説明

反応容器、攪拌装置及び攪拌装置を備えた分析装置

【課題】音波発生手段が発生した音波を漏らさず液体中に出射することが可能な反応容器、攪拌装置及び攪拌装置を備えた分析装置を提供すること。
【解決手段】音波によって液体を攪拌して反応させる反応容器、攪拌装置及び攪拌装置を備えた分析装置。反応容器7は、少なくとも二つの開口を有し、開口間に形成される空間内に液体を保持する液体保持部を備えている。攪拌装置は、反応容器7に対して相対的に離隔,接近し、液体保持部に保持される液体に接触して液体に音波を照射する発音部を有する表面弾性波素子と、反応容器又は表面弾性波素子の一方を他方に離隔,接近させる挿入機構23とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器、攪拌装置及び攪拌装置を備えた分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化学分析装置は、反応容器の小型化と検体間の汚染を回避するため、外部から反応容器に超音波を照射し、反応容器が保持している液体中に音響流を発生させることで液体を非接触で攪拌混合するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】独国特許発明第10325307号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、微小な反応容器内の液体を効率よく攪拌するためには、液体中に先鋭的な音場を形成する必要がある。このとき、特許文献1のように、超音波を発生させる音源としてSAWデバイスを使用している場合、音波は、反応容器と液体との界面において所定の角度をもって液体中へ入射する。このため、容量が微量化し反応容器が微小或いは細くなり過ぎ、かつ、底面の肉厚が厚くなると、SAWデバイスが発生した音波の一部又は全部が液体中に入射されない場合があった。特に、容量が数nL〜数十μLの微小な反応容器になると、相対的に壁面の厚さが厚くなるため、音波の周波数によっては液体中に入射されなくなる音波が生じてくる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、音波発生手段が発生した音波を漏らさず液体中に出射することが可能な反応容器、攪拌装置及び攪拌装置を備えた分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る反応容器は、音波によって液体を攪拌して反応させる反応容器であって、少なくとも二つの開口を有し、前記開口間に形成される空間内に前記液体を保持する液体保持部を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る反応容器は、上記の発明において、前記液体保持部は、少なくとも前記液体の一部を前記一方の開口から毛細管力によって導入することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る反応容器は、上記の発明において、前記液体保持部の内面は、前記液体に対する親和性を有することを特徴とする。
【0009】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項4に係る攪拌装置は、音波を照射することによって液体を攪拌する攪拌装置において、前記反応容器に対して相対的に離隔,接近し、前記液体保持部に保持される液体に接触して前記液体に音波を照射する発音部を有する音波発生手段と、前記反応容器又は前記音波発生手段の一方を他方に離隔,接近させる離接手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記離接手段は、前記音波発生手段と前記反応容器とを、互いに当接して前記一方の開口を覆う第一の位置と、互いに離隔して前記二つの開口を開放する第二の位置に変化させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記液体保持部と前記音波発生手段は、前記反応容器と前記音波発生手段とを互いに離隔させて前記二つの開口を開放した状態で洗浄されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記音波発生手段は、櫛型電極を有し、表面弾性波を発生する表面弾性波素子であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記櫛型電極の面積は、前記音波発生手段が覆う前記一方の開口の面積よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記液体保持部に導入される液体は、前記音波発生手段上に分注されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項10に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記音波発生手段は、前記液体に対して親和性を有する部分と非親和性を有する部分とを有し、前記液体保持部に導入される液体は、前記音波発生手段の親和性を有する部分に分注された液体であることを特徴とする。
