説明

可撓性ホース及びその製造方法

【課題】 接続相手部材との接続を容易かつ確実なものとできるような軟質接続部を有するような可撓性ホースを提供する。そのようなホースを高品質で効率的に製造する。
【解決手段】 可撓性ホース壁11と、螺旋状補強体12とを有する可撓性ホース1において、可撓性ホースのホース端部を除いたホース中央部分aにおいては、螺旋状補強体12aがホース壁11からホース外側に突出するよう、第1の断面形状に設けられる一方で、可撓性ホースの少なくとも一方のホース端部bにおいては、螺旋状補強体12bが第2の断面形状に設けられる。第2の断面形状は、第1の断面形状と比べホース半径方向の高さが低く、かつ、螺旋状補強体のホース内周側部分がホース壁と接合される部分の形状が、第1の断面形状と第2の断面形状で実質的に同じとされて、第2の断面形状が、実質的に第1の断面形状からホース外周側の部分を除去した形状とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有するホースに関する。特に、螺旋状の補強体を備えると共に、可撓性ホースのホース端部に、管継手などとの接続に適した軟質部分を有する可撓性ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性ホースはさまざまな用途に使用されている。中でも、螺旋状の補強体を備えるホースは、ホースのつぶれにくさと、ホースの可撓性のバランスがよく、汎用されている。こうした可撓性ホースは、管継手などの他の部材(相手部材)に接続されて使用される。相手部材は硬質の部材であることが多いため、可撓性ホースを拡径しながら押し込むことが多い。その場合、ホースに螺旋状の補強体が備えられていると、ホースの拡径変形が抑制されるため、ホースを接続部材に挿入する作業が難しくなるという問題があった。
【0003】
そのような問題を解決する技術として、可撓性ホースの端部において、螺旋状補強体の形状を変化させ、ホースの拡径変形が抑制されにくい軟質の接続部を形成する技術が公知である。
例えば、特許文献1には、管壁に螺旋状に一体化される螺旋状補強芯を、管端部において線径を細くした合成樹脂製管が開示されており、そのような合成樹脂製管を、螺旋状補強芯を押出成形する際の押出圧力を調整することにより製造することが開示されている。そして、当該合成樹脂製管によれば、管の接続が容易となり、バンドで固定する際にもバンドの締め付け力が有効に働いて確実強固に管を固定できることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2にも、同様に、螺旋状突条を備える可撓管の一端を、筒状の軟質継手部として、その軟質継手部には螺旋突条と連続した薄肉で小幅の細幅帯材が螺旋状に設けられることが開示され(特許文献2の[0026])、そのような細幅帯材が押出ノズルから押出される硬質樹脂製帯状材の幅及び厚みを減少させて極薄の細幅帯材に成形することが開示されている(特許文献2の[0034])。そして当該可撓管においても、細幅帯材が設けられた軟質継手部が、硬質な相手部材への挿入操作を安易かつ確実なものとできることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭47−6532号公報
【特許文献2】特開2009−103243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献に記載された技術においては、可撓性ホースの一般部分(ホース長さの中央部分)と接続部分(ホース端部)とで、螺旋状補強体が押出成形される断面を変化させて(例えば押出圧力や押出速度を変化させて螺旋状補強体を形成し)所望の可撓性ホースを得るものであった。そのため、押出される螺旋状補強体の形状の安定性や、ホースへの接合一体化の条件が安定せず、成形される可撓性ホースの品質が安定しない、あるいは、ホースの成形速度を上げることができず、ホース製造の経済性が悪くなるといった問題が生ずることが判明した。
【0007】
