半導体装置の製造方法
【課題】半導体ウェハから得られる複数のメインチップにおいて、メインチップ毎のON電圧のバラツキを低減することが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】IGBT素子1と、小面積のトランジスタ2とが表面に形成された半導体ウェハ10を準備する。半導体ウェハ10の表面全体に電子線等を照射する。IGBT素子1およびトランジスタ2の中に再結合中心を形成する。測定装置15によりトランジスタ2のON電圧を測定しつつ、IGBT素子1およびトランジスタ2において規定されたライフタイムを所定のアニール処理を施すことにより回復させる。ライフタイムが回復しているとき、制御装置16は、IGBT素子1のON電圧がそれぞれ所定のON電圧となるように、測定されたトランジスタ2のON電圧に基づいてアニール処理におけるアニール処理量を制御する。
【解決手段】IGBT素子1と、小面積のトランジスタ2とが表面に形成された半導体ウェハ10を準備する。半導体ウェハ10の表面全体に電子線等を照射する。IGBT素子1およびトランジスタ2の中に再結合中心を形成する。測定装置15によりトランジスタ2のON電圧を測定しつつ、IGBT素子1およびトランジスタ2において規定されたライフタイムを所定のアニール処理を施すことにより回復させる。ライフタイムが回復しているとき、制御装置16は、IGBT素子1のON電圧がそれぞれ所定のON電圧となるように、測定されたトランジスタ2のON電圧に基づいてアニール処理におけるアニール処理量を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関し、特に、ライフタイムを制御する工程を含む半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開昭62−55964号公報(特許文献1)は、半導体ウェハ上においてパワートランジスタのメインチップから独立した位置に、電流増幅率測定用のトランジスタを配置する態様を開示している。同公報によると、電流増幅率測定用のトランジスタを使用することにより、半導体ウェハから得られた複数のメインチップの中から、電流増幅率のバラツキの大きいものを選別することができるとされている。
【0003】
特開2006−352101号公報(特許文献2)は、半導体領域に元来含まれているとともに半導体ウェハ毎に異なっている不純物濃度を、実質的に均一化する方法を開示している。当該方法においては、半導体領域に多量の不純物が導入される。元来含まれていた不純物の半導体領域毎のバラツキと、形成される複合欠陥(再結合中心)のバラツキとが実質的に無視可能となる。同公報によると、所定の特性を備えた半導体装置を安定的に得ることができるとされている。
【0004】
特開2000−200792号公報(特許文献3)は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)に対して数MeV(Mega electron Volt)の電子線を照射することにより、IGBTのライフタイムを短くするという技術を開示している。同公報は、電子線の照射によりゲート酸化膜およびゲート酸化膜(チャネル領域界面)が受けた照射損傷は、照射後に行うアニール処理により回復されることも開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−55964号公報
【特許文献2】特開2006−352101号公報
【特許文献3】特開2000−200792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体ウェハから得られるIGBT素子などの複数のメインチップにおいて、個々のメインチップのON電圧にバラツキが生じる場合がある。
【0007】
本発明は、半導体ウェハから得られる複数のメインチップにおいて、メインチップ毎のON電圧のバラツキを低減することが可能な半導体装置の製造方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面に基づく半導体装置の製造方法は、次の各工程を備えている。まず、所定のON電圧を有する複数の第1半導体素子と、他の所定のON電圧を有し上記第1半導体素子よりも面積の小さい複数の第2半導体素子とが表面に形成された半導体ウェハを準備する。
【0009】
次に、上記半導体ウェハの上記表面の全体に対して所定の放射線または所定のイオンを照射することによって、上記第1半導体素子および上記第2半導体素子の中に再結合中心を形成する。上記第2半導体素子の上記ON電圧を測定するとともに、上記再結合中心が形成されることによって上記第1半導体素子および上記第2半導体素子において規定されたライフタイムを、上記半導体ウェハに対して所定のアニール処理を施すことにより回復させる。
【0010】
上記アニール処理におけるアニール処理量は、上記第1半導体素子の上記ライフタイムが回復しているとき、上記第1半導体素子のON電圧がそれぞれ所定のON電圧となるように、測定された上記第2半導体素子の上記ON電圧に基づいて制御される。
【0011】
本発明の他の局面に基づく半導体装置の製造方法は、次の各工程を備えている。まず、所定のON電圧を有する複数の第1半導体素子と、他の所定のON電圧を有し上記第1半導体素子よりも面積の小さい第2半導体素子とが表面に形成された半導体ウェハを準備する。
【0012】
次に、上記半導体ウェハの上記表面の全体に対して所定の放射線または所定のイオンを照射することによって、上記第1半導体素子および上記第2半導体素子の中に再結合中心を形成する。複数の上記第1半導体素子において上記再結合中心が形成されることによって規定されたライフタイムを、上記半導体ウェハに対してプリヒート処理を施すことにより回復させる。上記第2半導体素子の上記ON電圧を測定する。上記ライフタイムを、複数の上記第1半導体素子に対して所定のアニール処理を施すことにより回復させる。
【0013】
上記アニール処理におけるアニール処理量は、上記第1半導体素子がそれぞれ所定のON電圧となるように、測定された上記第2半導体素子の上記ON電圧に基づいて制御される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、半導体ウェハから得られる複数のメインチップにおいて、メインチップ毎のON電圧のバラツキを低減することが可能な半導体装置の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1における半導体装置の製造方法の各ステップを示す図である。
【図2】実施の形態1における半導体装置の製造方法の第1ステップを示す平面図である。
【図3】実施の形態1における半導体装置の製造方法の第2ステップを示す断面図である。
【図4】実施の形態1における半導体装置の製造方法の第3ステップを示す平面図である。
【図5】図4におけるV線に囲まれる領域を示す拡大平面図である。
【図6】図5におけるVI−VI線に関する矢視断面図である。
【図7】ON電圧VCEと、アニール処理時間Tとの関係を示す図である。
【図8】実施の形態1における半導体装置の製造方法の第4ステップを示す平面図である。
【図9】図8におけるIX−IX線に関する矢視断面図である。
【図10】実施の形態1における半導体装置の製造方法の第5ステップを示す平面図である。
【図11】実施の形態1における半導体装置の製造方法の第6ステップを示す拡大平面図である。
【図12】図11におけるXII−XII線に関する矢視断面図である。
【図13】実施の形態1における半導体装置の製造方法の第7ステップを示す図である。
【図14】実施の形態1の第1変形例を示す平面図である。
【図15】図14におけるXV線に囲まれる領域を示す拡大平面図である。
【図16】実施の形態1の第2変形例を示す平面図である。
【図17】図16におけるXVII−XVII線に関する矢視断面図である。
【図18】図17におけるXVIII線に囲まれる領域を示す拡大断面図である。
【図19】実施の形態2における半導体装置の製造方法の各ステップを示す図である。
【図20】実施の形態2における半導体装置の製造方法の第1ステップを示す平面図である。
【図21】実施の形態2における半導体装置の製造方法の第2ステップを示す断面図である。
【図22】実施の形態2における半導体装置の製造方法の第3ステップを示す断面図である。
【図23】実施の形態2における半導体装置の製造方法の第4ステップを示す平面図である。
