説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】配線容量を効果的に低減して、配線の信号遅延を効果的に防止できる半導体装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】第3の絶縁膜105に、第2の配線層を形成するためのトレンチ116と、接続層を形成するための第1のビアホール117とを形成した後に、このトレンチと第1のビアホール117の内側面にバリア108層を形成する。このバリア層108が内側面に形成されたトレンチ116及び第1のビアホール117を介して、上記第2の絶縁膜104に、第1の配線層101に達する第2のビアホール117を形成する。また、第1の配線層101の表面に形成された酸化層119を除去する。第2のビアホール117を形成する際のエッチングや、酸化層119を除去するプラズマによって、第3の絶縁膜が大幅に改質されて誘電率が大幅に増大することが、バリア層108で防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置は、高集積化とチップサイズの縮小化に伴い、配線の微細化及び多層配線化が進められている。微細化された多層配線を有する半導体装置においては、配線の信号遅延が問題になる。信号遅延は配線抵抗と配線容量の積に比例するので、信号遅延の改善には、配線抵抗や配線容量を低減することが必要である。
【0003】
半導体装置の配線抵抗の低減方法としては、配線材料に、アルミニウムに代えて、このアルミニウムよりも抵抗率が低い銅を用いる方法がある。しかし、配線材料として低抵抗な銅を用いても、多層配線においては、配線の微細化によって抵抗値が高くなり易いという問題がある。この抵抗値の問題は、特に、上層配線と下層配線との間を接続するビアホールの径が、微細化によって小さくなる場合に顕著である。このビアホールにおける抵抗値の上昇は、ビアホール底部に形成されて銅よりも高い抵抗率を有するバリアメタルと、下層配線の表面に形成される酸化層とに起因する。このビアホール抵抗値の問題を解決する方法として、従来、ビアホール底部のバリアメタルをArスパッタリング法により取り除く方法(特開2001−284449号公報:特許文献1参照)や、下層配線の表面の酸化層を水素プラズマ処理により還元する方法(特開2001−118846号公報:特許文献2参照)がある。
【0004】
また、半導体装置の配線容量を低減する方法としては、絶縁膜に、比誘電率が4程度のシリコン酸化膜に代えて、このシリコン酸化膜よりも低い比誘電率を有する低誘電率膜を用いる方法がある。
【0005】
しかしながら、上記従来の半導体装置は、上層配線と下層配線との間の絶縁膜に低誘電率膜を用いたとしても、この絶縁膜に上層配線を形成するためのトレンチやビアホールを形成する際のエッチングや、ビアホールの底のバリアメタルを除去する際のスパッタリングや、下層配線の表面の酸化層を除去する際のプラズマ処理によって、絶縁膜が改質されて、誘電率が上昇する。したがって、絶縁膜の配線容量の低減効果が減殺されて、多層配線に信号遅延が生じてしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2001−284449号公報
【特許文献2】特開2001−118846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の課題は、配線容量を効果的に低減して、配線の信号遅延を効果的に防止できる半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の半導体装置は、第1の絶縁膜に第1の配線材料が埋め込まれて形成された第1の配線層と、
上記第1の配線層上に形成され、上記第1の配線材料の拡散を防止する第2の絶縁膜と、
上記第2の絶縁膜上に形成され、低誘電率材料で形成された第3の絶縁膜と、
上記第3の絶縁膜に形成されたトレンチ内に第2の配線材料が埋め込まれて形成された第2の配線層と、
上記3の絶縁膜の上記トレンチの底面よりも第2の絶縁膜側の部分と、上記第2絶縁膜とを貫通し、上記第2の配線材料が埋め込まれて、上記第1の配線層と第2の配線層とを接続するビアホールと、
