説明

向上した音響減衰特性を有するバフル

a)180℃以下の温度まで加熱したときに変形しないポリマー材料(A)から製造されたキャリヤープレートの1つ以上、およびb)熱膨張性材料(B)を含んでなる、内面を有する縦キャビティの封止および音響減衰のためのインサートであって、ポリマー材料(A)が、キャリヤープレートに機械的強度を与える主ポリマー(A1)、および少なくとも1種の制振性ポリマー(A2)を含んでなる、インサート。制振性ポリマー(A2)は、好ましくは、熱可塑性ポリウレタン、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、スチレン/イソプレンブロックコポリマー、水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマー、スチレン/イソプレン/スチレン/トリブロックコポリマー、および水素化スチレン/イソプレン/スチレントリブロックコポリマーからなる群から選択される。本発明は更に、射出成形によるそのようなインサートの製造方法、およびそのようなインサートを用いた縦キャビティにおける空気伝送振動または構造由来の振動を減衰する方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の構造部材のキャビティにおける音響的に有効な封止バフルに関する。そのようなバフルは「ピラー充填材」としても知られている。
【背景技術】
【0002】
現代の車両コンセプトおよび車両構造設計は、複数のキャビティを有する。湿気および汚染物質が、対応する車体部品を内部から腐蝕し得るので、湿気および汚染物質の侵入を防ぐために該キャビティは封止しなければならない。このことは特に、重いフレーム構造がいわゆる「スペースフレーム」に置き換わった、現代の自立車体構造に当てはまる。スペースフレームでは、既製中空形材から製造された軽量の構造的に強いシャシを使用する。そのような構造物は、特定のシステムに依存して、湿気および汚染物質の侵入に備えて封止しなければならない多数のキャビティを有する。これらのキャビティは、ルーフ構造(ルーフレール、フェンダーの一部または窓台)を支持する、上方へ伸びるAピラー、BピラーおよびCピラーを包含する。加えて、これらのキャビティは、望ましくない車両走行騒音および風切音として空気伝送音を伝える。したがって、そのような封止手段はまた、騒音を低減し、車両での移動の快適さを向上する。
【0003】
車の組立てにおいて、キャビティを有するこれらのフレーム部品および車体部品は、閉じた中空部分を形成するように溶接および/または接着によって後に結合される半殻形部品から予め製造される。この明細書では、結合後のそのような半殻形部品を「相互連結された壁」と称し、該壁は閉鎖された中空部分(キャビティ)を包囲している。そのようなタイプの構造なら、車体が未塗装状態(「自動車車体工場」にある状態)にある初期の車体におけるキャビティに接近しやすいので、(しばしば「ピラー充填材」または「キャビティ充填インサート」とも称される)封止および音響減衰するバフル部品を、機械的吊下げによって、適当な保持デバイス、内腔への挿入によって、或いはキャビティ壁への接着または溶接によって、この初期段階の車体構造に固定することができる。
【0004】
最新のバフルまたはピラー充填材は、支持部材またはキャリヤーの上に配置された封止材料を含むように設計されている。キャリヤーは一般に、硬質プラスチックのような硬質材料から製造されるので、その形状は、封止されるキャビティの形状に近い。キャリヤーをキャビティに挿入できるように、キャリヤー/封止材料の組み合わせの形状を作る。典型的には、封止材料がキャビティ壁と一緒にシールを形成できるように、キャビティへの挿入後、封止材料を(熱的または化学的に)活性化して膨張(または「発泡」)させる。このようにして、膨張した封止材料は、キャリヤーとキャビティ壁との間に気密シールを形成する。
【0005】
WO 00/03894 A1は、キャビティの所定の断面で車体のキャビティを封止するための軽量膨張性バフルを開示している。このバフルは、キャビティの断面形状にほぼ対応しているがより小さい形状の外周を有する硬質支持プレートを含んでなる。該バフルは、材料が膨張する活性化温度範囲を有する、硬質支持プレートの外周に取り付けられた熱膨張性封止材料を含んでなる。該支持プレートは、封止材料の活性化温度範囲より高い融点を有する材料で形成されている。活性化すると、封止材料は硬質支持プレートから放射状に膨張し、硬質支持プレートとキャビティ壁との間の断面キャビティを充填する。
【0006】
WO 01/83206 A1は、キャビティを介した音の伝達を減衰し、構造部材の長手軸を横断する方向に補強するために、構造部材のキャビティ内で使用するための、組み合わされたバフルおよび補強用アセンブリを開示する。組み合わされたアセンブリは、内部領域と、周縁部と、好ましくは構造部材壁の対応する穴への挿入に適したクリップ形状の、取り付け部材とを含んでなる合成キャリヤーを包含する。該キャリヤーは、キャリヤーの外周の周りに広がる補強材の連続するバンドによって囲まれている。キャリヤーの周縁部は、熱膨張性材料を受けるためのベース壁および支持フランジを含み得る。
【0007】
従来技術によれば、キャリヤーは通常、プレートとして成形される。このプレートは、金属または熱可塑性樹脂から形成してよく、後者の場合、熱可塑性樹脂は場合により繊維強化されていてもよい。好ましい熱可塑性樹脂は、ポリアミド、ポリイミド、ポリオキシプロピレンまたはポリエチレンテレフタレートである。熱可塑性樹脂は、熱膨張性材料の膨張温度より高い融点を有する。場合により支持構造物を含んでいてもよいキャリヤープレートは、好ましくは、射出成形によって製造される。好適な態様では、熱可塑性キャリヤープレートおよび熱膨張性材料は、同じ射出成形装置を用いて、1回の共押出法または続いて実施される2回の押出法のいずれかで形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO 00/03894 A1