【0016】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項11に係る分析装置は、複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置であって、前記攪拌装置を用いて前記複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の反応容器は、少なくとも二つの開口と、前記二つの開口と接続され、液体を保持する液体保持部とを備えており、また、本発明の攪拌装置は、前記反応容器に対して相対的に離隔,接近し、前記液体保持部に保持される液体に接触して前記液体に音波を照射する発音部を有する音波発生手段と、前記反応容器又は前記音波発生手段の一方を他方に離隔,接近させる離接手段とを備えているので、音波発生手段が発生した音波を漏らさず液体中に出射することができ、本発明の分析装置は、前記攪拌装置を用いて前記複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析するので、音波発生手段が発生した音波を漏らさず液体中に出射することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施の形態1)
以下、本発明の反応容器、攪拌装置及び分析装置にかかる実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、実施の形態1の反応容器の斜視図である。図3は、反応容器の断面図である。図4は、図1に示す自動分析装置の反応ホイールを拡大して攪拌装置の概略構成と共に示す図である。図5は、攪拌装置の音波発生手段を示す斜視図である。図6は、図5の音波発生手段のA部を拡大して示す斜視図である。ここで、音波発生手段は、薄平板上に複数の表面弾性波素子21をリング状に配置した構成となっている。
【0019】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、反応ホイール6及び試薬テーブル13が互いに離隔してそれぞれ周方向に沿って回転、かつ、位置決め自在に設けられ、攪拌装置20を備えている。また、自動分析装置1は、検体テーブル3と反応ホイール6との間に検体分注機構5が設けられ、反応ホイール6と試薬テーブル13との間には試薬分注機構12が設けられている。
【0020】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0021】
検体分注機構5は、検体を分注する手段であり、図1に示すように、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次反応ホイール6の容器孔6aに分注する。
【0022】
反応ホイール6は、図1に示すように、検体テーブル3とは異なる駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される容器孔6aが複数設けられている。反応ホイール6は、各容器孔6aに半径方向両側に光が透過する開口が形成されている。各容器孔6aには、検体を試薬と反応させる反応容器7が挿入機構23によって着脱自在に挿入される。反応ホイール6は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4分回転し、四周期で反時計方向に容器孔6aの1個分回転する。反応ホイール6には、光源8及び排出装置11が設けられている。
【0023】
光源8は、試薬と検体とが反応した反応容器7内の液体を分析するための分析光(340〜800nm)を出射する。光源8から出射された分析用の光ビームは、反応容器7内の液体を透過し、光源8と対向する位置に設けた受光素子9によって受光される。一方、排出装置11は、排出ノズルを備えており、反応容器7から反応終了後の液体を前記排出ノズルによって吸引し、排出容器(図示せず)に排出する。ここで、排出装置11を通過した反応容器7は、図示しない洗浄装置に移送されて洗浄された後、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0024】
