(室温)〜600℃程度、より好ましくは200〜600℃程度、さらに好ましくは300〜400℃程度になるように適宜調整されるのが好ましい。これにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、脱離基303を接合膜433から確実に切断することができる。
【0132】
また、接合膜433に照射するレーザ光は、その焦点を、接合膜433の表面430に合わせた状態で、この表面430に沿って走査されるようにするのが好ましい。これにより、レーザ光の照射によって発生した熱が、表面430付近に局所的に蓄積されることとなる。その結果、接合膜433の表面430に存在する脱離基303を選択的に脱離させることができる。
【0133】
また、接合膜433に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、特に、大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
【0134】
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜433の表面430付近に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による第2の基材41、第1の導体ポスト43および接合膜433の変質・劣化、すなわち得られる半導体装置1の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜433から脱離する脱離基303の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基303の脱離量を調整することにより、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43の接合膜433との間の接合強度を容易に制御することができる。
【0135】
すなわち、脱離基303の脱離量を多くすることにより、接合膜433の表面430付近に、より多くの活性手が生じるため、接合膜433に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基303の脱離量を少なくすることにより、接合膜433の表面430付近に生じる活性手を少なくし、接合膜433に発現する接着性を抑えることができる。
【0136】
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
ここで、エネルギーが付与される前の接合膜433は、図2および図6に示すように、その表面430付近に脱離基303を有している。かかる接合膜433にエネルギーを付与すると、脱離基303(図2では、水素原子、図6では、メチル基)が接合膜433から脱離する。これにより、図3および図7に示すように、接合膜433の表面430に活性手304が生じ、活性化される。その結果、接合膜433の表面430に接着性が発現する。
【0137】
ここで、本明細書中において、接合膜433が「活性化された」状態とは、上述のように接合膜433の表面430および内部の脱離基303が脱離して、接合膜433の構成原子において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、接合膜433が「活性化された」状態と言うこととする。
【0138】
したがって、活性手304とは、図3および図7に示すように、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手304が存在するようにすれば、第1の導体ポスト33に対して、特に強固な接合が可能となる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜433に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成されることとなる。
【0139】
また、本実施形態では、第1の導体ポスト33と接合膜433とを接触させる前に、予め、接合膜433に対してエネルギーを付与する場合について説明しているが、かかるエネルギーの付与は、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とを接触させる(位置決めする)際、または接触させた(位置決めした)後に行うようにしてもよい。このようなエネルギー付与の方法については後述する。
【0140】
[4]次に、図10(c)に示すように、活性化させた接合膜433と、これに接続(接合)すべき第1の導体ポスト33とが密着するようにして、第2の導体ポスト43を第1の導体ポスト33に接触させる。すなわち、第2の基材41の第1の基材31に対する位置決めを行う。これにより、前記工程[3]において、接合膜433が第1の導体ポスト33(被着体)に対する接着性が発現していることから、接合膜433と第1の導体ポスト33とが化学的に結合することとなり、第1の導体ポスト33に接着(接合)して、図10(d)に示すように、第2の導体ポスト43が第1の導体ポスト33に接合され、半導体チップ積層体が得られる。
【0141】
このようにして得られた半導体チップ積層体では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、接合膜433と第1の導体ポスト33とが接合されている。このため、半導体チップ積層体は短時間で形成することができ、かつ、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
また、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とが直接接合されているため、半導体チップ積層体に不本意な応力(曲げ等)が加えられた場合でも、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43との電気的接続が容易に損なわれるのを防止することができる。すなわち、信頼性の高い半導体装置1を得ることができる。
【0142】
一方で、このような半導体チップ積層体を得る方法によれば、固体接合を用いる場合や、半田バンプを用いる場合のように、高温(例えば、700℃以上や260℃以上)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された第1の基材31および第2の基材41をも、接合に供することができる。
ここで、本工程において、接合膜433と第1の導体ポスト33とが接合するメカニズムについて説明する。
【0143】
例えば、第1の導体ポスト33の上面に、水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、第1の導体ポスト33と接合膜433とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜433の表面に存在する水酸基と、第1の導体ポスト33の上面に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、第1の導体ポスト33と接合膜433とが接合されると推察される。
【0144】
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、接合膜433と第1の導体ポスト33との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、第1の導体ポスト33と第2の導体ポストとが接合膜433を介して、より強固に接合されると推察される。
【0145】
以上説明したような第1の導体ポスト33の接合膜433との接合に供される領域(上面)には、第2の導体ポスト43と同様に、第1の導体ポスト33の構成材料に応じて、接合を行う前に、あらかじめ、第1の導体ポスト33と接合膜433との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43との接合強度をより高めることができる。
【0146】
なお、表面処理としては、第2の導体ポスト43に対して施す前述したような表面処理と同様の処理を適用することができる。
また、第1の導体ポスト33の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、第1の導体ポスト33と接合膜433との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第1の導体ポスト33の構成材料には、前述した第2の導体ポスト43の構成材料と同様のもの(すなわち、各種金属系材料)等が挙げられる。
【0147】
さらに、第1の導体ポスト33の接合膜433との接合に供される領域に、以下の基や物質を有する場合には、上記のような表面処理を施さなくても、第1の導体ポスト33と接合膜433との接合強度を十分に高くすることができる。
このような基や物質としては、例えば、水素原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような官能基、ラジカル、開環分子、2重結合、3重結合のような不飽和結合、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基または物質が挙げられる。このような基または物質を有する表面は、接合膜433に対する接合強度のさらなる向上を実現し得るものとなる。
【0148】
また、このようなものを有する表面が得られるように、上述したような各種表面処理を適宜選択して行うことにより、接合膜433と特に強固に接合可能な第1の導体ポスト33が得られる。