上記第3の絶縁膜に形成されたトレンチの側面及び底面と、上記ビアホールの上記第3の絶縁膜に形成された部分の側面とを被覆するバリア層と
を備えることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、上記バリア層は、上記第3の絶縁膜に、上記トレンチと上記ビアホールの部分を形成した後、このトレンチの側面及び底面と上記ビアホールの側面とに形成される。このバリア層が内側面に形成されたトレンチ及びビアホールの部分を介して、上記第2の絶縁膜にビアホールの他の部分を形成することができる。したがって、上記ビアホールの他の部分を例えばエッチングで形成する際、エッチャントが第3の絶縁膜に接触することを、上記バリア層によって防止できる。その結果、上記第3の絶縁膜が大幅に改質されて誘電率が大幅に増大することを防止できる。
【0009】
また、上記第2の絶縁膜にビアホールの部分を形成する際、このビアホールを形成するための例えばエッチング処理によって、このビアホールの底面に露出した上記第1の配線層の表面部分に酸化層が形成される場合がある。この場合においても、上記酸化層を除去するための例えばプラズマ処理を、上記バリア層が内側面に形成されたトレンチとビアホールを介して行うことができる。したがって、プラズマ処理によって第3の絶縁膜が大幅に改質されて誘電率が大幅に増大することを防止できる。また、上記第2の絶縁膜のビアホールの底と、上記第1の配線層の表面との間には、バリア層が存在しないので、バリア層によって配線抵抗が増大することが無い。
【0010】
このように、本発明の半導体装置は、上記第3の絶縁膜における誘電率の上昇を防止できる上に、上記ビアホールの底における第2の配線材料と第1の配線層との接触部分の配線抵抗の増大を防止できる。その結果、第1の配線層と第2の配線層との間に伝達される信号の遅延を効果的に防止できる。
【0011】
一実施形態の半導体装置は、上記第3の絶縁膜の上記バリア層に接する近傍の部分に、この第3の絶縁膜の他の領域が有する誘電率に対して10%以下の割合で増大した誘電率を有する誘電率増加領域が形成されている。
【0012】
上記実施形態によれば、上記バリア層の存在の下、上記第2の絶縁膜にビアホールの他の部分が形成されることにより、上記第3の絶縁膜に形成される誘電率増加領域の誘電率が、この第3の絶縁膜の他の領域が有する誘電率に対して10%以下の増大割合に抑えられる。これにより、上記第3の絶縁膜内に形成される第2の配線層とビアホールの一部に関して、上記第3の絶縁膜による配線容量の低減効果を奏することができるので、信号遅延の防止を効果的に行うことができる。
【0013】
一実施形態の半導体装置は、上記第2の配線材料は、銅または銅合金である。
【0014】
上記実施形態によれば、上記トレンチ及びビアホール内を銅または銅合金で埋め込むことにより、第1の配線層と第2の配線層との間の配線抵抗を低減できる。
【0015】
一実施形態の半導体装置は、上記第3の絶縁膜は、比誘電率が1以上4以下の低誘電率材料で形成されている。
【0016】
上記実施形態によれば、上記第3の絶縁膜中に形成される第2の配線層と、上記第3の絶縁膜のビアホール内の第2の配線材料について、配線容量を効果的に低減できる。
【0017】
一実施形態の半導体装置は、上記バリア層は、Ti、Ta、W及びRuのうちの少なくとも1つ、又は、その窒素化合物を含む。
【0018】
上記実施形態によれば、上記第3の絶縁膜のトレンチ及びビアホールの一部に埋め込まれる第2の配線材料が、この第3の絶縁膜中に拡散することを、効果的に防止できる。
【0019】
本発明の半導体装置の製造方法は、第1の絶縁膜に第1の配線材料が埋め込まれて形成された第1の配線層上に、上記第1の配線材料の拡散を防止する第2の絶縁膜を形成する工程と、
上記第2の絶縁膜上に、低誘電率材料で形成された第3の絶縁膜を形成する工程と、
上記第3の絶縁膜の表面部分に位置するトレンチと、上記トレンチの底面から、このトレンチの底面よりも第2の絶縁膜側に位置する第3の絶縁膜の部分を貫通して、上記第2の絶縁膜の表面に達する第1のビアホールとを形成する工程と、
上記トレンチの側面及び底面と、上記第1のビアホールの側面に、バリア層を形成する工程と、
