説明

半導体装置実装構造体およびその製造方法ならびに半導体装置の剥離方法

【課題】耐衝撃性と量産性に優れ、かつリペア、リワークが容易で、リペア後の回路基板上に接着剤などの残渣が残らず、リペア時の応力も極力かからない半導体装置実装構造体およびその製造方法ならびに半導体装置の剥離方法を提供する。
【解決手段】本発明の半導体装置実装構造体10は、一方の主面11bに電極部11cを配列した半導体装置11と、半導体装置11の電極部11cとはんだバンプ12により電気的に接続される基板電極部13aを有する回路基板13と、半導体装置11の少なくとも側面11aと回路基板13との間に、膨張温度が異なる複数種の熱膨張性粒子15を混入した硬化性樹脂14とを有する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐衝撃性が高くリペア性がよい半導体装置実装構造体およびその製造方法ならびに半導体装置の剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器は高機能化・小型化が進み、携帯電話やパソコンなど携帯型の小型モバイル情報機器が普及してきている。これらに搭載される回路基板に実装される電子部品には半導体装置が多数使用され、なかでも半導体チップをインターポーザー基板に実装し、樹脂モールドなどでパッケージ化した状態で実装されることが多い。すなわち、回路基板に対向した半導体装置の一方の主面に、例えばボール形状のはんだバンプからなる接続端子をアレイ状に配置したボール・グリッド・アレイ(以下、「BGA」と略記する)、またはチップ・スケール・パッケージ(以下、「CSP」と略記する)タイプが主流になっている。
【0003】
ところで、モバイル情報機器では携帯して移動するという用途から、機器の落下衝撃に対する耐衝撃性の強度が必要とされている。すなわち、ロジック回路やメモリ回路などの機能集積度の高い回路を内蔵した半導体装置は接続端子数が多く、かつBGAやCSPなどのパッケージの端子形状や端子ピッチが微細化している。このことに加えて、BGAやCSPなどのパッケージからなる半導体装置は、接続端子がグリッド状に配置され、実装される面積が広い。したがって、例えば落下時の回路基板の変形や応力などにより半導体装置のパッケージの周辺部近傍などに配置された一部の接続端子に応力が集中して、半導体装置と回路基板とを接続するはんだ接続が断線することがある。そこで、このような耐衝撃性に対する半導体装置と回路基板との接続部の信頼性を向上させるために、半導体装置と回路基板とをはんだ接続して実装したのち、例えばエポキシ系樹脂からなる熱硬化性の接着剤により半導体装置と回路基板とを接着固定して補強することが一般的によく行われる。このようにすると落下衝撃などによる接続端子への応力集中を緩和することができるので、耐衝撃性は向上する。しかしながら、半導体装置が実装されたのち特性不良になるなどして交換をする必要があり別の半導体装置を回路基板に再接続するときには、熱硬化性の接着剤は接着固定が強固であるため、回路基板からの接着剤の除去が困難でリペア作業が難しく、特性不良が発生した回路基板は廃棄するほかなかった。
【0004】
このような課題を解決するために、耐衝撃性に優れ、かつリペア、リワークが可能な実装構造が提案されている。すなわち、半導体装置と回路基板との間を接着する樹脂を剥離可能な樹脂の層と機械強度が高い層の2層構造にした半導体装置実装構造体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような構成にすると半導体装置の交換などのリペアなどを行うときには剥離可能な樹脂の層を加熱、流動させることにより、半導体装置を回路基板から取り外すことができる。
【0005】
また、接着する樹脂が有機溶液を内包した有機系熱膨張性粒子と熱硬化性接着剤樹脂とを混合した樹脂組成物として、この樹脂組成物が半導体装置と回路基板との間に充填され、硬化される半導体装置実装構造体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このようにして形成された耐衝撃性に優れた半導体装置実装構造体は、加熱することにより有機系熱膨張性粒子内の有機溶液が沸騰気化し、急激に体積膨張する。このことにより、半導体装置と回路基板との間を接着している樹脂硬化物が非常に脆く多孔質構造に変化するので半導体装置は剥離することができ、半導体装置実装構造体はリペアなどを行うことができる。
【0006】
