説明

半導体集積回路装置

【課題】ノーマルなクロックとSSCとを生成するクロック発生回路における回路面積を低減しながら、高精度のSSCを生成する。
【解決手段】電圧制御発振器から出力されたクロック信号vco1は、分周器13によって分周され、分周クロックph0としてセレクタ15に出力される。分周器13は、制御回路12の制御信号Pconに基づいて、周期の1/mずつ位相のシフトした分周クロックph1〜phmを出力する。セレクタ15は、分周クロックph0〜phmのうち、最も近い位相シフトをもつ2つの分周クロックphj,phj+1を選択する。位相補間回路16は、制御回路12から出力される重み付けデータ信号Aに基づいて、分周クロックphj,phj+1間の位相差の間を更に細分化した位相シフト量で位相シフトさせ、出力クロックfout1として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置に用いられるクロック生成技術に関し、特に、クロック信号の周波数をわずかに変動させる周波数変調クロックの生成に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロコンピュータなどの半導体集積回路装置においては、EMI(Electromagnetic Interference)対策としてクロック生成に、周波数変調クロックである、いわゆるSSC(Spread Spectrum Clock)を生成するスペクトル拡散クロック発生回路(SSCG:Spread Spectrum Clock Generator)を搭載する要求が高まっている。
【0003】
SSCとは、クロック信号の周波数をわずかに変動させることで、該クロック信号の周波数スペクトラムのピーク値を下げて放射雑音を低減し、EMIを減少させるものである。
【0004】
半導体集積回路装置には、SSCにより動作可能なCPUなどの回路ブロックの他に、SSCが使用不可となる回路ブロックとを有したものがあり、この場合、2種のクロックを生成する必要がある。SSCが使用不可となる回路ブロックとしては、たとえば、USB、FlexRay、CANに代表されるインターフェースなどである。
【0005】
このように、2種類のクロックを半導体集積回路装置内で生成する場合には、SSCを生成するSSCGとSSCではないピュアなクロックを生成するPLL(Phase Locked Loop)とを並列的に用いることが一般的である。
【0006】
一般的に、PLLは、位相比較器、チャージポンプ回路、ローパスフィルタ、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)、および帰還分周器から構成されており、PLLから出力される出力クロックに参照入力クロックのN逓倍の周波数を出力する。帰還分周器の分周数Nは、整数であるのでPLLの出力クロックの周期は参照入力クロック周期の1/Nの固定値となる。
【0007】
次に、SSCGの構成は、方式によって種々あるが、多くはPLLの構成と類似したものであり、PLLを構成する帰還分周器の分周数に変調を行う構成が広く知られている。
【0008】
この場合、SSCGは、位相比較器、チャージポンプ回路、ローパスフィルタ、電圧制御発振器、帰還分周器、ΔΣ変調器、および変調波発生器から構成されている。
【0009】
帰還分周器は、分周数をNと(N−1)の2種に切り替え可能な構成となっており、一定期間中の整数Nと(N−1)の使用比率を選ぶことで平均分周数をNと(N−1)の間の非整数値を得るようにしたものであり、この使用比率を順次変えて行くことによって一定周期の参照入力クロックから出力クロックに周期の変化するSSCを出力する。
【0010】
なお、この種のスペクトル拡散クロック発生回路としては、たとえば、位相が各々90°ずつずれた4相のクロックを出力するPLLと、基準クロックに同期して動作し、4相のクロックの各々に対応して一定のパターンで周期的に繰り返し変化し、4相のクロックのうちの隣接する2相のクロックの間の重み付けを行うための制御信号を出力する位相補間制御回路と、隣接する2相のクロック毎に、制御信号に応じて隣接する2相のクロックの各々に重み付けをして合成し、両者の間を所定の段階に位相補間することを全ての隣接する2相のクロックについて行い、位相補間して得られたクロックをスペクトラム拡散クロックとして出力する位相補間器とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−211208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、上記のような半導体集積回路装置内においてノーマルなクロックとSSCとの2種類のクロックを生成する技術では、次のような問題点があることが本発明者により見い出された。
【0013】