例えば、螺旋状補強体とホース本体を互いに熱溶着させる可撓性ホースにおいては、ホース端部となる部分で螺旋状補強体を薄肉化したり小径化すると、補強体となるべく押出された線材がホース本体に捲回される前に、線材の温度が下がってしまい、ホース本体にうまく溶着しないといった品質上の問題が生ずるおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、ホースが接続される相手部材との接続を容易かつ確実なものとできるような軟質接続部を有するような、可撓性ホースを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、そのような可撓性ホースの製造品質を高め、効率的に製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、鋭意検討の結果、可撓性ホースの製造の際に、螺旋状補強体は一定の断面のままで形成し、ホース壁から突出させて一体化させた上で、ホース端部の軟質接続部としたい部分において、螺旋状補強体の少なくともホース外周側部分を切除して螺旋状補強体の断面を減少させて、可撓性ホースを得ると、上記目的の少なくとも1つを達成できることを知見し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、可撓性を有するホース壁と、螺旋状補強体とを有する可撓性ホースであって、螺旋状補強体は、ホースに螺旋状に一体化されており、可撓性ホースのホース端部を除いたホース中央部分においては、螺旋状補強体がホース壁からホース外側に突出するよう、第1の断面形状に設けられる一方で、可撓性ホースの少なくとも一方のホース端部においては、螺旋状補強体が第2の断面形状に設けられており、第2の断面形状は、第1の断面形状と比べホース半径方向の高さが低く、かつ、螺旋状補強体のホース内周側部分がホース壁と接合される部分の形状が、第1の断面形状と第2の断面形状で実質的に同じとされて、第2の断面形状が、実質的に第1の断面形状からホース外周側の部分を除去した形状とされている可撓性ホースである(第1発明)。
【0011】
また、本発明は、ホース成形軸上で可撓性条帯を螺旋状に捲回して、可撓性を有するホース壁を形成する第1工程、半溶融状態で押出成形された樹脂製の線材を、形成されたホース壁の外周にもしくは形成されつつあるホース壁に埋入されるように、第1の断面形状で螺旋状に捲回して、ホース外側に突出する螺旋状補強体を形成しながらホース壁に一体化する第2工程、により、螺旋状補強体を一体化した可撓性ホースを製造し、上記工程により得られる可撓性ホースにおいて、ホース長さ方向の所定の区間で、螺旋状補強体のホース外周側の部分を切除し、その区間において螺旋状補強体を第2の断面形状とする第3の工程、第3の工程に引き続いて、少なくとも螺旋状補強体が第2の断面形状とされた区間において、可撓性ホースを切断して、少なくとも一方のホース端部付近における螺旋状補強体が第2の断面形状とされた可撓性ホースを得る第4の工程、を備える可撓性ホースの製造方法である(第2発明)。
【0012】
第2発明においては、第1工程及び第2工程で形成された可撓性ホースがホース成形軸から取り外される前に、第3工程を行うことが好ましい(第3発明)。さらに、第3発明においては、第2工程で形成一体化された螺旋状補強体が冷える前に、ホース成形軸上で第3工程を行うことが好ましい(第4発明)。
【0013】
また、本発明は、ホース成形軸上で可撓性条帯を螺旋状に捲回して、可撓性を有するホース壁を形成する第1工程、半溶融状態で押出成形された樹脂製の線材を、形成されたホース壁の外周にもしくは形成されつつあるホース壁に埋入されるように、所定の断面形状で螺旋状に捲回して、ホース外側に突出する螺旋状補強体を形成しながらホース壁に一体化する第2工程、により、螺旋状補強体を一体化した可撓性ホースを製造し、上記工程により得られる可撓性ホースにおいて、ホース長さ方向の所定の区間で、螺旋状補強体を切除し、その区間においてホース壁が螺旋状補強体を備えないものとする第3の工程、第3の工程に引き続いて、少なくとも螺旋状補強体が備えられない区間において、可撓性ホースを切断して、少なくとも一方のホース端部付近において螺旋状補強体が備えられていない可撓性ホースを得る第4の工程を備える可撓性ホースの製造方法である(第5発明)。
【発明の効果】
【0014】
本発明の可撓性ホース(第1発明)によれば、ホース端部において螺旋状補強体の高さや断面が小さくされているので、ホースが拡径変形しやすい軟質接続部となって、ホースが接続される相手部材とホース端部の接続を容易かつ確実なものとできるという効果が得られる。
【0015】