【図24】図23におけるXXIV線に囲まれる領域を示す拡大平面図である。
【図25】図24におけるXXV−XXV線に関する矢視断面図である。
【図26】実施の形態2における半導体装置の製造方法の第5ステップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に基づいた各実施の形態における半導体装置の製造方法について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0017】
[実施の形態1]
図1〜図13を参照して、本実施の形態における半導体装置の製造方法について説明する。図1を参照して、本実施の形態における半導体装置の製造方法は、ステップSA1〜SA7(それぞれ、第1ステップ〜第7ステップとも称する)を備えている。以下、ステップSA1〜SA7について順に説明する。
【0018】
(ステップSA1)
図2を参照して、ステップSA1においては、所定の処理(プロセス)が完了した半導体ウェハ10が準備される。半導体ウェハ10の表面には、複数のIGBT素子1(第1半導体素子)と、4つのトランジスタ2(第2半導体素子)とが形成されている。
【0019】
複数のIGBT素子1は、メインチップとして形成されている。4つのトランジスタ2は、セルモニタとして形成されている。各トランジスタ2は、複数のIGBT素子1が形成されている領域の四隅に形成されている。各トランジスタ2は、複数のIGBT素子1が形成されている領域とは独立した位置に形成されている。トランジスタ2の面積は、IGBT素子1の面積よりも小さい。トランジスタ2の面積は、たとえばIGBT素子1の面積の約1/1000である。
【0020】
(ステップSA2)
図3を参照して、ステップSA2においては、半導体ウェハ10の表面の全体に対して、所定の照射量を有する電子線4が照射される。所定の照射量とは、たとえば約0.5〜約1.0MeVの加速電圧、約5〜15×1014/cm2のドーズ量である。IGBT素子1およびトランジスタ2を構成している基板(シリコン等)に歪(欠陥とも称される)が発生する。この歪が、少数キャリア(p型半導体材料においては電子、n型半導体材料においては正孔)の再結合中心となる。
【0021】
再結合中心を形成するためには、放射線としてα線、γ線、X線、または中性子線(ニュートロン)等が照射されてもよい。再結合中心を形成するためには、イオン(プロトン)として、He+またはAr+等が照射されてもよい。
【0022】
再結合中心において、少数キャリアが捕獲(再結合)される。再結合中心の密度および分布を調整することにより、少数キャリアの寿命が伸縮する(ライフタイム制御)。再結合中心の密度および分布を調整することにより、IGBT素子1およびトランジスタ2の各ON抵抗も増減する。電子線4の照射により、たとえば少数キャリアのライフタイムは約5〜約10nsに低下する。
【0023】
(ステップSA3)
図4を参照して、ステップSA3においては、トランジスタ2のON電圧が測定される。図4においては、1つのトランジスタ2のON電圧を測定するという態様を示している。好適には、プローブピン(詳細は次述する)を4つ準備して、四隅のトランジスタ2に対して同時にON電圧を測定するとよい。
【0024】
図5を参照して、トランジスタ2のゲート2G(ベース)に、ゲート端子5Gが接地される。トランジスタ2のエミッタ2Eに、エミッタ端子5Eが接地される。ゲート端子5Gおよびエミッタ端子5Eは、細径のプローブピンにて構成される。なお、図5は、図4におけるV線に囲まれる領域を示す拡大平面図である。
【0025】
図6を参照して、半導体ウェハ10の裏面電極11(トランジスタ2のコレクタ)に、コレクタ端子5Cが接地される。各端子5G,5E,5Cは、測定装置15に接続されている。トランジスタ2のON電圧を測定するとき、エミッタ端子5Eとゲート端子5Gとの間には、IGBT素子1の定格電流に比べて低い電流が通電される。
【0026】
詳細な動作については次述されるが、裏面電極11はヒータ12を内蔵している。ヒータ12は、電源14および制御装置16に接続されている。裏面電極11には、温度センサ13が取り付けられている。温度センサ13も、制御装置16に接続されている。
【0027】
半導体ウェハ10上に形成される複数のIGBT素子1の特性には、所定の方向に向かうように一定の傾向が存在する。よって、四隅に形成されたトランジスタ2のON電圧の測定結果から、IGBT素子1におけるON電圧の分布状況を算出することができる。
【0028】
IGBT素子1の定格電流およびIGBT素子1の電流密度に応じて、トランジスタ2に通電する電流を設定することにより、IGBT素子1におけるON電圧を等価的に算出することも可能となる。たとえば、トランジスタ2の面積がIGBT素子1の面積の1/1000であるとする。IGBT素子1の定格電流が100Aである場合、トランジスタ2に通電する電流を0.1Aとすることにより、IGBT素子1におけるON電圧およびその分布状況を、高い精度で算出することができる。
【0029】
トランジスタ2のON電圧、およびトランジスタ2のON電圧に基づき算出されたIGBT素子1のON電圧ならびにその分布状況は、制御装置16に入力される。制御装置16は、これらの情報をモニタリングすると同時に、ヒータ12を駆動させる。ヒータ12の駆動により、半導体ウェハ10に対して所定のアニール処理(たとえば温度300℃以上)が施される。
【0030】
IGBT素子1およびトランジスタ2のライフタイムが回復(安定)する。IGBT素子1のON電圧がそれぞれ所定のON電圧となるように、制御装置16は、トランジスタ2のON電圧に基づいて、アニール処理におけるアニール処理量を制御する。アニール処理量は、温度と時間とに依存する。
【0031】
図7を参照して、アニール処理時間Tが長くなるほど、(ライフタイムの回復量が増加することにより)ON電圧VCEは低くなる。図6を再び参照して、制御装置16は、アニール処理量を制御するために、半導体ウェハ10に対するアニール処理時間を増減させるとよい。制御装置16は、アニール処理量を制御するために、裏面電極11の温度を温度センサ13により測定しつつ、裏面電極11の温度をヒータ12により昇降させてもよい。制御装置16は、アニール処理量を制御するために、アニール処理時間を増減することと裏面電極11の温度の昇降させることとの両方を実施してもよい。
【0032】
ライフタイムの回復処理は、半導体ウェハ10の面内全体に対して回復処理を施す場合と、半導体ウェハ10の所望の領域のみに対して回復処理を施する場合とで異なる。図6においては、半導体ウェハ10の全面にわたって上記の回復処理を施す態様を模式的に例示している。半導体ウェハ10の所望の領域のみに対して回復処理を施す場合には、レーザアニールなどを用いることにより、局所的にアニール処理を施すことができる。
【0033】
IGBT素子1のON電圧が、所望のON電圧に対して乖離している場合、半導体ウェハ10の面内全体に対して回復処理を施すとよい。IGBT素子1のON電圧の分布状況にバラツキがある場合、半導体ウェハ10の所望の領域のみに対して回復処理を施すとよい。ライフタイムが相対的に低い領域に対してアニール処理量を増加させることで、複数のIGBT素子1における各ON電圧のバラツキを低減することが可能となる。
【0034】
(ステップSA4)
図8を参照して、ステップSA4においては、IGBT素子1に対してプローブテストが実施される。IGBT素子1のゲート1Gに、ゲート端子6Gが接地される。IGBT素子1のエミッタ1Eに、エミッタ端子6Eが接地される。ゲート端子6Gおよびエミッタ端子6Eは、細径のプローブピンにて構成される。
【0035】
図9を参照して、半導体ウェハ10の裏面電極11(IGBT素子1のコレクタ)に、コレクタ端子6Cが接地される。各端子6G,6E,6Cは、所定の測定装置(図示せず)に接続されている。
【0036】
当該プローブテストにおいては、上述のステップSA3と同様に、エミッタ端子6Eとゲート端子6Gとの間には、IGBT素子1の定格電流に比べて低い電流が通電される。当該プローブテストにおいては、低電流時におけるIGBT素子1のON電圧、ゲートショート、耐圧、閾値電圧などの各特性が測定される。
【0037】
個々のIGBT素子1に対して、測定された各特性が所定の条件を満足しているか否か(たとえば規格値内か否か)が判断される。当該判断に基づいて、半導体ウェハ10の表面に形成された各IGBT素子1が、良品である否かが判断される。所定の条件を満足していないIGBT素子1には、機械的または電気的にマーキングが施されるとよい。マーキングにより、所定の条件を満足していないIGBT素子1を、後工程で容易に分離することができる。
