説明

半導体装置の製造方法

【課題】簡易な構成で良好な電気特性の銅膜を得る。
【解決手段】半導体装置の製造工程は、銅膜を電解めっき法で形成する際にカソードとして機能するシード膜となるバリアメタル膜を半導体基板上に形成する工程(S10)と、バリアメタル膜とアノードとを略同電位とした状態で、当該バリアメタル膜をめっき処理槽中に収容された硫酸銅めっき液に所定時間浸漬する工程(S20)と、バリアメタル膜を硫酸銅めっき液に所定時間浸漬した後、バリアメタル膜をめっき液に浸漬したまま当該バリアメタル膜とアノードとの間に電圧を印加してバリアメタル膜表面に銅膜を形成する工程(S30)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置においては、配線での信号伝搬の遅延が素子動作を律速している。配線での遅延定数は、配線抵抗と配線容量との積で表される。そのため、配線抵抗を下げて素子動作を高速化するために、配線材料として比抵抗値の小さい銅が用いられるようになっている。
【0003】
配線材料として銅を用いる銅多層配線は、ダマシン法により形成される。ダマシン法は、一般的に、層間絶縁膜等の絶縁膜の堆積工程、ビアホールや配線溝等の開口部の形成工程、バリアメタル膜の堆積工程、シード膜となる銅薄膜の堆積工程、シード膜を電解めっきのカソード電極とした銅膜堆積による開口部の埋め込み工程、開口部外に露出した銅膜およびバリアメタル膜の化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing)による除去工程、およびバリア絶縁膜堆積工程を含む。これらの工程を繰り返すことにより、多層配線構造が形成される。
【0004】
なお、従来、電解めっきにより銅膜を形成する際には、半導体ウェハ(カソード電極)とアノードどの間に電圧を印加した状態で半導体ウェハをめっき液に浸漬させていた。たとえば、特許文献1(特開2006−40908号公報)には、「電解めっき法を使用したCu膜の形成においては、めっき工程開始時のシード膜溶解を懸念して、通常、半導体ウェハとアノードとの間に電圧を印加した状態でウェハをめっき液に浸漬させている。」と記載されている。
【0005】
一方、近年、シード膜として銅薄膜を用いるのではなく、バリアメタル膜をシード膜として用いる技術も開発されている(特許文献2(特開2006−120870号公報)および非特許文献1(S. K. Cho et al.))。特許文献2には、基板表面に配線材料成膜用の電解めっき液に対して不溶性の導電膜(パラジウム、ロジウムまたはルテニウム)を形成し、当該導電膜をシード膜として電解めっき法により該導電膜の表面に配線材料を成膜する手順が記載されている。なお、当該文献においても、アノードとカソード部にめっき電圧を印加した状態で、めっき液を電極部内部に供給している。
【0006】
銅配線中に空隙(ボイド)が存在すると、銅配線の抵抗、信頼性、および歩留まり等の電気特性が低下してしまう。そのため、銅配線をめっきで形成する際には、ボイドが形成されないようにすることが重要である。めっき時の銅膜は、開口部の間口付近と開口底面で速く成長するが、間口が塞がる前に底面が間口に到達すれば、ボイドのない銅配線を形成することができる。そのため、できるだけシード膜を薄くして開口部の間口を広くすることが好ましい。バリアメタル膜をシード膜として用いることにより、開口部の間口を広くすることができ、ボイドの発生を防ぐことができる。
【特許文献1】特開2006−40908号公報
【特許文献2】特開2006−120870号公報
【非特許文献1】S. K. Cho et al., “Damascene Cu electrodeposition on metal organic chemical vapor deposition-grown Ru thin film barrier”, J. Vac. Sci. Technol. B22(6), Nov/Dec 2004, pp2649-2653
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来、基板をめっき液に入槽する際に、空気等の気体を除去して均一なめっき膜を得るために、基板を斜めにして入槽することがあった。しかし、本発明者は、ルテニウム、パラジウム、またはロジウム等のバリアメタル膜をカソード電極として用いた場合に、従来のようにバリアメタル膜とアノードとの間に電圧を印加した状態で基板を斜めにしてめっき液中に入槽すると、基板がめっき液と接する接液部近傍で電流集中による異常成長が生じることを見出した。バリアメタル膜をシード膜として用いた場合、銅シード膜に比べて銅成長核が発生しにくいため電流値を高くして銅成長核の発生密度を高くしなければならないためだと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
銅膜を電解めっき法で形成する際にカソードとして機能するシード膜となるとともに硫酸銅めっき液に不溶性のバリアメタル膜を半導体基板上に形成する工程と、
前記バリアメタル膜とアノードとを略同電位とした状態で、硫酸銅めっき液を収容しためっき処理槽に前記半導体基板を入槽し、前記バリアメタル膜とアノードとの間に電圧を印加しない状態で前記バリアメタル膜を前記硫酸銅めっき液に所定時間浸漬する工程と、
前記バリアメタル膜を前記硫酸銅めっき液に前記所定時間浸漬した後、前記バリアメタル膜を前記硫酸銅めっき液に浸漬したまま当該バリアメタル膜と前記アノードとの間に電圧を印加して前記バリアメタル膜表面に銅膜を形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
