説明

半導体装置製造用の接着シート、及びそれを用いた半導体装置の製造方法

【課題】 接着シートが薄層化した場合にも、当該接着シートの有無を容易に識別することを可能にし、これにより製造装置のダウンタイムを短縮して、歩留まりの向上を可能にする半導体装置製造用の接着シート、及びそれを用いた半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の半導体装置製造用の接着シートは、半導体素子を被着体に接着させる半導体装置製造用の接着シートであって、波長域が290〜450nmの範囲内にある光を吸収又は反射させる顔料を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子をリードフレーム、TABフィルム、基板又は別途作製した半導体チップ等の被着体に接着させ、該半導体素子にワイヤーボンディングをする際に用いる半導体装置製造用の接着シート、及びそれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置の製造方法に於いては、パターン形成後の半導体ウェハは個々の半導体チップにダイシングされた後、熱硬化性ペースト樹脂を用いて、基板、リードフレーム又は他の半導体チップ上にダイボンドされる(例えば、下記特許文献1)。その後、半導体チップにワイヤーボンディングをした後、当該半導体チップを封止樹脂により封止して半導体パッケージを作製する。
【0003】
また、前記熱硬化性ペースト樹脂に代えて、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂を併用した接着シートの使用も提案されている(下記、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0004】
ここで、従来の半導体装置の製造方法においては、例えば、各製造工程間での半導体ウェハの搬送の際に、当該半導体ウェハに貼り付けられている接着シートの有無を検知しながら行われている。当該検知の方法として、具体的には、290〜450nmの波長域の光を検出することが可能な光学的センサーを用いて行われている。
【0005】
しかし、半導体パッケージの薄型化・小型化に伴い、その製造に用いられる接着シートの厚みも薄層化している。これにより、各製造工程での光学的センサーによる接着シートの検知が困難になっている。その結果、例えば、接着シートをダイシングシートと貼り合わせる際に、所定位置に貼り合わせされず、位置ズレが生じる場合がある。また、接着シートがダイシングシートと所定位置で貼り合わせされず、これにより、ダイシングシートのみが搬送される場合がある。その結果、接着シートがない状態であると、半導体ウェハがマウントされずに搬送されることになる。また、半導体ウェハがマウントされる場合でも、当該半導体ウェハのマウント位置がずれている結果、所定位置にマウントされている他の半導体ウェハと接触するなどして、破損する場合がある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−179769号公報
【特許文献2】特開2000−104040号公報
【特許文献3】特開2002−261233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、接着シートが薄層化した場合にも、当該接着シートの有無を容易に識別することを可能にし、これにより製造装置のダウンタイムを短縮して、歩留まりの向上を可能にする半導体装置製造用の接着シート、及びそれを用いた半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、半導体装置製造用の接着シート、及びそれを用いた半導体装置の製造方法について検討した。その結果、下記構成を採用することにより前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明に係る半導体装置製造用の接着シートは、前記の課題を解決する為に、半導体素子を被着体に接着させる半導体装置製造用の接着シートであって、波長域が290〜450nmの範囲内にある光を吸収又は反射させる顔料を含有することを特徴とする。
【0010】
本発明の半導体装置製造用の接着シート(以下、「接着シート」という場合がある。)は顔料を含んで構成されており、該顔料は波長域が290〜450nmの範囲内にある光に対し吸収又は反射させる機能を接着シートに付加する。これにより、本発明に係る接着シートは、従来の接着シートと比較して、その有無の識別が容易となる。その結果、例えば、ダイシングシートとの貼り合わせや半導体ウェハのマウントの際に、位置ズレが生じるのを防止し、製造装置のダウンタイムの短縮及び歩留まりの向上が図れる。尚、本発明において「被着体」とは、例えば、リードフレーム、TABフィルム、基板又は別途作製した半導体チップ等を意味する。
【0011】
前記構成に於いて、前記顔料の含有量は、前記接着シートを構成する接着剤組成物100重量部に対して、0.1〜1重量部の範囲内であることが好ましい。これにより、波長域が290〜450nmの範囲内にある光に対する接着シートの透過率を、当該接着シートの検知が容易となる程度に良好にすることができる。
【0012】
前記の構成に於いては、前記顔料の平均粒径が0.01〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。顔料の平均粒径を0.01μm以上にすることにより、顔料による光吸収又は反射が効果的に行われることを可能にする。その一方、平均粒径を0.5μm以下にすることにより、顔料を均一に分散させることができ、吸収ムラや反射のバラツキの低減を可能にする。
