説明

半導体装置の製造方法、及び該製造方法を用いて製作された半導体装置

【課題】アンダーフィル剤の薄膜形成が容易であり、また、大型ダイを用いたフリップチップ半導体装置の製造方法、及び該製造方法を用いて製造された半導体装置を提供する。
【解決手段】(i)シリコンウエハ3の、半田バンプ2を備えた表面上に、第1アンダーフィル剤1をスプレー噴射装置で塗付し、該第1アンダーフィル剤をB−ステージ化して、半田バンプの高さの0.5〜1.0倍の厚みをもつ、B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層を形成する工程、(ii)工程(i)で得られたB−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層の表面上に、第2アンダーフィル剤をスプレー噴射装置で塗付し、該第2アンダーフィル剤をB−ステージ化して、前記B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層と第2アンダーフィル剤層4の合計の厚みが、半田バンプの高さの1.0〜1.3倍となるように、B−ステージ状態の第2アンダーフィル剤層を形成する工程、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、及び該製造方法を用いて製造された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フリップチップ接続法は、シリコンチップの、電子回路が形成された面(以下、「回路面」という。)を基板側に向けて、該回路面に設けられた半田バンプを介して、該チップを基板に接続する方法である。この接続方法では、半田接続部のクラック発生等を防止して、接続信頼性を確保するために、シリコンチップと基板の間にアンダーフィル剤が施与される。その場合、従来、アンダーフィル剤は、実装後のシリコンチップの周囲に塗布され、シリコンチップと基板の隙間に、毛細管現象を利用して浸透、充填されていた。
しかしながら、シリコンチップの中には、ダイサイズの一辺が10mm、20mmを超える物もあり、このような大型ダイを用いたフリップチップ半導体装置では、毛細管現象を利用しても、アンダーフィル剤の未充填が起き易い。アンダーフィル剤中の充填剤の量を低減すると、アンダーフィル剤は充填され易くなるが、アンダーフィル剤の熱膨張係数が大きくなるため、アンダーフィル剤とチップ又は基板との界面で剥離が生じる等の問題が起こる。
【0003】
さらに、毛細管現象を利用してアンダーフィル剤を充填する工程は、その中に含まれる工数が多く、煩雑であるため、製造コストアップの原因になっている。そこで、半導体素子を基板に接続する際に、予めフラックス剤を混合したアンダーフィル剤を基板上に滴下し、その後、半田接続と同時にアンダーフィル剤を硬化させる方法、いわゆる、ノンフロー型アンダーフィルが提案されている(特許文献1)。この方法によれば、製造コストを下げることができる。
【0004】
しかしながら、前記フラックス剤は、アビエチン酸等のプロトン供与性物質であり、半田バンプ表面の酸化膜を還元する。そして、この還元反応の際、水が生成され、この水が半田リフロー工程で水蒸気となり、接続部にボイドを発生させる場合がある。
【0005】
また、他のフリップチップ接続法の改良法として、シリコンウエハにアンダーフィル剤を塗布してB−ステージ化し、その後ダイシングする方法が開示されている(特許文献2)。いわゆる、B−ステージアンダーフィル、又はウエハレベルアンダーフィルと呼ばれる手法である。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された方法には、塗布面を平滑化することが困難であり、加熱溶融する際、巻き込みボイドが発生し、封止歩留まりの低下を招くなどの問題点がある。
【0007】
そこで、この改良方法として、アンダーフィル剤を2層とし、半田バンプの周囲にフラックス作用を有するアンダーフィル剤を用い、基板の接合パッド上にフィラーを含むアンダーフィル剤を用いる方法が提案されている(特許文献3)。
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載された方法は、ウエハと基板のそれぞれにアンダーフィル剤を施与する工程が必要であり、煩瑣である。また、パッド上でのフラックス成分が不足し、接続不良が生じる場合がある。さらに、フィラーを多く含む層は透明性が悪く、半田バンプの高さを越えて塗布されると、半田バンプの位置を特定することが困難になり、即ち、半田バンプの視認性が悪くなり、ダイシング時や、接続時の位置決めが困難となる。また、フラックス作用を有するアンダーフィル剤が半田バンプの周囲を覆っており、前述した水蒸気によるボイドの発生の問題が起こり易い。
【0009】
上記以外のフリップチップ接続法の改良法として、アンダーフィル剤の塗布量を半田ボールの先端が突出する程度の厚みとし、予めB−ステージ化した後、半田ボールの先端にフラックスを塗付する方法が知られている(特許文献4)。
【0010】
しかしながら、特許文献4に記載された方法は、パッケージ個別にアンダーフィル剤を塗布し、その後、仮硬化を行った後、さらに個別のパッケージに対しフラックスを塗布しなければならず、煩瑣である。また、塗布するフラックスとアンダーフィル剤が反応することによりアンダーフィル剤のモル比がずれ、アンダーフィル剤の硬化物物性を低下させる恐れがある。
【0011】
その他、フリップチップ接続の改良法として、ウエハレベルアンダーフィルにおいて、ホットメルトタイプのアンダーフィル剤を、バンプの頂部が露出するまで研削し、その後、ダイシングを行う方法が提案されている(特許文献5)。
【0012】
しかしながら、特許文献5記載された方法は、アンダーフィル剤の硬化収縮により、接続部にボイドが形成され易く、また、チップ周囲を覆うフィレットも形成され難い。さらに、半田露出部には酸化膜が形成され易く、接続工程において、市販のフラックス剤を基板等に塗布することになるが、通常の市販フラックス剤は、希釈剤(溶剤)を大量に含んでいるため、前述した水蒸気によるボイド発生の原因となり易い。
