説明

同一方向走行車両の誘導装置

【課題】 例えば片側二車線のうち何れか一方の車線の一部区間が走行不能になった場合に、両車線上を走行する車両を適切に誘導して、走行不能区間を円滑に走行・通過させるための《同一方向走行車両の誘導装置》を提供する。
【解決手段】 《同一方向走行車両の誘導装置》5Aは、車両制止アーム23を、規制対象車線1Nbに対応する第1制止表示位置に位置させて、該車線1Nb上の車両Cのドライバに対して通過禁止を表示すると共に、非対象車線1Naに対応する側には通過禁止を表示しないようにし、更に、規制対象車線を所定のタイミングで切り換えるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片側二車線の道路など、同一方向への車両の走行が許可された隣接する二車線を有する道路を走行する車両を誘導する《同一方向走行車両の誘導装置》に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路工事などによって車線の一部が走行不能な場合に、残りの車線を通じた車両の往来を円滑にし、交通渋滞を緩和するための《同一方向走行車両の誘導装置》としては、例えば下記特許文献1〜7などが開示されている。これらの特許文献に開示された発明は、何れも走行不能の車線を回避しつつ、残りの車線を使って、対向する車両に対して交互に通行を許可するものである。そのため、ある一方向への車両の走行を全面的に制止すると共に、他方向への車両の走行を全面的に許可する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−299518号公報
【特許文献2】特開平07−216832号公報
【特許文献3】特開平11−315517号公報
【特許文献4】特開2000−30188号公報
【特許文献5】特開2002−242131号公報
【特許文献6】特開2004−11183号公報
【特許文献7】特開2005−23696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば片側二車線などの道路(高速道路や国道など)において、一方の車線の一部に工事区間が設けられると、当該工事区間での車線減少に起因して交通渋滞が生じてしまう場合がある。この場合、工事区間においても走行可能な他方の車線は、対向する車両に供されるのではなく、同一方向に走行する車両にのみ供される。従って、上記各特許文献のように、対向車両の交互通行を円滑にすることを目的とする《同一方向走行車両の誘導装置》を使用することはできない。
【0005】
そのため、現状では、工事区間の直前に単にその車線が走行不能である旨を表示することとしている。この場合、工事区間が設けられた一方の車線上を走行する車両のドライバは、自身の判断に基づいて、他方の車線を走行する車両の流れに合流する必要がある。また、他方の車線上を走行する車両のドライバにおいても、自身の判断に基づいて、一方の車線から合流してくる車両のために前方を走行する車両との距離を大きくするなどの操作が必要になる。従って、両車線上を走行する車両は、何れも走行速度を十分低くしなければこのような合流を行うのは難しく、場合によっては10km/h前後にまで車両速度が低下して大渋滞が発生する可能性もある。なお、片側二車線以上の道路の一部の車線が走行不能となる要因としては、上記のように工事区間が設定された場合だけでなく、交通事故又は土砂崩れ等による場合でもあり得る。
【0006】
そこで本発明は、片側二車線の道路など、同一方向への車両の走行が許可された隣接する二車線を有する道路において、何れか一方の車線の一部区間が走行不能になった場合に、両車線上を走行する車両を適切に誘導して、走行不能区間を円滑に走行・通過させるための《同一方向走行車両の誘導装置》を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る《同一方向走行車両の誘導装置》は、同一方向への車両の走行が許可された隣接する二車線間の境界付近に設置される《同一方向走行車両の誘導装置》であって、前記二車線のうち何れか一方の車線上の車両の通過禁止を表示するための通過禁止表示部と、前記通過禁止を表示する対象車線を所定のタイミングで切り換える切換制御部とを備え、該切換制御部は、前記通過禁止表示部によって何れか一方の対象車線上の車両の通過禁止を表示すると共に、他方の非対象車線については通過禁止を表示しないように構成されている。
【0008】
このような構成とすることにより、同一方向への車両の走行が許可された二車線のうち、一方の車線を通過禁止の対象車線にすると共に、他方の車線を非対象車線とするため、両車線上を走行する車両のドライバは、自身の判断によらず円滑に走行不能区間を通過することができる。そのため、必要以上に走行速度が低下することがなくなり、交通渋滞を緩和することができる。