【0013】
前記構成の接着シートは、前記290〜450nmの波長域にある光に対する透過率が40%以下であることが好ましい。これにより、例えば、接着シートの識別の為の光学式センサー等を不要とし、当該接着シートの識別を一層容易にするので、半導体ウェハやダイシングシート等との貼り合わせの際の位置ズレの発生を更に防止することができる。
【0014】
前記の構成に於いては、前記接着剤組成物として熱可塑性樹脂が含有されていることが好ましい。
【0015】
また、前記の構成に於いては、前記接着剤組成物として、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の双方が含有されていることが好ましい。
【0016】
前記の構成に於いては、前記熱可塑性樹脂がアクリル樹脂であることが好ましい。また、前記の構成に於いては、前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂又はフェノール樹脂の少なくとも何れか一方であってもよい。これらの樹脂はイオン性不純物が少なく耐熱性が高いので、半導体素子の信頼性を確保できる。
【0017】
また、前記接着シートとしては、架橋剤を添加したものを使用するのが好ましい。
【0018】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、前記の課題を解決する為に、波長域が290〜450nmの範囲内にある光を吸収又は反射させる顔料を含有する半導体装置製造用の接着シートに対し、半導体ウェハ又はダイシングシートを貼り合わせる際に、290〜450nmの波長域の光を吸収又は反射する前記接着シートを識別し、かつ、半導体ウェハ又はダイシングシートとの位置合わせをしながら貼り合わせを行うことを特徴とする。
【0019】
本発明の製造方法であると、顔料の添加により、波長域が290〜450nmの範囲内にある光を吸収又は反射させる接着シートを使用するので、半導体ウェハやダイシングシートとの貼り合わせの際に、当該接着シートの識別が容易となり、貼り合わせ精度の向上が図られる。その結果、製造装置のダウンタイムの短縮、及び歩留まりの向上が図れる。また、半導体装置の薄型化・小型化に対応して接着シートを薄層化する場合にも、当該接着シートの識別が、特別なセンサー等を要することなく容易に行えるので、歩留まりの低下を抑制して半導体装置の製造が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
先ず、本発明に係る半導体装置製造用の接着シートについて、以下に説明する。
本発明に係る接着シートは顔料を含有するものであれば、その構成は特に限定されない。例えば、図1(a)に示す様に、接着剤層の単層のみからなる接着シート101や、同図(b)に示すように、コア材料102の片面に接着剤層103が積層された接着シート104、又はその両面に接着剤層を形成した多層構造の接着シート等が挙げられる。
【0021】
前記コア材料102としては、フィルム(例えばポリイミドフイルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等)、ガラス繊維やプラスチック製不織繊維で強化された樹脂基板、シリコン基板又はガラス基板等が挙げられる。これらのコア材料のうち、接着剤層の構成材料との組み合わせにもよるが、例えば架橋された熱可塑性樹脂等からなるものを用いるのが好ましい。架橋したものを用いることにより、コア材料の流動性が低下するからである。また、接着シートとダイシングシートとの一体型のものを使用することもできる。
【0022】
前記顔料としては、水又はメチルエチルケトン等の有機溶剤に難溶性を示し、波長域が290〜450nm、好ましくは350〜450nm、より好ましくは400〜430nmの範囲内にある光に対し光吸収性を示すもの、又は光反射性を示すものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、シェンナ、アンバー、カオリン、炭酸カルシウム、酸化鉄、ランプブラック、ファーネスブラック、アイボリーブラック、黒鉛、フラーレン、カーボンブラック、ヴィリジアン、コバルトブルー、エメラルドグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、ミロリブルー、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、縮合アゾイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、ジニトロアニリンオレンジ、ペンズイミダゾロンオレンジ、ペリノンオレンジ、トルイジンレッド、パーマネントカーミン、アントラキノニルレッド、パーマネントレッド、ナフトールレッド、縮合アゾレッド、ベンズイミダゾロンカーミン、ベンズイミダゾロンブラウン、アントラピリミジンイエロー、キノフタロンイエロー、コバルト紫、マンガン紫等の無機顔料が挙げられる。これらの無機顔料は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
前記顔料の平均粒径は0.01〜0.5μmの範囲内であることが好ましく、0.05〜0.25μmの範囲内であることがより好ましい。前記数値範囲内にすることにより、顔料による光吸収又は反射を効果的に行うことが可能になると共に、顔料を均一に分散させることができ、吸収ムラや反射のバラツキの低減も可能になる。尚、顔料の平均粒径は、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