【特許文献2】WO 01/83206 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術のピラー充填材の設計において、キャリヤープレートは、キャビティの封止を主として確実にし、かつ完成バフルの音響減衰特性に適度に寄与するバリヤーとして機能する。本発明の課題は、熱可塑性材料から製造された(ピラー充填材が膨張する温度で)熱的に不活性なキャリヤー、および発泡後にキャリヤーとキャビティ内壁との間の空間を充填する熱膨張性(発泡性)材料を含んでなるピラー充填材の、音響減衰効率を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この課題は、キャリヤーの熱可塑性材料に制振性ポリマーを添加することによって解決される。したがって、本発明は、
a)180℃以下の温度まで加熱したときに変形しないポリマー材料(A)から製造されたキャリヤープレートの1つ以上、および
b)熱膨張性材料(B)
を含んでなる、内面を有する縦キャビティの封止および音響減衰のためのインサートであって、ポリマー材料(A)が、
・キャリヤープレートに機械的強度を与える主ポリマー(A1)、および
・少なくとも1種の制振性ポリマー(A2)
を含んでなるインサートを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】標準的なバフルの設計を示す。
【図2】周波数の関数としての、図1のバフルについての計算された音響透過損失(単位:dB)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましくは、1つ以上のキャリヤープレートは、220℃以下の温度まで加熱したときに変形しないポリマー材料(A)から製造する。
【0013】
主ポリマー(A1)は、ピラー充填材のキャリヤープレートを製造するための、従来技術で知られているポリマー材料から選択することができる。例えば、主ポリマー(A1)は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ナイロンのようなポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリエーテルイミド(PEI)、およびポリフェニレンイミド(PPI)からなる群から選択することができる。好ましくは、主ポリマー(A1)はポリアミドである。
【0014】
制振性ポリマー(A2)は、好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、並びにA-B、A-B-A、A-(B-A)n-2-B、A-(B-A)n-1および(A-B)n-Yタイプの(直鎖および放射状ブロックコポリマーを包含する)ブロックコポリマー[ここで、Aは芳香族ポリビニル(硬質)ブロックであり、Bブロックは、部分的にまたは完全に水素化されていてもよい、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのゴム様(軟質)ブロックを表し、Yは多官能性化合物であり、nは少なくとも3の整数である。]からなる群から選択される。ブロックは、テーパー状であってもよいし、性質が傾斜していてもよいし、全体が1種の重合モノマーで構成されていてもよい。
【0015】
Bブロックの水素化は、元から存在している二重結合を消失させ、ブロックコポリマーの熱安定性を高める。そのようなコポリマーが、本発明のある態様で好ましい場合がある。
【0016】
適当なブロックコポリマーは、SBS(スチレン/ブタジエン/スチレン)コポリマー、SIS(スチレン/イソプレン/スチレン)コポリマー、SEPS(スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、SEEPS(スチレン/エチレン/エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー、またはSEBS(スチレン/エチレン/ブタジエン/スチレン)コポリマーを包含するが、それらに限定されない。
【0017】
特に適当なブロックコポリマーは、スチレン/イソプレン/スチレントリブロックポリマーおよびそれらの完全または部分的水素化誘導体を包含し、ポリイソプレンブロックは、比較的高い割合の、1,2配置および/または3,4配置を有するイソプレン由来のモノマー部分を含有する。好ましくは、少なくとも約50%の重合イソプレンモノマー部分が1,2配置および/または3,4配置を有し、イソプレン部分の残余は1,4配置を有する。そのようなブロックコポリマーは、Kuraray Co., Ltd.からHYBRARの商標で入手可能であり、US 4,987,194(同特許の全てを引用してここに組み込む)に記載の方法を用いて調製することもできる。
【0018】
本発明の好ましい態様では、「硬質」ブロックは、ブロックコポリマーの約15〜約30重量%のブロックコポリマーに相当し、「軟質」ブロックは、ブロックコポリマーの約70〜約85重量%に相当する。「軟質」ブロックのガラス転移温度は、好ましくは約−35℃〜約10℃であり、「硬質」ブロックのガラス転移温度は、好ましくは約90℃〜約110℃である。ブロックコポリマーのメルトフローインデックスは、好ましくは(ASTM D 1238、190℃、2.16kgによる測定で)約0.5〜約6である。典型的には、ブロックコポリマーは、約30,000〜約300,000の数平均分子量を有する。
【0019】
