説明

半導体集積回路装置

【課題】本発明は、配線抵抗のばらつきに依ることなく、単位面積当たりのESD耐圧効率を高めることが可能な半導体集積回路装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る半導体集積回路装置において、SCRのアノードとなるp型半導体領域3は、アノード電極9との導通路10a〜10dが複数接続されるコンタクト領域3sを除いて、そのシリサイド化処理がブロックされて成る構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気保護素子(特に、シリコン制御整流素子:SCR[Silicon Control Rectifier])を備えて成る半導体集積回路装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、CMOS[Complementary Metal-Oxide Semiconductor]プロセスで形成されたロジック回路は、そのゲート酸化膜が薄いため、静電気放電(ESD[ElectroStatic Discharge]と呼ぶ)に対する耐性が弱い。そのため、CMOSロジック回路を具備する半導体集積回路装置の多くは、その入出力部(入出力端子・接地端子間や電源端子・接地端子間等)に静電気保護素子(SCRなど)を有して成る構成とされている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
図3は、従来のSCRの部分縦断面図(a)、(b)及び部分斜視図(c)であり、図4は、従来のシリコン制御整流素子の等価回路図である。
【特許文献1】特表2004−533713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
確かに、図3(a)の縦構造から成るSCRについて、その理想的な等価回路図は、図4(a)のようになる。従って、上記構造から成るSCRを備えた半導体集積回路装置であれば、CMOSロジック回路の入出力端子にESDサージ電圧が印加された場合であっても、不図示のトリガ回路によって、トランジスタQ1或いはトランジスタQ2のベースに入力されるゲート信号をトリガすることで、アノード電極Taとカソード電極Tcとの間(すなわち、CMOSロジック回路の入出力電極と接地端子との間)を短絡状態とし、過大なESDサージ電圧を接地端子に逃がして、CMOSロジック回路のゲート酸化膜を静電破壊から保護することができる。
【0005】
しかしながら、図3(a)の縦構造から成るSCRにおいて、配線抵抗がゼロであるということはあり得ず、実際には、図3(b)に示すように、SCRのアノードとなる第1高濃度p型半導体領域3とアノード電極Taとの間には、種々の配線抵抗R1(メタル抵抗Rmetal、ビア抵抗Rvia、コンタクト抵抗Rcont)が存在していた。
【0006】
なお、従来の半導体集積回路装置において、第1高濃度p型半導体領域3は、導通路10とのコンタクト抵抗Rcontを数[Ω]オーダまで低減すべく、図3(b)に示すように、その全面にシリサイド化処理(金属浸潤処理)を施されて成り、最低限のエミッタ領域(トランジスタQ1のエミッタとして機能し得る最低限の非浸潤領域)を残し、表面に向かって徐々に金属原子の濃度が高くなるような濃度勾配を持つシリサイド化領域3sが形成されていた。第1高濃度n型半導体領域4、第2高濃度p型半導体領域5、及び、第2高濃度n型半導体領域6についても、上記と同様、その全面にシリサイド化処理が施されていた。
【0007】
また、アノード電極Taに接続されるパッド9と、第1高濃度p型半導体領域3との間は、その電流容量を高めるべく、図3(c)に示すように、複数本(本図では4本)の導通路10a〜10dを介して接続されていた。すなわち、パッド9と第1高濃度p型半導体領域3との間には、各導通経路毎に各々配線抵抗R1a〜R1dが付随されていた。
【0008】
その結果、図3(a)の縦構造から成るSCRについて、その現実的な等価回路図は、図4(b)に示すように、トランジスタQ1a〜Q1dが配線抵抗R1a〜R1dを介して、アノード電極Taに並列接続される形となっていた。そのため、従来のSCRでは、配線抵抗R1a〜R1dがばらつくと、トランジスタQ1a〜Q1dのいずれかに電流集中が起きて、ESDサージ電圧に対する耐圧が低下するおそれがあった。
【0009】