【0024】
接着シートの可視光領域(波長域:290〜450nm)の分光特性曲線における光吸収領域の光透過率は40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることが特に好ましい。光透過率が40%以下であると、光学式センサー等を用いた接着シートの識別を容易にし、半導体ウェハやダイシングシート等との貼り合わせの際の位置ズレの発生を一層防止することができる。
【0025】
顔料の含有量は、特に限定されるものではないが、顔料の分光特性と接着シートを構成する接着剤組成物(詳細は後述する。)の分光特性とを考慮し、接着シートの可視光領域の光に対する光透過率が40%以下となる様に、適宜設定するのが好ましい。具体的には、接着剤組成物100重量部に対して、0.1〜1重量部の範囲内であることが好ましく、0.2〜1重量部の範囲内であることがより好ましい。顔料の含有量を0.1重量部以上にすることにより、光学式センサーを用いて接着シートを識別する場合にも、当該光学式センサー対し好適となる分光特性を発現させることができる。その一方、含有量を1重量部以下にすることにより、接着シートの凝集力が高くなり過ぎるのを抑制し、例えば、エキスパンドの際の破断等を防止してエキスパンド性が低下するのを防止できる。また、ピックアップの際のダイシングシートに対する剥離性も良好にすることができる。
【0026】
接着シートの構成材料である接着剤組成物中に顔料を分散させる方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用することができる。具体的には、例えば、接着剤組成物と所定の溶剤とを混合した後、得られた混合物を顔料と共に三本ロールミル、ボールミル、サンドミル等の顔料分散機により混練分散する。続いて、遠心分離、グラスフィルター、メンブランフィルター等によりろ過して、所定値以上の粒径の顔料を除去し、これにより、接着シートの構成材料を作製させてもよい。また、顔料を、接着剤組成物と、相溶するバインダー樹脂の溶液と共に混合し、前記と同様の方法にて十分に分散させる。その後、前記ろ過を行うことにより、所定値以上の粒径の顔料を除去して着色剤を作製する。この着色剤を前記接着剤組成物と混合することにより、接着シートの構成材料を作製してもよい。尚、顔料が分散された接着剤組成物又は着色剤から、所定値以上の粒径の顔料を除去する際に、当該接着剤組成物又は着色剤の粘度は1500mPa・s以下に調整されていることが好ましく、400〜1200mPa・sであることがより好ましく、600〜1000mPa・sであることが特に好ましい。粘度を1500mPa・s以下にすることにより、顔料の分散度を向上させることが可能になり、その結果、接着シートの面内に於ける光吸収又は反射特性を均一にすることができる。
【0027】
接着シート(コア材料上に接着剤層が積層されている場合は、接着剤層)を被着体に接着し、175℃まで加熱した状態での剪断接着力は、0.2〜2MPaであることが好ましく、より好ましくは0.4MPa〜1.6MPaである。接着シートの剪断接着力を0.2MPa以上にすることにより、ワイヤーボンディング工程(後述する)を行っても、当該工程に於ける超音波振動や加熱により、接着シートと半導体素子及び被着体との接着面でのずり変形の発生を一層抑制することができる。即ち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体素子が動くのを抑制し、これによりワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。また、封止工程の際に、半導体素子が圧力で流れるのを防ぐことができる。剪断接着力が2MPaを超えると、接着力が強すぎる為、ピックアップ工程の際に、半導体チップ(半導体素子)のピックアップが困難になる場合がある。尚、剪断接着力の調整は、接着シートに於ける有機樹脂組成物に対して、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の混合量を適宜調整することにより可能である。
【0028】
また、接着シート(コア材料と積層されている場合は接着剤層)は、その接着機能の面から、少なくとも面内方向に対し垂直な方向に於いてある程度の弾性を有するのが好ましい。一方、接着シート全体として過度に弾性を有する場合は、ワイヤーボンディング時にボンディングワイヤーを接続しようとしても、接着シートを貼りあわせたリードフレームを十分に固定しておくことが接着シートの弾性力によって阻害される。その結果、加圧による圧着エネルギーを緩和して、ボンディング不良が発生する。前記のワイヤーボンディング工程に於いては、150℃〜200℃程度の高温条件下で行われる。そのため、接着シートの硬化前120℃に於ける引張貯蔵弾性率が1×10Pa以上であることが好ましく、0.1〜20Paであることがより好ましい。前記引張貯蔵弾性率が1×10Pa未満であると、ダイシング時に溶融した接着シートが、例えば半導体チップに固着し、ピックアップが困難になる場合がある。また、接着シートの硬化後200℃に於ける引張貯蔵弾性率は50MPa以下であることが好ましく、0.5MPa〜40MPaであることがより好ましい。50MPaを超えると、ワイヤーボンディング後のモールドの際に、接着シートの凹凸面に対する埋め込み性が低下する場合がある。尚、0.5MPa以上とすることにより、リードレス構造を特徴とした半導体装置では安定した結線が可能になる。引張貯蔵弾性率は、層状珪酸塩や無機充填剤(後述する)の添加量を適宜設定することにより調整することができる。引張貯蔵弾性率の測定方法は後述する。
