説明

半導体記憶装置

【課題】電源電圧の停止及び復帰を行う構成において、外部回路より半導体記憶装置を制御するための信号数を削減する。
【解決手段】酸化物半導体を半導体層に有するトランジスタを有する記憶回路と、記憶回路に保持されたデータを読み出すための電荷を蓄積する容量素子と、容量素子への電荷の蓄積を制御するための電荷蓄積回路と、データの読み出し状態を制御するデータ検出回路と、電源電圧が供給された直後の期間において、電源電圧の信号と電源電圧を遅延させた信号とにより、電荷蓄積回路による容量素子への電荷の蓄積をさせるための信号を生成するタイミング制御回路と、容量素子の一方の電極の電位を反転して出力するインバータ回路と、を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体記憶装置に関する。特に本発明は、電源を切っても記憶している論理状態が消えない信号処理装置の半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)などの信号処理装置は、その用途によって多種多様な構成を有している。信号処理装置は、一般的に、データやプログラムを記憶するためのメインメモリの他に、レジスタ、キャッシュメモリなど、各種の記憶装置が設けられている。レジスタは、演算処理やプログラムの実行状態の保持などのために一時的にデータ信号を保持する役割を担っている。また、キャッシュメモリは、演算装置とメインメモリの間に介在し、メインメモリへのアクセスを減らして演算処理を高速化させることを目的として設けられている。
【0003】
信号処理装置においてレジスタやキャッシュメモリ等の記憶装置は、メインメモリよりも高速でデータ信号の書き込みを行う必要がある。よって、通常は、レジスタまたはキャッシュメモリとしてフリップフロップまたはSRAM(Static Random Access Memory)等が用いられる。つまり、これらのレジスタ、キャッシュメモリ等には、電源電圧の供給が途絶えるとデータ信号を消失してしまう揮発性の記憶装置が用いられている。
【0004】
消費電力を抑えるため、データ信号の入出力が行われない期間において信号処理装置への電源電圧の供給を一時的に停止するという方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の方法では、揮発性の記憶装置の周辺に不揮発性の記憶装置を配置し、上記データ信号をその不揮発性の記憶装置に一時的に記憶させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−124290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の構成では、信号処理装置において電源電圧の供給を停止する間、揮発性の記憶装置の周辺に配置した不揮発性の記憶装置へ揮発性の記憶装置のデータを移して記憶させることができる。
【0007】
しかしながら揮発性の記憶装置と不揮発性の記憶装置とを分割して動作させるため、電源電圧の供給を停止する前及び電源電圧の供給を復帰した後での、不揮発性の記憶装置へのデータの書き込み及び不揮発性の記憶装置からのデータの読み出しをするための、別の制御信号の入力が必要になる。したがって不揮発性の記憶装置へのデータの書き込み、及び不揮発性の記憶装置からのデータの読み出しをするための制御信号の生成及び当該信号を供給するための配線が必要となる。
【0008】
上述の課題に鑑み、本発明の一態様は、電源電圧の停止及び復帰を行う構成において、外部回路より半導体記憶装置を制御するための信号数を削減することのできる半導体記憶装置を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、不揮発性の半導体記憶装置とする際、揮発性の記憶装置と不揮発性の記憶装置を分離することなく構成する。具体的に半導体記憶装置には、酸化物半導体を半導体層に有するトランジスタを有する記憶回路と、記憶回路に保持されたデータを読み出すための電荷を蓄積する容量素子と、容量素子への電荷の蓄積を制御するための電荷蓄積回路と、データの読み出し状態を制御するデータ検出回路と、電源電圧が供給された直後の期間において、電源電圧の信号と電源電圧の信号を遅延させた信号とにより、電荷蓄積回路による容量素子への電荷の蓄積を制御するための信号を生成するタイミング制御回路と、容量素子の一方の電極の電位を反転して出力するインバータ回路と、を有する構成とするものである。そしてデータとクロック信号により電源電圧の停止及び復帰があっても内部にデータを記憶し、再度動作が可能な半導体記憶装置とするものである。
【0010】
本発明の一態様は、第1端子がデータ入力線に電気的に接続され、ゲートがクロック信号線に電気的に接続され、酸化物半導体を半導体層に有する第1のトランジスタと、一方の電極が前記第1のトランジスタの第2端子に電気的に接続された第1の容量素子と、ゲートが前記第1のトランジスタの第2端子及び前記第1の容量素子の一方の電極に電気的に接続された第2のトランジスタとを、有する記憶回路と、前記記憶回路に保持されたデータを読み出すための電荷を蓄積する第2の容量素子と、電源電位線に電気的に接続され、前記第2の容量素子への電荷の蓄積を制御するための電荷蓄積回路と、前記第2の容量素子の一方の電極と前記第2のトランジスタの第1端子との導通状態または非導通状態を制御するデータ検出回路と、前記クロック信号線にクロック信号が供給される第1の期間において、前記クロック信号のトグル動作に応じて前記電荷蓄積回路と前記データ検出回路とが交互に導通状態となるような制御をし、且つ前記電源電位線に電源電圧が供給された直後の第2の期間において、前記電源電圧の信号と前記電源電圧による信号を遅延させた信号とにより、前記電荷蓄積回路による前記第2の容量素子への電荷の蓄積を制御するための信号を生成する、タイミング制御回路と、前記第2の容量素子の一方の電極の電位を反転して出力するインバータ回路と、を有する半導体記憶装置である。
【0011】
本発明の一態様は、第1端子がデータ入力線に電気的に接続され、ゲートがクロック信号線に電気的に接続され、酸化物半導体を半導体層に有する第1のトランジスタと、一方の電極が前記第1のトランジスタの第2端子に電気的に接続された第1の容量素子と、ゲートが前記第1のトランジスタの第2端子及び前記第1の容量素子の一方の電極に電気的に接続された第2のトランジスタとを、有する記憶回路と、前記記憶回路に保持されたデータを読み出すための電荷を蓄積する第2の容量素子と、第1端子が電源電位線に電気的に接続され、第2端子が前記第2の容量素子の一方の電極に電気的に接続された第3のトランジスタを有する電荷蓄積回路と、第1端子が前記第2の容量素子の一方の電極に電気的に接続され、第2端子が前記第2のトランジスタの第1端子に電気的に接続された第4のトランジスタを有するデータ検出回路と、前記クロック信号線にクロック信号が供給される第1の期間において前記クロック信号のトグル動作に応じて前記第3のトランジスタと前記第4のトランジスタとが交互に導通状態となるような制御をし、且つ前記電源電位線に電源電圧が供給された直後の第2の期間において、前記電源電圧の信号と前記電源電圧による信号を遅延させた信号とにより、前記第3のトランジスタを導通状態とするための信号を生成する、タイミング制御回路と、前記第2の容量素子の一方の電極の電位を反転して出力するインバータ回路と、を有する半導体記憶装置である。
【0012】
本発明の一態様において、前記第2のトランジスタはシリコンを半導体層に有する半導体記憶装置が好ましい。
【0013】
本発明の一態様において、前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとが積層して設けられている半導体記憶装置が好ましい。
【0014】
本発明の一態様において、前記データ検出回路は、前記第2のトランジスタの導通状態に基づいた前記第2の容量素子に蓄積された前記電荷の放出の有無により、前記第2の容量素子の一方の電極の電位を前記データが反転した反転データ信号に変換する回路である半導体記憶装置が好ましい。
【0015】
本発明の一態様において、前記電源電圧の信号を遅延させた回路は、遅延回路とバッファ回路とで構成される半導体記憶装置が好ましい。
【0016】
本発明の一態様において、前記タイミング制御回路は、前記電源電圧の信号と前記電源電圧を遅延させた信号とが入力される前記否定論理積回路と、前記否定論理積回路の出力信号と前記クロック信号とが入力される論理和回路で構成される半導体記憶装置が好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様により、電源電圧の停止及び復帰を行う構成において、クロック信号によりデータの記憶及び出力を可能とすることができる。また電源電圧が停止した際のデータの保持を別の制御信号を外部回路より供給することなく可能とすることで、半導体記憶装置を制御するための信号数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】半導体記憶装置の回路図。
【図2】半導体記憶装置を説明するための回路図。
【図3】半導体記憶装置のタイミングチャート図。
【図4】半導体記憶装置の動作を説明する図。
【図5】半導体記憶装置の動作を説明する図。
【図6】半導体記憶装置の動作を説明する図。
【図7】半導体記憶装置の構成を示す図。
【図8】信号処理装置のブロック図。
【図9】半導体記憶装置を用いたCPUのブロック図。
【図10】半導体記憶装置の作製工程を示す図。
【図11】半導体記憶装置の作製工程を示す図。
【図12】半導体記憶装置の作製工程を示す図。
【図13】半導体記憶装置の構成を示す断面図。
【図14】本発明の一態様に係る酸化物材料の結晶構造を説明する図。
【図15】本発明の一態様に係る酸化物材料の結晶構造を説明する図。
【図16】本発明の一態様に係る酸化物材料の結晶構造を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明の構成は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。したがって本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じ物を指し示す符号は異なる図面間において共通とする。
【0020】
なお、各実施の形態の図面等において示す各構成の、大きさ、層の厚さ、信号波形、または領域は、明瞭化のために誇張されて表記している場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0021】
なお、AとBとが接続されている、と明示的に記載する場合は、AとBとが電気的に接続されている場合と、AとBとが機能的に接続されている場合と、AとBとが直接接続されている場合とを含むものとする。
【0022】
なお本明細書にて用いる第1、第2、第3、乃至第N(Nは自然数)という用語は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0023】
(実施の形態1)
信号処理装置は半導体記憶装置を有する。信号処理装置は、単数または複数設けられる半導体記憶装置によって1ビットまたは複数ビットのデータ信号を記憶することができる。本実施の形態では、信号処理装置における半導体記憶装置の構成について説明する。
【0024】
なお、CPU、マイクロプロセッサ、画像処理回路、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSI(Large Scale Integrated Circuit)等が、信号処理装置の範疇に含まれる。
【0025】
図1(A)に半導体記憶装置のブロック図の一例を示す。図1(A)に示す本実施の形態の半導体記憶装置100は、クロック信号CLKのトグル動作により、入力されるデータDの保持及び出力が可能な回路である。本実施の形態の構成では、クロック信号がHレベル(高電源電位VDDのレベル)のタイミングでデータDを取り込み、クロック信号がLレベル(低電源電位VSSのレベル)のタイミングで取り込んだデータDを出力信号Qとして出力する。加えて本実施の形態の構成では、データを保持しているタイミングで高電源電位VDDと低電源電位VSS(GND)による電源電圧が停止しても、半導体記憶装置の内部では取り込んだデータDの保持が可能であり、再度電源電圧が復帰した場合に保持していたデータDの出力から動作を再開可能とするものである。
【0026】
なお本明細書における信号または電源電圧の停止とは、信号または電源電圧を供給する配線に供給する、信号または電源電圧の供給を行わないことをいう。また本明細書における信号または電源電圧の復帰とは、信号または電源電圧を供給する配線に供給する、信号または電源電圧の供給を停止していた状態から再度供給を再開することをいう。また本明細書における信号の固定とは、例えば所定の周波数によって発振される交流信号を、高電源電位VDDまたは低電源電位VSSの固定電位の直流信号にすることをいう。
【0027】
次いで具体的な半導体記憶装置100の回路構成について図1(B)に示す。図1(B)に示す半導体記憶装置100は、第1の容量素子113を有する記憶回路101、第2の容量素子102、電荷蓄積回路103(プリチャージ回路ともいう)、データ検出回路104、タイミング制御回路105及びインバータ回路106を有する。
【0028】
また図1(B)では半導体記憶装置100に入出力される信号を示している。図1(B)では、高電源電位VDDを供給する第1の電源電位線VDD、低電源電位VSSを供給する第2の電源電位線VSS、データDを供給するデータ入力線D、クロック信号CLKを供給するクロック信号線CLK、出力信号Qを出力する出力信号線Qが設けられている。また図1(B)では、高電源電位VDDの供給が復帰する際に当該高電源電位VDDが供給されることによる電位の上昇を遅延させた信号VDD_delayを供給する遅延高電源電位線VDD_delayが設けられている。
【0029】
図1(B)に示す記憶回路101は、第1のトランジスタ111、第2のトランジスタ112及び第1の容量素子113と、を有する。第1のトランジスタ111のソース及びドレインの一方の電極(第1端子)は、データ信号線Dに接続されている。第1のトランジスタ111のソース及びドレインの他方の電極(第2端子)は、第2のトランジスタ112のゲート及び第1の容量素子113の一方の電極に接続されている。第1のトランジスタ111のゲートは、クロック信号線CLKに接続されている。第1の容量素子113の他方の電極は第2の電源電位線VSSに接続されている。なお第1のトランジスタ111、第2のトランジスタ112及び第1の容量素子113が接続されたノードは、以下の説明において「記憶ノードD_HOLD」と呼ぶ。
【0030】