【0038】
(ステップSA5〜SA7)
図10を参照して、ステップSA5においては、半導体ウェハ10が所定のスクライブラインに沿ってダイシングされる。個々のIGBT素子1(メインチップ)が得られる。
【0039】
図11を参照して、ステップSA6においては、個々のIGBT素子1に対してプローブテストが実施される。IGBT素子1のゲート1Gに、ゲート端子7Gが接地される。IGBT素子1のエミッタ1Eに、複数のエミッタ端子7Eが接地される。ゲート端子7Gおよびエミッタ端子7Eは、太径のプローブピンにて構成される。
【0040】
図12を参照して、半導体ウェハ10の裏面電極11(IGBT素子1のコレクタ)に、コレクタ端子7Cが接地される。各端子7G,7E,7Cは、所定の測定装置(図示せず)に接続されている。
【0041】
当該プローブテストにおいては、エミッタ端子7Eとゲート端子7Gとの間には、IGBT素子1の定格相当の電流が通電される。当該プローブテストにおいては、IGBT素子1のON電圧、ゲートショート、耐圧、閾値電圧などの各特性が測定される。
【0042】
個々のIGBT素子1に対して、測定された各特性が所定の条件を満足しているか否か(たとえば規格値内か否か)が判断される。当該判断に基づいて、各IGBT素子1が良品である否かが判断される。
【0043】
図13を参照して、ステップSA7においては、良品と判断された個々のIGBT素子1が、定格電流時におけるON電圧VCEの大きさに応じて分類される(たとえば、クラスA〜クラスE)。各クラスA〜Eのそれぞれにおいて、数量NのIGBT素子1が得られる。
【0044】
(作用・効果)
単体のスイッチング素子(たとえばIGBT素子1)を使用して、インバータなどの三相モータを構成する場合、IGBT素子1が並列に接続される。並列接続されたIGBT素子1の出力は合成され、当該出力は三相モータとしての駆動力に変化する。並列接続されたIGBT素子1が高い出力効率を実現するためには、個々のIGBT素子1のON電圧が揃っている必要がある。
【0045】
本実施の形態における半導体装置の製造方法によれば、ステップSA3において(図1および図4〜図6参照)、IGBT素子1のON電圧およびON電圧の分布状況がモニタリングされる。同時に、IGBT素子1およびトランジスタ2のライフタイム回復処理が施される。
【0046】
モニタリングとライフタイム回復処理とがリアルタイムで連動するように実施される。モニタリング結果に基づきライフタイム回復処理が施され、そのライフタイム回復処理の結果がモニタリングされ、ふたたびライフタイム回復処理にそのモニタリング結果が反映される。この処理が繰り返されることにより、複数のIGBT素子1に対して、高い精度で所望のON電圧を得ることができる。
【0047】
図13に示すように、本実施の形態においては、半導体ウェハ10から得られる複数のIGBT素子1の各ON電圧が、すべてクラスCとして規定されるON電圧VCEの範囲内となっている。本実施の形態によれば、高い精度でON電圧のバラツキを低減することが可能となる。
【0048】
加えて、ON電圧の測定と、ライフタイム回復処理が同時に行なわれるため、半導体装置の製造方法としての工数を削減できるという効果も得ることができる。
【0049】
なお、本実施の形態における半導体ウェハ10の表面には複数のIGBT素子1と、4つのトランジスタ2とが形成されているが、この構成に限られない。半導体ウェハの表面には、メインチップおよびセルモニタとして、他のスイッチング素子(MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、バイポーラトランジスタ、またはサイリスタ等)が形成されていてもよい。メインチップとして形成されるスイッチング素子と、セルモニタとして形成されるスイッチング素子とは、同一の構造であってもよく、異なる構造であってもよい。
【0050】
[実施の形態1の第1変形例]
図2を参照して、上述の実施の形態1における半導体ウェハ10の表面には、複数のIGBT素子1と、4つのトランジスタ2とが形成されているが、この構成に限られない。
【0051】
図14を参照して、半導体ウェハ10aのように、トランジスタ2aはIGBT素子1aと一体的に配置されていてもよい。1つのIGBT素子1aに対して、1つのトランジスタ2aが形成されている。図15を参照して、トランジスタ2a(ゲート2G(ベース)およびエミッタ2E)は、IGBT素子1aのエミッタ1E上に形成されている。なお、図15は、図14におけるXV線に囲まれる領域を示す拡大平面図である。
【0052】
上述の実施の形態1におけるステップSA3と同様にして、各トランジスタ2aのON電圧が測定される。測定結果から、各IGBT素子1aにおけるON電圧、および各IGBT素子1aにおけるON電圧の分布状況をより高い精度で算出することができる。アニール処理量がより高い精度で制御されることにより、複数のIGBT素子1aに対して、より高い精度で所望のON電圧を得ることができる。
【0053】
[実施の形態1の第2変形例]
図2を参照して、上述の実施の形態1における半導体ウェハ10の表面には、IGBT素子1とトランジスタ2とが形成されているが、この構成に限られない。
【0054】
図16を参照して、半導体ウェハ10bのように、メインチップとしてダイオード1bと、セルモニタとしてダイオード2bとが形成されていてもよい。ダイオード2bの面積は、ダイオード1bの面積よりも小さい。ダイオード2bの面積は、たとえばダイオード1bの面積の約1/1000である。
【0055】
図17および図18を参照して、ダイオード2bは、p型領域2b1と、n−型領域2b2と、n+型領域2b3とから構成されている。
【0056】
ダイオード2bのp型領域2b1にアノード端子8Aが接地される。半導体ウェハ10の裏面電極11(ダイオード2bのカソード)に、カソード端子8K(図17参照)が接地される。各端子8A,8Kは、所定の測定装置(図示せず)に接続されている。
【0057】
ダイオード2bのON電圧(順方向電圧Vf)が測定される。測定結果に基づいて、ダイオード1bのON電圧(順方向電圧Vf)および分布状況がモニタリングされる。同時に、ダイオード1bおよびダイオード2bに対して所定のアニール処理が施される。結果として、上述の実施の形態1と同様に、複数のダイオード1bに対して、高い精度で所望のON電圧(順方向電圧Vf)を得ることができる。
【0058】
[実施の形態2]
図19〜図26を参照して、本実施の形態における半導体装置の製造方法について説明する。図19を参照して、本実施の形態における半導体装置の製造方法は、ステップSB1〜SB9(それぞれ、第1ステップ〜第9ステップとも称する)を備えている。以下、ステップSB1〜SB9について順に説明する。
【0059】
(ステップSB1〜SB2)
図20を参照して、ステップSB1においては、上述の実施の形態1におけるステップSA1と同様に、所定の処理(プロセス)が完了した半導体ウェハ10が準備される。半導体ウェハ10の表面には、複数のIGBT素子1(第1半導体素子)と、4つのトランジスタ2(第2半導体素子)とが形成されている。
【0060】
図21を参照して、ステップSB2においては、上述の実施の形態1におけるステップSA2と同様に、半導体ウェハ10の表面の全体に対して、所定の照射量を有する電子線4が照射される。IGBT素子1およびトランジスタ2を構成している基板に歪が発生する。この歪が、少数キャリアの再結合中心となる。
【0061】
(ステップSB3)
図22を参照して、ステップSB3においては、半導体ウェハ10に対してアニール炉21を使用して所定のプリヒート処理を施す。処理温度はたとえば約300℃である。処理時間はたとえば約20分である。図22に示すように、アニール炉21内の基台22に、複数の半導体ウェハ10を固定して、複数の半導体ウェハ10に対して一度にプリヒート処理を施してもよい。プリヒート処理により、IGBT素子1およびトランジスタ2のライフタイムが回復(安定)する。
【0062】
(ステップSB4)
図23を参照して、ステップSB4においては、トランジスタ2のON電圧が測定される。図23においては、1つのトランジスタ2のON電圧を測定するという態様を示している。好適には、プローブピン(詳細は次述する)を4つ準備して、四隅のトランジスタ2に対して同時にON電圧を測定するとよい。
