説明

反射防止膜用重合体、これを含む反射防止膜組成物及びこれを利用したパターン形成方法

【課題】液浸リソグラフィ工程およびダマシン工程への適用できる反射防止膜用架橋重合体、これを含む反射防止膜用組成物、及びこれを利用したフォトレジストパターンの形成方法を提供する。
【解決手段】アクリレート及びアクロレインの共重合体をエタンチオールで変性して得られた(アクリレート/3,3ージチオエチルプロペン)高分子がイオウ元素を含む屈折率の高い反射防止膜用架橋剤重合体として優れていることを見いだした。さらに、反射防止膜用組成物に関するものであり、上記架橋重合体、光吸収用ベース樹脂、熱酸発生剤及び有機溶媒から構成される。該反射防止膜用組成物は半導体素子の製造工程中、特に193nmArF光源を利用した液浸リソグラフィ工程及びダマシン工程に非常に適切に用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射防止膜用架橋剤重合体及び反射防止膜用組成物に関し、本発明に係る反射防止膜用組成物を利用した反射防止膜は、既存の反射防止膜に比べて屈折率が高いので、半導体素子の製造工程中、特に193nmArF光源を利用した液浸リソグラフィ工程及びダマシン工程に非常に適切に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
超微細パターンの形成工程では、フォトレジスト膜の下部膜層の光学的性質及びレジスト厚さの変動による定在波(standing wave)及び反射ノッチング(reflective notching)と、下部膜からの回折光及び反射光によるCD(Critical Dimension)の変動が不可避的に発生する。したがって、露光源に用いる光の波長帯で光吸収の良好な物質を導入し、下部膜層における反射を防ぐことのできる反射防止膜をフォトレジストの下部に積層して微細加工工程に用いることができる。
【0003】
光源からの紫外線の光を受けることになれば、フォトレジスト膜を透過しフォトレジスト膜の下部に入射した光が散乱または反射されることになるが、有機乱反射防止膜は散乱または反射される光を吸収してフォトレジストの微細加工に直接的に影響を与えることになる。
【0004】
一方、露光装備で露光レンズと感光膜が形成されたウェハ中間の露光ビームの媒体として屈折率1.0の値を有する空気が用いられる乾式リソグラフィ工程と異なり、液浸リソグラフィ工程では中間媒体として1.0以上の屈折率を有する水(HO)または有機溶媒等の別の流体等を適用することにより、同じ露光波長の光源を用いても、より短波長の光源を用いるか高い開口数(Numerical Aperture:NA)のレンズを利用したのと同じ効果を達成することができ、焦点深度の低下もない。
【0005】
即ち、前記液浸リソグラフィ工程は焦点深度を著しく改良することのできる露光工程であり、これを利用する場合、既存の露光波長の適用時により小さい微細パターンを形成することができるとの利点がある。
【0006】
しかし、このような液浸リソグラフィ工程に屈折率の低い反射防止膜組成物を用いれば、露光源の反射率が高くなるだけでなく、フォトレジストパターンが崩壊する(collapse)可能性がある。したがって、液浸リソグラフィ工程に使用するのに適した高屈折率の反射防止膜材料の開発が急を要する。
【0007】
一方、半導体素子の金属配線が銅に替わると共にダマシン(damascene)工程が必須の工程になってきている。これに伴い、ダマシン工程でコンタクトホールを形成してからこのコンタクトホールを反射防止膜で埋め込んだ後にパターンを形成する工程が必要であるが、コンタクトホールを十分埋め込むことができる反射防止膜は開発されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、液浸リソグラフィ工程及びダマシン工程への適用に適した反射防止膜用架橋重合体、これを含む反射防止膜用組成物、及びこれを利用したフォトレジストパターンの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、屈折率の高い反射防止膜用架橋剤重合体、これを含む反射防止膜用組成物、及びこれを利用したフォトレジストパターンの形成方法を提供する。
【0010】
本発明では先ず、下記式(1)の反復単位を含む架橋剤用重合体を提供する。
【0011】
【化1】