【0029】
接着シートの厚さ(積層シートの場合は総厚)は、5〜100μmの範囲内であること好ましく、5〜70μmの範囲内であることより好ましい。本発明に於いては、半導体装置の薄型化・小型化に対応して接着シートを上記数値範囲で薄層化した場合にも、特別のセンサー等による検知を要することなく識別することができ、前記位置ズレの発生を防止することができる。
【0030】
前記接着剤層は接着機能を有する層であり、その構成材料としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを併用したものが挙げられる。又、熱可塑性樹脂単独でも使用可能である。
【0031】
前記熱可塑性樹脂としては、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂又はフッ素樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらの熱可塑性樹脂のうち、イオン性不純物が少なく耐熱性が高く、半導体素子の信頼性を確保できるアクリル樹脂が特に好ましい。
【0032】
前記アクリル樹脂としては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体等が挙げられる。前記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基等が挙げられる。
【0033】
また、前記重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸等の様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸等の様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等の様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。
【0034】
前記熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又は熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。特に、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等含有が少ないエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
【0035】
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定は無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型,ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうちノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型樹脂又はテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。
【0036】
更に前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうちフェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が特に好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0037】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0038】
尚、本発明に於いては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル樹脂を含む接着シートが特に好ましい。これらの樹脂は、イオン性不純物が少なく耐熱性が高いので、半導体素子の信頼性を確保できる。この場合の配合比は、アクリル樹脂成分100重量部に対して、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の混合量が10〜200重量部である。
【0039】
本発明の接着シートは、予めある程度架橋をさせておく為、作製に際し、重合体の分子鎖末端の官能基等と反応する多官能性化合物を架橋剤として添加させておくのがよい。これにより、高温下での接着特性を向上させ、耐熱性の改善を図る。
【0040】
前記架橋剤としては、従来公知のものを採用することができる。特に、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、多価アルコールとジイソシアネートの付加物等のポリイソシアネート化合物がより好ましい。架橋剤の添加量としては、接着剤組成物100重量部に対し、通常0.05〜7重量部とするのが好ましい。架橋剤の量が7重量部より多いと、接着力が低下するので好ましくない。その一方、0.05重量部より少ないと、凝集力が不足するので好ましくない。また、この様なポリイソシアネート化合物と共に、必要に応じて、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物を一緒に含ませるようにしてもよい。
【0041】
