説明

台タイヤ製造方法及びタイヤ製造方法並びに台タイヤ

【課題】未加硫の台タイヤの加硫において、加硫不足や過加硫が生じることを抑制し、均一な加硫度の台タイヤを得ることが可能な台タイヤ製造方法、及び、当該台タイヤを用いたタイヤ製造方法並びに台タイヤを提供する。
【解決手段】トレッドゴムを貼着するトレッド領域を有する加硫済み台タイヤの製造方法であって、未加硫の台タイヤを加硫金型により外側から包囲し、台タイヤにおけるサイド領域を第1加熱手段により加熱し、サイド領域よりもタイヤ厚さが厚いトレッド領域を第2加熱手段により加熱し、第2加熱手段によってトレッド領域に与えられる熱量が、第1加熱手段によってサイド領域に与えられる熱量よりも少なくなるように加硫成型するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの基台となる台タイヤの製造方法に関し、特に、後工程においてトレッドが配設される台タイヤの製造方法及び該台タイヤ製造方法により製造された台タイヤを用いたタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、未加硫ケース(未加硫台タイヤ)及び未加硫トレッドからなる未加硫タイヤを同一の加硫金型内で加硫して製品タイヤとする一般的なタイヤ製造方法においては、タイヤの加硫度を均一にするために、タイヤの断面厚さが厚い部位には熱量を多く与え、薄い部分には熱量を少なく与える方法が提案されている。
しかしながら、タイヤは、トレッド領域とサイド領域の厚さの様に部位によって断面厚さが大きく異なるために、タイヤのある部位においては最適加硫度であっても、その他の部位においては加硫不足であったり過加硫であったりする懸念がある。そこで、タイヤの部位毎に加硫度を均一にするために、各部位に供給する熱源の配置や熱量の分布を繰り返し調整する必要がある。
また、近年タイヤの製造方法には、タイヤの踏面となるトレッドと、タイヤの基台となる台タイヤとを個別に製造し、台タイヤの外周面に未加硫のクッションゴムを介してトレッドを配設し、当該クッションゴムを加硫することによりクッションゴムを接着層としてトレッドと台タイヤとを一体にするタイヤの製造方法が提案されている。しかし、台タイヤの加硫度を均一化する方策は見出されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−035615号公報
【特許文献2】特開平8−174554号公報
【特許文献3】特開2005−238589号公報
【特許文献4】特開平10−193472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、未加硫の台タイヤの加硫において、加硫不足や過加硫が生じることを抑制し、加硫度が均一な台タイヤを得ることが可能な台タイヤ製造方法、及び、当該台タイヤを用いたタイヤ製造方法並びに台タイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の一般的なタイヤの製造方法に内在する部位毎に異なるタイヤ厚さに起因する加硫度のバラツキという問題点を踏まえ、発明者が鋭意検討した結果、タイヤ厚さが部位により大きく異なるタイヤの踏面となるトレッドと、タイヤの基台となる台タイヤとを個別に製造し、台タイヤの外周面に未加硫のクッションゴムを介してトレッドを配設し、当該クッションゴムを加硫することによりクッションゴムを接着層としてトレッドと台タイヤとを一体にするタイヤの製造方法について、加硫度が均一な台タイヤを得る方法を見出した。
前記課題を解決するための形態として、トレッドゴムを貼着するトレッド領域を有する加硫済み台タイヤの製造方法であって、未加硫の台タイヤを加硫金型により外側から包囲し、台タイヤにおけるサイド領域を第1加熱手段により加熱し、サイド領域よりもタイヤ厚さが厚い部分を含むトレッド領域を第2加熱手段により加熱し、第2加熱手段によってトレッド領域に与えられる熱量が、第1加熱手段によってサイド領域に与えられる熱量よりも少なくなるように加硫成型する形態とした。
本形態によれば、タイヤ厚さがサイド領域よりも厚いトレッド領域である台タイヤの加硫成型において、第2加熱手段によってトレッド領域に与えられる熱量が、第1加熱手段によってサイド領域に与えられる熱量よりも小さい熱量で加硫成型するが、トレッド領域に設けられた熱伝導部材を介して加硫熱量が熱伝導してゴムを加硫するため、トレッド領域の過加硫を防止でき、加硫度が均一な加硫済み台タイヤを得ることが可能となる。
また、他の形態として、第2加熱手段の加熱する温度を第1加熱手段の加熱する温度よりも低く設定する形態とした。
本形態によれば、第2加熱手段によってトレッド領域に与えられる温度が、第1加熱手段によってサイド領域に与えられる温度よりも低い温度で加硫成型するが、トレッド領域に設けられた熱伝導部材を介して加硫熱量が熱伝導してゴムを加硫するため、トレッド領域の過加硫を防止でき、加硫度が均一な加硫済み台タイヤを得ることが可能となる。
また、他の形態として、台タイヤに与えられる熱量をビード領域、サイド領域、トレッド領域の順に小さくする形態とした。
本形態によれば、台タイヤに与えられる熱量をビード領域、サイド領域、トレッド領域の順に小さくすることで、台タイヤの加硫度が均一となるように加硫成型することができる。
また、他の形態として、台タイヤに与えられる温度をビード領域、サイド領域、トレッド領域の順に低くする形態とした。
本形態によれば、台タイヤに与えられる温度をビード領域、サイド領域、トレッド領域の順に低くすることで、台タイヤの加硫度が均一となるように加硫成型することができる。
また、他の形態として、トレッド領域に、トレッドゴムを貼着するための台トレッドをタイヤ径方向最外側に設け、台トレッドを含むトレッド領域の厚さがサイド領域の厚さよりも厚い形態とした。ここで、トレッド領域にトレッドゴムを貼着するためにタイヤ径方向最外側に設けたゴムを以下、台トレッドと呼ぶ。
本形態によれば、トレッド領域には、幅の異なるベルトを積層したベルト層が含まれるため、幅の異なるベルトにより生じる段差をなくしてトレッド領域にトレッドを貼着し易くすることができる。なお、加硫済み台タイヤと加硫済みトレッドを加硫接着して完成タイヤとするため、接着形状がタイヤ性能にも影響を与える。そのため、加硫済み台タイヤと加硫済みトレッドを貼着し易くすることで、タイヤ性能を向上させることができる。また、リトレッドを想定した場合においても、リトレッドの際にベルト層が露出することを抑制する効果が向上する。さらに台トレッドを設けることで、トレッド領域とサイド領域の厚さを容易に調整することが可能になり、台タイヤをより容易に均一加硫することができる。
また、他の形態として、台トレッドにおけるトレッドゴムを貼着する貼着面を平面もしくは曲面で構成する形態とした。
本形態によれば、台トレッドにおけるトレッドゴムを貼着する貼着面を平面もしくは曲面で構成したことにより、トレッドゴムとの密着性を向上させることができる。