【0009】
また、前記通過禁止表示部は、前記車線を横断する方向へ突出した車両制止アームと、該車両制止アームを一方の車線側に突出させた位置と他方の車線側に突出させた位置との間で変位させるアーム駆動部とを有し、前記切換制御部は、前記通過禁止を表示する前記対象車線側に、前記車両制止アームを突出させるよう構成されていてもよい。
【0010】
また、前記通過禁止表示部は、前記車線を横断する方向へ突出した突出位置と前記車線に対して該突出位置から退避させた退避位置との間で進退移動可能であって両車線に対応して設けられた2つの車両制止アームと、該車両制止アームを前記突出位置及び前記退避位置の間で変位させるアーム駆動部とを有し、前記切換制御部は、前記通過禁止を表示する前記対象車線に対応する前記車両制止アームを前記突出位置に配置すると共に、前記非対象車線に対応する前記車両制止アームを前記退避位置に配置するよう構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、片側二車線の道路など、同一方向への車両の走行が許可された隣接する二車線を有する道路において、何れか一方の車線の一部区間が走行不能になった場合に、両車線上を走行する車両を適切に誘導して、走行不能区間を円滑に走行・通過させるための《同一方向走行車両の誘導装置》を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る《同一方向走行車両の誘導装置》の使用シチュエーションの一例を示す模式図である。
【図2】《同一方向走行車両の誘導装置》の構成を示す外観図である。
【図3】図2に示す《同一方向走行車両の誘導装置》の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】《同一方向走行車両の誘導装置》の動作例を示すフローチャートである。
【図5】《同一方向走行車両の誘導装置》の他の構成を示す外観図である。
【図6】図5に示す《同一方向走行車両の誘導装置》の機能的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る《同一方向走行車両の誘導装置》について、図面を参照しつつ具体的に説明する。なお、ここで説明する《同一方向走行車両の誘導装置》を適切に使用することにより、走行不能区間(例えば、後述の「工事区間3」参照)を車両が通過する際に、従来のように車両平均速度が10km/h前後まで低下することがなく、約40〜50km/h前後まで車両平均速度を上げることを期待できる。そのため、交通渋滞を緩和することができ、渋滞が発生した場合であっても渋滞距離を短くすることができる。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る《同一方向走行車両の誘導装置》の使用シチュエーションの一例を示す模式図である。この図1では、同一方向への車両Cの走行が許可された隣接する車線を2つ有する、いわゆる片道二車線(全四車線)の道路1を示している。道路1の全四車線のうち、図1の紙面に向かって左側の二車線は、北向きの走行が許可された車線1Na,1Nbであり、向かって右側の二車線は、南向きの走行が許可された車線1Sa,1Sbとなっている。また、全四車線のうち外側に位置する車線1Na,1Saは走行車線であり、内側に位置する車線1Nb,1Sbは追い越し車線となっている。そして、対向する追い越し車線1Nb,1Sbの間には中央分離帯2が設けられている。なお、この道路1での走行方向を上記のように南北方向としているのは、本実施の形態における説明の便宜のためであるため、例えば東西方向など他の方向に置き換えてもよい。
【0015】
図1に示すシチュエーションでは、北向きの走行車線1Naの一部が工事区間3となっており、この区間は車両の走行ができない状態となっている。一方、北向きの追い越し車線1Nbは、全線において走行可能な状態となっている。従って、工事区間3に至るまでは、北向きの車両Cは両車線1Na,1Nbを走行可能であるが、工事区間3においては追い越し車線1Nbのみが走行可能になっている。そして、本実施の形態に係る《同一方向走行車両の誘導装置》5Aは、工事区間3から所定距離だけ手前において、両車線1Na,1Nbの境界付近(両車線を仕切る白線等の近傍)に設置されている。なお、本実施の形態では走行不能区間として工事区間3を例示するが、これに限定されるわけではなく、工事区間3に代えて、例えば交通事故や土砂崩れによる走行不能区間を適用してもよい。
