説明

半田付け装置及び半田付け方法

【課題】プリント基板や電子部品などが焦げることを回避して、安定した半田状態を得ることができ、安全性が高い半田付け装置を提供する。
【解決手段】半田付け装置110は、(a)開口部152が尖端に形成されており、開口部152に向かって窄む錘状空間が内部に形成された錐体ノズル150と、(b)錘状空間にレーザ光113を集光させる光学システム(コリメータレンズ121、ミラー122、集光レンズ123など。)と、(c)錘状空間に糸半田111を供給する半田供給手段(糸半田供給装置160、パイプ130など。)とを備え、(d)レーザ光113を集光させて得られた収束光115で錘状空間に供給された糸半田111の下方先端部分を溶融させて得られた溶融玉112が、開口部152から供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を使用して溶融させた半田を半田付け対象部分に塗布する半田付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半田付け装置に関して色々な技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
例えば、図7に示すように、半田付け装置10は、レーザ光13で半田付け対象部分55を加熱して、レーザ光13で加熱した半田付け対象部分55に糸半田11を接触させることで、半田付け対象部分55を半田付けする装置である。ここで、図7については、半田付け装置10の内部構造を見易くするために、X−Y面を切断面として、収束光15の光軸に沿って、半田付け装置10を切断した状態で表示している。
【0003】
具体的には、半田付け装置10では、鏡筒20の上部中央に貫通穴が形成されている。鏡筒の上部中央に形成された貫通穴に光ファイバ21が挿入されている。貫通穴に挿入された光ファイバ21からレーザ光13が射出される。光ファイバ21から射出されたレーザ光13が、コリメータレンズ22、集光レンズ23を介して、半田付け対象部分55を照射する。半田付け対象部分55を照射する収束光15で半田付け対象部分55が加熱される。このとき、半田付け対象部分55に集光レンズ23の焦点が位置するように、半田付け装置10の位置が調節されている。
【0004】
また、半田付け装置10では、集光レンズ23の中心に光軸に沿って貫通穴が形成されている。集光レンズ23の中心に形成された貫通穴にパイプ30が挿入されている。貫通穴に挿入されたパイプ30を介して、鏡筒20の外部から半田付け対象部分55に糸半田11が供給される。パイプ30から供給された糸半田11の下方先端部分が、レーザ光13で加熱された半田付け対象部分55に接触する。レーザ光13で加熱された半田付け対象部分55の熱で、半田付け対象部分55に接触した糸半田11の下方先端部分が溶融する。これによって、半田付け対象部分55が半田付けされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−98452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の半田付け装置10では、レーザ光13の照射対象が半田付け対象部分55である。このため、収束光15の一部が、半田付け対象部分55で反射されたり、半田付け対象部分55で溶融中の半田12で反射されたりする。これに伴い、反射された収束光15の一部である反射光16によって、半田付け対象部分55の周辺において、プリント基板51が焦げたり、電子部品53が焦げたりする場合がある。
【0007】
例えば、レーザ光13の照射開始時には、半田付け対象部分55も冷えている。このため、糸半田11の溶融具合が悪く、半田付け対象部分55が濡れ難い。このとき、糸半田11の下方先端部分を半田付け対象部分55に接触させても、半田付け対象部分55が十分に加熱されていないので、糸半田11の下方先端部分が半球状になる。半球状になった糸半田11の下方先端部分で収束光15の一部が反射される。反射された収束光15の一部である反射光16によって、プリント基板51や電子部品53などが焦げる。
【0008】
しかしながら、半田付けの対象物の選定や半田付けの条件だしによっては、プリント基板51や電子部品53などが焦げることを回避することができる。ただし、半田付けの対象物の選定や半田付けの条件だしに手間がかかる。
【0009】