また、他の形態として、台トレッドにおけるトレッドゴムを貼着する貼着面に位置決め手段を有する形態とした。
本形態によれば、トレッドゴムを台タイヤに貼着するときに、台トレッドの位置決め手段がトレッドゴムの位置ずれを規制するので、台タイヤに対してトレッドゴムを精度良く貼着することができる。
また、他の形態として、サイド領域を形成するサイドゴムは、台トレッドと同じ材料からなる形態とした。
本形態によれば、サイド領域を形成するサイドゴムと、台トレッドとに同じ材料を用いることにより、サイドゴムと台トレッドとを製造するときに、材料を交換する工数を減らすことができる。
また、他の形態として、サイド領域を形成するサイドゴムは、台トレッドと異なる材料からなる形態とした。
本形態によれば、サイド領域を形成するサイドゴムと、台トレッドとに異なる材料を用いることにより、台タイヤにおける各部位の性能に特化したものとすることができる。例えば、サイドゴムには耐カット性に優れたゴムを用い、台トレッドには加硫接着性の高いゴムを用いることができる。前記性能に加え、操縦性を向上させるために剛性の高いゴム、乗心地性を向上させるために剛性の低いゴムをサイドゴムや台トレッドに用いることで、製造する台タイヤの特性に対応させることができる。
また、他の形態として、第2加熱手段とトレッド領域との間に低熱伝導部材を設ける形態とした。
本形態によれば、第2加熱手段の加熱する熱量が、低熱伝導部材を介して台タイヤに伝導するため、トレッド領域の加硫熱量がサイド領域の加硫熱量に対して小さくなるが、トレッド領域に設けられた熱伝導部材を介して加硫熱量が熱伝導してゴムを加硫するため、トレッド領域の過加硫を防止でき、加硫度が均一な加硫済み台タイヤを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明に係る加硫装置の断面図。
【図2】本発明に係る加硫装置の他の形態の断面図。
【図3】本発明に係る加硫装置の他の形態の断面図。
【図4】本発明に係る加硫装置の他の形態の断面図。
【図5】本発明に係る加硫装置の他の形態の金型部分の断面図。
【図6】本発明に係る加硫装置の他の形態の金型部分の断面図。
【図7】本発明に係る加硫装置の他の形態の断面図。
【図8】台タイヤの概略構成断面図。
【図9】タイヤの分解構成図。
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組合せのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、台タイヤの加硫装置1を示す一実施形態である。図8は、加硫装置1により加硫された台タイヤの概略構成図を示す。なお、以下の説明において、加硫前の台タイヤを生台タイヤB′と記し、加硫後の台タイヤを台タイヤBとして記す。
まず、図8を用いて加硫装置1により加硫された台タイヤBについて説明する。台タイヤBは、ビードコードと呼ばれるスチールコードを束ねたビードコア11と、スチールコードからなる補強コードがラジアル方向となるように配向された構造のカーカス12と、スチールコードからなる補強コードをタイヤ周方向に対して傾斜するように配列して帯状に成形した複数のベルト13乃至16によって構成されるベルト層とを有する。ベルト13乃至16は、例えば、それぞれ異なる幅に形成される。さらに、台タイヤBは、ビードコア11を補強するビードフィラー17と、カーカス12の内周面を被うインナーライナー18と、タイヤ側面に対応するカーカス12を覆うサイドゴム19と、左右のサイドゴム19を接続するように配設され、ベルト層を被覆して後工程において加硫済みトレッドが貼着される台トレッド20と、台トレッド20の幅方向両端側に配置され、タイヤ外表面に設けられたミニサイドゴム21を備える。
なお、図8ではトラックバス用タイヤを例としているが、本発明においては乗用車用タイヤなどタイヤ用途に限定されない。
【0009】
加硫前の生台タイヤB′は、次のように成形される。まず、円筒状の成形ドラムにインナーライナー18となる未加硫のシート状のインナーライナーゴムを円周方向に沿って巻き回し、当該インナーライナーゴムの外周にカーカス12となる未加硫のシート状のカーカス部材を巻き回して配設する。次に、ビードコア11とビードフィラー17を成形ドラムの両端側からカーカス部材の外周上の両端側に嵌装し、ビードフィラー17をそれぞれ包囲するようにカーカス部材の端部12aを折り返して巻き上げ、ビード領域B3を形成する。次に、左右のビード領域B3から台タイヤBのサイド領域B2となる位置に相当する両領域にサイドゴム19に相当する帯状のゴムを巻き回してカーカス部材上に積層する。
次に、成形ドラムに内蔵される膨出手段を動作させて、上記積層された部材群の幅方向中央を膨出させてトロイダル状に成形し、最も膨出したカーカス部材中央の外周に、帯状に成形された未加硫のベルト部材を複数積層するように巻き回してベルト層を形成する。
次に、ベルト層の幅よりも幅広な、台トレッド20に相当する帯状の未加硫のゴムを両サイドゴム19に相当するゴムの端部と重なるようにベルト層の外周に巻き回して積層してトレッド領域B1を形成し、台トレッド20に相当するゴムとサイドゴム19に相当するゴムとの重なり位置に積層するようにミニサイドゴム21に相当するゴムを巻き回す。
【0010】
ミニサイドゴム21、サイドゴム19及び台トレッド20に相当するゴムの組成は、それぞれ異なるゴム材料によって形成される。
例えば、サイド領域を形成するサイドゴム19と台トレッド20に相当するゴムを異なる材料を用いて生成し、台タイヤにおける各部位の性能に特化したものとすることができる。
例えば、サイドゴム19には耐カット性に優れたゴムを用い、台トレッド20には加硫接着性の高いゴムを用いることができる。さらに前記性能に加え、操縦性を向上させるために剛性の高いゴム性能を有するものや乗心地性を向上させるために剛性の低いゴム性能を有するものをサイドゴム19や台トレッド20に適用することにより製造する台タイヤの特性に対応させることができる。
【0011】
また、台トレッド20及びサイドゴム19を同じ組成のゴム材料により構成しても良い。台トレッド20とサイドゴム19とを同じ組成のゴム材料により構成することにより、台トレッド20及びサイドゴム19を製造するときに、材料を交換する工数を減らすことができる。
また、ミニサイドゴム21と台トレッド20とを同じ組成のゴム材料により構成しても良い。また、ミニサイドゴム21とサイドゴム19とを同じ組成のゴム材料により構成しても良い。さらに、ミニサイドゴム21とサイドゴム19及び台トレッド20を全て同じ組成のゴム材料により構成しても良く台タイヤの仕様に合わせて適宜選択すれば良い。
【0012】
また、台タイヤBにおいて、ミニサイドゴム21を備えていなくても良いが、ミニサイドゴム21を設けることにより路面に対して最も近接するサイド領域B2の耐カット性を向上させることができる。
