説明

単回使用コンポーネントを含む製造システムへのRFIDセンサの組み込み

製造システムの物理的、化学的、および生物学的特性を測定するためのシステムおよび方法を提供する。方法は、複数のRFIDセンサを複数の対応する単回使用コンポーネント内に埋め込む。複数のRFIDセンサの各々は、複数の単回使用コンポーネントのうちの少なくとも1つのコンポーネントの多重パラメータ測定値を出力し、単回使用コンポーネントおよびその個々のRFIDセンサの同時点デジタル識別情報を出力する。本方法は、少なくとも1つのRFIDライタ/リーダを使用して、複数の単回使用コンポーネントの多重パラメータ測定値およびデジタル識別情報を読み取り、プロセッサを使用して、測定値を処理し、少なくとも1つのパラメータの測定値を所定の値と比較することによって、後続プロセス工程を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この特許出願は米国特許出願12/028380号の優先権に基づいて2008年2月8日に出願された。その内容は本出願に参照して組み込まれるべきものである。
【0002】
本発明は、一般に、単回使用コンポーネント(single use component)で構成された製造システムに関し、より詳細には、無線周波数識別(RFID:radio frequency identification)センサを製造システムに組み込むためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
単回使用使い捨て可能用品は、製造業界、特にバイオ医薬品産業から大きな関心を集めている。単回使用コンポーネントは、柔軟性、移動性、プロセス全体の効率性ばかりでなく、洗浄および滅菌手順の簡素化、相互汚染のリスクの低減、ならびに製造資本費用の削減をももたらす。
【0004】
バイオ医薬生産のための、あらゆる種類の単回使用使い捨て可能技術が、緩衝液保存および混合などの単純な操作用に市販されており、発酵などの複雑な用途にも急速に広がりつつある。しかし、使い捨て可能技術の受け入れは、効果的な単回使用非侵襲監視技術(single use,non−invasive monitoring technology)が存在しないことで妨げられている。主要プロセスパラメータの監視は、安全性、プロセスの文書化、および生産された化合物の効能を保証するばかりでなく、プロセスを制御された状態に保つためにも欠かすことができない。加えて、生物学的化合物はわずかな環境変化にも非常に敏感であるので、製造プロセスの特定ロケーションにおけるパラメータの監視は、発酵および活性な生物学的製剤の保存においてきわめて重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0012577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、単回使用コンポーネントを有する製造システムに適合する非侵襲監視技術を提供できる技術解決策が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、本発明は、対応する複数の単回使用コンポーネント内に埋め込まれた複数の無線周波数識別(RFID)センサを含む製造システムを提供し、複数のRFIDセンサの各々は、少なくとも1つの単回使用コンポーネントの多重パラメータ測定値を提供するように構成され、単回使用コンポーネントおよびその個々のRFIDセンサの同時点デジタル識別情報を提供するようにさらに構成される。システムは、RFIDライタ/リーダと、ライタ/リーダと通信を行うプロセッサとをさらに含み、プロセッサは、後続の製造プロセス工程を制御するように構成される。
【0008】
第2の態様では、本発明は、個々のコンポーネントの、および全体として製造システムの物理的、化学的、および生物学的特性を測定するための方法を提供し、方法は、複数のRFIDセンサを複数の対応する単回使用コンポーネント内に埋め込むステップを含み、複数のRFIDセンサの各々は、複数の単回使用コンポーネントのうちの少なくとも1つの単回使用コンポーネントの多重パラメータ測定値を提供するように構成され、複数のRFIDセンサの各々は、単回使用コンポーネントおよびその個々のRFIDセンサの同時点デジタル識別情報を提供するようにさらに構成される。方法は、デジタルデータを書き込むステップと、少なくとも1つのRFIDライタ/リーダを使用して、複数の単回使用コンポーネントの多重パラメータ測定値およびデジタル識別情報を読み取るステップと、プロセッサを使用して、測定値を処理するステップと、少なくとも1つのパラメータの測定値を所定の値と比較することによって、後続プロセス工程を制御するステップとをさらに含む。
【0009】