【0013】
また、上述した従来技術においては、アンダーフィル剤の塗布方法として、フィルム法、スピンコート法、印刷方法などが一般的である。これらのうち、フィルム法及び印刷法は、作業性が良く、実用的であるが、薄膜、特に20μm以下の薄膜を形成することが困難である。また、スピンコート法は、薄膜成形に有効であるが、薄膜製作に要する液剤量に対する廃棄液剤量の比率が多く、問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平04−280443号公報
【特許文献2】特開2000−174044号公報
【特許文献3】特開2003−243449号公報
【特許文献4】特開2005−268704号公報
【特許文献5】特開2006−229199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明は、上記問題点を解決して、アンダーフィル剤の薄膜形成が容易であり、また、特に大型ダイを用いたフリップチップ型の半導体装置の製作に有効な半導体装置の製造方法、及び該製造方法を用いて製作された半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、2種類のアンダーフィル剤を使用して、2つの層を形成すること、より具体的には、高濃度の充填剤を配合した第1アンダーフィル剤を、スプレー噴射装置を用いて半田バンプ側面部を囲むように塗布して、薄膜層(内層)を形成し、次いで、その上に、フラックス成分を含む第2アンダーフィル剤を、スプレー噴射装置を用いて塗布し、第2層目の薄膜層(外層)を形成すれば、上記問題を解決できることを見出し、かかる知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0017】
かくして、本発明は、以下の(1)〜(4)の工程、
(1)フリップチップ接続用の半田バンプを備えたシリコンウエハの、該半田バンプを備えた表面上にアンダーフィル剤を塗布し、次いで、塗付されたアンダーフィル剤をB−ステージ化する工程、
(2)工程(1)で得られたB−ステージ状態のアンダーフィル剤付きの前記シリコンウエハを切断して個片化する工程、
(3)工程(2)で得られた個片を、基板上の接続すべき位置に位置決めする工程、
(4)前記半田バンプを溶融して、工程(3)で位置決めした個片を基板に接続する工程、
を含む半導体装置の製造方法であって、
前記工程(1)が、以下のサブ工程(i)、(ii)、
(i)前記シリコンウエハの、半田バンプを備えた表面上に、第1アンダーフィル剤をスプレー噴射装置で塗付し、次いで、該第1アンダーフィル剤をB−ステージ化して、半田バンプの高さの0.5〜1.0倍の厚みをもつ、B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層を形成する工程、
(ii)工程(i)で得られたB−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層の表面上に、第2アンダーフィル剤をスプレー噴射装置で塗付し、次いで、該第2アンダーフィル剤をB−ステージ化して、前記B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層と第2アンダーフィル剤層の合計の厚みが、半田バンプの高さの1.0〜1.3倍となるように、B−ステージ状態の第2アンダーフィル剤層を形成する工程、を含み、
第1アンダーフィル剤及び第2アンダーフィル剤は、いずれも、固形分の含有量が30〜85質量%のエポキシ樹脂組成物であり、
第1アンダーフィル剤は、固形分に対して、30〜85質量%の充填剤を含有し、
第2アンダーフィル剤は、フラックス剤及び/又はフラックス性を有する硬化剤を含有し、
第1アンダーフィル剤及び第2アンダーフィル剤は、それぞれの固形分に対して、平均粒径(D50)が0.005μm以上0.2μm未満のシリカを5〜20質量%含有することを特徴とする、半導体装置の製造方法である。
【0018】
また、本発明は、上記製造方法を用いて製作された半導体装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法によれば、スプレー法の採用により、アンダーフィル剤をウエハ上に連続的に施与可能であると共に、半田バンプの位置合わせに支障が無いため、効率よく、かつ、容易に薄膜成形が可能であり、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。特に20μm以下の薄膜成形が可能であるため、狭いギャップやファインピッチのフリップチップデバイスに対応できる。また、近年、ウエハーサイズの大型化により大面積を塗布する必要がある大型ダイを用いた半導体装置の製作に最適な製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の製造方法の説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 第1アンダーフィル剤層
2 半田バンプ
3 ウエハ
4 第2アンダーフィル剤層
5 個片
6 基板
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について、図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の製造方法の概略を示す説明図である。
本発明は、前述のとおり、(1)〜(4)の工程を含む半導体装置の製造方法、及び該方法を用いて作製された半導体装置である。工程(1)は、フリップチップ接続用の半田バンプを備えたシリコンウエハの、該半田バンプを備えた表面上にアンダーフィル剤を塗布し、次いで、塗付されたアンダーフィル剤をB−ステージ化する工程である。