また、本発明の接着シートには、その用途に応じて無機充填剤を適宜配合することができる。無機充填剤の配合は、導電性の付与や熱伝導性の向上、弾性率の調節等を可能とする。前記無機充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、石膏、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミナ、酸化ベリリウム、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック類、アルミニウム、銅、銀、金、ニッケル、クロム、鈴、錫、亜鉛、パラジウム、半田等の金属、又は合金類、その他カーボン等からなる種々の無機粉末が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。なかでも、シリカ、特に溶融シリ力が好適に用いられる。また、無機充填剤の平均粒径は0.1〜80μmの範囲内であることが好ましい。
【0042】
前記無機充填剤の配合量は、有機樹脂成分100重量部に対し0〜80重量部に設定することが好ましく、0〜70重量部に設定することがより好ましい。
【0043】
尚、本発明の接着シートには、前記無機充填剤以外に、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば難燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤等が挙げられる。
【0044】
前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0045】
前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0046】
前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0047】
次に、前記接着シート101を用いた半導体装置の製造方法について、図2及び図3を参照しながら以下に説明する。
【0048】
先ず、ダイシングシートの粘着剤層上に前記接着シート101を貼り合わせる。当該ダイシングシートとしては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。本実施の形態では、基材層上に粘着剤層が積層されたものを用いる。
【0049】
貼り合わせの際には、例えば、接着シート101を識別する光学式センサーを用いて、接着シート101とダイシングシートとの位置合わせをしながら行う。接着シート101は290〜400nmの波長域にある光に対し透過率が40%以下であるので、特別のセンサーを設置することなく容易に識別可能である。前記光学式センサーとしては、290〜400nmの波長域にある光に対し検知可能なものであれば、特に限定されない。
【0050】
次に、接着シート101上に半導体ウェハを圧着し、これを接着保持させて固定する(マウント工程)。本工程は、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。また、本工程においても、所定の位置に半導体ウェハがマウントされる様に、接着シートの位置を識別する光学式センサーを用いて、位置合わせをしながら行う。
【0051】
次に、半導体ウェハのダイシングを行う。これにより、半導体ウェハを所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ202を形成する。ダイシングは、例えば半導体ウェハの回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えばダイシングシートにおける粘着剤層まで切込みを行なうフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウェハは、接着シート101により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウェハの破損も抑制できる。
【0052】
続いて、接着シート101に接着固定された半導体チップ202を剥離する為に、半導体チップ202のピックアップを行う。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ202をダイシングシート側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ202をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
【0053】
ここでピックアップは、粘着剤層が紫外線硬化型である場合は、粘着剤層に紫外線を照射した後に行う。これにより、粘着剤層の接着シート101に対する粘着力が低下し、半導体チップ202の剥離が容易になる。その結果、半導体チップを損傷させることなくピックアップが可能となる。紫外線照射の際の照射強度、照射時間等の条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。また、紫外線照射に使用する光源としては、前述のものを使用することができる。
【0054】
ピックアップした半導体チップ202は、接着シート101を介して被着体201に接着固定する(ダイボンド)。被着体201としては、リードフレーム、TABフィルム、基板又は別途作製した半導体チップ等が挙げられる。被着体201は、例えば、容易に変形されるような変形型被着体であってもよく、変形することが困難である非変形型被着体(半導体ウェハ等)であってもよい。
【0055】
前記基板としては、従来公知のものを使用することができる。また、前記リードフレームとしては、Cuリードフレーム、42Alloyリードフレーム等の金属リードフレームやガラスエポキシ、BT(ビスマレイミド−トリアジン)、ポリイミド等からなる有機基板を使用することができる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体素子をマウントし、半導体素子と電気的に接続して使用可能な回路基板も含まれる。