また、本発明は、上記成形ドラムを用いた台タイヤ製造方法の他、タイヤ内面形状をした金型に部材を配置した後、外側金型で部材を覆い加硫成型する台タイヤの製造方法にも適用できる。
【0013】
図8に示すように、トレッド領域B1とは、最も幅広なベルト14の両端部14a,14aの間の領域をいう。また、サイド領域B2とは、ベルト14の端部14aからタイヤ内径の縁部Baまでの間の領域をいう。また、ビード領域B3とは、サイド領域B2においてビードフィラー17の上端からタイヤ内径の縁部Baまでの間の領域をいう。即ち、ビード領域B3は、サイド領域B2内に含まれる。
なお、台タイヤBがビードフィラー17を備えていない場合には、ビード領域B3はビードコア11上端からタイヤ内径の縁部Baまでの間の領域をいう。また、ビードコア11を備えていない場合は、ビードコア11に相当するビード上端からタイヤ内径の縁部Baまでの間の領域をいう。
【0014】
また、タイヤ断面厚さは、各タイヤサイズにおける適用リムにタイヤを装着した大気圧状態において、タイヤ幅方向断面のタイヤ径方向最内面と直交する仮想線を設け、仮想線におけるタイヤ径方向最内面とタイヤ径方向最外面の交点を結んだ距離を指す。
また、トレッド領域B1のタイヤ断面厚さは、トレッド領域B1における幅方向中心位置31を指し、サイド領域B2のタイヤ断面厚さは、サイド領域B2における最薄位置32を指し、ビード領域B3のタイヤ断面厚さは、ビードコア11より径方向外側かつビード領域B3の最厚部を指す。なお、ビードコア11がない場合は、ビード領域B3の最厚部を指す。
【0015】
また、本実施形態においては、生台タイヤB′のトレッド領域B1,サイド領域B2、ビード領域B3の各部位を最適に加硫するための各測定点を前記タイヤ断面厚さタイヤ径方向最外面(タイヤ外表面)の位置に設定した。
即ち、台タイヤの加硫を行うときに、トレッド領域B1に与えられる熱量及び温度を幅方向中心位置31、サイド領域B2に与えられる熱量及び温度をサイド領域B2における最薄位置32、ビード領域B3に与えられる熱量及び温度をビードコアより径方向外側かつビード領域の最厚部33で測定した。また、トレッド領域B1,サイド領域B2,ビード領域B3に与えられる熱量は、各測定点における温度と加熱した時間との積により算出した。上記構成の生台タイヤB′は、ビード領域B3でタイヤ厚さが最も厚く、次いで、ビード領域B3よりも台トレッド領域を有するトレッド領域B1の厚さが厚く、次いでサイド領域B2の順にタイヤ厚さが薄くなる。
【0016】
上記生台タイヤB′は、トレッド領域B1にトレッドゴムAを備えていない以外は、一般的なタイヤ製造方法により製造されるタイヤと同一の構造を有している。なお、一般的なタイヤ製造方法とは、トレッドゴムAを生台タイヤB′の台トレッド20上に配設した状態で、加硫装置1に投入して、トレッドゴムAを含むタイヤ全体を一体に加硫成型したタイヤを製造する方法である。
生台タイヤB′は、トレッドゴムAを配設しない状態で後述の加硫装置1により加硫され、ベルト13〜16及び台トレッド20上に接着層を形成したのちに、タイヤ接地部となる加硫成型済みのトレッドゴムAを接着層の外周に配置して当該接着層を加硫することにより一体化される。当該タイヤの製造方法の詳細については後述する。
【0017】
以下、生台タイヤB′を好適に加硫可能な加硫装置1について説明する。
図1において、51,52は、リング盤状に形成された上金型,下金型で、下金型52に対して上金型51が上下に移動可能であり、加硫する生台タイヤB′の側面であるサイド領域B2と接触して、サイド領域B2を加硫するとともに生台タイヤB′の側面にタイヤサイズや製造番号などを型押しする。上,下金型51,52は、互いに対向する成型面側にビード領域B3を成型するビード金型81を備える。ビード金型81は、上,下金型51,52の内周側に沿って円環状に形成され、上,下金型51,52により成型されるサイド領域Ba,Bbに対してビード領域B3が所定形状となるように成型する。
上金型51,下金型52は、第1加熱手段としての上プラテン53,下プラテン54に取り付けられる。第1加熱手段としての上プラテン53,下プラテン54には、蒸気通路58A,59Aが内部に形成されており、この蒸気通路58A,59Aに後述の熱源供給手段80から加熱媒体としての、例えば蒸気が供給されて還流することにより生台タイヤB′のビード領域B3を含むサイド領域B2側を加熱し、加硫に必要な所定の温度までビード金型81を含む上金型51,下金型52の内面温度を上昇させる。
【0018】
55は、上金型51,下金型52の成型面の外周に沿って配置され、生台タイヤB′の円周方向に複数、例えば、12分割されたトレッド金型で、全体としてリング状に成形されており、上金型51と下金型52の間に、生台タイヤB′に対し同心円となるように配置される。
各トレッド金型55の内周面は、環状に配置されたときに円曲面を形成し、加硫する生台タイヤB′の外周面、即ちトレッド領域B1に接触する面であり、トレッド領域B1の台トレッド20を成型する成型面である。よって、トレッド金型55により成型されるトレッド領域B1の台トレッド20の外周面は、幅方向に断面視したときにタイヤ幅方向に所定形状に湾曲し、当該断面形状がタイヤ円周方向に沿って形成されることにより曲面形状となる。つまり、トレッドゴムAとの貼着面となる台トレッド20の外周面は、曲面形状に成型される。また、トレッド金型55の内周面側が平面状の円筒形状を形成する場合には、トレッドゴムAとの貼着面となる台トレッド20の外周面は、幅方向に断面したときに平面形状となる。
また、トレッド金型55の内周面は、例えば、円周方向に沿って断続的、又は、連続的にタイヤ全周に渡り凹溝や凸溝を備える。トレッド金型55の凹溝や凸溝は、台トレッド20の外周面に凹溝や凸溝を形成するためのものである。台トレッド20の外周面に形成される凹溝や凸溝は、トレッドゴムAを台タイヤBに貼着するときに位置決めするための位置決め手段である。なお、トレッドゴムAの内周面側には、台トレッド20の外周面に形成される凹溝や凸溝に対応して嵌り合う凹溝や凸溝が形成されている。このように位置決め手段を台トレッド20に形成することにより、トレッドゴムAを貼着するときに台トレッド20に対してトレッドゴムAが幅方向に位置ずれすることを防止することができる。なお、台トレッド20に形成される凹溝や凸溝の本数は、適宜設定すれば良い。
また、台トレッド20に形成される凹溝や凸溝が、円周方向ではなく幅方向に形成されるようにトレッド金型55の内周面に凹溝や凸溝を形成しても良い。また、幅方向の凹溝や凸溝及び円周方向の凹溝や凸溝を組み合わせて位置決め手段を台トレッド20の外周面に形成するようにしても良い。なお、位置決め手段として、目視での位置決め精度を向上させるために、台タイヤ外表面にマーキングを施しても良い。