本発明の製造方法は、工程(1)において、サブ工程(i)、(ii)を含むことが特徴である。サブ工程(i)は、前記シリコンウエハの回路面にスプレー噴射装置を用いて第1アンダーフィル剤を塗布し、次いで、所定の厚みをもつB−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層を形成する工程である。サブ工程(i)は、図1において、(1)に該当する工程であり、同図中、1は第1アンダーフィル剤層、2は半田バンプ、3はウエハを表す。
【0023】
ここで使用するスプレー噴射装置は、公知、既存の装置を用いればよく、特に限定はない。また、使用するシリコンウエハには、複数の個片(チップ)に区切るスクライブが形成されており、各個片には回路と、フリップチップ接続用の複数の半田バンプが備えられている。
【0024】
サブ工程(i)で用いる第1アンダーフィル剤は、室温で液体であることが好ましい。固体であると、第1アンダーフィル剤が流動性を有する温度で加熱しなければならず、その結果、第1アンダーフィル剤の硬化が過度に促進する恐れがある。
【0025】
スプレー法によって塗布された第1アンダーフィル剤は、B−ステージ、即ち、樹脂組成物が流動性の無い状態にあるが、完全には硬化していない状態にする(B−ステージ化)。これにより、薄膜の第1アンダーフィル剤層が形成される。B−ステージ化は、第1アンダーフィル剤が溶剤を含む場合には、オーブン、真空乾燥機等で加熱して溶剤を揮発させることによって行う。溶剤の有無に関係なく、B−ステージ化は、第1アンダーフィル剤の硬化を過度に進行させないよう、硬化開始温度より充分低い温度、好ましくは硬化開始温度(オンセット温度)から40℃程度以上低い温度で行う。
【0026】
前記工程(i)でB−ステージ化した後、好ましくは、半田バンプの頂上が現れるまで、研削又はアッシング等によりエッチングする。また、UV又はプラズマで半田バンプ表面をクリーニングする。これらの工程を加えると、半田接続性、半田バンプの視認性が向上する。
【0027】
得られたB−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層の厚みは、半田バンプの高さの0.5倍〜1.0倍とする。前記下限値より薄いと、半田接続部を保護する性能が不足し、前記上限値を超えると、半田バンプの接続性及び工程(3)において位置決めする際の半田バンプの視認性が低下する。第1アンダーフィル剤層の厚みは、スプレー塗布部とウエハまでの距離、スプレーの移動範囲、ピッチ、速度、塗布量、エアー圧、塗布時間などを適宜設定することにより容易に調整することができる。
【0028】
サブ工程(i)に続いて、サブ工程(ii)を行う。サブ工程(ii)では、サブ工程(i)と同様にして、サブ工程(i)で得られたB−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層の表面上に、第2アンダーフィル剤をスプレー噴射装置で塗付し、次いで、該第2アンダーフィル剤をB−ステージ化して、第2アンダーフィル剤層を形成し、所定の厚みをもつ2層構造のアンダーフィル剤層を得る。サブ工程(ii)は、図1において、(2)に該当する工程であり、同図中、4は第2アンダーフィル剤層を表す。
【0029】
サブ工程(ii)で用いる第2アンダーフィル剤は、室温で液体であることが好ましい。固体であると流動性を有する温度に加熱しなければならず、その結果、第2アンダーフィル剤の硬化が過度に促進する恐れがある。
【0030】
B−ステージ状態の第2アンダーフィル剤層の厚みは、B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層と、B−ステージ状態の第2アンダーフィル剤層との厚みの合計が、半田バンプの高さの1.0〜1.3倍、好ましくは1.1〜1.2倍となるようにする。第2アンダーフィル剤層の厚みが、前記下限値を下回ることになる厚みであると、工程(4)の半田接続時に、アンダーフィル剤が流動して広がることによって、シリコンチップと基板の間を満たさず、ボイドが生じる恐れがある。一方、前記上限値を超えることになる厚みであると、アンダーフィル剤が半導体素子上面に回りこみ、該素子を汚染し、また、フィレットが大きくなり、半導体素子の高密度化を妨げる。
【0031】
工程(2)では、工程(1)で得られたB−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層とB−ステージ状態の第2アンダーフィル剤層を有するシリコンウエハを切断して個片化(ダイシング)する。ダイシングは、公知のダイサーを用いて行えばよい。この場合、B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層及び第2アンダーフィル剤層もシリコンウエハと共に個片化される。工程(2)は、図1において、(3)に該当する工程であり、同図中、5は個片を表す。
【0032】
工程(3)では、工程(2)で得られた個片(以下、「チップ」という。)をピックアップして、回路基板上の該チップを接続すべきパッドに位置決めする。位置決めは、公知のフリップチップボンダーを用いて、下記工程(4)と連続して行ってよい。なお、工程(3)は、図1に示していない。
【0033】
また、工程(3)には、第1アンダーフィル剤及び第2アンダーフィル剤の表面が液状となる温度に基板及び/又は個片を加熱して、基板に圧着する工程を含めることができる。
【0034】
工程(4)では、半田バンプを溶融して、チップを基板に半田接続する。工程(4)は、図1において、(4)に該当する工程であり、同図中、6は基板を表す。半田接続を行う方法としては、パルスヒート型のフリップチップボンダーを用いて、200℃以上に急速加熱を行い、上記工程(3)の位置決めと半田接続を同一装置で行う方法、第2アンダーフィル剤層の表面が液状となる程度の温度に基板及び/又はチップを加熱して、該第2アンダーフィル剤表面を基板に圧着し、その後、IRリフロー装置にて半田接続を行う方法等を例示することができる。いずれの方法においても、加熱することによって、第1アンダーフィル剤及び第2アンダーフィル剤が低粘度になって、半田バンプと基板のパッドとが接触して半田接続されると共に、上記アンダーフィル剤の硬化が開始する。適当な硬化触媒を選択して上記アンダーフィル剤に配合することによって、アンダーフィル剤の硬化性を高め、半田接続終了と同時に樹脂の硬化過程を終了するように調節することができる。また、反応性の遅いアンダーフィル剤の場合は、半田接続後にさらにオーブン等で加熱し、硬化を完了させることも可能である。