上記第1のビアホールの底面から、上記第2の絶縁膜を貫通して、上記第1の配線層の表面に達する第2のビアホールを形成する工程と、
上記第2のビアホールの底に露出した第1の配線層の表面部分を除去する工程と、
上記トレンチ、第1のビアホール及び第2のビアホール内に第2の配線材料を埋め込む工程と
を備えることを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、上記第1の絶縁膜に形成された第1の配線層上に、上記第2の絶縁膜が形成され、この第2の絶縁膜上に、第3の絶縁膜が形成される。この第3の絶縁膜の表面部分に、トレンチが形成される。また、このトレンチの底面から、このトレンチの底面よりも第2の絶縁膜側に位置する第3の絶縁膜の部分を貫通して、上記第2の絶縁膜の表面に達する第1のビアホールが形成される。このトレンチと第1のビアホールとの形成順序は、いずれが先であってもよい。上記トレンチの側面及び底面と、上記第1のビアホールの側面に、バリア層が形成される。上記第1のビアホールの底面から、上記第2の絶縁膜を貫通して、上記第1の配線層の表面に達する第2のビアホールが形成される。この第2のビアホールは、上記トレンチ及び第1のビアホールを介して、例えばエッチングによって形成される。このとき、上記トレンチ及び第1のビアホールの内側面に形成されたバリア層によって、上記第3の絶縁膜がエッチャントに接触することが防止される。これにより、上記第3の絶縁膜が大幅に改質されて、誘電率が大幅に増大することが防止される。
【0021】
上記第2のビアホールが形成される際、この第2のビアホールの底に露出した第1の配線層の表面に、例えば酸化層が形成される。この酸化層は、上記第1の配線層の表面部分の除去工程によって除去される。これにより、この第1の配線層と、上記第2のビアホール内に埋め込まれる第2の配線材料との間において、配線抵抗が増大することが防止される。
【0022】
また、上記第1の配線層の表面部分の除去は、上記トレンチ及び第1のビアホールを介して、例えばプラズマ処理によって行うことができる。この場合においても、上記トレンチと第1のビアホールの内側面に形成されたバリア層によって、上記第3の絶縁体がプラズマで大幅に改質されて誘電率が大幅に上昇することが防止される。
【0023】
また、上記第2のビアホール内に埋め込まれる第2の配線材料と、上記第1の配線層との間には、バリア層が形成されないので、バリア層によって配線抵抗が増大することが無い。
【0024】
このように、本発明の半導体装置の製造方法によれば、上記接続層と第1の配線層との間における配線抵抗の増大が防止でき、かつ、上記第3の絶縁膜の大幅な改質による誘電率の上昇が防止できる半導体装置が製造される。したがって、第1の配線層と第2の配線層との間に伝達される信号の遅延を効果的に防止できる半導体装置が得られる。
【0025】
一実施形態の半導体装置の製造方法は、上記第2の配線材料は、銅または銅合金である。
【0026】
上記実施形態によれば、銅または銅合金によって、トレンチと第1及び第2のビアホール内を埋め込むことにより、第1の配線層と第2の配線層との間の配線抵抗を効果的に低減できる。
【0027】
一実施形態の半導体装置の製造方法は、上記第3の絶縁膜は、比誘電率が1以上4以下の低誘電率材料で形成されている。
【0028】
上記実施形態によれば、上記第3の絶縁膜中に形成される第2の配線層と、上記第1ビアホール内の第2の配線材料とに対して、配線容量を効果的に低減できる。
【0029】
一実施形態の半導体装置の製造方法は、上記バリア層は、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、W(タングステン)及びRu(ルテニウム)のうちの少なくとも1つ、又は、その窒素化合物を含む。
【0030】
上記実施形態によれば、上記第3の絶縁膜中のトレンチ及び第1のビアホール内に埋め込まれる第2の配線材料が、この第3の絶縁膜中に拡散することを効果的に防止できる。
【0031】
一実施形態の半導体装置の製造方法は、上記バリア層を形成する工程は、上記トレンチ及び第1のビアホールの内側面に、スパッタリングによってバリア層の材料を堆積すると共に、上記第1のビアホールの底面に堆積したバリア層の材料をArスパッタ法によって除去する。