以上のとおり、生台タイヤB′は、上金型51,下金型52,トレッド金型55によりトレッド領域B1及びサイド領域B2が外側から包囲された状態で加硫成型される。
【0019】
各トレッド金型55の外周面にはトレッドセグメント(以下セグメントという)56がそれぞれ取り付けられる。上記セグメント56は、第1加熱手段としての下プラテン54の上面側に放射状に形成された溝に沿って移動可能であり、各セグメント56が溝に沿って移動することで複数のトレッド金型55によって形成される成型空間が拡縮される。セグメント56の外周面側には、傾斜面56sが形成され、セグメント56同士が環状に配置されたときに上記傾斜面56sが連続してテーパー曲面を形成する。
【0020】
このセグメント56群のテーパー曲面に対応する逆の曲面を有し、複数に分割され、本例においては2つに分割された第2加熱手段としての第1アウターリング57A,第2アウターリング57Bがセグメント56の外側にトレッド領域B1の幅方向に互いに離間して配置される。
即ち、セグメント56の外周の傾斜面56sに対応する逆傾斜面57s,57tが、それぞれ第1アウターリング57Aと第2アウターリング57Bの内周面に形成され、上記セグメント56が形成するテーパー曲面に対応する逆テーパー曲面を有する。
【0021】
第2加熱手段としての小径の第1アウターリング57A,大径の第2アウターリング57Bは、アーム57m,57nを介して平板円盤状のリング固定盤71に上面側が固定され、リング固定盤71の中央に取り付けられた移動手段72が上下動することで、リング固定盤71とともに第1アウターリング57A,第2アウターリング57Bが上下動してトレッド金型55が形成する成型空間を拡縮するとともに、加硫時のトレッド金型55の拡径が防止される。
第2加熱手段としての第1アウターリング57A,第2アウターリング57Bの内部には、それぞれ内周面に沿ってリング状に形成された蒸気通路60A,60Bが設けられる。第1アウターリング57Aは、リング状に形成された蒸気通路60Aを備え、トレッド金型55の一方のハンプ部B4側に対応する径方向外側に位置し、この部分を加熱する。第2アウターリング57Bは、リング状に形成された蒸気通路60Bを備え、トレッド金型55の他方のハンプ部B4側に対応する径方向外側に位置し、この部分を加熱する。なお、トレッド領域B1とサイド領域B2とが接続するサイド領域B2においてビード領域B3を除いて最も肉厚となる部分を以下、ハンプ部と呼ぶ。
【0022】
本実施形態では、第1加熱手段としての上プラテン53,下プラテン54は、生台タイヤB′の上,下の両サイド領域B2側を加熱する上,下加熱部を構成し、第2加熱手段としての第1アウターリング57A,第2アウターリング57Bは、トレッド金型55のトレッド領域B1側の両側のハンプ部B4を加熱するハンプ加熱部を構成し、これ等各加熱部(上プラテン53,下プラテン54,第1アウターリング57A,第2アウターリング57B)により第1,第2加熱手段が構成される。
【0023】
上,下プラテン53,54と第1アウターリング57A,第2アウターリング57Bの蒸気通路58A,59A,60A,60Bは、それぞれ図外の断熱高圧チューブなどにより熱源供給手段80が接続されており、この蒸気通路58A,59A,60A,60Bに蒸気を還流させることにより各セグメント56とトレッド金型55を介して蒸気の熱量が生台タイヤB’のトレッド領域B1に伝えられ、この各部位を加硫するために必要な温度まで加熱され、所定時間その温度が維持される。
【0024】
矢印K1,K2,K3で示すように、熱源供給手段80より吐出した蒸気は、上プラテン53,下プラテン54,第1アウターリング57A,第2アウターリング57Bを経てそれぞれ吐出され、矢印K4に示すように、熱源供給手段80に還流して循環する。
上記のように構成することで、熱源供給手段80から同一の熱量を持つ蒸気が、第1加熱手段としての上,下プラテン53,54及び第2加熱手段としての第1アウターリング57A,第2アウターリング57Bに供給されても、第1アウターリング57A,第2アウターリング57Bによりトレッド領域B1側に与えられる熱量が、上,下プラテン53,54によりサイド領域B2側に与えられる熱量よりも少なくなるので、サイド領域B2の加硫不足と、トレッド領域B1の過加硫の両方を防止することができ、加硫度を均一化することができる。
【0025】
即ち、第1アウターリング57A,第2アウターリング57Bに供給された熱量は、セグメント56及びトレッド金型55を介して台タイヤのトレッド領域B1に伝達され、上,下プラテン53,54に供給された熱量は、上金型51,下金型52を介して台タイヤのサイド領域B2に伝達されるので、熱源供給手段80から同一の熱量を持つ蒸気が、上,下プラテン53,54及び第1アウターリング57A,第2アウターリング57Bに供給されても、上,下プラテン53,54からサイド領域B2が加熱される熱量よりも第1アウターリング57A,第2アウターリング57Bからトレッド領域B1が加熱される熱量を少なくすることができる。そして、上,下プラテン53,54からサイド領域B2が加熱される熱量よりも第1アウターリング57A,第2アウターリング57Bからトレッド領域B1が加熱される熱量を少なくしたことにより、サイド領域B2よりも厚肉なトレッド領域B1において熱伝導の良いスチールコードからなるベルト層がトレッド領域B1全体に熱を伝導するので、少ない熱量であってもトレッド領域B1を効率良く加硫することができる。一方で、熱伝導の良いスチールコードを有するビードコア11では、上,下プラテン53,54により加熱される熱量が、ビードフィラー17により吸収されるので、熱伝導の良いビードコア11によってビード領域B3の加硫が促進されることはない。
よって、加硫後の台タイヤBのサイド領域B2の加硫不足と、トレッド領域B1の過加硫の両方を防止することができる。つまり、サイド領域B2を加熱する熱量よりもトレッド領域B1を加熱する熱量を少なくすることで、サイド領域B2の加硫不足とトレッド領域B1の過加硫を抑制し、加硫度を均一化することができる。
【0026】
上記構成の加硫装置1によれば台タイヤBとなる生台タイヤB′は次のように成型される。
前工程で成形された生台タイヤB′を加硫装置1の下金型52にサイド領域B2が接触するように所定位置に設けたのちに、第2加熱手段としての第1アウターリング57A,第2アウターリング57Bをリング固定盤71とともに下降させて、複数のトレッド金型55を縮径させて生台タイヤB′のトレッド領域B1に接触させるとともに、上金型51を下降させて、上,下金型51,52とサイド領域B2,B2を接触させて生台タイヤB′が加硫,成型される成型空間を形成する。このとき、第1アウターリング57A,第2アウターリング57Bの蒸気通路60A,60Bは、それぞれ生台タイヤB′のハンプ部B4に対応する位置となる。
【0027】
