説明

反応性樹脂発泡体の製造方法並びに装置

【課題】従来のメカニカルフロス法で発泡体シートを製造する場合、トラバースやドクターナイフを用いて塗布するため、反応遅延せざるを得なかった。また不活性ガスを大量に投入して高気泡化、低密度化した場合、塗布液が流動性を失い、ドクターナイフ塗布のため、表面平滑な製品が得られなかった。
【解決手段】本発明はメカニカルフロス用撹拌機を経た反応性気泡化原料を特定条件のコートハンガー形ダイに導入し、ドクターナイフを使用せずに製品幅のダイ吐出口から直接シート状基材に連続して押し出し塗布して表面平滑な製品を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反応性樹脂原料を用いての反応性樹脂発泡体の新規な製造方法並びにその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
反応性樹脂原料として特にポリウレタン発泡原料を用いてのポリウレタン発泡体シートの製造方法としては大きく二つの製造方法がある。
第一は反応を遅延させたポリウレタン反応性原料とNガス等の不活性ガスをオークスミキサー、あるいはホーバートミキサー等のメカニカルフロス用撹拌機と呼ばれる機械撹拌泡化装置を用いて気泡化し、走行する離型性を有するシート基材上に気泡化した状態で吐出、ドクターナイフ等の塗布装置を用いて一定厚さに塗布した後、反応固化させて発泡体シートを得るものである。
その第二は通常のポリウレタン発泡機を用いて反応性樹脂原料と発泡剤を混合した後、特定条件のコートハンガー形ダイを通して走行するシート基材上に吐出、塗布した後、発泡並びに反応固化させて発泡体シートを得るものである。
【0003】
この代表的ポリウレタン発泡体シートの製造方法については下記の特許文献等にそれぞれ開示されている。
【特許文献1】特公昭53−8735
【特許文献2】特開2002−138126
【特許文献3】特開昭54−81366
【特許文献4】特開昭55−81367
【0004】
前述の特許文献1及び特許文献2の反応性樹脂発泡体シートの製造方法はオークスミキサーの様なメカニカルフロス用撹拌機である機械撹拌泡化装置を用いるものであって、反応を遅延させた上でオークスミキサーに導入される反応性樹脂原料と共に気泡化のための不活性ガスをも導入して、ミキサーの回転によってせん断を与え、導入した不活性ガスを反応性樹脂原料中にミキサーによって超微細化分割、並びに気泡分散させるものである。即ちミキサー中で気泡化させ、本気泡体をホース等でシート状基材上にトラバース塗布、更にドクターナイフ等の塗布具を用いて基材上に一定厚さに均しながら塗布するものである。
【0005】
本メカニカルフロス法での反応性樹脂発泡体シートは導入気体を機械的に微分割、分散させるため、非常に超微細な気泡を作ることが出来ると共に泡化した反応性樹脂原料を目的の最終製品に近い厚さでドクターナイフを用いてかき切り、一定厚さに均しながら塗布してシート状化し、その一定厚さの気泡体シート状物を固化させるため、製品厚さ精度が良い樹脂発泡体を製造できる利点がある。
また塗布量が150g/m以下の重量の製品であっても既に気泡化した状態での反応性樹脂原料を塗布するため、ガスが逃げることなく安定して薄い厚さの反応性樹脂発泡体シートを得ることができる利点もある。
【0006】
しかしながら本方式は前述のように反応を遅延させておく必要があり生産性が低い欠点を有している。
また反応が進まない状態でオークスミキサー等のメカニカルフロス用撹拌機で泡化させるためゲル化反応が進行しておらず、泡の保持力が低く泡が不安定のため、通常のコンベンショナル方法のポリウレタン発泡体の様な高発泡の低密度ポリウレタン発泡体を製造することは困難である。
またメカニカルフロス法で反応性樹脂発泡体シートを製造する場合、メカニカルフロス用撹拌装置から吐出された吐出液をホースを使用して離型性シート状基材上にトラバース塗布し、ドクターナイフを用いて一定厚さにかき切り塗布されるため、特に見掛密度200kg/m未満まで泡化させた場合には塗布液が流動性を失うため、ドクターナイフのかき切り面が平滑でない凹凸状態になる欠点を有している。
特に100kg/m程度以下の高気泡化反応性樹脂原料をドクターナイフを用いて一定厚さにかき切ると気泡に流動性が無いため、シート表面が凹凸状態の平滑性の無いシートとなる大きな欠点を有している。
また導入するNガス量を反応性樹脂原料100部に当り250cm以上、特に300cm以上導入すると低密度気泡化するがメカニカルフロス用撹拌機から吐出される高気泡化した反応性樹脂原料は流動性のない反応性樹脂気泡体となる。
メカニカルフロス用撹拌機から吐出する高気泡化反応性樹脂原料をホースを使って1m幅を超える広幅の走行するシート状基材上に一定厚さで塗布しようとした場合、吐出液は全く流動性が無いためホースをトラバースしながら幅方向に広げた場合、前塗布液とリターントラバース後塗布液の間に空間を生じ、空気を巻き込み製品にピンホールを発生させる問題がある。その上面を均一厚さにするためドクターナイフを用いて均すと、更に多くのピンホールや空洞を発生する。特に高気泡化、低密度化させた気泡液で厚さの厚い製品を製造しようとした場合はこの傾向が強く、従って高密度でせいぜい数十ミリ程度の厚さの反応性樹脂発泡体シートを製造するのが限界である。
即ちメカニカルフロス法に於いて、薄物シートを製造する場合に塗布液のトラバースとドクターナイフを使用する必要があり、低密度の良好な樹脂発泡体シートを製造することが困難となり、高密度樹脂発泡体シートの製造に限定される。
【0007】
メカニカルフロス用撹拌機による微細気泡機械発泡の性質を残しながら、メカニカルフロス法での高発泡、低密度シートの発泡体が出来ないと云う欠点を克服するため化学反応で発泡するHO等の発泡剤を加えて化学反応させ、正常気泡の低密度発泡体を得ようとしても、ドクターナイフ等の塗布具を使用する以上これまで同様な反応を遅延させて、塗布後に反応を励起させる方法を採らざるを得ず、気泡が不安定で粗大化して正常の気泡の低密度発泡体を得ることが困難である。
この対策として反応の遅延をやめて、コンベンショナル発泡同様の触媒を使用した場合、ドクターナイフ等の塗布具に樹脂ゲル化物が付着して、コマーシャルベースでの長時間発泡が不可能である欠点を有する。即ちメカニカルフロス法は低密度発泡体や非遅延性発泡体には向かない製造法である。