第3の態様では、本発明は、バイオプロセス製造システムのために複数の単回使用コンポーネントを組み立てるための方法を提供し、単回使用コンポーネントには、物理的、化学的、および生物学的特性を測定するために使用される、対応する複数の内蔵RFIDセンサが埋め込まれ、方法は、少なくとも1つのRFIDライタ/リーダを使用して、複数の単回使用コンポーネントのRFIDセンサのデジタル識別情報を読み取るステップと、プロセッサを使用して、読み取り値を処理するステップと、RFIDセンサがネットワークに正しく組み立てられたこと、また個々の単回使用コンポーネントがコンポーネントの所定の系列に正しく組み立てられたことを確認するステップとを含む。
【0010】
本発明の上記および他の特徴、態様、および利点は、図面の全体にわたって同じ文字が同じ構成要素を表す添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読めば、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】バイオプロセッシングコンポーネントに埋め込まれた使い捨て可能センサを有する、迅速に組み立てられる使い捨て可能バイオプロセッシングプラントの図である。
【図2】RFIDセンサからの信号がライタ/リーダシステムに獲得される信号獲得の図である。
【図3】例示的なRFIDセンサの図である。
【図4】製造システムを監視する方法のフローチャートである。
【図5】多変量統計的プロセス制御のためのRFIDセンサネットワークの図である。
【図6】多変量統計的プロセス制御のためのRFIDセンサネットワークの応用を示すフローチャートである。
【図7】一度に多数のRFIDセンサを用いる測定のためにネットワークアナライザとともに動作するマルチチャネル電子信号マルチプレクサを有する、設計および作成されたシステムを用いて測定された、4つのRFID温度センサの応答を示す図である。A〜Dにおける数字は摂氏の温度である。
【図8】RFID読み取りのコンピュータスクリーンショットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で開示される実施形態は、新規な非侵襲RFID監視技法を単回使用コンポーネントに組み込むことによって、単回使用コンポーネントを含む製造システムのプロセスの監視および制御を容易にする。
【0013】
本明細書で使用される「RFIDタグ」は、データを保存するために電子タグを使用し、少なくとも2つの構成要素を含む、データ収集技法のことを指す。第1の構成要素は、情報を保存および処理し、無線周波信号を変調および復調するための集積回路(メモリチップ)である。このメモリチップは、他の専用機能のために使用することもでき、例えば、このメモリチップは、コンデンサを含むことができる。このメモリチップは、アナログ信号の入力を含むこともできる。第2の構成要素は、無線周波信号を受信および送信するためのアンテナである。アンテナは、そのインピーダンスパラメータを環境変化に応じて変化させることによって、感知機能も実行する。
【0014】
本明細書で使用される「感知材料および感知膜」は、RFIDセンサ上に被着され、環境との相互作用によって複素インピーダンスセンサ応答に予測可能かつ再現可能な影響を及ぼす機能を実行する、材料のことを指す。例えば、ポリアニリンなど導電性ポリマーは、pHが異なる溶液にさらされると、その伝導率を変化させる。そのようなポリアニリン膜がRFIDセンサ上に被着された場合、複素インピーダンスセンサ応答は、pHの関数として変化する。したがって、そのようなRFIDセンサは、pHセンサとして機能する。一般に、典型的なセンサ膜は、それが置かれた環境に基づいて、その電気的特性および/または誘電性を変化させる、ポリマー膜、有機膜、無機膜、生物膜、コンポジット膜、またはナノコンポジット膜である。センサ膜の非限定的なさらなる例は、(ポリ−(2−ヒドロキシエチル))メタクリレートなどのヒドロゲル、ナフィオンなどのスルホン化ポリマー、シリコーン接着剤などの接着性ポリマー、ゾル−ゲル膜などの無機膜、カーボンブラック−ポリイソブチレン膜などのコンポジット膜、カーボンナノチューブ−ナフィオン膜、金ナノ粒子−ヒドロゲル膜、金属ナノ粒子−ヒドロゲル膜、エレクトロスピニング法によるポリマーナノファイバ、エレクトロスピニング法による無機ナノファイバ、エレクトロスピニング法によるコンポジットナノファイバなどのナノコンポジット膜、および他の任意のセンサ材料とすることができる。センサ膜内の材料が液体環境に漏れ出さないようにするため、センサ材料は、共有結合、静電結合、および当業者に知られた他の標準的な技法などの標準的な技法を使用して、センサ面に結合される。
【0015】
「保護材料」という用語は、期待する測定の実行を依然として可能にしたまま、意図せぬ機械的、物理的、または化学的影響からセンサを保護する、RFIDセンサ上の材料のことを指すために使用される。例えば、期待する測定は、溶液伝導率測定を含むことができ、保護膜は、センサを液体溶液から隔離しながらも、電磁界が溶液中に浸透することを可能にする。保護材料の一例は、機械的損傷および磨耗からセンサを保護するためにセンサの上に貼り付けられる、紙膜である。保護材料の別の例は、測定のために液体内に置かれた場合に腐食からセンサを保護するためにセンサの上に貼り付けられる、ポリマー膜である。保護材料は、測定のために導電性液体内に置かれた場合にセンサのアンテナ回路を短絡から保護するためにセンサの上に貼り付けられる、ポリマー膜とすることもできる。保護膜の非限定的な例は、紙膜と、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、およびポリエチレンテレフタレートなどのポリマー膜である。