この状態から加熱手段に加熱媒体である蒸気を供給する熱源供給手段80、例えば蒸気タンクから所定温度150〜200℃の蒸気を蒸気管を通して、第1加熱手段としての上,下プラテン53,54及び第2加熱手段としての第1,第2アウターリング57A,57B内の蒸気通路58A,59A,60A,60Bに高温の蒸気を還流させることにより、上,下金型51,52及びセグメント56とトレッド金型55を介して生台タイヤB′が外側から加熱される。同時に生台タイヤB′の内側に配置されたブラダー9に加熱媒体を供給することにより膨張させ、内側から均一の熱量でトレッド領域B1、サイド領域B2,ビード領域B3を加熱するとともに、内側から加圧することで生台タイヤB′が上,下金型51,52及びトレッド金型55に押圧されながら成型されるとともに加硫されて新品の台タイヤBとして製造される。
【0028】
即ち、上,下金型51,52及びトレッド金型55によりトレッド領域B1が薄肉に成型された生台タイヤB′を外側から包囲し、上,下金型51,52を加熱する上,下プラテン53,54の蒸気通路58A,59Aと、生台タイヤB’の左右一対のハンプ部B4に対応する位置のトレッド金型55を加熱する第1,第2アウターリング57A,57Bの蒸気通路60A,60Bとに熱源供給手段80から蒸気を供給して上,下金型51,52及びトレッド金型55を加熱することにより、トレッド金型55を介して第1,第2アウターリング57A,57Bにより加熱されるトレッド領域B1側の熱量が、上,下金型51,52を介して上,下プラテン53,54により加熱される生台タイヤB′のサイド領域B2側の熱量よりも少なくなり、加硫成型された台タイヤBの加硫度は、全体に均一となる。
つまり、トレッド領域B1側を加熱する第2加熱手段を生台タイヤB′の一対のハンプ部B4に対応するように第1,第2アウターリング57A,57Bのように分割したことにより、生台タイヤB′をサイド領域B2側から加熱する熱量よりもトレッド領域B1側を加熱する熱量を少なくして台タイヤBの加硫度を均一にすることが可能となった。
【0029】
以上説明したように、トレッド領域B1を加熱する第2加熱手段としての第1,第2アウターリング57A,57Bを両ショルダー部に相当するハンプ部B4,B4に対応するように分割して設けたことにより、既存の加硫装置1のアウターリングを交換するだけで普通タイヤの成型から台タイヤBの成型に切り替えることができるので、少ない設備投資で済ませることができる。なお、上記例において第2加熱手段を2つに分割した第1アウターリング57A,57Bに限らず、さらに複数に分割してトレッド領域B1を加熱する熱量を制御するようにしても良い。
【0030】
図9は、本発明の方法により製造されるタイヤの分解構成図を示す。
上記方法により加硫された台タイヤBのトレッド領域にクッションゴムCを介して加硫済みのトレッドゴムAを貼着することによりタイヤが製造される。以下、タイヤの製造方法について説明する。
台タイヤBに貼着されるトレッドゴムAは、所定長さの帯状、又は円環状に加硫成型されたものである。トレッドゴムAが帯状の場合には、一方の面にトレッドパターンが成型され、他方の面に台タイヤBと貼着する貼着面が成型される。また、円環状のトレッドの場合には、外周面にトレッドパターンが成型され、内周面に台タイヤBと貼着する貼着面が成型される。
【0031】
台タイヤBのトレッド領域B1は、貼着されるトレッドゴムAの貼着面形状に対応するようにバフ掛けと呼ばれる工程により表面が成形される。そして、バフ掛けされたトレッド領域には、未加硫のクッションゴムCを表面に均一に巻き回すことによりトレッドゴムAと台タイヤBとの接着層が形成される。当該接着層の上にトレッドゴムAが配設される。トレッドゴムAが配設された台タイヤBは、図外のエンベロープと呼ばれる被覆体によりトレッドゴム及び台タイヤBの外表面が被覆される。さらに、被覆体を台タイヤBのビード領域B3に密着させる環状体がエンベロープを挟むようにビード領域に嵌挿される。よって、トレッドゴムA及び台タイヤBの表面がエンベロープにより密閉される。
次に、エンベロープに被覆されたトレッドゴムA及び台タイヤBは、加硫缶と呼ばれる加硫施設に投入される。加硫缶は、缶内の圧力と温度が調節自在な施設であって、缶内の圧力と温度とを調節しつつエンベロープに被覆されたトレッドゴムAと台タイヤBとの間に配設された接着層を加硫して、台タイヤBとトレッドゴムとを一体に固着する。そして、所定時間経過後に、加硫缶からエンベロープに被覆されたトレッドゴムA及び台タイヤBを取り出しエンベロープを取外すことによりタイヤが製造される。
【0032】
上記のように製造されたタイヤは、全体として加硫度が均一なものとなる。即ち、台タイヤBとトレッドゴムAとを個別に加硫成型したことにより、台タイヤBの部材間の断面厚さの差、トレッドゴムAの断面厚さの差が、従来のように一体に加硫していたときよりも小さくなり、レッドゴムAの加硫と、台タイヤBの加硫とをそれぞれ均一に行うことができ、トレッドゴムA及び台タイヤBの加硫度の制御を最適に行うことが可能となるからである。
【0033】
上記加硫装置1では、第2加熱手段としてのアウターリング57A,57Bを複数(2つ)に分割して、各アウターリング57A,57Bの内部に独立した蒸気通路60A,60Bを形成するとして説明したが、加硫装置1の他の形態として、蒸気通路60A,60Bを1つのアウターリング57内に分離してトレッド領域の幅方向に互いに離間して形成しても良い。
例えば、図2に示すように、蒸気通路60Aを上金型51側のショルダー部に相当するハンプ部B4に対応するように設け、蒸気通路60Bを下金型52側のハンプ部B4に対応するように第2加熱手段としてのアウターリング57の内部に形成すれば良い。
つまり、上プラテン53,下プラテン54は、生台タイヤB′の上,下を加熱する第1加熱手段としての上,下加熱部として構成し、アウターリング57は、トレッド金型55の両側のハンプ部B4を加熱する第2加熱手段としてハンプ加熱部を構成し、これ等各加熱部(上プラテン53,下プラテン54,アウターリング57)により第1,第2加熱手段が構成される。このように構成してもトレッド領域B1のハンプ部に対応する第2加熱手段の加熱温度によりトレッド領域B1のベルト13〜16の熱伝導によりトレッド領域B1を均一に加熱できるので生台タイヤB′全体を均一に加硫することができる。
【0034】
図3は、他の形態の加硫装置1を示す。
加硫装置1の他の形態として、第2加熱手段としての1つのアウターリング57の内部に2つの独立した蒸気通路60A,60Bをトレッド領域の幅方向に互いに離間して形成する形態に代えて、蒸気通路60A,60Bの間に中央加熱部としての蒸気通路60Cを形成して3つの独立した加熱部を形成しても良い。
本構成の場合、加熱媒体である蒸気を供給する熱源供給手段80と、サイド領域B2の第1加熱手段である上,下プラテン53,54の蒸気通路58A,59Aと第2加熱手段としてのアウターリング57の蒸気通路60A,60B,60Cとを個別に接続して蒸気を供給するように構成し、中央加熱部としての蒸気通路60Cと熱源供給手段80との間に加熱量を調整可能にする操作部としてのバルブ61を設けてトレッド領域B1の中央位置の加熱量を調整する形態である。