特に、数[Ω]オーダまで低減されたコンタクト抵抗Rcontは、製造上のばらつきが大きく、たとえ導通路10a〜10dを対称的なレイアウトとしても、各抵抗値には、相互に50%〜200%程度の大きな相違が生じていた。このような抵抗値のばらつきはプロセスが微細化するほど顕著となるため、ESD耐圧を保証することが困難となり、延いては、半導体集積回路装置の高集積化を阻害する一要因となっていた。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑み、配線抵抗ばらつきに依ることなく、単位面積当たりのESD耐圧効率を高めることが可能な半導体集積回路装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る半導体集積回路装置は、シリコン制御整流素子を備えた半導体集積回路装置であって、前記シリコン制御整流素子のアノードとなるp型半導体領域は、アノード電極との導通路が複数接続されるコンタクト領域を除いて、そのシリサイド化処理がブロックされて成る構成(第1の構成)とされている。
【0012】
より具体的に述べると、本発明に係る半導体集積回路装置は、p型半導体基板と、前記p型半導体基板に形成された低濃度n型半導体領域と、前記低濃度n型半導体領域に形成されて第1電極に接続される第1高濃度p型半導体領域と、同じく前記低濃度n型半導体領域に形成されて第1電極に接続される第1高濃度n型半導体領域と、前記p型半導体基板に形成されて第2電極に接続される第2高濃度n型半導体領域と、同じく前記p型半導体基板に形成されて第2電極に接続される第2高濃度p型半導体領域と、を有して成るシリコン制御整流素子を備えた半導体集積回路装置であって、前記シリコン制御整流素子のアノードとなる第1高濃度p型半導体領域は、第1電極との導通路が複数接続されるコンタクト領域を除いて、そのシリサイド化処理がブロックされて成る構成(第2の構成)とされている。
【0013】
また、上記第2の構成から成る半導体集積回路装置において、第1高濃度n型半導体領域、第2高濃度p型半導体領域、及び、第2高濃度n型半導体領域は、いずれも、その全面にシリサイド化処理が施されて成る構成(第3の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る半導体集積回路装置であれば、配線抵抗のばらつきに依ることなく、単位面積当たりのESD耐圧効率を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明に係る半導体集積回路装置に搭載されたSCRの部分縦断面図(a)、(b)及び部分斜視図(c)である。本図(a)に示すように、本実施形態のSCRは、p型[p−−]半導体基板1(以下では、p基板1と呼ぶ)と、p基板1に形成された低濃度n型[n−]半導体領域2(以下では、nウェル2と呼ぶ)と、nウェル2に形成されてアノード電極Taに接続される第1高濃度p型[p+]半導体領域3(以下では、p+領域3と呼ぶ)と、同じくnウェル2に形成されてアノード電極Taに接続される第1高濃度n型[n+]半導体領域4(以下では、n+領域4と呼ぶ)と、p基板1に形成されてカソード電極Tcに接続される第2高濃度p型[p+]半導体領域5(以下では、p+領域5と呼ぶ)と、同じくp基板1に形成されてカソード電極Tcに接続される第2高濃度n型[n+]半導体領域6(以下では、n+領域6と呼ぶ)と、各半導体領域を互いに分離する素子分離領域(トレンチ部)7と、を有して成る。
【0016】
なお、SCRのアノードとなるp+領域3とアノード電極Taとの間には、図1(b)に示すように、種々の配線抵抗R1(メタル抵抗Rmetal、ビア抵抗Rvia、コンタクト抵抗Rcont)が存在している。なお、符号8は、層間絶縁膜を示している。
【0017】
また、アノード電極Taに接続されるパッド9とp+領域3との間は、その電流容量を高めるべく、図1(c)に示すように、複数本(本図では4本)の導通路10a〜10dを介して接続されている。すなわち、パッド9とp+領域3との間には、各導通経路毎に各々配線抵抗R1a〜R1dが付随されている。
【0018】
また、本実施形態のSCRにおいて、p+領域3は、図1(b)、(c)に示す通り、導通路10a〜10dが接続されるコンタクト領域3sを除いて、そのシリサイド化処理がシリサイドブロッキングレイヤ11でブロックされて成る。このような構成とすることにより、コンタクト領域3sと導通路10a〜10dとの間については、性質の急激な変移点をなくすことができるので、各々のコンタクト抵抗Rcont(延いては、配線抵抗R1a〜R1d)を数[Ω]オーダまで低減し得る一方、シリサイド化されていないp+領域3(シリサイド化されたコンタクト領域3s以外)については、上記の配線抵抗R1(R1a〜R1d)に比べて10倍以上の抵抗値(数十[Ω]オーダ)を有するバラスト抵抗R2(R2a〜R2d)を見かけの上で付随させることができる。
【0019】