また、同様に半導体装置と回路基板とを強固に接着する接着剤に発泡性材料を含有させ、リペアのときには発泡性材料を大きく発泡させることにより半導体装置を回路基板から剥離することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。すなわち、接着剤は加熱または電磁波を照射されて接着剤中のペーストおよび発泡性材料のうちの発泡性材料を発泡させる。このことにより、ペースト部分に気孔を多数発生させてペースト部分を脆弱化することにより、半導体装置が回路基板から剥離することを容易にしている。
【特許文献1】特開2006−100457号公報
【特許文献2】特開2005−332970号公報
【特許文献3】特開2001−107019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2、3に示されるような従来の技術では、熱膨張性粒子および発泡性材料を効果的に膨張させて半導体装置実装構造体の回路基板から半導体装置を取り外すには精度よく加熱温度を制御する必要がある。すなわち、熱膨張性粒子および発泡性材料が効果的に膨張力を得ることができる温度範囲は10〜20℃程度であり、量産工程に適用するのに十分な温度範囲ではない。したがって、膨張力がピークとなる温度がはんだバンプの融点以下である場合は熱膨張性粒子および発泡性材料の膨張力が不十分となるため、熱硬化性の接着剤全体が十分に脆弱化せず半導体装置を回路基板から取り外すことが困難であるという課題を生じる。また、このような状態で熱膨張性粒子および発泡性材料が接着剤に含まれる量を増加して膨張力を大きくした場合は、はんだバンプが溶融していない状態で半導体装置が回路基板から持ち上げられることとなるので、例えば回路基板上の銅箔が応力により引き剥がされるなどのダメージを受ける。その結果、回路基板の電極部に新たに半導体装置を再接続することができず、回路基板を廃棄しなければならなくなってしまうという課題を生じる。
【0008】
一方、膨張力がピークとなる温度がはんだバンプの融点以上である場合は、この温度で熱膨張性粒子および発泡性材料が十分な膨張力で膨張しても、はんだバンプが溶融しているために半導体装置を取り外しても回路基板にダメージを生じることはない。しかしながら、接着剤に混入された熱膨張性粒子および発泡性材料を十分な膨張力で膨張させて接着剤全体を十分に脆弱化して半導体装置を容易に取り外せるようにするためには、はんだバンプは溶融温度以上の高温で長い時間保持されなければならない。したがって、回路基板上の半導体装置の周辺に実装された部品が熱ダメージを受けてしまうという課題があった。
【0009】
また、特許文献1においては、半導体装置が半導体装置実装構造体の回路基板から取り外されるときに回路基板上の残渣が極力残らないようにリペアし、そのままの状態で新たな半導体装置を再接続することが難しいという課題があった。
【0010】
本発明は上記の課題を解決するものであり、高密度実装に適した小型パッケージを使用した半導体装置が実装された半導体装置実装構造体において、耐衝撃性と量産性に優れ、かつリペア、リワークが容易で、リペア後の回路基板上に接着剤などの残渣が残らず、リペア時の応力も極力かからない半導体装置実装構造体およびその製造方法ならびに半導体装置の剥離方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の半導体装置実装構造体は、一方の主面に電極部を配列した半導体装置と、上記半導体装置の上記電極部とはんだバンプにより電気的に接続される基板電極部を有する回路基板と、上記半導体装置の少なくとも側面と上記回路基板との間に、膨張温度が異なる複数種の熱膨張性粒子を混入した硬化性樹脂とを有する構成からなる。
【0012】
このような構成とすることにより、回路基板上に半導体装置が実装されたときには耐衝撃性に優れ、リペア、リワークを行うときには容易に半導体装置を回路基板から取り外すことができる。なお、リペア、リワークを行うときには、膨張温度が低温の熱膨張性粒子が最初に膨張して予め接着剤全体を脆弱化したのちに、膨張温度が高温の熱膨張性粒子が膨張して硬化性樹脂による半導体装置と回路基板との接着を速やかに切断する。このときに、はんだバンプの融点が上記2種類の熱膨張性粒子の膨張温度の間に設定されていれば、半導体装置実装構造体の回路基板から容易に半導体装置を取り外すことができる。また、硬化性樹脂は半導体装置の側面と回路基板との間に備えているだけであるので量産性に優れ、かつ複数種の熱膨張性粒子で硬化性樹脂全体を細かく切断するので、リペア後の回路基板上に複数種の熱膨張性粒子を含む硬化性樹脂の残渣がほとんど残らず、リペア時の応力も極力かからないようにすることができる。