なお、前記工程[3]で活性化された接合膜433の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[3]の終了後、できるだけ早く本工程[4]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[3]の終了後、60分以内に本工程[4]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜433の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程で第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とを接合したとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
【0149】
換言すれば、活性化させる前の接合膜433は、脱離基303を備えた状態で化学的に比較的安定な膜であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜433は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような接合膜433を備えた第2の半導体チップ4を多量に製造または購入して保存しておき、本工程の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[3]に記載したエネルギーの付与を行うようにすれば、半導体装置1の製造効率の観点から有効である。
【0150】
また、前述の方法では、第2の導体ポスト43の接合膜433にエネルギーを付与した後、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43の接合膜433とが接触するように第1の基材31と第2の基材41とを重ねあわせ、これら導体ポスト33、43を接合しているが、第1の導体ポスト33と接合膜433とが接触するように第1の基材31と第2の基材41とを重ね合わせた後、接合膜433に対してエネルギーを付与して、接合膜433を活性化させ、これにより、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とを接合してもよい。
【0151】
以下、このようにして第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とを接合する方法について説明する。
[1’]まず、前記と同様にして、第1の半導体チップ3および第2の半導体チップ4を用意する。
[2’]次に、前記と同様にして、第2の半導体チップ4が備える第2の半導体ポスト43の下面に導電膜433を形成する。
【0152】
[3’]次に、接合膜433の下面(表面430)と、接合すべき第2の導体ポスト33の上面とが密着(接触)するように、第2の基材41を第1の基材31に積層する。なお、この状態では、接合膜433と第1の導体ポスト33との間は接合されていないので、第2の基材41の第1の基材31に対する相対位置を調整することができる。これにより、第2の基材41を第1の基材31に積層した後、これらの位置を容易に微調整することができる。その結果、第2の基材41の第1の基材31の面方向における位置精度を高めることができる。
【0153】
[4’]次に、接合膜433に対してエネルギーを付与する。接合膜433にエネルギーが付与されると、接合膜433の表面430に、第1の導体ポスト33との接着性が発現する。これにより、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とが接合される。
ここで、この例では、の接合膜433にエネルギーを付与する方法として、特に、接合膜433を加熱する方法、および接合膜433に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法を用いる。これらの方法は、接合膜433に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
【0154】
このうち、接合膜433を加熱することにより、接合膜433に対してエネルギーを付与する場合には、加熱温度を25〜150℃程度に設定するのが好ましく、50〜100℃程度に設定するのがより好ましい。かかる範囲の温度で加熱すれば、第1の半導体チップ3および第2の半導体チップ4が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合膜433を確実に活性化させることができる。
【0155】
また、加熱時間は、接合膜433の脱離基303を脱離し得る程度の時間とすればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、接合膜433は、いかなる方法で加熱されてもよいが、例えば、ヒータを用いる方法、赤外線を照射する方法、火炎に接触させる方法等の各種方法で加熱することができる。
【0156】
なお、赤外線を照射する方法を用いる場合には、第1の導体ポスト33および第2の導体ポスト43の少なくとも一方は、光吸収性を有する材料で構成されているのが好ましい。これにより、赤外線を照射された第1の導体ポスト33および第2の導体ポスト43は、効率よく発熱する。その結果、接合膜433を効率よく加熱することができる。
また、ヒータを用いる方法または火炎に接触させる方法を用いる場合には、第1の導体ポスト33または第2の導体ポスト43のうちヒータまたは火炎を接触させる側の部材は、熱伝導性に優れた材料で構成されているのが好ましい。これにより、第1の導体ポスト33または第2の導体ポスト43を介して、接合膜433に対して効率よく熱を伝えることができ、接合膜433を効率よく加熱することができる。
【0157】
また、接合膜433に圧縮力を付与することにより、接合膜433に対してエネルギーを付与する場合には、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とが互いに近づく方向に、0.2〜10MPa程度の圧力で圧縮するのが好ましく、1〜5MPa程度の圧力で圧縮するのがより好ましい。これにより、単に圧縮するのみで、接合膜433に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、接合膜433に、第1の導体ポスト33との十分な接着性が発現する。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43の各構成材料によっては、第1の導体ポスト33および第2の導体ポスト43に損傷等が生じるおそれがある。
【0158】
また、圧縮力を付与する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、圧縮力を付与する時間は、圧縮力の大きさに応じて適宜変更すればよい。具体的には、圧縮力の大きさが大きいほど、圧縮力を付与する時間を短くすることができる。
以上のようにして、第1の半導体チップ3上に第2の半導体チップ4が積層された半導体チップ積層体を得ることができる。
【0159】
このようにして得られた半導体チップ積層体は、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43との間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する半導体チップ積層体は、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43との剥離を十分に防止し得るものとなる。すなわち、得られる半導体チップ積層体は、耐久性に優れたものとなる。また、本発明によれば、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とが上記のような大きな接合強度で接合された半導体チップ積層体を効率よく作製することができる。
【0160】
なお、従来のシリコン基板同士を直接接合するような固体接合では、接合に供される接合部材の表面を活性化させても、その活性状態は、大気中で数秒〜数十秒程度の極めて短時間しか維持することができなかった。このため、表面の活性化を行った後、接合する2つの接合部材を貼り合わせる等の作業に要する時間を、十分に確保することができないという問題があった。
【0161】
これに対し、本発明によれば、比較的長時間に亘って活性状態を維持することができる。このため、貼り合わせ作業に要する時間を十分に確保することができ、接合作業の効率化を高めることができる。なお、比較的長時間に亘って活性状態を維持し得ることは、有機成分で構成される脱離基303が脱離した活性化状態が安定化していることに起因しているものと推察される。
【0162】
なお、半導体チップ積層体を得る際、または、半導体チップ積層体を得た後に、この半導体チップ積層体に対して、必要に応じ、以下の3つの工程([4A]、[4B]および[4C])のうちの少なくとも1つの工程(半導体チップ積層体の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、半導体チップ積層体の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0163】
[4A] 本工程では、得られた半導体チップ積層体を、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、第1の導体ポスト33の表面と、接合膜433の表面とがより近接し、半導体チップ積層体における接合強度をより高めることができる。
また、半導体チップ積層体を加圧することにより、第1の導体ポスト33の表面と、接合膜433の表面との接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、半導体チップ積層体における接合強度をさらに高めることができる。
このとき、半導体チップ積層体を加圧する際の圧力は、半導体チップ積層体が損傷を受けない程度の圧力で、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例して半導体チップ積層体における接合強度を高めることができる。
【0164】