また、集光レンズ23の中心から糸半田11が供給されても、糸半田11の残留応力で糸半田11が傾いたり、糸半田11が揺れたりして、集光レンズ23の光軸に沿って糸半田11を安定供給することができない場合がある。この場合において、糸半田11の下方先端部分が半田付け対象部分55の加熱位置からずれると、十分な加熱が得られず、糸半田11の溶融具合が悪い。糸半田11の溶融具合が悪いと、予熱や連続加熱するときに、糸半田11の下方先端部分に対する加熱温度がばらつき、半田状態が安定しない。
【0010】
また、鏡筒20から外部にレーザ光13が射出されるので、安全上、カバーや各種インターロックなどが必要とされる。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みて、プリント基板や電子部品などが焦げることを回避して、安定した半田状態を得ることができ、安全性が高い半田付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係わる半田付け装置は、下記に示す特徴を備える。
(CL1)本発明に係わる半田付け装置は、(a)レーザ光で半田を溶融させて半田付け対象部分を半田付けする半田付け装置であって、(b)開口部が先端に形成されており、前記開口部に向かって窄む錐状空間が内部に形成されたノズルと、(c)前記錐状空間に前記レーザ光を集光させる光学システムと、(d)前記錐状空間に前記半田を供給する半田供給手段とを備え、(e)前記レーザ光を集光させて得られた収束光で前記錘状空間に供給された前記半田の一部を溶融させて得られた溶融部分が、前記開口部から供給される。
【0012】
(CL2)上記(CL1)に記載の半田付け装置は、(a)前記錐状空間にガスを供給するガス供給手段とを備え、(b)前記溶融部分が、前記開口部から噴き出される前記ガスで前記開口部から前記ノズルの外部に押し出されたものである。
【0013】
(CL3)上記(CL1)に記載の半田付け装置は、(a)前記溶融部分から放射される赤外線を測定する赤外線センサーと、(b)前記ノズルの先端から前記溶融部分が無くなったことが前記赤外線センサーで検出されると、前記レーザ光の供給を停止するレーザ光供給手段とを備える。
【0014】
(CL4)上記(CL1)に記載の半田付け装置は、前記錐状空間に面する前記ノズルの内面が光を反射するものである。
なお、本発明は、半田付け装置以外に、下記に示す半田付け方法として実現されるとしてもよい。
【0015】
(CL5)本発明に係わる半田付け方法は、(a)レーザ光で半田を溶融させて半田付け対象部分を半田付けする半田付け方法であって、(b)ノズルの先端に形成された開口部に向かって窄むように前記ノズルの内部に形成された錘状空間に前記レーザ光を供給して、前記錘状空間に前記レーザ光を集光させる第1の工程と、(c)前記錘状空間に前記半田を供給して、前記レーザ光を前記錘状空間に集光させて得られた収束光で前記錘状空間に供給された前記半田の一部を溶融させる第2の工程と、(d)前記半田の一部を溶融させて得られた溶融部分を前記半田付け対象部分に塗布して、前記半田付け対象部分を半田付けする第3の工程とを含む。
【0016】
(CL6)上記(CL5)に記載の半田付け方法は、前記溶融部分から放射される赤外線を赤外線センサーで測定して、前記赤外線センサーで測定した結果に基づいて、前記ノズルの先端から前記溶融部分が無くなったと判断したときは、前記レーザ光の供給を停止する第4の工程を含む。
【0017】
(CL7)上記(CL5)に記載の半田付け方法は、前記第3の工程において、前記錘状空間にガスを供給して、前記開口部から噴き出される前記ガスで前記開口部から前記ノズルの外部に前記溶融部分を押し出す。
【0018】
(CL8)上記(CL7)に記載の半田付け方法は、(a)前記半田がヤニ入り半田であって、(b)前記第2の工程において、前記収束光で、前記ヤニ入り半田に含まれるフラックスが加熱されて揮発して、(c)前記第3の工程において、前記開口部から噴き出される前記ガスに混じって、揮発したフラックスが前記半田付け対象部分に吹き付けられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、錘状空間における開口部の近傍空間にレーザ光が集光して、開口部から漏れる光が溶融部分で遮断されて、ノズルの内部にレーザ光が殆ど封じ込められる。ノズルの先端から溶融部分が無くなると、レーザ光の供給が即座に停止される。このことから、ノズルの外部に収束光が漏れることを回避することができる。これによって、ノズルの外部に漏れた光でプリント基板や電子部品などを焦がすことが殆ど起こらなくなる。レーザ光を使用するにあたって、安全上、必要とされるカバーなどが不要となる。