【0013】
なお、硬化性樹脂とは、エポキシ基やアクリレート基などの重合性基を分子構造中に含有する低分子が、光および/または熱の刺激により三次元架橋などに重合することで硬化したいわゆる熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂のことであり、以下、熱硬化性樹脂と適宜称し、当該低分子を主成分とする熱効果性樹脂前駆体を熱硬化性の接着剤と適宜称する。
【0014】
また、複数種の熱膨張性粒子は、第1の温度で熱膨張する第1の熱膨張性粒子と、第2の温度で熱膨張する第2の熱膨張性粒子との少なくとも2種類で構成され、はんだバンプの融点は、第1の温度より高く第2の温度より低い構成としてもよい。
【0015】
このような構成とすることにより、回路基板上に半導体装置が実装されたときには耐衝撃性に優れ、リペア、リワークを行うときには容易に半導体装置を回路基板から取り外すことができる。なお、リペア、リワークを行うときには、熱膨張する第1の温度が低温の第1の熱膨張性粒子が最初に膨張して予め硬化性樹脂全体を脆弱化したのちに、熱膨張する第2の温度が高温の第2の熱膨張性粒子が膨張して硬化性樹脂全体を速やかに切断する。このときに、はんだバンプの融点が上記複数種の熱膨張性粒子の膨張温度の間に設定されているので、半導体装置実装構造体の回路基板から容易に半導体装置を回路基板から取り外すことができる。また、熱硬化性接着剤は半導体装置の側面と回路基板との間に塗布しているだけであるので、量産性に優れ、かつ複数種の熱膨張性粒子で硬化した硬化性樹脂全体の接着を細かく切断するので、リペア後の回路基板上に熱膨張性粒子および/または硬化性樹脂の残渣がほとんど残らず、リペア時の応力も極力かからないようにすることができる。
【0016】
また、硬化性樹脂と回路基板との界面における第2の熱膨張性粒子の密度が、当該硬化性樹脂と側面との界面における第2の熱膨張性粒子の密度よりも高い構成としてもよい。
【0017】
このような構成とすることにより、回路基板上に半導体装置が実装されたときには耐衝撃性に優れ、リペア、リワークを行うときには容易に半導体装置を回路基板から取り外すことができる。そのうえ、硬化性樹脂と回路基板との間の接着力は第2の熱膨張性粒子により十分に速やかに切断されるので、リペア後の回路基板上に硬化性樹脂などの残渣がほとんど残らず、リペア時の応力も極力かからないようにすることができる。
【0018】
また、第1の熱膨張性粒子の膨張温度が120℃以上、200℃以下であり、第2の熱膨張性粒子の膨張温度が220℃以上、240℃以下である構成としてもよい。
【0019】
このような構成とすることにより、はんだバンプのはんだ材料に一般的によく用いられる融点が217℃の鉛フリーのSnAg0.5Cu材料を使用することができる。したがって、半導体装置実装構造体の回路基板上に半導体装置が実装されたときには耐衝撃性に優れ、リペア、リワークを行うときには容易に半導体装置を回路基板から取り外すことができる半導体装置実装構造体を、鉛フリーで実現することができる。
【0020】
また、本発明の半導体装置実装構造体の製造方法は、半導体装置の一方の主面に配列された電極部と回路基板の基板電極部とをはんだバンプにより電気的に接続するはんだ接続工程と、膨張温度が異なる複数種の熱膨張性粒子を混入した硬化接着性の接着剤を、半導体装置の少なくとも側面と回路基板との間に塗布する塗布工程と、塗布工程において塗布された接着剤を硬化性樹脂化する固定工程とを備える方法としてもよい。
【0021】
また、上記製造方法における複数種の熱膨張性粒子は、はんだバンプの融点よりも低い第1の温度で熱膨張する第1の熱膨張性粒子と、はんだバンプの融点以上の第2の温度で熱膨張する第2の熱膨張性粒子とを含有する方法としてもよい。
【0022】
このような方法とすることにより、回路基板上に半導体装置が実装されたときには耐衝撃性に優れ、リペア、リワークを行うときには容易に半導体装置を回路基板から取り外すことができる。なお、リペア、リワークを行うときには、低温で熱膨張する第1の熱膨張性粒子が最初に膨張して予め接着剤として塗布されて硬化した硬化性樹脂全体を脆弱化したのちに、高温で熱膨張する第2の熱膨張性粒子が膨張して硬化性樹脂全体の接着を速やかに切断する。このときに、はんだバンプの融点が上記2種類の熱膨張性粒子の第1の温度と第2の温度との間に設定されているので、半導体実装構造体の回路基板から容易に半導体装置を取り外すことができる。また、接着剤は半導体装置の側面および回路基板に塗布されて硬化されるだけであるので、量産性に優れ、かつ複数種の熱膨張性粒子で硬化性樹脂全体の接着を細かく切断するのでリペア後の回路基板上に硬化性樹脂などの残渣がほとんど残らず、リペア時の応力も極力かからないようにすることができる。