【0035】
次に、上述した第1アンダーフィル剤及び第2アンダーフィル剤について説明する。第1アンダーフィル剤は、エポキシ樹脂、充填剤等の成分、第2アンダーフィル剤は、エポキシ樹脂、充填剤、フラックス剤及び/又はフラックス性を有する硬化剤等の成分を含有するエポキシ樹脂組成物である。
【0036】
第1アンダーフィル剤に用いられるエポキシ樹脂は、2官能性以上であれば特に限定されない。その例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;シクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
また、エポキシ樹脂は、B−ステージ状態で、タックフリー、即ち、表面が粘着性で無いことが後工程で望ましいため、室温で固体である材料が望ましい。室温で液体の材料を用いると、B−ステージ状態で粘着性が残り、タックフリーとするために加熱して半硬化すると、半田接続時に低粘度にならず、半田接続性を阻害する恐れがある。より好ましくは、不純物の少ない、特にイオン性不純物が少ないグレードのエポキシ樹脂を使用する。
【0038】
第2アンダーフィル剤に用いられるエポキシ樹脂については、第1アンダーフィル剤で使用される上述したものを同様に使用することができる。なお、第1アンダーフィル剤に含まれるエポキシ樹脂と同一である必要はなく、異なっていてもよい。
【0039】
第1アンダーフィル剤及び第2アンダーフィル剤は、いずれも、固形分は30〜85質量%の割合で含有される。30質量%未満であると、揮発成分が多く、ボイド発生の原因となり、85質量%を超えると、流動性が著しく低下して、封止作業性が悪くなる。なお、本発明において、固形分とは、各アンダーフィル剤の組成物から、溶剤等の揮発成分を除外した部分を意味し、エポキシ樹脂、充填剤、各種添加剤が含まれる。また、揮発成分とは、常圧下において、110℃以上で揮発する成分を意味する。
【0040】
第1アンダーフィル剤に含まれる充填剤は、アンダーフィル剤の機械的強度の向上及び熱膨張係数の低減のために配合される。充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、酸化チタン、シリカチタニア、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、マグネシア、マグネシウムシリケート、アルミニウム等を挙げることができ、これらは1種単独あるいは2種類以上組み合せて使用することができる。特に、真球状の溶融シリカが、工程(4)におけるアンダーフィル剤の低粘度化のため望ましい。
【0041】
前記充填剤の粒径としては、半田バンプ間に良く充填させるため、平均粒径(D50)が0.5〜10μmであることが好ましい。また、最大粒径(D90)は、バンプの高さの1/2以下とすることが望ましい。上記平均粒径(D50は、遠心沈降法、レーザー回折法で、及び最大粒径(D90)は篩法で、それぞれ測定することができる。
【0042】
第1アンダーフィル剤に含有される充填剤の量は、第1アンダーフィル剤の固形分に対して、30〜85質量%であることが必要であり、より好ましくは50〜85質量%である。30質量%未満であると、機械的強度が低下し、熱膨張係数が大きくなる。85質量%を超えると、流動性が著しく低下して、封止作業性を悪くなる。
【0043】
また、第1アンダーフィル剤は、均一な厚みのアンダーフィル剤層が形成されるように、高チクソ性であることが好ましい。そのため、充填剤の一部として、平均粒径(D50)が0.005μm以上0.2μm未満の微粉充填剤、特に、微粉シリカを用いる。該微粉シリカとしては、アエロジル130、アエロジル200、アエロジル300、アエロジル380(全て日本アエロジル(株)製、商品名、比表面積は、順に130、200、300、380m/g)等のヒュームドシリカが挙げられ、トリメチルシリル化処理したものを用いることが好ましい。
【0044】
平均粒径(D50)が0.005μm以上0.2μm未満の微粉充填剤の配合量は、第1アンダーフィル剤の固形分に対して、5〜20質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、薄膜成形性が著しく低下し、20質量%を超えると、粘度が高くなり、スプレー塗布性が著しく低下する。
【0045】
第2アンダーフィル剤については、上述した、平均粒径(D50)が0.005μm以上0.2μm未満の微粉充填剤を必須成分とするが、それ以外の充填剤は任意である。第2アンダーフィル剤に任意で配合する充填剤としては、第1アンダーフィル剤に含有される前記充填剤と同様のものを使用することができ、その配合量も同様である。
【0046】
第2アンダーフィル剤において、上記微粉充填剤の配合量は、第2アンダーフィル剤の固形分に対して、5〜20質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、薄膜成形性が著しく低下し、20質量%を超えると、粘度が高くなり、スプレー塗布性が著しく低下する。
【0047】
また、位置合わせ工程(3)におけるバンプの視認性及び半田接続性の観点からは、上記微粉充填剤の配合量は、第2アンダーフィル剤の固形分の20質量%未満であり、好ましくは10質量%未満である。20質量%を超えると、第2アンダーフィル剤の透明性が低下し、基板に対して半導体素子を位置決めする際、半田バンプの認識が困難となり、また、充填剤噛み込みのため半田接続性が低下する。
【0048】