すなわち、上記した構成のSSCGの場合、分周数Nと分周数(N−1)との使用比率による分周数の非整数化は、平均化処理を必要とし、PLLを構成するローパスフィルタにその役目を持たせる関係から、該ローパスフィルタの帯域を充分低く設定する必要がある。
【0014】
それにより、同様の整数N逓倍のPLLに比べ低帯域になるためフィルタサイズが大きくなり、その結果、SSCGの専有面積が大きくなってしまい、半導体集積回路装置の小型化が困難となるという問題がある。
【0015】
また、SSCGは、前述したように、PLLのローパスフィルタを通した構成のため、SSCの三角波変調周波数はPLLの帯域によって制限される。PLLの帯域が低いと変調周波数の高調波成分が減衰し、SSC出力が三角波変調を示さなくなるためにEMI減衰量が低下する影響がでてしまうという問題がある。
【0016】
PLLの帯域は、安定性や電圧制御発振器入力のリップル抑制から上限があり、このため変調周波数を高く選択できないことになる。
【0017】
さらに、PLLのローパスフィルタを通した構成の弊害として、そのパルス幅は、PLLのロック状態のパルス幅より必ず広く、且つ電圧制御発振器の制御電圧を乱す要因であるため、PLLと同等のジッタ性能をSSCGでは、実現することができないという問題がある。
【0018】
本発明の目的は、ノーマルなクロックとSSCとを生成するクロック発生回路における回路面積を低減しながら、高精度のSSCを生成することのできる技術を提供することにある。
【0019】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0021】
本発明は、参照クロック信号と周波数が一致した第1のクロック信号、および第1のクロック信号と任意に位相がシフトした複数の第2のクロック信号を生成するPLLと、該PLLが生成した第1、および第2のクロック信号から、周波数を変調させて、電磁スペクトラムを拡散させる周波数変調クロック信号を生成するスペクトル拡散クロック発生部とを有したクロック発生回路を備えた半導体集積回路装置であって、該スペクトル拡散クロック発生部は、PLLから出力される第1のクロック信号を分周する分周器と、該分周器が分周した分周信号を、PLLから出力される位相のずれた複数の第2のクロック信号に基づいて出力し、位相のずれた多相の分周クロックを生成する分周クロック生成部と、該分周クロック生成部が生成した多相の分周クロックのうち、位相が異なり、かつ位相が最も近い任意の2つの分周クロックを選択して出力する分周クロック選択部と、該分周クロック選択部が選択した2つの分周クロックから、それら2つの分周クロック間の位相間を細分化した位相シフト量で位相シフトさせ、周波数変調クロック信号として出力する位相補間回路と、該位相補間回路から出力される周波数変調クロック信号の周期が、PLLから出力される第1のクロック信号の周期と異なるように、分周クロック選択部、および位相補間回路を制御する制御回路とを備えたものである。
【0022】
また、本願のその他の発明の概要を簡単に示す。
【0023】
本発明は、前記制御回路が、分周クロック生成部から出力される多相の分周クロックのうち、任意の2つの分周クロックを選択して出力するように制御する選択信号を分周クロック選択部に出力し、位相補間回路が分周クロック選択部から出力される分周クロック間の位相差間を細分化する重み付けデータを位相補間回路に出力し、位相補間回路から出力される周波数変調クロックが、任意の周期で周波数が変化するように制御する。
【0024】
また、本発明は、前記分周器が、制御回路から出力される分周比切り替え信号に基づいて、任意の分周比を切り替え、前記制御回路は、位相補間回路から出力される周波数変調クロックの位相シフト量が、PLLから出力される第1のクロック信号の1周期を超える毎に分周比を切り替えるように制御するものである。
【0025】
さらに、本発明は、前記制御回路が、分周クロック生成部から出力される多相の分周クロックのうち、最も遅れた分周クロックに同期して動作するものである。
【発明の効果】
【0026】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0027】
(1)クロック発生回路の回路面積を低減することができ、半導体集積回路装置を小型化することができる。
【0028】
(2)EMI減衰量を低下させることなく、高精度なSSCを生成することが可能となり、半導体集積回路装置における耐EMI性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態による半導体集積回路装置に備えられたクロック発生回路の一例を示すブロック図である。
