説明

半導体装置

【課題】高精度に平坦化されたSOG膜を半導体素子上に形成してなる半導体装置を提供する。
【課題の解決手段】半導体装置は、半導体基板上の半導体素子1の周囲をこの半導体素子1とは2μm程度の等間隔をおいて壁状突起物2を形成して、半導体素子1が中央に位置するように壁状突起物2で囲んだ状態で、SOG膜を形成することにより、壁状突起物2がストッパーとして機能し、流れ込んだSOGは壁状突起物2の側壁に近接した位置では傾斜状態となるが、中央部分の半導体素子1上では平坦状となって、半導体素子11上のSOG膜6の膜厚は均一になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、スピンオングラス(以下SOGという)を回転塗布して半導体基体表面の平坦化を図った半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高密度化にともない、パターンの微細化が要求され、この要求に応えるべく配線層の厚膜化が必要となっている。この配線層の膜厚化によって、半導体基体の表面の凹凸が顕著になり、配線切れの原因ともなるため、配線層の凸部と配線層間凹部の平坦化及び半導体基体全体に及ぶ段差を低減させることが求められている。従来から、この平坦化を図る手段として、SOGを塗布する方法が知られている。
【0003】
このSOGは、シリコン化合物を有機溶媒に溶解した液を基板上に滴下し、基板を高速回転することにより溶質の薄膜を基板上に形成し、これを加熱することによりアルコール及び水分を揮発させて得られる膜状の物質で、ガラスに似た特性を示す。SOG膜は、下地の凹凸の凹部には厚く、凸部には薄く塗布されるという液体と類似した性質を有するため、優れた平坦化特性を有しており、また、膜厚が増すにしたがって、平坦化特性が向上する。
【0004】
従来、このSOG膜形成に際して、抵抗素子やトランジスタ素子のような半導体素子上のSOG膜の塗布厚が、隣接する配線パターンや他の素子の影響により、不均一になる場合があった。このように、SOG膜の膜厚が不均一になると、SOG膜上に形成される層間絶縁膜や配線層の平坦性が損なわれて、配線の多層化にともなう膜厚段差が増大し、配線切れや半導体素子特性のバラツキが増大する。具体的には、抵抗素子の抵抗値変動や、トランジスタ素子のしきい値変動、リーク電流などが増大する。
【0005】
また、SOG膜は、雰囲気中の水分を吸収しやすく、水分が下層の抵抗素子やトランジスタ素子に達すると、同様に、抵抗素子の抵抗値変動や、トランジスタ素子のしきい値変動、リーク電流などが増大する。したがって、SOG膜の膜厚が不均一であると、水分の影響がある場所とない場所で半導体素子特性にバラツキを生じてしまう。
【0006】
従来、このSOG膜の不均一性を解消するものとして、エッチバックすることが提案されている(特許文献1)。また、SOG膜の下に半導体素子を覆うようにシリコン窒化膜を形成して、SOG膜中に侵入した水分の影響が半導体素子に及ばないようにすることが提案されている(特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】特開平5−267283号公報
【特許文献2】特開平6−188239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来のエッチバックによる平坦化では、半導体基体表面の平坦化精度が劣るという欠点がある。また、シリコン窒化膜を形成する技術では、工程数が増加するとともに、コストアップにつながるという欠点がある。本発明は、これらの欠点を解消して、高精度に平坦化されて水分の影響を最小限に抑制しうるSOG膜を半導体素子上に形成した半導体装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明者は、SOGを基板上に滴下し、基板を回転させて半導体素子上にSOG膜を形成する際、図4及び図5に示すように、配線層101の一方側から矢印方向に半導体素子102上に流れてくる場合と、他方側から矢印方向に半導体素子102上に流れてくる場合とでは、配線層101がストッパーの作用を奏するか否かにより、SOG膜103の形成態様に相違が生じる現象に着目した。
【0010】
すなわち、図5のように、配線層101を越えて流れてくる場合は、近傍にストッパーが存在しないので、SOGが広がってしまうため、半導体素子102上でのSOG膜103の膜厚が薄くなってしまう。一方、図4に示すように、配線層101がストッパーとして機能する場合は、配線層101近傍のSOG膜103は厚くなる。そして、配線層101などで周囲が囲まれた面では、配線層101がストッパーとして機能するので、配線層101に近接する部分は、流れ込んだSOGが配線層101に向けて上昇する傾斜状態となるが、周囲の配線層101から等距離にある中央部分では、平坦状態となって、SOG膜103の膜厚が均一になることを確認した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上述した知見に基づいてなされたもので、半導体基板上の半導体素子を被覆するスピンオングラス膜を形成してなる半導体装置であって、前記半導体素子の周囲を前記半導体素子が中央に位置するようにして壁状突起物で囲んで、スピンオングラス膜を形成してなるものである。前記壁状突起物は、半導体基板上の半導体素子近傍に設けられた配線と同一層に形成すると好適である。また、前記壁状突起物は、半導体素子と同一層に形成すると好適である。さらに、前記半導体素子をトランジスタとして、前記壁状突起物は前記トランジスタの配線と同一層に形成すると好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体素子が中央に位置するようにして壁状突起物で囲むことにより、断面状態で、前記壁状突起物から前記半導体素子までの距離が等間隔になって、どの方向からSOGが流れ込んできた場合でも、周囲を囲む前記壁状突起物がストッパーとして機能し、前記SOGが広がってしまうことがなく、十分な厚みを確保するとともに、中央に位置する前記半導体素子上のSOG膜の膜厚が均一になり、SOG膜中に侵入した水分の影響も均一化して抑制し、ひいては、半導体素子特性のバラツキがなくなるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る半導体装置の好適な実施形態を添付図面の図1及び図2に基づいて説明する。図1は半導体素子が抵抗素子である場合の平面図、図2はSOG膜を形成した状態を示す縦断面図であり、層間絶縁膜などの通常形成される公知の構成要素については適宜省略し、本発明に必要な構成要素のみを図示している。