また、第2発明の可撓性ホースの製造方法によれば、第1発明の可撓性ホースを高い品質で、かつ高い効率で製造できる。
さらに、第3発明のように、形成された可撓性ホースがホース成形軸から離される前に第3工程を行うようにした場合には、ホース成形軸により回転駆動されている可撓性ホースの回転を利用して、螺旋状補強体の切除作業を簡単な切除装置によって効率的に行うことができる。
さらに、第4発明のように、螺旋状補強体が冷える前に、ホース成形軸上で第3工程を行うようにした場合には、螺旋状補強体が暖かく柔らかいため、切除作業が行いやすくなると共に、ホースの内側がホース成形軸で支えられているため、螺旋補強体の切除を正確に行うことができ、ホース製造の品質や効率性が高められる。
【0016】
また、第5発明の可撓性ホースの製造方法によれば、可撓性ホース端部の軟質接続部を特に柔軟性に富むものとでき、ホース端部の接続を、より容易かつ確実なものとできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明第1実施形態の可撓性ホースの一部断面図である。
【図2】第1実施形態の可撓性ホースの製造工程を示す模式図である。
【図3】第1実施形態の可撓性ホースの製造工程を示す模式図である。
【図4】第1実施形態の可撓性ホースの製造工程のカット工程を示す模式図である。
【図5】本発明第2実施形態の可撓性ホースの一部断面図である。
【図6】本発明第3実施形態の可撓性ホースの一部断面図である。
【図7】本発明第4実施形態の可撓性ホースの一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。図1には、本発明の第1の実施形態である可撓性ホース1を示す。図1においては、ホースの上側半分を断面図として示している(図5、図6、図7も同様である)。
【0019】
可撓性ホース1は合成樹脂製のダクトホースであり、例えば空調用の配管として使用される。可撓性ホース1は、可撓性を有する円筒状のホース壁11と螺旋状補強体12とにより構成される。必要に応じて断熱層や消音層などの他の層や部材などを備えさせても良い。
【0020】
ホース壁11は、樹脂や繊維集合体などにより構成されるホースの本体となる円筒状の部分であり、ホース壁11単独では伸縮性があり、ホースの伸縮・曲げといった変形を許容するほか、径方向にも拡径変形可能となっている。
【0021】
ホース壁11を構成する材料や素材としては、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーや熱硬化性樹脂(特にゴム)のうち、柔軟性・伸縮性を有する材料が使用でき、典型的には、軟質塩化ビニル樹脂や、酢酸ビニル樹脂(EVA)、オレフィン系熱可塑性エラストマー、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などが例示される。あるいは、不織布や織布などによりホース壁11を構成しても良い。また、ホース壁11はその伸縮性が過度に制限されない範囲であれば、メッシュ状の補強ネットや複数条の螺旋状に配糸される補強糸を備えるものであっても良い。
【0022】
可撓性ホース1は螺旋状補強体12を備える、螺旋状補強体12は所定の断面形状を有する線状の部材であって、ホース壁11に所定のピッチで螺旋状に一体化されており、ホース壁の円筒形状を維持してホースのつぶれに抵抗する働きをする。本実施形態においては、螺旋状補強体12はホース壁11の外周面に溶着により一体化されている。
【0023】
螺旋状補強体12を構成する材料は熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの樹脂材料である。補強効果を高める上で、ホース壁の材料よりも硬質な材料を使用することが好ましい。また、必須ではないが、ホース壁の材料と接着・特に融着可能な材料を選択することが好ましい。典型的には、硬質塩化ビニル樹脂や、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、硬質ゴムなどが例示される。
【0024】
本実施形態においては、ホース壁11は軟質塩化ビニル樹脂により、螺旋状補強体12は硬質塩化ビニル樹脂により形成されている。
【0025】