【0016】
本明細書では、「ライタ/リーダ」という用語は、デジタル識別情報データの書き込みおよび読み取りを行うデバイスと、アンテナのインピーダンスの読み取りを行うデバイスの組み合わせを指すために使用される。
【0017】
「単回使用コンポーネント」という用語は、使用後に廃棄できる、または再利用するために再調整できる、製造用品のことを指す。単回使用コンポーネントは、限定することなく、単回使用の容器、バッグ、チャンバ、チューブ、コネクタ、およびカラムを含む。
【0018】
図1は、バイオプロセッシング用の本発明の態様を含む、製造システム100の一実施形態を示している。システムは、バッチランとバッチランの間に洗浄、滅菌、およびバリデーションを必要とする従来のプラントと比較して魅力的な代替を、バイオ医薬品製造業者に提供する。この使い捨て可能製造プロセスは、バイオリアクタの上流および下流にコンポーネントを有する。製造システムは、使い捨て可能製造システム100を形成する、多数の単回使用コンポーネントと、いくつかの例示的な実施形態では、多回使用コンポーネントとを含むことができる。示された図面では、バイオリアクタ102の上流のコンポーネントの例は、調合液バッグ103と、緩衝液/培養液バッグ104と、フィルタ105と、移送ライン106とを含むことができる。バイオリアクタ102の下流のコンポーネントは、ホローファイバフィルタ107と、中間保存コンテナ108と、緩衝液コンテナ109と、全量濾過フィルタ110と、クロマトグラフカラム111と、フィルタ112と、最終製品コンテナ113とを含むことができる。コンポーネント102から113が、単回使用および多回使用コンポーネントの非限定的な例であることに留意されたい。
【0019】
図1に示される使い捨て可能コンポーネントは、移送ライン106とコネクタ114を介して接続される。図1では、コネクタ114は、最初の使い捨て可能コンポーネントにのみ示されているが、製造プロセス全体の他のコンポーネントにおいても利用することができる。システムのワークフローに沿った原位置(in−situ)測定が望ましい場合には、図1の使い捨て可能コンポーネントは、内蔵使い捨て可能RFIDセンサ115を有する。ライタ/リーダ116は、これらのセンサに応答を促す。
【0020】
この様子が、使い捨て可能コンポーネント内に埋め込まれたRFIDセンサからの信号獲得の図解を示す、図2に詳細に示されている。使い捨て可能コンポーネント内のRFIDセンサは、無線を介してピックアップアンテナと一体化される。ピックアップアンテナは、直接的にまたはケーブルを介して、ライタ/リーダシステムに接続される。
【0021】
これらの埋め込み使い捨て可能RFIDセンサは、物理的、化学的、および生物学的パラメータの測定に同一のセンサプラットフォームを提供する。言い換えれば、多重パラメータ測定は、単回使用コンポーネントの物理的、化学的、および生物学的パラメータを表す。図1をさらに参照すると、RFIDセンサ115は、バイオ医薬品製造中に、主要パラメータの正確で信頼性のある原位置インライン近接読み取りを実現する。RFIDセンサ115の各々は、単回使用コンポーネントの同時点デジタル識別情報(例えば、その正しい組み立ておよび使用、生産日付および有効期限など)と、個々のRFIDセンサの同時点デジタル識別情報(例えば、その較正、補正係数など)を提供するようにさらに構成される。RFIDセンサデータは、ライタ/リーダ116から受信器またはワークステーションプロセッサ117に送信され、データは、そこから、プラントオペレータによってアクセスすることができ、またはさらに処理することができる。インライン分析のための本明細書で説明される実施形態は、図1に示されるバイオプロセッシングシステムにおける劇的に効率を増した発酵制御に大きく貢献する。他の単回使用コンポーネントの主要な働きは、混合、製品移送、接続、切断、濾過、クロマトグラフィ、蒸留、遠心分離、保存、および充填を含む。これらの多様なニーズのために、本明細書で説明される使い捨て可能RFIDセンサは、多重パラメータのインライン監視および制御を可能にする。RFIDセンサによって測定される環境パラメータのいくつかの非限定的な例は、溶液伝導率、pH、温度、圧力、流量、溶解ガス、代謝産物(グルコース、乳酸など)濃度、細胞生存率、および汚染レベルを含む。いくつかの実施形態では、RFIDセンサが耐ガンマ線性を有することが有益なこともある。ガンマ線は、コンポーネントのガンマ線滅菌のために使用されることがある。
【0022】