【0023】
また、本発明の半導体装置の剥離方法は、上記記載の半導体装置実装構造体において、はんだバンプの融点以下の温度に硬化性樹脂を加熱し、複数種の熱膨張性粒子のうち当該融点よりも膨張温度が低い熱膨張性粒子を膨張させる第1の加熱工程と、融点以上の温度に硬化性樹脂を加熱し、複数種の熱膨張性粒子のうち当該融点よりも膨張温度が高い熱膨張性粒子を膨張させる第2の加熱工程と、半導体装置を回路基板から剥離する剥離工程とを有する方法からなる。
【0024】
このような方法とすることにより、リペア、リワークを行うときには容易に半導体装置を回路基板から取り外すことができる。そして、複数種の熱膨張性粒子で硬化性樹脂全体の接着を細かく切断するので、リペア後の回路基板上に硬化性樹脂などの残渣がほとんど残らず、リペア時の応力も極力かからないようにすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の半導体装置実装構造体は、高密度実装に適したパッケージを使用した半導体装置を回路基板に耐衝撃性と量産性に優れた構成で実装でき、かつリペア、リワークが容易であるという大きな効果を奏する。また、本発明は、このような半導体装置実装構造体を量産性良く製造する方法や回路基板から取り外すときに応力が極力かからず接着剤が硬化した硬化性樹脂などの残渣が残らない剥離方法も提供しており、半導体装置実装構造体の組立などの製造に大きな効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態にかかる半導体装置実装構造体およびその製造方法ならびに半導体装置実装構造体からの半導体装置の剥離方法について、図面を参照しながら説明する。なお、図面で同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合もある。また、図面は、理解しやすくするためにそれぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、形状などについては正確な表示ではない。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態にかかる半導体装置実装構造体10を示す模式図で、(a)は平面図、(b)はA−A線より見た断面図を示す。
【0028】
図1(a)に示すように半導体装置実装構造体10は、半導体装置11がはんだバンプ12により回路基板13に電気的に、かつ機械的に接続されている。そして、機械的な接続強度を補強するために半導体装置11の4つの側面11aの一部が回路基板13と接着剤が熱硬化した硬化性樹脂14でそれぞれ接着固定されている。
【0029】
すなわち、詳細には図1(b)に示すように半導体装置実装構造体10は、一方の主面11bに電極部11cを配列した半導体装置11と、半導体装置11の電極部11cとはんだバンプ12により電気的に接続される基板電極部13aを有する回路基板13とを有して構成されている。さらに、半導体装置実装構造体10は、半導体装置11の少なくとも側面11aと回路基板13との間に、膨張温度が異なる複数種の熱膨張性粒子15を混入した硬化性樹脂14とを有する構成である。なお、図1(b)では硬化性樹脂14により側面11aの一部が接着固定されているが、側面11aの全部が接着固定されてもよく、硬化性樹脂14は半導体装置11の側面11aに沿って側面11aの全部に接着固定されていてもよい。
【0030】
ここで、複数種の熱膨張性粒子15は、第1の温度T1で熱膨張する第1の熱膨張性粒子15aと、第2の温度T2で熱膨張する第2の熱膨張性粒子15bとの少なくとも2種類で構成されている。そして、はんだバンプ12の融点Tmは、第1の温度T1より高く第2の温度T2より低く構成されている。
【0031】