第2アンダーフィル剤は、良好な半田接続を形成するため、フラックス剤及び/又はフラックス性能を有する硬化剤(以下、両者を併せて、「フラックス成分」という。)を含む。該フラックス成分は、[背景技術]で述べたように、半田表面の酸化膜を還元、除去する性能(フラックス性能)を有する物質であり、半田接続性の向上、半田バンプ内部のボイドを除去したりするなどの効果をもたらし、代表的にはプロトン供与性の物質である。第2アンダーフィル剤にフラックス性能の高い物質を配合すれば、基板のパッドと半田バンプとの接続性がさらに高められる。
【0049】
プロトン供与性のフラックス剤としては、例えば、アビエチン酸、グルタル酸、パルミチン酸、アゼライン酸、ギ酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、イソピマール酸、ピマール酸、レボピマール酸、パラストリン酸、安息香酸、ステアリン酸、乳酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等を挙げることができる。
【0050】
フラックス性能を有する硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、酸無水物、アミン系硬化剤等が挙げられ、これらとアビエチン酸等の混合物であってもよい。
上記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;パラキシリレン変性ノボラック樹脂、メタキシリレン変性ノボラック樹脂、オルソキシリレン変性ノボラック樹脂等のキシリレン変性ノボラック樹脂;ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂等のビスフェノール型フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;レゾール型フェノール樹脂;フェノールアラルキル型樹脂;ビフェニルアラルキル型樹脂;トリフェノールメタン型樹脂、トリフェノールプロパン型樹脂等のトリフェノールアルカン型樹脂及びその重合体等のフェノール樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂が例示される。
【0051】
上記酸無水物としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ピロメリット酸二無水物、マレイン化アロオシメン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラビスベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3、4―ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロペニル)−1,2,3,6−テトラハイドロフタル酸無水物、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物の混合物が例示される。
【0052】
上記アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン等の脂肪族ポリアミン;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族アミンが例示される。
【0053】
前記フラックス成分の添加量としては、エポキシ樹脂分、即ち、充填剤を含む場合には、第2アンダーフィル剤の前記固形分から充填剤を除いた部分、100質量部に対して、0.5〜3質量部程度が好ましい。前記下限値未満であるとフラックス性が低下し、前記上限値を超えると樹脂硬化物の物性が低下する恐れがある。
【0054】
前記フラックス成分として、硬化剤としての作用があるフェノール樹脂や酸無水物を用いる場合は、エポキシ樹脂成分と該硬化剤成分の反応性当量比、すなわち、[該硬化剤中のエポキシ基と反応性基のモル量]/[エポキシ樹脂中のエポキシ基のモル量]のモル比が0.95〜1.25の範囲とすることが望ましい。前記下限値を下回るとフラックス性が低下し、接続性が低下する恐れがあり、前記上限値を超えると樹脂硬化物の物性が低下する恐れがある。また、前記モル比が1.0以下の場合は、アビエチン酸等を併用することが望ましい。
【0055】
第1アンダーフィル剤において、硬化剤は必須成分ではないが、本発明の目的を阻害しない範囲において硬化剤を含んでもよい。該硬化剤としては、第2アンダーフィル剤に関して上記したものを使うことができる。これらのうちでも、硬化剤としての作用があるフェノール樹脂及び酸無水物が好ましく用いられ、良好な半田接続性を得るため、不純物の少ないもの及び室温で固体であるものが、より好ましい。
【0056】
第1アンダーフィル剤において、硬化剤の配合量は、硬化剤中の官能基とエポキシ樹脂中のエポキシ基のモル比(硬化剤中の官能基のモル量/エポキシ基のモル量)が0.90〜1.05の範囲が望ましく、特に望ましくは0.95〜1.00である。上記範囲を超えると硬化物物性が低下する恐れがあり、また、硬化の際、揮発ガスの増大を招き、硬化物中にボイドを発生させる恐れがある。また、前記上限値を超えると、フラックス作用によりボイドを発生する恐れがある。
【0057】
また、第1アンダーフィル剤は、フラックス剤を含んでもよいが、その量はエポキシ樹脂分100質量部に対して0.5質量部未満であり、より好ましくはフラックス剤を含まない。
【0058】
第1及び第2アンダーフィル剤には、上記各成分に加えて、塗布工程における作業性を向上させるために、各種揮発性溶剤を添加してもよい。該溶剤としては、例えば、カルビトール系(ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等)、セルソルブ系(メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等)、グリコールエーテル系(PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート)等を用いることができる。
【0059】