なお、n+領域4、p+領域5、及び、n+領域6については、p+領域3と異なり、各々に接続される導通路(不図示)とのコンタクト抵抗を極力低減すべく、いずれもその全面にシリサイド化処理を施されて成る。
【0020】
その結果、上記構造から成るSCRについて、その現実的な等価回路図は、図2に示す形となる。すなわち、上記構造から成るSCRでは、p基板1、nウェル2、及び、p+領域3によって、pnp型バイポーラトランジスタQ1(Q1a〜Q1d)が形成され、また、nウェル2、p基板1、及び、n+領域6によって、npn型バイポーラトランジスタQ2が形成されている。また、トランジスタQ1a〜Q1dは、それぞれ、配線抵抗R1a〜R1d及びバラスト抵抗R2a〜R2dを介して、アノード電極Taに並列接続される形となる。
【0021】
より具体的に述べると、トランジスタQ1a〜Q1dのエミッタは、各々配線抵抗R1a〜R1d及びバラスト抵抗R2a〜R2dを介して、アノード電極Taに接続されている。トランジスタQ1a〜Q1dのコレクタは、いずれもトランジスタQ2のベースに接続される一方、p基板抵抗Rpsubを介して、カソード電極Tcにも接続されている。トランジスタQ1a〜Q1dのベースは、いずれもトランジスタQ2のコレクタに接続される一方、nウェル抵抗Rnwellを介して、アノード電極Taにも接続されている。トランジスタQ2のエミッタは、カソード電極Tcに接続されている。
【0022】
このように、本実施形態のSCRでは、アノードとなるp+領域3に対して、シリサイドブロッキングレイヤ11を用いたことにより、製造プロセスの不要な増大を招くことなく、トランジスタQ1a〜Q1dのエミッタにバラスト抵抗R2a〜R2dを挿入することができる。ここで、バラスト抵抗R2a〜R2dは、先述した通り、配線抵抗R1a〜R1dに比べて10倍以上の抵抗値を有しており、かつ、その製造ばらつきについても、配線抵抗R1a〜1dに比べて小さい(20%〜30%程度)ものとなる。
【0023】
従って、トランジスタQ1a〜Q1dのエミッタに付随する寄生抵抗成分全体として見れば、配線抵抗R1a〜R1dのばらつきによる影響は相対的に小さくなり、その抵抗値のばらつきは、バラスト抵抗R2a〜R2dのばらつきによって律されることになる。より具体的に述べると、本発明の構成を採用することにより、50%〜200%程度であった抵抗値のばらつきが、20%〜30%程度にまで低減し得ると考えられる。
【0024】
このように、本実施形態のSCRであれば、トランジスタQ1a〜Q1dのエミッタに付随する寄生抵抗成分をバラストし、そのばらつきを低減することができるので、従来構成に比べて、トランジスタQ1a〜Q1dのいずれかに電流集中が生じる危険性を下げ、単位面積当たりのESD耐圧効率を向上すること、延いては、より寄生容量成分の小さなESD保護素子を実現することが可能となる。
【0025】
すなわち、本実施形態のSCRであれば、配線抵抗R1a〜R1dのばらつきを殆ど考慮することなく、より高速なインタフェイス部への適用に際して要求されるSCRの低容量化を実現することが可能となる。
【0026】
なお、配線抵抗R1a〜R1dのばらつきをバラストする手法としては、単純に別途ポリ抵抗等のバラスト抵抗を挿入することも考えられるが、当該バラスト手法では、製造プロセスの増大に伴う半導体集積回路装置のコストアップが懸念される。それに対して、本発明に係るバラスト手法であれば、シリサイド化すべき不純物拡散領域を特定するために従前から用いられているシリサイドブロッキングレイヤ11のマスク領域を一部拡大し、p+領域3に非シリサイド化領域を残すことで、見かけ上のバラスト抵抗R1a〜R1dを挿入することができるので、何ら製造プロセスの増大を招かずに済む。
【0027】
最後に、上記構造から成るSCRのESD保護動作について説明を行う。本実施形態のSCRを備えた半導体集積回路装置において、CMOSロジック回路の入出力端子にESDサージ電圧が印加された場合には、不図示のトリガ回路によって、トランジスタQ1a〜Q1d或いはトランジスタQ2のベースに入力されるゲート信号がトリガされる。
【0028】
例えば、ESDサージ電圧の印加に応じて、トランジスタQ2のベースに入力されるゲート信号がハイレベルに遷移された場合、p基板抵抗Rpsubには、不図示のゲート電極からカソード電極Tcに向けて電流が流れ込み、トランジスタQ2のベース電位が持ち上げられる。その結果、トランジスタQ2はオン状態とされるので、アノード電極Taとカソード電極Tcとの間(すなわち、CMOSロジック回路の入出力電極と接地端子との間)を短絡状態とし、過大なESDサージ電圧を接地端子に逃がして、CMOSロジック回路のゲート酸化膜を静電破壊から保護することができる。