このような構成とすることにより、半導体装置11ははんだバンプ12により回路基板13に接続されている構成に加えて、その側面11aが硬化性樹脂14により回路基板13に接着されて機械的な強度が補強されている。このことにより、耐衝撃性に優れた半導体装置11の実装が実現できる。また、リペア、リワークを行うときには、熱膨張する温度が低温の第1の熱膨張性粒子15aが最初に膨張して予め硬化性樹脂14全体を脆弱化したのちに、熱膨張する温度が高温の第2の熱膨張性粒子15bが膨張して硬化性樹脂14全体の接続を速やかに切断する。このときに、はんだバンプ12の融点Tmが上記2種類の熱膨張性粒子15(15a、15b)の第1の温度と第2の温度との間に設定されているので、半導体装置実装構造体10の回路基板13から容易に半導体装置11を取り外すことができる。また、熱硬化して硬化性樹脂14となる熱硬化性の接着剤14は半導体装置11の側面11aに塗布するだけで半導体装置11と回路基板13の間にアンダーフィルとして流し込まなくてもよいので量産性に優れている。しかも、2種類の熱膨張性粒子15(15a、15b)で硬化性樹脂14全体の接着を細かく切断するのでリペア後の回路基板13上に硬化性樹脂14などの残渣がほとんど残らず、リペア時の応力も極力かからないようにすることができる。
【0032】
なお、硬化性樹脂とは、エポキシ基やアクリレート基などの重合性基を分子構造中に含有する低分子が、光および/または熱の刺激により三次元架橋などに重合することで硬化したいわゆる熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂のことであり、以下、熱硬化性樹脂と適宜称し、当該低分子を主成分とする熱効果性樹脂前駆体を熱硬化性の接着剤と適宜称する。
【0033】
ところで、BGAやCSPタイプの半導体パッケージからなる半導体装置11には、近年では一般的に鉛フリーのはんだ材料であるSnAg0.5Cuからなるボール状のはんだバンプ12が一般的に用いられる。このSnAg0.5Cu材料のはんだバンプ12の融点は217℃である。したがって、このSnAg0.5Cu材料のはんだバンプ12を使用するときに、膨張温度が120℃以上、200℃以下である第1の熱膨張性粒子15aと、膨張温度が220℃以上、240℃以下である第2の熱膨張性粒子15bとを使用して熱硬化性の接着剤14に混入する。このようにすると、第1の熱膨張性粒子15aが最初に膨張して接着剤が硬化した硬化性樹脂14全体を予め脆弱化したのちに、はんだバンプ12の融点である217℃に加熱温度を上げてはんだバンプ12を溶融する。そののちに、さらに加熱温度を上げて第2の熱膨張性粒子15bを膨張させることにより硬化性樹脂14全体の接着が速やかに切断される。その結果、硬化性樹脂14全体の接着が細かく切断されるのでリペア後の回路基板13上に硬化性樹脂14などの残渣がほとんど残らず、リペア時の応力も極力かからないようにすることができる。なお、膨張温度が250℃以上の熱膨張性粒子15を使用すると半導体装置11が加熱されてダメージを受けることがあり好ましくない。また、120℃未満の膨張温度の熱膨張性粒子15を使用すると混入する接着剤の硬化温度が120℃未満の接着剤を選択する必要があり、選択できる接着剤の範囲が狭くなるために好ましくない。
【0034】
図2は、接着剤14に混合する2種類の熱膨張性粒子15(15a、15b)の温度に対する熱膨張特性の一例について示した図である。図2において2Aで示すグラフは第1の温度T1で最高膨張倍率を示す第1の熱膨張性粒子15aの温度に対する熱膨張特性を示し、2Bで示すグラフは第2の温度T2で最高膨張倍率を示す第2の熱膨張性粒子15bの温度に対する熱膨張特性を示す。なお、はんだバンプ12の融点Tmは、温度T1、T2とT1<Tm<T2の関係にあることが図2に示されている。図2に例示される第1および第2の熱膨張性粒子15(15a、15b)はいずれも最高8倍程度の膨張倍率で膨張することがわかる。
【0035】
次に図2で示されるような2種類の熱膨張性粒子15(15a、15b)を接着剤14に混合して本実施の形態の半導体装置実装構造体10を製造する製造方法を説明する。
【0036】
図3は本実施の形態の半導体装置実装構造体10の製造方法を示す製造フロー図、図4(a)から(c)は半導体装置実装構造体10の製造方法を示す概略断面図である。
【0037】
図3に示すように本製造方法は、はんだ接続工程S1と、塗布工程S2と、固定工程S3とを備えた方法である。図4(a)は真空ピンセット21により半導体装置11が回路基板13に運ばれてはんだ接続が行われるところを示している。図4(a)および(b)に示すようにはんだ接続工程S1は、半導体装置11の一方の主面11bに配列された電極部11cと回路基板13の基板電極部13aとをはんだバンプ12により電気的に接続する工程である。図4(b)においてはんだバンプ12は、例えば230℃で加熱されて溶融したのちに冷却されて半導体装置11の電極部11cと回路基板13の基板電極部13aとを電気的に接続している。