【0035】
つまり、上プラテン53,下プラテン54は、生台タイヤB′の上,下サイド領域B2側を加熱する第1加熱手段としての上,下加熱部を構成し、アウターリング57は、トレッド金型55の両側のハンプ部B4を加熱する第2加熱手段としてのハンプ加熱部と中央加熱部を構成し、これ等各加熱部(上プラテン53,下プラテン54,アウターリング57)により加熱手段が構成される。
この場合、加熱量を調整するバルブ61を全閉状態にすれば、ハンプ部B4を加熱する蒸気通路60A,60Bのみに蒸気を還流させることができるので台タイヤの生台タイヤB′を最適に加硫することができ、また、バルブ61を全開状態にすれば、普通タイヤを最適に加硫することができる。また、バルブ61を適度に調整して加熱量を調整すれば、サイズの異なる普通タイヤや台タイヤなどに対しても最適な加硫を行うことができるようになる。
なお、蒸気通路60A,60Bにも、蒸気流量調整用の弁(バルブ)や温度調節用バルブを設けて温度調整可能としても良い。
【0036】
図4は、他の形態の加硫装置1を示す。
また、加硫装置1の他の形態として、第2加熱手段としてのアウターリングの内部に蒸気通路を形成する形態に代えて、アウターリング57の外部に蒸気通路60A,60Bを設けるようにしても良い。
つまり、本形態の加硫装置1は、第2加熱手段としてのアウターリング57の外周面に蒸気通路60A,60Bが形成されるとともに、蒸気通路60A,60Bがトレッド領域B1の幅方向に互いに離間するように位置を制御する位置制御手段85が設けられる。
本形態では、アウターリング57は中実に形成され、トレッド金型55の拡縮を制御し、成型時にトレッド金型55が拡径しようとする力を支える役割と、外周面に設けられた蒸気通路60A,60Bからの熱を伝導する役割を担う。
具体的には、図4に示すように、例えば、蒸気通路60A,60Bは、アウターリング57の外周面に設けられて、その外周面上をタイヤの幅方向(加硫装置1としては上下方向)に摺動して位置の調整が可能な第1加熱リング62Aと第2加熱リング62Bの内部に形成される。第1加熱リング62A及び第2加熱リング62Bは、例えば、銅などの高熱伝導材で形成され、アウターリング57の外周面に密着するように伝熱面が形成される。この第1加熱リング62A,第2加熱リング62Bの外側には、個別に位置を調整できる位置制御手段85が設けられる。
【0037】
位置制御手段85は、アウターリング57を固定するリング固定盤71の上面側から外側に延長するステー86を放射状に均等に複数箇所設けて、このステー86に位置合わせボルト87A,87Bをそれぞれ貫通させて第1加熱リング62A,第2加熱リング62Bの外周面に固定されたナット88A,88Bに位置合わせボルト87A,87Bを螺合させることで構成される。
つまり、本実施形態では、上プラテン53,下プラテン54は、生台タイヤB′の上,下の両サイド領域B2を加熱する第1加熱手段を構成し、アウターリング57とアウターリング57の外周面に設けられた第1加熱リング62Aと第2加熱リング62Bとによりトレッド金型55の両側のハンプ部B4を加熱する第2加熱手段を構成する。
【0038】
上記構成によれば、位置合わせボルト87A,87Bを回転させることで第1加熱リング62A,第2加熱リング62Bが加硫する生台タイヤB′のハンプ部B4の位置に対応するようにアウターリング57の外周面上を上下に移動できるので、サイズが異なる台タイヤを加硫する場合においても、台タイヤ毎のハンプ部B4に対して、常に最適な位置で加熱できるのでトレッド領域B1において加硫不良などを生じさせることを抑制できる。
【0039】
また、加硫装置1の他の形態として、第2加熱手段としてのアウターリングの内部に蒸気通路を形成したり、第2加熱手段としてのアウターリングの外周面に、蒸気通路を設けたりして、トレッド領域B1のハンプ部B4と中央部との間の加熱に差を生じさせるだけでなく、さらに、トレッド領域B1の中央部の加熱温度が、トレッド領域B1のハンプ部B4の位置に対応する加熱温度より低く設定されるようにする。
具体的には、トレッド金型55を例えば、鋳鉄等からなる上,下金型51,52よりも低熱伝導部材のステンレス等の素材により作製して、生台タイヤB′を加硫するときの加熱経路に差を生じさせるようにすれば良い。
即ち、上,下プラテン53,54により加熱される熱伝導の良い鋳鉄などで作製された上,下金型51,52が、生台タイヤB′のトレッド領域B1よりも先にサイド領域B2を加熱する。このとき、トレッド金型55は、セグメント56により外側から加熱されるとともに、上下面側から上,下金型51,52の熱が伝導して加熱されるが、鋳鉄に比べて熱伝導率の低いステンレスからなるため温度上昇が小さい。
【0040】
つまり、生台タイヤB′においてサイド領域B2から加硫が進行し、この加硫の進行によりハンプ部B4がサイド領域B2側から徐々に加熱されるとともに、トレッド金型55からもゆっくりと加熱されるようになるので、トレッド領域B1の過加硫を防止することができる。
本例では、トレッド金型55を低熱伝導部材としてのステンレスで形成するとしたが、トレッド金型55において、例えば、図5に示すように、鋳鉄部55Bとステンレス部55Aのように部分的に熱伝導の異なる部材により構成して、トレッド領域B1のハンプ部B4の位置に対応する加熱手段の加熱温度より、トレッド領域B1の中央部の加熱温度を低く設定するようにしても良い。
【0041】
また、図6に示すように、トレッド金型55の生台タイヤB′のトレッド領域B1と接触する面に、トレッド金型55よりも熱伝導が低いステンレスなどからなる部材55Cを設けても良い。部材55Cは例えば、ベルト14の幅で形成して、生台タイヤB′のトレッド領域B1を周方向に被うようにすれば、トレッド金型55と接触する両ハンプ部B4からの熱がベルト層によってトレッド領域B1全体に熱伝導するので少ない熱量であっても加硫を最適に行うことができる。よって、トレッド領域B1の過加硫を防止することができる。
【0042】
以上説明したように、トレッド領域B1のハンプ部B4,B4に対応する第2加熱手段の加熱する熱量がサイド領域B2側に対応する第1加熱手段の加熱する熱量よりも少なく設定されるように、第2加熱手段の蒸気通路60A,60Bを形成して共通の熱源供給手段80から加熱媒体としての蒸気を供給することで、加硫装置1における加熱手段としてのアウターリングだけを変更すれば良いので、設備のコストを抑制しつつ、加硫不良を出さずに新品の台タイヤを製造することができるようになる。さらに、第2加熱手段の蒸気通路60A,60Bに加えて、トレッド金型55を上,下金型51,52よりも熱伝導率の低い低熱伝導部材で構成することで、トレッド領域B1のハンプ部に対応する第2加熱手段の加熱温度をベルト層を介してトレッド領域B1全体に伝導させてサイド領域B2よりも低い温度でトレッド領域B1を加硫することができる。
