説明

半導体装置及び半導体装置の製造方法

【課題】IGBTのESD耐性を高くしつつ、IGBTのバイポーラトランジスタを確実に動作させる。
【解決手段】シンカー層115は第1導電型ウェル102に接しており、かつ第1導電型コレクタ層108及び第2導電型ドリフト層104から離れている。シンカー層115の表層には、第2導電型拡散層(第2の第2導電型高濃度拡散層)116が形成されている。第2導電型拡散層116はシンカー層115より不純物濃度が高い。第2導電型拡散層116と第1導電型コレクタ層108は、素子分離絶縁膜16を介して互いに分離している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を有する半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ESD(Electrostatic Discharge)耐量を大きくしたIGBTを有する半導体装置の構造の一例としては、例えば特許文献1に記載されている構造がある。この構造は、図6に示すように、LDNMOS(Lateral Double-diffused NMOS transistor)のドレイン拡散層を逆導電型に置き換え、かつn拡散層433をコレクタとして機能するp拡散層432にショートする位置に設け、かつn拡散層433とp拡散層432とをコレクタ電極434で短絡したものである。すなわちp基板400の中にエミッタとなるn拡散層410とバックゲートとなるp拡散層412とを互いに並べて配置し、これらを共通のエミッタ電極に接続する。またp基板400の中には、nドリフト層430、コレクタとなるp拡散層432、及びn拡散層433が設けられている。p拡散層432及びn拡散層433にはコレクタ電極434が接続されている。
【0003】
この構造では、p拡散層432に縦型PNPバイポーラトランジスタが付加されるため、電流がある程度縦方向に流れるようになり、ESD耐量が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−211771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし図6に示した半導体装置では、n拡散層433がp拡散層432に隣接配置されているため、IGBTを構成するPNPバイポーラトランジスタが動作しにくくなる。詳細には、このバイポーラトランジスタが動作するには、p拡散層432の下に位置するnドリフト層430の抵抗Rと、nドリフト層430を通る電子電流Iの積が、p拡散層432とnドリフト層430で構成されるpnダイオードのビルトインポテンシャル(例えば約0.7V)以上になる必要がある。しかし図6に示した構造ではn拡散層433がp拡散層432に隣接配置されているためにRが小さくなり、その積がビルトインポテンシャルを超えにくくなる。この場合、IGBTではバイポーラトランジスタは動作しにくくなり、また場合によってはMOSトランジスタのみの動作となる。このため、飽和電流が著しく低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、表層に第1導電型半導体層を有する基板と、
前記第1導電型半導体層の表層に形成され、前記第1導電型半導体層よりも不純物濃度が高い、第1の第1導電型高濃度拡散層と、
前記第1導電型半導体層の表層に形成され、前記第1の第1導電型高濃度拡散層に接している第1の第2導電型高濃度拡散層と、
前記第1導電型半導体層の表層に形成され、前記第1の第2導電型高濃度拡散層より不純物濃度が低い第2導電型低濃度ドリフト層と、
前記第1の第2導電型高濃度拡散層と前記第2導電型低濃度ドリフト層との間の前記第1導電型半導体層の表面と、前記第2導電型低濃度ドリフト層の一部とを覆うように形成されるゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されるゲート電極と、
前記第2導電型低濃度ドリフト層の表層に形成される第2の第1導電型高濃度拡散層と、
前記第1導電型半導体層の表層に一部が少なくとも形成され、前記第2導電型低濃度ドリフト層及び前記第2の第1導電型高濃度拡散層のいずれからも離れている第2導電型シンカー層と、
前記第2導電型シンカー層の表層に形成される第2の第2導電型高濃度拡散層と、