【0063】
図24を参照して、トランジスタ2のゲート2G(ベース)に、ゲート端子5Gが接地される。トランジスタ2のエミッタ2Eに、エミッタ端子5Eが接地される。ゲート端子5Gおよびエミッタ端子5Eは、細径のプローブピンにて構成される。なお、図24は、図23におけるXXIV線に囲まれる領域を示す拡大平面図である。
【0064】
図25を参照して、半導体ウェハ10の裏面電極11(トランジスタ2のコレクタ)に、コレクタ端子5Cが接地される。各端子5G,5E,5Cは、測定装置15に接続されている。トランジスタ2のON電圧を測定するとき、エミッタ端子5Eとゲート端子5Gとの間には、IGBT素子1の定格電流に比べて低い電流が通電される。
【0065】
半導体ウェハ10上に形成される複数のIGBT素子1の特性には、所定の方向に向かうように一定の傾向が存在する。よって、四隅に形成されたトランジスタ2のON電圧の測定結果から、IGBT素子1におけるON電圧の分布状況を算出することができる。
【0066】
IGBT素子1の定格電流およびIGBT素子1の電流密度に応じて、トランジスタ2に通電する電流を設定することにより、IGBT素子1におけるON電圧を等価的に算出することも可能となる。たとえば、トランジスタ2の面積がIGBT素子1の面積の1/1000であるとする。IGBT素子1の定格電流が100Aである場合、トランジスタ2に通電する電流を0.1Aとすることにより、IGBT素子1におけるON電圧およびその分布状況を、高い精度で算出することができる。
【0067】
(ステップSB5)
図26を参照して、ステップSB5においては、半導体ウェハ10に対してアニール炉21を使用して所定のアニール処理(たとえば温度300℃以上)を施す。図26に示すように、アニール炉21内の基台22に複数の半導体ウェハ10を固定して、複数の半導体ウェハ10に対して一度にアニール処理を施してもよい。
【0068】
当該アニール処理により、IGBT素子1およびトランジスタ2のライフタイムが回復(安定)する。IGBT素子1のON電圧がそれぞれ所定のON電圧となるように、ステップSB4で測定したトランジスタ2のON電圧に基づいて、アニール処理におけるアニール処理量を制御する。アニール処理量は、温度と時間とに依存する。
【0069】
アニール処理量を制御するために、半導体ウェハ10に対するアニール処理時間を増減させてもよいし、アニール温度を昇降させてもよいし、これらの両方であってもよい。
【0070】
ライフタイムの回復処理は、半導体ウェハ10の面内全体に対して回復処理を施す場合と、半導体ウェハ10の所望の領域のみに対して回復処理を施する場合とで異なる。図26においては、半導体ウェハ10の全面にわたって上記の回復処理を施す態様を例示している。半導体ウェハ10の所望の領域のみに対して回復処理を施す場合には、レーザアニールなどを用いることにより、局所的にアニール処理を施すことが可能である。
【0071】
IGBT素子1のON電圧が、所望のON電圧に対して乖離している場合、半導体ウェハ10の面内全体に対して回復処理を施すとよい。IGBT素子1のON電圧の分布状況にバラツキがある場合、半導体ウェハ10の所望の領域のみに対して回復処理を施すとよい。ライフタイムが相対的に低い領域に対してアニール処理量を増加させることで、複数のIGBT素子1における各ON電圧のバラツキを低減することが可能となる。
【0072】
(ステップSB6〜SB9)
図19を再び参照して、ステップSB6においては、上述の実施の形態1におけるステップSA4(図8および図9参照)と同様に、IGBT素子1に対してプローブテスト(低電流)が実施される。
【0073】
ステップSB7においては、上述の実施の形態1におけるステップSA5(図10参照)と同様に、半導体ウェハ10が所定のスクライブラインに沿ってダイシングされる。個々のIGBT素子1が得られる。
【0074】
ステップSB8においては、上述の実施の形態1におけるステップSA6(図11および図12参照)と同様に、個々のIGBT素子1に対してプローブテストが実施される。個々のIGBT素子1に対して、各特性が所定の条件を満足しているか否か(たとえば規格値内か否か)が判断される。
【0075】
ステップSB9においては、上述の実施の形態1におけるステップSA7(図13参照)と同様に、良品と判断された個々のIGBT素子1が、定格電流時におけるON電圧VCEの大きさに応じて分類される(たとえば、クラスA〜クラスE)。各クラスA〜Eのそれぞれにおいて、数量NのIGBT素子1が得られる。
【0076】
(作用・効果)
本実施の形態における半導体装置の製造方法によれば、ステップSB3において(図22参照)、半導体ウェハ10に対して所定のプリヒート処理が施される。プリヒート処理により、IGBT素子1およびトランジスタ2のライフタイムが回復(安定)する。ステップSB4においてトランジスタ2のON電圧を測定するとき、より高い精度の測定結果を得ることが可能となる。
【0077】
ステップSB5においてより高い精度の測定結果に基づいてアニール処理を施すことにより、複数のIGBT素子1に対してより精度の高いライフタイム回復処理を施すことが可能となる。結果として、高い精度で所望のON電圧を得ることができる。半導体ウェハ10から得られる複数のIGBT素子1に対して、高い精度でバラツキを低減することが可能となる。
【0078】
以上、本発明に基づいた各実施の形態における半導体装置の製造方法について説明したが、今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
【0079】
たとえば、実施の形態1と実施の形態2とを組み合わせることが可能である。実施の形態1と実施の形態2とを組み合わせる場合、実施の形態2におけるステップSB3(プリヒート処理)は、実施の形態1におけるステップSA2(電子線照射)と実施の形態1におけるステップSA3(モニタリングしながらライフタイム回復処理)との間において実施されるとよい。
【0080】
したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1,1a IGBT素子、1b,2b ダイオード、1E,2E エミッタ、1G,2G ゲート、2,2a トランジスタ、2b1,2b2,2b3 領域、4 電子線、5C,6C,7C コレクタ端子、5E,6E,7E エミッタ端子、5G,6G,7G ゲート端子、8A アノード端子、8K カソード端子、10,10a,10b 半導体ウェハ、11 裏面電極、12 ヒータ、13 温度センサ、14 電源、15 測定装置、16 制御装置、21 アニール炉、22 基台、N 数量、SA1〜SA7,SB1〜SB9 ステップ、T アニール処理時間、VCE ON電圧。
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法に関し、特に、ライフタイムを制御する工程を含む半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開昭62−55964号公報(特許文献1)は、半導体ウェハ上においてパワートランジスタのメインチップから独立した位置に、電流増幅率測定用のトランジスタを配置する態様を開示している。同公報によると、電流増幅率測定用のトランジスタを使用することにより、半導体ウェハから得られた複数のメインチップの中から、電流増幅率のバラツキの大きいものを選別することができるとされている。
【0003】
特開2006−352101号公報(特許文献2)は、半導体領域に元来含まれているとともに半導体ウェハ毎に異なっている不純物濃度を、実質的に均一化する方法を開示している。当該方法においては、半導体領域に多量の不純物が導入される。元来含まれていた不純物の半導体領域毎のバラツキと、形成される複合欠陥(再結合中心)のバラツキとが実質的に無視可能となる。同公報によると、所定の特性を備えた半導体装置を安定的に得ることができるとされている。
【0004】
特開2000−200792号公報(特許文献3)は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)に対して数MeV(Mega electron Volt)の電子線を照射することにより、IGBTのライフタイムを短くするという技術を開示している。同公報は、電子線の照射によりゲート酸化膜およびゲート酸化膜(チャネル領域界面)が受けた照射損傷は、照射後に行うアニール処理により回復されることも開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−55964号公報