【0043】
図7は、本形態の加硫装置1の概略構成図を示す。
また、加硫装置1の他の形態として、ビード領域B3を加熱する第3加熱手段を設けるようにしても良い。
図7に示すように、加硫装置1は、生台タイヤB′のビード領域B3を加硫成型するビード金型81にビード領域B3に沿った蒸気通路82,82を形成し、当該蒸気通路82,82に熱源供給手段80から供給される蒸気を流通させてビード金型81を加熱することによりビード領域B3に熱量を優先的に供給することで加熱、加硫する構成である。
本形態では、台タイヤとなる生台タイヤB′は次のように加硫される。熱源供給手段80から供給される蒸気が、第1加熱手段としての上,下プラテン53,54の蒸気通路58A,59A、第2加熱手段としての第1,第2アウターリング57A,57Bの蒸気通路60A,60B、第3加熱手段としてのビード金型81の蒸気通路82を還流することにより、生台タイヤB′のうちビード領域B3が、ビード金型81によって最初に加熱される。次に、上,下プラテン53,54によって加熱された上,下金型51,52の熱が、サイド領域B2を加熱し、第1,第2アウターリング57A,57Bの熱が、セグメント56を介してトレッド金型55のショルダー部に相当するハンプ部B4,B4に対応する位置からトレッド領域B1を加熱する。
【0044】
具体的には、ビード領域B3は、ビード金型81に直接接触しているため、ビード金型81の熱が生台タイヤB′のビード領域B3に直ちに伝導することにより、生台タイヤB′のうち最初に加熱される。サイド領域B2は、上,下プラテン53,54の熱が上,下金型51,52を伝導することにより加熱されるため、ビード領域B3の加熱よりも上,下金型51,52が加熱されるまでの時間分遅れて加熱される。トレッド領域B1は、第1,第2アウターリング57A,57Bの熱がセグメント56及びトレッド金型55を伝導することにより加熱されるため、サイド領域B2の加熱よりもセグメント56及びトレッド金型55が加熱されるまでの時間分遅れて加熱される。
つまり、生台タイヤB′は、トレッド領域B1,サイド領域B2,ビード領域B3の順番で加熱される時間が長くなることにより、ビード領域B3,サイド領域B2,トレッド領域B1に与えられる熱量が、ビード領域B3,サイド領域B2,トレッド領域B1の順番に小さくなる。所謂製品タイヤを加硫成型するときの熱量の大きさの順番と逆である。
【0045】
つまり、生台タイヤB′は、ビード金型81によってビード領域B3から加熱され、上,下金型51,52及びトレッド金型55が加熱されるまでの間、ビード領域B3のみが加熱される。上,下金型51,52は、上,下プラテン53,54の熱がサイド領域B2の表面に伝導するまでの間、隣接するビード金型81によって加熱され、上,下金型51,52と接触するサイド領域B2は、サイド領域B2のうちビード領域B3側から加熱される。そして、上,下プラテン53,54の熱が、上,下金型51,52のサイド領域B2と接触する表面まで伝導するとサイド領域B2全体が加熱される。トレッド金型55は、第1,第2アウターリング57A,57Bの熱がトレッド領域B1の表面に伝導するまでの間、隣接する上,下金型51,52の熱によって加熱され、トレッド金型55と接触するトレッド領域B1は、トレッド領域B1のうち両端側から加熱される。そして、第1,第2アウターリング57A,57Bの熱が、トレッド領域B1と接触する表面まで伝導すると、トレッド領域B1の両端側から優先的に加熱される。
また、上記金型51,52,55の加熱とともに生台タイヤB′の内側に配置されたブラダー9を加熱媒体などにより膨張させて内側から加熱、加圧することにより生台タイヤB′が加硫成型され、新品の台タイヤとして製造される。
【0046】
本形態のように加硫装置1を構成することにより生台タイヤB′は、ビード領域B3、サイド領域B2、トレッド領域B1の順に加硫され、生台タイヤB′のうち最も肉厚のあるビード領域B3、ビード領域B3よりも薄肉のサイド領域B2、最も薄肉のトレッド領域B1が実質的に均一の加硫度で加硫される。
また、ビード領域B3を加熱加硫する第3加熱手段を設けたことにより、生台タイヤB′のビード領域B3にビードコア11とともに未加硫ゴムからなるビードフィラー17が配設されても、ビード領域B3の加硫不足を防止するとともに、トレッド領域B1の過加硫を防止することができる。
なお、第3加熱手段としての蒸気通路82をビード金型81に設けたが、上,下金型51,52内のビード領域B3近傍に第3加熱手段を設けるようにしても良い。
【0047】
以上説明したように、上記加硫装置1を用いて、第2加熱手段により生台タイヤB′のトレッド領域B1を加熱する熱量が、第1加熱手段により生台タイヤB′のサイド領域B2を加熱する熱量よりも少なくなるように加硫成型することにより、トレッド領域B1の過加硫及び厚肉のビード領域B3の加硫不足が抑制することができる。つまり、上記装置により加硫成型された台タイヤBは、ビード領域B3、サイド領域B2、トレッド領域B1の全てにおいて加硫度が均一となる。
【0048】
また、上記加硫装置1により好適に生台タイヤB′を加硫する方法として、熱源供給手段80から第1加熱手段と第2加熱手段に加熱媒体を供給するそれぞれの経路上に、加熱媒体の流通を開閉するバルブを設けて次にように加硫するようにしても良い。
まず、第1加熱手段と第2加熱手段とにより同時に加熱を開始してトレッド領域B1とサイド領域B2との加硫を開始し、トレッド領域B1を加熱する時間と、サイド領域B2を加熱する時間との間に時間差が生じるように、第1加熱手段によるサイド領域B2の加熱よりも先に第2加熱手段によるトレッド領域B1の加熱を停止して、トレッド領域B1とサイド領域B2とに供給する熱量にさらに差を生じさせるようにしても良い。このように加硫しても、トレッド領域B1は、ベルト層に蓄熱された熱により加硫が進行するので、トレッド領域の過加硫が抑制され、かつ、ビード領域B3を含むサイド領域B2の加硫不足を抑制することができる。
【0049】
また、他の方法として、第2加熱手段によるトレッド領域B1への加熱を第1加熱手段によるサイド領域B2への加熱よりも遅れて開始し、第1加熱手段と第2加熱手段とによる加熱を同時に終了させて、トレッド領域B1が第2加熱手段から受ける熱量よりもサイド領域B2が第1加熱手段から受ける熱量よりも少なくすることで、トレッド領域B1の過加硫を抑制しつつ、サイド領域B2の加硫不足を抑制して台タイヤB全体の加硫度を均一にすることができる。
即ち、トレッド領域B1が第2加熱手段から受ける熱量よりもサイド領域B2が第1加熱手段から受ける熱量よりも少なくなるように、第1加熱手段と第2加熱手段とによる加熱時間に差を生じさせて、トレッド領域B1の加熱される熱量が、サイド領域B2の加熱される熱量よりも低くなるように第1加熱手段と第2加熱手段とを制御すれば良い。