【図2】図1のクロック発生回路に設けられたフェーズ選択/発生器の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図1のクロック発生回路における電圧制御発振器から出力される多位相のクロック信号、分周器から出力される分周クロック、および図2のフリップフロップから出力される多位相の分周クロックの一例を示すタイミングチャートである。
【図4】図2のフェーズ選択/発生器に設けられたセレクタにおける構成の一例を示す回路図である。
【図5】図2のフェーズ選択/発生器に設けられた位相補間回路の構成の一例を示す回路図である。
【図6】図5の位相補間回路におけるセレクタから出力される分周クロックと出力クロックの一例を示すタイミングチャートである。
【図7】図2のSSCGから出力される相対的な遅延量の違う出力クロックの一例を示す説明図である。
【図8】図2のSSCGから出力される出力クロックの出力周期例を示す説明図である。
【図9】図2の制御回路における動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0031】
図1は、本発明の一実施の形態による半導体集積回路装置に備えられたクロック発生回路の一例を示すブロック図、図2は、図1のクロック発生回路に設けられたフェーズ選択/発生器の構成の一例を示すブロック図、図3は、図1のクロック発生回路における電圧制御発振器から出力される多位相のクロック信号、分周器から出力される分周クロック、および図2のフリップフロップから出力される多位相の分周クロックの一例を示すタイミングチャート、図4は、図2のフェーズ選択/発生器に設けられたセレクタにおける構成の一例を示す回路図、図5は、図2のフェーズ選択/発生器に設けられた位相補間回路の構成の一例を示す回路図、図6は、図5の位相補間回路におけるセレクタから出力される分周クロックと出力クロックの一例を示すタイミングチャート、図7は、図2のSSCGから出力される相対的な遅延量の違う出力クロックの一例を示す説明図、図8は、図2のSSCGから出力される出力クロックの出力周期例を示す説明図、図9は、図2の制御回路における動作の一例を示すフローチャートである。
【0032】
本実施の形態において、クロック発生回路1は、たとえば、マイクロコンピュータなどの半導体集積回路装置に備えられる。このクロック発生回路1は、クロックの周波数をわずかに変動させる周波数変調クロック信号(SSC)であるクロック信号とSSCではないノーマルなクロック信号とをそれぞれ生成する。
【0033】
クロック発生回路1は、図1に示すように、PLL2、スペクトラム拡散クロック発生部(SSCG)3、および分周器4,5から構成されている。また、PLL2は、位相比較器6、チャージポンプ回路7、ローパスフィルタ8、電圧制御発振器9、ならびに分周器10から構成されている。さらに、スペクトラム拡散クロック発生部3は、フェーズ選択/発生器11、制御回路12、および分周器13から構成されている。
【0034】
位相比較器6の入力部には、分周器10から出力される帰還クロック信号fFB、および外部入力される参照クロック信号frefが、それぞれ入力されており、該位相比較器6の出力部にはチャージポンプ回路7が接続されている。
【0035】
位相比較器6は、入力された参照クロック信号frefと帰還クロック信号fFBとの位相差を時間差として検出し、その時間差と同じ程度のパルスを出力する。チャージポンプ回路7は、位相比較器6のパルスに応じた電流を生成する。
【0036】
チャージポンプ回路7には、ローパスフィルタ8が接続されている。ローパスフィルタ8の出力部には、電圧制御発振器9が接続されている。ローパスフィルタ8は、参照クロック信号frefに冗長された高周波ノイズを除去し、制御電圧として電圧制御発振器9に出力する。
【0037】
電圧制御発振器9は、ローパスフィルタ8から出力される制御電圧に基づいて発振周波数を変化させた複数のクロック信号を出力する。これらのクロック信号は、m相の周期は同じだが周期の1/mずつ位相のシフトしたクロックからなる。これら複数のクロック信号は、それぞれ位相シフトの順にクロック信号vco0,vco1,vco2,vco3,vco4,〜vcom−1とする。
【0038】
電圧制御発振器9の出力部には、分周器10が接続されている。分周器10は、電圧制御発振器9が生成したクロック信号vco1を分周し、帰還クロック信号fFBとして出力する。
【0039】
分周器13には、第1のクロック信号であるクロック信号vco0が入力されるように接続されている。分周器13によって分周されたクロック信号、および電圧制御発振器9から出力されたクロック信号vco0、および第2のクロック信号となるクロック信号vco1,vco2,vco3,vco4,〜vcom−1は、フェーズ選択/発生器11にそれぞれ入力されるように接続されている。
【0040】
フェーズ選択/発生器11は、制御回路12によって制御が司られ、該フェーズ選択/発生器11の出力部には、分周器4の入力部が接続されている。