【0032】
上記実施形態によれば、少ない工程により、上記第1のビアホールの底面にはバリア層を形成しないで、上記トレンチの側面及び底面と、上記第1のビアホールの側面とにバリア層を形成することができる。
【0033】
一実施形態の半導体装置の製造方法は、上記第2のビアホールを形成する工程は、プラズマエッチング法によって、上記第1のビアホールの底面から第2の絶縁膜の部分を除去する。
【0034】
上記実施形態によれば、プラズマエッチング法は、上記バリア層が内側面に形成されたトレンチ及び第1のビアホールを介して行われるので、上記第3の絶縁膜の大幅な改質を防止して誘電率が大幅に上昇することを防止できる。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、本発明の半導体装置は、第3の絶縁膜に形成されたトレンチの底面及び側面と、上記ビアホールの上記第3の絶縁膜に形成された部分の側面とを被覆するバリア層を備えるので、このバリア層によって第3の絶縁膜を保護した状態で、上記トレンチ及びビアホールの部分を介して、例えばエッチング処理によって第2の絶縁膜にビアホールの他の部分を形成し、また、例えばプラズマ処理によって第1の配線層の表面部分の除去を行うことができる。したがって、上記第3の絶縁膜の大幅な改質を防止できて、誘電率が大幅に増大することを防止できて、半導体装置における信号遅延を効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明の実施形態の半導体装置を示す図である。この半導体装置は、第1の絶縁膜100を備え、この第1の絶縁膜100の表面部分に第1の配線層101が埋め込まれている。この第1の配線層101は、例えば、上記第1の絶縁膜100にトレンチを形成し、このトレンチの内側面を第1のバリアメタル102で被覆して、このトレンチ内に第1の配線材料を充填して形成されている。
【0038】
上記第1の絶縁膜100の表面であって、上記第1の配線層101の表面に、上記第1の配線材料の拡散を防止する第2の絶縁膜104が積層されている。この第2の絶縁膜104は、SiCで形成されている。なお、SiC以外に、例えばSiNや、SiCにNを添加してなるSiCNを用いて第2の絶縁膜を形成してもよい。この第2の絶縁膜104上に、低誘電率材料であるSiOCで形成された第3の絶縁膜105が積層されている。なお、SiOC以外に、例えばSiOFで第3の絶縁膜を形成してもよい。
【0039】
上記第3の絶縁膜105の表面部分には、第2の配線層107が埋め込まれている。この第2の配線層107は、第3の絶縁膜105に形成されたトレンチの側面及び底面に、バリア層としての第2のバリアメタル108を被覆し、この第2のバリアメタル108が被覆されたトレンチ内に、第2の配線材料が埋め込まれて形成されている。この第2の配線層107と第1の配線層101との間に、接続層112が形成されている。この接続層112は、上記第2の配線層107が形成されたトレンチの底面から第3の絶縁膜105の部分を貫通し、さらに、上記第2の絶縁膜104を貫通するビアホール内に形成されている。上記接続層112は、上記第2の配線材料によって第2の配線層107と一体に形成されている。この接続層112の側面には、上記第2の配線層107に接する第2のバリアメタル108が延在して接している。この第2のバリアメタル108は、上記ビアホールが第3の絶縁膜105を貫通する部分に設けられているが、上記ビアホールが第2の絶縁膜104を貫通する部分には設けられていない。したがって、上記接続層112は、上記第2の絶縁膜104に接している。上記第3の絶縁膜105の第2のバリアメタル108に接する部分の近傍に、誘電率増加領域114が形成されている。この誘電率増加領域114は、上記第3の絶縁膜105の他の領域の誘電率よりも最大で約10%大きい誘電率を有する。
【0040】
本実施形態の半導体装置は、以下のようにして製造する。
【0041】