適当な熱可塑性ポリウレタン(TPU)の例は、ジイソシアネートと、一分子あたり少なくとも2個のイソシアネート反応性基を有する化合物(好ましくは二官能性アルコール)との反応により、従来法にしたがって調製された熱可塑性ポリウレタンである。使用される適当な有機ジイソシアネートは、例えば、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、複素環式および芳香族のジイソシアネートを包含する。
【0020】
ジイソシアネートの特定例は、脂肪族ジイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート;脂環式ジイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよび1−メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、並びに対応する異性体混合物、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、並びに対応する異性体混合物;芳香族ジイソシアネート、例えば、2,4−トルイレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネートおよび2,6−トルイレンジイソシアネートの混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物、ウレタン変性液体4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−1,2−ジフェニルエタンおよび1,5−ナフチレンジイソシアネートを包含する。96重量%を超える4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート含有量を有するジフェニルメタンジイソシアネート異性体混合物を好ましくは使用し、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,5−ナフチレンジイソシアネートを特に使用する。前記ジイソシアネートは単独でまたは互いの混合物として使用できる。
【0021】
イソシアネート基と反応する化合物は、ポリヒドロキシ化合物、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールまたはポリカーボネートポリオール、或いは窒素原子、リン原子、硫黄原子、および/またはケイ素原子を含有してもよいポリオール、もしくはそれらの混合物を包含するが、それらに限定されない。好適には、一分子あたり平均して約1.8〜約3.0個のツェレビチノフ活性水素原子、好ましくは一分子あたり平均して約1.8〜約2.2個のツェレビチノフ活性水素原子を含有し、かつ400〜20,000g/molの数平均分子量を有する直鎖ヒドロキシル末端ポリオールを、ポリオールとして使用する。これらの直鎖ポリオールはしばしば、それらの製造方法の結果として少量の非直鎖化合物を含有する。したがって、これらはしばしば「実質的に直鎖のポリオール」とも称される。
【0022】
好ましくは、室温で液体、ガラス状固体/非晶質または結晶質である、400〜20,000、好ましくは1000〜6000の数平均分子量範囲の、一分子あたり2個または3個のヒドロキシル基を含有するポリヒドロキシ化合物が、ポリオールとして適している。その例は、二官能性ポリプロピレングリコールおよび/または三官能性ポリプロピレングリコールである。エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのランダムコポリマーおよび/またはブロックコポリマーを使用することもできる。好ましく使用できるポリエーテルの別の群は、ポリテトラメチレングリコール(ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ−THF)を包含する。ポリテトラメチレングリコールは、例えばテトラヒドロフランの酸重合によって調製され、ポリテトラメチレングリコールの数平均分子量範囲は、典型的には600〜6000、好ましくは800〜5000である。
【0023】
ジカルボン酸またはトリカルボン酸(例えば、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、スベリン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、3,3−ジメチルグルタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、二量化脂肪酸)またはそれらの混合物と、低分子量ジオールまたはトリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、二量化脂肪アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン)またはそれらの混合物との縮合によって調製できる、液体、ガラス状非晶質または結晶質のポリエステルもまた、ポリオールとして適している。
【0024】
TPUを調製するために使用されるポリオールの別の例は、「ポリカプロラクトン」としても知られている、ε−カプロラクトンに基づくポリエステルである。
【0025】
しかしながら、油脂化学由来のポリエステルポリオールを使用することもできる。これらのポリエステルポリオールは、例えば、1種以上のC1〜12アルコールによる、少なくとも部分的にオレフィン性不飽和の脂肪酸を含有する脂肪混合物のエポキシ化トリグリセリドの完全開環、および続いての、アルキル基中に1〜12個の炭素原子を含有するアルキルエステルポリオールへのトリグリセリド誘導体の部分的エステル交換によって調製することができる。別の適当なポリオールは、ポリカーボネートポリオールおよび二量化ジオール(Henkel)、並びにひまし油およびその誘導体である。例えば商品名「Poly-bd」で入手可能であるような、ヒドロキシ官能性ポリブタジエンを、本発明にしたがって使用されるTPUを調製するためのポリオールとして使用できる。