本明細書で説明される実施形態を使用する物理的、化学的、および生理的データの継続的測定は、栄養素の指定された供給戦略を容易にし、高い確率で細胞生産性を向上させるより堅牢なプロセスパフォーマンスをもたらす。対照的に、インライン測定のために現在広く使用されているセンサは、侵襲的であり、滅菌バリアを破壊する。発酵槽に関するいくつかのより手の込んだ測定(アミン類、グルコース含量)は、現在オフラインで実行され、プロセスの効率を低下させ、滅菌性を脆弱にし、製造ポータビィティを制限する。本明細書で説明されるセンサ実施形態の使い捨て可能性は、損なわれることのない滅菌バリアを提供し、魅力的に洗浄および再利用を排除する。
【0023】
さらに、本明細書で説明されるRFIDセンサは、単回使用ネットワークの誤った組み立てを防止することができる。従来のステンレス鋼システムでは、オス/メス接続の使用が、システム内の1つのポイントから別のポイントへの配管の誤った相互接続を防止する。単回使用環境では、バイオリアクタをホローファイバフィルタに接続するなど、2つ以上のコンポーネントを溶接するために、サーモプラスチックチューブが非常に頻繁に使用される。そのため、オペレータが、誤った接続および組み立てを行い得る可能性が少なくない。例えば、実際には望ましいフィルタがホローファイバである場合に、培養液フィルタがバイオリアクタに接続されることがあり得る。RFIDネットワークを用いて、エンドユーザは、コンポーネント組み立ての正しい順序をあらかじめ指定しておくことができる。組み立ての最中、オペレータは、バイオリアクタなどの主要なコンポーネントをスキャンすることができ、ライタ/リーダは、プロセスチェーンに次に追加されるコンポーネントを指示または確認するように構成することができる。
【0024】
図3に、例示的なRFIDセンサ30が、より詳細に示されている。本明細書で説明されるRFIDセンサは、RFIDコンポーネントまたはRFIDタグ34と、適切な化学的または生物学的認識のために生成されたセンサ被覆を含む感知用または保護膜36と、任意選択的に、腐食および/またはバイオプロセッシング液によるRFID電子コンポーネントの電気的短絡を回避するための保護層とを含む。RFID上に生成されるセンサ材料の被着は、アレイイング(arraying)、インクジェット印刷、スクリーン印刷、蒸着、吹付け、ドローコーティング、または他の識別される実証済の被着方法を使用して実行することができる。例示的なRFIDセンサが、参照により本明細書に組み込まれる、「Chemical and biological sensors,systems and methods based on radio frequency identification」と題する米国特許出願第11/259710号、および「Chemical and biological sensors,systems and methods based on radio frequency identification」と題する米国特許出願第11/259711号において説明されている。センサ30は、RFIDライタ/リーダの一部としてのインピーダンスアナライザ39をさらに含むことができる。データライン38は、RFIDタグ34、感知および保護層36と、RFIDライタ/リーダを伴うインピーダンスアナライザ39の間に転送されるデータが存在することを示す。例えば、RFIDタグ34、感知および保護膜36からのデータは、特定の使い捨て可能コンポーネントについて検出されたインピーダンスおよび検出されたID(識別情報)を含むことができる。同様に、インピーダンスアナライザおよびRFIDライタ/リーダ39からのデータは、エネルギー成分およびクロック値を含むことができる。最後に、ブロック33は、先に説明されたような検出されたパラメータおよびセンサIDを含む、RFIDセンサの出力を表す。
【0025】
本発明の別の実施形態は、図4のフローチャート44に示されるような、製造システムを監視する方法である。方法は、デジタル情報をRFIDセンサのメモリチップに書き込むためのステップ45と、製造システム内の事前に定められたロケーションにRFIDセンサを配置するためのステップ46とを含む。方法は、複数のRFIDセンサを介した、製造システムの単回使用コンポーネントに関する多重パラメータのインライン読み取りのためのステップ48をさらに含む。方法は、多重パラメータを監視し、監視データに基づいて何らかの是正措置を決定するためのステップ40をさらに含むことができる。本明細書で説明される多重パラメータは、単回使用コンポーネントの物理的、化学的、および生物学的パラメータを含む。方法は、単回使用コンポーネントおよび個々のRFIDセンサのデジタル識別情報を読み取るためのステップ42をさらに含む。デジタル識別情報は、単回使用コンポーネントの組み立ておよび使用、生産および期限切れに関する情報と、個々のセンサの較正、および補正係数に関する情報を含む。
【0026】