第1のトランジスタ111はゲートに供給されるクロック信号CLKのトグル動作に応じてデータDを記憶ノードD_HOLDに取り込む。例えば第1のトランジスタ111がnチャネル型のトランジスタであれば、クロック信号CLKがHレベルのとき、第1のトランジスタ111が導通状態となりデータDが記憶ノードD_HOLDに取り込まれる。またクロック信号CLKがLレベルのとき、第1のトランジスタ111が非導通状態となり、記憶ノードD_HOLDにおいて直前に取り込まれたデータDが保持される状態となる。
【0031】
図1(B)に示す第1のトランジスタ111は、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである。なお図面において、第1のトランジスタ111は酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタであることを示すために、OSの符号を付している。
【0032】
酸化物半導体としては、少なくともIn、Ga、Sn及びZnから選ばれた一種以上の元素を含有する。例えば、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体、In−Ga−O系酸化物半導体や、一元系金属の酸化物であるIn−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。また、上記酸化物半導体にInとGaとSnとZn以外の元素、例えばSiOを含ませてもよい。
【0033】
例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物半導体、という意味であり、その組成比は問わない。
【0034】
また、酸化物半導体は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Zn、Ga、Al、Mn及びCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0035】
また、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=10:1〜1:2)、更に好ましくはIn:Zn=1.5:1〜15:1(モル数比に換算するとIn:ZnO=3:4〜15:2)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0036】
酸化物半導体層内の水素を徹底的に排除することで高純度化された酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタは、そのオフ電流密度を100zA/μm以下、好ましくは10zA/μm以下、更に好ましくは1zA/μm以下にすることができる。よって、このオフ電流が、結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタのオフ電流に比べて著しく低い。その結果、第1のトランジスタ111が非導通状態である時、記憶ノードD_HOLDの電位、即ち第2のトランジスタ112のゲートの電位を長期間にわたり保持することができる。
【0037】
なお本明細書で説明するオフ電流とは、トランジスタが非導通状態のときに、ソースとドレインの間に流れる電流をいう。nチャネル型のトランジスタ(例えば、閾値電圧が0乃至2V程度)では、ゲートとソースとの間に印加される電圧が負の電圧の場合に、ソースとドレインとの間を流れる電流のことをいう。
【0038】
なお、上記において、酸化物半導体材料の代わりに酸化物半導体材料と同等のオフ電流特性が実現できる材料を用いても良い。例えば、炭化シリコンをはじめとするワイドギャップ材料(より具体的には、例えば、エネルギーギャップEgが3eVより大きい半導体材料)などを適用することができる。また、トランジスタの代わりにMEMSスイッチ等を用いて配線間の接続を切り離すことにより、記憶ノードD_HOLDの電荷の長期間の保持を実現する構成としてもよい。
【0039】
図1(B)に示す第2のトランジスタ112は、スイッチとして機能する素子である。図1(B)では、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタを用いて構成された例を示す。ここでいうスイッチとは、スイッチの一方の端子がトランジスタのソース及びドレインの一方に対応し、スイッチの他方の端子がトランジスタのソース及びドレインの他方に対応する。またスイッチの導通状態または非導通状態は、トランジスタのゲートに保持されるデータDに基づく電位によって選択される。nチャネル型のトランジスタである第2のトランジスタ112がスイッチとして機能する場合、Hレベルによって導通状態(ON状態)、Lレベルによって非導通状態(OFF状態)が選択される。
【0040】
図1(B)において、第2のトランジスタ112は、酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。例えば、シリコン層またはシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。
【0041】
なお、第1の容量素子113は、第2のトランジスタ112のゲートと第1のトランジスタ111のソース及びドレインの一方の電極とで形成される容量等を利用することによって、省略することも可能である。
【0042】
次いで図1(B)に示す第2の容量素子102は、一方の電極に予め蓄積した電荷をデータDに応じて放電の有無を選択し、放電の有無によって変化した電荷に応じた電位をインバータ回路106を介して出力信号Qとして出力するものである。したがって第2の容量素子は、電荷が蓄積された第1の状態と、記憶回路101の記憶ノードD_HOLDに保持されたデータDに応じて電荷の放電が選択された状態である第2の状態と、をとることができる。なお第2の容量素子102の一方の電極のノードは、以下の説明において「蓄積ノードN_PRE」と呼ぶ。
【0043】
図1(B)に示す電荷蓄積回路103は、第2の容量素子102の蓄積ノードN_PREに電荷を蓄積することで第1の状態とするための回路である。電荷蓄積回路103は、nチャネル型のトランジスタである第3のトランジスタ114を有する。第3のトランジスタ114の第1端子は、高電源電位VDDを供給する第1の電源電位線VDDに接続されている。第3のトランジスタ114の第2端子は、第2の容量素子の一方の電極に接続されている。第3のトランジスタ114のゲートは、タイミング制御回路105に接続されており、タイミング制御回路105からの信号に応じて導通状態または非導通状態が制御される。
【0044】
図1(B)に示すデータ検出回路104は、第2の容量素子102の蓄積ノードN_PREと記憶回路101における第2のトランジスタ112の第1端子との導通状態または非導通状態を制御する回路である。データ検出回路104は、pチャネル型のトランジスタである第4のトランジスタ115を有する。第4のトランジスタ115の第1端子は、第2の容量素子102の一方の電極に接続されている。第4のトランジスタ115の第2端子は、第2のトランジスタ112の第1端子に接続されている。第4のトランジスタ115のゲートは、タイミング制御回路105に接続されており、タイミング制御回路105からの信号に応じて導通状態または非導通状態が制御される。
【0045】
図1(B)に示すタイミング制御回路105は、クロック信号CLKがクロック信号線CLKに供給される期間(第1の期間ともいう)において、クロック信号CLKのトグル動作に応じて電荷蓄積回路103とデータ検出回路104とが交互に導通状態となるように制御する回路である。また図1(B)に示すタイミング制御回路105は、第1の電源電位線VDDに高電源電位VDDが供給された直後の期間(第2の期間ともいう)において、高電源電位VDDによる信号と当該高電源電位VDDによる信号を遅延させた信号VDD_delayとにより生成されるタイミング信号により、電荷蓄積回路103による第2の容量素子の蓄積ノードN_PREへの電荷の蓄積を制御する信号を生成する回路である。
【0046】
なお前述の電荷蓄積回路103における第3のトランジスタ114、及びデータ検出回路104における第4のトランジスタ115の導電型は交互に導通するように動作させるために設定するものである。また第3のトランジスタ114をnチャネル型のトランジスタとするのは、高電源電位VDDによる信号と当該高電源電位VDDによる信号を遅延させた信号VDD_delayとで生成されるタイミング信号によって、導通状態となるよう制御するためである。
【0047】
なお、高電源電位VDDによる信号を遅延させるための回路について、図2に一例を示す。図2に示す回路は、遅延回路部201及びバッファ回路部202を有する。遅延回路部201としては、抵抗素子203及び容量素子204を利用したRC遅延回路で構成すればよい。またバッファ回路部202としては、高電源電位VDDが供給される配線側にnチャネル型トランジスタ205を設け、低電源電位VSSが供給される配線側にpチャネル型トランジスタ206を設ける構成とすればよい。こうして遅延回路部201での信号の遅延を、バッファ回路部202への入力のLレベルからHレベルへの切り替わりのタイミングに変換することができる。
【0048】
ここで図1(B)では、タイミング制御回路105の具体的な回路構成の例を示す。図1(B)でタイミング制御回路105は、NAND回路116(否定論理積回路)、OR回路117(論理和回路)を有する。NAND回路116には、高電源電位VDDによる信号と当該高電源電位VDDによる信号を遅延させた信号VDD_delayとが入力され、NAND回路出力信号NAND_OUTを出力する。またOR回路117には、NAND回路出力信号NAND_OUTとクロック信号CLKとが入力され、OR回路出力信号OR_OUTを出力する。
【0049】
図1(B)に示すインバータ回路106は、第2の容量素子102の蓄積ノードN_PREの信号を反転した信号にして出力信号Qとして出力するための回路である。インバータ回路106は、例えば、pチャネル型トランジスタとnチャネル型トランジスタとを組み合わせた回路構成を用いればよい。
【0050】
次いで、データDの保持及び出力を繰り返す動作時において、電源電圧の供給を停止し、再び電源電圧の供給を復帰する場合の、本実施の形態の構成である半導体記憶装置100の動作について説明する。図3には図1(B)に示す半導体記憶装置のタイミングチャート図を示し、当該タイミングチャート図を参照して説明する。図3のタイミングチャート図において、VDD、VDD_delay、VSS、NAND_OUT、OR_OUT、D_HOLD、N_PRE及びQは、図1(B)で説明した入出力信号及びノードの電位に対応する。また図3に示すタイミングチャート図では、半導体記憶装置100が取り得る複数の状態について説明するため、図4乃至図6を用いて期間t1乃至期間t6の複数の期間を示している。
【0051】
なお図3乃至図6での説明において、データDはデータ毎にD1乃至DN(Nは自然数)と番号を付して示している。これは半導体記憶装置100内に取り込まれたデータDがどのタイミングで出力されるかを説明するために示すものである。またデータD1乃至DNが反転した信号があらわれる蓄積ノードN_PREの信号は、反転データD1_B乃至DN_Bとして示している。なお反転データD1_B乃至DN_Bが反転した信号は、データD1乃至DNとなる。
【0052】
なお、以下に示す図3の動作の説明では、各トランジスタの導電型及び論理回路を、図1(B)に示した構成として説明する。なお以下に示す動作の説明はこれに限定されず、各トランジスタの導通状態が図3と同じようになれば、適宜各トランジスタの導電性、論理回路の組み合わせ及び各制御信号の電位を設定することができる。また各信号は、Hレベル(高電源電位VDD)及びLレベル(低電源電位VSS)で表すことができる。
【0053】
まずデータDの保持及び出力を繰り返す動作を行う、図3中の第1の動作期間T_ON1の動作について説明する。第1の動作期間T_ON1では、データD1をデータ入力線Dから記憶ノードD_HOLDに取り込む、クロック信号CLKのトグル動作によってクロック信号CLKがHレベルとなる期間(図3中、期間t1)と、期間t1で記憶ノードD_HOLDに取り込まれたデータD1を保持し、且つ当該データD1を出力信号Qとして出力信号線より出力する期間(図3中、期間t2)に分けることができる。
【0054】
第1の動作期間T_ON1の期間t1での半導体記憶装置100が取り得るトランジスタの導通状態、及び電流の流れを点線矢印で可視化した図を図4(A)に示す。
【0055】
期間t1ではクロック信号CLKはHレベルであり、記憶回路101の第1のトランジスタ111が導通状態となる。そのためデータ入力線DからデータD1が記憶ノードD_HOLDに供給される。このとき第2のトランジスタ112の導通状態はデータD1の論理状態によるものとなり、図中では「ON/OFF」を示している。
【0056】
また期間t1では第1の電源電位線VDD及び遅延電源電位線VDD_delayがHレベルである。したがって、NAND_OUTはLレベルとなり、OR_OUTはHレベルとなる。OR_OUTがHレベルになると、電荷蓄積回路103における第3のトランジスタ114が導通状態となり、データ検出回路104における第4のトランジスタ115が非導通状態となる。その結果、蓄積ノードN_PREの電位が電荷蓄積回路103による電荷蓄積に伴いHレベルに上昇する。そしてインバータ回路106を介して出力される出力信号はLレベルとなる。
【0057】
第1の動作期間T_ON1の期間t2での半導体記憶装置100が取り得るトランジスタの導通状態、及び電流の流れを点線矢印で可視化した図を図4(B)に示す。
【0058】
期間t2ではクロック信号CLKはLレベルであり、記憶回路101の第1のトランジスタ111が非導通状態となる。そのためデータ入力線DがデータD2であっても、記憶ノードD_HOLDには前の期間に書き込まれたデータD1が保持される。このとき第2のトランジスタ112の導通状態はデータD1の論理状態によるものとなり、図中では「ON/OFF」を示している。
【0059】
また期間t2では第1の電源電位線VDD及び遅延電源電位線VDD_delayがHレベルである。したがって、NAND_OUTはLレベルとなり、OR_OUTはLレベルとなる。OR_OUTがLレベルになると、電荷蓄積回路103における第3のトランジスタ114が非導通状態となり、データ検出回路104における第4のトランジスタ115が導通状態となる。その結果、期間t1でHレベルに上昇した蓄積ノードN_PREの電位が、第2のトランジスタ112の導通状態に応じて変動することとなる。具体的にはデータD1がHレベルであれば第2のトランジスタ112が導通状態となり、Hレベルに上昇した蓄積ノードN_PREの電位が下降し、データD1が反転したLレベルとなる。またデータD1がLレベルであれば第2のトランジスタ112が非導通状態となり、Hレベルに上昇した蓄積ノードN_PREの電位が保持され、データD1が反転したHレベルとなる。すなわち蓄積ノードN_PREは、データD1が反転した反転データD1_Bとなる。そしてインバータ回路106を介して出力される出力信号は、反転データD1_Bを反転したD1となる。