【0020】
また、錘状空間に面するノズルの内面で位置規制されながら、半田が錘状空間に供給される。レーザ光が集光されて光の密度が大きくなる場所(錘状空間における開口部の近傍空間)を、半田が常に通過する。このことから、半田を照射する光のエネルギーのバラツキが小さくなる。これによって、予熱や連続加熱するときに、半田の加熱温度がばらつくことを回避することができる。安定した半田状態を得ることができる。
【0021】
これらのことから、安全性が高く、半田ごての代わりに、身近に利用することができる半田付け装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態における半田付け装置の構造を示す図である。
【図2】実施の形態における錐体ノズルの内部に集光されるレーザ光の概要を示す図である。
【図3】(A)−(C)は、実施の形態における半田付け装置において溶融玉が形成される過程を示す図である。
【図4】(A),(B)は、実施の形態における半田付け装置を使用してプリント基板の斜め上方から半田付け対象部分を半田付けする工程を示す図である。
【図5】(A),(B)は、実施の形態における半田付け装置を使用してプリント基板の裏面から半田付け対象部分を半田付けする工程を示す図である。
【図6】実施の形態の変形例における半田付け装置において形成される溶融玉の様子を示す図である。
【図7】従来の半田付け装置の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態)
以下、本発明に係わる実施の形態について説明する。
<概要>
本実施の形態における半田付け装置は、下記(1)−(4)に示す特徴を備える。
【0024】
(1)半田付け装置は、(a)レーザ光で半田を溶融させて半田付け対象部分を半田付けする半田付け装置であって、(b)開口部が先端に形成されており、開口部に向かって窄む錐状空間が内部に形成されたノズルと、(c)錐状空間にレーザ光を集光させる光学システムと、(d)錐状空間に半田を供給する半田供給手段とを備え、(e)レーザ光を集光させて得られた収束光で錘状空間に供給された半田の一部を溶融させて得られた溶融部分が、開口部から供給される。
【0025】
(2)半田付け装置は、(a)錐状空間にガスを供給するガス供給手段とを備え、(b)溶融部分が、開口部から噴き出されるガスで開口部からノズルの外部に押し出されたものである。
【0026】
(3)半田付け装置は、(a)溶融部分から放射される赤外線を測定する赤外線センサーと、(b)ノズルの先端から溶融部分が無くなったことが赤外線センサーで検出されると、レーザ光の供給を停止するレーザ光供給手段とを備える。
【0027】
(4)半田付け装置は、錐状空間に面するノズルの内面が光を反射するものである。
なお、本実施の形態における半田付け装置を使用した半田付け方法は、下記(5)−(8)に示す特徴を備える。
【0028】
(5)半田付け方法は、(a)レーザ光で半田を溶融させて半田付け対象部分を半田付けする半田付け方法であって、(b)ノズルの先端に形成された開口部に向かって窄むようにノズルの内部に形成された錘状空間にレーザ光を供給して、錘状空間にレーザ光を集光させる第1の工程と、(c)錘状空間に半田を供給して、レーザ光を錘状空間に集光させて得られた収束光で錘状空間に供給された半田の一部を溶融させる第2の工程と、(d)半田の一部を溶融させて得られた溶融部分を半田付け対象部分に塗布して、半田付け対象部分を半田付けする第3の工程とを含む。
【0029】
(6)半田付け方法は、溶融部分から放射される赤外線を赤外線センサーで測定して、赤外線センサーで測定した結果に基づいて、ノズルの先端から溶融部分が無くなったと判断したときは、レーザ光の供給を停止する第4の工程を含む。
【0030】
(7)半田付け方法は、第3の工程において、錘状空間にガスを供給して、開口部から噴き出されるガスで開口部からノズルの外部に溶融部分を押し出す。
(8)半田付け方法は、(a)半田がヤニ入り半田であって、(b)第2の工程において、収束光で、ヤニ入り半田に含まれるフラックスが加熱されて揮発して、(c)第3の工程において、開口部から噴き出されるガスに混じって、揮発したフラックスが半田付け対象部分に吹き付けられる。