螺旋状補強体12は、ホース全体にわたって連続的に設けられているが、ホースの端部に設けられた軟質区間(即ち軟質接続部)bとそれ以外の部分(即ちホース中央部)aとで、互いに異なる断面形状を有する。ここで、軟質区間bとは、可撓性ホース12が空調機器などのホース接続口に接続される際に挿入・固定しやすいように、螺旋状補強体の断面が減少させられた区間である。典型的には、ホース末端から螺旋状補強体の1〜5巻き(1〜5ピッチ)程度の部分が軟質区間(軟質接続部)bとされる。本実施形態においては、ホースの両端が軟質区間bとされているが、ホースの使用形態によっては、後述する第2実施形態のように、軟質区間bはホースの片側だけに設けられていても良い。
【0026】
ホース中央部aにおいては、螺旋状補強体12aは、ホース壁からホース外側に突出するように形成一体化されている。そして、ホース端部bにおいては、螺旋状補強体12bはホース外側へあまり突出していない。
【0027】
ホース中央部aにおける螺旋状補強体12aの断面形状を第1の断面形状、ホース端部bにおける螺旋状補強体12bの断面形状を第2の断面形状として、断面形状の違いを詳述する。本実施形態では、第1断面形状と第2断面形状は、共に矩形状である。第2断面形状は、第1断面形状と比べホース半径方向の高さが低く、ホース軸方向に沿うよう偏平形状となっている(すなわち、螺旋状補強体の断面において、半径方向高さをH、ホース軸方向長さ(幅)をWとした際に、Hの値やH/Wの値が、第1断面形状よりも第2断面形状の方が小さい)。また、第2断面形状は、第1断面形状と比べ、断面積が少ない。一方で、第2断面形状は、ホース軸方向に沿う長さ(幅)が、第1断面形状と実質的に同じである。また、第2断面形状も第1断面形状も、螺旋状補強体がホース壁に一体化される(本実施形態においては溶着)部分、すなわち螺旋補強体のホース内周側の部分の形状が実質的に同じ(本実施形態においては共に直線状)である。
【0028】
すなわち、ホース端部(軟質接続部)bでの螺旋補強体12bが有する第2の断面形状は、第1の断面形状の螺旋状補強体12aを一旦ホース壁外周に一体化して、その後、螺旋状補強体のホース外周側の部分を切除して取り除いたような形状となっており、第2断面形状は実質的に第1の断面形状からホース外周側の部分を除去した形状となっている。
【0029】
ここで、第1の断面形状のホース径方向の高さを1とした場合に、第2の断面形状のホース径方向の高さは、代表的には0.02〜0.3程度とされるが、本発明はこの範囲には限定されるものではない。
【0030】
上記実施形態の可撓性ホース1の製造方法の例について、図2ないし図4を参照しながら説明する。なお、これらの図においては、ホースは回転駆動されるホース成形軸99上でスパイラル成形され、形成されたホースは回転しながら図の右側へと送られていく。
まず、公知のホース成形軸上で可撓性を有するホース壁11を形成する第1工程を説明する。ホース壁11を構成する樹脂材料(例えば軟質塩化ビニル樹脂)を、所定幅(例えばホース成形ピッチの2倍)のテープ状に、半溶融状態で押出す。押出されたテープ素材T1を公知のホース成形軸99に供給し、テープ素材T1の両側縁が互いにオーバーラップして重なり合って円筒状をなすように、螺旋状に捲回する。捲回された半溶融状態のテープ素材T1は重ね合わせられた部分が溶着して一体となり、円筒状のホース壁11が形成される。
【0031】
次に、螺旋状補強体をホース壁に一体化する第2工程を行う。螺旋状補強体を構成する樹脂材料(例えば硬質塩化ビニル樹脂)を、半溶融状態で、上記第1の断面形状となるように押し出す。そして、押出された半溶融状態の線材S1を、第1工程を経てホース成形軸上に円筒状のホース壁11が形成された部分に螺旋状に捲回し、螺旋状補強体12としてホース壁11に一体化する。一体化の手段は接着剤等を用いた接着や、溶着等により行うことができる。
【0032】
以上の第1工程と第2工程がホース成形軸99上で引き続いて行われ、螺旋状補強体12を螺旋状に備える可撓性ホースが連続して製造される。なお、第1工程及び第2工程においてテープ素材T1や線材S1の押し出しは、一定の断面(第1断面形状)、および一定の速度で行われ、ホース成形軸への捲回や接着・溶着も一定の条件で安定的に行われる。その結果、形成されるホースも、ホース長さ方向に均質なホースとなる。
【0033】