【0016】
また、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aより後方であって工事区間3の手前には、交通整理員6が配置されている。更に、中央分離帯2において工事区間3に対応する区間には、視界遮断シート7が設置されている。この視界遮断シート7は、対向する車線1Sa,1Sbを南方へ走行する車両Cのドライバの、工事区間3付近への視界を遮るためのものであり、その構成・材料は可搬性を考慮して適宜決定することができる。例えば、中央分離帯2が一般乗用車の車高と同じくらいの高さを有するガードレールで構成されている場合は、該ガードレールに取り付けられるように構成した板状または布状のものを採用できる。また、視界を遮るという目的を達成できるのであれば、ネット状のものを採用することもできる。
【0017】
本実施の形態では、上記《同一方向走行車両の誘導装置》5Aと視界遮断シート7とを合わせて、渋滞緩和装置セット10としている。以下、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aについて更に詳細を説明する。
【0018】
[同一方向走行車両の誘導装置の構成]
図2は、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの構成を示す外観図であり、図3は、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの機能的構成を示すブロック図である。図2に示すように、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aは、地面に設置される脚部20、該脚部20から上方へ延設された支持ポール21、該支持ポール21の上端に支持された本体部22、及び該本体部22から側方へ延設されて通過禁止表示部を成す1本の車両制止アーム23を備えている。また、該車両制止アーム23には制止標識24が取り付けられている。
【0019】
このうち脚部20は重石を兼ねており、風雨によって《同一方向走行車両の誘導装置》5Aが転倒しない程度の重量を有している。支持ポール21は、その上端に支持する本体部22が数十メートル手前を走行する車両Cのドライバから視認できるように、適宜の高さ寸法を有している。本体部22は、ボックス状の筐体30を備え、該筐体30内に、マイクロプロセッサ等から成る切換制御部31、及び該切換制御部31からの制御信号により駆動するアーム駆動部32を収容している(図3参照)。また、筐体30の前面(車線1Na,1Nbを北向きに走行する車両Cに対向する面)には、切換制御部31からの制御信号により所定の文字列や記号等を表示する液晶表示部33が設けられている。これら切換制御部31、アーム駆動部32、及び液晶表示部33は、筐体30内に収容されたバッテリー34からの電力供給を受けて動作する(図3参照)。
【0020】
アーム駆動部32は図示しない電動モータを具備しており、該電動モータの出力軸は減速機を介して、棒状を成す車両制止アーム23の基端部に接続されている。この車両制止アーム23は、車線1Na,1Nbのうち何れか一方側に略水平に突出した状態(以下、「第1制止表示位置」という)になっている。そして、切換制御部31からの制御信号を受信してアーム駆動部32が駆動すると、車両制止アーム23は、その基端部を通る前後方向(本実施の形態では南北方向)の軸を中心にして、上記第1制止表示位置から他方の車線側に略水平に突出した状態(以下、「第2制止表示位置」という)まで回動する(図2中の円弧状矢印参照)。
【0021】
また、車両制止アーム23は伸縮可能に構成されている。具体的に説明すると、車両制止アーム23は、径の異なる管部材23a,23bを入れ子式に組んで構成されており、ストッパ23cを解除操作することで、先端側の管部材23aを基端側の管部材23b内に収容できるようになっている。逆に、基端側の管部材23bに収容された管部材23aを所定の長さ引き出すと、ストッパ23cが作動してロックがかかり、基端側の管部材23bから先端側の管部材23aが伸延した状態で固定される。なお、車両制止アーム23を伸縮させるための構成は上記に限定されず、他の構成を採用してもよいし、折り畳み式とすることで実質的に伸縮可能に構成してもよい。
【0022】
車両制止アーム23の先端部近傍には、制止標識24が取り付けられている。この制止標識24は、正面視したときに各頂部が丸められた逆三角形状に構成された標識プレート24aを有している。該標識プレート24aの両面(正面及び裏面)の上部には、ドライバに制止を求めるために「止まれ」という文字列24bが表示されている。また、標識プレート24aの下部には、高輝度のLED等から成る発光部24cが設けられている。そして、標識プレート24a内に備えられた図示しないバッテリーからの電力供給により、正面側及び裏面側へ向かって発光し、点灯(又は点滅)するようになっている。