本発明の一実施形態では、製造システムの運用前に、最初に、センサおよび単回使用コンポーネントの生産履歴に関するデジタル情報が、各RFIDセンサのメモリチップ内に書き込まれる。データは、限定することなく、生産日付、ロット識別情報、被曝したガンマ線照射線量、およびセンサの較正パラメータを含む。第2に、製造システムの運用前に、組み立て中に必要とされる隣接する単回使用コンポーネントの識別子を含むデジタル情報が、各RFIDセンサのメモリチップ内に書き込まれる。この情報は、システムの正しい組み立てを確認するために、組み立てプロセス中に読み取られる。第3に、製造システムの運用前に、センサの較正パラメータに対応するデジタル情報が、各RFIDセンサのメモリチップから読み取られる。較正パラメータは、チップのメモリ内に直接保存される。他の実施形態は、付加的な工程を有することができ、製造システムの運用中に、センサおよび関連する単回使用コンポーネントの異常、ならびに文書化を必要とする他のプロセス状態に関するデジタル情報が、各RFIDセンサのメモリチップ内に書き込まれる。
【0027】
一般に、流量、圧力、濃度、および温度などのプロセス変量は、統計的プロセス制御(SPC:statistical process control)戦略によって支配される。SPC統計的方法は、シューハート(Shewhart)チャート、累積和チャート、および指数加重移動平均チャートなどの一変量管理を使用して、一度に単一のプロセス変量に焦点を合わせる。これらのチャートは、単一のプロセスのパフォーマンスを経時的に監視して、プロセスが一貫して製造製品の仕様の範囲内で動作していることを検証するために使用される。これは、限定することなく、開始、終了、または動作パラメータの変更などの、製造プロセス内の後続工程の自動または手動制御を可能にする。しかし、プロセス挙動に影響を与える監視されるプロセス変量の数が増加すると、一変量SPC分析方法は、多数のプロセス変量の間の相互作用を明らかにするのに不適当になることがある。加えて、一変量技法の適用は、誤解を招く情報がプロセスオペレータに提示されるという結果を生むことがあり、不必要または間違った制御行動をもたらすことがある。
【0028】
魅力的な代替手法は、従来の一変量ツールを使用したのでは利用可能でない測定データからより適切な情報を抽出するために、多変量方法を利用することである。したがって、本発明の別の実施形態は、多変量統計的プロセス制御のためのセンサネットワークを使用する。これが図5に示されており、プロセスに沿った多数のロケーションからの動的データの獲得のために、複数のセンサ(1,2,3...i,j,k)が、単回使用コンポーネント(1c,2c...Nc)内に配置されている。信号アナライザは、制御システムへのデータの転送を可能にする。
【0029】
相関のある多数のプロセス測定によって特徴付けられる工業プロセスデータへの多変量統計的方法の適用は、プロセスケモメトリクスの分野であり、製造システムのエンジニアリングプロセス制御を提供する。方法が図6に示されており、センサデータの継続的収集(61)を含み、センサデータは、処理され(62)、事前にメモリチップ64、65に書き込まれた、測定され保存された値と比較される(63)。保存されたデータは、継続的なセンサデータと比較され、測定値の定量化(66)を提供する。プロセス変量間の相関分析(67)が、個々の変量の誤り検出(68)を提供する。
【0030】
多変量管理図および多変量寄与プロットなどのいくつかの統計的ツールが、プロセス変量間の相関分析(67)において使用される。多変量管理図は、Q値およびT2値など、主成分分析(PCA:principal components analysis)モデルの2つの統計指標を使用する。PCAモデルの重要な主成分は、T2チャートを作成するために使用され、残りの主成分(PC)は、Qチャートに寄与する。Q残差は、2乗予測誤差であり、PCAモデルが各サンプルとどれだけ良く合致するかを表す。Q残差は、モデル内に保持されるK個の主成分によって獲得されない各サンプルの変動の尺度である。
【0031】
=e=x(I−P)x
ここで、eは、Eの第i行であり、xは、X内の第iサンプルであり、Pは、PCAモデル内に保持されるk個の負荷ベクトルからなる行列であり(各ベクトルがPの列)、Iは、適切なサイズ(n×n)の単位行列である。Q残差チャートは、PCAモデルからの各サンプルの偏差を監視する。
【0032】
ホテリング(Hotelling)のT2統計量として知られる正規化2乗スコアの和は、PCAモデル内での変動の尺度を与え、統計的に異常なサンプルを決定する。T2は、以下のように定義される。
【0033】
=tλ−1=xPλ−1
ここで、tは、PCAモデルからのk個のスコアベクトルからなる行列Tの第i行であり、λ−1は、モデル内に保持されるk個の固有ベクトル(主成分)に関連する固有値の逆数を含む対角行列である。T2チャートは、縮小PCA空間において目標値からの新しいサンプルの多変量距離を監視する。プロセス時間の関数としてプロットされた多変量QおよびT2管理図は、バイオ製造の多変量統計的プロセス制御における統計指標である。
【0034】
