説明

取替え可能な複数の不揮発メモリを装着したメモリ・システム

【課題】半導体用フォトマスクの欠陥検査装置等の大量の画像データを収集し、その画像データに基づいてコンピュータがフォトマスク上の欠陥を検出する装置などでは、画像データの任意の部分に直接アクセスできる一次記憶装置、即ちメモリ上にその全てを収納できるならばデータ処理の利便性が飛躍的に向上する。
【解決手段】メモリボード1に複数のソケット2を装着し、そこにSDカードなどの取り外し可能な不揮発性メモリ・カードを装着する。それをメモリボードの中心部に設けた制御回路4で制御することにより装着したメモリの容量の総合計が全体の容量となるメモリ・システムを構築した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
当発明は、半導体用フォトマスク外観検査装置や半導体用ウエハー外観検査装置など、スキャナが被検査体の表面を高解像度でスキャニングし、被検査体表面の画像を採取しながら異物、欠陥等を検出する仕組みの装置などにおいて、検査で採取される画像全体を保存するメモリ・システムに適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
半導体用フォトマスク外観検査装置や半導体用ウエハー外観検査装置では、フォトマスクやウエハーの表面を1ミクロンよりも高い解像度でスキャニングし、画像を採取し、欠陥や異物の検出を行う。
高解像度で画像を採取すると、1検査当たりの画像データのボリュームが大きくなり、最近の装置では1検査当たり1テラ・バイト以上のデータ・サイズになるようになってきた。
これらの検査装置に組み込まれているコンピュータのメモリ容量は年々大きくなってきているが、その一方で解像度もより高くなり、既存のメモリ・システムに1検査の画像データ全てを蓄えるのは難しい状況である。
そこで、多くの現行の検査装置での検査画像は検査の進行に合わせて小さな領域毎に検査装置にのコンピュータ上のメモリに蓄えられ、逐次処理を行っているのが一般的である。この場合、採取したある領域の画像は、次の領域の画像が入力されるまでの短い時間しか保存されておらず、その短い時間内に欠陥や異物の検出の処理を行わなければならない、あるいは、既に消去されてしまった領域の画像を再度使用する場合には、その領域の検査をやり直さなければならない等の問題がある。
また、1テラバイトを超えるような大容量の検査画像をD−RAMのような揮発性のメモリ、即ち従来の一次記憶装置に全て蓄えようとすると、消費電力と発熱量が大きくなるという欠点があり、実現が難しい。
また、検査画像の全てをハード・ディスク記憶装置やシリコン・ディスク記憶装置などの2次記憶装置に保存する方法がある。しかし、ハードディスクは記憶媒体の円盤が高速で回転しているために信頼性に問題がある。最近ではRAID5というような、複数のハード・ディスク・ドライブをまとめて一つのドライブ・システムとして冗長性を持たせて、一つのディスク・ドライブ・ユニットが壊れても、そこに保存された画像データが失われないような仕組みも開発されている。しかし、このような方式では壊れたディスク・ドライブ・ユニットを交換し、システムを健全な状態に戻すのに再構築作業を行わなければならず、それにかける時間とコストが問題となる。
ハードディスク・ドライブ記憶装置に代わるものとして、フラッシュ・メモリなどの不揮発性メモリを使用したシリコン・ディスク記憶装置などが使われるようになってきている。シリコン・ディスクの場合には駆動部が無いので、より信頼性が高く、消費電力も低いという利点があり、パソコンなどで急速に普及している。しかし、フラッシュメモリは読み書き回数に制限があり、寿命が来た場合には記憶装置毎交換しなければならない点が問題である。またハードディスクドライブ記憶装置も、シリコン・ディスク記憶装置も二次記憶装置であるので、画像データを保存する場合にはファイル形式にて保存する。この場合、画像データの任意の位置のデータにアクセスするのに時間がかかる欠点がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体用フォトマスク外観検査装置や半導体用ウエハー外観検査装置が1回の検査で採取する最高で10テラバイトにも達するような巨大な画像データを蓄えることができ、一次記憶装置のように画像データの任意の位置に直接アクセスすることができ、データの読み込み書き込みに要する時間がハードディスク記憶装置やシリコン・ディスク記憶装置に書かれたファイルの任意の位置にアクセスする場合に比較して著しく短く、且つ、消費電力が少なく、壊れたり寿命がきた記憶媒体を容易に発見することができ、それを容易に交換できるメモリ・システムを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(ア)メモリ・ボード(1)にソケット(2)を複数個配置し、このソケットに装着可能なSDカードのような取り外し可能な不揮発性メモリ・カード(3)をそれぞれのソケットに装填する。
(イ)メモリ・ボード(1)上に、図2に示すようなメモリ・ボードの外部とのデータ入出力部(6)、データを一時的に蓄えるバッファ(7)、データの読み書きを振り分けるコントロール部(8)からなる回路を設け、この回路と各メモリ・ソケット(2)を結ぶ。この制御回路は図1においては(4)に該当する。制御回路(4)は使用可能なメモリ・カート(3)が認識されているメモリ・ソケットを有効なメモリ・ソケットとして自動的に認識すると共に、有効なメモリ・ソケットに1バイト、あるいは数バイトずつデータの書き込み読み込み先を振り分けて行くことで、フラッシュメモリによってできているメモリ・カードの欠点である読み書きのスピードの遅さを解消する。例えば、10個のメモリ・ソケットに1バイトずつ、データの書き込みをして行く場合、制御回路の処理速度が、メモリ・カードの書き込み可能速度の10倍よりも十分に早い場合には、このメモリ・ボードの書き込みの速度は、そこに使われているメモリ・カードの10倍の速度を出すことが可能になる。