【0012】
前記式で、
及びRはそれぞれ独立的に水素またはメチルであり、
はC〜Cアルキルであり、
m及びnはそれぞれ独立的に0〜4の整数であり、
a及びbはそれぞれ前記反復単位a及び反復単位bの数で、それぞれ自然数である。
【0013】
前記式(1)の反復単位は、下記式(1a)であるのが好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
前記式(1)の反復単位は1,000〜100,000の重量平均分子量を有するのが好ましい。
【0016】
前記式(1)で、反復単位a:反復単位bの重量比は1:1.5〜3である。
【0017】
本発明ではさらに、前記式(1)の反復単位を含む架橋剤用重合体、光吸収用ベース樹脂、熱酸発生剤及び有機溶媒を含む反射防止膜用組成物を提供する。
【0018】
前記光吸収用ベース樹脂は、光源の吸収が可能な樹脂であれば特に制限されず、ArF光源の場合は、ポリビニルフェノールを含むのが好ましい。
【0019】
前記熱酸発生剤も、熱により酸を発生することができる化合物であれば特に制限されないが、2−ヒドロキシシクロヘキシルパラトルエンスルホネートであるのが好ましい。
【0020】
さらに、前記有機溶媒は特に制限されず、メチル 3−メトキシプロピオネート(MMP)、エチル3−エトキシプロピオネート(EEP)またはプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)及びシクロヘキサノンなどを用いることができる。
【0021】
前記反射防止膜用組成物は架橋剤用重合体100重量部に対し、光吸収用ベース樹脂は10〜200重量部、熱酸発生剤は5〜50重量部、有機溶媒は1,000〜100,000重量部で含まれるのが好ましい。
【0022】
前記反射防止膜用組成物は特に液浸リソグラフィ工程に適切に用いられる。
【0023】
本発明ではさらに、前記本発明に係る反射防止膜用組成物を被食刻層の上部に塗布するステップと、
ベーク工程を行なって反射防止膜を形成するステップと、
前記反射防止膜の上部にフォトレジスト膜を形成して露光したあと現像し、フォトレジストパターンを形成するステップと、
を含む半導体素子のパターン形成方法を提供する。
【0024】
前記ベーク工程は150〜300℃の温度で30秒〜2分間行なうのが好ましく、前記露光はArF液浸露光工程であるのが好ましい。
【0025】
本発明はさらに、前記パターンの形成方法を利用して製造される半導体素子を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る反射防止膜は、架橋剤用重合体に硫黄原子を含んでいるので、高い屈折率の反射防止膜を形成することができ、液浸リソグラフィ工程に特に有効に用いられ得る。
液浸リソグラフィ工程時に本発明の屈折率の高い反射防止膜を用いれば、反射率が低くなるため定在波効果のない垂直のパターンを得ることができ、パターンの崩壊も起こらない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
パターンの解像度の増加のため露光機器の開口数が高くなるに伴い、用いられる反射防止膜は高い屈折率を有しなければならない。特に、液浸リソグラフィ工程においては、前述のように、中間媒体として1.0以上の屈折率を有する水または有機溶媒等の別の流体等を適用することにより、同じ露光波長の光源を用いても、より短波長の光源を用いるか高い開口数のレンズを利用したのと同じ効果を達成することができる。したがって、このような液浸リソグラフィ工程には屈折率の高い反射防止膜を用いてこそ反射率が低くなるので、定在波効果のない垂直のパターンを得ることができ、パターンの崩壊も起こらない。
【0028】
本発明に係る反射防止膜は、架橋剤用重合体に硫黄原子を含んでいるので、高い屈折率の反射防止膜を形成することができ、液浸リソグラフィ工程に特に有効に用いられ得る。
【0029】
さらに、本発明の式(1)の反復単位の場合は、屈折率を高めることのできるbユニット以外にアクリレート系列のaユニットを含んでいるので、bユニットだけを含んでいる重合体に比べ架橋反応が徐々に起こる。したがって、ダマシン工程等で反射防止膜をコンタクトホールに埋め込むとき、反射防止膜の流れ特性が良好になり、ヴォイド(void)なくコンタクトホールを埋め込むことができる。
【0030】
以下、実施例を挙げながら本願発明をより詳しく説明するが、本願発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0031】
実施例1.架橋剤用重合体の合成
メチルメタクリレート60g、アクロレイン40g、AIBN 5g、PGMEA400gを500mlの円形フラスコに入れた後、80℃で大凡8時間反応させた。反応完了後n−ヘキサン4Lで沈殿させ、沈殿物を真空乾燥して白色粉末65gを得た。この粉末にエタンチオール300g及びp−トルエンスルホン酸0.5gを投入した後、32℃で24時間のあいだ反応させた。反応完了後トリエチルアミン1gを添加したあと、大凡30分間攪拌させた。攪拌後、蒸留水で沈殿させてポリ(メチルメタアクリレート/3,3−ジチオエチルプロペン)高分子40gを得た(図1を参照)。図1で、ピークP1はポリ(メチルメタクリレート)内メトキシ基の水素を示し、ピークP2はエタンチオールのSに付着されたCHを示す。
【0032】
実施例2.反射防止膜用組成物の製造
前記実施例1で製造した重合体7g、分子量2500のポリビニルフェノール樹脂3g、2−ヒドロキシシクロヘキシルパラトルエンスルホネート0.03gを1500gのPGMEAに溶解させた後、100nmフィルタでろ過させて反射防止膜用組成物を製造した。
【0033】
実施例3.屈折率及び吸収係数の測定
前記実施例2で製造した反射防止膜用組成物をシリコンウェハ上に28nmの厚さでコーティングして220℃で60秒間ベークした後、193nm波長に対する屈折率(n)及び吸収係数(k)値をエリプソメータ(ellipsometer)で測定した。その結果、n=1.82、k=0.22であった。
【0034】
実施例4.コンタクトホール埋め込み特性の評価
前記実施例2で製造した反射防止膜用組成物を80nmコンタクトホールのオキシドパターン上にコーティングした後、240℃で1分間ベークした。ベーク後、断面を切り取って確認した結果、図2に示されているようにヴォイドなくコンタクトホールに良好に埋め込まれたことを確認した。
【0035】
実施例5.パターンの形成
シリコンウェハ上に2000Åの厚さの非晶質炭素膜、その上に400Å厚さのSiONをコーティングした。前記SiON膜上に前記実施例2で製造した反射防止膜用組成物をスピンコーティングした後、220℃で60秒間ベークして250Åの厚さの反射防止膜を形成した。ベーク後、再度JSR社(Japan Synthesis Rubber Co.,Ltd.)の液浸リソグラフィ用感光剤であるAIM5076をスピンコーティングしてから110℃で60秒間ベークした。ASML社の液浸露光装備である1700iで露光させた後、再度105℃で60秒間ポストベークした。ベーク後、2.38重量%のTMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)現像液で現像して定在波のない垂直のパターンを得ることができた(図3を参照)。
【0036】
なお、本発明について、好ましい実施の形態を基に説明したが、これらの実施の形態は、例を示すことを目的として開示したものであり、当業者であれば、本発明に係る技術思想の範囲内で、多様な改良、変更、付加等が可能である。このような改良、変更なども、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例1に係る重合体のNMRスペクトルである。
【図2】実施例4でコンタクトホールに対する埋め込み特性を評価したSEM写真(左側)及びこれをハンドライティングした図(右側)である。
【図3】実施例5で製造されたパターンのSEM写真(左側)及びこれをハンドライティングした図(右側)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)の反復単位を含む架橋剤用重合体。
【化1】