前記第1導電型半導体層の上に形成され、前記第2の第1導電型高濃度拡散層と前記第2の第2導電型高濃度拡散層とを接続する配線と、
を備える半導体装置が提供される。
【0007】
本発明によれば、第1導電型高濃度拡散層がIGBTを構成するバイポーラトランジスタのコレクタとして機能する。また第1導電型高濃度拡散層、第2導電型低濃度ドリフト層、及び第1導電型半導体層によってバイポーラトランジスタが形成される。このため半導体装置は高いESD耐性を得ることができる。
【0008】
一方、第1導電型高濃度拡散層と第2導電型シンカー層は、配線を介してショートしている。また第2導電型低濃度ドリフト層と第2導電型シンカー層は互いに分離している。このため、第2導電型低濃度ドリフト層はフローティング状態となる。従って、第1導電型高濃度拡散層に、第1導電型高濃度拡散層と第2導電型低濃度ドリフト層とで構成されるダイオード(例えばPNダイオード)のビルトインポテンシャル(例えば0.7V)分だけ電圧を印加しさえすれば、このダイオードはオン状態になる。このため、IGBTのバイポーラトランジスタが確実に動作する。
【0009】
本発明によれば、表層に第1導電型半導体層を有する基板に、前記第1導電型半導体層の表層の一部に位置する第2導電型低濃度ドリフト層を形成する工程と、
第2導電型低濃度ドリフト層の一部、及び前記第1導電型半導体層のうち前記第2導電型低濃度ドリフト層以外の部分の表層の一部とからなるゲート形成領域に、ゲート絶縁膜及び前記ゲート絶縁膜上に位置するゲート電極を形成する工程と、
平面視でゲート電極を介して前記第2導電型低濃度ドリフト層と対向する前記第1導電型半導体層の表層に、前記第2導電型低濃度ドリフト層より不純物濃度が高い、第1の第2導電型高濃度拡散層を形成する工程と、
前記第1導電型半導体層の表層に、前記第1導電型半導体層より不純物濃度が高い第1の第1導電型高濃度拡散層を、前記第1の第2導電型高濃度拡散層に接して形成する、第1の第1導電型高濃度拡散層形成工程と、
前記第2導電型低濃度ドリフト層の表層に第2の第1導電型高濃度拡散層を形成する工程と、
前記第1導電型半導体層内に第2導電型シンカー層を、前記第2導電型低濃度ドリフト層及び前記第2の第1導電型高濃度拡散層のいずれからも離れている位置に形成する工程と、
前記第2導電型シンカー層の表層に第2の第2導電型高濃度拡散層を形成する工程と、前記第1導電型半導体層上に、前記第2の第2導電型高濃度拡散層と前記第2の第1導電型高濃度拡散層とを接続する配線を形成する工程と、を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、IGBTのESD耐性を高くしつつ、IGBTを構成するバイポーラトランジスタ(例えばPNPバイポーラトランジスタ)の動作を確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】各図は第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図2】(a)は図1(d)から層間絶縁膜200、各コンタクト、及び各配線を省略した図であり、(b)は図1(d)に示した半導体装置の素子分離絶縁膜と各拡散層のレイアウトを示す平面図である。
【図3】本実施形態の効果を示すグラフである。
【図4】比較例に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図6】先行技術文献に開示されている半導体装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
図1の各図は、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。これらの図のうち図1(d)は、この半導体装置の製造方法により製造される半導体装置の断面図を示している。
【0014】
図1(d)に示した半導体装置は、基板10、第1導電型半導体層(第1導電型ウェル)102、第2導電型低濃度ドリフト層(第2導電型ドリフト層)104、第1の第2導電型高濃度拡散層(第2導電型エミッタ層)106、第2の第1導電型高濃度拡散層(第1導電型コレクタ層)108、第1の第1導電型高濃度拡散層(第1導電型ウェル引出用拡散層)107、ゲート絶縁膜110、ゲート電極112、シンカー層115、及び配線220を備えている。
【0015】