【0060】
次いで電源電圧を停止する際の動作及び電源電圧停止時のデータDの保持を行う、図3中の電源電圧停止期間T_OFFの動作について説明する。電源停止期間T_OFFでは、データD及びクロック信号CLKをLレベルにして記憶ノードD_HOLDに保持されたデータD4を記憶する期間(図3中、期間t3)と、期間t3で記憶ノードD_HOLDに記憶されたデータD4を保持したままで電源電圧を停止し、入出力信号を不定状態にした期間(図3中、期間t4)に分けることができる。
【0061】
なお図3乃至図6での説明において、ハッチングを付した’X’の期間は入出力信号及び電源電圧の停止期間における、HレベルまたはLレベルの電源電位に基づく信号の供給は行わない不定状態の期間である。
【0062】
電源電圧停止期間T_OFFの期間t3での半導体記憶装置100が取り得るトランジスタの導通状態、及び電流の流れを点線矢印で可視化した図を図5(A)に示す。
【0063】
期間t3ではクロック信号CLK及びデータDはLレベルであり、記憶回路101の第1のトランジスタ111が非導通状態となる。そのためデータ入力線DがLレベルであっても、記憶ノードD_HOLDには前の期間に書き込まれたデータD4が保持される。このとき第2のトランジスタ112の導通状態はデータD4の論理状態によるものとなり、図中では「ON/OFF」を示している。
【0064】
また期間t3では第1の電源電位線VDD及び遅延電源電位線VDD_delayがHレベルである。したがって、NAND_OUTはLレベルとなり、OR_OUTはLレベルとなる。OR_OUTがLレベルになると、電荷蓄積回路103における第3のトランジスタ114が非導通状態となり、データ検出回路104における第4のトランジスタ115が導通状態となる。その結果、直前の期間でHレベルに上昇した蓄積ノードN_PREの電位が、第2のトランジスタ112の導通状態に応じて変動することとなる。具体的にはデータD4がHレベルであれば第2のトランジスタ112が導通状態となり、Hレベルに上昇した蓄積ノードN_PREの電位が下降し、データD4が反転したLレベルとなる。またデータD4がLレベルであれば第2のトランジスタ112が非導通状態となり、Hレベルに上昇した蓄積ノードN_PREの電位が保持され、データD4が反転したHレベルとなる。すなわち蓄積ノードN_PREは、データD4が反転した反転データD4_Bとなる。そしてインバータ回路106を介して出力される出力信号は、反転データD4_Bを反転したデータD4となる。
【0065】
電源電圧停止期間T_OFFの期間t4での半導体記憶装置100が取り得るトランジスタの導通状態、及び電流の流れを点線矢印で可視化した図を図5(B)に示す。
【0066】
期間t4ではクロック信号CLKはLレベル、データDは不定状態であり、記憶回路101の第1のトランジスタ111が非導通状態となる。そのため、記憶ノードD_HOLDには前の期間に書き込まれたデータD4が保持し続ける。このとき第2のトランジスタ112の導通状態はデータD4の論理状態によるものとなり、図中では「ON/OFF」を示している。
【0067】
また期間t4では第1の電源電位線VDD及び遅延電源電位線VDD_delayが不定状態である。したがってNAND回路116及びOR回路117の出力が不定状態となる。そのため、NAND_OUT及びOR_OUTは不定状態となる。OR_OUTが不定状態になると、電荷蓄積回路103における第3のトランジスタ114及びデータ検出回路104における第4のトランジスタ115の導通状態が不定状態となる。そのため、蓄積ノードN_PREの電位も不定状態となり、そしてインバータ回路106を介して出力される出力信号も、不定状態となる。
【0068】
次いで電源電圧を復帰し、電源電圧停止時に保持したデータDを読み出す、図3中の第2の動作期間T_ON2の動作について説明する。第2の動作期間T_ON2では、クロック信号CLKをLレベル、第1の電源電位線VDDをHレベル及び遅延電源電位線VDD_delayをLレベルにして蓄積ノードN_PREの電位をHレベルにする期間(図3中、期間t5)と、電源電圧停止時に記憶ノードD_HOLDに保持されたデータD4を出力信号Qとして出力信号線より出力する期間(図3中、期間t6)に分けることができる。
【0069】
第2の動作期間T_ON2の期間t5での半導体記憶装置100が取り得るトランジスタの導通状態、及び電流の流れを点線矢印で可視化した図を図6(A)に示す。
【0070】
期間t5ではクロック信号CLK及びデータDはLレベルであり、記憶回路101の第1のトランジスタ111が非導通状態となる。そのためデータ入力線DがLレベルであっても、記憶ノードD_HOLDには電源電圧停止時の直前に書き込まれたデータD4が保持されている。このとき第2のトランジスタ112の導通状態はデータD4の論理状態によるものとなり、図中では「ON/OFF」を示している。
【0071】
また期間t5では第1の電源電位線VDDがHレベル、及び遅延電源電位線VDD_delayがLレベルである。したがって、NAND_OUTはHレベルとなり、OR_OUTはHレベルとなる。OR_OUTがHレベルになると、電荷蓄積回路103における第3のトランジスタ114が導通状態となり、データ検出回路104における第4のトランジスタ115が非導通状態となる。その結果、蓄積ノードN_PREの電位が電荷蓄積回路103による電荷蓄積に伴いHレベルに上昇する。そしてインバータ回路106を介して出力される出力信号はLレベルとなる。
【0072】
第2の動作期間T_ON2の期間t6での半導体記憶装置100が取り得るトランジスタの導通状態、及び電流の流れを点線矢印で可視化した図を図6(B)に示す。
【0073】
期間t6ではクロック信号CLKはLレベルであり、記憶回路101の第1のトランジスタ111が非導通状態となる。そのためデータ入力線DがデータD5であっても、記憶ノードD_HOLDには電源電圧停止時の直前に書き込まれたデータD4が保持されている。このとき第2のトランジスタ112の導通状態はデータD4の論理状態によるものとなり、図中では「ON/OFF」を示している。
【0074】
また期間t6では第1の電源電位線VDD及び遅延電源電位線VDD_delayがHレベルである。したがって、NAND_OUTはLレベルとなり、OR_OUTはLレベルとなる。OR_OUTがLレベルになると、電荷蓄積回路103における第3のトランジスタ114が非導通状態となり、データ検出回路104における第4のトランジスタ115が導通状態となる。その結果、期間t5でHレベルに上昇した蓄積ノードN_PREの電位が、第2のトランジスタ112の導通状態に応じて変動することとなる。具体的にはデータD4がHレベルであれば第2のトランジスタ112が導通状態となり、Hレベルに上昇した蓄積ノードN_PREの電位が下降し、データD4が反転したLレベルとなる。またデータD4がLレベルであれば第2のトランジスタ112が非導通状態となり、Hレベルに上昇した蓄積ノードN_PREの電位が保持され、データD4が反転したHレベルとなる。すなわち蓄積ノードN_PREは、データD4が反転した反転データD4_Bとなる。そしてインバータ回路106を介して出力される出力信号は、反転データD4_Bを反転したデータD4となる。
【0075】
以上が、半導体記憶装置100の動作の説明である。
【0076】
本発明の一形態である半導体記憶装置では、揮発性の記憶装置と不揮発性の記憶装置とを分割して動作することなく、電源電圧の供給を停止する前及び電源電圧の供給を復帰した後での、データの保持及び読み出しをすることができる。またデータの書き込み及びデータの読み出しのための制御信号を必要とすることなく前述のデータの保持及び読み出しができ、半導体記憶装置を制御するための信号数を削減することができる。
【0077】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0078】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示した半導体記憶装置100を複数用いる構成について説明する。
【0079】
図7に、本実施の形態における半導体記憶装置の構成を一例として示す。図7に示す半導体記憶装置は、高電源電位VDD及び低電源電位VSSに接続されたインバータ回路401と、半導体記憶装置402を複数有する半導体記憶装置群403と、遅延高電源電位生成回路404とを有している。
【0080】
各半導体記憶装置402には、実施の形態1に記載されている構成を有する半導体記憶装置100を用いることができる。
【0081】
半導体記憶装置群403が有する各半導体記憶装置402には、インバータ回路401を介して、高電源電位VDDと低電源電位VSSとを選択信号SigAにより切り替えて印加する。
【0082】
また半導体記憶装置群403が有する各半導体記憶装置402には、図2で示した信号VDD_delayを生成するための遅延高電源電位生成回路404にそれぞれ接続されている。
【0083】
更に、半導体記憶装置群403が有する各半導体記憶装置402には、信号INの電位と、低電源電位VSSが与えられている。
【0084】
以上のような構成により、複数の半導体記憶装置100に高電源電位VDD及び当該高電源電位VDDが遅延した信号である信号VDD_delayを供給することができる。
【0085】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0086】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1で示した半導体記憶装置を用いた信号処理装置の構成について説明する。
【0087】
図8に、本発明の一態様に係る信号処理装置の一例を示す。信号処理装置は、一または複数の演算装置と、一または複数の半導体記憶装置とを少なくとも有する。具体的に、図8に示す信号処理装置150は、演算装置151、演算装置152、半導体記憶装置153、半導体記憶装置154、半導体記憶装置155、制御装置156、電源制御回路157を有する。
【0088】
演算装置151、演算装置152は、単純な論理演算を行う論理回路をはじめ、加算器、乗算器、更には各種演算装置などを含む。そして、半導体記憶装置153は、演算装置151における演算処理の際に、データ信号を一時的に保持するレジスタとして機能する。半導体記憶装置154は、演算装置152における演算処理の際に、データ信号を一時的に保持するレジスタとして機能する。
【0089】
また、半導体記憶装置155はメインメモリとして用いることができ、制御装置156が実行するプログラムをデータ信号として記憶する、或いは演算装置151、演算装置152からのデータ信号を記憶することができる。
【0090】
制御装置156は、信号処理装置150が有する演算装置151、演算装置152、半導体記憶装置153、半導体記憶装置154、半導体記憶装置155の動作を統括的に制御する回路である。なお、図8では、制御装置156が信号処理装置150の一部である構成を示しているが、制御装置156は信号処理装置150の外部に設けられていても良い。
【0091】
実施の形態1で示した半導体記憶装置を半導体記憶装置153、半導体記憶装置154、半導体記憶装置155に用いることで、半導体記憶装置153、半導体記憶装置154、半導体記憶装置155への電源電圧の供給を停止しても、制御する信号数を増加させることなく、データ信号を保持することができる。よって、信号処理装置150全体への電源電圧の供給を停止し、消費電力を抑えることができる。或いは、半導体記憶装置153、半導体記憶装置154、または半導体記憶装置155のいずれか一つまたは複数への電源電圧の供給を停止し、信号処理装置150の消費電力を抑えることができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復帰することができる。
【0092】
また、半導体記憶装置への電源電圧の供給が停止されるのに合わせて、当該半導体記憶装置とデータ信号のやり取りを行う演算装置または制御回路への、電源電圧の供給を停止するようにしても良い。例えば、演算装置151と半導体記憶装置153において、動作が行われない場合、演算装置151及び半導体記憶装置153への電源電圧の供給を停止するようにしても良い。
【0093】
また、電源制御回路157は、信号処理装置150が有する演算装置151、演算装置152、半導体記憶装置153、半導体記憶装置154、半導体記憶装置155、制御装置156へ供給する電源電圧の大きさを制御する。そして、電源電圧の供給を停止する場合、電源電圧の供給の停止は、電源制御回路157で行われる構成でも良いし、演算装置151、演算装置152、半導体記憶装置153、半導体記憶装置154、半導体記憶装置155、制御装置156のそれぞれで行われる構成でも良い。
【0094】
なお、メインメモリである半導体記憶装置155と、演算装置151、演算装置152、制御装置156の間に、キャッシュメモリとして機能する半導体記憶装置を設けても良い。キャッシュメモリを設けることで、メインメモリへのアクセスを減らして演算処理などの信号処理を高速化させることができる。キャッシュメモリとして機能する半導体記憶装置にも、上述した半導体記憶装置を用いることで、制御する信号数を増加させることなく、信号処理装置150の消費電力を抑えることができる。
【0095】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0096】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る信号処理装置の一つである、CPUの構成について説明する。
【0097】
図9に、本実施の形態のCPUの構成を示す。図9に示すCPUは、基板9900上に、ALU9901、ALU・Controller9902、Instruction・Decoder9903、Interrupt・Controller9904、Timing・Controller9905、Register9906、Register・Controller9907、Bus・I/F9908、書き換え可能なROM9909、ROM・I/F9920と、を主に有している。なお、ALUはArithmetic logic unitであり、Bus・I/Fはバスインターフェースであり、ROM・I/FはROMインターフェースである。ROM9909及びROM・I/F9920は、別チップに設けても良い。勿論、図9に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0098】
Bus・I/F9908を介してCPUに入力された命令は、Instruction・Decoder9903に入力され、デコードされた後、ALU・Controller9902、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907、Timing・Controller9905に入力される。
【0099】