【0008】
メカニカルフロス発泡は気泡を作成してから、本気泡液をホース等でシート状基材上に搬送し、ドクターナイフ等で一定厚さに塗布し、その後加熱によって反応が急速に励起して、反応が進む。しかしながらドクターナイフで塗布するまでに、通常10分程度のポットライフが必要である。その間泡を安定に保つ必要があり、通常水酸化アルミニウム等の無機充填剤をポリオール100部に当り、100部以上少なくとも60部以上添加して、凝集力を高める必要が有り、その為に特殊のポンプを必要とし配管等も大型化させなければならないと共に得られた製品の物理特性である伸びが特に低下する欠点も有している。
【0009】
前述の文献の特許文献3及び特許文献4は反応性ポリウレタン原料の反応性を落とさず、反応性樹脂発泡体シートを製造する方法であって、通常のポリウレタンフォームを製造するのに使用する発泡機と称される反応性原料混合機を用いて反応性樹脂成分を混合し、本混合液を圧送ポンプを介して特定条件のコートハンガー形ダイに導入し、反応が律速する前に短時間にダイ出口から直接走行する離型性を有する基材上に均一厚さで広幅に押し出し、ドクターナイフを使用せずに、そのまま発泡させるものである。
特定条件のコートハンガー形ダイはダイ内容積が非常に小さく、しかもダイ内のダイランドでの流速がダイ全幅に渡ってほぼ同一であるための反応性樹脂原料であっても、ダイ内が樹脂でゲル化する危険性が非常に小さい。
即ち本方式は反応を遅延せず、均一厚さ塗布のためのトラバースあるいはトラバースとドクターナイフ等の塗布具を使用せず内容積の小さいコートハンガー形ダイから反応性混合原料を直接一定製品幅、一定塗布量で吐出し、発泡反応は基材上に塗布されてから励起する反応発泡方式である。
即ち同じ反応性樹脂発泡体シートを製造するのであるが、前者はメカニカルフロスと呼ばれる機械撹拌発泡であるのに対して、後者は塗布後に発泡するケミカル発泡である。
ここで通常のポリウレタンを発泡する時に使用する発泡機とは図13に示すタイプであり、原料成分導入口203、204、205、206より各種原料成分が導入され主にピンタイプの羽根207にて撹拌される。
【0010】
本コートハンガー形ダイを用いる方法はトラバース塗布あるいはトラバース塗布並びにドクターナイフによる均一厚さに均す工程が不要なため、反応を遅延させる必要が無いことから生産性が高いと同時にゲル化と発泡を同時に進行させるため高発泡、低密度製品から低発泡、高密度品まで自由に製造可能であり、特に厚さ700mm以上にも達する発泡スラブフォームを製造できる利点をも有する。具体的には密度20kg/m程度の低密度発泡シートを製造できるなど多くの利点もあるが、逆に厚さの薄い発泡体シートを製造しにくい問題がある。
特に塗布量が150g/m以下になると塗布された反応性樹脂原料中で反応あるいは気化によって発生するガスが容易に薄い塗布反応性混合原料表面より大気に放出されて、塗布原料中に残存せず正常の微細な発泡体になりにくい問題がある。
また大気中に放出するガスを逃さないように塗布上面にフィルム等の別のシート状基材を乗せて走行するサンドイッチフィルム方式で発泡しても非発泡状態の反応性樹脂塗布液と上下面フィルムとの間に表面張力が働き、更にガス量が少ないためフィルムを押し上げて発泡する力が小さく、容易に発泡できず例え発泡したとしても気泡の大きい超高密度フォーム状態となる。
【0011】
また別に本コートハンガー形ダイを使用する発泡シートの製造方法は反応性樹脂原料が塗布されてから発泡するため、塗布液の塗布量むらが発泡によって拡大され発泡シートの厚さ精度が低下する問題を有している。
特に低密度品の場合には発泡倍率が大きいため、塗布量誤差が発泡によって拡大され厚さ精度の悪い発泡体シートとなる大きな欠点を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の第一の目的はメカニカルフロス法に於ける反応を遅延させ、気泡化された反応性樹脂原料をホースによってトラバースし、ドクターナイフで均一塗布するメカニカルフロス法を改め、反応を遅延させずにメカニカルフロス法での反応性樹脂気泡体を連続して製品幅で隙間なく押し出し、塗布して反応性樹脂発泡体を製造する方法を提供することである。
具体的には遅延しなければ使用できないドクターナイフ等の塗布具を使用せず反応性樹脂気泡体をコートハンガー形ダイのダイ出口より直接製品幅、均一厚さに塗布して反応性樹脂発泡体シートを製造することである。
第二の目的は多量の不活性ガスを用いたメカニカルフロス法による高発泡、低密度気泡体であっても安定に塗布して製品表面が平滑なピンホール等を含まない薄い製品から厚い製品まで自由に反応性樹脂発泡体を提供することである。
【0013】
本発明の第三の目的はフレオンやメチレンクロライド、あるいはヘキサン等の低沸点発泡助剤で低密度並びに低硬度化する代わりにメカニカルフロス法を活用して一部気泡化した状態で吐出して、低密度、低硬度のスラブフォームを製造する方法を提供することである。
第四の目的はコートハンガー形ダイを使用しながら塗布量150g/m以下の薄い厚さの反応性樹脂発泡体シートを安定して製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1は反応性樹脂発泡体を製造するに必要な反応性樹脂原料を計量搬送するポンプ手段とこれらのポンプ手段から計量、搬送されてきた反応性樹脂原料と不活性ガスとをメカニカルフロス用撹拌機に導入して混合気泡化する手段と本混合気泡化された反応性気泡化原料を特定条件のコートハンガー形ダイに導入して吐出する手段とを有する反応性樹脂気泡体の製造装置であって、
ここで使用する特定条件のコートハンガー形ダイはマニホールドの開き角度が120度〜150度の範囲に設定され、且つマニホールドを除くダイ内容積とマニホールド容積との比が1:0.3〜1:1の範囲にあり、且つマニホールドの両端部に於ける溝幅及び断面積が端部に行くにつれて、中央部の溝幅及び断面積に対して小さくなっている必要がある。
【0015】