【0038】
さらに、図4(c)に示すように塗布工程S2において、膨張温度が異なる複数種の熱膨張性粒子15を混入した硬化接着性の接着剤14を、半導体装置11の側面11aと回路基板13との間に塗布している。そして、塗布工程S2ののちの固定工程S3において、塗布工程S2において塗布された接着剤14を熱硬化させて樹脂化する硬化性樹脂化が行われる。このように半導体装置11と回路基板13とを硬化性樹脂で接着固定することにより、半導体装置実装構造体10は、耐衝撃力を増大することができる。ここでは、接着剤14は、例えばエポキシ樹脂を使用し120℃で熱硬化させている。
【0039】
なお、接着剤14に混入される複数種の熱膨張性粒子15は、はんだバンプ12の融点Tmよりも低い第1の膨張温度T1を有する第1の熱膨張性粒子15aと、はんだバンプ12の融点Tm以上の第2の膨張温度T2を有する第2の熱膨張性粒子15bとを含有するものである。
【0040】
次に半導体装置実装構造体10からの半導体装置11の剥離方法について説明する。図5は本実施の形態にかかる半導体装置11の剥離方法について示す概略断面図である。図5(a)は図4(c)の半導体装置実装構造体10の硬化性樹脂14で接着された部分を拡大して示した模式図である。なお、硬化性樹脂14の中には、例えば図2で示した2種類の熱膨張性粒子15(15a、15b)が混入されている。このような上記記載の半導体装置実装構造体10において、硬化性樹脂14を170℃で加熱して第1の熱膨張性粒子15aを2Aで示すグラフの最大膨張率近傍で膨張させる。このようにすると図5(b)に示すように第1の熱膨張性粒子15aは熱膨張して硬化性樹脂14の内部を細かく分断して脆くする。このようにしたのちに、さらに硬化性樹脂14を加熱して220℃で第2の熱膨張性粒子15bを膨張させる。このことにより、硬化性樹脂14は第1の熱膨張性粒子15aの熱膨張により予め内部が分断されて脆くなっている。したがって、図5(c)に示すように第2の熱膨張性粒子15bの熱膨張により半導体装置11がはんだバンプ12を伴って回路基板13から矢印5Aの方向に持ち上げられるので速やかに硬化性樹脂14全体の接着が分断される。そして、上記の方法により硬化性樹脂14は細かい樹脂の破片16(16a、16b、16c)などに分断されてしまう。すなわち、硬化性樹脂14が予め全体が脆くなっているので図5(c)に示すように、例えば様々な方向を向いた樹脂の破片16a、16b、16cのようにばらばらに分断される。したがって、硬化性樹脂14により接続されていた半導体装置11を回路基板13から容易に剥離することができる。
【0041】
上記で説明したように本実施の形態の半導体装置の剥離方法は、図6に示すように上記記載の半導体装置実装構造体10において、第1の加熱工程SR1と、第2の加熱工程SR2と、剥離工程SR3とを有する方法である。
【0042】
すなわち、第1の加熱工程SR1は、はんだバンプ12の融点Tm以下の温度に硬化性樹脂14を加熱し、複数種の熱膨張性粒子15のうち当該融点Tmよりも膨張温度が低い熱膨張性粒子を膨張させる工程である。そして、第2の加熱工程SR2は、融点Tm以上の温度に硬化性樹脂14を加熱し、複数種の熱膨張性粒子15のうち当該融点Tmよりも膨張温度が高い熱膨張性粒子15を膨張させる工程である。そして、剥離工程SR3は半導体装置11を回路基板13から剥離する工程である。
【0043】
このような工程からなる方法とすることにより、リペア、リワークを行うときには容易に半導体装置を回路基板から取り外すことができる。そして、2種類の熱膨張性粒子で硬化性樹脂全体の接着を細かく切断するのでリペア後の回路基板上に接着剤を構成していた樹脂などの残渣がほとんど残らず、リペア時の応力も極力かからないようにすることができる。
【0044】
(第2の実施の形態)
図7および図8に本発明の第2の実施の形態にかかる半導体装置実装構造体30およびその製造方法ならびに半導体装置の剥離方法を示す。
【0045】
図7は本実施の形態にかかる半導体装置実装構造体30およびその製造方法を示す概略断面図である。図7(c)に示す半導体装置実装構造体30は第1の実施の形態にかかる半導体装置実装構造体10と異なり、接着剤が硬化した硬化性樹脂14と回路基板13との界面17における第2の熱膨張性粒子15bの密度が、当該硬化性樹脂14と側面11aとの界面18における第2の熱膨張性粒子15bの密度よりも高い構成としている。
【0046】