また、第1及び第2アンダーフィル剤には、上記成分のほか、ダイシング時の機械的強度を向上するため、フェノキシ樹脂等の熱可塑性ポリマーを添加することも可能である。その他、上記以外の公知の硬化剤;イミダゾール誘導体、有機リン系化合物、3級アミン化合物等の硬化触媒;シランカップリング剤;イオントラップ剤;難燃剤等を、本発明の目的を阻害しない範囲で添加してよい。
第1及び第2アンダーフィル剤は、これらの各材料を、ロール混練機等を用いて混練することによって調製することができる。
【0060】
本発明の半導体装置は、上述した本発明の製造方法を用いて製作されたものであり、通常、基板の配線パターン面に複数個のハンダバンプを介して半導体チップが搭載されているものであり、上記基板と半導体チップとの隙間が第1アンダーフィル剤及び第2アンダーフィル剤の硬化物で封止されている構造を有するものである。本発明の半導体装置は、半田接続性に優れ、ボイド発生が低減された、接続信頼性の高い半田接続部を備える。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0062】
(アンダーフィル剤A〜Eの作製)
表1に示す割合の各成分を、室温にて、プラネタリーミキサーで混合した後、3本ロールを通過させ、さらに、再度プラネタリーミキサーで混合することにより、室温で液体のアンダーフィル剤A〜Eを得た。また、得られた液体のアンダーフィル剤A〜Eから110℃で揮発する成分を除去した固形分に対する充填剤の割合(質量%)を求め、表1に示した。
なお、アンダーフィル剤A〜Eの固形分の含有量は、それぞれ順に、70.2質量%、62.6質量%、69.8質量%、66.4質量%、54.7質量%であった。また、アンダーフィル剤A〜Eにおいて、固形分に対する下記微粉シリカの含有量は、それぞれ順に、3.2質量%、4.5質量%、1.3質量%、19.2質量%、1.9質量%であった。
【0063】
表1において、実際に使用した各成分は以下の通りである。
エポキシ樹脂:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN1050(55)、商品名、エポキシ当量200、室温で固形)
硬化剤:フェノールノボラック樹脂(MEHC7800−4S、商品名、フェノール当量170、室温で固形)
熱可塑性樹脂:重量平均分子量10,000のフェノキシ樹脂
硬化触媒:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ、商品名、四国化成製)
充填剤:平均粒径(D50)0.8μm、最大粒径(D90)5μmの真球状溶融シリカ
微粉シリカ:{(CH33Si}2NH及びCH3CH2Si(OCH33で処理された平均粒径(D50)0.08μmの処理シリカ
希釈剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート(沸点:217.4℃)
【0064】
【表1】

【0065】
評価用の半導体チップとしては、半田バンプが576個搭載された日立超LSIシステムズ社製フリップチップキットのJTEG Phase2E175鉛フリー仕様(以下、「評価用TEG」という。)を用いた。以下に述べるように、アンダーフィル剤A層とアンダーフィル剤B層の合計の厚み設定を、10μm、20μm、40μmとした場合のそれぞれに対して、順に半田パンプ高さが、10μm、20μm、40μm の評価用TEGを用いた。
基板としては、同社製JKIT TYPE−IIIを用いた。この半導体チップと基板は両者の接続によりデイジーチェーンを構成し、チップ内の全ての半田バンプが接続されたときに導通が可能となるものである。即ち、576個のバンプの内、1個でも接続できなければ導通試験で絶縁性を示し、接続性が良好な実装方法を用いなければ接続が困難である。
【0066】
(実施例1)
第1アンダーフィル剤として、表1に示したアンダーフィル剤Aを用い、個片化する前、即ち、ウエハの状態である評価用TEGに、スプレー法を用いて塗布した。このとき、装置として、ノードソン社製のファインスワールスプレーガンを用いた。また、Bステージ化後のアンダーフィル剤A層とアンダーフィル剤B層の合計の厚み設定は、10μm、20μm、40μmとし、X軸速度(mm/s)、Y軸ピッチ速度(mm/s)、スプレーガン距離(mm)、マイクロ開度(mm)、霧化エア圧力(MPa)、スワールエア圧力(MPa)を調整して、それぞれのアンダーフィル剤層の厚みを調節した。なお、アンダーフィル剤A層とアンダーフィル剤B層の厚みの合計を10μm、20μm、40μmに設定した場合の評価用TEGは、それぞれ5個用い、測定された厚みの平均値を平均膜厚として、以下、表記した。
その後、上記ウエハを110℃のオーブンに10分間投入し、希釈剤を除去して、B−ステージ状態にした。B−ステージ状態でのアンダーフィル剤A層の平均膜厚を膜厚計で測定したところ、5±1μm(10μm設定)、10±1μm(20μm設定)、20±2μm(40μm設定)であった。
得られたアンダーフィル剤A層上に、第2アンダーフィル剤として、アンダーフィル剤Bを、アンダーフィル剤Aと同様の条件にて、スプレー法を用いて塗布後、B−ステージ化して、アンダーフィル剤B層を形成した。B−ステージ状態でのアンダーフィル剤A層とアンダーフィル剤B層の合計の平均膜厚を膜厚計で測定したところ、合計の平均膜厚は、10±2μm(10μm設定)、20±3μm(20μm設定)、40±5μm(40μm設定)であった。
【0067】
(比較例1)
第1アンダーフィル剤として、アンダーフィル剤Cを用いた以外は、実施例1と同様の条件、方法により、B−ステージ化、平均膜厚の測定を行った。その結果、B−ステージ状態でのアンダーフィル剤C層の平均膜厚は、5±1μm(10μm設定)、10±1μm(20μm設定)、20±2μm(40μm設定)であった。
また、B−ステージ状態でのアンダーフィル剤C層とアンダーフィル剤B層の合計の平均膜厚は、10±2μm(10μm設定)、20±3μm(20μm設定)、40±5μm(40μm設定)であった。
【0068】