第2工程を経て螺旋状補強体12がホース壁11に一体化された後に、所定の箇所(区間)で螺旋状補強体の外周側を切除する第3工程を行う。具体的には、連続的に製造されるホースにおいて、後にホース端部の軟質区間(軟質接続部)となるべき部分b’において、螺旋状補強体の外周部を切除する。切除は、例えば、図2に示すように、形成されたホースが未だホース成形軸上にある位置において、回転駆動されているホースの螺旋状補強体12の部分にカッター92を押し当てて、ホース外周側の部分を除去する。カッター92は、カッターの位置をホース半径方向に調整可能なカッター制御装置91に取り付けられていて、図2に示したように、カッター92がホース壁外周に近接した位置に制御されると、カッター92により、螺旋状補強体の外周側部分が切り離されて切りくずSRとなり、その部分b’では螺旋状補強体の高さが低くなり、その部分の螺旋状補強体12bは上述した第2の断面形状を呈するようになる。この部分b’は後にホース長さ方向に分断されて、ホース端部の軟質区間(軟質接続部)bとなる。
【0034】
また、図3に示したように、カッターが螺旋状補強体から半径方向外側に離れた位置に調整されると、螺旋状補強体12は切除されること無く、第1の断面形状のままで、ホース壁に一体化される。
【0035】
従って、ホースを連続成形しながら、カッター92の径方向位置を切り替えると、螺旋状補強体が第1の断面に形成された区間a(図3に示した工程による)と、螺旋状補強体が第2の断面に形成された区間b’(図2に示した工程による)とを交互に備えるホースを連続的に製造できる。
【0036】
第3工程の切除作業は、螺旋状補強体が冷えて硬化する前に行うことが好ましい。螺旋状補強体の樹脂材料の温度が高い方が、補強体が柔らかく、カッター92による切除作業がしやすいからである。なお、螺旋状補強体が冷えてしまった後でも適切なカッターや樹脂用フライスなどを用いれば第3工程を行うことができるので、第3工程を螺旋状補強体が冷える前に行うことは必須ではない。
【0037】
また、必須ではないが、形成されたホースがホース成形軸から取り外される前(切り離される前)に第3工程を行うことが好ましい。ホースがホース成形軸から取り外される前であれば、ホースはホース成形軸により螺旋状に回転駆動されている。この螺旋状の回転駆動を利用すれば、カッター92を一箇所に固定しているだけで、螺旋状補強体の外周側を切除することができ、効率的であると共に、切断装置(例えばカッターの制御装置)も簡単なものとできる。
【0038】
また、必須ではないが、形成されたホースがホース成形軸上にある間に第3工程を行うことが好ましい。ホースがホース成形軸上にあれば、即ち、カッター92とホース成形軸99とが、ホース壁を挟んで対向するように設けられれば、カッター92で螺旋状補強体を切除する際に、ホース成形軸がホース内周面を支えることになり、ホース壁の位置が安定して、螺旋状補強体の第2の断面形状が正確に与えられる。例えば、カッター92がホース壁まで切除してしまったり、軟質区間(軟質接続部)bでの補強体断面の径方向高さがばらついたりすることが、未然に防止され、得られるホースの品質を高める上で好ましい。
【0039】
第1工程から第3工程を経るのと並行して、あるいは第1工程から第3工程を経た後に、必要に応じて、ホースを冷却(樹脂材料が熱可塑性樹脂の場合)あるいは加熱(樹脂材料が熱硬化性樹脂(特にゴム)の場合)し、ホース壁11や螺旋状補強体12の形状を固定する。本実施形態においては、第3工程の後で、冷却水噴霧器93により冷却水をホース外周面に吹きかけてホースを冷却している。冷却や加熱は、その他の公知の技術手段を利用しても行うことができる。
【0040】
以上の工程により、螺旋状補強体が第1の断面に形成された区間(区間a)と、螺旋状補強体が第2の断面に形成された区間(区間b’)とを交互に備えるホースが連続的に製造されるので、以下の第4工程により、このホースを長さ方向に切断(分断)し、所定長のホースを得る。第4工程では、図4に示すように、螺旋状補強体が第2の断面に形成された区間b’で、好ましくはその中央部で、ホースカッター装置94によってホースを長さ方向に分断(図中の破線に沿うように切断)する。すると、切断した箇所はホース端部となって、ホース端部では螺旋状補強体が第2の断面形状とされた軟質区間(軟質接続部)bとなって、上記第1実施形態の可撓性ホース1が得られる。
【0041】