このような構成とすることにより、回路基板13上に半導体装置11が実装されたときには耐衝撃性に優れ、リペア、リワークを行うときには第2の熱膨張性粒子15bが回路基板13との界面17に隣接する領域6Aに高い密度で含まれているので、容易に半導体装置11を回路基板13から取り外すことができる。そのうえ、硬化性樹脂14と回路基板13との間の接着は第2の熱膨張性粒子15bにより十分に速やかに切断されるので、リペア後の回路基板13上に硬化性樹脂14などの残渣がほとんど残らず、リペア時の応力も極力かからないようにすることができる。
【0047】
本実施の形態にかかる半導体装置実装構造体30の製造方法は、第1の実施の形態にかかる半導体装置実装構造体10の製造方法を基本として図3に示すはんだ接続工程S1と、塗布工程S2と、固定工程S3とを含むものである。そして、図7(a)に示す半導体装置11が回路基板13にはんだバンプ12により電気的に接続されたはんだ接続工程S1ののちの塗布工程S2に特徴がある。すなわち、図7(b)に示すように塗布工程S2において、少なくとも第2の温度T2で熱膨張する第2の熱膨張性粒子15bが混入された第2の接着剤14bが回路基板13上にまず塗布される。そののちに、第2の接着剤14bの上部の全部または一部を覆って、少なくとも第1の温度T1で熱膨張する第1の熱膨張性粒子15aが混入された第1の接着剤14aが塗布される。そして、はんだバンプ12は、第1の温度T1より高く第2の温度T2より低い融点の材料から構成される。本製造方法でのはんだバンプ12は、例えば融点が217℃の鉛フリーのSnAg0.5Cu材料を使用し、2種類の熱膨張性粒子15(15a、15b)は、例えば第1の温度T1が166℃、第2の温度T2が220℃の熱膨張性マイクロカプセルを使用している。
【0048】
そして、塗布工程S2において塗布された接着剤14(14a、14b)を熱硬化させて硬化性樹脂14として接着固定する固定工程S3を実施すると図7(c)に示すように接着剤14(14a、14b)はその境界が混ざり合って1つの硬化性樹脂14となって半導体装置実装構造体30が製造される。このときに第1の熱膨張性粒子15aに径の小さい粒子を選択して第1の接着剤14aに多く混入すると第1の熱膨張性粒子15aは回路基板13の近傍にも少し含まれるように移動する。
【0049】
なお、図5および図6に示した第1の実施の形態と同様に半導体装置実装構造体30から半導体装置11を剥離することができる。すなわち、図8に示すように半導体装置実装構造体30において、硬化性樹脂14を加熱して第1の熱膨張性粒子15aを膨張させて硬化性樹脂14全体を予め脆弱化したのちに、さらに硬化性樹脂14を加熱して第2の熱膨張性粒子15bを膨張させる。このことにより、硬化性樹脂14の回路基板13との界面17に隣接した領域に高い密度で混合された第2の熱膨張性粒子15bが大きく膨張して硬化性樹脂14と回路基板13との界面17の硬化性樹脂14を主体に分断して矢印7Aの方向に持ち上げられる。したがって、半導体装置11は回路基板13から容易に剥離することができる。
【0050】
以上のような構成および方法とすることにより、半導体装置実装構造体は、回路基板上に半導体装置が実装されたときには耐衝撃性に優れ、リペア、リワークを行うときには容易に半導体装置を回路基板から取り外すことができる。なお、リペア、リワークを行うときには、膨張温度が低温の第1の熱膨張性粒子が最初に膨張して硬化性樹脂全体を予め脆弱化したのちに、膨張温度が高温の第2の熱膨張性粒子が膨張して硬化性樹脂全体の接着を速やかに切断する。このときに、はんだバンプの融点が上記2種類の熱膨張性粒子の膨張温度の間に設定されているので、半導体装置実装構造体の回路基板から容易に半導体装置を取り外すことができる。また、硬化性樹脂を形成する接着剤は半導体装置の側面に塗布して作製するだけであるので量産性に優れ、かつ2種類の熱膨張性粒子で硬化性樹脂全体の接着を細かく切断するのでリペア後の回路基板上に硬化性樹脂などの残渣がほとんど残らず、リペア時の応力も極力かからないようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の半導体装置実装構造体は、高密度実装に適したパッケージを使用した半導体装置を回路基板に耐衝撃性と量産性に優れた構成で実装でき、かつリペア、リワークが容易であるので薄型化・小型化が要求される電子機器などの分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる半導体装置実装構造体を示す模式図で、(a)は平面図、(b)はA−A線より見た断面図
【図2】2種類の熱膨張性粒子の温度に対する熱膨張特性の一例について示した図