ある実施形態では、RFIDネットワークおよび一変量または多変量SPCは、使い捨て可能ネットワーク内の様々なポイントにおいてパラメータを調整するための方法を提供する。例えば、大腸菌発酵などの現在のバイオプロセスでは、細胞は、後で精製されるタンパク質を産生する。いくつかの製造条件の下では、タンパク質は、生化学的機能形態を発現しない。バイオリアクタ内の細胞製造工程のあるステージにおける高濃度の溶質、極端なpHまたは温度は、タンパク質が展開または変性する原因となり得る。これらの変性タンパク質は、下流の精製をより困難にし、収率が低下する。典型的な発酵および精製は、バッチプロセスであり、したがって、後の精製プロセスまで低収率が発見されない。内蔵RFIDネットワークを用いた場合、センサは、温度、pH、および他の主要パラメータのずれを検出することができ、プロセス制御を用いて、バイオリアクタの動作条件をリアルタイムに変更することができる。また別の実施形態では、バッチプロセスの代わりに連続的プロセスが使用でき、RFIDセンサは、下流で主要パラメータを検出すると、所望のタンパク質の収率を高めるために、上流でリアクタの条件を調節する。
実施例1
単一のデータ収集デバイスを用いて多数のRFIDセンサから情報を収集するために、RFIDセンサネットワークが開発された。1つの実施例では、4つのRFID温度センサを用いて、温度感知が実行された。センサおよび関連するピックアップアンテナは、温度を0℃から120℃まで20℃の増分で制御しながら変化させた環境チェンバ内に位置付けられた。
【0035】
RFIDセンサの複素インピーダンスの測定は、LabVIEWを使用するコンピュータ制御の下で、ネットワークアナライザ(Model E5062A、Agilent Technologies,Inc.、カリフォルニア州サンタクララ)を用いて実行された。ネットワークアナライザは、周波数を対象範囲にわたってスキャンし、RFIDセンサから複素インピーダンス応答を収集するために使用された。マルチチャネル電子信号マルチプレクサが、多数のRFIDセンサを用いる同時測定のためにネットワークアナライザとともに動作するように作成された。
【0036】
図7は、一度に多数のRFIDセンサを用いる測定のためにネットワークアナライザとともに動作するマルチチャネル電子信号マルチプレクサを有する、設計および作成されたシステムを用いて測定された、4つのRFID温度センサの応答を示している。
実施例2
(1)RFIDセンサの共振アンテナ回路から複素インピーダンス信号を、(2)RFIDセンサのメモリチップからデジタル情報を収集するために、RFIDセンサシステムが開発された。RFIDセンサの複素インピーダンスの測定は、LabVIEWを使用するコンピュータ制御の下で、ネットワークアナライザ(Model E5062A、Agilent Technologies,Inc.、カリフォルニア州サンタクララ)を用いて実行された。ネットワークアナライザは、周波数を対象範囲にわたってスキャンし、RFIDセンサから複素インピーダンス応答を収集するために使用された。マルチチャネル電子信号マルチプレクサが、一度に多数のRFIDセンサを用いる測定のためにネットワークアナライザとともに動作するように作成された。RFIDセンサのメモリチップからのデジタルID読み取りは、SkyeTekのコンピュータ制御(LabVIEWを使用)ライタ/リーダ(Model M−1、SkyeTek、コロラド州ウェストミンスター)をそれぞれ使用して実行された。SkyeTekのハンドヘルドライタ/リーダおよびコンピュータ制御マルチスタンダードRFIDライタ/リーダ評価モジュール(Model TRF7960 Evaluation Module、Texas Instruments)など、他のRFIDライタ/リーダも利用可能である。
【0037】
手法の確認のため、Texas InstrumentsのRFIDタグが使用された。pHセンサを作成するため、タグはポリアニリン感知膜で被覆された。E007 000 02BE 960Cであると上で定義されたタグのデジタルIDが、ライタ/リーダを用いて読み取られた。その後、追加のデジタルデータをメモリチップに書き込むために、ライタ/リーダが使用された。1つの実施例では、書き込まれるデータは、GE GRC RFID Sensor #323であり、別の実施例では、書き込まれるデータは、A0=0.256;A1=33.89;A2=0.00421;A3=0.0115であった。図8に示されるように、センサからのデジタル部分およびアナログ部分(複素インピーダンス)を読み取るために、ライタ/リーダが読み取りモードでさらに使用された。他のRFIDタグおよびライタ/リーダを利用することもできた。
【0038】
本明細書で説明された方法およびシステムは、医薬品製造に限定されず、ユースポイント汚染検出、および一意識別タグと組み合わせた輸送時の製品保存コンテナの監視などに重点を置く他の製造分野に容易に拡張できることに留意されたい。製造システムは、商業製品を生産するために使用されるシステムを含むが、より小規模な開発プロセスおよび研究室規模のプロセスも含むことができる。加えて、使い捨て可能製造のための本明細書で説明された使い捨て可能RFIDセンサの他の応用を、包装食品内での病原性および他の種の検出、環境水および工業用水の自己報告サンプル収集器のため、また使い捨て可能センサに対する満たされていない強い必要性が存在する他の要求がきびしい軍事および民間用途のために、さらに利用することができる。