【0029】
また、トランジスタQ2がオン状態とされると、nウェル抵抗Rnwellには、アノード電極Taからカソード電極Tcに向けて電流が流れ込み、トランジスタQ1a〜Q1dのベース電位が引き下げられる。その結果、トランジスタQ1a〜Q1dも、オン状態とされる。このとき、トランジスタQ1a〜Q1dのコレクタ電流は、トランジスタQ2のベース電流となるので、上記動作に正帰還がかかり、以後はゲート信号の論理に依ることなく、ESD保護動作(アノード電極Taとカソード電極Tc間の短絡経路形成動作)が維持される。
【0030】
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態では、素子分離構造としてトレンチ分離構造を用いた構成を例に挙げたが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、ロコス分離構造やゲート分離構造を用いて素子分離を行う構成としても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、その製造プロセス中にシリサイドブロッキングレイヤを用いる半導体集積回路装置全般に広く応用可能な技術であり、特に、高速インタフェイス部のESD耐圧向上を図る上で有用な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】は、本発明に係るシリコン制御整流素子の部分縦断面図(a)、(b)及び部分斜視図(c)である。
【図2】は、本発明に係るシリコン制御整流素子の等価回路図である。
【図3】は、従来のシリコン制御整流素子の部分縦断面図(a)、(b)及び部分斜視図(c)である。
【図4】は、従来のシリコン制御整流素子の等価回路図である。
【符号の説明】
【0033】
1 p型半導体基板(p基板)
2 低濃度n型半導体領域(nウェル)
3 第1高濃度p型半導体領域(p+領域)
3s シリサイド化領域(コンタクト領域)
4 第1高濃度n型半導体領域(n+領域)
5 第2高濃度p型半導体領域(p+領域)
6 第2高濃度n型半導体領域(n+領域)
7 素子分離領域(トレンチ部)
8 層間絶縁膜
9 パッド
10(10a〜10d) 導通路(ビア)
11 シリサイドブロッキングレイヤ
Ta アノード電極
Tc カソード電極
Q1(Q1a〜Q1d) pnp型バイポーラトランジスタ
Q2 npn型バイポーラトランジスタ
Rpsub p基板抵抗
Rnwell nウェル抵抗
R1(R1a〜R1d) 配線抵抗(メタル抵抗、ビア抵抗、コンタクト抵抗)
R2(R2a〜R2d) バラスト抵抗(非シリサイド化p+抵抗)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン制御整流素子を備えた半導体集積回路装置であって、前記シリコン制御整流素子のアノードとなるp型半導体領域は、アノード電極との導通路が複数接続されるコンタクト領域を除いて、そのシリサイド化処理がブロックされて成ることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
p型半導体基板と、前記p型半導体基板に形成された低濃度n型半導体領域と、前記低濃度n型半導体領域に形成されて第1電極に接続される第1高濃度p型半導体領域と、同じく前記低濃度n型半導体領域に形成されて第1電極に接続される第1高濃度n型半導体領域と、前記p型半導体基板に形成されて第2電極に接続される第2高濃度p型半導体領域と、同じく前記p型半導体基板に形成されて第2電極に接続される第2高濃度n型半導体領域と、を有して成るシリコン制御整流素子を備えた半導体集積回路装置であって、前記シリコン制御整流素子のアノードとなる第1高濃度p型半導体領域は、第1電極との導通路が複数接続されるコンタクト領域を除いて、そのシリサイド化処理がブロックされて成ることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項3】
第1高濃度n型半導体領域、第2高濃度p型半導体領域、及び、第2高濃度n型半導体領域は、いずれも、その全面にシリサイド化処理が施されて成ることを特徴とする請求項2に記載の半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−12648(P2007−12648A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187575(P2005−187575)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】