【0031】
以上の点を踏まえて、本実施の形態における半田付け装置について説明する。
<構成>
まず、本実施の形態における半田付け装置の構成について説明する。
【0032】
図1に示すように、半田付け装置110は、レーザ光113で糸半田111を溶融させて、溶融させて得られた溶融玉112を半田付け対象部分(不図示)に塗布する装置である。ここで、図1については、半田付け装置110の内部構造を見易くするために、X−Y面を切断面として、収束光150の光軸に沿って、半田付け装置110を切断した状態で表示している。レーザ光113の供給装置については、省略しているが、レーザ光を連続供給可能なレーザ装置が光ファイバ124に接続されている。ガス116の供給装置については、省略しているが、Nなどの不活性ガスや大気ガスなどを供給可能な装置がバイパスパイプ131に接続されている。
【0033】
なお、錐体ノズル150が、上記ノズルに該当する。錐体ノズル150の尖端が、上記ノズルの先端に該当する。コリメータレンズ121、ミラー122、集光レンズ123などが、上記光学システムに該当する。光ファイバ124、レーザ光113の供給装置(不図示)などが、上記レーザ光供給手段に該当する。糸半田供給装置160、パイプ130などが、上記半田供給手段に該当する。バイパスパイプ131、パイプ130、ガス116の供給装置(不図示)などが、上記ガス供給手段に該当する。糸半田111の下方先端部分が、上記半田の一部に該当する。溶融玉112が、外部に押し出された溶融部分、すなわち、開口部から供給される溶融部分に該当する。
【0034】
ここでは、一例として、半田付け装置110では、筐体120の右側部に、光軸がX方向に合わされた状態で、コリメータレンズ121が取り付けられている。筐体120の中央に、筐体120の右側から入射した光が筐体120の下側に射出される状態で、ミラー122が取り付けられている。筐体120の下部に、光軸がY方向に合わされた状態で、集光レンズ123が取り付けられている。光ファイバ124から射出されたレーザ光113がコリメータレンズ121に入射すると、コリメータレンズ121から平行光114が射出される。コリメータレンズ121から射出された平行光114が、ミラー122で反射される。ミラー122で反射された平行光114が集光レンズ123に入射すると、集光レンズ123から収束光115が射出される。
【0035】
また、半田付け装置110では、筐体120の上部、ミラー122、集光レンズ123の各々に、パイプ130が挿入可能であって光軸上に位置する貫通穴が形成されている。各貫通穴に、メンテナンスが容易になるように、着脱可能な状態で、パイプ130が挿入されている。特に、筐体120の上部に形成された穴については、パイプ130が挿入された状態で、Oリング125でシールされている。集光レンズ123に形成された貫通穴については、パイプ130の先端だけが挿入されている。
【0036】
また、半田付け装置110では、筐体120の右側面に、錐体フード140が、ネジ141で取り付けられている。錐体フード140の頂点に、光ファイバ124の先端が挿入されている。筐体120の下面に、錐体ノズル150が、尖端を下にして、ネジ151で取り付けられている。錐体ノズル150の尖端に、糸半田111の径よりも開口径がやや大きくて光軸上に位置する開口部152が形成されている。錐体ノズル150の内部に、開口部152に向かって窄む錘状空間が形成されている。
【0037】
また、半田付け装置110では、少なくとも、錐体ノズル150の内側部分が、半田フィレットが形成され難い材料で構成されている。これによって、糸半田111の下方先端部分と錐体ノズル150の内面との接触面積を小さくすることができる。これに伴い、錐体ノズル150に伝わる熱量を小さくすることができる。
【0038】
また、半田付け装置110では、錐体ノズル150の内面については、レーザ反射処理が施されている。さらに、収束光115の外周部分が錐体ノズル150の尖端内面で反射されるように、集光レンズ123の焦点距離が設定されている。このとき、図2に示すように、収束光115が錐体ノズル150の内面で反射されて、集光レンズ123の光軸上にビームウエスト118が形成される。これによって、収束光115の外周部分が錐体ノズル150の内面で反射される。これに伴い、錘状空間における開口部152の近傍空間のエネルギー密度が上昇する。そのエネルギー密度の分布が緩やかに連続変化する分布を示す。結果、糸半田111の溶融可能範囲が広がる。