【0039】
本明細書では、本発明のある特徴のみが示され、説明されたが、当業者には、多くの修正および変更が思い浮かぶであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の主旨の範囲内に含まれるそのようなすべての修正および変更を包含することが意図されていることを理解されたい。
【符号の説明】
【0040】
100 使い捨て可能製造システム
102 バイオリアクタ
103 調合液バッグ
104 緩衝液/培養液バッグ
105 フィルタ
106 移送ライン
107 ホローファイバフィルタ
108 中間保存コンテナ
109 緩衝液コンテナ
110 全量濾過フィルタ
111 クロマトグラフカラム
112 フィルタ
113 最終製品コンテナ
114 コネクタ
115 内蔵使い捨て可能RFIDセンサ
116 ライタ/リーダ
117 受信器またはワークステーションプロセッサ
30 センサ
33 検出パラメータおよびセンサID
34 RFIDタグ
36 感知用または保護膜
38 データライン
39 インピーダンスアナライザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単回使用コンポーネントの夫々の内部に埋め込まれた複数の無線周波数識別(RFID)センサであって、この複数のRFIDセンサの各々が、前記複数の単回使用コンポーネントのうちの少なくとも1つの単回使用コンポーネントの多重パラメータ測定値を出力し、さらに、前記単回使用コンポーネントおよびその個々のRFIDセンサについての同時点デジタル識別情報を出力するように構成されたところの、複数のRFIDセンサと、
少なくとも1つのRFIDセンサを読み取るように構成された少なくとも1つのRFIDライタ/リーダと、
前記少なくとも1つのRFIDライタ/リーダと通信を行うプロセッサであって、前記RFIDライタ/リーダが読み取った少なくとも1つのパラメータ測定値データをこのRFIDライタ/リーダから受け取り、受け取った少なくとも1つのパラメータ測定値データを所定の値と比較し、後続の製造プロセス工程を制御するように構成されたプロセッサと
を含む製造システム。
【請求項2】
前記RFIDセンサが、RFIDメモリチップとアンテナとで構成され、感知用または保護材料で被覆されることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記多重パラメータ測定値が、前記単回使用コンポーネントの物理的、化学的、および生物学的パラメータを表し、前記同時点デジタル識別情報が、前記単回使用コンポーネントの部品識別、組み立て、使用、補正係数、較正、生産履歴、貯蔵寿命、および有効期限に関する情報のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記複数のRFIDセンサが、統計的プロセス制御のためのセンサネットワークを形成することを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記統計的プロセス制御が、一変量統計的プロセス制御または多変量統計的プロセス制御を含むことを特徴とする請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記統計的プロセス制御が、1つまたは複数の後続プロセス工程を決定するために使用されることを特徴とする請求項4記載のシステム。
【請求項7】
前記後続プロセス工程が、開始、終了、または動作パラメータの変更を含むことを特徴とする請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記後続プロセス工程が、自動化される、またはオペレータによって実行されることを特徴とする請求項7記載のシステム。
【請求項9】
エンジニアリングプロセス制御のためのセンサネットワークをさらに含むことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記エンジニアリングプロセス制御が、処理パラメータを決定するためのシステムのモデリングおよび制御理論の使用を含むことを特徴とする請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記製造システムが、生物学的であることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項12】
バイオバーデン管理環境または滅菌環境で使用するために機能的に適合されることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項13】
製造システムの物理的、化学的、または生物学的特性を測定するための方法において、