【図3】本発明の第1の実施の形態にかかる半導体装置実装構造体の製造方法を示す製造フロー図
【図4】(a)から(c)は本発明の第1の実施の形態にかかる半導体装置実装構造体の製造方法を示す概略断面図
【図5】(a)から(c)は本発明の第1の実施の形態にかかる半導体装置の剥離方法について示す概略断面図
【図6】本発明の第1の実施の形態にかかる半導体装置実装構造体からの半導体装置の剥離方法を示すフロー図
【図7】(a)から(c)は本発明の第2の実施の形態にかかる半導体装置実装構造体およびその製造方法を示す概略断面図
【図8】本発明の第2の実施の形態にかかる半導体装置の剥離方法について示す概略断面図
【符号の説明】
【0053】
10,30 半導体装置実装構造体
11 半導体装置
11a 側面
11b 一方の主面
11c 電極部
12 はんだバンプ
13 回路基板
13a 基板電極部
14 接着剤(硬化性樹脂)
14a 第1の接着剤
14b 第2の接着剤
15 熱膨張性粒子
15a 第1の熱膨張性粒子(熱膨張性粒子)
15b 第2の熱膨張性粒子(熱膨張性粒子)
16(16a,16b,16c) 樹脂の破片
17,18 界面
21 真空ピンセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に電極部を配列した半導体装置と、
前記半導体装置の前記電極部とはんだバンプにより電気的に接続される基板電極部を有する回路基板と、
前記半導体装置の少なくとも側面と前記回路基板との間に、膨張温度が異なる複数種の熱膨張性粒子を混入した硬化性樹脂とを有することを特徴とする半導体装置実装構造体。
【請求項2】
前記複数種の熱膨張性粒子は、第1の温度で熱膨張する第1の熱膨張性粒子と、第2の温度で熱膨張する第2の熱膨張性粒子との少なくとも2種類で構成され、前記はんだバンプの融点は、前記第1の温度より高く前記第2の温度より低いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置実装構造体。
【請求項3】
前記硬化性樹脂と前記回路基板との界面における前記第2の熱膨張性粒子の密度が、当該硬化性樹脂と前記側面との界面における前記第2の熱膨張性粒子の密度よりも高いことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置実装構造体。
【請求項4】
前記第1の熱膨張性粒子の膨張温度が120℃以上、200℃以下であり、前記第2の熱膨張性粒子の膨張温度が220℃以上、240℃以下であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の半導体装置実装構造体。
【請求項5】
半導体装置の一方の主面に配列された電極部と回路基板の基板電極部とをはんだバンプにより電気的に接続するはんだ接続工程と、
膨張温度が異なる複数種の熱膨張性粒子を混入した硬化接着性の接着剤を、前記半導体装置の少なくとも側面と前記回路基板との間に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程において塗布された前記接着剤を硬化性樹脂化する固定工程とを備えることを特徴とする半導体装置実装構造体の製造方法。
【請求項6】
前記複数種の熱膨張性粒子は、前記はんだバンプの融点よりも低い第1の膨張温度を有する第1の熱膨張性粒子と、前記はんだバンプの融点以上の第2の膨張温度を有する第2の熱膨張性粒子とを含有する請求項5に記載の半導体装置実装構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置実装構造体において、
前記はんだバンプの融点以下の温度に前記硬化性樹脂を加熱し、前記複数種の熱膨張性粒子のうち当該融点よりも膨張温度が低い熱膨張性粒子を膨張させる第1の加熱工程と、
前記融点以上の温度に前記硬化性樹脂を加熱し、前記複数種の熱膨張性粒子のうち当該融点よりも膨張温度が高い熱膨張性粒子を膨張させる第2の加熱工程と、
前記半導体装置を前記回路基板から剥離する剥離工程とを有することを特徴とする半導体装置の剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−311458(P2008−311458A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158257(P2007−158257)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】