【0026】
好ましくは、ポリエステルポリオールとガラス状非晶質または結晶質ポリエステルポリオールとの組み合わせを、TPUを調製するために使用する。
【0027】
好適には、ポリオールは、約1.8〜2.3、好ましくは1.9〜2.2、特に約2.0の、イソシアネートに対する平均官能価を有する。
【0028】
熱可塑性ポリウレタンは、低分子量ポリオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはブタジエングリコール、或いは低分子量アミン、例えば、1,2−ジアミノエチレン、1,3−ジアミノプロピレン、1,4−ジアミノブタンまたは1,6−ジアミノヘキサンのような連鎖延長化合物を付加的に用いて調製してもよい。
【0029】
好ましい態様では、熱可塑性ポリウレタンの軟質領域は、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(1,4−ブテンアジペート)、ポリ(エチレン1,4−ブテンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレン 2,2−ジメチルプロピレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(ジエチレングリコールアジペート)、ポリ(1,6−ヘキサンジオールカーボネート)およびポリ(オキシテトラメチレン)からなる群から選択される。
【0030】
本発明における使用に適した別の制振性ポリマー(A2)は、ハードセグメントおよびソフトセグメントの両方を含有する別のタイプのブロックコポリマー、例えば、ポリスチレン/ポリジメチルシロキサンブロックコポリマー、ポリスルホン/ポリジメチルシロキサンブロックコポリマー、ポリエステル/ポリエーテルブロックコポリマー(例えばコポリエステル、例としてジメチルテレフタレート、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、およびテトラメチレングリコールから合成されるコポリエステル)、ポリカーボネート/ポリジメチルシロキサンブロックコポリマー、ポリカーボネート/ポリエーテルブロックコポリマー、コポリエーテルアミド、コポリエーテルエステルアミドなどを包含する。ブロックコポリマーではないが多層系またはアロイを一般に相互微分散させる制振性ポリマー(A2)を使用してもよく、その例は、ポリプロピレンとエチレン−プロピレンゴム(EPR)またはエチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)ゴムとの混合物(そのような混合物はしばしばグラフトまたは架橋されている)を包含する。
【0031】
好適には、制振性ポリマー(A2)は、純粋な状態で−25℃〜+30℃の範囲に(DSC(示差走査熱量測定法)によって測定された)ガラス転移温度を有する、ポリマーまたはコポリマーから選択する。好ましい態様では、インサートのキャリヤープレートは、第一制振性ポリマー(A2)および第二制振性ポリマー(A2)を少なくとも含んでなり、第一制振性ポリマー(A2)は、純粋な状態で−25℃〜0℃の範囲に、好ましくは−20℃〜−5℃の範囲にガラス転移温度を有し、第二制振性ポリマー(A2)は、純粋な状態で0.1℃〜30℃の範囲に、好ましくは4℃〜20℃の範囲にガラス転移温度を有する。
【0032】
したがって、第二制振性ポリマー(A2)は、熱可塑性ポリウレタン、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、スチレン/イソプレンブロックコポリマー、水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマー、スチレン/イソプレン/スチレン/トリブロックコポリマー、および水素化スチレン/イソプレン/スチレントリブロックコポリマーからなる群から選択してよい。インサートが、制振性ポリマー(A2)として、スチレン/イソプレン/スチレントリブロックコポリマーを単独で、または他の制振性ポリマー(A2)との混合物として含んでなることが、特に好ましい。
【0033】
好ましい態様では、インサートは、第一制振性ポリマー(A2)および第二制振性ポリマー(A2)を少なくとも含んでなり、第一制振性ポリマー(A2)は、熱可塑性ポリウレタン、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、スチレン/イソプレンブロックコポリマー、および水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマーからなる群から選択され、第二制振性ポリマー(A2)は、スチレン/イソプレン/スチレン/トリブロックコポリマー、および水素化スチレン/イソプレン/スチレントリブロックコポリマーからなる群から選択される。好適には、第一制振性ポリマーは−25℃〜0.0℃の範囲にガラス転移温度を有し、第二制振性ポリマーは0.1℃〜30℃の範囲にガラス転移温度を有する。
【0034】
第一制振性ポリマーおよび第二制振性ポリマーは、好ましくは共に、スチレン/イソプレン/スチレントリブロックコポリマー(SIS)、および水素化スチレン/イソプレン/スチレントリブロックコポリマーから選択する。非水素化トリブロックコポリマーが特に好ましい。スチレン含有量は、好ましくは15〜25%の範囲、より好ましくは19〜21%の範囲である。第一制振性ポリマーに適した材料は、例えばKuraray社製Hybrar(登録商標) 5125(DSCによるガラス転移温度:−13℃)であり、第二制振性ポリマーb)に適した材料は、例えばKuraray社製Hybrar(登録商標) 5127(DSCによるガラス転移温度:+8℃)である。