本発明に於いては水発泡剤等を用いてポリウレタンフォームを製造するために使用する通常に用いるポリウレタン発泡機ではなく、メカニカルフロス用撹拌機と呼ばれる機械気泡化撹拌機にて不活性気体を微細化、微分散して気泡化するため、コートハンガー形ダイに導入する段階で従来の文献3及び4記載のコートハンガー形ダイの状態と異なり、反応性樹脂原料成分は気泡化されている。
本発泡体製造装置のメカニカルフロス用撹拌機は従来の水発泡剤使用のポリウレタン発泡機よりも高度に撹拌させるため内容積がやや大きく、またコートハンガー形ダイに流入する原料は気泡化されているため、流入する反応性原料自身でコートハンガー形ダイ内面を洗う効率も悪くなり、ダイ内のゲル化が進みやすい。
従って洗浄力の低下した反応性気泡化原料でもダイ内のゲル化を防止して長時間塗布を可能にするため鋭意検討した結果、マニホールドの開き角度を120度〜150度の範囲に狭め、またマニホールドを除くダイ内容積とマニホールドとの比を1:0.3〜1:1の範囲に狭め、短滞留時間化することによってダイ幅方向の両端部の流を良くして、端部の滞留時間と中央部の滞留時間差を少なくすることができ、全ダイ内容積をより小さくすることができ結果として、ダイ内の壁面を短時間に洗うことができ反応性樹脂原料のゲル化を防止できることが判明した。
ここでマニホールドの開き角度とは図5、図8のθを指し、原料導入口位置での左右マニホールドの中央位置での左右接線の開き角度を云う。
本発明の特徴はメカニカルフロス用撹拌機とコートハンガー形ダイとを一体(以後メカニカルフロスコートハンガー形ダイと称す)として使用する点にある。
【0016】
本発明に使用する原料計量搬送用ポンプとしては通常液体を定量搬送可能であるポンプであればいかなるポンプでも使用可能であり、例えばギヤポンプ、プランジャーポンプ等が使用可能であり、好ましくは0.3Mpa以上の液圧で使用可能なポンプが好ましい。またメカニカルフロス用撹拌機での内部の圧力としては0.02MPa〜1.5MPa程度の範囲で使用することができるが、特に好ましくは0.3MPa〜1.1MPaの範囲で使用するのが低密度化の点で好ましい。
【0017】
ここでメカニカルフロス用撹拌機とは、発泡剤として水とポリイソシアネートとの反応で発生するCOガスを利用しての化学的発泡の通常ポリウレタンフォーム用撹拌機と異なり、不活性ガスと反応性樹脂原料とを強制的に機械的混合させて、不活性ガスを強力な撹拌せん断力で微細化させて、反応性原料が反応を律速する以前に気泡化させる混合機を指し、代表的混合機としてはオークスミキサー、あるいはホーバートミキサー等がある。
【0018】
メカニカルフロス用撹拌機としてのオークスミキサー形式の撹拌機について図1、図2、図3、図4を用いて詳細に説明する。
図1はメカニカルフロス用撹拌機と本発明のコートハンガー形ダイとを直結したメカニカルフロスコートハンガー形ダイからなる反応性樹脂気泡体連続製造装置の概略図である。
図1に於いて1はメカニカルフロスコートハンガー形ダイであり、反応性樹脂気泡体連続製造装置である。大きくはオークスミキサー3、コートハンガー形ダイ4、並びにオークスミキサーを回転させるモーター2から成り立っています。
定量搬送用ポンプから送られてきた反応性樹脂原料成分は原料導入口31、32、33から不活性ガスは不活性ガス導入口34からオークスミキサー3に導入され、モーター2にて撹拌混合され、コートハンガー形ダイ4に流入して広げられ液膜あるいは液シートとなってダイ出口9から吐出される。
【0019】
図2はメカニカルフロス用撹拌機3の断面図である。図3は図2の円部の拡大図である。
図4は図2のA−A′断面図である。
反応性樹脂原料成分導入口31、32、33並びに不活性ガス導入口34から原料成分並びに不活性ガスが導入され、オークスミキサー3の上部ステーター35と中央部のローター36との上部隙間に流入され、ローター36の羽根で撹拌されながらローター36の側部に到達し、その後下面に流れて、下部ステーター37と中央部のローター36との下部隙間を通って中央部に集まり、オークスミキサー出口38より吐出される。
【0020】
ここで中央部ローター36は図4に示したように突起部であるローター羽根361と羽根の存在しないローター空洞部362から成り立っている。また上面ステーターも同様の上部ステーター羽根351と空洞部352から成り立っている。
図4に於いて反応性樹脂原料成分並びに不活性ガスは中央部から側部に流れて行くのであるが上部ステーター35とローター36のローター羽根361でローター36の回転によってせん断を受けながらローター空洞部362より側部に原料は移動する。側部に到達した原料は下段に移り、同様にローターの回転によるせん断を受け下段中央部に集まりオークスミキサー出口38より吐出される。
通常のポリウレタンは回転する羽根のみであるので全液をまんべんなくマクロに撹拌はできるが不活性気体を均一微分割、均一微分散することができない。即ち均一微分割、微分散不十分の部分が生じ気泡径が大きい。
【0021】
本発明に使用する不活性ガスとしては空気、Nガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、COガス等があるが、気泡が細かくなる点でNガスが好ましい。
空気はコスト面で好ましいが、オークスミキサー内部での圧力が0.3MPa以下の場合には良いが、0.3MPa以上になると空気の除湿が難しく、乾燥空気として取り扱うことが難しく、ポリイソシアネートを使用するポリウレタン発泡体に於いては好ましくない。
不活性ガスの使用量としては反応性樹脂発泡体100重量部に対して50cm〜1400cmの範囲が良い。
【0022】
本発明に使用する特定条件のコートハンガー形ダイについて図5、図6、図7、図8、図9、図10にて具体的に説明する。
図5は本発明に使用するコートハンガー形ダイの斜視図、図6は図5のリッププレート7の拡大図、図7は図4のコートハンガー形ダイの断面図である。
図8は本発明に使用する別のコートハンガー形ダイの斜視図、図9は図8の流量調整板10の拡大図、図10は図8のコートハンガー形ダイの断面図である。
【0023】
メカニカルフロス用撹拌機から吐出された気泡化された反応性樹脂気泡化原料はコートハンガー形ダイ4の原料導入口6から連続的に導入されマニホールド5を経てダイランド8に流入する。ダイランド8にて薄膜化され、同じダイランド8隙間では等速度、等方向でダイリップ出口9方向に向かって、原料導入口6とダイ出口9とを結ぶ最も短い線に平行に進行する。