(ウ)メモリ・ボード(1)の両面、若しくは片面の端の位置にメモリ・ソケット(2)を配置する。これによって、いずれかのメモリ・カード(3)に不具合が生じた場合に、簡単にメモリ・カードを取り替えることが可能になる。
(エ)各メモリ・ソケット(2)の近傍に、それぞれのメモリ・ソケットに対応したLEDランプ(5)を1対1の対応で設置する。このLEDランプは制御回路(4)上にて動作する診断プログラムによりメモリ・ソケットあるいはメモリ・カードのいずれかに不具合が発生した場合に点灯し、そのメモリ・ソケットあるいはメモリ・カードに不具合が有ることを知らせる。
(オ)メモリ・ボード(1)を複数枚集めてメモリ・ベース・ボード(10)に装填することで、さらに大きな容量のメモリ・システムを構築する。(図3)
【発明を実施するための形態】
【0005】
次に、本発明の形態を述べると、メモリ・ボード(1)のソケット(2)に正常動作するSDカード(3)を装着すると、SDカードが装着されたソケットに付随したLEDランプ(5)が点灯し、そこにデータを保存することができる状態を知らせる。
パソコンとメモリ・ベース・ボード(10)をUSB2.0規格のケーブルで接続し、制御回路4を介してデータをPCからメモリ・システムに送り出すと、SDカードが装着されたソケットのLEDランプが点滅して、データが書き込まれる。
この際の書き込み速度は20MByte/Sec以上の書き込み速度が観察され、SDスピードクラス10の10MByte/Secを超えるスピードで書き込みができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明で、2.5TByteの容量を持ったメモリ・システムを構築し、動作を確認することができた。使用する不揮発性メモリ・カードの1枚当たりの容量を増やす、あるいは、メモリ・ソケットの数を増やす等して最大で10テラバイトの大きなメモリ空間を構築できる目処がついた。
記憶媒体に、フラッシュ・メモリを使ったSDカードを使用しているので、一次記憶装置でありながらD−RAMを使用した場合に比較して電力消費が少なく、電気を切っても記憶内容をを保持できる。
10枚のメモリカードに1バイトずつ書き込む方法により、メモリ単体の場合より10倍の書き込み速度を実現できる。
可動部が無く、信頼性が向上する。
LEDと制御回路にある診断プログラムによって、動作しているメモリ・ソケットと動作していないメモリ・ソケットの区別が容易につくので、故障時には当該メモリ・カードを取り替えるだけで良く、復旧までの作業と時間を大幅に縮小できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】メモリ・ボードの正面図
【図2】不揮発メモリに高速にデータを読み書きする仕組み
【図3】メモリ・ベース・ボードにメモリ・ボードを装着した斜め図
【符号の説明】
【0008】
1 メモリ・ボード
2 メモリ・ソケット
3 取り外し可能な不揮発性メモリ・カード
4 メモリ・ボードのコントロール部
5 メモリの動作確認のためのLEDランプ
6 メモリ・ボードの外部とのデータ入出力部
7 データを一時的に蓄えるバッファ
8 データの読み書きを振り分けるコントロール部
9 メモリ部分
10 メモリ・ベース・ボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリ・ボードという基板上に複数のソケットを装着し、そこにSDカードやメモリ・スティック等の取り外し可能な不揮発性メモリ・カードを装填し、そのメモリ容量の総合計を一つの巨大なメモリとして活用できるメモリ・システム。
【請求項2】
上記メモリ・ボードに装着された不揮発メモリ・カードに対して1バイト若しくは複数のビットまたはバイト毎に書き込み先のメモリ・カードを変えて行くことで、高速にデータの読み出しと書き込みを可能にする制御回路。
【請求項3】
上記メモリ・ボードに装着するソケットをメモリ・ボードの両面、端部に配置し、メモリ・カードの装填と取り外しを容易にした構造。
【請求項4】
各ソケット毎の近傍に配置したLEDランプと制御回路及び診断のためのソフトウエアによって、ソケットに装填されたメモリ・カード各々の正常動作を確認する機能。
【請求項5】
上記、メモリ・カードを装填したメモリ・ボードを複数集めて一つの基板上に装填し、メモリ・ボードのメモリ容量の総合計を一つの巨大なメモリとして使用できるようにするためのメモリ・ベース・ボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−159267(P2011−159267A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36607(P2010−36607)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(510048990)株式会社アジャイル・パッチ・ソリューションズ (2)
【出願人】(510049377)株式会社セルコン・テクノロジー (1)
【Fターム(参考)】