【0041】
図2は、フェーズ選択/発生器11における構成の一例を示すブロック図である。
【0042】
フェーズ選択/発生器11は、図示するように、複数のフリップフロップ141〜14N、セレクタ15、および位相補間回路16から構成されている。分周クロック生成部であるフリップフロップ141〜14Nは、たとえば、D型フリップフロップからなる。
【0043】
フリップフロップ141〜14Nのクロック端子ckには、クロック信号vco1,〜vcom−1,vco0がそれぞれ入力されるように接続されている。フリップフロップ141〜14Nのデータ端子Dには、分周器13の出力部がそれぞれ接続されている。
【0044】
そして、フリップフロップ141〜14Nの出力端子Qには、分周クロック選択部となるセレクタ15の入力部がそれぞれ接続されている。セレクタ15は、制御回路12の選択信号selに基づいて、フリップフロップ141〜14Nのうち、任意の2つのフリップフロップから出力される信号を選択して位相補間回路16に出力する。そして、位相補間回路16から出力される信号が、SSCの出力クロックfout1となる。
【0045】
次に、クロック発生回路1の動作について説明する。
【0046】
電圧制御発振器9から出力されたクロック信号vco1は、分周器13によって分周され、分周クロックph0としてセレクタ15に出力される。この分周器13は、制御回路12から出力される分周数を設定する分周比切り替え信号である制御信号Pconに基づいて、分周比として、たとえば、P、あるいは(P+1)の2種類を切り換える。
【0047】
分周クロックph0は、前述したように、フリップフロップ141〜14Nのデータ端子Dに入力されており、該フリップフロップ141〜14N-1のクロック端子ckには、電圧制御発振器9から出力された位相のシフトしたクロック信号vco1,〜vcom−1がそれぞれ入力されているので、各々のフリップフロップ141〜14Nの出力は、分周クロックの周期は同じながら周期の1/mずつ位相のシフトした分周クロックph1〜phmとなる。
【0048】
フリップフロップ14Nのクロック端子ckには、分周器13に入力されるクロック信号vco0が入力されているので、これによって、フリップフロップ14Nの出力は、分周器13から出力される分周クロックph0より、ちょうど電圧制御発振器9の出力周期分の位相のシフトした分周クロックとなる。
【0049】
図3は、電圧制御発振器9から出力される多位相のクロック信号、分周器13から出力される分周クロック、およびフリップフロップ141〜14Nから出力される多位相の分周クロックにおける関係の一例を示すタイミングチャートである。
【0050】
図3において、上方から下方にかけては、電圧制御発振器9から出力される多位相のクロック信号vco0〜vcom−1、分周器13から出力される分周クロックph0、ならびにフリップフロップ141〜14Nから出力される多位相の分周クロックph1〜phmの信号タイミングをそれぞれ示している。なお、図3の例では、分周比P=4の場合を示している。
【0051】
分周器13とフリップフロップ141〜14Nとによって生成された(m+1)個の多位相の分周クロックph0〜phmは、セレクタ15にそれぞれ入力される。セレクタ15は、入力された分周クロックph0〜phmの中から隣り合う位相シフトをもつ分周クロックの2つ(phj,phj+1)を選択的に出力する。
【0052】
図4は、セレクタ15における構成の一例を示す回路図である。
【0053】
Wired−OR接続されたクロックドインバータ群171〜17m、およびインバータ18,19からなる。クロックドインバータ群171〜17mは、2つのクロックドインバータIv1,Iv2をそれぞれ備えた構成からなる。
【0054】
クロックドインバータ群171におけるクロックドインバータIv1の入力部には、分周クロックph0が入力されるように接続されており、クロックドインバータ群171のクロックドインバータIv2の入力部には、分周クロックph1が入力されるように接続されている。
【0055】
クロックドインバータ群172におけるクロックドインバータIv1の入力部には、分周クロックph1が入力されるように接続されており、クロックドインバータ群172のクロックドインバータIv2の入力部には、分周クロックph2が入力されるように接続されており、以下同様に、クロックドインバータ群173〜17mにおけるクロックドインバータIv1の入力部には、分周クロックph2〜phm−1が入力されるようにそれぞれ接続されており、クロックドインバータ群173〜17mのクロックドインバータIv2の入力部には、分周クロックph3〜phmが入力されるようにそれぞれ接続されている。
【0056】