【特許文献2】特開2006−352101号公報
【特許文献3】特開2000−200792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体ウェハから得られるIGBT素子などの複数のメインチップにおいて、個々のメインチップのON電圧にバラツキが生じる場合がある。
【0007】
本発明は、半導体ウェハから得られる複数のメインチップにおいて、メインチップ毎のON電圧のバラツキを低減することが可能な半導体装置の製造方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面に基づく半導体装置の製造方法は、次の各工程を備えている。まず、所定のON電圧を有する複数の第1半導体素子と、他の所定のON電圧を有し上記第1半導体素子よりも面積の小さい複数の第2半導体素子とが表面に形成された半導体ウェハを準備する。
【0009】
次に、上記半導体ウェハの上記表面の全体に対して所定の放射線または所定のイオンを照射することによって、上記第1半導体素子および上記第2半導体素子の中に再結合中心を形成する。上記第2半導体素子の上記ON電圧を測定するとともに、上記再結合中心が形成されることによって上記第1半導体素子および上記第2半導体素子において規定されたライフタイムを、上記半導体ウェハに対して所定のアニール処理を施すことにより回復させる。
【0010】
上記アニール処理におけるアニール処理量は、上記第1半導体素子の上記ライフタイムが回復しているとき、上記第1半導体素子のON電圧がそれぞれ所定のON電圧となるように、測定された上記第2半導体素子の上記ON電圧に基づいて制御される。
【0011】
本発明の他の局面に基づく半導体装置の製造方法は、次の各工程を備えている。まず、所定のON電圧を有する複数の第1半導体素子と、他の所定のON電圧を有し上記第1半導体素子よりも面積の小さい第2半導体素子とが表面に形成された半導体ウェハを準備する。
【0012】
次に、上記半導体ウェハの上記表面の全体に対して所定の放射線または所定のイオンを照射することによって、上記第1半導体素子および上記第2半導体素子の中に再結合中心を形成する。複数の上記第1半導体素子において上記再結合中心が形成されることによって規定されたライフタイムを、上記半導体ウェハに対してプリヒート処理を施すことにより回復させる。上記第2半導体素子の上記ON電圧を測定する。上記ライフタイムを、複数の上記第1半導体素子に対して所定のアニール処理を施すことにより回復させる。
【0013】
上記アニール処理におけるアニール処理量は、上記第1半導体素子がそれぞれ所定のON電圧となるように、測定された上記第2半導体素子の上記ON電圧に基づいて制御される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、半導体ウェハから得られる複数のメインチップにおいて、メインチップ毎のON電圧のバラツキを低減することが可能な半導体装置の製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1における半導体装置の製造方法の各ステップを示す図である。
【図2】実施の形態1における半導体装置の製造方法の第1ステップを示す平面図である。
【図3】実施の形態1における半導体装置の製造方法の第2ステップを示す断面図である。
【図4】実施の形態1における半導体装置の製造方法の第3ステップを示す平面図である。
【図5】図4におけるV線に囲まれる領域を示す拡大平面図である。
【図6】図5におけるVI−VI線に関する矢視断面図である。
【図7】ON電圧VCEと、アニール処理時間Tとの関係を示す図である。
【図8】実施の形態1における半導体装置の製造方法の第4ステップを示す平面図である。
【図9】図8におけるIX−IX線に関する矢視断面図である。
【図10】実施の形態1における半導体装置の製造方法の第5ステップを示す平面図である。
【図11】実施の形態1における半導体装置の製造方法の第6ステップを示す拡大平面図である。
【図12】図11におけるXII−XII線に関する矢視断面図である。
【図13】実施の形態1における半導体装置の製造方法の第7ステップを示す図である。
【図14】実施の形態1の第1変形例を示す平面図である。
【図15】図14におけるXV線に囲まれる領域を示す拡大平面図である。
【図16】実施の形態1の第2変形例を示す平面図である。
【図17】図16におけるXVII−XVII線に関する矢視断面図である。
【図18】図17におけるXVIII線に囲まれる領域を示す拡大断面図である。
【図19】実施の形態2における半導体装置の製造方法の各ステップを示す図である。
【図20】実施の形態2における半導体装置の製造方法の第1ステップを示す平面図である。
【図21】実施の形態2における半導体装置の製造方法の第2ステップを示す断面図である。
【図22】実施の形態2における半導体装置の製造方法の第3ステップを示す断面図である。
【図23】実施の形態2における半導体装置の製造方法の第4ステップを示す平面図である。
【図24】図23におけるXXIV線に囲まれる領域を示す拡大平面図である。
【図25】図24におけるXXV−XXV線に関する矢視断面図である。
【図26】実施の形態2における半導体装置の製造方法の第5ステップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に基づいた各実施の形態における半導体装置の製造方法について、以下、図面を参照しながら説明する。各実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。各実施の形態の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0017】
[実施の形態1]
図1〜図13を参照して、本実施の形態における半導体装置の製造方法について説明する。図1を参照して、本実施の形態における半導体装置の製造方法は、ステップSA1〜SA7(それぞれ、第1ステップ〜第7ステップとも称する)を備えている。以下、ステップSA1〜SA7について順に説明する。
【0018】
(ステップSA1)
図2を参照して、ステップSA1においては、所定の処理(プロセス)が完了した半導体ウェハ10が準備される。半導体ウェハ10の表面には、複数のIGBT素子1(第1半導体素子)と、4つのトランジスタ2(第2半導体素子)とが形成されている。
【0019】
複数のIGBT素子1は、メインチップとして形成されている。4つのトランジスタ2は、セルモニタとして形成されている。各トランジスタ2は、複数のIGBT素子1が形成されている領域の四隅に形成されている。各トランジスタ2は、複数のIGBT素子1が形成されている領域とは独立した位置に形成されている。トランジスタ2の面積は、IGBT素子1の面積よりも小さい。トランジスタ2の面積は、たとえばIGBT素子1の面積の約1/1000である。
【0020】
(ステップSA2)
図3を参照して、ステップSA2においては、半導体ウェハ10の表面の全体に対して、所定の照射量を有する電子線4が照射される。所定の照射量とは、たとえば約0.5〜約1.0MeVの加速電圧、約5〜15×1014/cm2のドーズ量である。IGBT素子1およびトランジスタ2を構成している基板(シリコン等)に歪(欠陥とも称される)が発生する。この歪が、少数キャリア(p型半導体材料においては電子、n型半導体材料においては正孔)の再結合中心となる。
【0021】
再結合中心を形成するためには、放射線としてα線、γ線、X線、または中性子線(ニュートロン)等が照射されてもよい。再結合中心を形成するためには、イオン(プロトン)として、He+またはAr+等が照射されてもよい。
【0022】
再結合中心において、少数キャリアが捕獲(再結合)される。再結合中心の密度および分布を調整することにより、少数キャリアの寿命が伸縮する(ライフタイム制御)。再結合中心の密度および分布を調整することにより、IGBT素子1およびトランジスタ2の各ON抵抗も増減する。電子線4の照射により、たとえば少数キャリアのライフタイムは約5〜約10nsに低下する。
【0023】
(ステップSA3)
図4を参照して、ステップSA3においては、トランジスタ2のON電圧が測定される。図4においては、1つのトランジスタ2のON電圧を測定するという態様を示している。好適には、プローブピン(詳細は次述する)を4つ準備して、四隅のトランジスタ2に対して同時にON電圧を測定するとよい。