なお、第3工程においてカッターを上下させるタイミングを調整することによって、螺旋状補強体が第1の断面に形成された区間(区間a)や、螺旋状補強体が第2の断面に形成された区間(区間b’)の長さを調整することができる、この調整により所望する長さの可撓性ホースが製造できる。
【0042】
また、上記第3工程(切除工程)では、ホース長さ方向の所定の区間で螺旋状補強体12を完全に切除するようにしてもよく、そのようにすれば、その区間においてホース壁が螺旋状補強体を備えないような可撓性ホースが得られる。その区間を可撓性ホースの軟質区間(軟質接続部)とするようにすれば、軟質部の柔軟性が特に高い可撓性ホースが得られ、ホースの接続操作性やホース接続の確実性を高める上で特に好ましい。
【0043】
本発明の作用及び効果について説明する。
上記第1実施形態の可撓性ホース1によれば、ホース端部に設けられた軟質区間(軟質接続部)bの部分における螺旋状補強体12bの断面(第2の断面形状)が、ホース中央部aにおける螺旋状補強体12aの断面(第1の断面形状)と比較して小さくされている。即ち、高さが低く、断面積が小さくされているので、軟質区間bにおけるホースの拡径変形が比較的容易とされて、可撓性ホースが接続される相手部材とホース端部の接続を容易かつ確実なものとできる。
【0044】
そして、可撓性ホース1では、軟質区間(軟質接続部)bにおける螺旋状補強体12bの第2の断面形状は、第1の断面形状と比べホース半径方向の高さが低く、螺旋状補強体のホース内周側部分がホース壁と接合される部分の形状が実質的に第1の断面形状における形状と同じ形状とされて、実質的に第1の断面形状からホース外周側の部分を除去した形状とされている。このような形状は、上記の製造方法により効率的かつ高い品質で製造できる。
【0045】
また、上記製造方法によれば、螺旋状補強体となるべく押出装置から押出される線材S1は、一定の断面で押出され、一定の断面(第1の断面形状)を維持しながらホース壁に一体化される。そのため、ホース壁や螺旋状補強体が形成され溶着(接着)一体化される際の形状や条件も、一連の製造工程中で一定に維持される。従って、押出された線材の断面積を変化させながらホースに一体化する従来の製法のような、製造条件の変化が生じない。そして、本発明の製造方法によれば、第1の断面形状と第2の断面形状とで、螺旋状補強体のホース内周側部分がホース壁と接合される部分の形状が実質的に同一になる。その結果、例えば、ホース壁と螺旋状補強体の溶着の程度や強度などの品質が安定する。また、製造品質が安定するので、ホース成形の速度を高めて、ホースの製造効率を高めることもできる。
【0046】
また、上記製造方法において、形成された可撓性ホースがホース成形軸から離される前に、第3工程を行うようにすれば、ホース成形軸によって螺旋状に回転駆動されるホースの回転を利用して、簡単な切除装置により、効率的に第3工程が行える。
【0047】
また、上記製造方法において、形成一体化された螺旋状補強体が冷える前に、ホース成形軸上で第3工程を行うようにすれば、第3工程における螺旋補強体の切除が効率的に行いうると共に、切除位置が正確になり、ホースの品質が向上する。
【0048】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分については、その詳細な説明を省略する。また、以下に示す実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0049】
図5には、本発明の第2実施形態の可撓性ホース2を示す。可撓性ホース2も空調などに用いられるダクトホースである。本実施形態においては、ホース壁21は、伸縮性を有する不織布素材をテープ状にして、その両側縁部が互いに突き合わせられるように螺旋状に捲回し、突合せ部分にまたがるように配置される螺旋状補強体22によって、その突合せ部分をつなぎ合わせるようにして構成されている。螺旋状補強体22は、ホース壁に溶着されている。
【0050】
このように、ホース壁を構成する材料・素材は特に限定されず、伸縮性や可撓性を有するホース壁を構成可能な材料や素材であれば、広く採用可能である。また、ホース壁形成の形態は、特に限定されず、第1実施形態のように幅広のテープをオーバーラップさせて形成しても良いし、第2実施形態のようにテープをつき合わせるように形成しても良い。
【0051】