なお、この圧力は、第1の導体ポスト33および第2の導体ポスト43の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、第1の導体ポスト33および第2の導体ポスト43の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、半導体チップ積層体の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の導体ポスト33および第2の導体ポスト43の各構成材料によっては、第1の導体ポスト33および第2の導体ポスト43に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、半導体チップ積層体を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
【0165】
[4B] 本工程では、得られた半導体チップ積層体を加熱する。
これにより、半導体チップ積層体における接合強度をより高めることができる。
このとき、半導体チップ積層体を加熱する際の温度は、室温より高く、半導体チップ積層体の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜150℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、半導体チップ積層体が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
【0166】
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[4A]、[4B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、半導体チップ積層体を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、半導体チップ積層体の接合強度を特に高めることができる。
【0167】
[4C] 本工程では、得られた半導体チップ積層体に紫外線を照射する。
これにより、第1の導体ポスト33と接合膜433との間に形成される化学結合を増加させ、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43との間の接合強度をそれぞれ高めることができる。その結果、半導体チップ積層体の接合強度を特に高めることができる。
このとき照射される紫外線の条件は、前記工程[2]に示した紫外線の条件と同等にすればよい。
【0168】
本工程[4C]は、第1の導体ポスト33、および、第2の導体ポスト43の少なくとも一方を、透光性を有する材料で構成することにより行うことができる。例えば、第1の導体ポスト33を、透光性を有する材料で構成した場合には、第1の導体ポスト33側から、紫外線を照射することにより、本工程を行うことができる。また、第2の導体ポスト43を、透光性を有する材料で構成した場合には、第2の導体ポスト43側から、紫外線を照射することにより、本工程を行うことができる。
以上のような工程を行うことにより、半導体チップ積層体における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0169】
[5]次に、インターポーザー2を用意し、このインターポーザー2上に、前記工程[3]で得られた半導体チップ積層体を搭載する。
これは、インターポーザー2上の配線21の一部に、第1の半導体チップ3が有する第1の導体ポスト33を接合することにより行うことができる。
配線21と第1の導体ポスト33との接合は、各種方法を用いて行うことができ、例えば、図1に示すように、半田や異方性導電膜のような導電性接合材で構成される接合膜25を介して、配線21と第1の導体ポスト33とを接合することができる
かかる構成の他、接合膜25を、導電性を有する接合膜433と同様の構成のものとすれば、前述したような方法で行うことができる。
【0170】
後者の構成として、配線21と第1の導体ポスト33とを接合すれば、インターポーザー2上に設けられた配線21との接合を、前述した接続部を介して行うことができ、その結果、これら同士間の接合強度(接続信頼性)を向上させることができる。したがって、信頼性により優れた半導体装置1とすることができる。
後者の接合方法による場合、第1の導体ポスト33にも第2の導体ポスト43と同様に、その下面に接合膜を形成する構成としておき、前記工程[2]において、接合膜433にエネルギーを付与するのと並行して、接合膜25にもエネルギーを付与する。そして、前記工程[3]において、接合膜433と第1の導体ポスト33とが密着するとともに、接合膜25と配線21とが密着するように、インターポーザー2と、第1の基材31および第2の基材41とを積層し位置決めし、配線21と第1の導体ポスト33、および、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とを接合する。かかる構成とすることにより、これらを一括して接合することができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0171】
また、第1の導体ポスト33にも第2の導体ポスト43と同様に、その下面に接合膜を形成する構成としておき、前記工程[3’]において、接合膜433と第1の導体ポスト33とが密着するとともに、第1の導体ポスト33の接合膜と配線21とが密着するように、インターポーザー2と、第1の基材31および第2の基材41とを積層して位置決めする。そして、前記工程[4’]において、第1の導体ポスト33の接合膜と接合膜433の双方にエネルギーを付与することにより、配線21と第1の導体ポスト33、および、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とを接合する。かかる構成とすることによっても、これらを一括して接合することができ、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0172】
なお、本実施形態では、第2の導体ポスト43の第1の導体ポスト33と接合される側に、前述したような導電性を有し、かつ、所定の処理を施すことにより接着性を発現する特定の材料で構成された接合膜433を設ける場合について説明したが、第2の導体ポスト43に代えて、第1の導体ポスト33の第2の導体ポスト43と接合される側(他方の面側)に、かかる材料で構成された接合膜を設けるようにしてもよく、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43の双方に、かかる材料で構成された接合膜を設けるようにしてもよい。
【0173】
<<第2実施形態>>
次に、本発明の半導体装置の第2実施形態について説明する。
図11は、本発明の半導体装置の第2実施形態を示す断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図11中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0174】
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態では、第2の導体ポスト43および第2の電気配線44の構成が異なり、それ以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、図11に示すように、第2の導体ポスト43は、その全体形状が円柱状をなしており、その下面(第1の導体ポスト33側)に、第1の導体ポスト33と接合する接合膜433が設けられている。そして、本実施形態では、第2の電気配線44は、この接合膜433と同様の構成、すなわち導電性を有する接合膜で構成されており、接合膜433と連続して(一体的に)形成されている。
【0175】
かかる構成の第2の半導体チップ4、すなわち、接合膜433と第2の電気配線44とが一体化して形成された第2の半導体チップ4は、前記第1実施形態における第2の半導体チップ4と同様にして、第2の基材41に、第2のビアホール42および第2の導体ポスト43を形成した後、能動面45に、前記第1実施形態における接合膜433を形成するのと同様にして被膜を形成し、この被膜を、第2の電気配線44と接合膜433とが一体的に形成されるように、これらの形状に対応してパターニングすることにより得ることができる。
【0176】
このような第2の半導体チップ4を用いた場合においても、前記第1実施形態で説明したのと同様にして、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4とが、接合膜433を介して接合された半導体チップ積層体を得ることができる。そして、得られた半導体チップを、前記と同様にして、インターポーザー2上に接合することにより、半導体装置1を得ることができる。
【0177】
<<第3実施形態>>
次に、本発明の半導体装置の第3実施形態について説明する。
図12は、本発明の積層基板の第3実施形態を示す断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図12中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0178】
以下、第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図12に示すように、第3実施形態の半導体装置1’は、インターポーザー2上に、第1の半導体チップ3と、第2の半導体チップ4と、第3の半導体チップ5とが、この順で積層された3層構成の半導体装置である。
【0179】
第3の半導体チップ5は、第2の半導体チップ4上に積層された平板状の第3の基材51と、この第3の基材の厚さ方向に貫通して設けられた第3のビアホール(貫通孔)52と、第3のビアホール52内に設けられた第3の導体ポスト(電気接続部)53とを備える。また、第3の基材51の下面(一方の面)は、半導体素子(図示せず)と半導体素子同士を電気的に接続する第3の配線54とが形成されることにより能動面(集積回路形成面)55とされている。