【0024】
図5を参照して、トランジスタ2のゲート2G(ベース)に、ゲート端子5Gが接地される。トランジスタ2のエミッタ2Eに、エミッタ端子5Eが接地される。ゲート端子5Gおよびエミッタ端子5Eは、細径のプローブピンにて構成される。なお、図5は、図4におけるV線に囲まれる領域を示す拡大平面図である。
【0025】
図6を参照して、半導体ウェハ10の裏面電極11(トランジスタ2のコレクタ)に、コレクタ端子5Cが接地される。各端子5G,5E,5Cは、測定装置15に接続されている。トランジスタ2のON電圧を測定するとき、エミッタ端子5Eとゲート端子5Gとの間には、IGBT素子1の定格電流に比べて低い電流が通電される。
【0026】
詳細な動作については次述されるが、裏面電極11はヒータ12を内蔵している。ヒータ12は、電源14および制御装置16に接続されている。裏面電極11には、温度センサ13が取り付けられている。温度センサ13も、制御装置16に接続されている。
【0027】
半導体ウェハ10上に形成される複数のIGBT素子1の特性には、所定の方向に向かうように一定の傾向が存在する。よって、四隅に形成されたトランジスタ2のON電圧の測定結果から、IGBT素子1におけるON電圧の分布状況を算出することができる。
【0028】
IGBT素子1の定格電流およびIGBT素子1の電流密度に応じて、トランジスタ2に通電する電流を設定することにより、IGBT素子1におけるON電圧を等価的に算出することも可能となる。たとえば、トランジスタ2の面積がIGBT素子1の面積の1/1000であるとする。IGBT素子1の定格電流が100Aである場合、トランジスタ2に通電する電流を0.1Aとすることにより、IGBT素子1におけるON電圧およびその分布状況を、高い精度で算出することができる。
【0029】
トランジスタ2のON電圧、およびトランジスタ2のON電圧に基づき算出されたIGBT素子1のON電圧ならびにその分布状況は、制御装置16に入力される。制御装置16は、これらの情報をモニタリングすると同時に、ヒータ12を駆動させる。ヒータ12の駆動により、半導体ウェハ10に対して所定のアニール処理(たとえば温度300℃以上)が施される。
【0030】
IGBT素子1およびトランジスタ2のライフタイムが回復(安定)する。IGBT素子1のON電圧がそれぞれ所定のON電圧となるように、制御装置16は、トランジスタ2のON電圧に基づいて、アニール処理におけるアニール処理量を制御する。アニール処理量は、温度と時間とに依存する。
【0031】
図7を参照して、アニール処理時間Tが長くなるほど、(ライフタイムの回復量が増加することにより)ON電圧VCEは低くなる。図6を再び参照して、制御装置16は、アニール処理量を制御するために、半導体ウェハ10に対するアニール処理時間を増減させるとよい。制御装置16は、アニール処理量を制御するために、裏面電極11の温度を温度センサ13により測定しつつ、裏面電極11の温度をヒータ12により昇降させてもよい。制御装置16は、アニール処理量を制御するために、アニール処理時間を増減することと裏面電極11の温度の昇降させることとの両方を実施してもよい。
【0032】
ライフタイムの回復処理は、半導体ウェハ10の面内全体に対して回復処理を施す場合と、半導体ウェハ10の所望の領域のみに対して回復処理を施する場合とで異なる。図6においては、半導体ウェハ10の全面にわたって上記の回復処理を施す態様を模式的に例示している。半導体ウェハ10の所望の領域のみに対して回復処理を施す場合には、レーザアニールなどを用いることにより、局所的にアニール処理を施すことができる。
【0033】
IGBT素子1のON電圧が、所望のON電圧に対して乖離している場合、半導体ウェハ10の面内全体に対して回復処理を施すとよい。IGBT素子1のON電圧の分布状況にバラツキがある場合、半導体ウェハ10の所望の領域のみに対して回復処理を施すとよい。ライフタイムが相対的に低い領域に対してアニール処理量を増加させることで、複数のIGBT素子1における各ON電圧のバラツキを低減することが可能となる。
【0034】
(ステップSA4)
図8を参照して、ステップSA4においては、IGBT素子1に対してプローブテストが実施される。IGBT素子1のゲート1Gに、ゲート端子6Gが接地される。IGBT素子1のエミッタ1Eに、エミッタ端子6Eが接地される。ゲート端子6Gおよびエミッタ端子6Eは、細径のプローブピンにて構成される。
【0035】
図9を参照して、半導体ウェハ10の裏面電極11(IGBT素子1のコレクタ)に、コレクタ端子6Cが接地される。各端子6G,6E,6Cは、所定の測定装置(図示せず)に接続されている。
【0036】
当該プローブテストにおいては、上述のステップSA3と同様に、エミッタ端子6Eとゲート端子6Gとの間には、IGBT素子1の定格電流に比べて低い電流が通電される。当該プローブテストにおいては、低電流時におけるIGBT素子1のON電圧、ゲートショート、耐圧、閾値電圧などの各特性が測定される。
【0037】
個々のIGBT素子1に対して、測定された各特性が所定の条件を満足しているか否か(たとえば規格値内か否か)が判断される。当該判断に基づいて、半導体ウェハ10の表面に形成された各IGBT素子1が、良品である否かが判断される。所定の条件を満足していないIGBT素子1には、機械的または電気的にマーキングが施されるとよい。マーキングにより、所定の条件を満足していないIGBT素子1を、後工程で容易に分離することができる。
【0038】
(ステップSA5〜SA7)
図10を参照して、ステップSA5においては、半導体ウェハ10が所定のスクライブラインに沿ってダイシングされる。個々のIGBT素子1(メインチップ)が得られる。
【0039】
図11を参照して、ステップSA6においては、個々のIGBT素子1に対してプローブテストが実施される。IGBT素子1のゲート1Gに、ゲート端子7Gが接地される。IGBT素子1のエミッタ1Eに、複数のエミッタ端子7Eが接地される。ゲート端子7Gおよびエミッタ端子7Eは、太径のプローブピンにて構成される。
【0040】
図12を参照して、半導体ウェハ10の裏面電極11(IGBT素子1のコレクタ)に、コレクタ端子7Cが接地される。各端子7G,7E,7Cは、所定の測定装置(図示せず)に接続されている。
【0041】
当該プローブテストにおいては、エミッタ端子7Eとゲート端子7Gとの間には、IGBT素子1の定格相当の電流が通電される。当該プローブテストにおいては、IGBT素子1のON電圧、ゲートショート、耐圧、閾値電圧などの各特性が測定される。
【0042】
個々のIGBT素子1に対して、測定された各特性が所定の条件を満足しているか否か(たとえば規格値内か否か)が判断される。当該判断に基づいて、各IGBT素子1が良品である否かが判断される。
【0043】
図13を参照して、ステップSA7においては、良品と判断された個々のIGBT素子1が、定格電流時におけるON電圧VCEの大きさに応じて分類される(たとえば、クラスA〜クラスE)。各クラスA〜Eのそれぞれにおいて、数量NのIGBT素子1が得られる。
【0044】
(作用・効果)
単体のスイッチング素子(たとえばIGBT素子1)を使用して、インバータなどの三相モータを構成する場合、IGBT素子1が並列に接続される。並列接続されたIGBT素子1の出力は合成され、当該出力は三相モータとしての駆動力に変化する。並列接続されたIGBT素子1が高い出力効率を実現するためには、個々のIGBT素子1のON電圧が揃っている必要がある。
【0045】
本実施の形態における半導体装置の製造方法によれば、ステップSA3において(図1および図4〜図6参照)、IGBT素子1のON電圧およびON電圧の分布状況がモニタリングされる。同時に、IGBT素子1およびトランジスタ2のライフタイム回復処理が施される。
【0046】
モニタリングとライフタイム回復処理とがリアルタイムで連動するように実施される。モニタリング結果に基づきライフタイム回復処理が施され、そのライフタイム回復処理の結果がモニタリングされ、ふたたびライフタイム回復処理にそのモニタリング結果が反映される。この処理が繰り返されることにより、複数のIGBT素子1に対して、高い精度で所望のON電圧を得ることができる。
【0047】