【0056】
接着シート101が熱硬化型の場合には、加熱硬化により、半導体チップ202を被着体201に接着固定し、耐熱強度を向上させる。
【0057】
また前記のダイボンドは、接着シート101を硬化させず、単に被着体201に仮固着させてもよい。その後、加熱工程を経ることなくワイヤーボンディングを行い、更に半導体チップを封止樹脂で封止して、当該封止樹脂をアフターキュアすることもできる。
【0058】
この場合、接着シート101としては、仮固着時の剪断接着力が、被着体201に対して0.2MPa以上のものを使用し、より好ましくは0.2〜10MPaの範囲内のものを使用するのが好ましい。接着シート101の剪断接着力が少なくとも0.2MPa以上であると、加熱工程を経ることなくワイヤーボンディング工程を行っても、当該工程に於ける超音波振動や加熱により、接着シート101と半導体チップ202又は被着体201との接着面でずり変形を生じることがない。即ち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体素子が動くことがなく、これによりワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。
【0059】
前記のワイヤーボンディングは、被着体201の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー203で電気的に接続する工程である(図3参照)。前記ボンディングワイヤー203としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線等が用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、80〜250℃、好ましくは80〜220℃の範囲内で行われる。また、その加熱時間は数秒〜数分間行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着工ネルギーの併用により行われる。
【0060】
本工程は、接着シート101による固着を行うことなく実行することができる。また、本工程の過程で接着シート101により半導体チップ202と被着体201とが固着することはない。
【0061】
前記封止工程は、封止樹脂204により半導体チップ202を封止する工程である(図3参照)。本工程は、被着体201に搭載された半導体チップ202やボンディングワイヤー203を保護する為に行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行う。封止樹脂204としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、通常175℃で60〜90秒間行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165〜185℃で、数分間キュアすることができる。これにより、封止樹脂を硬化させると共に、接着シート101を介して半導体チップ202と被着体201とを固着させる。即ち、本発明に於いては、後述する後硬化工程が行われない場合に於いても、本工程に於いて接着シート101による固着が可能であり、製造工程数の減少及び半導体装置の製造期間の短縮に寄与することができる。
【0062】
前記後硬化工程に於いては、前記封止工程で硬化不足の封止樹脂204を完全に硬化させる。封止工程に於いて接着シート101により固着がされない場合でも、本工程に於いて封止樹脂204の硬化と共に接着シート101による固着が可能となる。本工程に於ける加熱温度は、封止樹脂の種類により異なるが、例えば165〜185℃の範囲内であり、加熱時間は0.5〜8時間程度である。
【0063】
また、本発明のダイシング・ダイボンドフィルムは、図3に示すように、複数の半導体チップを積層して3次元実装をする場合にも好適に用いることができる。図3は、接着シートを介して半導体チップを3次元実装した例を示す断面模式図である。図3に示す3次元実装の場合、先ず半導体チップと同サイズとなる様に切り出した少なくとも1つの第1接着シート301を被着体201上に仮固着した後、第1接着シート301を介して第1半導体チップ302を、そのワイヤーボンド面が上側となる様にして仮固着する。次に、第2接着シート303を第1半導体チップ302の電極パッド部分を避けて仮固着する。更に、第2半導体チップ304を第2接着シート303上に、そのワイヤーボンド面が上側となる様にして仮固着する。
【0064】
次に、加熱工程を行うことなく、ワイヤーボンディング工程を行う。これにより、第1半導体チップ302及び第2半導体チップ304に於けるそれぞれの電極パッドと、被着体201とをボンディングワイヤー203で電気的に接続する。
【0065】
続いて、封止樹脂により半導体チップ等を封止する封止工程を行い、封止樹脂を硬化させる。それと共に、第1接着シート301により被着体201と第1半導体チップ302との間を固着する。また、第2接着シート303により第1半導体チップ302と第2半導体チップ304との間も固着させる。尚、封止工程の後、後硬化工程を行ってもよい。
【0066】
半導体チップの3次元実装の場合に於いても、第1接着シート301及び第2接着シート303の加熱による加熱処理を行わないので、製造工程の簡素化及び歩留まりの向上が図れる。また、被着体201に反りが生じたり、第1半導体チップ302及び第2半導体チップ304にクラックが発生したりすることもないので、半導体素子の一層の薄型化が可能になる。