基本的には原料導入口6から全ダイリップ出口9までの滞留時間並びに全ダイ出口9での吐出量は同一になることから、ダイ側部でのゲル化が抑えられ長時間に渡って連続生産することができる。
【0024】
図5の本発明のコートハンガー形ダイ4はリッププレート7の湾曲によってダイ出口9の隙間を各ダイ幅方向の部位で微調整することによって長時間安定した吐出量を確保することができる。
即ちリッププレート7に設けられた流量調整用ボルト12の各部位におけるボルトを回転することによってリッププレート7を湾曲させ、ダイ出口9の各部位の流量を微調整することができる。
また長時間運転時にダイ幅方向の両幅端部の流量が低下した場合には流量調整ボルト12aまたは12fを回転させ、端部のダイ出口9のダイリップ隙間t(図7に示す)を広げることによって流量を増加調整することができ、更に長時間運転を継続することができる。
【0025】
図8は別の本発明のコートハンガー形ダイ4′であり、リッププレート7′を湾曲するのではなく流量調整板10の調整ボルトを回転することによって流量調整板10を湾曲させ、流量調整板位置の隙間を狭くしたり広くすることによって流量調整することができる。
本コートハンガー形ダイはリッププレート7′を固定とし、流量調整板10の湾曲によって流量を調整するのであるが、流量調整板10の両側部のボルト12a、12fを回転させてランド隙間を経時と共に広げる微調整によって側部の流量低下を押え、長時間運転が可能となる。
【0026】
請求項2は本発明を遂行する上での反応性樹脂原料と不活性ガスのメカニカルフロス用撹拌機にて気泡化させるのであるが、特に好ましいのはオークスミキサー形式の撹拌機である。オークスミキサー形式の撹拌機では確実にステーターとローターによって原料の第一段撹拌羽根と次の撹拌羽根への撹拌段数が積み重なるため部分的な気泡分散不足がなく、部分的な粗大気泡やピンホールのない微細気泡の反応性樹脂発泡体が得られる。ホーバートミキサー形式の撹拌機は逆方向に回転する2個のローター羽根によって強力なせん断をかけるものであるが、反応液の流れが一定でなく撹拌むらが発生する点でオークスミキサー形式の撹拌機よりも劣る。
【0027】
請求項3は反応性樹脂発泡体を製造するに必要な原料をポンプを用いて計量、搬送すると共に本搬送された反応性原料と不活性ガスとを撹拌機に導入して混合気泡化させて吐出すると共に本吐出された反応性気泡原料をコートハンガー形ダイに導入して基材に押し出すと共に本押し出された反応性樹脂気泡原料をシート状基材に吐出、塗布し、本シート状塗布物を反応固化させることを特徴とする反応性樹脂発泡体の製造方法である。
【0028】
ここで反応性樹脂原料のゲル化を防止するためコートハンガー形ダイのマニホールドの開き角度は120度〜150度の範囲に設定すると共に、且つマニホールドを除くダイ内容積とマニホールドとの比が1:0.3〜1:1の範囲に限定し、且つマニホールド両端部に於ける溝幅及び端部に行くにつれて、中央部の溝幅及び断面積に対して小さくする必要がある。
【0029】
本発明に使用されるシート状基材としては塗布できればいかなるシート状基材であってもよく、フィルムや紙、あるいはフィルムと紙との複合体、並びにシートであっても良い。
またシート状基材は静止した状態のものであっても移動するものであっても良い。
目的とする反応性樹脂発泡体それ自身そのものを製造する場合には離型性を有するシート状基材を選択すればよく、またシート状基材と一体品を望む場合には離型性が無く接着性の高い紙、織物、不織布、あるいはフィルム等を選択すればよい。
【0030】
本発明に使用するシート状基材としてはクラフト紙、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、テフロン(登録商標)フィルム、繊維、織物、不織布等があるがこれらに限定されるものではない。シート状基材が前述のプラスチックフィルムの場合には、厚さが15μ〜150μの範囲が良く、好ましくは20μ〜100μの範囲が良い。
また離型性を有する複合シート状基材としてはシリコン樹脂等の離型性樹脂を焼き付けた離型紙、あるいはフィルム、あるいはフィルムラミネート紙に更に離型性を有するシリコン樹脂等を焼き付けたもの、ポリメチレンペンテン樹脂等の離型性樹脂フィルム等を紙あるいは他のフィルムに一体化させたもの、油や界面活性剤等を紙に処理したもの、グラスファイバー強化テフロン樹脂シート等があり、樹脂の性質並びにシート状基材の性質等によって適宜選択すれば良い。
【0031】
またシート状基材が紙または紙と他の材料との複合紙の場合、形状保持並びに安定して目的形状にする為に目付け量は70g/m〜200g/mが好ましい。また離型性を有するシート状基材の最初と最後を継いでベルト状として繰り返し使用する場合もシート状基材として本発明の範囲に含まれる。
離型性を有するプラスチックフィルムとしては通常ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムにシリコン樹脂等の離型性を有する樹脂を焼き付けたフィルム等の方法あるいは他の方法で非離型性フィルムと離型性フィルムとを一体化したフィルム等も好ましく、厚さは15μ〜150μの範囲が好ましい。更に好ましくは20μ〜100μの範囲である。
【0032】
請求項4はメカニカルフロス用撹拌機がオークスミキサー形式の撹拌機あるいはホーバートミキサー形式の撹拌機が前述の請求項2に示した理由により好ましい。
【0033】
請求項5は本発明を遂行するに当たり、本コートハンガー形ダイのランド位置に於ける原料流速が30mm/秒以上であることである。当然本発明のメカニカルフロスコートハンガー形ダイに導入される反応性樹脂原料が多くなればなるほどダイのランドでの流速は早まりダイ内壁を洗う力も大きくなる。
もちろん反応性樹脂発泡体原料の反応性が大きければ大きいほどダイ内壁面のゲル化は進行するため、大きな流速で洗う必要があり、逆に反応性が小さければゲル化は進行しないため、低い流速でも洗えることになるが、反応性が遅いと云ってもいくらでも流速が遅くても良いのではなく、最低の洗浄流速があることが判明した。長時間連続運転するためには、その流速は30mm/秒以上が好ましい。
【0034】