図13に示すように、本実施の形態においては、半導体ウェハ10から得られる複数のIGBT素子1の各ON電圧が、すべてクラスCとして規定されるON電圧VCEの範囲内となっている。本実施の形態によれば、高い精度でON電圧のバラツキを低減することが可能となる。
【0048】
加えて、ON電圧の測定と、ライフタイム回復処理が同時に行なわれるため、半導体装置の製造方法としての工数を削減できるという効果も得ることができる。
【0049】
なお、本実施の形態における半導体ウェハ10の表面には複数のIGBT素子1と、4つのトランジスタ2とが形成されているが、この構成に限られない。半導体ウェハの表面には、メインチップおよびセルモニタとして、他のスイッチング素子(MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、バイポーラトランジスタ、またはサイリスタ等)が形成されていてもよい。メインチップとして形成されるスイッチング素子と、セルモニタとして形成されるスイッチング素子とは、同一の構造であってもよく、異なる構造であってもよい。
【0050】
[実施の形態1の第1変形例]
図2を参照して、上述の実施の形態1における半導体ウェハ10の表面には、複数のIGBT素子1と、4つのトランジスタ2とが形成されているが、この構成に限られない。
【0051】
図14を参照して、半導体ウェハ10aのように、トランジスタ2aはIGBT素子1aと一体的に配置されていてもよい。1つのIGBT素子1aに対して、1つのトランジスタ2aが形成されている。図15を参照して、トランジスタ2a(ゲート2G(ベース)およびエミッタ2E)は、IGBT素子1aのエミッタ1E上に形成されている。なお、図15は、図14におけるXV線に囲まれる領域を示す拡大平面図である。
【0052】
上述の実施の形態1におけるステップSA3と同様にして、各トランジスタ2aのON電圧が測定される。測定結果から、各IGBT素子1aにおけるON電圧、および各IGBT素子1aにおけるON電圧の分布状況をより高い精度で算出することができる。アニール処理量がより高い精度で制御されることにより、複数のIGBT素子1aに対して、より高い精度で所望のON電圧を得ることができる。
【0053】
[実施の形態1の第2変形例]
図2を参照して、上述の実施の形態1における半導体ウェハ10の表面には、IGBT素子1とトランジスタ2とが形成されているが、この構成に限られない。
【0054】
図16を参照して、半導体ウェハ10bのように、メインチップとしてダイオード1bと、セルモニタとしてダイオード2bとが形成されていてもよい。ダイオード2bの面積は、ダイオード1bの面積よりも小さい。ダイオード2bの面積は、たとえばダイオード1bの面積の約1/1000である。
【0055】
図17および図18を参照して、ダイオード2bは、p型領域2b1と、n−型領域2b2と、n+型領域2b3とから構成されている。
【0056】
ダイオード2bのp型領域2b1にアノード端子8Aが接地される。半導体ウェハ10の裏面電極11(ダイオード2bのカソード)に、カソード端子8K(図17参照)が接地される。各端子8A,8Kは、所定の測定装置(図示せず)に接続されている。
【0057】
ダイオード2bのON電圧(順方向電圧Vf)が測定される。測定結果に基づいて、ダイオード1bのON電圧(順方向電圧Vf)および分布状況がモニタリングされる。同時に、ダイオード1bおよびダイオード2bに対して所定のアニール処理が施される。結果として、上述の実施の形態1と同様に、複数のダイオード1bに対して、高い精度で所望のON電圧(順方向電圧Vf)を得ることができる。
【0058】
[実施の形態2]
図19〜図26を参照して、本実施の形態における半導体装置の製造方法について説明する。図19を参照して、本実施の形態における半導体装置の製造方法は、ステップSB1〜SB9(それぞれ、第1ステップ〜第9ステップとも称する)を備えている。以下、ステップSB1〜SB9について順に説明する。
【0059】
(ステップSB1〜SB2)
図20を参照して、ステップSB1においては、上述の実施の形態1におけるステップSA1と同様に、所定の処理(プロセス)が完了した半導体ウェハ10が準備される。半導体ウェハ10の表面には、複数のIGBT素子1(第1半導体素子)と、4つのトランジスタ2(第2半導体素子)とが形成されている。
【0060】
図21を参照して、ステップSB2においては、上述の実施の形態1におけるステップSA2と同様に、半導体ウェハ10の表面の全体に対して、所定の照射量を有する電子線4が照射される。IGBT素子1およびトランジスタ2を構成している基板に歪が発生する。この歪が、少数キャリアの再結合中心となる。
【0061】
(ステップSB3)
図22を参照して、ステップSB3においては、半導体ウェハ10に対してアニール炉21を使用して所定のプリヒート処理を施す。処理温度はたとえば約300℃である。処理時間はたとえば約20分である。図22に示すように、アニール炉21内の基台22に、複数の半導体ウェハ10を固定して、複数の半導体ウェハ10に対して一度にプリヒート処理を施してもよい。プリヒート処理により、IGBT素子1およびトランジスタ2のライフタイムが回復(安定)する。
【0062】
(ステップSB4)
図23を参照して、ステップSB4においては、トランジスタ2のON電圧が測定される。図23においては、1つのトランジスタ2のON電圧を測定するという態様を示している。好適には、プローブピン(詳細は次述する)を4つ準備して、四隅のトランジスタ2に対して同時にON電圧を測定するとよい。
【0063】
図24を参照して、トランジスタ2のゲート2G(ベース)に、ゲート端子5Gが接地される。トランジスタ2のエミッタ2Eに、エミッタ端子5Eが接地される。ゲート端子5Gおよびエミッタ端子5Eは、細径のプローブピンにて構成される。なお、図24は、図23におけるXXIV線に囲まれる領域を示す拡大平面図である。
【0064】
図25を参照して、半導体ウェハ10の裏面電極11(トランジスタ2のコレクタ)に、コレクタ端子5Cが接地される。各端子5G,5E,5Cは、測定装置15に接続されている。トランジスタ2のON電圧を測定するとき、エミッタ端子5Eとゲート端子5Gとの間には、IGBT素子1の定格電流に比べて低い電流が通電される。
【0065】
半導体ウェハ10上に形成される複数のIGBT素子1の特性には、所定の方向に向かうように一定の傾向が存在する。よって、四隅に形成されたトランジスタ2のON電圧の測定結果から、IGBT素子1におけるON電圧の分布状況を算出することができる。
【0066】
IGBT素子1の定格電流およびIGBT素子1の電流密度に応じて、トランジスタ2に通電する電流を設定することにより、IGBT素子1におけるON電圧を等価的に算出することも可能となる。たとえば、トランジスタ2の面積がIGBT素子1の面積の1/1000であるとする。IGBT素子1の定格電流が100Aである場合、トランジスタ2に通電する電流を0.1Aとすることにより、IGBT素子1におけるON電圧およびその分布状況を、高い精度で算出することができる。
【0067】
(ステップSB5)
図26を参照して、ステップSB5においては、半導体ウェハ10に対してアニール炉21を使用して所定のアニール処理(たとえば温度300℃以上)を施す。図26に示すように、アニール炉21内の基台22に複数の半導体ウェハ10を固定して、複数の半導体ウェハ10に対して一度にアニール処理を施してもよい。
【0068】
当該アニール処理により、IGBT素子1およびトランジスタ2のライフタイムが回復(安定)する。IGBT素子1のON電圧がそれぞれ所定のON電圧となるように、ステップSB4で測定したトランジスタ2のON電圧に基づいて、アニール処理におけるアニール処理量を制御する。アニール処理量は、温度と時間とに依存する。
【0069】
アニール処理量を制御するために、半導体ウェハ10に対するアニール処理時間を増減させてもよいし、アニール温度を昇降させてもよいし、これらの両方であってもよい。
【0070】
ライフタイムの回復処理は、半導体ウェハ10の面内全体に対して回復処理を施す場合と、半導体ウェハ10の所望の領域のみに対して回復処理を施する場合とで異なる。図26においては、半導体ウェハ10の全面にわたって上記の回復処理を施す態様を例示している。半導体ウェハ10の所望の領域のみに対して回復処理を施す場合には、レーザアニールなどを用いることにより、局所的にアニール処理を施すことが可能である。
【0071】