【0180】
第3の半導体チップ5を構成する各部は、第2の半導体チップ4を構成する各部と同様の構成とされている。
この第3の半導体チップ5が備える第3の導体ポスト53の下面にも、前述した接合膜433と同様の構成の接合膜535が形成されている。
第3の半導体チップ5は、前記工程[2]において、接合膜433にエネルギーを付与するのと並行して、接合膜535にもエネルギーを付与し、前記工程[3]において、接合膜433と第1の導体ポスト33とが密着するとともに、の接合膜535と第2の導体ポスト43とが密着するように、第1の基材31〜第3の基材51とを積層して位置決めし、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43、および、第2の導体ポスト43と第3の導体ポスト53とを、それぞれ、接合膜433および接合膜535を介して、接合することによって、第2の半導体チップ4上に搭載することができる。
【0181】
さらに、第3の半導体チップ5は、前記工程[3’]において、接合膜433と第1の導体ポスト33とが密着するとともに、第3の導体ポスト53の接合膜535と第2の導体ポスト43とが密着するように、第1の基材31〜第3の基材51とを積層して位置決めし、前記工程[4’]において、接合膜433と接合膜535の双方にエネルギーを付与し、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43、および、第2の導体ポスト43と第3の導体ポスト53とを、それぞれ、接合膜433および接合膜535を介して、接合することによって、第2の半導体チップ4上に搭載することができる。
なお、本発明の積層基板は、前記第1および第2実施形態のような2層構成や、本第3実施形態のような3層構成に限らす、4層以上の構成とすることができる。
4層以上とした場合でも、本発明の構成とすれば、容易に半導体装置を製造することができる。
【0182】
<<第4実施形態>>
次に、本発明の半導体装置の第4実施形態について説明する。
図13は、本発明の半導体装置の第4実施形態を示す断面図、図14は、図13に示す半導体装置における接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図15は、図13に示す半導体装置における接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図、図16は、接合膜を成膜する際に用いられる成膜装置を模式的に示す図、図17は、図13に示す半導体装置の製造方法(製造工程)を説明するための図である。なお、以下では、説明の都合上、図13〜図17中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0183】
第4実施形態では、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43との接合の他に、さらに第1の基材31と第2の基材41とが接合され、それ以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、図13に示す半導体装置1”は、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とが接合膜433を介して接合され、さらに第1の基材31と第2の基材41とが接合膜7を介して接合されている。これにより、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4との全体としての接合強度(半導体装置1”の接合強度)をより向上させることができる。また、半導体装置1”内への水分の浸入を防止または低減することができ、その結果、半導体装置の変質・劣化を好適に防止または低減することができる。
【0184】
このような接合膜7は、例えば、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤のような各種接着剤で構成することもできるが、所定の処理を施すことにより接着性を発現する、絶縁性の接合膜で構成するのが好ましい。
この材料としては、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含む材料が好適に使用される。
【0185】
かかる材料で構成される接合膜7は、エネルギーを付与する前の状態では、図14に示すように、シロキサン(Si−O)結合502を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格501と、このSi骨格501に結合する脱離基503とを含むものである。
そして、この接合膜7にエネルギーを付与すると、図15に示すように、一部の脱離基503がSi骨格501から脱離し、代わりに活性手504が生じる。これにより、接合膜7の表面に接着性が発現する。このようにして接着性が発現した接合膜7により、第1の基材31と第2の基材41とが接合されている。
【0186】
このような接合膜7は、シロキサン結合502を含みランダムな原子構造を有するSi骨格501の影響によって、変形し難い強固な膜となる。このため、第1の基材31と第2の基材41との間の距離、すなわち、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4との間の距離を高い寸法精度で一定に保持することができる。
また、接合膜7を用いて第1の基材31と第2の基材41とを接合したことにより、接着剤を用いて接合した場合に、接着剤がはみ出すといった問題が生じることが防止される。したがって、はみ出した接着剤を除去する手間も省略できるという利点もある。
【0187】
さらに、接合膜7は、化学的に安定なSi骨格501の作用により、耐熱性に優れている。このため、例えば、半導体装置1”を、回路基板に実装する場合、リフロー処理(高温による加熱処理)が行われても、接合膜7の変質・劣化が防止または抑制される。その結果、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4との剥離をより確実に防止することができる。
【0188】
また、このような接合膜7は、流動性を有しない固体状のものとなる。このため、流動性を有する液状または粘液状の接着剤を用いる場合に比べて、接着層(接合膜7)の厚さや形状がほとんど変化しない。このため、接合膜7を用いて製造された半導体装置1”の寸法精度は、格段に高いものとなる。さらに、接着剤を用いる場合に比較して、その硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合を可能にするものである。
【0189】
このような接合膜7としては、特に、接合膜7を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%程度であるのが好ましく、20〜80原子%程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜7は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜7自体がより強固なものとなる。また、かかる接合膜7は、第1の基材31および第2の基材41に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
【0190】
また、接合膜7中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜7の安定性が高くなり、第1の基材31と第2の基材41とをより強固に接合することができるようになる。
なお、接合膜7中のSi骨格501の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格501は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述したSi骨格501の特性が顕在化し、接合膜7の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
【0191】
また、Si骨格501に結合する脱離基503は、前述したように、Si骨格501から脱離することによって、接合膜7に活性手504を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基503には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないようSi骨格501に確実に結合しているものである必要がある。
【0192】
かかる観点から、脱離基503には、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含み、これらの各原子がSi骨格501に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基503は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜7の接着性をより高度なものとすることができる。
【0193】
なお、上記のような各原子がSi骨格501に結合するよう配置された原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0194】
これらの各基の中でも、脱離基503は、特にアルキル基であるのが好ましい。アルキル基は化学的な安定性が高いため、アルキル基を含む接合膜7は、耐候性に(半導体装置が使用される環境に対して)優れたものとなる。
このような特徴を有する接合膜7の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物等が挙げられる。
【0195】
ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜7は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜7は、第1の基材31と第2の基材41とをより強固に接合することができる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
【0196】
なお、この撥水性(非接着性)は、主に、ポリオルガノシロキサン中に含まれたアルキル基による作用である。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜7は、エネルギーを付与された領域に接着性が発現するとともに、エネルギーを付与しなかった領域においては、前述したアルキル基による優れた撥液性が得られるという利点も有する。したがって、エネルギーを付与する領域を制御することにより、例えば、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4との間隙の端部に、優れた撥液性を発現させることができる。その結果、例えば湿度が比較的高い場所で半導体装置1”が使用された場合でも、半導体装置1”内への水分の浸入をより確実に防止することができる。
【0197】
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜7は、接着性に特に優れることから、第1の基材31と第2の基材41との接合に特に好適に適用できるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
【0198】
なお、接合膜7の厚さは、第1の基材31の上面から突出する第1の導体ポスト33の突出部の高さと、第2の基材41の下面から突出する第2の導体ポスト43の突出部の高さとの合計(すなわち、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4との間隙の大きさ)とほぼ等しく設定するのが好ましい。
このような接合膜7は、いかなる方法で作製されたものでもよく、プラズマ重合法、CVD法、PVD法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により作製した膜にエネルギーを付与することによって作製することができるが、これらの中でも、エネルギー付与前の膜として、プラズマ重合法により作製された膜を用いるのが好ましい。プラズマ重合法によれば、最終的に、緻密で均質な接合膜7を効率よく作製することができる。これにより、プラズマ重合法で作製された接合膜7は、第1の基材31と第2の基材41とを特に強固に接合し得るものとなる。また、緻密な接合膜7で第1の基材31と第2の基材41とが接合されているため、半導体装置1”への水分の浸入をより確実に防止ることができ、半導体装置1”の信頼性のさらなる向上を図ることができる。さらに、プラズマ重合法で作製された接合膜7は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持することができる。このため、半導体装置1”の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
【0199】
次に、一例として、第2の半導体チップ4の上面(第2の電気配線が形成されている面)に、プラズマ重合法により、接合膜7を作製して、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4とを接合して半導体チップ積層体を得る工程を経て、半導体装置1”を製造する方法について説明する。プラズマ重合法は、例えば、強電界中に、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を重合させ、重合物を第1の半導体チップ3の上面に堆積させ、膜を得る方法である。
【0200】
以下、接合膜7をプラズマ重合法にて形成する方法について詳述するが、まず、接合膜7の形成方法を説明するのに先立って、第2の半導体チップ4の上面にプラズマ重合法を行いて接合膜7を作製する際に用いるプラズマ重合装置について説明し、その後、接合膜7の形成方法について説明する。
図16に示すプラズマ重合装置900は、チャンバー901と、第2の半導体チップ4を支持する第1の電極930と、第2の電極940と、各電極930、940間に高周波電圧を印加する電源回路980と、チャンバー901内にガスを供給するガス供給部990と、チャンバー901内のガスを排気する排気ポンプ970とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極930および第2の電極940がチャンバー901内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
【0201】
チャンバー901は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。
図16に示すチャンバー901は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
チャンバー901の上方には供給口903が、下方には排気口904が、それぞれ設けられている。そして、供給口903にはガス供給部990が接続され、排気口904には排気ポンプ970が接続されている。
【0202】
なお、本実施形態では、チャンバー901は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線902を介して電気的に接地されている。
第1の電極930は、板状をなしており、第2の半導体チップ4を支持している。
この第1の電極930は、チャンバー901の側壁の内壁面に、水平方向に沿って設けられている。また、第1の電極930は、チャンバー901を介して電気的に接地されている。
【0203】
第1の電極930の第2の半導体チップ4を支持する面には、静電チャック(吸着機構)939が設けられている。
この静電チャック939により、図16に示すように、第2の半導体チップ4を保持することができる。また、第2の半導体チップ4に多少の反りがあっても、静電チャック939に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で第2の半導体チップ4をプラズマ処理に供することができる。
【0204】
第2の電極940は、第2の半導体チップ4を介して、第1の電極930と対向して設けられている。なお、第2の電極940は、チャンバー901の側壁の内壁面から離間した(絶縁された)状態で設けられている。
この第2の電極940には、配線984を介して高周波電源982が接続されている。また、配線984の途中には、マッチングボックス(整合器)983が設けられている。これらの配線984、高周波電源982およびマッチングボックス983により、電源回路980が構成されている。
【0205】
このような電源回路980によれば、第1の電極930は接地されているので、第1の電極930と第2の電極940との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極930と第2の電極940との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
ガス供給部990は、チャンバー901内に所定のガスを供給するものである。
図16に示すガス供給部990は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部991と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置992と、キャリアガスを貯留するガスボンベ993とを有している。また、これらの各部とチャンバー901の供給口903とが、それぞれ配管994で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口903からチャンバー901内に供給するように構成されている。
【0206】
貯液部991に貯留される液状の膜材料は、プラズマ重合装置900により、重合して第2の半導体チップ4(第2の基材41)の表面に重合膜を形成する原材料となるものである。
このような液状の膜材料は、気化装置992により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー901内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
【0207】
ガスボンベ993に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
また、チャンバー901内の供給口903の近傍には、拡散板995が設けられている。
拡散板995は、チャンバー901内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー901内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
【0208】
排気ポンプ970は、チャンバー901内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー901内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による第2の半導体チップ4の汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー901内から効果的に除去することができる。
また、排気口904には、チャンバー901内の圧力を調整する圧力制御機構971が設けられている。これにより、チャンバー901内の圧力が、ガス供給部990の動作状況に応じて、適宜設定される。
【0209】
次に、接合膜7を介して、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4とが接合された半導体チップ積層体の製造方法について説明する。
[1”] まず、前記第1実施形態と同様にして、第1の半導体チップ3および第2の半導体チップ4を用意する。