ALU・Controller9902、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907、Timing・Controller9905は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行なう。具体的にALU・Controller9902は、ALU9901の動作を制御するための信号を生成する。また、Interrupt・Controller9904は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。Register・Controller9907は、Register9906のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてRegister9906の読み出しや書き込みを行なう。
【0100】
またTiming・Controller9905は、ALU9901、ALU・Controller9902、Instruction・Decoder9903、Interrupt・Controller9904、Register・Controller9907の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばTiming・Controller9905は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に入力する。
【0101】
本実施の形態のCPUでは、Register9906に、上記実施の形態で示した構成を有する半導体記憶装置が設けられている。Register・Controller9907は、ALU9901からの指示に従い、Register9906が有する半導体記憶装置において、制御する信号数を増加させることなく、電源電圧の供給を停止することができる。
【0102】
この様にして、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータ信号を保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUを停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
【0103】
本実施の形態では、CPUを例に挙げて説明したが、本発明の信号処理装置はCPUに限定されず、マイクロプロセッサ、画像処理回路、DSP、FPGA等のLSIにも応用可能である。
【0104】
本実施の形態は、上記実施の形態と組み合わせて実施することが可能である。
【0105】
(実施の形態5)
図1(B)に示した記憶回路101において、チャネルがシリコンに形成される場合における第2のトランジスタ112と、チャネルが酸化物半導体層に形成される第1のトランジスタ111と、第1の容量素子113とを例に挙げて、半導体記憶装置100の作製方法について説明する。
【0106】
図10(A)に示すように、基板700上に絶縁膜701と、単結晶の半導体基板から分離された半導体膜702とを形成する。
【0107】
基板700として使用することができる素材に大きな制限はないが、少なくとも、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、基板700には、フュージョン法やフロート法で作製されるガラス基板、石英基板、半導体基板、セラミック基板等を用いることができる。ガラス基板としては、後の加熱処理の温度が高い場合には、歪み点が730℃以上のものを用いると良い。
【0108】
また、本実施の形態では、半導体膜702が単結晶のシリコンである場合を例に挙げて、以下、第2のトランジスタ112の作製方法について説明する。なお、具体的な単結晶の半導体膜702の作製方法の一例について、簡単に説明する。まず、単結晶の半導体基板であるボンド基板に、電界で加速されたイオンでなるイオンビームを注入し、ボンド基板の表面から一定の深さの領域に、結晶構造が乱されることで局所的に脆弱化された脆化層を形成する。脆化層が形成される領域の深さは、イオンビームの加速エネルギーとイオンビームの入射角によって調節することができる。そして、ボンド基板と、絶縁膜701が形成された基板700とを、間に当該絶縁膜701が挟まるように貼り合わせる。貼り合わせは、ボンド基板と基板700とを重ね合わせた後、ボンド基板と基板700の一部に、1N/cm以上500N/cm以下、好ましくは11N/cm以上20N/cm以下程度の圧力を加える。圧力を加えると、その部分からボンド基板と絶縁膜701とが接合を開始し、最終的には密着した面全体に接合がおよぶ。次いで、加熱処理を行うことで、脆化層に存在する微小ボイドどうしが結合して、微小ボイドの体積が増大する。その結果、脆化層においてボンド基板の一部である単結晶半導体膜が、ボンド基板から分離する。上記加熱処理の温度は、基板700の歪み点を越えない温度とする。そして、上記単結晶半導体膜をエッチング等により所望の形状に加工することで、半導体膜702を形成することができる。
【0109】
半導体膜702には、閾値電圧を制御するために、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型の導電性を付与する不純物元素、若しくはリン、砒素などのn型の導電性を付与する不純物元素を添加しても良い。閾値電圧を制御するための不純物元素の添加は、パターニングする前の半導体膜に対して行っても良いし、パターニング後に形成された半導体膜702に対して行っても良い。また、閾値電圧を制御するための不純物元素の添加を、ボンド基板に対して行っても良い。若しくは、不純物元素の添加を、閾値電圧を大まかに調整するためにボンド基板に対して行った上で、閾値電圧を微調整するために、パターニング前の半導体膜に対して、またはパターニングにより形成された半導体膜702に対しても行っても良い。
【0110】
なお、本実施の形態では、単結晶の半導体膜を用いる例について説明しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、絶縁膜701上に気相成長法を用いて形成された多結晶、微結晶、非晶質の半導体膜を用いても良いし、上記半導体膜を公知の技術により結晶化しても良い。公知の結晶化方法としては、レーザ光を用いたレーザ結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法がある。或いは、触媒元素を用いる結晶化法とレーザ結晶化法とを組み合わせて用いることもできる。また、石英のような耐熱性に優れている基板を用いる場合、電熱炉を使用した熱結晶化方法、赤外光を用いたランプアニール結晶化法、触媒元素を用いる結晶化法、950℃程度の高温アニール法を組み合わせた結晶化法を用いても良い。
【0111】
次に、図10(B)に示すように、半導体膜702上にゲート絶縁膜703を形成した後、ゲート絶縁膜703上にマスク705を形成し、導電性を付与する不純物元素を半導体膜702の一部に添加することで、不純物領域704を形成する。
【0112】
ゲート絶縁膜703は、高密度プラズマ処理、熱処理などを行うことにより半導体膜702の表面を酸化または窒化することで形成することができる。高密度プラズマ処理は、例えばHe、Ar、Kr、Xeなどの希ガスと酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などの混合ガスとを用いて行う。この場合、プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体膜の表面を酸化または窒化することにより、1〜20nm、望ましくは5〜10nmの絶縁膜が半導体膜に接するように形成できる。例えば、亜酸化窒素(NO)をArで1〜3倍(流量比)に希釈して、10〜30Paの圧力にて3〜5kWのマイクロ波(2.45GHz)電力を印加して半導体膜702の表面を酸化若しくは窒化させる。この処理により1nm〜10nm(好ましくは2nm〜6nm)の絶縁膜を形成する。更に亜酸化窒素(NO)とシラン(SiH)を導入し、10〜30Paの圧力にて3〜5kWのマイクロ波(2.45GHz)電力を印加して気相成長法により酸化窒化珪素膜を形成してゲート絶縁膜を形成する。固相反応と気相成長法による反応を組み合わせることにより界面準位密度が低く絶縁耐圧の優れたゲート絶縁膜を形成することができる。
【0113】
上述した高密度プラズマ処理による半導体膜の酸化または窒化は固相反応で進むため、ゲート絶縁膜703と半導体膜702との界面準位密度を極めて低くすることができる。また高密度プラズマ処理により半導体膜702を直接酸化または窒化することで、形成される絶縁膜の厚さのばらつきを抑えることができる。また半導体膜が結晶性を有する場合、高密度プラズマ処理を用いて半導体膜の表面を固相反応で酸化させることにより、結晶粒界においてのみ酸化が速く進んでしまうのを抑え、均一性が良く、界面準位密度の低いゲート絶縁膜を形成することができる。高密度プラズマ処理により形成された絶縁膜を、ゲート絶縁膜の一部または全部に含んで形成されるトランジスタは、特性のばらつきを抑えることができる。
【0114】
また、プラズマCVD法またはスパッタリング法などを用い、酸化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化アルミニウムまたは酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSi(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAl(x>0、y>0))等を含む膜を、単層で、または積層させることで、ゲート絶縁膜703を形成しても良い。
【0115】
なお、本明細書において酸化窒化物とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い物質であり、また、窒化酸化物とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い物質を意味する。
【0116】
ゲート絶縁膜703の厚さは、例えば、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。本実施の形態では、プラズマCVD法を用いて、酸化珪素を含む単層の絶縁膜を、ゲート絶縁膜703として用いる。
【0117】
次いで、マスク705を除去した後、図10(C)に示すように、ゲート絶縁膜703の一部を除去して、不純物領域704と重畳する領域にエッチング等により開口部706を形成した後、ゲート電極707及び導電膜708を形成する。
【0118】
ゲート電極707及び導電膜708は、開口部706を覆うように導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、形成することができる。導電膜708は、開口部706において不純物領域704と接している。上記導電膜の形成にはCVD法、スパッタリング法、蒸着法、スピンコート法等を用いることができる。また、導電膜は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等を用いることができる。上記金属を主成分とする合金を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。または、半導体膜に導電性を付与するリン等の不純物元素をドーピングした、多結晶珪素などの半導体を用いて形成しても良い。
【0119】
なお、本実施の形態ではゲート電極707及び導電膜708を単層の導電膜で形成しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。ゲート電極707及び導電膜708は積層された複数の導電膜で形成されていても良い。
【0120】
2つの導電膜の組み合わせとして、1層目に窒化タンタルまたはタンタルを、2層目にタングステンを用いることができる。上記例の他に、窒化タングステンとタングステン、窒化モリブデンとモリブデン、アルミニウムとタンタル、アルミニウムとチタン等が挙げられる。タングステンや窒化タンタルは、耐熱性が高いため、2層の導電膜を形成した後の工程において、熱活性化を目的とした加熱処理を行うことができる。また、2層の導電膜の組み合わせとして、例えば、n型の導電性を付与する不純物元素がドーピングされた珪素とニッケルシリサイド、n型の導電性を付与する不純物元素がドーピングされた珪素とタングステンシリサイド等も用いることができる。
【0121】
3つの導電膜を積層する3層構造の場合は、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造を採用するとよい。
【0122】
また、ゲート電極707及び導電膜708に酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ、酸化インジウム酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化亜鉛アルミニウム、酸窒化亜鉛アルミニウム、または酸化亜鉛ガリウム等の透光性を有する酸化物導電膜を用いることもできる。
【0123】
なお、マスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的にゲート電極707及び導電膜708を形成しても良い。液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を細孔から吐出または噴出することで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。
【0124】
また、ゲート電極707及び導電膜708は、導電膜を形成後、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極層に印加される電力量、基板側の電極層に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節することにより、所望のテーパー形状を有するようにエッチングすることができる。また、テーパー形状は、マスクの形状によっても角度等を制御することができる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化珪素若しくは四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄若しくは弗化窒素などのフッ素系ガスまたは酸素を適宜用いることができる。
【0125】
スパッタ法を用いて酸化物半導体層716を作製する場合には、成膜処理室内に存在する水、水素を極力低減しておく。具体的には、成膜前に成膜処理室内を加熱する、成膜処理室内に導入されるガス中の水及び/又は水素濃度を低減する、及び成膜処理室から排気されるガスの逆流を防止するなどを行うことが好適である。
【0126】