そして、制御回路12から出力される選択信号sel(1−m)のうち、1つだけ活性化された選択信号が入力されるクロックドインバータ群からの信号が選択され、インバータ18,19を介して分周クロックphj,phj+1がそれぞれ出力される。
【0057】
また、非活性の選択信号が入力されるクロックドインバータ群の出力は、Hi−Z状態となる。セレクタ15によって選択された分周クロックphj,phj+1の位相差は、電圧制御発振器9の信号出力周期の1/mである。
【0058】
そして、セレクタ15から出力された2つの分周クロックphj,phj+1は、位相補間回路16に入力される。位相補間回路16は、制御回路12から出力される重み付けデータ信号Aに基づいて、入力信号間の位相差の間を更に細分化した位相シフト量で位相シフトさせる。
【0059】
そして、位相補間回路16からの出力信号を出力クロックfout1として出力する。重み付けデータ信号Aがn種類ある場合、入力の分周クロック間位相差をn分割した位相シフト量がつくられそのステップ量は、電圧制御発振器9の信号出力周期の1/(m・n)となる。
【0060】
図5は、位相補間回路16の構成の一例を示す回路図である。
【0061】
選択された分周クロックphj,phj+1は、差動信号変換回路20を通して差動信号phj,/phj,phj+1,/phj+1にそれぞれ変換され、電流スイッチの働きを持つ差動対のトランジスタM3,M4とトランジスタM5,M6とにそれぞれ入力される。
【0062】
これら差動対の負荷MOSは共通で、トランジスタM7,M8である。各差動対のテール電流源21は、トランジスタMnA,MnBを含む一点鎖線で囲まれたブロックを単位として重み付けデータの種類数分並列接続した構成を持つ。
【0063】
重み付けデータA(1〜n)の値に従って、MOSトランジスタのソース電圧を逆にすることで、トランジスタMnA、あるいはトランジスタMnBのいずれかが活性化し、他方は非活性になる。このため、活性化するトランジスタMnAの数とトランジスタMnBの数との総和はどの重み付けデータであっても変わらず一定値nである。
【0064】
また、デコーダ22は、制御回路12から出力されるn設定信号に基づいて、イネーブル信号Enableを出力する。イネーブル信号Enableは、テール電流源におけるトランジスタMnA,MnBを共に非活性にするもので、重み付けデータ数nの値を可変にする。’エッジNo.’(図7)の増分値をXとすると、出力クロックfout1の周期Toは、To=Tosc×{P+X/(m×n)}で表され、電圧制御発振器9の出力の分数分周した出力となる。N設定信号によって、位相補間回路16の重み付けデータ数nを可変に設定でき、分数分周比を可変にした出力クロックfout1が得られる。
【0065】
動作を以下に説明する。
【0066】
簡単のため、トランジスタサイズは、トランジスタM1=トランジスタMnA=トランジスタMnB、トランジスタM7=トランジスタM8=トランジスタM9=トランジスタM11、トランジスタM10=トランジスタM12とする。
【0067】
まず、分周クロックphj,phj+1がそれぞれLo信号(=基準電位VSSレベル)の場合、トランジスタM3,M5は、それぞれオンとなり、トランジスタM4,M6はオフとなり、負荷MOSであるトランジスタM7には、トランジスタM3を介して活性化したトランジスタMnAのテール電流と、トランジスタM5を介して活性化したトランジスタMnBのテール電流が流れ、総和は前述した通りn・IBである。
【0068】
一方、負荷MOSであるトランジスタM8には、トランジスタM4,M6がオフであるので、電流はゼロである。トランジスタM7,M8の電流は、それぞれトランジスタM12,M11に転送され、差分電流によってドレインノードの電圧が決まる。
【0069】
トランジスタM11はゼロ、トランジスタM12は、n・IBであるので、出力クロックfout1は、Lo信号である。
【0070】
続いて、分周クロックphjが、Lo信号からHi信号に変化して位相の違うPhj+1はLo信号のままの場合、トランジスタM4,M5はオンとなり、トランジスタM3,M6はオフとなって、トランジスタM8には、活性化したトランジスタMnAのテール電流が流れようになり、トランジスタM7には活性化したトランジスタMnBのテール電流が流れる。
【0071】
出力部となるトランジスタM11,M12のドレインノードでは(活性化しているトランジスタMnAの電流−活性化しているトランジスタMnBの電流)といった差分電流がノードの充電電流として流れる。
【0072】
この結果、各テール電流の比率に応じて出力電位の遷移変化が生じ、重み付けデータの値に応じた遅延時間の変化が生じる。さらに、分周クロックphj+1がHi信号に変化するとトランジスタM4,M6はオンとなり、トランジスタM3,M5はオフとなるので、トランジスタM7の電流はゼロ、トランジスタM8の電流はn・IBになり、出力クロックfout1は最終的にHi信号に遷移する。