【0023】
なお、「止まれ」の文字列24bについても、透光性材料で形成してその背後(標識プレート24a内)にバックライトを設けることで、発光して表示させるようにしてもよい。そうしない場合には、夜間での視認性を向上させるために、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの手前に照明装置を配置し、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの正面を照らすようにしてもよい。
【0024】
また、制止標識24の上端には支持ベルト25が設けられており、制止標識24はこの支持ベルト25により吊り下げられるようにして支持されている。また、制止標識24はこの支持ベルト25によって、車両制止アーム23の長手方向への移動が規制されつつ、車両制止アーム23の周りには回動可能になっている。従って、車両制止アーム23が第1制止表示位置から第2制止表示位置へ、あるいは逆に第2制止表示位置から第1制止表示位置へと回動した場合、その回動途中で制止標識24は正面と裏面とが反転し、回動後には再び車両制止アーム23から吊り下がった状態になる。
【0025】
一方、筐体30に設けられた液晶表示部33は、図示しない液晶パネル及び液晶モジュールから成り、切換制御部31からの制御信号に基づいて文字列や記号等を表示可能になっている。なお、本実施の形態では、車両制止アーム23が第1制止表示位置と第2制止表示位置との間で次に切り換わるまでの残り時間を、文字列によって例えば「あと0:30」と表示し、時間の経過に伴って残時間をカウントダウンさせて表示するようにしている。
【0026】
[同一方向走行車両の誘導装置の動作]
次に、上述した《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの動作について説明する。図4は、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの動作例を示すフローチャートである。この図4に示すように、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aは始めに、車線1Na,1Nbのうち何れか一方の車線である規制車線(車両Cの通過を禁止する対象車線)に対してのみ、通過禁止の旨を表示する(ステップS1)。例えば、はじめに切換制御部31が追い越し車線1Nbを規制車線として定義しているとすると、該車線1Nbに対応する第1制止表示位置に車両制止アーム23を位置させる(図2の実線で示す状態)。これにより、この追い越し車線1Nbを走行する車両Cのドライバに通過禁止を表示すると共に、走行車線1Na上の車両に対しては通過禁止を表示しないようにしている。
【0027】
その結果、図1に示すように、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの手前で追い越し車線1Nb上を走行していた車両Cは、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの直前位置にて一時停止が促され、停止する。そしてこの間に、走行車線1Na上を走行していた車両Cは、そのまま《同一方向走行車両の誘導装置》5Aを通過した後、追い越し車線1Nbに走行ルートを変更するように運転操作され、工事区間3を比較的早い速度で通過することができる。
【0028】
次に、ステップS1での通過禁止の表示(即ち、車両制止アーム23を第1制止表示位置に位置させること)の開始時点から、所定の時間が経過したか否かを判断する(ステップS2)。ここで、所定時間を経過したか否かの判断は、切換制御部31が有する計時手段に基づいて該切換制御部31が行う。また、所定時間としては、例えば30秒、1分、2分などと設定でき、この車線1Na,1Nbを走行する車両Cの数などに基づいて適宜設定することができる。
【0029】
そして、ステップS2にて所定時間が経過していないと判断した場合は(ステップS2:NO)、このステップS2の動作を繰り返し実行する一方、所定時間を経過したと判断した場合は(ステップS2:YES)、ステップS3の動作に移行する。このステップS3では、規制車線の切り換えが行われる。例えば、切換制御部31において車線1Nbを規制車線と定義している状態でステップS3の動作を実行した場合、切換制御部31は、車線1Nbから車線1Naに規制車線の定義を切り換える。