[2”] 次に、第2の半導体チップ4をプラズマ重合装置900のチャンバー901内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ970の作動により、チャンバー901内を減圧状態とする。
【0210】
次に、ガス供給部990を作動させ、チャンバー901内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー901内に充填される。
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
【0211】
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
次いで、電源回路980を作動させ、一対の電極930、940間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極930、940間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、重合物が第2の半導体チップ4上に付着・堆積する。これにより、図17(a)に示すように、第2の半導体チップ4上にプラズマ重合膜で構成された接合膜7’が形成される。この接合膜7’は、次工程[3”]において、不要な部分を除去する加工を施すことにより、接合膜7となり得るものである。
【0212】
原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン等が挙げられる。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜7’は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
【0213】
プラズマ重合の際、一対の電極930、940間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz〜100MHz程度であるのが好ましく、10〜60MHz程度であるのがより好ましい。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜10W/cm程度であるのが好ましく、0.1〜1W/cm程度であるのがより好ましい。
【0214】
また、成膜時のチャンバー901内の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
【0215】
処理時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、4〜7分程度であるのがより好ましい。なお、成膜される接合膜7’(接合膜7)の厚さは、主に、この処理時間に比例する。したがって、この処理時間を調整することのみで、接合膜7’の厚さを容易に調整することができる。
また、第2の半導体チップ4の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、接合膜7’を得ることができる。
【0216】
[3”]次に、接合膜7’が形成された第2の半導体チップ4を、一旦チャンバー901内から取り出す。そして、図17(b)に示すように、接合膜433の上面が露出するように接合膜7’を除去して開口部71を形成するとともに、その他の部分の接合膜7’を平坦化することにより、所定形状にパターニングされた接合膜7を形成する。
この接合膜7’の除去は、ドライエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウエットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0217】
[4”]次に、この接合膜7が形成された第2の半導体チップ4を、再度チャンバー901内に設置する。そして、接合膜7’に対してエネルギーを付与する。
エネルギーが付与されると、接合膜7’では、図15に示すように、脱離基503がSi骨格501から脱離する。そして、脱離基503が脱離した後には、図16に示すように、接合膜7の表面および内部に活性手504が生じる。これにより、接合膜7’の表面(上面)に接着性が発現する。また、このとき、前記第1実施形態で説明したように、接合膜433の表面(上面)にも、接着性が発現する。
ここで、エネルギーの付与には、前記第1実施形態で説明したのと同様の方法を用いることができる。
【0218】
[5”]次に、図17(c)に示すように、接合膜433に接着性を発現する処理を行った第2の半導体チップ4を、第1の半導体チップ3に対して所定の位置となるように位置決しつつ積層する。これにより、第2の半導体チップ4が第1の半導体チップ3に接合され、半導体チップ積層体が得られる。
なお、接合膜7’は、第2の半導体チップ4の上面に代えて、第1の半導体チップ3の下面に設けるようにしてもよく、第1の半導体チップ3の上面および第2の半導体チップ4の下面の双方に設けるようにしてもよい。
【0219】
ここで、第1の半導体チップ3および第2の半導体チップ4の各熱膨張率が互いに異なる場合には、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4とを貼り合わせる際の条件を以下のように最適化するのが好ましい。これにより、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4とを高い寸法精度で強固に接合することができる。
例えば、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4との熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
【0220】
具体的には、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4との熱膨張率差にもよるが、第1の半導体チップ3および第2の半導体チップ4の温度が25〜50℃程度である状態下で、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4との熱膨張率差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、半導体装置1”における反りや剥離等の発生を確実に防止することができる。
【0221】
また、この場合、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。なお、接合膜7(接合膜7’)を用いることにより、上述したような低温下でも、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4と(第1の基材31と第2の基材41と)を強固に接合することができる。
【0222】
また、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4とは、互いに剛性が異なっているのが好ましい。これにより、接合界面に熱応力が発生したとしても、この熱応力を第1の半導体チップ3および第2の半導体チップ4のいずれか一方で吸収して、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4とをより強固に接合することができる。
また、第1の半導体チップ3および第2の半導体チップ4の各熱膨張率が互いに異なる場合には、例えば、接合膜7の熱膨張係数を、第1の半導体チップ3の熱膨張係数と第2の半導体チップ4の熱膨張係数との間に調整するようにしてもよい。これにより、半導体装置1”が熱膨張した場合でも、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4との剥離をより確実に防止することができる。
【0223】
かかる接合膜7の熱膨張係数は、その成膜時の原料の比率、成膜条件等を適宜設定することにより調整可能である。
そして、以上のようにして得られた半導体チップ積層体を、前記第1実施形態の前記工程[5]と同様にしてインターポーザー2と接合することによって図13に示す半導体装置1”が得られる。
【0224】
また、本実施形態では、インターポーザー2と第1の基材31とが、接合膜7と同様の材料によって構成された接合膜8で接合されている。これにより、半導体装置1”内への水分の浸入をさらに低減することができ、また、半導体装置1”の接合強度をさらに向上させることができる。
なお、このような接合膜7は、第1実施形態の半導体装置のみならず、第2および第3実施形態の半導体装置に適用することができることは言うまでもない。
【0225】
<<第5実施形態>>
次に、本発明の半導体装置の第5実施形態について説明する。
図18は、本発明の半導体装置の第5実施形態を示す断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図18中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0226】
以下、第5実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第5実施形態では、第2の半導体チップ3および第3の半導体チップ4が、能動面35、45を上側(インターポーザー2と反対側)にして積層されており、さらに、第1の導体ポスト33、第1の電気配線34、第2の導体ポスト43および第2の電気配線44の構成が異なり、それ以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0227】
すなわち、図11に示す半導体装置1は、第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4とが、第1の基材31の能動面35(一方の面)側と第2の基材41の裏面46(他方の面)側とが対向するようにして積層されている。