反応容器7は、容量が数nL〜数十μLと微量な容器であり、光源8から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器7は、図2及び図3に示すように、互いに平行な平行壁7aと、平行壁7aに隣接して上方に向かって拡がる傾斜壁7bとによって液体を保持する保持部7cが形成されている。また、反応容器7は、保持部7cの上部に上開口7dが形成され、下部に下開口7eが形成された底なし容器である。反応容器7は、少なくとも液体の一部が毛細管力によって保持部7cへ導入されるように、上開口7dと下開口7eが0.1〜20mm2程度に成形されると共に、下開口7eの面積が上開口7dの面積よりも小さく、平行壁7aや傾斜壁7bの内面には検体や試薬等の液体に対する親和性処理が施されている。反応容器7は、平行壁7aの下部側が分析光を透過させる窓7f(図3参照)として利用される。また、反応容器7は、平行壁7aを半径方向に向けて反応ホイール6の容器孔6aに挿入される。
【0025】
試薬分注機構12は、試薬を分注する手段であり、図1に示すように、試薬テーブル13の所定の試薬容器14から試薬を順次反応ホイール6の容器孔6aに分注する。
【0026】
試薬テーブル13は、図1に示すように、検体テーブル3及び反応ホイール6とは異なる駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、扇形に成形された収納室13aが周方向に沿って複数設けられている。各収納室13aは、試薬容器14が着脱自在に収納される。複数の試薬容器14は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示するバーコードラベル(図示せず)が貼付されている。
【0027】
ここで、試薬テーブル13の外周には、試薬容器14に貼付した前記バーコードラベルに記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、制御部16へ出力する読取装置15が設置されている。制御部16は、受光素子9、排出装置11、読取装置15、分析部17、入力部18、表示部19及び攪拌装置20と接続され、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用される。制御部16は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記バーコードラベルの記録から読み取った情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を規制するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。
【0028】
分析部17は、制御部16を介して受光素子9に接続され、受光素子9が受光した光量に基づく反応容器7内の液体の吸光度から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部16に出力する。入力部18は、制御部16へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部19は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0029】
攪拌装置20は、反応容器7に保持される液体を音波によって攪拌するもので、図1及び図4に示すように、複数の表面弾性波素子21からなる音波発生手段、駆動装置22及び挿入機構23を備えている。
【0030】
表面弾性波素子21は、反応ホイール6の下部に配置され、振動子21bを容器孔6aと一致させて反応ホイール6と共に回転する。表面弾性波素子21は、図5〜図7に示すように、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電基板21a上に櫛型電極(IDT)からなる振動子(発音部)21bとアンテナ21cが形成され、二酸化珪素(SiO2)等からなる被覆21dによって、この振動子21bとアンテナ21cが保護された構成となっている。ここで、被覆21dの表面は、振動子21bの上部が検体や試薬等の液体に対する親和性処理を施され、振動子21bの上部以外の部分は非親和性処理が施されている。また、振動子21bとアンテナ21cは、反応容器7の下開口7e内に収まるように、これらの平面積を下開口7eの面積よりも小さくする。このような表面弾性波素子21が、無線で電力を透過可能な薄平板27上に複数の容器孔6aに対応する間隔で周方向に沿って形成され、リング状に成形されたものが音波発生手段となる。
【0031】