【0030】
このようにして規制車線の切り換えを終えると、再びステップS1からの動作を実行する。従って、次のステップS1の動作では、車線1Nbではなく車線1Naに対してのみ通過禁止の旨を表示すべく、車両制止アーム23を、第1制止表示位置から第2制止表示位置へと駆動させることとなる。
【0031】
その結果、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの手前で走行車線1Na上を走行していた車両Cは、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの直前位置にて一時停止が促され、停止する。そしてこの間に、追い越し車線1Nbにて《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの直前で停止していた車両Cは走り始め、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aを通過し、工事区間3を比較的早い速度で通過することができる。
【0032】
以上に説明したように、図1に示すようにして《同一方向走行車両の誘導装置》5Aを配置し、動作させることにより、同一方向に走行する車線1Na,1Nb上の車両Cを、所定時間毎に交互に工事区間3へ誘導することができる。従って、工事区間3によって走行可能な車線数が減少している場合であっても、車両Cは当該工事区間3を比較的早い速度で通過することができ、交通渋滞を緩和することができる。また、液晶表示部33では、図4のステップS1の動作からステップS2,S3の動作を経て次にステップS1の動作を行うまでの残り時間が、カウントダウン形式で表示されるようになっている。従って、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの直前で一時停止している車両Cのドライバは、走り始められるようになるまでの残り時間を把握することができる。
【0033】
なお、上記《同一方向走行車両の誘導装置》5Aは、既に説明したように車両制止アーム23が入れ子式の管部材23a,23b及びストッパ23c等によって伸縮可能に構成されているため、搬送時には車両制止アーム23を収縮状態にしておくことで、可搬性に優れたものとなる。従って、例えば交通事故や土砂災害等が発生した場合に、小型車両に積載して現場へ早急に搬送し、設置することができるため、走行不能区間の発生後、速やかにこれを回避しつつ車両Cを円滑に通過させることができる。
【0034】
[同一方向走行車両の誘導装置の他の構成]
図5は、《同一方向走行車両の誘導装置》の他の構成を示す外観図であり、図6は、《同一方向走行車両の誘導装置》5Bの機能的構成を示すブロック図である。図5に示す《同一方向走行車両の誘導装置》5Bは、地面に設置される脚部40、該脚部40から上方へ延設された支持ポール41、該支持ポール41の上端に支持された本体部42、及び該本体部42から両側方へ延設されて通過禁止表示部を成す計2本の車両制止アーム43を備えている。また、この車両制止アーム43には制止標識44が備えられている。このうち脚部40及び支持ポール41は、既に説明した《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの脚部20及び支持ポール21と同様の構成になっている。
【0035】
一方、本体部42は、ボックス状の筐体50を備え、該筐体50内に、マイクロプロセッサ等から成る切換制御部51、及び該切換制御部51からの制御信号により駆動するアーム駆動部52を収容している(図6参照)。また、筐体50の前面には、既に説明した《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの液晶表示部33と同様の構成・機能を有する第1液晶表示部53が設けられている。これら切換制御部51、アーム駆動部52、及び第1液晶表示部53は、筐体50内に収容されたバッテリー54からの電力供給を受けて動作する(図6参照)。
【0036】
車両制止アーム43は、本体部42から左右の両側方へ向かって延設された管状のアーム部45と、該アーム部45の先端に接続された制止標識44とを備えている。該制止標識44は、前後方向に主面を向けた略長方形の板状に構成された揺動プレート44aを有し、その前面には第2液晶表示部44bが設けられている。この第2液晶表示部44bは図示しない液晶パネル及び液晶モジュールから成り、図6に示すように、切換制御部51からの制御信号に基づき、バッテリー54からの電力供給を受けて、文字列や記号等を表示可能になっている。