複数の無線周波数識別(RFID)センサを複数の単回使用コンポーネントの夫々の内部に埋め込むステップであって、この埋め込みにより、前記複数のRFIDセンサの各々が、前記複数の単回使用コンポーネントのうちの少なくとも1つの単回使用コンポーネントの多重パラメータ測定値を出力し、前記単回使用コンポーネントおよびその個々のRFIDセンサの同時点デジタル識別情報を出力する、埋め込みステップと、
少なくとも1つのRFIDライタ/リーダを使用して、前記複数の単回使用コンポーネントの前記多重パラメータ測定値および前記デジタル識別情報を読み取るステップと、
プロセッサを使用して、前記測定値を処理するステップと、
少なくとも1つのパラメータの前記測定値を所定の値と比較することによって、後続プロセス工程を制御するステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記RFIDセンサが、RFIDタグと、アンテナとで構成され、感知用または保護材料で被覆されることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記多重パラメータ測定値が、前記単回使用コンポーネントの物理的、化学的、または生物学的パラメータを表し、前記同時点デジタル識別情報が、前記単回使用コンポーネントの部品識別、組み立て、使用、補正係数、較正、生産履歴、貯蔵寿命、および有効期限に関する情報のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記複数のRFIDセンサが、統計的プロセス制御のためのセンサネットワークを形成することを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記統計的プロセス制御が、一変量統計的プロセス制御または多変量統計的プロセス制御を含むことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記統計的プロセス制御が、1つまたは複数の後続プロセス工程を決定するために使用されることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記後続プロセス工程が、開始、終了、または動作パラメータの変更を含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項20】
前記後続プロセス工程が、自動化される、またはオペレータによって実行されることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
エンジニアリングプロセス制御のためのセンサネットワークをさらに含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項22】
前記エンジニアリングプロセス制御が、処理パラメータを決定するためのシステムのモデリングおよび制御理論の使用を含むことを特徴とする請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記製造システムが、生物学的であることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項24】
前記システムが、バイオバーデン管理環境または滅菌環境で使用するために機能的に適合されることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項25】
バイオプロセス製造システムのために複数の単回使用コンポーネントを組み立てるための方法において、単回使用コンポーネントには、バイオプロセス製造システムの物理的、化学的、または生物学的特性を測定するRFIDセンサが組み込まれ、
複数のRFIDセンサを対応する複数の単回使用コンポーネント内に埋め込むステップであって、前記複数のRFIDセンサの各々が、前記複数の単回使用コンポーネントのうちの少なくとも1つの単回使用コンポーネントの多重パラメータ測定値を提供するように構成され、前記複数のRFIDセンサの各々が、前記単回使用コンポーネントおよびその個々のRFIDセンサの同時点デジタル識別情報を提供するようにさらに構成される、ステップと、
少なくとも1つのRFIDライタ/リーダを使用して、前記複数の単回使用コンポーネントの少なくとも1つのRFIDセンサの前記デジタル識別情報を読み取るステップと、
プロセッサを使用して、前記読み取りを処理するステップと、
RFIDセンサネットワークの正しい組み立てを確認するステップと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−511302(P2011−511302A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545983(P2010−545983)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/033176
【国際公開番号】WO2009/100192
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】