請求項6は請求項3で使用するシート状基材が連続して走行する離型性を有する離型フィルムあるいは離型紙であることである。
離型性を有するシート状基材を使用することによって反応性樹脂原料が反応固化した後、離型性を有するシート状基材を剥離して反応性樹脂発泡体シート単体とすることが出来る。
【0035】
請求項7は連続して走行する離型フィルムあるいは離型紙が傾斜した状態で走行し、そのシート状基材上に気泡化された反応性樹脂発泡体を本発明の特定条件でのコートハンガー形ダイを通して製品幅で押し出し塗布、反応固化させ、1m幅を超えるスラブ形状のメカニカルフロス発泡体を得ることである。
本スラブ形状のスラブ発泡体は高さが数センチ程度のものから数十センチに及ぶメカニカルフロス発泡体であり、発泡体密度も20〜150kg/mの範囲にある製品の厚い発泡体である。
これらの発泡体は不活性ガスの混入による通常のメカニカルフロスによる密度が100〜900kg/m程度の気泡体と共にHOとイソシアネートの反応によって生ずるCOガスによるケミカル発泡との共発泡であって発泡体密度が20〜200kg/m程度の発泡体に適する。
【0036】
これらの高発泡メカニカルフロス発泡体は高気泡化させた状態で吐出、塗布されるため流動性に欠け、流動性がほとんど無いためトラバースした吐出液と次にトラバースした吐出液とは傾斜したコンベアー上であっても傾斜に沿って流れて、液と液とがつながり、全体塗布状態にはならない。
このような状態でドクターナイフを用いて塗布液を一定厚さにかつ切ってならして隙間のない状態にしても、液と液との合わせ目に空洞が発生するか、あるいは合わせ目の気泡が消泡して粗大気泡となるか、あるいはピンホールを生ずるかであり、良好なスラブ発泡体は得られない。
これに対して本発明のメカニカルフロスコートハンガー形ダイから連続的にスラブ製品幅で押し出し吐出、塗布されるため液と液との合わせ目が無いことからピンホールを含まない微細気泡のスラブ発泡体を製造することができる。
【0037】
即ち不活性ガスを大量に混入させた高発泡、低密度気泡体は流動性が全くないことから、トラバース法あるいはトラバース法とドクターナイフ方とを組み合わせた塗布方法では塗布隙間が無い連続した塗布は困難であり、特に高さが高い製品を製造するための高吐出塗布は更に困難でありピンホールや気泡消泡による粗大気泡部の無い良好な製品を得ることはできない。
不活性ガスとHO等の化学的発泡剤とを併用したスラブ発泡体の製造方法を概略図12にて説明する。
離型性を有するポリエチレンフィルムラミネートクラフト紙である離型紙19を巻き出しロール17から巻き出し、傾斜したコンベアーベルト16上に乗せ、コンベアーベルト16と共に走行させる。
メカニカルフロスコートハンガー形ダイ1から連続して、均一厚さ、コンベアー幅サイズで吐出された反応性樹脂気泡体はフィルム19上にシート状に連続して塗布され、発泡、キュアー(本図ではキュアーオーブンは省略)されスラブ形状の反応性樹脂発泡体が得られる。
但し本発泡形式もメカニカルフロス発泡とケミカル発泡との共発泡であることから、塗布後ケミカル発泡によって更に発泡するためコンベアーは傾斜しておく必要がある。
【0038】
請求項8は特にポリウレタン樹脂発泡体あるいはシリコン樹脂発泡体が本発明を実施するのに最も適している製造方法であることである。
本来本発明は、あらゆる反応性樹脂発泡体に適用可能であり、ポリウレタン樹脂発泡体、シリコン樹脂発泡体の他にポリアクリル酸樹脂発泡体、エポキシ樹脂発泡体、メラミン樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体、尿素樹脂発泡体等があるが、原料粘度、反応速度、得られた製品の耐久性、物理強度等によりポリウレタン樹脂発泡体あるいはシリコン樹脂発泡体が望ましい。
シリコン樹脂発泡体の場合に於いても液状の反応性ポリウレタン発泡体同様に、1成分乃至2成分の反応性シリコン樹脂原料を用い不活性ガスを使用することによって本発明を遂行することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明は従来ドクターナイフ、トラバースあるいはトラバースとドクターナイフの併用等の塗布具では高不活性ガス量による低密度反応性樹脂気泡体の均一塗布が流動性がないことから困難であったのをメカニカルフロスコートハンガー形ダイによる反応性樹脂気泡体連続製造装置を使用することによって可能とした。
更に厚さ数十センチに達する低密度スラブ発泡体であっても本発明のメカニカルフロスコートハンガー形ダイによる反応性樹脂気泡体連続製造装置を使用することによって連続的に均一塗布することが可能となった。
一方従来の通常のポリウレタン発泡機とコートハンガー形ダイによる塗布量150g/m以下の低塗布量、薄い発泡体も本発明のメカニカルフロスコートハンガー形ダイによる反応性樹脂気泡体連続製造装置を使用することで可能となった。
【0040】
従来ソフトなポリウレタンフォームを得るために架橋剤兼発泡剤であるHOの量を抑えて、ペンタンやメチレンクロライド、フレオン等の低沸点溶剤型補助発泡剤を使用し、大気汚染の問題を引き起こしていたが、本発明のメカニカルフロスコートハンガー形ダイを使用することによって、前述の低沸点溶剤型補助発泡剤を使用せずにNガス等のメカニカルフロス用不活性ガス等の補助発泡剤を使用することが可能となり、ソフトなポリウレタンスラブ発泡体を製造することができるようになった。
本発明で製造される薄い発泡体シートはハードデスク、携帯電話等のパッキンとして、あるいは液晶テレビのディスプレー等のバッククッションに、また指の疲労を小さくするためのキーボード等のバッククッション、あるいはシリコンウエハー等の研磨材として有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明はメカニカルフロスコートハンガー形ダイからなる反応性樹脂気泡体連続製造装置を用いての微細気泡の反応性樹脂発泡体を製造する方法である。
また特に反応性樹脂発泡体として適するものはポリウレタン樹脂発泡体あるいはシリコン樹脂発泡体であるが、ここではポリウレタン樹脂発泡体に限って特に詳細に説明する。
メカニカルフロス用撹拌機としてはオークスミキサーあるいはホーバートミキサー等があるが、ここではオークスミキサー使用について説明する。
【0042】