【0037】
また、揺動プレート44aは、その基端部がアーム部45の先端部に対して揺動可能に支持されている。管状を成すアーム部45の内部にはリンク機構(図示せず)が収容されており、揺動プレート44aの基端部は、このリンク機構を介して本体部51内のアーム駆動部52に接続されている。そして、切換制御部51(図6参照)からの制御信号に基づいてアーム駆動部52が駆動することにより、揺動プレート44aは、その基端部を通る前後方向の軸を中心として所定範囲内で揺動可能になっている。具体的には、略長方形状を成す揺動プレート44aが、その長手方向を略水平方向に沿って車線を横断する方向に突出する「突出位置」と、該突出位置から退避して略鉛直方向に沿うようになる「退避位置」との間で揺動可能である(図5中の円弧状矢印参照)。
【0038】
また、揺動プレート44aに設けられた第2液晶表示部44bは、揺動プレート44aが突出位置にあるときには通過を禁止する旨を表示し、退避位置にあるときは通過を許可する旨を表示するようになっている。例えば、揺動プレート44aが突出位置にある場合は、「止まれ」の文字列が横書き形式で表示される(図5参照)。これに対し、揺動プレート44aが退避位置にある場合は、「Go!」の文字列及び進行方向を示す矢印記号が縦長に表示される(図5参照)。
【0039】
以上に説明した《同一方向走行車両の誘導装置》5Bについても、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aと同様に図4に示すステップS1〜S3の動作を実行する。即ち、《同一方向走行車両の誘導装置》5Bは始めに、車線1Na,1Nbのうち何れか一方の車線である規制車線に対してのみ、通過禁止の旨を表示する(ステップS1)。具体的には、はじめに切換制御部51が追い越し車線1Nbを規制車線として定義しているとすると、該車線1Nbに対応する車両制止アーム43(図5の紙面右側の車両制止アーム43)が有する揺動プレート44aを突出位置に位置させ、その第2液晶表示部44bには、通過禁止を示す「止まれ」の文字列を表示させる。一方、反対側の車両制止アーム43(図5の紙面左側の車両制止アーム43)が有する揺動プレート44aは退避位置に位置させ、その第2液晶表示部44bには、通過許可を示す「Go!」の文字列及び矢印記号を表示させる。このようにして、この追い越し車線1Nbを走行する車両Cのドライバに通過禁止を表示すると共に、走行車線1Na上の車両に対しては通過許可を表示する(通過禁止を表示しない)ようにしている。
【0040】
次に、ステップS1での通過禁止の表示(即ち、車両制止アーム43を突出位置に位置させること)の開始時点から、所定の時間が経過したか否かを判断する(ステップS2)。ここで、所定時間を経過したか否かの判断は、既に説明した《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの切換制御部31と同様にして切換制御部51が実行する。
【0041】
そして、ステップS2にて所定時間が経過していないと判断した場合は(ステップS2:NO)、このステップS2の動作を繰り返し実行する一方、所定時間を経過したと判断した場合は(ステップS2:YES)、ステップS3の動作に移行して規制車線の切り換えが行われる。例えば、切換制御部51において車線1Nbを規制車線と定義している状態でステップS3の動作を実行した場合、切換制御部51は、車線1Nbから車線1Naに規制車線の定義を切り換える。
【0042】
このようにして規制車線の切り換えを終えると、再びステップS1からの動作を実行する。従って、次のステップS1の動作では、突出位置にあった追い越し車線1Nbに対応する右側の車両制止アーム43が有する揺動プレート44aを退避位置に移動させ、その第2液晶表示部44bには通過許可を意味する表示を行う。一方、退避位置にあった反対側の車両制止アーム43が有する揺動プレート44aは突出位置に移動させ、その第2液晶表示部44bには通過禁止を意味する表示を行う。このようにして、この追い越し車線1Nbを走行する車両Cのドライバに通過許可を表示する(通過禁止を表示しない)と共に、走行車線1Na上の車両に対しては通過禁止を表示するようにしている。
【0043】
このような《同一方向走行車両の誘導装置》5Bを使用した場合であっても、上記《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの場合と同様に、同一方向に走行する車線1Na,1Nb上の車両Cを、所定時間毎に交互に工事区間3へ誘導し、交通渋滞を緩和することができる。なお、第1液晶表示部53では、《同一方向走行車両の誘導装置》5Aの液晶表示部33と同様に、図4のステップS1の動作からステップS2,S3の動作を経て次にステップS1の動作を行うまでの残り時間が、カウントダウン形式で表示されるようになっている。