【0039】
また、図1に示すように、半田付け装置110では、例えば、Nなどの不活性ガスや大気ガスなどのようなガス116が、バイパスパイプ131から、パイプ130を介して、錐体ノズル150の内部に供給される。これによって、開口部152からガス116を噴き出すことができる。さらに、糸半田111としてヤニ入り半田が使用されたときは、ヤニ入り半田に含まれるフラックスが収束光115で加熱されて揮発する。しかしながら、開口部152から噴き出されるガス116に混じって、揮発したフラックスが半田付け対象部分に吹き付けられる。これに伴い、安定した半田状態を得ることができる。集光レンズ123にフラックスが付着することを回避することできる。
【0040】
また、半田付け装置110では、錘状空間における開口部152の近傍空間の赤外線を集光レンズ123越しに測定することができる位置に、赤外線センサー126が設置されている。これによって、錘状空間における開口部152の近傍空間で溶融した糸半田111の下方先端部分の放射エネルギーや表面温度を測定することができる。
【0041】
また、半田付け装置110では、錐体ノズル150の尖端先から溶融玉112が無くなる度に、赤外線センサー126で不連続信号が検出されることを利用して、引き半田のときに、赤外線センサー126で検出された不連続信号で溶融玉112の消失を検出する。溶融玉112の消失を検出すると、レーザ光113の供給装置(不図示)が、レーザ光の供給を即座に停止する。これによって、錐体ノズル150の外部にレーザ光が漏れることを回避することができる。錐体ノズル150の外部に漏れたレーザ光で電子部品やプリント基板などを焦がすことが殆ど起こらない。
【0042】
<半田付け方法>
次に、半田付け装置110を使用した半田付け方法について説明する。
まず、半田付け装置110では、光ファイバ124からレーザ光113が連続射出される。光ファイバ124から連続射出されたレーザ光113が、コリメータレンズ121、ミラー122、集光レンズ123を介して、錘状空間における開口部152の近傍空間に集光する。このとき、集光レンズ123の光軸上における光の密度が、開口部152に近付くに従って、徐々に上昇する。
【0043】
また、半田付け装置110では、糸半田供給装置160から糸半田111が送り出される。糸半田供給装置160から送り出された糸半田111が、パイプ130を介して、錐体ノズル150の内部に供給される。このとき、糸半田111の下方先端部分が、集光レンズ123の中心から開口部152に、錐体ノズル150の内面で位置規制されながら、集光レンズ123の光軸に沿って案内される。
【0044】
これによって、レーザ光113が集光されて光の密度が大きくなる場所(錘状空間における開口部152の近傍空間)を糸半田111の下方先端部分が常に通過する。このとき、集光レンズ123の光軸に沿って供給される糸半田111の下方先端部分が、急加熱されることなく、開口部152に近付くに従って徐々に加熱されて、錘状空間における開口部152の近傍空間で、糸半田111の下方先端部分が溶融する。このため、糸半田111としてヤニ入り半田が使用されていても、半田ボールやフラックスが飛散することを防止することができる。錐体ノズル150の内部が汚れることを回避することができる。
【0045】
さらに、糸半田111の下方先端部分が錘状空間における開口部152の近傍空間に位置すると、糸半田111の下方先端部分が収束光115で溶融する。溶融した糸半田111の下方先端部分(以下、溶融部分と呼称する。)で開口部152が塞がれて、錐体ノズル150の内部が密閉状態になる。溶融後、密閉状態になった錐体ノズル150の内部に、バイパスパイプ131から、パイプ130を介して、ガス116が供給される。これに伴い、錐体ノズル150の内部圧力が上昇して、開口部152を塞ぐ溶融部分が錐体ノズル150の外部に押し出される。錐体ノズル150の外部に押し出された溶融部分が、開口部152から噴き出されるガス116によって、開口部152から浮いた状態で、錐体ノズル150の尖端先に保持される。錐体ノズル150の外部に押し出された溶融部分が、例えば、線香花火の玉ように、表面張力で球状に形成されて、溶融玉112になる。開口部152から漏れる光が溶融玉112で遮断される。このとき、溶融玉112の付け根に働く表面張力と、溶融玉112に掛かる重力と、ガス116の排出圧との間で均衡が保たれている。