(比較例2)
第1アンダーフィル剤として、アンダーフィル剤Dを用いた以外は、実施例1と同様の条件、方法により、B−ステージ化、平均膜厚の測定を行った。その結果、B−ステージ状態でのアンダーフィル剤D層の平均膜厚は、5±1μm(10μm設定)、10±1μm(20μm設定)、20±2μm(40μm設定)であった。
また、B−ステージ状態でのアンダーフィル剤D層とアンダーフィル剤B層の合計の平均膜厚は、10±2μm(10μm設定)、20±3μm(20μm設定)、40±5μm(40μm設定)であった。
【0069】
(比較例3)
第1アンダーフィル剤として、アンダーフィル剤B、第2アンダーフィル剤として、アンダーフィル剤Eを用いた以外は、実施例1と同様の条件、方法により、B−ステージ化、平均膜厚の測定を行った。その結果、B−ステージ状態でのアンダーフィル剤B層の平均膜厚は、5±1μm(10μm設定)、10±1μm(20μm設定)、20±2μm(40μm設定)であった。
また、B−ステージ状態でのアンダーフィル剤B層とアンダーフィル剤E層の合計の平均膜厚は、10±2μm(10μm設定)、20±3μm(20μm設定)、40±5μm(40μm設定)であった。
【0070】
(評価)
上記実施例1及び比較例1〜3で得られた各ウエハにつき、以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
(1)薄膜形成安定性
Bステージ化後の第1アンダーフィル剤層と第2アンダーフィル剤層の合計の厚みについて、設定した10μm、20μm、40μmのそれぞれの厚みに対し、設定した厚みの±50%以内に、いずれの場合も形成できたときは良好、形成できなかったときは不能と評価した。
(2)位置決め性
ダイシングにより得られた個片を、フリップチップボンダー(アスリート社製、CB−501、商品名)を用い、困難なく基板上のパッドと位置合わせできたときは良好、できなかったときは不能と評価した。
(3)半田接続性
フリップチップボンダーで位置決めして、チップを配置した後、チップマウンターツール温度を260℃で設定し、1〜10Nでチップアタッチを行った。次いで、150℃のオーブンに4時間入れて、アンダーフィル剤を硬化させた。得られた半導体装置10個につき、テスターを用い、導通性が得られたものの個数を確認した。
(4)接続信頼性
前記(3)で得られた半導体装置10個につき、熱サイクル試験(TCT)(−55℃〜125℃)を1000サイクル行った後、テスターを用い、導通性が得られたものの個数を確認した。
【0071】
【表2】

【0072】
比較例1は、アンダーフィル剤の薄膜塗布を試みたが、20μm以下の薄膜を±50%以内に形成することができなかった。
比較例2は、第2アンダーフィル剤が充填剤濃度の高いアンダーフィル剤で覆われ、フリップチップボンダーで位置決めをする際、バンプが認識されず、位置決め不能であったため、半田接続性、接続信頼性の各試験を行うことができなかった。
比較例3も同様に膜の厚みを安定に成形できず、さらに、充填剤の量が少なく、温度サイクル試験の間にクラックが生じ、接続不良となった。これらに対して、実施例1の装置は、全ての項目で良好であった。
【0073】
(アンダーフィル剤F〜Iの作製)
表3に示す割合の各成分を、室温にて、プラネタリーミキサーで混合した後、3本ロールを通過させ、さらに、再度プラネタリーミキサーで混合することにより、室温で液体のアンダーフィル剤F〜Iを得た。実際に使用した各成分は、アビエチン酸以外は、表1のときと同様である。また、得られた液体のアンダーフィル剤F〜Iから110℃で揮発する成分を除去した固形分に対する充填剤の割合を求め、表3に示した。なお、アンダーフィル剤F〜Iの固形分の含有量は、それぞれ順に、62.7質量%、70.3質量%、63.0質量%、 63.1質量%であった。また、アンダーフィル剤F〜Iにおいて、固形分に対する下記微粉シリカの含有量は、それぞれ順に、4.5質量%、3.2質量%、4.5質量%、4.4質量%であった。
【0074】
【表3】

【0075】
(実施例2)
第2アンダーフィル剤として、アンダーフィル剤Fを用いた以外は、実施例1と同様の条件、方法により、B−ステージ化、平均膜厚の測定を行った。その結果、B−ステージ状態でのアンダーフィル剤A層の平均膜厚は、5±1μm(10μm設定)、10±1μm(20μm設定)、20±2μm(40μm設定)であった。
そして、B−ステージ状態でのアンダーフィル剤A層とアンダーフィル剤F層の合計の平均膜厚が、10μm、20μm、40μmとなるように、実施例1と同様にして、アンダーフィル剤F層を設けた。
【0076】
(実施例3)
第1アンダーフィル剤として、アンダーフィル剤G、第2アンダーフィル剤として、アンダーフィル剤Fを用いた以外は、実施例1と同様の条件、方法により、B−ステージ化、平均膜厚の測定を行った。その結果、B−ステージ状態でのアンダーフィル剤A層の平均膜厚は、5±1μm(10μm設定)、10±1μm(20μm設定)、20±2μm(40μm設定)であった。
そして、B−ステージ状態でのアンダーフィル剤A層とアンダーフィル剤F層の合計の平均膜厚が、10μm、20μm、40μmとなるように、実施例1と同様にして、アンダーフィル剤F層を設けた。
【0077】
(比較例4)
第2アンダーフィル剤として、アンダーフィル剤Hを用いた以外は、実施例1と同様の条件、方法により、B−ステージ化、平均膜厚の測定を行った。その結果、B−ステージ状態でのアンダーフィル剤A層の平均膜厚は、5±1μm(10μm設定)、10±1μm(20μm設定)、20±2μm(40μm設定)であった。
そして、B−ステージ状態でのアンダーフィル剤A層とアンダーフィル剤H層の合計の平均膜厚が、10μm、20μm、40μmとなるように、実施例1と同様にして、アンダーフィル剤H層を設けた。
【0078】
(比較例5)
第2アンダーフィル剤として、アンダーフィル剤Iを用いた以外は、実施例1と同様の条件、方法により、B−ステージ化、平均膜厚の測定を行った。その結果、B−ステージ状態でのアンダーフィル剤A層の平均膜厚は、5±1μm(10μm設定)、10±1μm(20μm設定)、20±2μm(40μm設定)であった。