【0035】
上記した制振性ポリマー(A2)は、極めて良好な制振特性を有するフォームを生じる発泡性材料成分として知られている。それらはかつて、制振性デバイスにおいて、キャリヤー材料自体の成分としてではなく、キャリヤー上に配置される熱膨張性材料(本発明では「B」)として使用されていた。従来技術のそのようなデバイスの例は、WO2007/039308、WO2007/039309、および本特許出願の出願日の時点では非公開であったPCT/EP2007/008141に記載されている。
【0036】
好適には、インサートのキャリヤープレートは、キャリヤープレートの総ポリマー含有量に対して10〜40重量%、好ましくは15〜25重量%の制振性ポリマー(A2)を含有する。第一制振性ポリマーおよび第二制振性ポリマーを上記にしたがって使用するならば、それらの質量比は、5:1〜1:5、好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2の範囲であり得る。
【0037】
先の段落の重量比が関連しているポリマーA2およびポリマーA1に加えて、キャリヤープレートは、例えば炭酸カルシウムまたは硫酸バリウムのような充填材を含有してよい。キャリヤーは、例えばガラス繊維で、強化された繊維であってもよい。
【0038】
本発明のキャビティ充填インサートは、実質的に平面であってよい。本発明において「実質的に平面」とは、キャビティ充填インサートが比較的平らで薄く、インサートの最大幅より有意に小さい最大厚さを有することを意味する。例えば、インサートの最大厚さは、典型的には、インサートの最大幅の20%未満である。キャビティ充填インサートの外周に存在する熱膨張性材料の厚さは、典型的には、約4〜約10mmである。本発明において、「厚さ」は、インサート平面に垂直であり、かつインサートが配置される中空構造部材の長手軸に平行であるキャビティ充填インサートの寸法を意味する。
【0039】
別の態様では、インサートのキャリヤープレートを、本特許出願の出願日の時点では非公開であったPCT/EP2007/007234に記載されているように曲げる。同特許文献に記載されているように、本発明のバフルは、外周を有するキャリヤープレート、およびその外周の大部分に沿った熱膨張性材料のストランドを含んでなり得る。このストランドは、熱膨張性材料によって覆われていないキャリヤープレートの中央部を囲んでいる。外周は、外周によって限定される平均平面を規定する。そして、平均平面からの最大距離を有する中央部にある地点が、キャリヤープレートの最大直線長さの少なくとも5%である平均平面からの距離に位置するように、キャリヤープレートの中央部を、平均平面から離して曲げる。
【0040】
プレートは、(「垂直プレート軸」と称される)最小伸長方向に、構造物の最大長さ方向における構造物長さの最大10%であり、かつ「垂直プレート軸」に対して垂直な方向における構造物最小幅の最大25%である、厚さを有する構造物として定義される。理想的には、プレートは、プレートから突出している場合がある熱膨張性材料Bのための支持構造物を除いて平らである。しかしながら、本発明の1つの態様では、キャリヤープレートの中央部を曲げてアーチ形または「ボウル状の」構造物を形成するので、プレートは凸状「上」面および凹状「下」面を有する。この曲がったまたはアーチ形の構造に代えて或いは加えて、プレートは集中質量分布を示してもよい。これは、プレートの質量が均一には分布しておらず、質量の一部が1つ以上の選択された箇所周辺に集中していることを意味する。特に、質量は、プレートの重心周辺に、またはプレートが曲がっているなら、曲がった構造物の重心に近いプレート上の地点周辺に集中し得る。
【0041】
熱膨張性材料(B)は、ピラー充填材の分野で知られている材料であってよい。熱膨張性材料は、例えば、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、(重合によってある割合で組み込まれる(メタ)アクリル酸を場合により含有してもよい)エチレンと(メタ)アクリレートエステルのコポリマー、スチレンとブタジエンまたはイソプレンとのランダムコポリマーまたはブロックコポリマー、或いはそれらの水素化生成物から調製することができる。後者は、SBS、SISタイプのトリブロックコポリマーまたはそれらの水素化生成物、SEBS或いはSEPSであってもよい。加えて、ポリマー組成物は、架橋剤、カップリング剤、可塑剤、並びに更なる助剤および/または添加剤を含有してもよい。
【0042】
十分な発泡量および膨張性を達成するために、これらのポリマー組成物は、発泡剤を含有してもよい。既知の発泡剤全て、例えば、分解の結果として気体を放出する「化学発泡剤」または「物理発泡剤」、即ち膨張性中空ビーズが、基本的に発泡剤として適している。化学発泡剤の例は、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホン酸ヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホヒドラジド、ベンゼン−1,3−ジスルホヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジドバジドである。物理発泡剤の例は、ポリ塩化ビニリデンコポリマーまたはアクリロニトリル/(メタ)アクリレートコポリマーに基づく膨張性プラスチック中空マイクロビーズであり、例えば、Pierce & Stevens社から「Dualite(登録商標)」の商品名で、Casco Nobel社から「Expancel(登録商標)」の商品名で市販されている。好ましくは、熱膨張性材料は、120℃〜200℃の活性化温度を有する。
【0043】