【0067】
(その他の事項)
前記基板等上に半導体素子を3次元実装する場合、半導体素子の回路が形成される面側には、バッファーコート膜が形成されている。当該バッファーコート膜としては、例えば窒化珪素膜やポリイミド樹脂等の耐熱樹脂からなるものが挙げられる。
【0068】
また、半導体素子の3次元実装の際に、各段で使用される接着シートは同一組成からなるものに限定されず、製造条件や用途等に応じて適宜変更可能である。
【0069】
また、前記実施の形態に於いては、基板等に複数の半導体素子を積層させた後に、一括してワイヤーボンディング工程を行う態様について述べたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、半導体素子を基板等の上に積層する度にワイヤーボンディング工程を行うことも可能である。
【実施例】
【0070】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例に過ぎない。尚、各例中、部は特記がない限りいずれも重量基準である。
【0071】
(実施例1)
先ず、ブチルアクリレートを主成分としたポリマー(根上工業(株)製、商品名;パラクロンSN−710)100部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製、商品名;コロネートHX)3部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名;エピコート1003)33部、フェノール樹脂(荒川化学(株)製、商品名;P−180)22部、及び顔料として超微粒子酸化チタン(チタン工業(株)製、商品名;STT−4D、平均粒径0.15μm)0.2部をメチルエチルケトンに溶解させて撹拌し、濃度15重量%の接着剤組成物の溶液を調製した。
【0072】
この接着剤組成物の溶液を、三本ロールで練肉分散した後、400ppmで遠心分離し0.7μmのグラスフィルターでろ過した。
【0073】
次に、ろ過後の接着剤組成物の溶液を、シリコーン離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)からなる離型処理フィルム(コア材料)上に塗布し、その後、120℃で2分間乾燥させた。これにより、離型処理フィルム上に厚さ7μmの接着剤層を積層した本実施例1に係る接着シートを作製した。
【0074】
(実施例2)
アクリル系接着剤100部に対して、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製、商品名:コロネートHX)3部を添加したアクリル系接着剤組成物を調製した。尚、前記アクリル系接着剤は、アクリル酸2−エチルヘキシル70部、アクリル酸n−ブチル25部、及びアクリル酸5部を配合し、これらが構成モノマーとなるアクリル系共重合体を調製した後、当該アクリル系共重合体と、顔料としてファストゲンブルーGNPS(大日本インキ化学(株)製、青色顔料:銅フタロシアニン系顔料、平均粒径0.1μm)1部とをメチルエチルケトンに溶解させて、濃度15%となる様に調製して得た。
【0075】
次に、前記実施例1と同様にして、遠心分離をした後、ろ過を行い、離型処理フィルム上に厚さ7μmの接着剤層を積層した接着シートを作製した。
【0076】
(比較例1)
本比較例1に於いては、接着剤組成物の調製の際に顔料を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、本比較例1に係る接着シートを作製した。
【0077】
(結果)
前記の実施例1、2及び比較例1の接着シートについて、以下の方法により、引張貯蔵弾性率、剪断接着力、ダイシング性、吸湿信頼性の各評価を行った。これらの結果は表1に示される通りであった。
【0078】
[透過率の測定方法]
前記実施例及び比較例で作製した接着シートについて、波長が400nmの光に対する透過率を次の通りに測定した。日立ハイテクノロジーズ社製のU−3310(商品名)で紫外−可視−近赤外の吸収スペクトルをスキャンスピード300nm/minで測定し、各透過率を求めた。結果を下記表1に示す。
【0079】
[自動貼付機での搬送性]
前記実施例及び比較例で作製した接着シートに対して、半導体ウェハ100枚のマウントを行った際のトラブル回数を測定した。マウントには、日東精機(株)製のDR−8500II(商品名)を用いた。また、トラブル回数は、半導体ウェハが接着シート上の貼り合わせ位置にマウントされない等の位置ズレが発生し、当該装置が一時停止する様な場合を計測した。結果を下記表1に示す。
【0080】
[ピックアップ性評価]
前記実施例及び比較例で得られた接着シートにダイシングテープ(日東電工(株)製、商品名;DU−300)をラミネート温度40℃、線圧4kgf/cmで貼り付けし、半導体ウェハ(直径8インチ、厚さ100μm)の裏面に50℃で貼り付けした。その後、ダイサーを用いて、スピンドル回転数40,000rpm、切断速度50mm/secで5mm×5mm角の半導体チップのサイズにダイシング(切断)した。
【0081】
次に、ダイシングにより作製された半導体チップをダイボンダー((株)新川製、商品名;SPA−300)を用いてピックアップし、ピックアップ性の評価を行った。具体的には、半導体チップ100個をピックアップし、その成功した数をカウントして成功率(%)を算出した。
【0082】
[吸湿信頼性の評価]
