説明

可燃性ガス検出装置

【課題】センサーの姿勢差による測定誤差を可及的に低減すること。
【解決手段】被検ガスと接触して電気信号を発生する検出領域が基板に形成されたセンサー10と、基板の姿勢を検出する姿勢検出手段20と、センサー10の姿勢差による補正データを姿勢検出手段20からの信号により読み出し、センサーからの検出信号を補正する信号処理手段30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性ガスと触媒層の触媒反応による発熱を電気信号として出力するガス検出センサーを用いた可燃性ガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の普及に伴い、水素等の可燃性ガス用のセンサーとして、特許文献1に記載されているように基板に、可燃性ガスとの接触により発熱する触媒層と、発熱部と、触媒層での温度変化を検出する検出部とを形成したものが提案されている。
このセンサーは、発熱部により触媒層を可燃性ガスとの反応が可能な程度に加熱する必要があり、かつ発熱部と触媒層とが平面的に異なる位置に配置されているため、基板の姿勢により対流により触媒層に到達する熱量が変化し、測定誤差を生じるという問題がある。
すなわち、センサーを構成する基板を垂直にするとともに、上方となる部分を変化させると、基準ガス、例えば基準エアに対するセンサーの出力、及び水素1000ppmの基準ガスに対するセンサーの出力が図5(イ)、(ロ)に示したように変化する。
【特許文献1】特開2003-156461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであってその目的とするところは、センサーの姿勢差による測定誤差を可及的に低減することができる可燃性ガス検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような課題を達成するために本発明においては、被検ガスと接触して電気信号を発生する検出領域が基板に形成されたセンサーと、前記基板の姿勢を検出する姿勢検出手段と、前記センサーの姿勢差による補正データを前記姿勢検出手段からの信号により読み出し、前記センサーからの検出信号を補正する信号処理手段とを備える。
【発明の効果】
【0005】
センサーのの姿勢に対応した信号により補正データを読み出してセンサーのガス濃度信号を補正することができ、姿勢差による誤差を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
そこで以下に本発明の詳細を実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明に使用するセンサーの一実施例を示すものであって、センサー10は、電気絶縁性材料の基板11の表面に蒸着などにより直線状に熱電変換素子部12を形成し、その表面の一端側に偏した領域に可燃性ガスを酸化させるための酸化触媒層13を形成して検出部が構成されている。
検出部の両側には検出部の酸化触媒層13により被検出ガスを酸化反応させるのに適した温度に加熱するためのヒータ14、14が設けられている。
【0007】
熱電変換部12の両端は、リード部を介して信号端子15、15’に、またヒータ14、14は導電パターンにより直列に接続された上でリード部を介して給電端子16、16’に接続されている。
【0008】
このように構成されたセンサー10は、給電端子16に通電してヒータ14、14を所定の温度に加熱すると、ヒータ14のジュール熱により酸化触媒層13がその表面で可燃性ガスと酸化反応するのに適した温度に加熱される。
【0009】
この状態で、水素などの可燃性ガスが酸化触媒層13に接触した場合には可燃性ガスが酸化触媒層13の表面で接触燃焼し、熱電変換部12の一端部、つまり酸化触媒層13の領域の温度が上昇して他端部、つまり信号端子15’の領域との間に温度差が生じる。この温度差は、可燃性ガスの濃度に比例し、かつ起電力は温度差に比例するから信号端子15、15’から後述する信号処理部に出力させることにより可燃性ガスの濃度を知ることができる。
【0010】
なお、上述の実施例においては、水素を検出する場合について説明したが、触媒の種類を選択することにより、炭化水素など他の可燃性ガスを同様に検出することができる。
【0011】
図2は、上述のセンサーを使用した可燃性ガス検出器の一実施例を示すものであって、センサー10と同一平面をなす基板11には姿勢検出装置20が設けられている。
【0012】
姿勢検出装置20は、中心部に転動体21を移動可能に保持する凹部22と、この凹部22から所定の距離をおいて放射方向に一定の位置に転動体21を検出する検出部25〜28を配置し、上面をカバー24により転動体21を移動可能に封止して構成されている。
これらの検出部25〜28のそれぞれには図4に示したように基準抵抗R1〜R4が接続されていて、いずれかの検出部25〜28に転動体21が接触したとき、検出部25〜28により選択された基準抵抗R1〜R4の値により位置、つまり姿勢を検出することができる。
【0013】
センサー10からの出力と姿勢検出装置からの出力は、信号処理手段30に出力し、姿勢差を補正されて濃度信号として表示器に出力される。
【0014】
信号処理手段30は、センサー10の姿勢と、各姿勢によるセンサー出力の変動率との関係を予め調査して、センサー10の姿勢データにより変動率を読み出し可能に辞書形式で格納した補正率読み出し手段により構成されている。
【0015】
この実施例において、基板11が水平となるようにセンサー10を配置した場合には転動体21は凹部で静止する。またこの状態ではヒータ14、14に加熱された気体は熱電変換部12に接触することなく上昇し、熱電変換部12は均一に加熱される。
【0016】
この状態では信号処理手段30は、転動体21が凹部22に位置してセンサー10が水平状態であることを検出し、姿勢差を補正することなく、測定信号を出力する。
【0017】
一方、基板11が水平から傾くと転動体21がこの姿勢に対応した位置に移動する。信号処理手段30は、姿勢検出装置20からの信号によりセンサー10の姿勢に応じた補正率を読み出し、センサー10からの信号を補正して測定信号を出力する。
【0018】
上述の実施例においては、転動体21によりセンサー10の姿勢を検出しているが、ジャイロなどその他の姿勢検出装置を使用しても同様の作用を奏することは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に使用するセンサーの一実施例を示す平面図である。
【図2】本発明の可燃性ガス検出装置の一実施例を示すブロック図である。
【図3】図(イ)、(ロ)は、それぞれ姿勢検出手段の一実施例を示す断面図と上面図である。
【図4】姿勢検出手段から姿勢信号を取り出すための回路を示す図である。
【図5】図(イ)、(ロ)は、センサーの姿勢による基準エア、及び基準の濃度のガスに対する出力の変動を示す線図である。
【符号の説明】
【0020】
10 センサー 11 基板1 12 熱電変換素子部 13 酸化触媒層 14 ヒータ 15、15’ 信号端子 16、16’ 給電端子 20 姿勢検出装置 21 転動体 22 凹部 25〜28 検出部 24 カバー24 R1〜R4 基準抵抗 30 信号処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検ガスと接触して電気信号を発生する検出領域が基板に形成されたセンサーと、前記基板の姿勢を検出する姿勢検出手段と、前記センサーの姿勢差による補正データを前記姿勢検出手段からの信号により読み出し、前記センサーからの検出信号を補正する信号処理手段とを備えた可燃性ガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−232656(P2007−232656A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57126(P2006−57126)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】