まず、図2に示すように、第1の絶縁膜100の表面部分にトレンチを形成し、このトレンチの内側面に第1のバリアメタル102を被覆し、この第1のバリアメタル102が被覆されたトレンチ内に第1の配線材料を埋め込んで、第1の配線層101を形成する。この第1の配線層101が形成された第1の絶縁膜100上に、第2の絶縁膜104と第3の絶縁膜105を堆積する。上記第2の絶縁膜104は、例えば、50nm程度の厚みを有するSiC膜で形成する。また、上記第3の絶縁膜105は、例えば、600nm程度の厚みを有するSiOC膜(比誘電率が約2.9)又はSiOF膜(比誘電率が約3.7)で形成する。なお、この第3の絶縁膜の膜厚105は、300以上700nm以下の範囲で適宜設定できる。
【0042】
次に、図3に示すように、公知のフォト及びエッチング技術により、第3の絶縁膜105の表面部分にトレンチ116を形成し、更に、このトレンチ116の底から第2の絶縁膜104の表面に達する第1のビアホール117を形成する。上記トレンチ116の深さは、例えば、上記第3の絶縁膜105の表面から400nm程度に設定できる。また、上記第1のビアホール117の深さは、例えば、上記トレンチ116の底面から200nm程度に設定できる。このとき、上記第3の絶縁膜105の表面部分と、上記トレンチ116の側面及び底面の近傍部分と、上記第1のビアホール117の側面の近傍部分に、誘電率増加領域114が形成される。この誘電率増加領域114は、上記トレンチ116及び第1のビアホール117を形成するエッチング工程や、レジスト膜の除去のために行われるプラズマ工程により、第3の絶縁膜105が改質されて形成される。しかしながら、この誘電率増加領域114における誘電率の上昇の割合は、もとの第3の絶縁膜105に対して約10%以下と、比較的少ない。
【0043】
次に、図4に示すように、第3の絶縁膜105に形成されたトレンチ116及び第1のビアホール117の内側面を被覆するように、第2のバリアメタル108を堆積する。これと共に、第1のビアホール117の底部に堆積されるバリアメタル材料を除去して、この第1のビアホール117の底に第2の絶縁膜104を露出させる。上記第2のバリアメタル108は、例えばTaNを反応性スパッタリング法によって厚さ30nm程度に堆積して形成する。また、上記第1のビアホール117の底部に堆積されるバリアメタル材料は、Arスパッタリング法によって除去する。このArスパッタリング法では、高周波バイアスを印加して直進性を高めたArプラズマを用いて、第1のビアホール117の底部に堆積したTaNをスパッタエッチングする。上記反応性スパッタリング法によって第1のビアホール117の底部に堆積されるTaNの膜厚は、第3の絶縁膜105の表面やトレンチ116の底部に堆積されるTaNの膜厚よりも薄い。したがって、上記Arスパッタリング法によって第1のビアホール117の底部のTaNが除去されても、第3の絶縁膜105の表面やトレンチ116の底面にはTaN膜が残る。なお、上記第2のバリアメタル108には、TaN以外に、Ti、Ta、W及びRuのうちのいずれか1つの金属、又は、その窒素化合物を用いてもよい。
【0044】
次に、図5に示すように、第1のビアホール117の底に露出した第2の絶縁膜104に、上記第1のビアホール117に連なる第2のビアホール118を形成する。この第2のビアホール118は、上記第1のビアホール117の底面から、上記第1の配線層101の表面に達する深さに形成する。この第2のビアホール118は、リアクティブイオンエッチング法によって、第1のビアホール117を介して、この第1のビアホール117の底面に露出した第2の絶縁膜104の部分を除去して形成する。なお、上記第1の配線層101の表面を露出させる際に、ケミカルエッチングを併用してもよい。
【0045】
上記リアクティブイオンエッチング法によって第2のビアホール118を形成する際、低誘電率の第3の絶縁膜105に形成されたトレンチ116及び第1のビアホール117の内側面は、第2のバリアメタル108で覆われているので、プラズマに曝されることによる誘電率の上昇が効果的に防止される。
【0046】