次に、図10(D)に示すように、ゲート電極707及び導電膜708をマスクとして一導電性を付与する不純物元素を半導体膜702に添加することで、ゲート電極707と重なるチャネル形成領域710と、チャネル形成領域710を間に挟む一対の不純物領域709と、不純物領域704の一部に更に不純物元素が添加された不純物領域711とが、半導体膜702に形成される。
【0127】
本実施の形態では、半導体膜702にp型を付与する不純物元素(例えばボロン)を添加する場合を例に挙げる。
【0128】
次いで、図11(A)に示すように、ゲート絶縁膜703、ゲート電極707、導電膜708を覆うように、絶縁膜712、絶縁膜713を形成する。具体的に、絶縁膜712、絶縁膜713は、酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの無機の絶縁膜を用いることができる。特に、絶縁膜712、絶縁膜713に誘電率の低い(low−k)材料を用いることで、各種電極や配線の重なりに起因する容量を十分に低減することが可能になるため好ましい。なお、絶縁膜712、絶縁膜713に、上記材料を用いた多孔性の絶縁膜を適用しても良い。多孔性の絶縁膜では、密度の高い絶縁膜と比較して誘電率が低下するため、電極や配線に起因する寄生容量を更に低減することが可能である。
【0129】
本実施の形態では、絶縁膜712として酸化窒化珪素、絶縁膜713として窒化酸化珪素を用いる場合を例に挙げる。また、本実施の形態では、ゲート電極707及び導電膜708上に絶縁膜712、絶縁膜713を形成している場合を例示しているが、本発明はゲート電極707及び導電膜708上に絶縁膜を1層だけ形成していても良いし、3層以上の複数の絶縁膜を積層するように形成していても良い。
【0130】
次いで、図11(B)に示すように、絶縁膜712及び絶縁膜713にCMP(化学的機械研磨)処理やエッチング処理を行うことにより、ゲート電極707及び導電膜708の表面を露出させる。なお、後に形成される第1のトランジスタ111の特性を向上させるために、絶縁膜712、絶縁膜713の表面は可能な限り平坦にしておくことが好ましい。
【0131】
以上の工程により、第2のトランジスタ112を形成することができる。
【0132】
次いで、第1のトランジスタ111の作製方法について説明する。まず、図11(C)に示すように、絶縁膜712または絶縁膜713上に酸化物半導体層716を形成する。
【0133】
酸化物半導体層716は、絶縁膜712及び絶縁膜713上に形成した酸化物半導体膜を所望の形状に加工することで、形成することができる。上記酸化物半導体膜の膜厚は、2nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上50nm以下、更に好ましくは3nm以上20nm以下とする。酸化物半導体膜は、酸化物半導体をターゲットとして用い、スパッタ法により成膜する。また、酸化物半導体膜は、希ガス(例えばアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、または希ガス(例えばアルゴン)及び酸素混合雰囲気下においてスパッタ法により形成することができる。
【0134】
なお、酸化物半導体膜をスパッタ法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタを行い、絶縁膜712及び絶縁膜713の表面に付着している塵埃を除去することが好ましい。逆スパッタとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウムなどを用いてもよい。また、アルゴン雰囲気に酸素、亜酸化窒素などを加えた雰囲気で行ってもよい。また、アルゴン雰囲気に塩素、四フッ化炭素などを加えた雰囲気で行ってもよい。
【0135】
酸化物半導体膜には、上述したような、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体、Hf−In−Zn−O系酸化物半導体や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体、In−Ga−O系酸化物半導体や、一元系金属酸化物であるIn−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体などを用いることができる。
【0136】
なお酸化物半導体膜として特にIn−Sn−Zn−O系酸化物半導体を用いる場合、トランジスタの移動度を高くすることができる。またIn−Sn−Zn−O系酸化物半導体を用いる場合、トランジスタのしきい値電圧を安定して制御することが可能である。なおIn−Sn−Zn−O系酸化物半導体を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Sn:Zn=1:2:2、In:Sn:Zn=2:1:3、In:Sn:Zn=1:1:1などとすればよい。
【0137】
本実施の形態では、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、及びZn(亜鉛)を含むターゲットを用いたスパッタ法により得られる膜厚30nmのIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体の薄膜を、酸化物半導体膜として用いる。上記ターゲットとして、例えば、各金属の組成比がIn:Ga:Zn=1:1:0.5、In:Ga:Zn=1:1:1、またはIn:Ga:Zn=1:1:2であるターゲットを用いることができる。また、In、Ga、及びZnを含むターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上100%未満である。充填率の高いターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体膜は緻密な膜となる。
【0138】
本実施の形態では、減圧状態に保持された処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し、上記ターゲットを用いて酸化物半導体膜を成膜する。成膜時に、基板温度を100℃以上600℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下としても良い。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減することができる。また、スパッタリングによる損傷が軽減される。処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて処理室を排気すると、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0139】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を100mm、圧力0.6Pa、直流(DC)電源電力0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下の条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生する塵埃が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。
【0140】
また、スパッタリング装置の処理室のリークレートを1×10−10Pa・m/秒以下とすることで、スパッタリング法による成膜途中における酸化物半導体膜への、アルカリ金属、水素化物等の不純物の混入を低減することができる。また、排気系として上述した吸着型の真空ポンプを用いることで、排気系からのアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等の不純物の逆流を低減することができる。
【0141】
また、ターゲットの純度を、99.99%以上とすることで、酸化物半導体膜に混入するアルカリ金属、水素原子、水素分子、水、水酸基、または水素化物等を低減することができる。また、当該ターゲットを用いることで、酸化物半導体膜において、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の濃度を低減することができる。
【0142】
なお、酸化物半導体膜に水素、水酸基及び水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で絶縁膜712及び絶縁膜713までが形成された基板700を予備加熱し、基板700に吸着した水分または水素などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱の温度は、100℃以上400℃以下、好ましくは150℃以上300℃以下である。また、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。また、この予備加熱は、後に行われるゲート絶縁膜721の成膜前に、導電膜719、導電膜720まで形成した基板700にも同様に行ってもよい。
【0143】
なお、酸化物半導体層716を形成するためのエッチングは、ドライエッチングでもウェットエッチングでもよく、両方を用いてもよい。ドライエッチングに用いるエッチングガスとしては、塩素を含むガス(塩素系ガス、例えば塩素(Cl)、三塩化硼素(BCl)、四塩化珪素(SiCl)、四塩化炭素(CCl)など)が好ましい。また、フッ素を含むガス(フッ素系ガス、例えば四弗化炭素(CF)、六弗化硫黄(SF)、三弗化窒素(NF)、トリフルオロメタン(CHF)など)、臭化水素(HBr)、酸素(O)、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いることができる。
【0144】
ドライエッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0145】
ウェットエッチングに用いるエッチング液として、燐酸と酢酸と硝酸を混ぜた溶液、クエン酸やシュウ酸などの有機酸を用いることができる。本実施の形態では、ITO−07N(関東化学社製)を用いる。
【0146】
酸化物半導体層716を形成するためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0147】
なお、次工程の導電膜を形成する前に逆スパッタを行い、酸化物半導体層716及び絶縁膜712及び絶縁膜713の表面に付着しているレジスト残渣などを除去することが好ましい。
【0148】
なお、スパッタ等で成膜された酸化物半導体膜中には、不純物としての水分または水素(水酸基を含む)が多量に含まれていることがある。水分または水素はドナー準位を形成しやすいため、酸化物半導体にとっては不純物である。そこで、本発明の一態様では、酸化物半導体膜中の水分または水素などの不純物を低減(脱水化または脱水素化)するために、酸化物半導体層716に対して、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、または超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で、酸化物半導体層716に加熱処理を施す。
【0149】
酸化物半導体層716に加熱処理を施すことで、酸化物半導体層716中の水分または水素を脱離させることができる。具体的には、250℃以上750℃以下、好ましくは400℃以上基板の歪み点未満の温度で加熱処理を行えば良い。例えば、500℃、3分間以上6分間以下程度で行えばよい。加熱処理にRTA法を用いれば、短時間に脱水化または脱水素化が行えるため、ガラス基板の歪点を超える温度でも処理することができる。
【0150】
本実施の形態では、加熱処理装置の一つである電気炉を用いる。
【0151】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理を行う装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0152】
加熱処理においては、窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水分または水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する窒素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0153】
なお、酸化物半導体は不純物に対して鈍感であり、膜中にはかなりの金属不純物が含まれていても問題がなく、ナトリウムのようなアルカリ金属が多量に含まれる廉価なソーダ石灰ガラスも使えると指摘されている(神谷、野村、細野、「アモルファス酸化物半導体の物性とデバイス開発の現状」、固体物理、2009年9月号、Vol.44、pp.621−633.)。しかし、このような指摘は適切でない。アルカリ金属は酸化物半導体を構成する元素ではないため、不純物である。アルカリ土類金属も、酸化物半導体を構成する元素ではない場合において、不純物となる。特に、アルカリ金属のうちNaは、酸化物半導体層に接する絶縁膜が酸化物である場合、当該絶縁膜中に拡散してNaとなる。また、Naは、酸化物半導体層内において、酸化物半導体を構成する金属と酸素の結合を分断する、或いは、その結合中に割り込む。その結果、例えば、閾値電圧がマイナス方向にシフトすることによるノーマリオン化、移動度の低下等の、トランジスタの特性の劣化が起こり、加えて、特性のばらつきも生じる。この不純物によりもたらされるトランジスタの特性の劣化と、特性のばらつきは、酸化物半導体層中の水素濃度が十分に低い場合において顕著に現れる。したがって、酸化物半導体層中の水素濃度が1×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1017atoms/cm以下である場合には、上記不純物の濃度を低減することが望ましい。具体的に、二次イオン質量分析法によるNa濃度の測定値は、5×1016atoms/cm以下、好ましくは1×1016atoms/cm以下、更に好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。同様に、Li濃度の測定値は、5×1015atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。同様に、K濃度の測定値は、5×1015atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下とするとよい。
【0154】
以上の工程により、酸化物半導体層716中の水素の濃度を低減し、高純度化することができる。それにより酸化物半導体層の安定化を図ることができる。また、ガラス転移温度以下の加熱処理で、バンドギャップの広い酸化物半導体層を形成することができる。このため、大面積基板を用いてトランジスタを作製することができ、量産性を高めることができる。上記加熱処理は、酸化物半導体層の成膜以降であれば、いつでも行うことができる。
【0155】