前記半導体チップをビスマレイミド−トリアジン樹脂基板に、120℃×500gf×1secの条件でダイボンディングした。その後、180℃で1hrの熱履歴をかけ、エポキシ系封止樹脂(日東電工製、商品名;HC−300B6)により、これらをモールドマシン(TOWA製,Model−Y−serise)を用いて、175℃で、プレヒート設定3秒、インジェクション時間12秒、キュア時間120秒にてモールドした。更に、175℃×5hrの条件で加熱硬化して半導体パッケージを得た。
【0083】
この半導体パッケージを、恒温恒湿器を用いて、温度30℃、相対湿度60%RHの環境下で、192時間吸湿処理した。その後、IRリフロー装置SAI−2604M(千住金属工業製)に3回繰り返し投入した。そのときのパッケージ表面ピーク温度は、260℃になるように調整した。その後、パッケージの中心部を切断し、切断面を研磨した後、キーエンス製光学顕微鏡を用いて、パッケージの断面を観察した。パッケージの断面に於いて、接着シートの剥離が認められなかったものを○とし、剥離があったものを×とした。
【0084】
【表1】

【0085】
表1から明らかなように、本発明の実施例1、2の接着シートは、半導体ウェハのマウント時の歩留まりを向上させ良好な搬送性を示した。また、ピックアップ性、吸湿信頼性にも優れていた。これにより、本実施例1、2に係る接着シートは、顔料を含有させることで、接着シートを識別する為の特別のセンサーを必要とせずに認識することができ、自動貼付機のダウンタイムを短縮することができた。更に、マウント不良による半導体ウェハの割れも防止し、半導体パッケージの生産性の向上が可能となった。これに対して、比較例1に示す従来のアクリル樹脂からなる接着シートでは、半導体ウェハのマウントの際の位置ズレが起こり、これに伴う搬送トラブル、及び剥離不良も発生した。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態に係る接着シートを概略的に示す断面図であって、同図(a)は接着剤層のみからなる場合を示し、同図(b)はコア材料上に接着剤層が設けられた場合を示す。
【図2】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を製造する為の工程図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る半導体装置であって、被着体上に複数の半導体素子が3次元実装された状態を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0087】
101 接着シート(接着剤層)
102 コア材料
103 接着剤層
104 接着シート
201 回路基板(被着体)
202 半導体チップ(半導体素子)
203 ボンディングワイヤー
204 封止樹脂
301 第1接着シート
302 第1半導体チップ(半導体素子)
303 第2接着シート
304 第2半導体チップ(半導体素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を被着体に接着させる半導体装置製造用の接着シートであって、波長域が290〜450nmの範囲内にある光を吸収又は反射させる顔料を含有することを特徴とする半導体装置製造用の接着シート。
【請求項2】
前記顔料の含有量は、前記接着シートを構成する接着剤組成物100重量部に対して、0.1〜1重量部の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項3】
前記顔料の平均粒径が0.01〜0.5μmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項4】
前記290〜450nmの波長域にある光に対する透過率が40%以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項5】
前記接着剤組成物として熱可塑性樹脂が含有されていることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項6】
前記接着剤組成物として、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の双方が含有されていることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂がアクリル樹脂であることを特徴とする請求項5又は6に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項8】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂又はフェノール樹脂の少なくとも何れか一方であることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項9】
架橋剤が添加されていることを特徴とする請求項6又は8に記載の半導体装置製造用の接着シート。
【請求項10】
波長域が290〜450nmの範囲内にある光を吸収又は反射させる顔料を含有する半導体装置製造用の接着シートに対し、半導体ウェハ又はダイシングシートを貼り合わせる際に、290〜450nmの波長域の光を吸収又は反射する前記接着シートを識別し、かつ、半導体ウェハ又はダイシングシートとの位置合わせをしながら貼り合わせを行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−59917(P2009−59917A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226282(P2007−226282)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】