基板は表面が第1導電型、例えばp型の半導体層となっている。第1導電型ウェル102は基板10の表層に形成されている。第2導電型ドリフト層104は、第2導電型、たとえばn型である。第2導電型ドリフト層104は第1導電型ウェル102の表層に形成されており、第1導電型ウェル102から離れている。第2導電型エミッタ層106は、第1導電型ウェル102の表層に形成され、平面視で第2導電型ドリフト層104から離れており、かつ第2導電型ドリフト層104より不純物濃度が高い。第1導電型ウェル引出用拡散層107は第1導電型ウェル102の表層に形成されており、第1導電型ウェル102より不純物濃度が高く、第2導電型エミッタ層106に接続している。第1導電型コレクタ層108は、第2導電型ドリフト層104の表層に形成されており、第1導電型ウェル102より不純物濃度が高い。ゲート絶縁膜110は、第2導電型ドリフト層104の一部上、及び第1導電型ウェル102のうち第2導電型ドリフト層104と第2導電型エミッタ層106の間に位置する領域上に形成されている。ゲート電極112はゲート絶縁膜110上に形成されている。シンカー層115は基板に形成された第2導電型の拡散層であり、その不純物濃度は第2導電型ドリフト層104より高い。シンカー層115は、第1導電型ウェル102に接しており、かつ第2導電型ドリフト層104及び第1導電型コレクタ層108のいずれからも離れている。配線220は基板10上に形成されており、シンカー層115に接続している。
【0016】
シンカー層115の表層には、第2導電型拡散層(第2の第2導電型高濃度拡散層)116が形成されている。第2導電型拡散層116はシンカー層115より不純物濃度が高い。エピタキシャル層14の表層には素子分離絶縁膜16が形成されている。第2導電型拡散層116と第1導電型コレクタ層108の間には素子分離絶縁膜16が位置している。すなわち第2導電型拡散層116と第1導電型コレクタ層108は、素子分離絶縁膜16によって互いに分離されている。
【0017】
なお素子分離絶縁膜16は第1導電型コレクタ層108と第2導電型エミッタ層106の間にも位置している。ゲート電極112の一部は、この部分に位置する素子分離絶縁膜16の上にも位置している。ただし素子分離絶縁膜16と第2導電型エミッタ層106は互いに離れている。
【0018】
基板10上には層間絶縁膜200が形成されている。配線220は層間絶縁膜200の上に形成されている。配線220は、層間絶縁膜200に埋め込まれたコンタクト211を介して第2導電型拡散層116に接続している。詳細には、第2導電型拡散層116の表面には電極が形成され、その電極とコンタクト211が電気的に接続されている。また配線220は、層間絶縁膜200に埋め込まれたコンタクト212を介して第1導電型コレクタ層108にも接続している。詳細には、第1導電型コレクタ層108の表面には電極が形成され、その電極とコンタクト212が電気的に接続されている。すなわち第1導電型コレクタ層108と第2導電型拡散層116(すなわちシンカー層115)は、コンタクト212、配線220、及びコンタクト211を介して互いに接続している。
【0019】
本実施形態において半導体装置は第2導電型埋込層114を備えている。第2導電型埋込層114はシンカー層115及び第1導電型ウェル102それぞれの下に形成され、シンカー層115及び第1導電型ウェル102それぞれに接続している。第2導電型埋込層114の不純物濃度は第1導電型ウェル102より高い。すなわち第1導電型ウェル102は、シンカー層115及び第2導電型埋込層114によって側面及び底面が囲まれている。
【0020】
基板10は、シリコン基板などの第1導電型の半導体基板12上に第1導電型のエピタキシャル層14をエピタキシャル成長させたものである。第2導電型埋込層114は、基板10の厚さ方向で見た場合に、半導体基板12からエピタキシャル層14に渡って形成されている。
【0021】
第1導電型ウェル引出用拡散層107は第2導電型エミッタ層106に隣接している。第1導電型ウェル引出用拡散層107と第2導電型エミッタ層106は、これらの表層に形成されたシリサイド層109を介して互いに接続している。シリサイド層109は、層間絶縁膜200に埋め込まれたコンタクト213を介して、層間絶縁膜200の表層に形成された配線222に接続している。
【0022】