【0046】
また、半田付け装置110では、溶融玉112の表面から赤外線117が放射される。溶融玉112の表面から放射された赤外線117が、2μ以上の熱線を通過する膜で個別にコーティングされた集光レンズ123とミラー122とを通過して、赤外線センサー126で受光される。溶融玉112の表面温度が赤外線センサー126で受光された赤外線117から特定される。光ファイバ124から射出されるレーザ光113のパワーが赤外線センサー126で特定された溶融玉112の表面温度に応じて調節される。これによって、糸半田111の送り量やレーザ光113の出力を調節して、加熱温度がばらつくことを能動的に軽減することができる。
【0047】
そして、半田付け対象部分を半田付けするときは、半田付け装置110では、開口部152から漏れる光が溶融玉112で遮断された状態で、半田付け対象部分に溶融玉112が塗布される。
【0048】
<溶融玉の形成過程>
次に、溶融玉の形成過程について説明する。
ここでは、糸半田111の下方先端部分が糸半田111の残留応力で曲がるとする。この場合において、半田付け装置110では、レーザ光が集光する位置から糸半田111の下方先端部分が外れると、糸半田111の下方先端部分が半田融点に到達しない。しかしながら、錐体ノズル150の内側が開口部152に向かって窄んでいる。このため、図3(A)に示すように、錐体ノズル150の内壁に糸半田111の下方先端部分が接触すると、錐体ノズル150の内面で錘状空間における開口部152の近傍空間まで糸半田111の下方先端部分が案内される。糸半田111の下方先端部分が錘状空間における開口部152の近傍空間に位置すると、図3(B)に示すように、糸半田111の下方先端部分が収束光115で徐々に加熱される。糸半田111の下方先端部分に溶融部分が成長する。図3(C)に示すように、溶融部分で開口部152が塞がれた状態で、錐体ノズル150の内部にガス116が供給される。ガス116で開口部152から外部に溶融部分が押し出される。これによって、錐体ノズル150の尖端から溶融玉112が供給される。
【0049】
<使用例>
次に、半田付け装置110の使用例について説明する。
<一例目>
まず、一例目として、半田付け装置110では、図4(A)に示すように、錐体ノズル150を傾けても、溶融玉112の付け根に働く表面張力で、錐体ノズル150の尖端先に溶融玉112が保持される。錐体ノズル150の尖端先に溶融玉112が保持された状態で、プリント基板171のランド172と電子部品173のリード174との部分(以下、半田付け対象部分175と呼称する。)に溶融玉112が接触する。これに伴い、図4(B)に示すように、半田付け対象部分175が溶融玉112で加熱される。溶融玉112と半田付け対象部分175との間に働く表面張力が増大する。錐体ノズル150の尖端先から溶融玉112が取れる。半田付け対象部分175に半田フィレット176が形成される。
【0050】
このとき、半田付け装置110では、溶融玉112が取れたときに赤外線センサー126で受光される赤外線の量が変化することを利用して、錐体ノズル150の尖端先から溶融玉112が無くなったか否かが判断される。溶融玉112が無くなったと判断されると、即座に、光ファイバ124からレーザ光113が射出されることが停止される。
【0051】
<二例目>
次に、二例目として、半田付け装置110では、図5(A)に示すように、錐体ノズル150の尖端先に溶融玉112が形成された状態で、電子部品のリード端子184の上方に錐体ノズル150が配置される。それから、図5(B)に示すように、電子部品のリード端子184が開口部152に差し込まれるまで、錐体ノズル150が下降する。プリント基板181のランド182と電子部品のリード端子184との部分(以下、半田付け対象部分185と呼称する。)が溶融玉112で加熱される。溶融玉112と半田付け対象部分185との間に働く表面張力と溶融玉112に掛かる重力との合計が、糸半田111の下方先端部分と溶融玉112との間に働く表面張力よりも大きくなると、半田付け対象部分185に溶融玉112が流れ出して、半田付け対象部分185に半田フィレット186が形成される。
【0052】