続いて、図6に示すように、第2のビアホール118の底面に露出した第1の配線層101の表面部分に形成された酸化層119を除去する。この第1の配線層101の酸化層119は、例えば、Hプラズマ処理で還元することによって除去する。このとき、低誘電率の第3の絶縁膜105に形成されたトレンチ116及び第1のビアホール117の内側面は、第2のバリアメタル108で覆われているので、Hプラズマ処理による誘電率の上昇が効果的に防止される。なお、上記第3の絶縁膜105が、従来の製造工程におけるように第2のバリアメタル108で覆われていない場合、Hプラズマ処理による誘電率の上昇率は20〜30%になって、配線容量が大幅に増大してしまう。
【0047】
続いて、図7に示すように、トレンチ116内と、第1及び第2のビアホール117,118内に、金属配線材料120を充填する。詳しくは、例えば、上記第2のビアホール118の底部に、電解メッキ用電極銅シード層をスパッタリング法によって100nmの厚みに堆積した後、この電極銅シード層上に、銅電解メッキ法で銅を600nmの厚みに堆積する。この銅の堆積は、第3の絶縁膜105の表面に形成された第2のバリアメタル108を覆うまで行う。
【0048】
最後に、図8に示すように、第3の絶縁膜105の表面部分の誘電率増加領域114と、第3の絶縁膜105の表面に形成された余剰の第2のバリアメタル108及び配線材料120を、CMP(化学機械研磨)法によって除去する。これにより、第3の絶縁膜105中に第2の配線層107が形成されると共に、上記第3及び第2の絶縁膜105,104中に接続層112が形成される。
【0049】
以上のようにして製造された半導体装置について、第3の絶縁膜105の第2のバリアメタル108が接する面(トレンチ116の側面及び底面と、第1ビアホール117の側面)の近傍部分に形成される誘電率増加領域114は、第3の絶縁膜105の他の領域の誘電率に対して、誘電率の上昇の割合が10%以下である。したがって、上記第2のバリアメタル108を隔てて誘電率増加領域114に隣接する第2の配線層107及び接続層112は、配線容量の増大が効果的に防止される。また、上記接続層112の底と第1の配線層101の表面との間には、バリアメタルが存在しないので、接続層112と第1の配線層101との間の配線抵抗の増大を防止できる。その結果、この半導体装置は、上記第1の配線層101、接続層112、及び、第2の配線層107を伝達される信号に対して、信号遅延を効果的に防止することができる。
【0050】
なお、上記バリア層としての第2のバリアメタル108は、TaNで形成したが、金属以外の材料を用いて形成されたバリア層であってもよい。要は、第2の配線材料の第3の絶縁膜105への拡散を防止でき、かつ、第2の絶縁膜104のエッチング及び酸化層119のプラズマ処理の際に第3の絶縁膜105の大幅な改質を防止することができれば、どのような材料を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態の半導体装置を示す図である。
【図2】第1の配線層が形成された第1の絶縁膜上に、第2の絶縁膜と第3の絶縁膜を形成した様子を示す図である。
【図3】第3の絶縁膜に、トレンチ及びビアホールを形成した様子を示す図である。
【図4】トレンチ及びビアホールの内側面にバリアメタルを形成した様子を示す図である。
【図5】第3の絶縁膜に形成された第1のビアホールに連なる第2のビアホールを、第2の絶縁膜に形成した様子を示す図である。
【図6】第1の配線層の表面に形成された酸化層を除去した様子を示す図である。
【図7】トレンチと、第1及び第2のビアホール内に金属配線材料を充填した様子を示す図である。
【図8】第3の絶縁膜の表面部分の誘電率増加領域と、余剰のバリアメタル及び配線材料とを除去した様子を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
100 第1の絶縁膜
101 第1の配線層
102 バリアメタル
104 第2の絶縁膜
105 第3の絶縁膜
107 第2の配線層
108 第2のバリアメタル
112 接続層
115 第3の絶縁膜
116 トレンチ
117 第1のビアホール
118 第2のビアホール
119 酸化層
120 金属配線材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁膜に第1の配線材料が埋め込まれて形成された第1の配線層と、
上記第1の配線層上に形成され、上記第1の配線材料の拡散を防止する第2の絶縁膜と、