更に、WO2007/039309および(本特許出願の出願日の時点では非公開であった)PCT/EP2007/008141に記載されている熱膨張性材料を、本発明において、熱膨張性材料(B)として使用してよい。
【0044】
したがって、熱膨張性材料は、以下のWO2007/039309の特許請求の範囲に相当し、選択することができる。
【0045】
1.膨張時に、0〜500Hzの振動数範囲、−10℃〜+40℃の温度で、0.1MPa〜1000MPaのヤング貯蔵弾性率E’および0.3より大きい損失係数を有する熱膨張性材料。
2.熱膨張性材料が、少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、少なくとも1種の非弾性熱可塑性樹脂、少なくとも1種の安定剤または酸化防止剤、少なくとも1種の発泡剤、および少なくとも1種の硬化剤を含んでなる、請求項1に記載の熱膨張性材料。
3.熱膨張性材料が少なくとも1種のペルオキシド硬化剤を含んでなる、請求項1または2に記載の熱膨張性材料。
4.熱膨張性材料が、熱可塑性ポリウレタン、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、スチレン/イソプレンブロックコポリマー、および水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性エラストマーを含んでなる、請求項1〜3のいずれかに記載の熱膨張性材料。
5.熱膨張性材料が、エチレン/酢酸ビニルコポリマーおよびエチレン/メチルアクリレートコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の非弾性熱可塑性樹脂を含んでなる、請求項1〜4のいずれかに記載の熱膨張性材料。
6.熱膨張性材料が、エチレン/酢酸ビニルコポリマーおよびエチレン/メチルアクリレートコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の非弾性熱可塑性樹脂と、熱可塑性ポリウレタン、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、スチレン/イソプレンブロックコポリマー、および水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性エラストマーとを含んでなる、請求項1〜5のいずれかに記載の熱膨張性材料。
7.熱膨張性材料が10重量%未満の充填材を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の熱膨張性材料。
8.熱膨張性材料が少なくとも1種のオレフィン性不飽和モノマーまたはオリゴマーを含んでなる、請求項1〜7のいずれかに記載の熱膨張性材料。
9.熱膨張性材料が少なくとも1種のC1〜C6アルキル(メタ)アクリレートを含んでなる、請求項1〜8のいずれかに記載の熱膨張性材料。
10.熱膨張性材料が少なくとも1種の可塑剤を含んでなる、請求項1〜9のいずれかに記載の熱膨張性材料。
【0046】
11.熱膨張性材料が少なくとも1種のワックスを含んでなる、請求項1〜10のいずれかに記載の熱膨張性材料。
12.熱膨張性材料が少なくとも1種の潜伏性化学発泡剤を含んでなる、請求項1〜11のいずれかに記載の熱膨張性材料。
13.熱膨張性材料が少なくとも1種の粘着付与樹脂を含んでなる、請求項1〜12のいずれかに記載の熱膨張性材料。
14.熱膨張性材料が少なくとも1種の発泡剤活性剤を含んでなる、請求項1〜13のいずれかに記載の熱膨張性材料。
15.熱膨張性材料が、一分子あたり一つだけの炭素−炭素二重結合を有するオレフィン性不飽和モノマーまたはオリゴマーを少なくとも1種含んでなる、請求項1〜14のいずれかに記載の熱膨張性材料。
16.熱膨張性材料が、少なくとも1種のスチレン/イソプレン/スチレントリブロックポリマー或いは完全にまたは部分的に水素化されたそれらの誘導体であって、少なくとも約50%の重合イソプレンモノマー部分が1,2配置および/または3,4配置を有するものを含んでなる、請求項1〜15のいずれかに記載の熱膨張性材料。
17.熱膨張性材料が、
a)25〜70重量%の少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、
b)15〜40重量%の少なくとも1種の非弾性熱可塑性樹脂、
c)0.01〜2重量%の少なくとも1種の安定剤または酸化防止剤、
d)2〜15重量%の少なくとも1種の発泡剤、および
e)0.5〜4重量%の少なくとも1種の硬化剤、
を含んでなる、請求項1に記載の熱膨張性材料。
18.熱膨張性材料が、
a)35〜55重量%の、熱可塑性ポリウレタン、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、スチレン/イソプレンブロックコポリマー、および水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、
b)20〜35重量%の、エチレン/酢酸ビニルコポリマーおよびエチレン/メチルアクリレートコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の非弾性熱可塑性樹脂、
c)0.05〜1重量%の少なくとも1種の安定剤または酸化防止剤、
d)150℃の温度で少なくとも20分間加熱すると熱膨張性材料が体積にして少なくとも100%膨張するのに有効な量の、少なくとも1種の潜伏性化学発泡剤、
e)0.5〜4重量%の少なくとも1種のペルオキシド、および
f)0.5〜2重量%の少なくとも1種のオレフィン性不飽和モノマーまたはオリゴマーを含んでなり、熱膨張性材料が10重量%未満の充填材を含有する、請求項1に記載の熱膨張性材料。
19.熱膨張性材料が、
a)25〜70重量%の少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、