図3に示した上部及び下部ステーターとローターとの隙間ΔHは0.5〜2.0mmの開きが好ましい。2.0mm以上になると撹拌不十分な部分が発生し、気泡が均一サイズにならず粗大気泡であるピンホールを含有するポリウレタン樹脂発泡体となる。また0.5mm以下でも良いが、0.5mm以下になっても特に良い効果が生まれないことから、それ以下に特にする必要はない。しかもローターとステーターとが接触する危険性が大きく好ましくない。またステーターとローターとの隙間ΔWは0.5〜2.0mmが好ましい。0.5mm以下では発熱が大きく、また2.0mm以上では均一に微細化気泡になり難い。また上下ステーター、並びにローターの羽根段数ピッチは6〜9mmが良い。またステーターとローターの羽根段数(図2では4段)は7〜10が好ましい。
オークスミキサーは回転によるせん断を長時間に渡ってかけるため高い発熱を引き起こすため、図2に示さなかったが上部ステーター、下部ステーターに冷却ジャケットを付帯するのが良い。
またローターの回転数は500〜4000回転/分程度がよく、4000回転以上になると発熱が大きく、原料が高温となるため好ましくない。また撹拌後の原料温度は18℃〜35℃程度が好ましく、これ以上になると反応が急速に進み、コートハンガー形ダイ内でゲル化することもある。
【0043】
本発明のコートハンガー形ダイは基本的に全ダイ幅に於いて反応が起こる前に反応性樹脂原料を薄いフィルムあるいはシートとしてダイから吐出することにある。
従ってダイ全内容積が重要である。従って本コートハンガー形ダイのランド隙間が重要になる。薄い発泡体シートを製造する場合にはランド隙間は0.2mm〜1.5mm、スラブ形状樹脂発泡体の場合にはランド隙間は4mm〜8mm程度が好ましい。
【0044】
図11は薄物のメカニカルフロス発泡体シートを製造するためのライン概略図である。
離型性を有するシート状基材としてはシリコン離型樹脂を焼き付けた紙である離型紙あるいはポリエステルフィルムにシリコン離型樹脂を焼き付けたものが好ましい。
下面離型性フィルム巻き出しロール14から離型性フィルム19′が巻き出され、離型性フィルム駆動ロール131にてキャリアロール133に支えられているロールコンベアー上を等速度で走行し、離型性フィルム引き取りロール132を経て、下面離型性フィルム巻取ロール15にて巻き取られる。
駆動ロール131を通過した離型性フィルム19上に上部よりメカニカルフロスコートハンガー形ダイ1から製品幅サイズで反応性原料がシート基材上に吐出され、ドクターナイフ等の塗布具を使用せずに均一に塗布される。本塗布液は上面開放のシングル離型性シート状基材を使用してもあるいは塗布後に上面より図12に示したように離型性フィルム19′を乗せてサンドイッチ状態にしても良い。通常塗布された反応性樹脂気泡体は加熱炉(図には省略)を経て反応を進行させ、固体状の反応性樹脂発泡体シート134単体として巻き取られる。
【0045】
反応性樹脂発泡体がポリウレタン樹脂発泡体である場合について詳細に説明する。
ポリウレタン発泡体原料としては一般のポリウレタン発泡体に使用するものであればいずれも使用可能であり、例えばポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール等いかなるポリオールも使用することができる。
メカニカルフロス気泡体に於いては原料粘度が高い程気泡安定性が良いことからポリオールとポリイソシアネートを前もって反応させた末端OH基を有するポリオールプレポリマーとして使用するのが好ましい。
ポリイソシアネートとしては一般に使用するトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、カルボジミド変性ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等ウレタン発泡体に一般的に使用可能なポリイソシアネートが使用できる。
また前述と同様に原料粘度が高い程微細気泡並びに気泡安定性が増すため、前もってポリオールとポリイソシアネートとを反応させた末端NCO基を有するポリイソシアネートプレポリマーとして使用するのが好ましい。
【0046】
架橋剤あるいは鎖状延長剤としては、1.4ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンやトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物等の低分子量ポリオール等が使用可能であるがこれに限定されない。
不活性ガスとしてはNガス、空気,COガス、ヘリウムガス等が使用可能であるが微細気泡の点でNガスが好ましい。
整泡剤としてはポリジメチルシロキサン−ポリオキシアルキレングリコール共重合体が好ましいが、非イオン系界面活性剤も単独あるいはポリジメチルシロキサン−ポリオキシアルキレングリコール共重合体との併用で使用することも可能である。
触媒としては一般のポリウレタン樹脂発泡体に使用されるトリエチレンジアミンを代表とする3級アミンやスタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート等の有機金属化合物、あるいは無機ビスマス等がある。
また遅延性触媒も使用可能であり、単独あるいは汎用のウレタン触媒と併用して使用可能である。具体的にはニッケルアセチルアセトネート、ニッケルジアセチルアセトネート等がある。
本発明は主に反応を遅延させないで反応性樹脂発泡体を製造することをも目的としているが、反応性樹脂原料の種類や高気泡化、低密度気泡体の塗布の関係上反応を遅延させても可能であり、本発明の範囲に含まれる。
【0047】
反応性ポリウレタン樹脂発泡体としては柔軟性を有する軟質ポリウレタン樹脂発泡体のみでなく、半硬質ポリウレタン樹脂発泡体あるいは硬質ポリウレタン樹脂発泡体原料であっても本発明を遂行することができる。
また連続気泡ポリウレタン樹脂発泡体であっても独立気泡ポリウレタン樹脂発泡体であっても本発明を遂行することができる。
また増粘無機充填剤としては水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、クレー、水酸化バリウム、硫酸バリウム等が使用可能であり、有機充填剤としては石油樹脂、アスファルト、ポリブテン、オイル等があり、一般に使用される充填剤が使用可能である。