前記式で、
及びRはそれぞれ独立的に水素またはメチルであり、
はC〜Cアルキルであり、
m及びnはそれぞれ独立的に0〜4の整数であり、
a及びbはそれぞれ反復単位の数で自然数である。
【請求項2】
前記式(1)の反復単位は下記式(1a)の請求項1に記載の架橋剤用重合体。
【化2】

【請求項3】
前記式(1)の反復単位は1,000〜100,000の重量平均分子量を有する請求項1に記載の架橋剤用重合体。
【請求項4】
反復単位a:反復単位bは重量比で1:1.5〜3の請求項1または2に記載の架橋剤用重合体。
【請求項5】
請求項1に記載の重合体、光吸収用ベース樹脂、熱酸発生剤及び有機溶媒を含む反射防止膜用組成物。
【請求項6】
前記光吸収用ベース樹脂は、ポリビニルフェノールを含むことを特徴とする請求項5に記載の反射防止膜用組成物。
【請求項7】
前記熱酸発生剤は、2−ヒドロキシシクロヘキシルパラトルエンスルホネートを含む請求項5に記載の反射防止膜用組成物。
【請求項8】
前記有機溶媒はメチル 3−メトキシプロピオネート(MMP)、エチル3−エトキシプロピオネート(EEP)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、シクロヘキサノンまたはこれらの組合せであることを特徴とする請求項5に記載の反射防止膜用組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の架橋剤用重合体100重量部に対し、光吸収用ベース樹脂は10〜200重量部、熱酸発生剤は5〜50重量部、有機溶媒は1,000〜100,000重量部で含まれる請求項5に記載の反射防止膜用組成物。
【請求項10】
請求項5に記載の反射防止膜用組成物を被食刻層の上部に塗布するステップと、
ベーク工程を行なって反射防止膜を形成するステップと、
前記反射防止膜の上部にフォトレジストパターンを形成するステップと、
を含む半導体素子のパターン形成方法。
【請求項11】
前記フォトレジストパターンは、ArF液浸リソグラフィ工程で形成されることを特徴とする請求項10に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
請求項10に記載のパターン形成方法を利用して製造される半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−41013(P2009−41013A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195941(P2008−195941)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(591024111)株式会社ハイニックスセミコンダクター (1,189)
【氏名又は名称原語表記】HYNIX SEMICONDUCTOR INC.
【住所又は居所原語表記】San 136−1,Ami−Ri,Bubal−Eup,Ichon−Shi,Kyoungki−Do,Korea
【Fターム(参考)】