駆動装置22は、図4に示すように、表面弾性波素子21に電力を送電して駆動する駆動手段であり、RF送信アンテナ22a、信号発生器22b及び駆動制御回路22cを有している。RF送信アンテナ22aは、表面弾性波素子21の下部に振動子21b及びアンテナ21cと対向させて配置されている。RF送信アンテナ22aは、反応ホイール6と共に回転する表面弾性波素子21の各アンテナ21cに信号発生器22bから供給される数MHz〜数百MHz程度の高周波の電力を発信し、各振動子21bに音波を発振させる。信号発生器22bは、駆動制御回路22cからの制御信号に基づいて発振周波数を変更可能な発振回路を有しており、数十MHz〜数百MHz程度の高周波の発振信号をRF送信アンテナ22aへ出力する。駆動制御回路22cは、メモリとタイマを内蔵した電子制御手段(ECU)が使用され、表面弾性波素子21の駆動信号を制御する。駆動制御回路22cは、信号発生器22bの作動を制御し、例えば、表面弾性波素子21が発する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。また、駆動制御回路22cは、内蔵したタイマに従って信号発生器22bが発振する発振信号の周波数を切り替えることができる。
【0032】
挿入機構23は、制御部16による制御の下、所定位置に配置された反応容器7を把持して反応ホイール6に設けた各容器孔6aに挿入することによって反応容器7を表面弾性波素子21に離隔,接近させる離接手段であり、図1及び図4に示すように、上下動、かつ、水平方向に回動自在なアーム23aに反応容器7を把持するチャック23bが設けられている。
【0033】
以上のように構成される自動分析装置1は、反応ホイール6及び音波発生手段の回転によって周方向に沿って移動してくる各容器孔6aに、制御部16による制御の下、試薬分注機構12のノズル12aが試薬テーブル13の所定の試薬容器14から試薬Lrを順次分注する(図4,図8参照)。これにより、容器孔6aに分注された試薬Lrは、図8に示すように、表面弾性波素子21上に滴下される。このとき、表面弾性波素子21は、振動子21bの上部が検体や試薬等の液体に対する親和性処理を施され、他の部分は非親和性処理が施されている。このため、表面弾性波素子21上に滴下された試薬は、半球状の液滴を形成する。試薬が分注されると、反応ホイール6は、音波発生手段の表面弾性波素子21と共に回転して試薬が分注された容器孔6aが検体分注機構5の近傍へ移動し、検体分注機構5が所定の検体容器4から検体を容器孔6aに分注する。このとき、表面弾性波素子21上には、試薬上に検体が分注された半球状の液体Lが存在する(図9参照)。
【0034】
このようにして試薬と検体が分注された容器孔6aは、反応ホイール6及び音波発生手段の回転によって挿入機構23の近傍へ移動される。すると、挿入機構23が、図4に示すように、把持した反応容器7を上方から試薬と検体が分注された容器孔6aに挿入する。これにより、反応容器7は、図9に示すように、下部の下開口7eが半球状の液体Lの上部に当接する。すると、反応容器7は、下開口7eの面積が小さいため、図10のように、毛細管力によって液体Lの一部が下開口7eから保持部7cに導入される。
【0035】
自動分析装置1は、挿入機構23によって容器孔6aに反応容器7を挿入した後、駆動装置22によって表面弾性波素子21を駆動する。このとき、攪拌装置20においては、表面弾性波素子21は、振動子21bとアンテナ21cの平面積が反応容器7の下開口7eの面積よりも小さく設定されているため、振動子21bが下開口7e内に収まってしまう。このため、反応容器7は、図11に示すように、各表面弾性波素子21の振動子21bが発生した音波Waが、液体L中に総て漏れ出し、漏れ出した音波Waによって液体Lが攪拌される。
【0036】
このとき、表面弾性波素子21は、駆動装置22の駆動制御回路22cによって信号発生器22bを制御し、振動子21bを駆動する周波数を共振周波数と反共振周波数との間で変えると、容器孔6aの底面において液体中に入射する音波の間隔が変化する。例えば、共振周波数frと反共振周波数faとの間の中心周波数f0{=(fr+fa)/2}で振動子21bを駆動した場合、図11に示すように、液体L中に入射する音波Wa0の間隔が最も広くなる。そして、中心周波数f0から離れるのに従って音波の間隔が狭くなり、例えば、周波数f1,f2(f1<f0<f2,|f0−f1|<|f2−f0|)で振動子21bを駆動した場合、図示のように、液体中に入射する音波の間隔は、周波数f2で振動子21bを駆動した場合の音波Wa2が、最も狭くなる。
【0037】
従って、攪拌装置20は、反応容器7の下開口7eの面積に応じて表面弾性波素子21の振動子21b及びアンテナ21cの大きさを決めるが、振動子21bの駆動周波数を変えることによって液体L中に入射する音波の間隔を調整することができる。このため、攪拌装置20は、表面弾性波素子21が発生した音波を漏らさず液体L中に出射することができる。
【0038】
そして、音波Waによって保持部7cへ導入された液体Lは、窓7fの位置を越えた後、図12に示すように、光源8から出射される光束BLによって測光される。