IGBT素子1のON電圧が、所望のON電圧に対して乖離している場合、半導体ウェハ10の面内全体に対して回復処理を施すとよい。IGBT素子1のON電圧の分布状況にバラツキがある場合、半導体ウェハ10の所望の領域のみに対して回復処理を施すとよい。ライフタイムが相対的に低い領域に対してアニール処理量を増加させることで、複数のIGBT素子1における各ON電圧のバラツキを低減することが可能となる。
【0072】
(ステップSB6〜SB9)
図19を再び参照して、ステップSB6においては、上述の実施の形態1におけるステップSA4(図8および図9参照)と同様に、IGBT素子1に対してプローブテスト(低電流)が実施される。
【0073】
ステップSB7においては、上述の実施の形態1におけるステップSA5(図10参照)と同様に、半導体ウェハ10が所定のスクライブラインに沿ってダイシングされる。個々のIGBT素子1が得られる。
【0074】
ステップSB8においては、上述の実施の形態1におけるステップSA6(図11および図12参照)と同様に、個々のIGBT素子1に対してプローブテストが実施される。個々のIGBT素子1に対して、各特性が所定の条件を満足しているか否か(たとえば規格値内か否か)が判断される。
【0075】
ステップSB9においては、上述の実施の形態1におけるステップSA7(図13参照)と同様に、良品と判断された個々のIGBT素子1が、定格電流時におけるON電圧VCEの大きさに応じて分類される(たとえば、クラスA〜クラスE)。各クラスA〜Eのそれぞれにおいて、数量NのIGBT素子1が得られる。
【0076】
(作用・効果)
本実施の形態における半導体装置の製造方法によれば、ステップSB3において(図22参照)、半導体ウェハ10に対して所定のプリヒート処理が施される。プリヒート処理により、IGBT素子1およびトランジスタ2のライフタイムが回復(安定)する。ステップSB4においてトランジスタ2のON電圧を測定するとき、より高い精度の測定結果を得ることが可能となる。
【0077】
ステップSB5においてより高い精度の測定結果に基づいてアニール処理を施すことにより、複数のIGBT素子1に対してより精度の高いライフタイム回復処理を施すことが可能となる。結果として、高い精度で所望のON電圧を得ることができる。半導体ウェハ10から得られる複数のIGBT素子1に対して、高い精度でバラツキを低減することが可能となる。
【0078】
以上、本発明に基づいた各実施の形態における半導体装置の製造方法について説明したが、今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
【0079】
たとえば、実施の形態1と実施の形態2とを組み合わせることが可能である。実施の形態1と実施の形態2とを組み合わせる場合、実施の形態2におけるステップSB3(プリヒート処理)は、実施の形態1におけるステップSA2(電子線照射)と実施の形態1におけるステップSA3(モニタリングしながらライフタイム回復処理)との間において実施されるとよい。
【0080】
したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1,1a IGBT素子、1b,2b ダイオード、1E,2E エミッタ、1G,2G ゲート、2,2a トランジスタ、2b1,2b2,2b3 領域、4 電子線、5C,6C,7C コレクタ端子、5E,6E,7E エミッタ端子、5G,6G,7G ゲート端子、8A アノード端子、8K カソード端子、10,10a,10b 半導体ウェハ、11 裏面電極、12 ヒータ、13 温度センサ、14 電源、15 測定装置、16 制御装置、21 アニール炉、22 基台、N 数量、SA1〜SA7,SB1〜SB9 ステップ、T アニール処理時間、VCE ON電圧。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のON電圧を有する複数の第1半導体素子と、他の所定のON電圧を有し前記第1半導体素子よりも面積の小さい複数の第2半導体素子とが表面に形成された半導体ウェハを準備する工程と、
前記半導体ウェハの前記表面の全体に対して所定の放射線または所定のイオンを照射することによって、前記第1半導体素子および前記第2半導体素子の中に再結合中心を形成する工程と、
前記第2半導体素子の前記ON電圧を測定するとともに、前記再結合中心が形成されることによって前記第1半導体素子および前記第2半導体素子において規定されたライフタイムを、前記半導体ウェハに対して所定のアニール処理を施すことにより回復させる工程と、
を備え、
前記アニール処理におけるアニール処理量は、前記第1半導体素子の前記ライフタイムが回復しているとき、前記第1半導体素子のON電圧がそれぞれ所定のON電圧となるように、測定された前記第2半導体素子の前記ON電圧に基づいて制御される、
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
所定のON電圧を有する複数の第1半導体素子と、他の所定のON電圧を有し前記第1半導体素子よりも面積の小さい第2半導体素子とが表面に形成された半導体ウェハを準備する工程と、
前記半導体ウェハの前記表面の全体に対して所定の放射線または所定のイオンを照射することによって、前記第1半導体素子および前記第2半導体素子の中に再結合中心を形成する工程と、
複数の前記第1半導体素子において前記再結合中心が形成されることによって規定されたライフタイムを、前記半導体ウェハに対してプリヒート処理を施すことにより回復させる工程と、
前記第2半導体素子の前記ON電圧を測定する工程と、
前記ライフタイムを、複数の前記第1半導体素子に対して所定のアニール処理を施すことにより回復させる工程と、
を備え、
前記アニール処理におけるアニール処理量は、前記第1半導体素子がそれぞれ所定のON電圧となるように、測定された前記第2半導体素子の前記ON電圧に基づいて制御される、
半導体装置の製造方法。
【請求項1】
所定のON電圧を有する複数の第1半導体素子と、他の所定のON電圧を有し前記第1半導体素子よりも面積の小さい複数の第2半導体素子とが表面に形成された半導体ウェハを準備する工程と、
前記半導体ウェハの前記表面の全体に対して所定の放射線または所定のイオンを照射することによって、前記第1半導体素子および前記第2半導体素子の中に再結合中心を形成する工程と、
前記第2半導体素子の前記ON電圧を測定するとともに、前記再結合中心が形成されることによって前記第1半導体素子および前記第2半導体素子において規定されたライフタイムを、前記半導体ウェハに対して所定のアニール処理を施すことにより回復させる工程と、
を備え、
前記アニール処理におけるアニール処理量は、前記第1半導体素子の前記ライフタイムが回復しているとき、前記第1半導体素子のON電圧がそれぞれ所定のON電圧となるように、測定された前記第2半導体素子の前記ON電圧に基づいて制御される、
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
所定のON電圧を有する複数の第1半導体素子と、他の所定のON電圧を有し前記第1半導体素子よりも面積の小さい第2半導体素子とが表面に形成された半導体ウェハを準備する工程と、
前記半導体ウェハの前記表面の全体に対して所定の放射線または所定のイオンを照射することによって、前記第1半導体素子および前記第2半導体素子の中に再結合中心を形成する工程と、
複数の前記第1半導体素子において前記再結合中心が形成されることによって規定されたライフタイムを、前記半導体ウェハに対してプリヒート処理を施すことにより回復させる工程と、
前記第2半導体素子の前記ON電圧を測定する工程と、
前記ライフタイムを、複数の前記第1半導体素子に対して所定のアニール処理を施すことにより回復させる工程と、
を備え、
前記アニール処理におけるアニール処理量は、前記第1半導体素子がそれぞれ所定のON電圧となるように、測定された前記第2半導体素子の前記ON電圧に基づいて制御される、
半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2011−216764(P2011−216764A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85068(P2010−85068)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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