本発明によれば、入槽時に、バリアメタル膜とアノードとの間に電圧を印加しないで略同電位とするので、異常成長を防ぐことができる。また、バリアメタル膜とアノードとを略同電位とした状態で半導体基板をめっき液に所定時間浸漬するので、この間に空気等の気体が除去され、基板を斜めに入槽しなくても、均一なめっき膜を得ることができる。
【0010】
また、本発明者は、バリアメタル膜を電解めっきのシード膜として用いた場合、処理手順を工夫することにより、別途前処理を行うための装置を準備することなく、良好に電解めっきにより銅膜を形成することができることを見出した。従来、シード膜となる導電膜を形成した後、めっき液中でめっき処理を行う前に、導電膜表面に対して前処理を行っている。たとえば、特許文献2には、めっき下地(導電膜)の均一性を事前に改善するために、たとえば水洗、界面活性剤処理等による濡れ性の均一化や、薬液処理、プラズマ処理等による不均一酸化膜の除去ないし還元を行っている。非特許文献1においても、Cu膜の形成を良好にするために、めっき処理の前にPdCl、HCl、HF等を含む溶液中に浸漬させている。このような前処理は、めっき液を含むめっき槽とは異なる処理槽や装置で行われている。
【0011】
本発明者は、このように、バリアメタル膜を電解めっきのシード膜として用いた場合に、バリアメタル膜とアノードとを略同電位とした状態で、バリアメタル膜をめっき液に所定時間浸漬させることにより、従来別の処理槽や別の装置で行っていたのと同様の酸化膜の除去が行われることを見出した。すなわち、本発明によれば、銅膜を形成するためのめっき処理槽およびめっき液をバリアメタル膜の前処理槽および前処理液としても用いることができる。これにより、めっき処理装置の構成を簡易にするとともに、めっき処理時のスループットを向上させつつ、良好な電気特性の銅膜を得ることができる。ここで、バリアメタル膜とアノードとを略同電位とした状態とは、バリアメタル膜に電圧を印加しない状態、または、バリアメタル膜にアノードと同電位となるように電圧を印加した状態とすることができる。バリアメタル膜とアノードとが略同電位とは、これらの間の実質的な電位差によって、めっき成膜がされない程度の電圧とすることができる。装置構成により変化するが、たとえば0.5V以下の電位差とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成で良好な電気特性の銅膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本実施の形態において、電解めっき法により銅膜を形成する手順を示すフローチャートである。図2は、この手順を模式的に示す図である。
まず、たとえばシリコン基板である半導体基板102上にバリアメタル膜110を形成する(S10、図2(a))。バリアメタル膜110は、銅膜を電解めっき法で形成する際にカソードとして機能するシード膜となる。
【0014】
つづいて、半導体基板102を、バリアメタル膜110が形成された面を下にして、めっき処理槽200中に収容されためっき液204に浸漬させる。このとき、半導体基板102の表面(バリアメタル膜110が形成された面)とめっき処理槽200のめっき液204の上面とが略平行となるようにして、半導体基板102をめっき処理槽200に入槽させることができる。また、バリアメタル膜110に接続された電源線とアノード202に接続された電源線との間のスイッチ206をオフとし、バリアメタル膜110とアノード202との間に電圧を印加しない状態で、半導体基板102をめっき処理槽200に入槽する。この状態でバリアメタル膜110をめっき液204に所定時間t浸漬する(S20、図2(b)および図2(c))。めっき液204は、硫酸銅めっき液とすることができる。また、めっき液204には、添加剤としてレベラ、アクセラレータ(促進剤)、およびサプレッサ(抑制剤)が導入されてもよい。
【0015】
所定時間tは、0.5秒以上とすることができる。これにより、バリアメタル膜110表面に形成された酸化膜等が良好に除去される。また、スループット向上のため、所定時間tは、10秒以下とすることができる。アノード202は、溶解性の銅アノードにより構成してもよく、また不溶性アノードにより構成してもよく、とくに限定されない。
【0016】
バリアメタル膜110をめっき液204に所定時間t浸漬した後、スイッチ206をオンとして、バリアメタル膜110をめっき液204に浸漬したままバリアメタル膜110とアノード202との間に電圧を印加する(S30、図2(d))。これにより、バリアメタル膜110表面に銅膜が形成される。
【0017】
次に、本実施の形態における銅配線を含む半導体装置100の製造手順を図3を参照して説明する。以下、図2も参照して説明する。
半導体基板102上には、トランジスタ等が形成されている。さらに、半導体基板102上には、層間絶縁膜104および層間絶縁膜106がこの順で形成されている。層間絶縁膜104および層間絶縁膜106中には、配線やビアが形成されている。
【0018】
このように構成された半導体装置100において、まず、層間絶縁膜106に開口部108を形成する(図3(a))。ここでは、開口部108が配線溝の場合を例として説明するが、開口部108がビアホールまたはデュアルダマシン配線溝である場合も同様である。
【0019】