【0014】
図1に示すように、抵抗素子であるポリシリコン抵抗1の周囲には、このポリシリコン抵抗1が中央に位置するようにして、具体的には、前記ポリシリコン抵抗1とは2μm程度の等間隔をおいて、壁状突起物であるアルミニウム配線2を四角状に形成している。このアルミニウム配線2は厚みが、ポリシリコン抵抗1周辺の配線7,8と同様、0.6μm〜1μm程度が好適である。すなわち、各配線2,7,8は同一層として形成されたものである。図2に示すように、前記ポリシリコン抵抗1及びアルミニウム配線2は、シリコン基板3とシリコン酸化膜4からなる基体5の表面に形成され、前記ポリシリコン抵抗1及び各配線2,7,8上にはSOG膜6が形成されている。
【0015】
SOG膜6の形成は、従来と同様に基体5上にSOGを滴下し、基体5を回転して塗布する回転塗布法で行う。この際、ポリシリコン抵抗1の周囲には、このポリシリコン抵抗1から等間隔をおいてアルミニウム配線2を形成しているので、SOGが周囲の四方のいずれから流れ込んでも、アルミニウム配線2がストッパーとして機能する。したがって、アルミニウム配線2の側壁に近接した位置ではSOGが傾斜状になるが、中央部分のポリシリコン抵抗1上では平坦状になって、ポリシリコン抵抗1上に形成されるSOG膜6は、膜厚が均一になる。
【0016】
SOGは、それ自体、あるいは成膜時に、雰囲気中の微量な水分を吸収しやすく、下層の素子が多くの水分や水素を含むようになる。この水分や水素によって、ポリシリコン抵抗1のキャリア濃度に増減が生じ、ポリシリコン抵抗1の抵抗値に影響を与える。SOG膜6の膜厚を均一に形成することによって、上記水分や水素がポリシリコン抵抗1に与える影響がいかなる場所でも均一となり、ポリシリコン抵抗1の抵抗値のバラツキを抑制する。
【0017】
なお、本発明に係る半導体素子はポリシリコン抵抗1のような抵抗素子に限らず、トランジスタ素子などでもよい。図3は半導体素子がトランジスタ素子である場合の平面図であり、この場合も上述と同様、トランジスタ素子11の周囲から等間隔をおいて壁状突起物であるアルミニウム配線12を、周辺の配線17,18と同一層として形成して、トランジスタ素子11が中央に位置するようにアルミニウム配線12で囲む。なお、トランジスタ素子11上の電極をアルミニウム配線12と同時に形成して、これらを同一層としてもよい。これによって、SOGが周囲の四方のいずれから流れ込んでも、アルミニウム配線12がストッパーとして機能し、アルミニウム配線12の側壁に近接した位置ではSOG膜が傾斜して形成されるが、中央部分のトランジスタ素子11上では平坦状となって、トランジスタ素子11上に形成されるSOG膜は、膜厚が均一になる。
【0018】
トランジスタ素子11においては、微細化による電界強度の増大にともない、ホットキャリアによるしきい値電圧やコンダクタンス等の特性劣化を招きやすくなっているが、SOG膜等の絶縁膜に含まれる水分や水素がトランジスタゲート電極に達すると、ホットキャリアによる特性劣化が加速する。また、トランジスタ素子11内に水分や水素が存在することで、リーク電流の増加にもつながる。本実施形態では、SOG膜を均一に形成することによって、上記水分や水素の影響をトランジスタ素子11内で均一とし、素子の特性バラツキを抑制する。
【0019】
また、壁状突起物はアルミニウム配線2,12に限らず、銅、モリブデン、タングステンなどの金属や、ポリシリコン、シリサイド、酸化物や窒化物等の絶縁物などでもよく、また、これらを積層したものでもよい。特に、例えば、壁状突起物にポリシリコンを用いる場合は、ポリシリコン抵抗1と同時に形成して、同一層とすることができる。さらに、壁状突起物は四角状に形成するほか、他の多角形状や円形状に形成するなど、その形状は限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかる半導体装置の平面図。
【図2】同じくSOG膜を形成した状態を示す縦断面図。
【図3】本発明の他の実施形態にかかる半導体装置の平面図。
【図4】従来のSOG膜を形成した状態を示す縦断面図。
【図5】同じくSOG膜を形成した状態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0021】
1 ポリシリコン抵抗
2 アルミニウム配線
3 シリコン基板
4 シリコン酸化膜
5 基体
6 SOG膜
7,8 配線
11 トランジスタ素子
12 アルミニウム配線
17,18 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上の半導体素子を被覆するスピンオングラス膜を形成してなる半導体装置であって、前記半導体素子の周囲を前記半導体素子が中央に位置するようにして壁状突起物で囲んで、スピンオングラス膜を形成してなることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
壁状突起物は、半導体基板上の半導体素子近傍に設けられた配線と同一層であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
壁状突起物は、半導体素子と同一層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体素子がトランジスタであって、壁状突起物は前記トランジスタの配線と同一層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−40713(P2010−40713A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200884(P2008−200884)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(390009667)セイコーNPC株式会社 (161)
【Fターム(参考)】