また層間絶縁膜200にはコンタクト214が埋め込まれている。コンタクト214は、層間絶縁膜200の表層に形成された配線224をゲート電極112に接続している。ゲート電極112の側壁にはサイドウォールが形成されている。
【0023】
なお第2導電型ドリフト層104及び第1導電型コレクタ層108は、第1導電型ウェル102の中に2組形成されている。すなわち第1導電型ウェル102の中には2つのIGBTが形成されている。これら2つのIGBTは、一組の第1導電型ウェル引出用拡散層107及び第2導電型エミッタ層106を基準に線対称に配置されており、これら第1導電型ウェル引出用拡散層107、第2導電型エミッタ層106、及び第1導電型ウェル102を共有している。また同一の構造のゲート絶縁膜110及びゲート電極112が線対称に配置されている。
【0024】
図2(b)は、図1(d)に示した半導体装置の素子分離領域16と各拡散層のレイアウトを示す平面図であり、図2(a)は図1(d)から層間絶縁膜200、各コンタク ト、及び各配線を省略した図である。これらの図に示すように、第2導電型ドリフト層104は、第1導電型ウェル102のいずれの縁にも接していない。すなわち第2導電型ドリフト層104はシンカー層115に接していない。また、シンカー層115及び第2導電型拡散層116は第1導電型ウェル102を平面視において取り囲むように形成されている。そして素子分離領域16には、第2導電型拡散層116によって囲まれた領域の中央には、素子分離領域16が形成されない領域105がある。領域105内には、第2導電型エミッタ層106及び第1導電型ウェル引出用拡散層107が形成されている。平面視において領域105は、第2導電型ドリフト層104のうち第2導電型エミッタ層106に隣接する領域上にも延在している。また領域105の両脇には、第1導電型コレクタ層108が、領域105から離間している位置に形成されている。
【0025】
次に、図1の各図を用いて、図1(d)及び図2に示した半導体装置の製造方法を説明する。まず図1(a)に示すように、半導体基板12を準備する。次いで半導体基板12に第2導電型(n型)の不純物、例えばAsやPを注入する。これにより、半導体基板12に第2導電型埋込層114が形成される。
【0026】
次いで、半導体基板12上に第1導電型(p型)のエピタキシャル層14を成長させる。このとき、半導体基板12及びエピタキシャル層14は加熱されるため、半導体基板12に形成された第2導電型埋込層114がエピタキシャル層14に拡散する。これにより、第2導電型埋込層114は、基板10の厚さ方向で見た場合に、半導体基板12からエピタキシャル層14に渡って形成される。
【0027】
次いで図1(b)に示すように、LOCOS酸化法を用いて、エピタキシャル層14に素子分離絶縁膜16を形成する。なお素子分離絶縁膜16は、別の方法、例えばSTI法により形成されてもよい。次いでエピタキシャル層14のうち第1導電型ウェル102となる領域に第1導電型の不純物、例えばBを選択的に注入し、またエピタキシャル層14のうちシンカー層115となる領域に第2導電型の不純物、例えばAsやPを選択的に注入する。その後、高温熱処理を行うことにより、エピタキシャル層14に注入された不純物はエピタキシャル層14内部に拡散し、第1導電型ウェル102及びシンカー層115が形成される。
【0028】
次いで図1(c)に示すように、エピタキシャル層14に第2導電型の不純物、例えばAsやPw選択的に注入する。これにより第2導電型ドリフト層104が形成される。なお第2導電型ドリフト層104のうち素子分離絶縁膜16の下に位置する部分は、注入されるイオンが素子分離絶縁膜16を貫通することになるため、他の領域と比べて浅く形成される。
【0029】
次いで図1(d)に示すように、エピタキシャル層14のゲート形成領域にゲート絶縁膜110及びゲート電極112を形成する。ゲート形成領域は、第2導電型ドリフト層104の一部、及び第1導電型ウェル102のうち第2導電型ドリフト層104以外の部分の表層の一部とからなる。ゲート電極112の一部は、素子分離絶縁膜16上に位置する。次いで、第1導電型ウェル引出用拡散層107となる領域及び第1導電型コレクタ層108となる領域に第1導電型の不純物、例えばBを選択的に注入する。また第2導電型エミッタ層106となる領域及び第2導電型拡散層116となる領域に第2導電型の不純物、例えばAsやPを選択的に注入する。これにより、第2導電型エミッタ層106、第1導電型ウェル引出用拡散層107、第1導電型コレクタ層108、及び第2導電型拡散層116が形成される。なお第2導電型エミッタ層106は、平面視でゲート電極112を介して第2導電型ドリフト層104と対向する第1導電型ウェル102の表層に形成される。ここで、第1導電型ウェル引出用拡散層107と第1導電型コレクタ層108は、同一工程で形成しなくてもよい。また、第2導電型エミッタ層106と第2導電型拡散層116とは同一工程で形成しなくてもよい。