また、本実施形態においては、片側のホース端部のみが軟質区間(軟質接続部)bとされて、この区間で螺旋状補強体が第2の断面形状とされている。このように、螺旋状補強体が第2の断面形状とされた軟質区間(軟質接続部)bは、必ずしもホースの両側の端部に設けなくても良く、必要に応じ、片側、もしくは両側に設ければよい。
【0052】
本実施形態のように、軟質区間を可撓性ホースの片側の端部のみに設けたい場合には、上記第4工程で、螺旋状補強体が第1の断面とされた部分でもホースを長さ方向に切断するようにすれば、このようなホースを簡単に製造できる。
【0053】
図6には、本発明の第3実施形態の可撓性ホース3を示す。可撓性ホース3は排水用途や給水用途などに用いられるサクションホースである。本実施形態においては、ホース壁31が比較的低硬度(例えばデュロAで55度)のNBRで、螺旋状補強体32が比較的高硬度(例えばデュロAで90度)のNBRで構成されている。このように、ホース壁や螺旋状補強体を構成する材料はゴムのような熱硬化性樹脂であっても良い。
【0054】
そして、本実施形態においては、ホース中央部aでは、螺旋状補強体32aは、ホース壁の外周面側に、ホース壁31から突出するように設けられると共に、ホース壁の一部を構成する薄肉のゴムシートによりその外周側表面を覆われて一体化されており、螺旋状補強体32aは、ホース壁外周側に埋入されている。そして、ホース端部の領域bでは、螺旋状補強体の外周側が、薄肉ゴムシート部分と共に切除されており、螺旋状補強体の内周側部分だけが、ホース壁31に一体化されている。
【0055】
本実施形態によっても、第1実施形態や第2実施形態のホースと同じく、ホース端部を相手部材に接続する操作が容易かつ確実なものとでき、その製造も効率的に高い品質で行える。すなわち、ホース壁への螺旋状補強体の一体化は、第1実施形態や第2実施形態のように、ホース壁の外周面に螺旋状補強体が捲回一体化される形態のものであってもよく、本実施形態のように、螺旋状補強体が、ホース壁の外周面側に埋入されたような形態のものであっても良い。本実施形態のように螺旋補強体をホース本体に埋入して一体化する場合は、ホース壁の製造工程において、ホース壁を構成するテープ材料が重ね合わせられる部分に、螺旋状補強体となる線材を供給してやればよい。
【0056】
また、本実施形態では、ホース中央部aで、螺旋状補強体32aは円形断面に形成されている。本発明において、螺旋補強体の第1の断面は、ホースに求められる機能などに応じて適宜定めればよく、矩形状、逆T字状、逆ハット状などであっても良い。
【0057】
なお、本実施形態のように、ホース壁や螺旋状補強体がゴムなどにより形成される場合には、その製造工程の第1工程又は第2工程において、加熱して架橋するので、第3工程(螺旋補強体の部分的切除工程)は、この架橋工程の少し後で行うことが、品質の安定性及び製造の効率性の観点から好ましい。
【0058】
図7には、本発明の第4実施形態の可撓性ホース4を示す。可撓性ホース4は圧送用途などに用いられる産業用ホースである。本実施形態においては、ホース壁41が積層構造とされて、ホース壁の内層及び外層はオレフィン系熱可塑性エラストマーにより構成されると共に、ホース壁の内層と外層の間には多数本の補強糸が相互に交差する複数条の螺旋状に埋入されている。また、螺旋状補強体42は、ポリプロピレン樹脂により形成され、ホース壁41の外周に溶着されて一体化されている。また、螺旋状補強体42は、ホース中央部aにおける第1の断面形状が、ホース半径方向に長い長円形状(または楕円形状)とされている。
【0059】
本実施形態でも第1実施形態と同様の作用効果を発揮できる。また、本実施形態のように、ホース中央部aにおける螺旋補強体の第1の断面形状を、ホース半径方向に長い形状(例えば長円形状や長方形状)とすれば、第3工程での螺旋補強体の切除工程で、簡単に螺旋補強体の外周側の大部分を除去することができ、螺旋補強体の第1の断面と第2の断面の断面変化を大きくしやすい。従って、ホース中央部では螺旋補強体により十分な補強効果を得ながら、ホース端部の軟質区間(軟質接続部)bではホースを柔軟なものとしやすくなるという効果も得られる。
【0060】