またカーボンナノチューブ、イオン液体、金属粉あるいはカーボンブラック等も単独あるいは併用して使用することができる。
【実施例1】
【0048】
図11の薄物反応性樹脂発泡体製造装置に準じて薄物反応性ポリウレタン樹脂発泡体シートを製造した。
製造に使用した製造ライン、オークスミキサー、コートハンガー形ダイの使用について下記する。
(製造ライン仕様)
(1)キャリアーロール幅:750mm
(2)コートハンガー形ダイ吐出口幅:600mm
(3)キュアーオーブン温度:130℃
(4)上下面離型フィルム
PETフィルム厚さ:100μ
PETフィルム幅:650mm
PETフィルム離型剤:シリコン焼付けタイプ
PETフィルム速度:1〜6m/分
【0049】
(オークスミキサー仕様)
〔図1〕〔図2〕〔図3〕に示したようにメカニカルフロス用撹拌機に準じた設備を使用した。
設備仕様について下記する。
(1)ローター
羽根高さ:4mm
羽根数:上段6枚(6段)、下段7枚(7段)
羽根段数ピッチ:6mm
(2)上段ステーター
羽根高さ:4mm
羽根数:6枚(6段)
羽根段数ピッチ:6mm
(3)下段ステーター
羽根高さ:4mm
羽根数:7枚(7段)
羽根段数ピッチ:6mm
(4)上段ステーター羽根とローター上段羽根との上下隙間ΔH:0.6mm
(5)下段ステーター羽根とローター上段羽根との上下隙間ΔH:0.6mm
(6)上下ステーター羽根とローター上下羽根との左右隙間ΔW:0.5mm
(7)回転数500〜4000rpm
(8)オークスミキサーのシール耐圧:1.1MPa
(9)内部体積:67cm
【0050】
(コートハンガー形ダイ:図8タイプ)
(1)ダイ吐出幅:600mm
(2)ダイ開き角度:138度
(3)マニホールドを除くダイ内容積とマニホールドとの比は約1:0.378
(4)ダイランド隙間(t)約0.35mm
(5)ダイ内容積:約20.9cm
(ポリウレタン発泡体原料配合)
【表−1】

表−1に示した原料配合に基き、各成分をギャーポンプにて計量搬送し、前述のメカニカルフロスコートハンガー形ダイに総量450g/分で導入、2000rpmで撹拌した。
この際Nガスを56cm/分の割合でオークスミキサーに直接導入した。オークスミキサー内圧は0.31MPaであった。
次に前述のコートハンガー形ダイから、カーテン状に吐出した反応性樹脂気泡化原料を5m/分で走行する離型フィルム上に塗布した後、上面よりPET離型フィルムを密着させ130℃のキュアーオーブン中を走行させキュアーさせた後薄物ポリウレタン発泡体を1時間に渡って得た。ダイランドでの原料平均流速は約36mm/秒であった。
得られた発泡体シートは厚さ約0.33mm、密度約460kg/mの表面平滑な微細気泡ポリウレタンフォームシートを得た。
【実施例2】
【0051】
(オークスミキサー仕様)
製造ライン、オークスミキサーは実施例1と同一設備を使用した。
コートハンガー形ダイは別の設計ダイを使用し、下記の仕様で使用した。
(コートハンガー形ダイ)
(1)ダイ吐出幅:600mm
(2)ダイ開き角度:134度
(3)マニホールドを除くダイ内容積とマニホールドとの比は約1:0.375
(4)ダイランド隙間(t)約0.5mm
(5)ダイ内容積:約28.2cm
(ポリウレタン発泡体原料配合)
表−1と同一
(薄物シートの作成−2)
表−1に示した原料配合に基いて、各成分をギャーポンプにて計量搬送し、実施例1で使用したメカニカルフロスコートハンガー形ダイに総量1500g/分で導入した。
メカニカルフロス形撹拌機を冷却しつつ、2500rpmで撹拌した後、コートハンガー形ダイから、実施例1と同様に5m/分で走行する離型フィルム上に幅600mmで塗布した。130℃のキュアーオーブンを経て、製品厚さ約1.2mm、密度415kg/mの微細気泡ポリウレタン発泡体シートを得た。ダイランドでの平均原料流速は約83mm/秒であった。オークスミキサー内圧は0.51MPaであった。
【実施例3】
【0052】
図12に示すラインにてスラブウレタン発泡体を製造した。スラブウレタンラインについて下記します。
(スラブウレタン製造ライン)
(1)スラブコンベアー幅:有効幅600mm
(2)コンベアー速度:1.2m/分
(3)離型紙:ポリエチレンラミネートクラフト紙
オークスミキサー並びにコートハンガー形ダイについて下記する。
(オークスミキサー仕様)
(1)ローター
羽根高さ:14mm
羽根数:上段6枚(6段)、下段7枚(7段)
羽根ピッチ:6mm
(2)上段ステーター
羽根高さ:14mm
羽根数:6枚(6段)
羽根ピッチ:6mm
(3)下段ステーター
羽根高さ:8mm
羽根数:7枚(7段)
羽根ピッチ:6mm
(4)上段ステーター羽根とローター上段羽根の上下隙間:ΔH=0.6mm
(5)下段ステーター羽根とローター上段羽根の上下隙間:ΔH=0.6mm
(6)上下ステーター羽根とローター上下羽根との左右隙間:ΔW=0.5mm
(7)オークスミキサーシール耐圧:Max 1.1MPa
(8)内部体積:256cm
(コートハンガー形ダイ)
(1)ダイ吐出幅:600mm
(2)ダイ開き角度:約128度
(3)マニホールドを除くダイ内容積とマニホールドとの比は約1:0.475
(4)ダイランド隙間(t)約1.2mm
(ポリウレタンスラブ発泡体配合表)
【表−2】

表−2に示した原料配合に基いて各成分をギャーポンプにて計量搬送してメカニカルフロスコートハンガー形ダイに総量3450g/分で導入した。
この際Nガスを6900cm/分の割合でメカニカルフロス形撹拌機に導入した。
メカニカルフロス形撹拌機の撹拌を2800rpm、圧力を0.80MPaになるようにコートハンガー形ダイの圧力調整板を調整した。前述のスラブウレタンのコンベアーの頭部に30mm高さの位置からコートハンガー形ダイ出口より吐出した。その後、キュアーを行い、得られたスラブウレタン高さは約220mm、密度は22.8kg/mであった。
【比較例1】
【0053】
実施例1の条件の内吐出量を360gに、Nガスを45cm/分に変えた以外は、メカニカルフロス形撹拌機並びにコートハンガー形ダイは同一条件で使用し、コートハンガー形ダイの流量調整板の両側部の流量調整ボルトを廻して広げたが最大16分で、側部の流量が低下して運転を停止した。ダイランドでの平均流速は約29mm/秒であった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のメカニカルフロスコートハンガー形ダイ反応性樹脂気泡体連続製造装置