b)15〜40重量%の少なくとも1種の非弾性熱可塑性樹脂、
c)0.01〜2重量%の少なくとも1種の安定剤または酸化防止剤、
d)2〜15重量%の少なくとも1種の発泡剤、
e)0.5〜4重量%の少なくとも1種の硬化剤、
f)10重量%までの量の少なくとも1種の粘着付与樹脂、
g)10重量%までの量の少なくとも1種のワックス、および
h)5重量%までの量の少なくとも1種の可塑剤、
を含んでなる、請求項1に記載の熱膨張性材料。
20.熱膨張性材料が、
a)35〜55重量%の、スチレン/イソプレンブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のスチレン/イソプレンブロックコポリマー熱可塑性エラストマー、
b)20〜35重量%の、エチレン/酢酸ビニルコポリマーからなる群から選択される、少なくとも1種の非弾性熱可塑性樹脂、
c)0.05〜1重量%の少なくとも1種の安定剤または酸化防止剤、
d)150℃の温度で少なくとも20分間加熱すると熱膨張性材料が体積にして少なくとも100%膨張するのに有効な量の、少なくとも1種の潜伏性化学発泡剤、
e)0.5〜4重量%の少なくとも1種の有機ペルオキシド、
f)0.5〜2重量%の少なくとも1種のC1〜C6アルキル(メタ)アクリレート、
g)10重量%までの量の少なくとも1種の粘着付与樹脂、
h)5重量%までの量の少なくとも1種の可塑剤、および
i)10重量%までの量の少なくとも1種のワックス、
を含んでなり、熱膨張性材料が10重量%未満の充填材を含有する、請求項1に記載の熱膨張性材料。
【0047】
更なる詳細は、WO2007/039309の明細書に見られる。
【0048】
別の態様として、本発明で使用される熱膨張性材料(B)は、(本特許出願の出願日の時点では非公開であった)PCT/EP2007/008141の特許請求の範囲に相当し得る。
【0049】
1.a)3〜40重量%の、第一ガラス転移温度を有する第一熱可塑性エラストマー、
b)3〜40重量%の、第二ガラス転移温度を有する第二熱可塑性エラストマー(ここで、第一ガラス転移温度と第二ガラス転移温度とは少なくとも10℃異なる)、
c)5〜50重量%の、少なくとも1つの重合性C=C二重結合を有するポリマーおよびコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー
d)0〜30重量%の少なくとも1種の粘着付与樹脂、
e)150℃の温度で少なくとも20分間加熱すると熱膨張性材料が体積にして少なくとも50%膨張するのに有効な量の、少なくとも1種の潜伏性化学発泡剤、
を含んでなり、成分a)〜e)の和は100重量%未満であり、100重量%までの残余は更なる成分またはアジュバントから構成されている、熱膨張性材料。
2.第一熱可塑性エラストマーa)および/または第二熱可塑性エラストマーb)が、熱可塑性ポリウレタン、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、スチレン/イソプレンブロックコポリマー、および水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の熱膨張性材料。
3.成分a)およびb)が、スチレン/イソプレン/スチレントリブロックコポリマーおよび水素化スチレン/イソプレン/スチレントリブロックコポリマーから選択される、請求項2に記載の熱膨張性材料。
4.第一熱可塑性エラストマーa)が、−25〜0.0℃の範囲に、好ましくは−20〜−5℃の範囲にガラス転移温度を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の熱膨張性材料。
5.第二熱可塑性エラストマーb)が、0.1〜30℃の範囲に、好ましくは4〜20℃の範囲にガラス転移温度を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の熱膨張性材料。
6.少なくとも1種の熱可塑性ポリマーc)が、エチレン/酢酸ビニルコポリマーおよびエチレン/メチルアクリレートコポリマーからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の熱膨張性材料。
7.少なくとも1種の粘着付与樹脂d)が1〜20重量%の量で存在する、請求項1〜6のいずれかに記載の熱膨張性材料。
8.粘着付与樹脂d)が脂肪族炭化水素樹脂から選択される、請求項7に記載の熱膨張性材料。
9.化学線での照射によって硬化または予備硬化され、および/または成分f)として少なくとも1種の化学硬化剤を更なる成分として含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の熱膨張性材料。
10.硫黄および/または硫黄化合物、好ましくは元素硫黄および少なくとも1種の有機二硫化物または多硫化物の混合物に基づく、少なくとも1種の化学硬化剤f)を含有する、請求項9に記載の熱膨張性材料。
【0050】
11.成分の相対量に対する下記条件の少なくとも1つが満たされる、請求項1〜10のいずれかに記載の熱膨張性材料:
成分a)は5〜20重量%、好ましくは8〜16重量%の量で存在し、
成分b)は、15〜40重量%、好ましくは20〜35重量%の量で存在し、
成分c)は、10〜25重量%、好ましくは12〜20重量%の量で存在し、
成分d)は、2〜10重量%、好ましくは3〜8重量%の量で存在し、
成分e)は、1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%の量で存在し、
化学硬化剤f)は、0.2〜5重量%、好ましくは0.7〜2重量%の量で存在し、
成分a)〜f)の和は100重量%未満であり、100重量%までの残余は更なる成分またはアジュバントから構成されている。