そして、B−ステージ状態でのアンダーフィル剤A層とアンダーフィル剤I層の合計の平均膜厚が、10μm、20μm、40μmgとなるように、実施例1と同様にして、アンダーフィル剤I層を設けた。
【0079】
実施例2、3及び比較例4、5で得られたウエハ(Bステージ化後の第1アンダーフィル剤層と第2アンダーフィル剤層の合計の厚みが40μmのもの)を、外周刃切断方式によるダイシング装置にて切断し個片化を行った後、フリップチップボンダーを用い、基板に位置決めを行い、以下の評価を行った。評価結果を表4に示す。
(1)半田接続性
フリップチップボンダーで位置決めして、チップを配置した後、チップマウンターツール温度を260℃で設定し、1〜10Nでチップアタッチを行った。次いで、150℃のオーブンに4時間入れて、アンダーフィル剤を硬化させた。得られた半導体装置10個につき、テスターを用い、導通性が得られたものの個数を確認した。
(2)ボイド発生
前記(1)の半田接続性試験を行った半導体装置について、超音波断面観察装置(SAT)を用いて、ボイドの発生状況を観察した。
【0080】
【表4】

【0081】
表4からわかるように、比較例4、5は、第2アンダーフィル剤に硬化剤が含有されないため、フラックス剤の有無にかかわらず、半田接続性が低く、かつ、ボイド発生についても悪い結果となった。それに対し、実施例2、3では、良好な半田接続性が得られ、また、ボイド発生も認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の製造方法は、アンダーフィル剤の薄膜成形が可能であり、また、良好な半田接続性の得るとともに、ボイド発生の低減が容易であり、大型ダイであっても、信頼性の高い半田接続部を備えた半導体装置を製作することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)〜(4)の工程、
(1)フリップチップ接続用の半田バンプを備えたシリコンウエハの、該半田バンプを備えた表面上にアンダーフィル剤を塗布し、次いで、塗付されたアンダーフィル剤をB−ステージ化する工程、
(2)工程(1)で得られたB−ステージ状態のアンダーフィル剤付きの前記シリコンウエハを切断して個片化する工程、
(3)工程(2)で得られた個片を、基板上の接続すべき位置に位置決めする工程、
(4)前記半田バンプを溶融して、工程(3)で位置決めした個片を基板に接続する工程、
を含む半導体装置の製造方法であって、
前記工程(1)が、以下のサブ工程(i)、(ii)、
(i)前記シリコンウエハの、半田バンプを備えた表面上に、第1アンダーフィル剤をスプレー噴射装置で塗付し、次いで、該第1アンダーフィル剤をB−ステージ化して、半田バンプの高さの0.5〜1.0倍の厚みをもつ、B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層を形成する工程、
(ii)工程(i)で得られたB−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層の表面上に、第2アンダーフィル剤をスプレー噴射装置で塗付し、次いで、該第2アンダーフィル剤をB−ステージ化して、前記B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層と第2アンダーフィル剤層の合計の厚みが、半田バンプの高さの1.0〜1.3倍となるように、B−ステージ状態の第2アンダーフィル剤層を形成する工程、を含み、
第1アンダーフィル剤及び第2アンダーフィル剤は、いずれも、固形分の含有量が30〜85質量%のエポキシ樹脂組成物であり、
第1アンダーフィル剤は、固形分に対して、30〜85質量%の充填剤を含有し、
第2アンダーフィル剤は、フラックス剤及び/又はフラックス性を有する硬化剤を含有し、
第1アンダーフィル剤及び第2アンダーフィル剤は、それぞれの固形分に対して、平均粒径(D50)が0.005μm以上0.2μm未満のシリカを5〜20質量%含有することを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(3)が、第1アンダーフィル剤及び第2アンダーフィル剤の表面が液状となる温度に基板及び/又は個片を加熱して、基板に圧着する工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
第1アンダーフィル剤が、フラックス剤及び硬化剤を含有しないか、又は、フラックス剤をエポキシ樹脂分100質量部に対して、0.5質量部未満で含有するか、もしくは、フラックス性能を有する硬化剤を、該硬化剤中のエポキシ基と反応性基のモル量のエポキシ樹脂中のエポキシ基のモル量に対するモル比が0.90〜1.05の範囲となる量で含有する、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記フラックス性能を有する硬化剤が、フェノール樹脂、酸無水物硬化剤及びアミン硬化剤から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(i)のBステージ化後に、UV又はプラズマで半田バンプ表面をクリーニングする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法を用いて製作された半導体装置。
【請求項7】
第1アンダーフィル剤及び第2アンダーフィル剤の硬化物を含む請求項6に記載の半導体装置。




【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−89619(P2012−89619A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233786(P2010−233786)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】