【0030】
次いで、エピタキシャル層14上、素子分離絶縁膜16上、及びゲート電極112上に金属層を形成し、この金属層及びエピタキシャル層14を熱処理する。これにより、第2導電型エミッタ層106の表層及び第1導電型ウェル引出用拡散層107の表層にはシリサイド層109が形成される。この工程において、ゲート電極112の表層、第1導電型コレクタ層108の表層、及び第2導電型拡散層116の表層にもシリサイド層が形成される。
【0031】
次いで、エピタキシャル層14上、素子分離絶縁膜16上、及びゲート電極112上に層間絶縁膜200を形成する。次いで、層間絶縁膜200を選択的に除去することにより、コンタクト211,212,213,214となる接続孔を形成する。次いでこれら接続孔の中に金属、例えばタングステン(W)を埋め込むことにより、コンタクト211,212,213,214を形成する。次いで、層間絶縁膜200の表層に配線220,222,224を形成する。
【0032】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態によれば、第1導電型コレクタ層108がIGBTを構成するバイポーラトランジスタのコレクタとして機能する。また第1導電型コレクタ層108、第2導電型ドリフト層104、及び第1導電型ウェル102によって電流を縦方向に流す縦型PNPバイポーラトランジスタが形成される。このため半導体装置は高いESD耐性を得ることができる。
【0033】
一方、第1導電型コレクタ層108とシンカー層115は、配線220を介してショートしている。また第2導電型ドリフト層104とシンカー層115は第1導電型ウェル102を介して互いに分離している。このため、第2導電型ドリフト層104はフローティング状態となる。従って、第1導電型コレクタ層108に加わる電圧を高くしなくても、第1導電型コレクタ層108と第2導電型ドリフト層104の間に加わる電圧は、第1導電型コレクタ層108と第2導電型ドリフト層104とで構成されるダイオードをONさせるために必要な電圧に達する。このため、IGBTを構成するPNPバイポーラトランジスタが確実に動作する。
【0034】
また第2導電型エミッタ層106を形成する工程において、シンカー層115の表層に第2導電型拡散層116を形成している。このため、図1(d)及び図2に示した半導体装置の製造工程数が、図6に示した半導体装置の製造工程数から増加しない。従って、製造コストが増加することを抑制できる。
【0035】
また、シンカー層115及び第2導電型埋込層114によって第1導電型ウェル102を囲んでいるため、基板10とMOSトランジスタのバックゲートを分離することができる。従って、コレクタ−エミッタ間電圧を高くしたときに基板リーク電流が増加することを抑制できる。
【0036】
図3は、本実施形態の効果を示すグラフである。このグラフは、図1(d)及び図2に示した半導体装置と、図4(a)及び図4(b)に示した比較例に係る半導体装置それぞれのI(コレクタ電流)−Vce(コレクタ−エミッタ間電圧)特性(又はI(ドレイン電流)−Vds(ドレイン−ソース間電圧)特性)を示している。図4(a)に示した半導体装置は、図1(d)及び図2に示した半導体装置からシンカー層115、第2導電型拡散層116、及び第2導電型埋込層114を省略し、かつ第2導電型拡散層150を追加したものであるが、IGBTとして動作する。図4(b)に示した半導体装置は、図1(d)及び図2に示した半導体装置からシンカー層115、第2導電型拡散層116、及び第2導電型埋込層114を省略し、かつ第1導電型コレクタ層108の代わりに第2導電型不純物層160を設けたものであり、LDNMOSとして機能する。
【0037】