なお、酸化物半導体層は非晶質であっても良いが、結晶性を有していても良い。結晶性を有する酸化物半導体層としては、c軸配向を有した結晶性酸化物半導体(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor:CAAC−OSとも呼ぶ)であっても、トランジスタの信頼性を高めるという効果を得ることができるので、好ましい。
【0156】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部および非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0157】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0158】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0159】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0160】
したがって、CAAC−OSで構成された酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を低減することが可能である。よって、安定した電気的特性を有するトランジスタを作製することができる。
【0161】
CAAC−OSは、スパッタ法によっても作製することができる。スパッタ法によってCAAC−OS膜の堆積初期段階において六方晶の結晶が形成されるようにすることと、当該結晶を種として結晶が成長されるようにすることが肝要である。そのためには、ターゲットと基板の距離を広くとり(例えば、150mm〜200mm程度)、基板加熱温度を100℃〜500℃、好適には200℃〜400℃、更に好適には250℃〜300℃にすると好ましい。
【0162】
また、CAAC−OSをスパッタ法を用いて成膜する場合には、雰囲気中の酸素ガス比が高い方が好ましい。例えば、アルゴン及び酸素の混合ガス雰囲気中でスパッタ法を行う場合には、酸素ガス比を30%以上とすることが好ましく、40%以上とすることがより好ましい。雰囲気中からの酸素の補充によって、CAAC−OSの結晶化が促進されるからである。
【0163】
また、スパッタ法を用いてCAAC−OSを成膜する場合には、CAAC−OSが成膜される基板を150℃以上に加熱しておくことが好ましく、170℃以上に加熱しておくことがより好ましい。基板温度の上昇に伴って、CAAC−OSの結晶化が促進されるからである。
【0164】
また、CAAC−OSに対して、窒素雰囲気中又は真空中において熱処理を行った後には、酸素雰囲気中又は酸素と他のガスとの混合雰囲気中において熱処理を行うことが好ましい。先の熱処理で生じる酸素欠損を後の熱処理における雰囲気中からの酸素供給によって復元することができるからである。
【0165】
また、CAAC−OSが成膜される膜表面(被成膜面)は平坦であることが好ましい。CAAC−OSは、当該被成膜面に概略垂直となるc軸を有するため、当該被成膜面に存在する凹凸は、CAAC−OSにおける結晶粒界の発生を誘発することになるからである。よって、CAAC−OSが成膜される前に当該被成膜表面に対して化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)などの平坦化処理を行うことが好ましい。また、当該被成膜面の平均ラフネスは、0.5nm以下であることが好ましく、0.3nm以下であることがより好ましい。
【0166】
ここで、CAAC−OSについて図14乃至図16を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図14乃至図16は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図14において、丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0167】
図14(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。Inが1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を、ここではサブユニットと呼ぶ。図14(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図14(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図14(A)に示すサブユニットは電荷が0である。
【0168】
図14(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図14(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図14(B)に示す構造をとりうる。図14(B)に示すサブユニットは電荷が0である。
【0169】
図14(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、による構造を示す。図14(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図14(C)に示すサブユニットは電荷が0である。
【0170】
図14(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図14(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図14(D)に示すサブユニットは電荷が+1となる。
【0171】
図14(E)に、2個のZnを含むサブユニットを示す。図14(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図14(E)に示すサブユニットは電荷が−1となる。
【0172】
ここでは、サブユニットのいくつかの集合体を1グループと呼び、複数のグループの集合体を1ユニットと呼ぶ。
【0173】
ここで、これらのサブユニット同士が結合する規則について説明する。6配位のInの上半分の3個のOは、下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。5配位のGaの上半分の1個のOは、下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは、上方向に1個の近接Gaを有する。4配位のZnの上半分の1個のOは、下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種のサブユニット同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)、4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0174】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるようにサブユニット同士が結合して1グループを構成する。
【0175】
図15(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する1グループのモデル図を示す。図15(B)に、3つのグループで構成されるユニットを示す。なお、図15(C)は、図15(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0176】
図15(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Sn原子の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図15(A)において、In原子の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図15(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZn原子と、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZn原子とを示している。
【0177】
図15(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成するグループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSn原子が、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるIn原子と結合し、そのIn原子が、上半分に3個の4配位のOがあるZn原子と結合し、そのZn原子の下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるIn原子と結合し、そのIn原子が、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなるサブユニットと結合し、このサブユニットの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSn原子と結合している構成である。このグループを複数結合してユニットを構成する。
【0178】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含むサブユニットは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図14(E)に示すように、2個のZnを含むサブユニットが挙げられる。例えば、Snを含むサブユニットが1個に対し、2個のZnを含むサブユニットが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0179】
具体的には、図15(B)に示したユニットが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0180】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn−O系酸化物、Sn−Ga−Zn−O系酸化物、Al−Ga−Zn−O系酸化物、Sn−Al−Zn−O系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物、Sn−Zn−O系酸化物、Al−Zn−O系酸化物、Zn−Mg−O系酸化物、Sn−Mg−O系酸化物、In−Mg−O系酸化物や、In−Ga−O系酸化物などを用いた場合も同様である。
【0181】
例えば、図16(A)に、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する1グループのモデル図を示す。
【0182】
図16(A)において、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成するグループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるIn原子が、4配位のOが1個上半分にあるZn原子と結合し、そのZn原子の下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGa原子と結合し、そのGa原子の下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるIn原子と結合している構成である。このグループを複数結合してユニットを構成する。
【0183】
図16(B)に3つのグループで構成されるユニットを示す。なお、図16(C)は、図16(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0184】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含むサブユニットは、電荷が0となる。そのため、これらのサブユニットの組み合わせであればグループの合計の電荷は常に0となる。
【0185】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成するグループは、図16(A)に示したグループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なるグループを組み合わせたユニットも取りうる。
【0186】
次いで、図12(A)に示すように、ゲート電極707と接し、なおかつ酸化物半導体層716とも接する導電膜719と、導電膜708と接し、なおかつ酸化物半導体層716とも接する導電膜720とを形成する。導電膜719及び導電膜720は、ソース電極またはドレイン電極として機能する。
【0187】
具体的に、導電膜719及び導電膜720は、ゲート電極707及び導電膜708を覆うようにスパッタ法や真空蒸着法で導電膜を形成した後、該導電膜を所定の形状に加工(パターニング)することで、形成することができる。
【0188】
導電膜719及び導電膜720となる導電膜は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素、または上述した元素を成分とする合金か、上述した元素を組み合わせた合金膜等が挙げられる。また、アルミニウム、銅などの金属膜の下側若しくは上側にクロム、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンなどの高融点金属膜を積層させた構成としても良い。また、アルミニウムまたは銅は、耐熱性や腐食性の問題を回避するために、高融点金属材料と組み合わせて用いると良い。高融点金属材料としては、モリブデン、チタン、クロム、タンタル、タングステン、ネオジム、スカンジウム、イットリウム等を用いることができる。
【0189】
また、導電膜719及び導電膜720となる導電膜は、単層構造でも、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する2層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、更にその上にチタン膜を成膜する3層構造などが挙げられる。また、Cu−Mg−Al合金、Mo−Ti合金、Ti、Mo、は、酸化膜との密着性が高い。よって、下層にCu−Mg−Al合金、Mo−Ti合金、Ti、或いはMoで構成される導電膜、上層にCuで構成される導電膜を積層し、上記積層された導電膜を導電膜719及び導電膜720に用いることで、酸化膜である絶縁膜と、導電膜719及び導電膜720との密着性を高めることができる。
【0190】
また、導電膜719及び導電膜720となる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化スズ、酸化インジウム酸化亜鉛または前記金属酸化物材料にシリコン若しくは酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0191】
導電膜形成後に加熱処理を行う場合には、この加熱処理に耐える耐熱性を導電膜に持たせることが好ましい。