また、第1の導体ポスト33は、その全体形状が円柱状をなしており、その上面(能動面35側)に、第2の導体ポスト43と接合する接合膜333が設けられている。そして、本実施形態では、第1の電気配線34は、この接合膜333と同様の構成、すなわち導電性を有する接合膜で構成されており、接合膜333と連続して(一体的に)形成されている。
【0228】
さらに、第2の導体ポスト43は、その全体形状が円柱状をなしており、その上面(能動面45側)に、接合膜433が設けられている。そして、本実施形態では、第2の電気配線44は、この接合膜433と同様の構成、すなわち導電性を有する接合膜で構成されており、接合膜433と連続して(一体的に)形成されている。
かかる構成の半導体装置1において、第1の導体ポスト33と第2の導体ポスト43とが接合膜333を介して接合されている。
【0229】
この接合膜333は、第2の半導体チップ4が備える接合膜433と同様の構成となっており、前記第1実施形態で説明したように、導電性を有し、かつ、所定の処理を施すことにより接着性を発現するものである。
かかる構成の第2の半導体チップ4、すなわち、接合膜433と第2の電気配線44とが一体化して形成された第2の半導体チップ4は、前記第1実施形態における第2の半導体チップ4と同様にして、第2の基材41に、第2のビアホール42および第2の導体ポスト43を形成した後、能動面45に、前記第1実施形態における接合膜433を形成するのと同様にして被膜を形成し、この被膜を、第2の電気配線44と接合膜433とが一体的に形成されるように、これらの形状に対応してパターニングすることにより得ることができる。
【0230】
かかる構成の第1の半導体チップ3、すなわち、接合膜333と第1の電気配線34とが一体化して形成された第1の半導体チップ3は、前記第1実施形態における第2の半導体チップ4と同様にして、第1の基材31に、第1のビアホール32および第1の導体ポスト33を形成した後、能動面35に、前記第1実施形態における接合膜433を形成するのと同様にして被膜を形成し、この被膜を、第1の電気配線34と接合膜333とが一体的に形成されるように、これらの形状に対応してパターニングすることにより得ることができる。また、第2の半導体チップ4も、第1の半導体チップ3と同様にして得ることができる。
【0231】
そして、この第1の半導体チップ3と第2の半導体チップ4とは、双方の能動面35、45を上側にして、第1の半導体チップ3に第2の半導体チップ4を積層する以外は、前記第1実施形態で説明したのと同様にして、すなわち、前記工程[2]、[3](必要に応じて工程[4A]〜[4C]のうちの少なくとも1工程)を経て、接合される。そして、得られた半導体チップ積層体を、前記工程[5]と同様にして、インターポーザー2上に接合することにより、半導体装置1を得ることができる。
【0232】
<電子機器>
次に、上述した半導体装置を備える本発明の電子機器について説明する。
なお、以下では、本発明の電子機器の一例として、携帯電話を代表に説明する。
図19は、携帯電話の実施形態を示す斜視図である。
図19に示す携帯電話は、表示部1001を備える携帯電話本体1000を有している。携帯電話本体1000には、上述した半導体装置1、1’または1”が内蔵されており、これらは、携帯電話機本体1000において光信号出力手段などとして用いられる。
【0233】
なお、半導体装置1、1’または1”は、図19で説明した携帯電話の他に、種々の電子機器に対して適用できる。
例えば光ファイバ通信モジュール、レーザプリンタ、レーザビーム投射器、レーザビームスキャナ、リニアエンコーダ、ロータリエンコーダ、変位センサ、圧力センサ、ガスセンサ、血液血流センサ、指紋センサ、高速電気変調回路、無線RF回路、無線LAN等にも適用できる。
【0234】
半導体装置1、1’または1”を電子機器に搭載することにより、半導体装置1、1’または1”が高い寸法精度で強固に接合されているので、良質の電子機器を得ることができる。
以上、本発明の半導体装置および電子機器を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、半導体装置および電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
例えば、本発明の半導体装置および電子機器は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】本発明の半導体装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す半導体装置における接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。
【図3】図1に示す半導体装置における接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
【図4】Iの構成の接合膜を形成する被膜の成膜に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。
【図5】図4に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図である。
【図6】IIの構成の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。
【図7】IIの構成の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
【図8】IIの構成の接合膜を成膜する際に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。
【図9】図1に示す半導体装置の製造方法(製造工程)を説明するための図である。
【図10】図1に示す半導体装置の製造方法(製造工程)を説明するための図である。
【図11】本発明の半導体装置の第2実施形態を示す断面図である。
【図12】本発明の半導体装置の第3実施形態を示す縦断面図である。
【図13】本発明の半導体装置の第4実施形態を示す縦断面図である。
【図14】図13に示す半導体装置における接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。
【図15】図13に示す半導体装置における接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
【図16】接合膜を成膜する際に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。
【図17】図13に示す半導体装置の製造方法(製造工程)を説明するための図である。
【図18】本発明の半導体装置の第5実施形態を示す縦断面図である。
【図19】携帯電話の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0236】
1、1’、1”……半導体装置 2……インターポーザー 21……配線 25……接合膜 3……第1の半導体チップ 31……第1の基材 32……第1のビアホール 33……第1の導体ポスト 331……絶縁膜 333……接合膜 34……第1の電気配線 341……第1のパッド 4……第2の半導体チップ 35、45、55……能動面 36、46……裏面 41……第2の基材 42……第2のビアホール 43……第2の導体ポスト 430……表面 431……絶縁膜 433……接合膜 44……第2の電気配線 441……第2のパッド 5……第3の半導体チップ 51……第3の基材 52……第3のビアホール 53……第3の導体ポスト 535……接合膜 54……第3の配線 7、7’……接合膜 71……開口部 8……接合膜 303……脱離基 304……活性手 200……成膜装置 211……チャンバー 212……基板ホルダー 215……イオン源 216……ターゲット 217……ターゲットホルダー 219……ガス供給源 220……第1のシャッター 221……第2のシャッター 230……排気手段 231……排気ライン 232……ポンプ 233……バルブ 250……開口 253……グリッド 254……グリッド 255……磁石 256……イオン発生室 257……フィラメント 260……ガス供給手段 261……ガス供給ライン 262……ポンプ 263……バルブ 264……ガスボンベ 500……成膜装置 501……Si結合 502……シロキサン(Si−O)結合 503……脱離基 504……活性手 511……チャンバー 512……基板ホルダー 521……シャッター 530……排気手段 531……排気ライン 532……ポンプ 533……バルブ 560……有機金属材料供給手段 561……ガス供給ライン 562……貯留槽 563……バルブ 564……ポンプ 565……ガスボンベ 570……ガス供給手段 571……ガス供給ライン 573……バルブ 574……ポンプ 575……ガスボンベ 900……プラズマ重合装置 901……チャンバー 902……接地線 903……供給口 904……排気口 930……第1の電極 939……静電チャック 940……第2の電極 970……ポンプ 971……圧力制御機構 980……電源回路 982……高周波電源 983……マッチングボックス 984……配線 990……ガス供給部 991……貯液部 992……気化装置 993……ガスボンベ 994……配管 995……拡散板 1000……携帯電話本体 1001……表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の第1の基材と、該第1の基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第1の電気配線と、前記第1の基材の厚さ方向に貫通して設けられ、前記第1の電気配線の一部に接合された第1の導体ポストとを備える第1の半導体チップと、
平板状の第2の基材と、該第2の基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第2の電気配線と、前記第2の基材の厚さ方向に貫通して設けられ、前記第2の電気配線の一部に接合された第2の導体ポストとを備える第2の半導体チップとが、積層された半導体装置であり、