【0039】
測光終了後、反応容器7は、挿入機構23によって容器孔6aから抜き取られて廃液位置へ搬送され、図13に示すように、排出装置11の排出ノズル11aが上開口7dに被着され、圧送される加圧空気によって内部の液体Lが排出される。このようにして液体Lを排出した反応容器7は、図示しない洗浄装置によって洗浄した後、再度検体の分析に使用される。
【0040】
ここで、反応容器7は、内容量が微量なため液体Lの排出に時間が掛かる。このため、反応容器7は、使い捨てとしてもよい。この場合、反応容器7は、挿入機構23によって容器孔6aから抜き取り、所定廃棄位置に廃棄する。
【0041】
ここで、実施の形態1の反応容器は、図14に示す反応容器7Aのように、平行壁7a及び傾斜壁7bの上部に上壁7gを設け、上壁7gの中央に上開口7dを形成してもよい。また、図15に示す反応容器7Bのように、傾斜壁7bを上方に向かって狭まるように形成すると共に、平行壁7a及び傾斜壁7bの下部に半径方向内側に突出するフランジ7hを設け、フランジ7hの中央に下開口7eを形成してもよい。更に、図16に示す反応容器7Cのように、傾斜壁7bに代えて互いに平行な平行壁7jとすることにより、液体を保持する保持部7cを四角柱に成形してもよい。このように保持部7cを四角柱に成形すると、反応容器7Cは、製造が容易になる。
【0042】
このように、実施の形態1の攪拌装置20は、表面弾性波素子21が保持部7cに保持される液体に接触して液体に音波を照射する振動子21bを有するので、表面弾性波素子21が発生した音波を漏らさず反応容器7の液体中に出射することができ、従って攪拌装置20を備えた自動分析装置1も、表面弾性波素子21が発生した音波を漏らさず反応容器7の液体中に出射することができる。
【0043】
(実施の形態2)
次に、本発明の反応容器、攪拌装置及び分析装置にかかる実施の形態2について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1の反応容器は、底壁のない単独の容器であったが、実施の形態2の反応容器は、反応ホイールが反応容器を兼ね、かつ、底壁を有しない反応容器である。図17は、実施の形態2の反応容器を用いて分析を行う自動分析装置の概略構成図である。図18は、図17に示す自動分析装置の反応ホイールの一部を拡大して示す平面図である。図19は、図18に示す反応ホイールのC2−C2線に沿った断面図である。図20は、表面弾性波素子21を下降させて反応ホイールから離した状態を示す断面図である。ここで、実施の形態2の自動分析装置は、実施の形態1の自動分析装置と基本構成が同じであるので、同一の構成部分には同一の符号を付して説明している。
【0044】
自動分析装置40は、攪拌装置20において離接手段として使用する挿入機構23に代えて昇降機構25を備えている。
【0045】
昇降機構25は、反応ホイール6の直径方向に対向させて配置され、反応ホイール6を表面弾性波素子21に対して鉛直方向に移動させる1軸ステージである。昇降機構25は、反応ホイール6を昇降させることによって表面弾性波素子21に離隔,接近させる。ここで、図19は、昇降機構25が反応ホイール6を下降させて反応ホイール6の下面に当接させた状態を示している。一方、図20は、昇降機構25が反応ホイール6を上昇させて表面弾性波素子21から離隔させた状態を示している。従って、検体分注機構5と試薬分注機構12は、昇降機構25が反応ホイール6を下降させた場合には、反応ホイール6の各保持孔6bに検体や試薬を分注し、昇降機構25が反応ホイール6を上昇させた場合には、試薬分注機構12の12aが反応ホイール6と表面弾性波素子21との間に入り込んで表面弾性波素子21の上面に分注する。
【0046】
一方、反応ホイール6は、透明素材から成形され、図17に示すように、容器孔6aに代えて液体保持部となる複数の保持孔6bが周方向に沿って等間隔に設けられている。各保持孔6bは、図18,図19に示すように、反応ホイール6の半径方向に対向する側壁が平行であり、周方向に対向する側壁が底に向かって接近するように傾斜している。ここで、複数の保持孔6bは、表面弾性波素子21に設ける複数の振動子21bと同じ間隔で形成され、表面張力によって液体が導入される大きさに成形されている。また、各保持孔6bは、図18に示すように、下部の開口内に振動子21bとアンテナ21cが収まるように、振動子21bとアンテナ21cの平面積よりも幾分大きく形成する。
【0047】
更に、実施の形態2の攪拌装置20は、表面弾性波素子21の下面にいわゆるドライバスと呼ばれる恒温板26が設けられている。恒温板26は、表面弾性波素子21を介して反応ホイール6の保持孔6bに保持される液体を37℃程度の温度に保持する。