【0073】
トランジスタMnAのみ活性化した場合の分周クロックphjの入力から出力クロックfout1の遅延時間を基準に各重み付けデータでの遅延時間は前述の差分電流に応じて増加するため、図6に示すような、見かけ上、分周クロックphj,phj+1の位相差間を重み付けデータに応じて位相シフトさせて出力させたような出力クロックfout1が得られる。
【0074】
この構成により、選択信号sel(1〜m)と重み付けデータ信号A(1〜n)によって表現される出力クロックfout1はm・n通りとなり、分周クロックphj,phj+1から、図7に示すような相対的な遅延量の違う(位相シフト量の異なる)出力クロックfout1を出力することが可能になる。
【0075】
ここで、図7において、左上方に示すfout1の’エッジNo.’=0は、分周クロックph0が上記構成を通って出力クロックfout1として出力されたものを示しており、これを基準とした。
【0076】
分周クロックph0の周期は、p×Toscと固定された周期であるが、分周クロック毎に選択信号selと重み付けデータ信号Aを変更した場合の出力クロックfout1周期をみてみる。
【0077】
たとえば、図7のfout1の’エッジNo.’において分周クロック毎にfout1の’エッジNo.’を0,1,2,3・・・と変更した場合、相対遅延量は毎回Δ分増加しているため、出力クロックfout1の周期は(p×Tosc+Δ)になる。図8の出力クロックfout1(A)が相当する。
【0078】
同様に、’エッジNo.’を0,2,4,6・・・と選択変化させた場合には、相対遅延量は毎回2Δずつ増加するため、出力クロックfout1の周期は(p×Tosc+2Δ)になる。
【0079】
この様に、’エッジNo.’の選択の増分を変えることにより、出力クロックfout1の周期を変更することができる。増分変化を毎回Δ、2Δ、3Δ・・・と変化させることで、図8に示す出力クロックfout1(B)に示すように、出力周期をp×Tosc,p×Tosc+Δ,p×Tosc+2Δ,p×Tosc+3Δ,・・・と順次増加変化させることができる。
【0080】
前述のようなエッジの選択の組合せを行うことによって、図8に示すような三角波の変調周期を持った出力クロックfout1を出力する。選択する’エッジNo.’は現行の’エッジNo.’に増分値を加算することで計算する。
【0081】
選択できる出力クロックfou1の’エッジNo.’は分周クロック周期(p×Tosc)の全周期をカバーしておらず、電圧制御発振器9の1周期分のみであるため、計算された’エッジNo.’が最大値を超える場合には、分周器13の分周比をPから(P+1)に切り替えると共に、計算のあまり分の値に’エッジNo.’を切り替える。
【0082】
その後、分周比はPに戻し、オーバフロー前と同様の計算を行い、’エッジNo.’を選択して行く。この繰り返しを行うことにより、分周クロックの全周期をカバーすることができる。
【0083】
また、制御回路12は、三角波変調波形の周期や変調率が所定の値になるよう’エッジNo.’を計算し、それに相当する選択信号sel、および重み付けデータ信号Aをセレクタ15、および位相補間回路16にそれぞれ与える。
【0084】
制御回路12は、’エッジNo.’の前進/後退の切り替えによるグリッジを発生させないために信号の安定した期間である帰還分周クロックの一番遅れた分周クロックphmによって動作させる。
【0085】
図9は、制御回路12における動作の一例を示すフローチャートである。
【0086】
まず、制御回路12は、要求の変調周波数の周期、変調率から増分Δ(δ)の最大値δmaxや同じ増分値の繰り返し回数Kmaxを設定する(ステップS101)。
【0087】
相対遅延量の’エッジNo.’に相当のΦ、増分Δ(δ)の増加、あるいは減少を示すδdなどの初期値設定を行う(ステップS102)。
【0088】
続いて、分周クロックphm毎に繰り返し回数k、シフト量δ、δd、相対遅延量Φ(エッジNo.)の値を計算し(ステップS103)、その計算結果に基づいて、セレクタ15の選択信号sel、位相補間回路16の重み付けデータ信号A、ならびに分周器13の制御信号Pconを設定する(ステップS104)。これらの制御を分周クロックphm毎に行うことで、図8に示すSSC出力周期の出力クロックfout1が得られる。
【0089】
また、制御回路12からの’エッジNo.’の選択の仕方に応じて、任意の出力クロックfout1周期の波形を出力できるため、三角波変調波形の周期を固定ではなく随時変更するような機能を持たせることで、出力に固定のスプリアスがでることを低減することができる。
【0090】
それにより、本実施の形態によれば、スペクトラム拡散クロック発生部3を、ローパスフィルタなどを有したPLLを用いずに構成したことにより、該スペクトラム拡散クロック発生部3の回路面積を低減することができる。