図3に示すように、図4(a)に示したIGBTでは、4V付近で図4(b)に示したLDNMOSよりI(I)が大きくなっている。これは、4V付近でIGBTを構成するバイポーラトランジスタがオンしたためである。これに対して実施形態に係るIGBTでは、0.7V付近で図4(b)に示したLDNMOSよりI(I)が大きくなっている。これは、0.7V付近でIGBTを構成するバイポーラトランジスタがオンしたためである。すなわち本実施形態に係るIGBTでは、比較例に係るIGBTよりも低いコレクタ電圧でバイポーラトランジスタがオンしている。また、本実施形態に係る半導体装置は、比較例にかかるLDNMOSと比較して、Iの飽和電流値が2倍程度と大幅に上昇した。
【0038】
図5は、第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。この半導体装置は、以下の点を除いて第1の実施形態に示した半導体装置と同様の構成である。
【0039】
まず、基板10としてSOI(Silicon On Insulator)基板を用いている。すなわち基板10は、半導体基板12上に酸化シリコン層などの絶縁層13及び半導体層15をこの順に積層したものである。第1導電型ウェル102及びシンカー層115は、深さ方向において半導体層15内に形成されており、かつ下端が絶縁層13に達している。そして図5に示した半導体装置には、第2導電型埋込層114が形成されていない。
【0040】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また第1導電型ウェル102はシンカー層115及び絶縁層13によって囲まれている。すなわち第2導電型埋込層114の代わりに絶縁層13が第1導電型ウェル102の下面を覆っているため、基板リーク電流をさらに抑制することができる。
【0041】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0042】
10 基板
12 半導体基板
13 絶縁層
14 エピタキシャル層
15 半導体層
16 素子分離絶縁膜
102 第1導電型ウェル
104 第2導電型ドリフト層
105 領域
106 第2導電型エミッタ層
107 第1導電型ウェル引出用拡散層
108 第1導電型コレクタ層
109 シリサイド層
110 ゲート絶縁膜
112 ゲート電極
114 第2導電型埋込層
115 シンカー層
116 第2導電型拡散層
150 第2導電型拡散層
160 第2導電型不純物層
200 層間絶縁膜
211 コンタクト
212 コンタクト
213 コンタクト
214 コンタクト
220 配線
222 配線
224 配線
400 p基板
410 n拡散層
412 p拡散層
414 エミッタ電極
430 nドリフト層
432 p拡散層
433 n拡散層
434 コレクタ電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層に第1導電型半導体層を有する基板と、
前記第1導電型半導体層の表層に形成され、前記第1導電型半導体層よりも不純物濃度が高い、第1の第1導電型高濃度拡散層と、
前記第1導電型半導体層の表層に形成され、前記第1の第1導電型高濃度拡散層に接している第1の第2導電型高濃度拡散層と、
前記第1導電型半導体層の表層に形成され、前記第1の第2導電型高濃度拡散層より不純物濃度が低い第2導電型低濃度ドリフト層と、
前記第1の第2導電型高濃度拡散層と前記第2導電型低濃度ドリフト層との間の前記第1導電型半導体層の表面と、前記第2導電型低濃度ドリフト層の一部とを覆うように形成されるゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されるゲート電極と、
前記第2導電型低濃度ドリフト層の表層に形成される第2の第1導電型高濃度拡散層と、
前記第1導電型半導体層の表層に一部が少なくとも形成され、前記第2導電型低濃度ドリフト層及び前記第2の第1導電型高濃度拡散層のいずれからも離れている第2導電型シンカー層と、
前記第2導電型シンカー層の表層に形成される第2の第2導電型高濃度拡散層と、
前記第1導電型半導体層の上に形成され、前記第2の第1導電型高濃度拡散層と前記第2の第2導電型高濃度拡散層とを接続する配線と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1導電型半導体層の表層に形成され、前記第2の第1導電型高濃度拡散層と前記第2の第2導電型高濃度拡散層とを分離するように配置されている素子分離絶縁膜をさらに備える半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第2導電型シンカー層は、平面視において前記第2導電型低濃度ドリフト層、前記第1の第2導電型高濃度拡散層、及び前記第1の第1導電型高濃度拡散層を取り囲むように設けられており、