【0048】
このように構成される自動分析装置40は、制御部16による制御の下、昇降機構25が反応ホイール6を上昇させて表面弾性波素子21の上面から反応ホイール6を離隔させる。この状態で、反応ホイール6及び表面弾性波素子21を回転し、制御部16による制御の下、表面弾性波素子21の各振動子21bに対応する位置に、試薬分注機構12のノズル12aが試薬テーブル13の所定の試薬容器14から第一試薬Lr1A〜Lr1Fを順次分注する(図21参照)。このとき、表面弾性波素子21は、振動子21bの上部が検体や試薬等の液体に対する親和性処理を施され、他の部分は非親和性処理が施されている。このため、分注された第一試薬Lr1A〜Lr1Fは、図22に示すように、表面弾性波素子21上で半球状の液滴を形成する。
【0049】
このようにして第一試薬Lr1A〜Lr1Fが分注されると、自動分析装置40は、制御部16による制御の下、昇降機構25によって反応ホイール6を下降し、表面弾性波素子21の上面に反応ホイール6を当接させる。このとき、反応ホイール6の下降に伴い、第一試薬Lr1A〜Lr1Fがその量に応じて対応する保持孔6bの下部と当接することにより、図22に示すように、表面張力によって対応する保持孔6bに順次導入されてゆく。
【0050】
そして、昇降機構25による反応ホイール6の下降が終了すると、図23に示すように、反応ホイール6が表面弾性波素子21の上面に当接し、第一試薬Lr1A〜Lr1Fが各保持孔6bに保持される。この状態で、制御部16による制御の下、反応ホイール6が表面弾性波素子21と共に回転し、図24に示すように、各保持孔6b内の第一試薬Lr1A〜Lr1Fが光源8から出射される光束BLによって順次測光されてゆく。
【0051】
次に、自動分析装置40は、制御部16による制御の下、反応ホイール6が表面弾性波素子21と共に回転して各保持孔6bが検体分注機構5の近傍へ移動すると、検体分注機構5が所定の検体容器4から検体S1〜S6を各保持孔6bに分注する(図25参照)。このとき、表面弾性波素子21は、恒温板26を有しているので、第一試薬Lr1A〜Lr1Fと検体S1〜S6が37℃程度に保持されて反応が適度に促進される。次いで、自動分析装置40は、制御部16による制御の下、駆動装置22によって表面弾性波素子21を駆動する。このとき、表面弾性波素子21は、振動子21bとアンテナ21cの平面積が保持孔6b下部の開口の面積よりも小さく設定されている。このため、各表面弾性波素子21の振動子21bが発生した音波は、保持孔6bに保持された試薬と検体とが混合した液体中に総て漏れ出し、試薬と検体が効率よく攪拌されて反応液L1〜L6となる(図26参照)。
【0052】
このとき、表面弾性波素子21は、実施の形態1で説明したように、駆動装置22の駆動制御回路22cによって信号発生器22bを制御し、振動子21bを駆動する周波数を共振周波数と反共振周波数との間で変えると、攪拌装置20は、表面弾性波素子21が発生した音波を漏らさず液体中に出射することができ、攪拌効率を向上させることができる。
【0053】
このようにして攪拌した後、自動分析装置40は、制御部16による制御の下、反応ホイール6が表面弾性波素子21と共に回転し、図27に示すように、各保持孔6b内の反応液L1〜L6を光源8から出射される光束BLによって順次測光する。
【0054】
その後、自動分析装置40は、反応ホイール6及び表面弾性波素子21を回転し、制御部16による制御の下、所定の保持孔6bに保持された反応液L1,L3,L4,L6に試薬分注機構12のノズル12aが試薬テーブル13の所定の試薬容器14から第二試薬Lr2A,Lr2C,Lr2D,Lr2Fを順次分注する(図28参照)。分注後、自動分析装置40は、制御部16による制御の下、駆動装置22によって表面弾性波素子21を駆動し、各保持孔6bに保持された反応液L1〜L6と第二試薬Lr2A,Lr2C,Lr2D,Lr2Fとを攪拌して反応させることにより反応液LR1〜LR6とする(図29参照)。
【0055】
次に、自動分析装置40は、制御部16による制御の下、反応ホイール6を表面弾性波素子21と共に回転し、図30に示すように、各保持孔6b内の反応液LR1〜LR6を光源8から出射される光束BLによって順次測光する。次いで、自動分析装置40は、制御部16による制御の下、昇降機構25によって反応ホイール6を上昇し、図31に示すように、反応ホイール6を表面弾性波素子21から離隔させる。
【0056】
しかる後、自動分析装置40は、制御部16による制御の下、図32に示すように、各保持孔6bの上方から図示しない洗浄装置によって洗浄液Fcを矢印で示すように導入し、複数の保持孔6bを表面弾性波素子21の表面と共に洗浄する。洗浄後の洗浄液は、反応ホイール6の上部から加圧空気を噴射することにより各保持孔6bから排出される。このようにして複数の保持孔6bを洗浄した後、自動分析装置40は、制御部16による制御の下、昇降機構25が反応ホイール6を下降して表面弾性波素子21の上面に反応ホイール6を当接させ、再度検体の分析に使用される。