このような開口部108を配線材料で埋め込む手順は、以下のようになる。まず、層間絶縁膜106上全面にバリアメタル膜110を形成する。これにより、開口部108の底面および側面にもバリアメタル膜110が形成される(図3(b))。本実施の形態において、バリアメタル膜110は、Ruとすることができる。バリアメタル膜110としてRuを用いることにより、バリアメタル膜110と銅膜との密着性を良好にすることができる。バリアメタル膜110は、たとえばCVD法、スパッタ法等により形成することができる。バリアメタル膜110の膜厚は、たとえば1〜5nm程度とすることができる。
【0020】
その後、とくに前処理を行うことなく、半導体装置100のバリアメタル膜110をめっき処理槽200のめっき液204に浸漬させる。このとき、上述したように、バリアメタル膜110とアノード202との間に電圧を印加することなく、すなわちこれらの間を略同電位とした状態で、バリアメタル膜110を所定時間t浸漬させる。これにより、バリアメタル膜110表面の酸化膜等が除去される。つづいて、所定時間t経過後に、バリアメタル膜110とアノード202との間に電圧を印加する。このとき、バリアメタル膜110に、10〜150A/m程度の負の電流が印加されるようにする。これにより、バリアメタル膜110上に銅膜112が形成され、開口部108が銅膜112により埋め込まれる(図3(c))。
【0021】
この後、半導体装置100をめっき処理槽200から取り出し、CMPにより開口部108外部に露出した銅膜112およびバリアメタル膜110を除去する。これにより、銅配線が形成される。
【0022】
本実施の形態においては、バリアメタル膜110に電圧を印加しない状態で、バリアメタル膜110をめっき液204に所定時間浸漬させることにより、従来別の処理槽や別の装置で行っていたのと同様の酸化膜の除去が行われる。すなわち、本実施の形態においては、銅膜を形成するためのめっき処理槽200およびめっき液204をバリアメタル膜110の前処理槽および前処理液としても用いている。これにより、めっき処理装置の構成を簡易にするとともに、めっき処理時のスループットを向上することができる。
【実施例1】
【0023】
図3を参照して説明したのと同様に、層間絶縁膜106に形成した開口部108内に電解めっき法により銅膜を埋め込む処理を行った。ここで、開口部108のサイズは0.10μm、バリアメタル膜110としてはRu(膜厚約5nm)を用いた。めっき液204としては、硫酸銅めっき液を用いた。以下の条件でめっき処理を行った。
【0024】
(例1)
入槽時にバリアメタル膜110とアノード202との間に電圧を印加することなくバリアメタル膜110をめっき液204に浸漬させ、そのまま1秒おいた後にバリアメタル膜110とアノード202との間に電圧を印加し(バリアメタル膜110への負の電流100A/m)、開口部108内を銅膜で埋め込んだ。
【0025】
(例2)
入槽時にバリアメタル膜110とアノード202との間に電圧を印加して(バリアメタル膜110への負の電流100A/m)、バリアメタル膜110をめっき液204に浸漬させ、そのまま開口部108内を銅膜で埋め込んだ。
【0026】
製造した銅配線をTEMで観察したところ、例1ではボイドの発生が見られなかったが、例2ではボイドの発生が見られた。
【0027】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態において、電解めっき法により銅膜を形成する手順を示すフローチャートである。
【図2】図1に示した手順を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における銅配線を含む半導体装置の製造手順を示す工程断面図である。
【符号の説明】
【0029】
100 半導体装置
102 半導体基板
104 層間絶縁膜
106 層間絶縁膜
108 開口部
110 バリアメタル膜
112 銅膜
200 めっき処理槽
202 アノード
204 めっき液
206 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅膜を電解めっき法で形成する際にカソードとして機能するシード膜となるとともに硫酸銅めっき液に不溶性のバリアメタル膜を半導体基板上に形成する工程と、
前記バリアメタル膜とアノードとを略同電位とした状態で、硫酸銅めっき液を収容しためっき処理槽に前記半導体基板を入槽し、前記バリアメタル膜とアノードとの間に電圧を印加しない状態で前記バリアメタル膜を前記硫酸銅めっき液に所定時間浸漬する工程と、
前記バリアメタル膜を前記硫酸銅めっき液に前記所定時間浸漬した後、前記バリアメタル膜を前記硫酸銅めっき液に浸漬したまま当該バリアメタル膜と前記アノードとの間に電圧を印加して前記バリアメタル膜表面に銅膜を形成する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記バリアメタル膜は、ルテニウム、パラジウム、またはロジウムにより構成された半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記所定時間は0.5秒以上である半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−141088(P2008−141088A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327866(P2006−327866)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】