このとき、半田付け装置110では、糸半田111としてヤニ入り半田が使用されていても、フラックスが飛散する範囲が錐体ノズル150の内部に制限される。このため、半田付け対象部分の周辺が汚れることを回避することができる。また、半田付け対象部分と比べて、半田溶融温度における錐体ノズル150の尖端部分の濡れ性を悪くしておくことで、半田付け対象部分に溶融玉112がより流れ易くなる。
【0053】
<まとめ>
以上、本実施の形態によれば、錘状空間における開口部152の近傍空間にレーザ光113が集光して、開口部152から漏れる光が溶融玉112で遮断されて、錐体ノズル150の内部にレーザ光113が殆ど封じ込められる。錐体ノズル150の尖端先から溶融玉112が無くなると、レーザ光113の供給が即座に停止される。このことから、錐体ノズル150の外部に収束光115が漏れることを回避することができる。これによって、錐体ノズル150の外部に漏れた光でプリント基板や電子部品などを焦がすことが殆ど起こらなくなる。レーザ光を使用するにあたって、安全上、必要とされるカバーなどが不要となる。
【0054】
また、錐体ノズル150の内面で位置規制されながら、集光レンズ123の光軸に沿って、糸半田111の下方先端部部が開口部152に供給される。レーザ光113が集光されて光の密度が大きくなる場所(錘状空間における開口部152の近傍空間)を、糸半田111の下方先端部分が常に通過する。このことから、糸半田111の下方先端部分を照射する光のエネルギーのバラツキが小さくなる。これによって、予熱や連続加熱するときに、糸半田111の加熱温度がばらつくことを回避することができる。安定した半田状態を得ることができる。
【0055】
これらのことから、安全性が高く、半田ごての代わりに、身近に利用することができる半田付け装置110を実現することができる。
<変形例>
(1)なお、図1に示すように、錐体ノズル150には、ガス供給口155が形成されているとしてもよい。これによって、パイプ130の代わりに、またはパイプ130以外からも、ガスを供給することができて、錐体ノズル150の内部に圧力をかけることができる。
【0056】
(2)なお、集光レンズ123の代わりに、集光レンズ123よりも焦点距離が短い集光レンズを使用するとしてもよい。この場合においては、開口部152の上方で溶融玉が形成される。開口部152の上方で形成された溶融玉が、錐体ノズル150の内部に供給されるガスの圧力で糸半田111から切り離される。糸半田から切り離された溶融玉で、開口部152が塞がれる。開口部152が塞がれた状態で、ガスが供給されて、錐体ノズル150の内部圧力が上昇する。開口部152を塞ぐ溶融玉が、錐体ノズル150の外部に飛ばされる。
【0057】
(3)なお、集光レンズ123の代わりに、集光レンズ123よりも焦点距離が長い集光レンズを使用するとしてもよい。この場合においては、糸半田111の下方先端部分が、錐体ノズル150の内部で溶融される代わりに、図6に示すように、錐体ノズル150の尖端で溶融される。これによって、錐体ノズル150の尖端に溶融玉112が形成される。
【0058】
(4)なお、錐体ノズル150の内側部分が、白色セラミック、DLC(diamond-like carbon)皮膜されたアルミや銅などのように、レーザ反射性が良好であって半田フィレットが形成され難い材料で構成されているとしてもよい。
【0059】
(5)なお、糸半田111の代わりに、クリーム半田が使用されるとしてもよい。このとき、クリーム半田を連続供給することで、糸状にして落下して鉛筆芯状に固化したものが溶融される。
【0060】
(6)なお、糸半田111の代わりに、例えば、プラスチックスなどのように、他の溶ける材料が使用されるとしてもよい。
(7)なお、バイパスパイプ131の代わりに、糸半田供給装置160から、ガス116が、パイプ130を介して、錐体ノズル150の内部に供給されるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、レーザ光を使用して溶融させた半田を半田付け対象部分に塗布する半田付け装置などとして利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 半田付け装置
11 糸半田
12 溶融中の半田
13 レーザ光
15 収束光
16 反射光
20 鏡筒
21 光ファイバ
22 コリメータレンズ
23 集光レンズ
30 パイプ