【0057】
ここで、自動分析装置40は、図33に示すように、反応ホイール6を表面弾性波素子21に当接させた状態で、各保持孔6bの上方から洗浄液Fcを矢印で示すように導入し、複数の保持孔6bを表面弾性波素子21の表面と共に洗浄してもよい。
【0058】
また、自動分析装置40は、反応ホイール6と表面弾性波素子21との配置を上下逆にし、反応ホイール6を下側に配置し、表面弾性波素子21を上側に配置し、昇降機構25によって表面弾性波素子21を昇降させてもよい。このような配置とした場合、自動分析装置40は、制御部16による制御の下、昇降機構25によって表面弾性波素子21を上昇させて反応ホイール6から離隔させ、図34に示すように、試薬LrA〜LrFを順次下方から上方に向けて分注する。
【0059】
次に、自動分析装置40は、制御部16による制御の下、図35に示すように、昇降機構25によって表面弾性波素子21を下降し、反応ホイール6の上面に表面弾性波素子21を当接させる。このとき、表面弾性波素子21の下降に伴い、試薬LrA〜LrFがその量に応じて対応する保持孔6bの下部と当接することにより、図35に示すように、表面張力によって対応する保持孔6bに順次導入されてゆく。
【0060】
そして、昇降機構25による表面弾性波素子21の下降が終了すると、図36に示すように、表面弾性波素子21が反応ホイール6の上面に当接し、試薬LrA〜LrFが各保持孔6bに保持される。以下、自動分析装置40は、制御部16による制御の下、検体の分注、試薬と検体の攪拌、反応液の測光及び反応液の洗浄等を行うことにより、検体の分析を同様に実行することができる。
【0061】
このように、実施の形態2の攪拌装置20は、振動子21bが発生した音波が試薬と検体とが混合した液体中に総て漏れ出すので、液体を効率よく攪拌することができ、従って攪拌装置20を備えた自動分析装置40も、表面弾性波素子21が発生した音波を漏らさず各保持孔6bに保持した液体中へ出射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】実施の形態1の反応容器の斜視図である。
【図3】反応容器の断面図である。
【図4】図1に示す自動分析装置の反応ホイールを拡大して攪拌装置の概略構成と共に示す図である。
【図5】攪拌装置の音波発生手段を示す斜視図である。
【図6】図5の音波発生手段のA部を拡大して示す斜視図である。
【図7】図6のC1−C1線に沿った断面図である。
【図8】表面弾性波素子上に滴下される試薬を示す側面図である。
【図9】下開口が液体に当接する状態を示す反応容器の断面図である。
【図10】毛細管現象によって液体が下開口から保持部に導入される状態を示す反応容器の断面図である。
【図11】表面弾性波素子の駆動周波数を変化させたときに液体中に入射する音波の間隔の変化を説明する反応容器の断面図である。
【図12】保持部に導入された液体を光束によって測光する状態を示す反応容器の断面図である。
【図13】測光終了後に保持部から液体を排出する状態を示す反応容器の断面図である。
【図14】反応容器の第一の変形例を示す断面図である。
【図15】反応容器の第二の変形例を示す断面図である。
【図16】反応容器の第三の変形例を示す断面図である。
【図17】実施の形態2の反応容器を用いて分析を行う自動分析装置の概略構成図である。
【図18】図17に示す自動分析装置の反応ホイールの一部を拡大して示す平面図である。
【図19】図18に示す反応ホイールのC2−C2線に沿った断面図である。
【図20】表面弾性波素子を下降させて反応ホイールから離した状態を示す図19に対応する断面図である。
【図21】表面弾性波素子上面の各振動子に対応する位置に第一試薬を順次分注する様子を示す図19に対応する断面図である。
【図22】表面弾性波素子上面に分注された第一試薬の形状と、反応ホイールを下降することによって、第一試薬がその量に応じて対応する保持孔に順次導入されてゆく様子を示す図19に対応する断面図である。
【図23】反応ホイールが下降して表面弾性波素子の上面に当接した状態を示す図19に対応する断面図である。
【図24】反応ホイールの各保持孔内の第一試薬を測光する様子を示す図19に対応する断面図である。
【図25】反応ホイールの各保持孔に検体が分注される様子を示す図19に対応する断面図である。
【図26】振動子が発生した音波によって試薬と検体とが攪拌された反応液を示す図19に対応する断面図である。
【図27】第一試薬と検体の反応液を測光する様子を示す図19に対応する断面図である。