前記第1の導体ポストと前記第2の導体ポストとは、導電性を有する接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記第1の導体ポストと前記第2の導体ポストとを接合していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の基材の他方の面側と前記第2の基材の一方の面側とが対向するようにして、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとが積層され、
前記第2の電気配線は、導電性を有する接合膜で構成されており、当該第2の電気配線と前記接合膜とが一体的に形成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の基材の一方の面側と前記第2の基材の他方の面側とが対向するようにして、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとが積層され、
前記第1の電気配線は、導電性を有する接合膜で構成されており、当該第1の電気配線と前記接合膜とが一体的に形成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記金属原子は、インジウム、スズ、亜鉛、チタン、およびアンチモンのうちの少なくとも1種である請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記脱離基は、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種である請求項1ないし4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記接合膜は、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)に、脱離基として水素原子が導入されたものである請求項1ないし5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記接合膜中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項1ないし6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
平板状の第1の基材と、該第1の基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第1の電気配線と、前記第1の基材の厚さ方向に貫通して設けられ、前記第1の電気配線の一部に接合された第1の導体ポストとを備える第1の半導体チップと、
平板状の第2の基材と、該第2の基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第2の電気配線と、前記第2の基材の厚さ方向に貫通して設けられ、前記第2の電気配線の一部に接合された第2の導体ポストとを備える第2の半導体チップとが、積層された半導体装置であり、
前記第1の導体ポストと前記第2の導体ポストとは、導電性を有する接合膜を介して接合されており、
前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が当該接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記第1の導体ポストと前記第2の導体ポストとを接合していることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
前記第1の基材の他方の面側と前記第2の基材の一方の面側とが対向するようにして、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとが積層され、
前記第2の電気配線は、導電性を有する接合膜で構成されており、当該第2の電気配線と前記接合膜とが一体的に形成されている請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1の基材の一方の面側と前記第2の基材の他方の面側とが対向するようにして、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとが積層され、
前記第1の電気配線は、導電性を有する接合膜で構成されており、当該第1の電気配線と前記接合膜とが一体的に形成されている請求項8に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記接合膜は、有機金属材料を原材料として、有機金属化学気相成長法を用いて成膜されたものである請求項8ないし10のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記接合膜は、低還元性雰囲気下で成膜されたものである請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記脱離基は、前記有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存したものである請求項11または12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記脱離基は、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団で構成される請求項11ないし13のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項15】
前記脱離基は、アルキル基である請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記有機金属材料は、金属錯体である請求項11ないし15のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項17】
前記金属原子は、銅、アルミニウム、亜鉛および鉄のうちの少なくとも1種である請求項8ないし16のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項18】
前記接合膜中の金属原子と炭素原子との存在比は、3:7〜7:3である請求項8ないし17のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項19】
前記接合膜は、その少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が、当該接合膜から脱離した後に、活性手が生じる請求項1ないし18のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項20】
前記活性手は、未結合手または水酸基である請求項19に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記接合膜の平均厚さは、1〜1000nmである請求項1ないし20のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項22】
前記接合膜は、流動性を有さない固体状をなしている請求項1ないし21のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項23】
前記接合膜が接する少なくとも一方の面には、予め、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし22のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項24】
前記表面処理は、プラズマ処理である請求項23に記載の半導体装置。
【請求項25】
前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項1ないし24のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項26】
前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線である請求項25に記載の半導体装置。
【請求項27】
前記加熱の温度は、25〜150℃である請求項25または26に記載の半導体装置。
【請求項28】
前記圧縮力は、0.2〜10MPaである請求項25ないし27のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項29】
前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われる請求項25ないし28のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項30】
前記第1の導体ポストおよび前記第2の導体ポストは、いずれも透光性を有する請求項1ないし29のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項31】
さらに、前記第1の基材と前記第2の基材とを接合する接合膜を有し、
該接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記第1の基材と前記第2の基材とが接合されている請求項1ないし30のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項32】
請求項1ないし31のいずれかに記載の半導体装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−158866(P2009−158866A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338254(P2007−338254)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】