51 プリント基板
53 電子部品
55 半田付け対象部分
110 半田付け装置
111 糸半田
112 溶融玉
113 レーザ光
114 平行光
115 収束光
116 ガス
117 赤外線
118 ビームウエスト
120 筐体
121 コリメータレンズ
122 ミラー
123 集光レンズ
124 光ファイバ
125 Oリング
126 赤外線センサー
130 パイプ
131 バイパスパイプ
140 錐体フード
141 ネジ
150 錐体ノズル
151 ネジ
152 開口部
155 ガス供給口
160 糸半田供給装置
171 プリント基板
172 ランド
173 電子部品
174 リード
175 半田付け対象部分
176 半田フィレット
181 プリント基板
182 ランド
184 リード
185 半田付け対象部分
186 半田フィレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光で半田を溶融させて半田付け対象部分を半田付けする半田付け装置であって、
開口部が先端に形成されており、前記開口部に向かって窄む錐状空間が内部に形成されたノズルと、
前記錐状空間に前記レーザ光を集光させる光学システムと、
前記錐状空間に前記半田を供給する半田供給手段とを備え、
前記レーザ光を集光させて得られた収束光で前記錘状空間に供給された前記半田の一部を溶融させて得られた溶融部分が、前記開口部から供給される
ことを特徴とする半田付け装置。
【請求項2】
前記錐状空間にガスを供給するガス供給手段とを備え、
前記溶融部分が、前記開口部から噴き出される前記ガスで前記開口部から前記ノズルの外部に押し出されたものである
ことを特徴とする請求項1に記載の半田付け装置。
【請求項3】
前記溶融部分から放射される赤外線を測定する赤外線センサーと、
前記ノズルの先端から前記溶融部分が無くなったことが前記赤外線センサーで検出されると、前記レーザ光の供給を停止するレーザ光供給手段とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の半田付け装置。
【請求項4】
前記錐状空間に面する前記ノズルの内面が光を反射するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の半田付け装置。
【請求項5】
レーザ光で半田を溶融させて半田付け対象部分を半田付けする半田付け方法であって、
ノズルの先端に形成された開口部に向かって窄むように前記ノズルの内部に形成された錘状空間に前記レーザ光を供給して、前記錘状空間に前記レーザ光を集光させる第1の工程と、
前記錘状空間に前記半田を供給して、前記レーザ光を前記錘状空間に集光させて得られた収束光で前記錘状空間に供給された前記半田の一部を溶融させる第2の工程と、
前記半田の一部を溶融させて得られた溶融部分を前記半田付け対象部分に塗布して、前記半田付け対象部分を半田付けする第3の工程とを含む
ことを特徴とする半田付け方法。
【請求項6】
前記溶融部分から放射される赤外線を赤外線センサーで測定して、前記赤外線センサーで測定した結果に基づいて、前記ノズルの先端から前記溶融部分が無くなったと判断したときは、前記レーザ光の供給を停止する第4の工程を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の半田付け方法。
【請求項7】
前記第3の工程において、前記錘状空間にガスを供給して、前記開口部から噴き出される前記ガスで前記開口部から前記ノズルの外部に前記溶融部分を押し出す
ことを特徴とする請求項5に記載の半田付け方法。
【請求項8】
前記半田がヤニ入り半田であって、
前記第2の工程において、前記収束光で、前記ヤニ入り半田に含まれるフラックスが加熱されて揮発して、
前記第3の工程において、前記開口部から噴き出される前記ガスに混じって、揮発したフラックスが前記半田付け対象部分に吹き付けられる
ことを特徴とする請求項7に記載の半田付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−253496(P2010−253496A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104585(P2009−104585)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】