【0044】
なお、《同一方向走行車両の誘導装置》5Bでは、通行許可を表示する際の退避位置が、通行禁止を表示する際の突出位置よりも若干高い位置になるようになっている。これにより、退避位置にある第2液晶表示部44bの表示内容は比較的遠方からでも視認できるため、通行が許可されている車線を走行中の車両Cのドライバは、車速を大きく低下させなくてもこれを視認でき、交通渋滞の緩和に貢献できる。また、《同一方向走行車両の誘導装置》5Bにおいて、規制車線の切り換え後の規制車線に対して通過禁止を表示する場合(ステップS1)、比較的短時間だけ、左右両方の揺動プレート44aを突出位置に位置させて両車線1Na,1Nbに対して通過禁止を表示するようにし、それから、切り換え後の非規制車線に対応する揺動プレート44aを退避位置へ移動させ、その第2液晶表示部44bに通行許可を表示するようにしてもよい。
【0045】
なお、図1に示すように、《同一方向走行車両の誘導装置》5A,5Bと共に視界遮断シート7を適宜設置することにより、対向車線1Sa,1Sbを走行する車両Cの脇見運転を抑制することができ、該対向車線1Sa,1Sbでの脇見渋滞の発生を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、片側二車線の道路など、同一方向への車両の走行が許可された隣接する二車線を有する道路において、何れか一方の車線の一部区間が走行不能になった場合に、両車線上を走行する車両を適切に誘導して、走行不能区間を円滑に走行・通過させるための《同一方向走行車両の誘導装置》に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 道路
1Na,1Nb,1Sa,1Sb 車線
5A,5B 同一方向走行車両の誘導装置
7 視界遮断シート
10 渋滞緩和装置セット
20,40 脚部
21,41 支持ポール
22,42 本体部
23,43 車両制止アーム(通過禁止表示部)
31,51 切換制御部
32,52 アーム駆動部
33 液晶表示部
44b 第2液晶表示部
53 第1液晶表示部
C 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一方向への車両の走行が許可された隣接する二車線間の境界付近に設置される《同一方向走行車両の誘導装置》であって、
前記二車線のうち何れか一方の車線上の車両の通過禁止を表示するための通過禁止表示部と、前記通過禁止を表示する対象車線を所定のタイミングで切り換える切換制御部とを備え、
該切換制御部は、前記通過禁止表示部によって何れか一方の対象車線上の車両の通過禁止を表示すると共に、他方の非対象車線については通過禁止を表示しないように構成されていることを特徴とする《同一方向走行車両の誘導装置》。
【請求項2】
前記通過禁止表示部は、前記車線を横断する方向へ突出した車両制止アームと、該車両制止アームを一方の車線側に突出させた位置と他方の車線側に突出させた位置との間で変位させるアーム駆動部とを有し、
前記切換制御部は、前記通過禁止を表示する前記対象車線側に、前記車両制止アームを突出させるよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の《同一方向走行車両の誘導装置》。
【請求項3】
前記通過禁止表示部は、前記車線を横断する方向へ突出した突出位置と前記車線に対して該突出位置から退避させた退避位置との間で進退移動可能であって両車線に対応して設けられた2つの車両制止アームと、該車両制止アームを前記突出位置及び前記退避位置の間で変位させるアーム駆動部とを有し、
前記切換制御部は、前記通過禁止を表示する前記対象車線に対応する前記車両制止アームを前記突出位置に配置すると共に、前記非対象車線に対応する前記車両制止アームを前記退避位置に配置するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の《同一方向走行車両の誘導装置》。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−12910(P2012−12910A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153176(P2010−153176)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(505275918)
【Fターム(参考)】