なお、上記全ての形態の加硫装置1では、トレッド領域B1を加熱する加熱媒体を共通の熱源供給手段80から供給するとして説明したが、例えば、電熱線などにより各ハンプ部B4近傍を局所的に加熱するように構成しても良い。
【0050】
また、生タイヤの両ハンプ部B4に対応するように周方向に連続する流路としての蒸気通路60A,60Bを設けるとして説明したが、蒸気通路は周方向に複数に分割されていても良く、要は、トレッド領域B1に与えられる熱量がサイド領域B2に与えられる熱量よりも少なくなるように加熱されれば良い。
【0051】
また、生台タイヤB′のビード領域B3に適用されるビードフィラーが加硫済みの場合には、熱源供給手段80から上,下プラテン53,54のみに蒸気を供給することにより上,下金型51,52のみに熱量を供給し、上,下金型51,52の熱量をトレッド金型55とビード金型81に伝導させることにより、生台タイヤB′のサイド領域B2からトレッド領域B1及び加硫すべきタイヤ厚さが薄肉となったビード領域B3を加硫することで均一の加硫度となるように生台タイヤB′を加硫することができる。
また、低熱伝導部材としてステンレスを例示したが上,下金型51,52に比べて低熱伝導の素材によって構成されれば良く、その素材を配置する位置もトレッド金型55に限らず、セグメント56やアウターリング57などに用いても良い。
【0052】
以上、説明したとおり、加硫装置1によって生台タイヤB′を加硫成型することにより加硫度が均一な台タイヤBを得ることができ、得られた台タイヤBに加硫済みのトレッドAを配設すれば全体として加硫度が均一なタイヤを製造することができる。
【0053】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 加硫装置、9 ブラダー、12 カーカス、13〜16 ベルト、
20 台トレッド、
51 上金型、52 下金型、53 上プラテン、54 下プラテン、
55 トレッド金型、56 トレッドセグメント、
57;57A;57B アウターリング、
58A;59A;60;60A;60B;60C 蒸気通路、
80 熱源供給手段、A トレッドゴム、B 台タイヤ、
C クッションゴム、B1 トレッド領域、B2 サイド領域、
B3 ビード領域、B4 ハンプ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドゴムを貼着するトレッド領域を有する加硫済み台タイヤの製造方法であって、
未加硫の台タイヤを加硫金型により外側から包囲し、
前記台タイヤにおけるサイド領域を第1加熱手段により加熱し、
前記サイド領域よりもタイヤ厚さが厚いトレッド領域を第2加熱手段により加熱し、
前記第2加熱手段によってトレッド領域に与えられる熱量が、前記第1加熱手段によってサイド領域に与えられる熱量よりも小さい熱量で加硫成型することを特徴とする台タイヤ製造方法。
【請求項2】
トレッドゴムを貼着するトレッド領域を有する加硫済み台タイヤの製造方法であって、
未加硫の台タイヤを加硫金型により外側から包囲し、
前記台タイヤにおけるサイド領域を第1加熱手段により加熱し、
前記第2加熱手段によってトレッド領域に与えられる温度を、前記第1加熱手段によってサイド領域に与えられる温度よりも低く設定することを特徴とする台タイヤ製造方法。
【請求項3】
前記台タイヤに与えられる熱量をビード領域、サイド領域、トレッド領域の順に小さくすることを特徴とする請求項1に記載の台タイヤ製造方法。
【請求項4】
前記台タイヤに与えられる温度をビード領域、サイド領域、トレッド領域の順に低くすることを特徴とする請求項2に記載の台タイヤ製造方法。
【請求項5】
前記トレッド領域に、トレッドゴムを貼着するための台トレッドをタイヤ径方向最外側に設け、前記台トレッドを含むトレッド領域の厚さがサイド領域の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれかに記載の台タイヤ製造方法。
【請求項6】
前記台トレッドにおけるトレッドゴムを貼着する貼着面を平面もしくは曲面で構成したことを特徴とする請求項5に記載の台タイヤ製造方法。
【請求項7】
前記台トレッドにおけるトレッドゴムを貼着する貼着面に位置決め手段を設けたことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の台タイヤ製造方法。
【請求項8】
前記サイド領域を形成するサイドゴムは、前記台トレッドと同じ材料からなることを特徴とする請求項5乃至請求項7いずれかに記載の台タイヤ製造方法。
【請求項9】
前記サイド領域を形成するサイドゴムは、前記台トレッドと異なる材料からなることを特徴とする請求項5乃至請求項7いずれかに記載の台タイヤ製造方法。
【請求項10】
前記第2加熱手段とトレッド領域との間に低熱伝導部材を設けることを特徴とする請求項1乃至請求項9いずれかに記載の台タイヤ製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10いずれかに記載の製造方法により製造された台タイヤのトレッド領域に接着層を介して加硫済みトレッドゴムを貼着し、接着層を加硫することにより台タイヤと加硫済みトレッドゴムとを一体にするタイヤ製造方法。
【請求項12】
トレッドゴムが後工程により貼着されるトレッド領域を有する台タイヤであって、
前記トレッド領域の厚さがサイド領域の厚さよりも厚いことを特徴とする台タイヤ。
【請求項13】
前記トレッド領域を形成するベルト層のタイヤ半径方向外側に、前記トレッドゴムが貼着される台トレッドを備えることを特徴とする請求項12記載の台タイヤ。
【請求項14】
前記台トレッドにおけるトレッドゴムを貼着する貼着面が平面もしくは曲面で構成されることを特徴とする請求項13に記載の台タイヤ。
【請求項15】
前記台トレッドにおけるトレッドゴムを貼着する貼着面が位置決め手段を有することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の台タイヤ。
【請求項16】
前記サイド領域を形成するサイドゴムは、前記台トレッドと同じ材料からなることを特徴とする請求項13乃至請求項15いずれかに記載の台タイヤ。
【請求項17】
前記サイド領域を形成するサイドゴムは、前記台トレッドと異なる材料からなることを特徴とする請求項13乃至請求項15いずれかに記載の台タイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−187908(P2012−187908A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138147(P2011−138147)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】