【0192】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体層716がなるべく除去されないようにそれぞれの材料及びエッチング条件を適宜調節する。エッチング条件によっては、酸化物半導体層716の露出した部分が一部エッチングされることで、溝部(凹部)が形成されることもある。
【0193】
本実施の形態では、導電膜にチタン膜を用いる。そのため、アンモニアと過酸化水素水を含む溶液(アンモニア過水)を用いて、選択的に導電膜をウェットエッチングすることができる。具体的には、31重量%の過酸化水素水と、28重量%のアンモニア水と水とを、体積比5:2:2で混合したアンモニア過水を用いる。或いは、塩素(Cl)、塩化硼素(BCl)などを含むガスを用いて、導電膜をドライエッチングしても良い。
【0194】
なお、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光に多段階の強度をもたせる多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことで更に形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0195】
また、酸化物半導体層716と、ソース電極またはドレイン電極として機能する導電膜719及び導電膜720との間に、ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けるようにしても良い。酸化物導電膜の材料としては、酸化亜鉛を成分として含むものが好ましく、酸化インジウムを含まないものであることが好ましい。そのような酸化物導電膜として、酸化亜鉛、酸化亜鉛アルミニウム、酸窒化亜鉛アルミニウム、酸化亜鉛ガリウムなどを適用することができる。
【0196】
例えば、酸化物導電膜を形成する場合、酸化物導電膜を形成するためのパターニングと、導電膜719及び導電膜720を形成するためのパターニングとを一括で行うようにしても良い。
【0197】
ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けることで、酸化物半導体層716と導電膜719及び導電膜720の間の抵抗を下げることができるので、トランジスタの高速動作を実現させることができる。また、ソース領域及びドレイン領域として機能する酸化物導電膜を設けることで、トランジスタの耐圧を高めることができる。
【0198】
次いで、NO、N、またはArなどのガスを用いたプラズマ処理を行うようにしても良い。このプラズマ処理によって露出している酸化物半導体層の表面に付着した水などを除去する。また、酸素とアルゴンの混合ガスを用いてプラズマ処理を行ってもよい。
【0199】
なお、プラズマ処理を行った後、図12(B)に示すように、導電膜719及び導電膜720と、酸化物半導体層716とを覆うように、ゲート絶縁膜721を形成する。そして、ゲート絶縁膜721上において、酸化物半導体層716と重なる位置にゲート電極722を形成し、導電膜719と重なる位置に導電膜723を形成する。
【0200】
ゲート絶縁膜721は、ゲート絶縁膜703と同様の材料、同様の積層構造を用いて形成することが可能である。なお、ゲート絶縁膜721は、水分や、水素などの不純物を極力含まないことが望ましく、単層の絶縁膜であっても良いし、積層された複数の絶縁膜で構成されていても良い。ゲート絶縁膜721に水素が含まれると、その水素が酸化物半導体層716へ侵入し、または水素が酸化物半導体層716中の酸素を引き抜き、酸化物半導体層716が低抵抗化(n型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、ゲート絶縁膜721はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。上記ゲート絶縁膜721には、バリア性の高い材料を用いるのが望ましい。例えば、バリア性の高い絶縁膜として、窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、窒化アルミニウム膜、または窒化酸化アルミニウム膜などを用いることができる。複数の積層された絶縁膜を用いる場合、窒素の含有比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を、上記バリア性の高い絶縁膜よりも、酸化物半導体層716に近い側に形成する。そして、窒素の含有比率が低い絶縁膜を間に挟んで、導電膜719及び導電膜720及び酸化物半導体層716と重なるように、バリア性の高い絶縁膜を形成する。バリア性の高い絶縁膜を用いることで、酸化物半導体層716内、ゲート絶縁膜721内、或いは、酸化物半導体層716と他の絶縁膜の界面とその近傍に、水分または水素などの不純物が入り込むのを防ぐことができる。また、酸化物半導体層716に接するように窒素の比率が低い酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜などの絶縁膜を形成することで、バリア性の高い材料を用いた絶縁膜が直接酸化物半導体層716に接するのを防ぐことができる。
【0201】
本実施の形態では、スパッタ法で形成された膜厚200nmの酸化珪素膜上に、スパッタ法で形成された膜厚100nmの窒化珪素膜を積層させた構造を有する、ゲート絶縁膜721を形成する。成膜時の基板温度は、室温以上300℃以下とすればよく、本実施の形態では100℃とする。
【0202】
なお、ゲート絶縁膜721を形成した後に、加熱処理を施しても良い。加熱処理は、窒素、超乾燥空気、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下において、好ましくは200℃以上400℃以下、例えば250℃以上350℃以下で行う。上記ガスは、水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下であることが望ましい。本実施の形態では、例えば、窒素雰囲気下で250℃、1時間の加熱処理を行う。或いは、導電膜719及び導電膜720を形成する前に、水分または水素を低減させるための酸化物半導体層に対して行った先の加熱処理と同様に、高温短時間のRTA処理を行っても良い。酸素を含むゲート絶縁膜721が設けられた後に、加熱処理が施されることによって、酸化物半導体層716に対して行った先の加熱処理により、酸化物半導体層716に酸素欠損が発生していたとしても、ゲート絶縁膜721から酸化物半導体層716に酸素が供与される。そして、酸化物半導体層716に酸素が供与されることで、酸化物半導体層716において、ドナーとなる酸素欠損を低減し、化学量論的組成比を満たすことが可能である。酸化物半導体層716には、化学量論的組成比を超える量の酸素が含まれていることが好ましい。その結果、酸化物半導体層716をi型に近づけることができ、酸素欠損によるトランジスタの電気特性のばらつきを軽減し、電気特性の向上を実現することができる。この加熱処理を行うタイミングは、ゲート絶縁膜721の形成後であれば特に限定されず、他の工程、例えば樹脂膜形成時の加熱処理や、透明導電膜を低抵抗化させるための加熱処理と兼ねることで、工程数を増やすことなく、酸化物半導体層716をi型に近づけることができる。
【0203】
また、酸素雰囲気下で酸化物半導体層716に加熱処理を施すことで、酸化物半導体に酸素を添加し、酸化物半導体層716中においてドナーとなる酸素欠損を低減させても良い。加熱処理の温度は、例えば100℃以上350℃未満、好ましくは150℃以上250℃未満で行う。上記酸素雰囲気下の加熱処理に用いられる酸素ガスには、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する酸素ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち酸素中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0204】
或いは、イオン注入法またはイオンドーピング法などを用いて、酸化物半導体層716に酸素を添加することで、ドナーとなる酸素欠損を低減させても良い。例えば、2.45GHzのマイクロ波でプラズマ化した酸素を酸化物半導体層716に添加すれば良い。
【0205】
また、ゲート電極722及び導電膜723は、ゲート絶縁膜721上に導電膜を形成した後、該導電膜をパターニングすることで形成することができる。ゲート電極722及び導電膜723は、ゲート電極707、或いは導電膜719及び導電膜720と同様の材料を用いて形成することが可能である。
【0206】
ゲート電極722及び導電膜723の膜厚は、10nm〜400nm、好ましくは100nm〜200nmとする。本実施の形態では、タングステンターゲットを用いたスパッタ法により150nmのゲート電極用の導電膜を形成した後、該導電膜をエッチングにより所望の形状に加工(パターニング)することで、ゲート電極722及び導電膜723を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0207】
以上の工程により、第1のトランジスタ111が形成される。
【0208】
なお、ゲート絶縁膜721を間に挟んで導電膜719と導電膜723とが重なる部分が、第1の容量素子113に相当する。
【0209】
また、第1のトランジスタ111はシングルゲート構造のトランジスタを用いて説明したが、必要に応じて、電気的に接続された複数のゲート電極を有することで、チャネル形成領域を複数有する、デュアルゲート構造またはマルチゲート構造のトランジスタも形成することができる。
【0210】
なお、酸化物半導体層716に接する絶縁膜(本実施の形態においては、ゲート絶縁膜721が該当する。)は、第13族元素及び酸素を含む絶縁材料を用いるようにしても良い。酸化物半導体材料には第13族元素を含むものが多く、第13族元素を含む絶縁材料は酸化物半導体との相性が良く、これを酸化物半導体層に接する絶縁膜に用いることで、酸化物半導体層との界面の状態を良好に保つことができる。
【0211】
第13族元素を含む絶縁材料とは、絶縁材料に一又は複数の第13族元素を含むことを意味する。第13族元素を含む絶縁材料としては、例えば、酸化ガリウム、酸化アルミニウム、酸化アルミニウムガリウム、酸化ガリウムアルミニウムなどがある。ここで、酸化アルミニウムガリウムとは、ガリウムの含有量(原子%)よりアルミニウムの含有量(原子%)が多いものを示し、酸化ガリウムアルミニウムとは、ガリウムの含有量(原子%)がアルミニウムの含有量(原子%)以上のものを示す。
【0212】
例えば、ガリウムを含有する酸化物半導体層に接して絶縁膜を形成する場合に、絶縁膜に酸化ガリウムを含む材料を用いることで酸化物半導体層と絶縁膜の界面特性を良好に保つことができる。例えば、酸化物半導体層と酸化ガリウムを含む絶縁膜とを接して設けることにより、酸化物半導体層と絶縁膜の界面における水素のパイルアップを低減することができる。なお、絶縁膜に酸化物半導体の成分元素と同じ族の元素を用いる場合には、同様の効果を得ることが可能である。例えば、酸化アルミニウムを含む材料を用いて絶縁膜を形成することも有効である。なお、酸化アルミニウムは、水を透過させにくいという特性を有しているため、当該材料を用いることは、酸化物半導体層への水の侵入防止という点においても好ましい。
【0213】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜は、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープなどにより、絶縁材料を化学量論的組成比より酸素が多い状態とすることが好ましい。酸素ドープとは、酸素をバルクに添加することをいう。なお、当該バルクの用語は、酸素を薄膜表面のみでなく薄膜内部に添加することを明確にする趣旨で用いている。また、酸素ドープには、プラズマ化した酸素をバルクに添加する酸素プラズマドープが含まれる。また、酸素ドープは、イオン注入法またはイオンドーピング法を用いて行ってもよい。
【0214】
例えば、酸化物半導体層716に接する絶縁膜として酸化ガリウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムの組成をGa(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0215】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜として酸化アルミニウムを用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化アルミニウムの組成をAl(X=3+α、0<α<1)とすることができる。
【0216】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜として酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を用いた場合、酸素雰囲気下による熱処理や、酸素ドープを行うことにより、酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)の組成をGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)とすることができる。
【0217】
酸素ドープ処理を行うことにより、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を形成することができる。このような領域を備える絶縁膜と酸化物半導体層が接することにより、絶縁膜中の過剰な酸素が酸化物半導体層に供給され、酸化物半導体層中、または酸化物半導体層と絶縁膜の界面における酸素欠陥を低減し、酸化物半導体層をi型化またはi型に限りなく近くすることができる。
【0218】
絶縁膜中の過剰な酸素が酸化物半導体層に供給されることで酸素欠陥が低減された酸化物半導体層は、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、且つ十分な酸素の供給により酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位が低減された酸化物半導体層とすることができる。そのため、キャリア濃度が極めて小さい酸化物半導体層とすることができ、オフ電流が著しく低いトランジスタとすることができる。このようなオフ電流が著しく低いトランジスタを、上記実施の形態の第1のトランジスタに適用することで、非導通状態とした際に、ほぼ絶縁体とみなすことができる。従って第1のトランジスタに用いることで、記憶ノードD_HOLDに保持された電位の低下を極めて小さいレベルに抑制できる。その結果、電源電圧の供給が停止した場合でも、記憶ノードD_HOLDの電位の変動を小さくでき、記憶されたデータの消失を防ぐことができる不揮発性記憶装置とすることができる。
【0219】