前記第1導電型半導体層は、前記第2導電型シンカー層の内側に位置する部分の不純物濃度が、前記第2導電型シンカー層の外側に位置する部分の不純物濃度より高い半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置において、
前記第2導電型シンカー層及び前記第1導電型半導体層それぞれの下に形成され、前記第2導電型シンカー層及び前記第1導電型半導体層それぞれに接している第2導電型埋込層をさらに備える半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記基板は、
半導体基板と、
前記半導体基板上にエピタキシャル成長したエピタキシャル層と、
を備え、
前記第2導電型埋込層は前記半導体基板から前記エピタキシャル層に渡って形成されている半導体装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置において、
前記基板は、半導体基板上に絶縁層及び半導体層をこの順に積層したSOI(Silicon On Insulator)基板であり、
前記第2導電型シンカー層は、深さ方向において前記半導体層内に形成されており、かつ下端が前記絶縁層に達している半導体装置。
【請求項7】
表層に第1導電型半導体層を有する基板に、前記第1導電型半導体層の表層の一部に位置する第2導電型低濃度ドリフト層を形成する工程と、
前記第2導電型低濃度ドリフト層の一部、及び前記第1導電型半導体層のうち前記第2導電型低濃度ドリフト層以外の部分の表層の一部とからなるゲート形成領域に、ゲート絶縁膜及び前記ゲート絶縁膜上に位置するゲート電極を形成する工程と、
平面視で前記ゲート電極を介して前記第2導電型低濃度ドリフト層と対向する前記第1導電型半導体層の表層に、前記第2導電型低濃度ドリフト層より不純物濃度が高い、第1の第2導電型高濃度拡散層を形成する工程と、
前記第1導電型半導体層の表層に、前記第1導電型半導体層より不純物濃度が高い第1の第1導電型高濃度拡散層を、前記第1の第2導電型高濃度拡散層に接して形成する、第1の第1導電型高濃度拡散層形成工程と、
前記第2導電型低濃度ドリフト層の表層に第2の第1導電型高濃度拡散層を形成する工程と、
前記第1導電型半導体層内に第2導電型シンカー層を、前記第2導電型低濃度ドリフト層及び前記第2の第1導電型高濃度拡散層のいずれからも離れている位置に形成する工程と、
前記第2導電型シンカー層の表層に第2の第2導電型高濃度拡散層を形成する工程と、
前記第1導電型半導体層上に、前記第2の第2導電型高濃度拡散層と前記第2の第1導電型高濃度拡散層とを接続する配線を形成する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1導電型半導体層の表層に、前記第2の第2導電型高濃度拡散層と前記第2の第1導電型高濃度拡散層とを分離するように、素子分離絶縁膜を形成する工程をさらに備える半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7または8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の第1導電型高濃度拡散層形成工程と、前記第2の第1導電型高濃度拡散層を形成する工程とを同一工程により行う半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の第2導電型高濃度拡散層を形成する工程と、前記第2の第2導電型高濃度拡散層を形成する工程とを同一工程により行う半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−159828(P2011−159828A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20659(P2010−20659)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】