上記第2の絶縁膜上に形成され、低誘電率材料で形成された第3の絶縁膜と、
上記第3の絶縁膜に形成されたトレンチ内に第2の配線材料が埋め込まれて形成された第2の配線層と、
上記3の絶縁膜の上記トレンチの底面よりも第2の絶縁膜側の部分と、上記第2絶縁膜とを貫通し、上記第2の配線材料が埋め込まれて、上記第1の配線層と第2の配線層とを接続するビアホールと、
上記第3の絶縁膜に形成されたトレンチの側面及び底面と、上記ビアホールの上記第3の絶縁膜に形成された部分の側面とを被覆するバリア層と
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
上記第3の絶縁膜の上記バリア層に接する近傍の部分に、この第3の絶縁膜の他の領域が有する誘電率に対して10%以下の割合で増大した誘電率を有する誘電率増加領域が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
上記第2の配線材料は、銅または銅合金であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
上記第3の絶縁膜は、比誘電率が1以上4以下の低誘電率材料で形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
上記バリア層は、Ti、Ta、W及びRuのうちの少なくとも1つ、又は、その窒素化合物を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
第1の絶縁膜に第1の配線材料が埋め込まれて形成された第1の配線層上に、上記第1の配線材料の拡散を防止する第2の絶縁膜を形成する工程と、
上記第2の絶縁膜上に、低誘電率材料で形成された第3の絶縁膜を形成する工程と、
上記第3の絶縁膜の表面部分に位置するトレンチと、上記トレンチの底面から、このトレンチの底面よりも第2の絶縁膜側に位置する第3の絶縁膜の部分を貫通して、上記第2の絶縁膜の表面に達する第1のビアホールとを形成する工程と、
上記トレンチの側面及び底面と、上記第1のビアホールの側面に、バリア層を形成する工程と、
上記第1のビアホールの底面から、上記第2の絶縁膜を貫通して、上記第1の配線層の表面に達する第2のビアホールを形成する工程と、
上記第2のビアホールの底に露出した第1の配線層の表面部分を除去する工程と、
上記トレンチ、第1のビアホール及び第2のビアホール内に第2の配線材料を埋め込む工程と
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
上記第2の配線材料は、銅又は銅合金であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
上記第3の絶縁膜は、比誘電率が1以上4以下の低誘電率材料で形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
上記バリア層は、Ti、Ta、W及びRuのうちの少なくとも1つ、又は、その窒素化合物を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
上記バリア層を形成する工程は、上記トレンチ及び第1のビアホールの内側面に、スパッタリングによってバリア層の材料を堆積すると共に、上記第1のビアホールの底面に堆積したバリア層の材料をArスパッタ法によって除去することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項6に記載の半導体装置の製造方法において、
上記第2のビアホールを形成する工程は、プラズマエッチング法によって、上記第1のビアホールの底面から第2の絶縁膜の部分を除去することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−134567(P2007−134567A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327453(P2005−327453)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】