また、本発明の可撓性ホースの利用分野は、上記実施形態で説明した分野や用途には限定されず、比較的硬質のホース接続口(相手部材)に可撓性ホースを接続するのであれば、他の技術分野や用途にも応用できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の可撓性ホースは、空調用のダクトホースなどといった多彩な用途に使用できて産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0062】
1 可撓性ホース
a ホース中央部
b ホース端部(軟質区間)
11 ホース壁
12 螺旋状補強体
12a 螺旋状補強体(第1断面部分)
12b 螺旋状補強体(第2断面部分)
T1 テープ素材
S1 線材
91 カッター制御装置
92 カッター
93 冷却液噴霧器
94 ホースカッター
99 ホース成形軸
2,3,4 可撓性ホース
21,31,41 ホース壁
22,32,42 螺旋状補強体
22a,32a,42a 螺旋状補強体(第1断面部分)
22b,32b,42b 螺旋状補強体(第2断面部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するホース壁と、螺旋状補強体とを有する可撓性ホースであって、
螺旋状補強体は、ホースに螺旋状に一体化されており、
可撓性ホースのホース端部を除いたホース中央部分においては、螺旋状補強体がホース壁からホース外側に突出するよう、第1の断面形状に設けられる一方で、可撓性ホースの少なくとも一方のホース端部においては、螺旋状補強体が第2の断面形状に設けられており、
第2の断面形状は、第1の断面形状と比べホース半径方向の高さが低く、
かつ、螺旋状補強体のホース内周側部分がホース壁と接合される部分の形状が、第1の断面形状と第2の断面形状で実質的に同じとされて、
第2の断面形状が、実質的に第1の断面形状からホース外周側の部分を除去した形状とされている可撓性ホース。
【請求項2】
ホース成形軸上で可撓性条帯を螺旋状に捲回して、可撓性を有するホース壁を形成する第1工程、
半溶融状態で押出成形された樹脂製の線材を、形成されたホース壁の外周にもしくは形成されつつあるホース壁に埋入されるように、第1の断面形状で螺旋状に捲回して、ホース外側に突出する螺旋状補強体を形成しながらホース壁に一体化する第2工程、
により、螺旋状補強体を一体化した可撓性ホースを製造し、
上記工程により得られる可撓性ホースにおいて、ホース長さ方向の所定の区間で、螺旋状補強体のホース外周側の部分を切除し、その区間において螺旋状補強体を第2の断面形状とする第3の工程、
第3の工程に引き続いて、少なくとも螺旋状補強体が第2の断面形状とされた区間において、可撓性ホースを切断して、少なくとも一方のホース端部付近における螺旋状補強体が第2の断面形状とされた可撓性ホースを得る第4の工程、
を備える可撓性ホースの製造方法。
【請求項3】
第1工程及び第2工程で形成された可撓性ホースがホース成形軸から取り外される前に、第3工程を行う請求項2に記載の可撓性ホースの製造方法。
【請求項4】
第2工程で形成一体化された螺旋状補強体が冷える前に、ホース成形軸上で第3工程を行う請求項3に記載の可撓性ホースの製造方法。
【請求項5】
ホース成形軸上で可撓性条帯を螺旋状に捲回して、可撓性を有するホース壁を形成する第1工程、
半溶融状態で押出成形された樹脂製の線材を、形成されたホース壁の外周にもしくは形成されつつあるホース壁に埋入されるように、所定の断面形状で螺旋状に捲回して、ホース外側に突出する螺旋状補強体を形成しながらホース壁に一体化する第2工程、
により、螺旋状補強体を一体化した可撓性ホースを製造し、
上記工程により得られる可撓性ホースにおいて、ホース長さ方向の所定の区間で、螺旋状補強体を切除し、その区間においてホース壁が螺旋状補強体を備えないものとする第3の工程、
第3の工程に引き続いて、少なくとも螺旋状補強体が備えられない区間において、可撓性ホースを切断して、少なくとも一方のホース端部付近において螺旋状補強体が備えられていない可撓性ホースを得る第4の工程、
を備える可撓性ホースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−53686(P2013−53686A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192629(P2011−192629)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】