【0091】
また、フィルタなどによる帯域制限がなくなるので、変調周波数を制御回路12によって任意に設定することができると共に、高調波の減衰などなく制御回路12で設定の変調波形そのままの出力を得ることができる。
【0092】
さらに、変調出力の周期間偏差であるジッタは位相補間回路の最小位相シフト値で決まるために、設計的に小さくすることができる。
【0093】
また、スペクトラム拡散クロック発生部3を論理回路によって構成するので、プロセスポーティングを容易にすることができる。
【0094】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、クロック信号の周波数をわずかに変動させるSSCとSSCではないノーマルなクロック信号とを生成するクロック発生部を有する半導体集積回路装置に適している。
【符号の説明】
【0096】
1 クロック発生回路
2 PLL
3 スペクトラム拡散クロック発生部
4,5 分周器
6 位相比較器
7 チャージポンプ回路
8 ローパスフィルタ
9 電圧制御発振器
10 分周器
11 フェーズ選択/発生器
12 制御回路
13 分周器
141〜14N フリップフロップ
15 セレクタ
16 位相補間回路
171〜17m クロックドインバータ群
18,19 インバータ
20 差動信号変換回路
21 テール電流源
22 デコーダ
M1〜M12 トランジスタ
MnA トランジスタ
MnB トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照クロック信号と周波数が一致した第1のクロック信号、および前記第1のクロック信号と任意に位相がシフトした複数の第2のクロック信号を生成するPLLと、前記PLLが生成した第1、および第2のクロック信号から、周波数を変調させて、電磁スペクトラムを拡散させる周波数変調クロック信号を生成するスペクトル拡散クロック発生部とを有したクロック発生回路を備えた半導体集積回路装置であって、
前記スペクトル拡散クロック発生部は、
前記PLLから出力される第1のクロック信号を分周する分周器と、
前記分周器が分周した分周信号を、前記PLLから出力される位相のずれた複数の前記第2のクロック信号に基づいて出力し、位相のずれた多相の分周クロックを生成する分周クロック生成部と、
前記分周クロック生成部が生成した多相の分周クロックのうち、位相が異なり、かつ位相が最も近い任意の2つの分周クロックを選択して出力する分周クロック選択部と、
前記分周クロック選択部が選択した2つの分周クロックから、前記2つの分周クロック間の位相間を細分化した位相シフト量で位相シフトさせ、前記周波数変調クロック信号として出力する位相補間回路と、
前記位相補間回路から出力される周波数変調クロック信号の周期が、前記PLLから出力される第1のクロック信号の周期と異なるように、前記分周クロック選択部、および前記位相補間回路を制御する制御回路とを備えたことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体集積回路装置において、
前記制御回路は、
前記分周クロック生成部から出力される多相の分周クロックのうち、任意の2つの分周クロックを選択して出力するように制御する選択信号を前記分周クロック選択部に出力し、前記位相補間回路が前記分周クロック選択部から出力される分周クロック間の位相差間を細分化する重み付けデータを前記位相補間回路に出力し、前記位相補間回路から出力される周波数変調クロックが、任意の周期で周波数が変化するように制御することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の半導体集積回路装置において、
前記分周器は、
前記制御回路から出力される分周比切り替え信号に基づいて、任意の分周比を切り替え、
前記制御回路は、
前記位相補間回路から出力される周波数変調クロックの位相シフト量が、前記PLLから出力される第1のクロック信号の1周期を超える毎に分周比を切り替えるように制御することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体集積回路装置において、
前記制御回路は、
前記分周クロック生成部から出力される多相の分周クロックのうち、最も遅れた分周クロックに同期して動作することを特徴とする半導体集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−107750(P2011−107750A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258835(P2009−258835)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】