【図2】図1の断面図
【図3】図2の円形部拡大図
【図4】図2のA−A′断面図
【図5】本発明に使用するコートハンガー形ダイの斜視図
【図6】図5のリッププレート7の拡大図
【図7】図5のコートハンガー形ダイの断面図
【図8】本発明に使用する別のコートハンガー形ダイの斜視図
【図9】図8の流量調整板の拡大図
【図10】図8のコートハンガー形ダイの断面図
【図11】本発明の薄物メカニカルフロス発泡体シート製造ラインの概略図
【図12】本発明のスラブ発泡体の製造ライン概略図
【図13】通常のポリウレタン発泡機のミキシングヘッド
【符号の説明】
【0055】
1:メカニカルフロスコートハンガー形ダイからなる反応性樹脂気泡体連続製造装置
2:モーター
3:オークスミキサー
31:反応性樹脂原料成分導入口
32:反応性樹脂原料成分導入口
33:反応性樹脂原料成分導入口
34:不活性ガス導入口
35:上部ステーター
351:上部ステーター羽根
352:上部ステーターの空洞部
36:ローター
361:ローター羽根
362:ローターの空洞部
37:下部ステーター
38:オークスミキサー出口
39:オークスミキサー回転軸
4:コートハンガー形ダイ
4a:コートハンガー形ダイ構成板
4b:コートハンガー形ダイ構成板
4′:別のコートハンガー形ダイ
4′a:別のコートハンガー形ダイの構成板
4′b:別のコートハンガー形ダイの構成板
5:マニホールド
6:原料導入口
7:リッププレート
7′:別のコートハンガー形ダイのリッププレート
8:ダイランド
9:ダイ出口
10:流量調整板
11:離型紙用キャリアロール
12:流量調整ボルト
12a:12b、12c、12d、12e、12f:各流量調整ボルト
13:薄物反応性樹脂発泡体シート製造ライン
131:離型性フィルム駆動ロール
132:離型性フィルム引き取りロール
133:キャリアロール
134:反応性樹脂発泡体シート
135:キャリアロール
14:下面離型性フィルム巻き出しロール
14′:上面離型性フィルム巻き出しロール
15:下面離型性フィルム巻き取りロール
15′:上面離型性フィルム巻き取りロール
16:ベルト
17:巻き出しロール
18:スラブウレタン発泡体
19:離型紙
19′:離型性フィルム
20:コンベンショナル発泡機ミキサー
201:モーター
202:回転軸
203:原料成分導入口
204:原料成分導入口
205:原料成分導入口
206:原料成分導入口
207:羽根
208:ミキシングチャンバー圧力調整子
209:発泡機ノズル
ΔH:上段ステーター羽根とローター上段羽根との上下隙間
ΔW:下段ステーター羽根とローター下段羽根との左右隙間
t:ダイリップ隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性樹脂発泡体を製造するのに必要な反応性樹脂原料を計量搬送するポンプ手段とこれらのポンプ手段から搬送されてきた反応性樹脂原料と不活性ガスとをメカニカルフロス用撹拌機に導入して混合気泡化する手段と本混合気泡化された反応性気泡化原料を特定条件でのコートハンガー形ダイに導入して吐出する手段とを有する反応性樹脂気泡体を製造する装置であって
本コートハンガー形ダイの原料導入口に於けるマニホールドの開き角度が120度〜150度の範囲にあり、且つマニホールドを除いたダイ内容積とマニホールド容積との比が1:0.3〜1:1の範囲にあり、且つマニホールドの溝幅および断面積が端部に行くにつれて中央部の溝幅および断面積に対して小さくなっていることを特徴とする反応性樹脂気泡体連続製造装置。
【請求項2】
メカニカルフロス用撹拌機がオークスミキサー形式の撹拌機である請求項1記載の反応性樹脂気泡体連続製造装置。
【請求項3】
反応性樹脂発泡体を製造するのに必要な反応性樹脂原料をポンプを用いて計量搬送し、本搬送された反応性原料と不活性ガスとを撹拌機に導入して混合気泡化して吐出させ、本吐出された反応性樹脂気泡化原料をマニホールドの開き角度が120度〜150度の範囲にあり、且つマニホールドを除いたダイ内容積とマニホールド容積との比が1:0.3〜1:1の範囲にあり、且つマニホールドの両端部に於ける溝幅および断面積が端部に行くにつれて中央部の溝幅および断面積に対して小さくなっているコートハンガー形ダイに導入してシート状基材上に吐出すると共に、本吐出物を反応固化させることを特徴とする反応性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項4】
撹拌機がオークスミキサー形式の撹拌機である請求項3記載の反応性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項5】
コートハンガー形ダイのダイランド位置における流速が平均30mm/秒以上である請求項3または4記載の反応性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項6】
シート状基材が連続して走行する離型性を有する離型フィルムあるいは離型紙である請求項3乃至5いずれか記載の反応性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項7】
シート状基材が傾斜して連続して走行する離型性フィルムあるいは、離型紙であって、しかも反応固化した製品形状がスラブ形状である請求項3乃至5いずれか記載の反応性樹脂発泡体の製造方法。
【請求項8】
反応性樹脂発泡体がポリウレタン樹脂発泡体あるいはシリコン樹脂発泡体である請求項3乃至7いずれか記載の反応性樹脂発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−59391(P2010−59391A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38582(P2009−38582)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(593174674)有限会社サン・イースト・リサーチ (10)
【Fターム(参考)】