【図28】更に第二試薬を分注する様子を示す図19に対応する断面図である。
【図29】第二試薬分注後の反応液を示す図19に対応する断面図である。
【図30】第二試薬分注後の反応液を測光する様子を示す図19に対応する断面図である。
【図31】反応液の測光終了後、反応ホイールを表面弾性波素子から離隔させた状態を示す図19に対応する断面図である。
【図32】複数の保持孔を表面弾性波素子の表面と共に洗浄液によって洗浄する様子を示す図19に対応する断面図である。
【図33】複数の保持孔を表面弾性波素子の表面と共に洗浄液によって洗浄する変形例を示す断面図である。
【図34】実施の形態2の自動分析装置の変形例を示すもので、表面弾性波素子上面の各振動子に対応する位置に試薬を順次分注する様子を示す表面弾性波素子の断面図である。
【図35】実施の形態2の自動分析装置の変形例を示すもので、表面弾性波素子を下降することによって、試薬がその量に応じて対応する保持孔に順次導入されてゆく様子を示す図19に対応する断面図である。
【図36】表面弾性波素子が下降して反応ホイールの上面に当接した状態を示す図19に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注機構
6 反応ホイール
6a 容器孔
6b 保持孔
7 反応容器
7a 平行壁
7b 傾斜壁
7c 保持部
7d 上開口
7e 下開口
7f 窓
7A,7B,7C 反応容器
8 光源
9 受光素子
11 排出装置
12 試薬分注機構
13 試薬テーブル
14 試薬容器
15 読取装置
16 制御部
17 分析部
18 入力部
19 表示部
20 攪拌装置
21 表面弾性波素子
22 駆動装置
23 挿入機構
25 昇降機構
26 恒温板
40 自動分析装置
Wa 音波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波によって液体を攪拌して反応させる反応容器であって、
少なくとも二つの開口を有し、前記開口間に形成される空間内に前記液体を保持する液体保持部を備えたことを特徴とする反応容器。
【請求項2】
前記液体保持部は、少なくとも前記液体の一部を前記一方の開口から毛細管力によって導入することを特徴とする請求項1に記載の反応容器。
【請求項3】
前記液体保持部の内面は、前記液体に対する親和性を有することを特徴とする請求項1に記載の反応容器。
【請求項4】
音波を照射することによって液体を攪拌する攪拌装置において、
請求項1〜3のいずれか一つに記載の反応容器に対して相対的に離隔,接近し、前記液体保持部に保持される液体に接触して前記液体に音波を照射する発音部を有する音波発生手段と、
前記反応容器又は前記音波発生手段の一方を他方に離隔,接近させる離接手段と、
を備えたことを特徴とする攪拌装置。
【請求項5】
前記離接手段は、前記音波発生手段と前記反応容器とを、互いに当接して前記一方の開口を覆う第一の位置と、互いに離隔して前記二つの開口を開放する第二の位置に変化させることを特徴とする請求項4に記載の攪拌装置。
【請求項6】
前記液体保持部と前記音波発生手段は、前記反応容器と前記音波発生手段とを互いに離隔させて前記二つの開口を開放した状態で洗浄されることを特徴とする請求項4に記載の攪拌装置。
【請求項7】
前記音波発生手段は、櫛型電極を有し、表面弾性波を発生する表面弾性波素子であることを特徴とする請求項4に記載の攪拌装置。
【請求項8】
前記櫛型電極の面積は、前記音波発生手段が覆う前記一方の開口の面積よりも小さいことを特徴とする請求項7に記載の攪拌装置。
【請求項9】
前記液体保持部に導入される液体は、前記音波発生手段上に分注されることを特徴とする請求項4に記載の攪拌装置。
【請求項10】
前記音波発生手段は、前記液体に対して親和性を有する部分と非親和性を有する部分とを有し、
前記液体保持部に導入される液体は、前記音波発生手段の親和性を有する部分に分注された液体であることを特徴とする請求項9に記載の攪拌装置。
【請求項11】
複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置であって、請求項4〜10のいずれか一つに記載の攪拌装置を用いて前記複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析することを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2007−47085(P2007−47085A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233496(P2005−233496)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】