なお、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜は、酸化物半導体層716に接する絶縁膜のうち、上層に位置する絶縁膜または下層に位置する絶縁膜のうち、どちらか一方のみに用いても良いが、両方の絶縁膜に用いる方が好ましい。化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜を、酸化物半導体層716に接する絶縁膜の、上層及び下層に位置する絶縁膜に用い、酸化物半導体層716を挟む構成とすることで、上記効果をより高めることができる。
【0220】
また、酸化物半導体層716の上層または下層に用いる絶縁膜は、上層と下層で同じ構成元素を有する絶縁膜としても良いし、異なる構成元素を有する絶縁膜としても良い。例えば、上層と下層とも、組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムとしても良いし、上層と下層の一方を組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムとし、他方を組成がAl(X=3+α、0<α<1)の酸化アルミニウムとしても良い。
【0221】
また、酸化物半導体層716に接する絶縁膜は、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良い。例えば、酸化物半導体層716の上層に組成がGa(X=3+α、0<α<1)の酸化ガリウムを形成し、その上に組成がGaAl2−X3+α(0<X<2、0<α<1)の酸化ガリウムアルミニウム(酸化アルミニウムガリウム)を形成してもよい。なお、酸化物半導体層716の下層を、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良いし、酸化物半導体層716の上層及び下層の両方を、化学量論的組成比より酸素が多い領域を有する絶縁膜の積層としても良い。
【0222】
次に、図12(C)に示すように、ゲート絶縁膜721、導電膜723、ゲート電極722を覆うように、絶縁膜724を形成する。絶縁膜724は、PVD法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。なお、絶縁膜724には、誘電率の低い材料や、誘電率の低い構造(多孔性の構造など)を用いることが望ましい。絶縁膜724の誘電率を低くすることにより、配線や電極などの間に生じる寄生容量を低減し、動作の高速化を図ることができるためである。なお、本実施の形態では、絶縁膜724を単層構造としているが、本発明の一態様はこれに限定されず、2層以上の積層構造としても良い。
【0223】
次に、ゲート絶縁膜721、絶縁膜724に開口部725を形成し、導電膜720の一部を露出させる。その後、絶縁膜724上に、上記開口部725において導電膜720と接する配線726を形成する。
【0224】
配線726は、PVD法や、CVD法を用いて導電膜を形成した後、当該導電膜をパターニングすることによって形成される。また、導電膜の材料としては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、ネオジム、スカンジウムのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0225】
より具体的には、例えば、絶縁膜724の開口を含む領域にPVD法によりチタン膜を薄く(5nm程度)形成した後に、開口部725に埋め込むようにアルミニウム膜を形成する方法を適用することができる。ここで、PVD法により形成されるチタン膜は、被形成面の酸化膜(自然酸化膜など)を還元し、下部電極など(ここでは導電膜720)との接触抵抗を低減させる機能を有する。また、アルミニウム膜のヒロックを防止することができる。また、チタンや窒化チタンなどによるバリア膜を形成した後に、メッキ法により銅膜を形成してもよい。
【0226】
絶縁膜724に形成する開口部725は、導電膜708と重畳する領域に形成することが望ましい。このような領域に開口部725を形成することで、コンタクト領域に起因する素子面積の増大を抑制することができる。
【0227】
ここで、導電膜708を用いずに、不純物領域704と導電膜720との接続と、導電膜720と配線726との接続とを重畳させる場合について説明する。この場合、不純物領域704上に形成された絶縁膜712、絶縁膜713に開口部(下部の開口部と呼ぶ)を形成し、下部の開口部を覆うように導電膜720を形成した後、ゲート絶縁膜721及び絶縁膜724において、下部の開口部と重畳する領域に開口部(上部の開口部と呼ぶ)を形成し、配線726を形成することになる。下部の開口部と重畳する領域に上部の開口部を形成する際に、エッチングにより下部の開口部に形成された導電膜720が断線してしまうおそれがある。これを避けるために、下部の開口部と上部の開口部が重畳しないように形成することにより、素子面積が増大するという問題がおこる。
【0228】
本実施の形態に示すように、導電膜708を用いることにより、導電膜720を断線させずに上部の開口部を形成することが可能となる。これにより、下部の開口部と上部の開口部を重畳させて設けることができるため、開口部に起因する素子面積の増大を抑制することができる。つまり、半導体装置の集積度を高めることができる。
【0229】
次に、配線726を覆うように絶縁膜727を形成する。上述した一連の工程により、半導体記憶装置を作製することができる。
【0230】
なお、上記作製方法では、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜719及び導電膜720が、酸化物半導体層716の後に形成されている。よって、図12(B)に示すように、上記作製方法によって得られる第1のトランジスタ111は、導電膜719及び導電膜720が、酸化物半導体層716の上に形成されている。しかし、第1のトランジスタ111は、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜が、酸化物半導体層716の下、すなわち、酸化物半導体層716と絶縁膜712及び絶縁膜713の間に設けられていても良い。
【0231】
図13に、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜719及び導電膜720が、酸化物半導体層716と絶縁膜712及び絶縁膜713の間に設けられている場合の、第1のトランジスタ111の断面図を示す。図13に示す第1のトランジスタ111は、絶縁膜713を形成した後に導電膜719及び導電膜720の形成を行い、次いで酸化物半導体層716の形成を行うことで、得ることができる。
【0232】
ところで、不揮発性の半導体記憶装置に用いるトランジスタとして磁気トンネル接合素子(MTJ素子)が知られている。MTJ素子は、絶縁膜を介して上下に配置している膜中のスピンの向きが平行であれば低抵抗状態、反平行であれば高抵抗状態となることで情報を記憶する素子である。したがって、本実施の形態で示す酸化物半導体を用いた半導体記憶装置とは原理が全く異なっている。表1はMTJ素子と、本実施の形態に係る半導体記憶装置との対比を示す。
【0233】
【表1】

【0234】
MTJ素子は磁性材料を使用するためキュリー温度以上にすると磁性が失われてしまうという欠点がある。また、MTJ素子は電流駆動であるため、シリコンのバイポーラデバイスと相性が良いが、バイポーラデバイスは集積化に不向きである。そして、MTJ素子は書き込み電流が微少とはいえメモリの大容量化によって消費電力が増大してしまうといった問題がある。
【0235】
原理的にMTJ素子は磁界耐性に弱く強磁界にさらされるとスピンの向きが狂いやすい。また、MTJ素子に用いる磁性体のナノスケール化によって生じる磁化揺らぎを制御する必要がある。
【0236】
さらに、MTJ素子は希土類元素を使用するため、金属汚染を嫌うシリコン半導体のプロセスに組み入れるには相当の注意を要する。MTJ素子はビット当たりの材料コストから見ても高価であると考えられる。
【0237】
一方、本実施の形態で示す酸化物半導体を用いた半導体記憶装置は、チャネルを形成する半導体材料が金属酸化物であること以外は、素子構造や動作原理がシリコンMOSFETと同様である。また、酸化物半導体を用いた半導体記憶装置は磁界の影響を受けず、ソフトエラーも生じ得ないといった特質を有する。このことからシリコン集積回路と非常に整合性が良いといえる。
【0238】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0239】
100 半導体記憶装置
101 記憶回路
102 第2の容量素子
103 電荷蓄積回路
104 データ検出回路
105 タイミング制御回路
106 インバータ回路
111 第1のトランジスタ
112 第2のトランジスタ
113 第1の容量素子
114 第3のトランジスタ
115 第4のトランジスタ
116 NAND回路
117 OR回路
150 信号処理装置
151 演算装置
152 演算装置
153 半導体記憶装置
154 半導体記憶装置
155 半導体記憶装置
156 制御装置
157 電源制御回路
201 遅延回路部
202 バッファ回路部
203 抵抗素子
204 容量素子
205 nチャネル型トランジスタ
206 pチャネル型トランジスタ
401 インバータ回路
402 半導体記憶装置
403 半導体記憶装置群
404 遅延高電源電位生成回路
700 基板
701 絶縁膜
702 半導体膜
703 ゲート絶縁膜
704 不純物領域
705 マスク
706 開口部
707 ゲート電極
708 導電膜
709 不純物領域
710 チャネル形成領域
711 不純物領域
712 絶縁膜
713 絶縁膜
716 酸化物半導体層
719 導電膜
720 導電膜
721 ゲート絶縁膜
722 ゲート電極
723 導電膜
724 絶縁膜
725 開口部
726 配線
727 絶縁膜
9900 基板
9901 ALU
9902 ALU・Controller
9903 Instruction・Decoder
9904 Interrupt・Controller
9905 Timing・Controller
9906 Register
9907 Register・Controller
9908 Bus・I/F
9909 ROM
9920 ROM・I/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子がデータ入力線に電気的に接続され、ゲートがクロック信号線に電気的に接続され、酸化物半導体を半導体層に有する第1のトランジスタと、一方の電極が前記第1のトランジスタの第2端子に電気的に接続された第1の容量素子と、ゲートが前記第1のトランジスタの第2端子及び前記第1の容量素子の一方の電極に電気的に接続された第2のトランジスタとを、有する記憶回路と、
前記記憶回路に保持されたデータを読み出すための電荷を蓄積する第2の容量素子と、
電源電位線に電気的に接続され、前記第2の容量素子への電荷の蓄積を制御するための電荷蓄積回路と、
前記第2の容量素子の一方の電極と前記第2のトランジスタの第1端子との導通状態または非導通状態を制御するデータ検出回路と、
前記クロック信号線にクロック信号が供給される第1の期間において前記クロック信号のトグル動作に応じて前記電荷蓄積回路と前記データ検出回路とが交互に導通状態となるような制御をし、且つ前記電源電位線に電源電圧が供給された直後の第2の期間において、前記電源電圧の信号と前記電源電圧の信号を遅延させた信号とにより、前記電荷蓄積回路による前記第2の容量素子への電荷の蓄積を制御するための信号を生成する、タイミング制御回路と、
前記第2の容量素子の一方の電極の電位を反転して出力するインバータ回路と、を有する半導体記憶装置。
【請求項2】
第1端子がデータ入力線に電気的に接続され、ゲートがクロック信号線に電気的に接続され、酸化物半導体を半導体層に有する第1のトランジスタと、一方の電極が前記第1のトランジスタの第2端子に電気的に接続された第1の容量素子と、ゲートが前記第1のトランジスタの第2端子及び前記第1の容量素子の一方の電極に電気的に接続された第2のトランジスタとを、有する記憶回路と、
前記記憶回路に保持されたデータを読み出すための電荷を蓄積する第2の容量素子と、
第1端子が電源電位線に電気的に接続され、第2端子が前記第2の容量素子の一方の電極に電気的に接続された第3のトランジスタを有する電荷蓄積回路と、
第1端子が前記第2の容量素子の一方の電極に電気的に接続され、第2端子が前記第2のトランジスタの第1端子に電気的に接続された第4のトランジスタを有するデータ検出回路と、
前記クロック信号線にクロック信号が供給される第1の期間において、前記クロック信号のトグル動作に応じて前記第3のトランジスタと前記第4のトランジスタとが交互に導通状態となるような制御をし、且つ前記電源電位線に電源電圧が供給された直後の第2の期間において、前記電源電圧の信号と前記電源電圧による信号を遅延させた信号とにより、前記第3のトランジスタを導通状態とするための信号を生成する、タイミング制御回路と、
前記第2の容量素子の一方の電極の電位を反転して出力するインバータ回路と、を有する半導体記憶装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記第2のトランジスタはシリコンを半導体層に有する半導体記憶装置。
【請求項4】
請求項3において、前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとが積層して設けられている半導体記憶装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、前記データ検出回路は、前記第2のトランジスタの導通状態に基づいた前記第2の容量素子に蓄積された前記電荷の放出の有無により、前記第2の容量素子の一方の電極の電位を前記データが反転した反転データ信号に変換する回路である半導体記憶装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、前記電源電圧による信号を遅延させた回路は、遅延回路とバッファ回路とで構成される半導体記憶装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、前記タイミング制御回路は、前記電源電圧の信号と前記電源電圧による信号を遅延させた信号とが入力される否定論理積回路と、前記否定論理積回路の出力信号と前記クロック信号とが入力される論理和回路で構成される半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−253753(P2012−253753A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−104690(P2012−104690)
【出願日】平成24年5月1日(2012.5.1)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】