12.a)5〜20重量%の、熱可塑性ポリウレタン、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、スチレン/イソプレンブロックコポリマー、および水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマーからなる群から選択され、−25℃〜0.0℃の範囲にガラス転移温度を有する第一熱可塑性エラストマー、
b)15〜40重量%の、熱可塑性ポリウレタン、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、スチレン/イソプレンブロックコポリマー、および水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマーからなる群から選択され、0.1℃〜30℃の範囲にガラス転移温度を有する第二熱可塑性エラストマー、
c)10〜25重量%の、エチレン/酢酸ビニルコポリマーおよびエチレン/メチルアクリレートコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマー、
d)2〜10重量%の少なくとも1種の粘着付与樹脂、
e)150℃の温度で少なくとも20分間加熱すると熱膨張性材料が体積にして少なくとも50%膨張するのに有効な量の、少なくとも1種の潜伏性化学発泡剤、
f)0.5〜4重量の、硫黄および/または硫黄化合物に基づく少なくとも1種の硬化剤
を含んでなり、成分a)〜f)の和は100重量%未満であり、100重量%までの残余は更なる成分またはアジュバントから構成されている、請求項1〜11のいずれかに記載の熱膨張性材料。
13.更なる成分またはアジュバントが、
g)フィラー5〜40重量%、
h)可塑剤2〜20重量%、
i)硬化触媒1〜5重量%、
k)酸化防止剤および/または安定剤0.05〜5重量%、
l)促進剤0.05〜5重量%、
m)ウレア1〜10重量
の1種以上を含んでなる、請求項1〜12のいずれかに記載の熱膨張性材料。
14.硬化触媒i)が亜鉛化合物から選択される、請求項13に記載の熱膨張性材料。
15.促進剤l)がチアゾール、スルフェンアミドおよびそれらの混合物から選択される、請求項13または14に記載の熱膨張性材料。
【0051】
通例、熱膨張性材料は、キャリヤープレートを完全に包囲しており、好ましくは、支持構造物を形成している、U字形境界または放射状溝の中に配置されており、それによって、通例、熱膨張性材料は、U字形部品の開いた側から突出する。しかしながら、L字形支持構造物も可能である。必ずというわけではないが通常、キャリヤープレートおよび支持構造物は同じ材料で製造する。キャリヤープレートおよび支持構造物を同じ熱可塑性材料で製造するならば、それらは通常、一段射出成形工程で一緒に形成する。
【0052】
別の態様では、バフルは、少なくともキャリヤープレートの周縁部に沿って間に熱膨張性材料(B)が配置された2つの平行なキャリヤープレートを含んでなる。
【0053】
インサートまたはバフルの断面形状を、ピラーまたは中空フレーム要素の断面に適合させ、それによって、未膨張および未硬化の状態で、バフルキャリヤープラス熱膨張性材料の断面を、中空フレーム要素またはピラーの断面開口部より小さくする。これによって、プロセス流体(例えば、脱脂流体、リン酸塩処理流体および電着塗装用塗料)が、中空フレーム要素およびピラーを通って自由に流れ、その内壁を完全に湿潤させることが可能になる。電着塗装用塗料の硬化中、熱膨張ポリマー組成物は(しばしば「自動車車体工場炉」とも称される)電着塗装炉内で活性化される。この時点で、熱膨張性材料(B)は、支持構造物の壁によって場合によりガイドされていてよいバフル外周の周りに放射状に膨張し、硬化し、中空フレーム要素またはピラーの内壁に確実に接着し、それによって、中空要素を効果的に封止する。
【0054】
本発明の分野では通例であるように、インサートまたはバフルは、好ましくは、キャビティ内にバフルを固定するための取り付け部材または留め具を少なくとも1つ含んでなる。構造部材キャビティの内壁に、膨張性材料を有するキャリヤーを固定できるようにするための、この技術分野で知られているデバイスを、本発明のキャビティ充填インサートまたはバフルにおいて、取り付け部材として使用してよい。特定の設計の選択が特に重要であるとは考えられない。例えば、取り付け部材は、構造部材開口部における確実な受け入れのために形成された、弾性的に撓むことができる返しを2つ以上含んでいてよい。各々の返しは、フックを形成するようにシャンクに対してある角度をなして突出する保持部を有するシャンクを含んでなり得る。僅かな力を加えて、そのような取り付け部材をキャビティ壁開口部に挿入する。それによって、返しが一緒に、互いに向かって可逆的に曲げられる。返しは開口部を通過した後、互いに離れて正位置に戻る。これによって、保持部を開口部周囲付近で構造部材外面にぴったりとはめることが可能になり、それによって、取り付け部材が開口部を通して容易に引き出されることを防ぎ、キャビティ内にキャビティ充填インサートが固定される。容易な取り外しを防ぐためにこのようにバフルを取り付けることは、非常に望ましい。なぜなら、そうでなければ、熱膨張性材料を加熱および活性化する前、車両の組立てにおいて構造部材が通常受ける取扱いによって、バフルはもはやキャビティ内の所望の位置に適切に配置されなくなると考えられるからである。
【0055】
別のタイプの取り付け部材を、この目的のために使用してもよく、その例は、角度が付いた多数のフランジを伴った細長い部分を有する(典型的には弾性プラスチックで製造された)「クリスマスツリー」形留め具を包含する。キャビティ充填インサートまたはバフルは、1つの取り付け部材、或いは同じタイプまたは異なったタイプの複数の取り付け部材を有してよい。
【0056】
典型的には、取り付け部材は、バフルから放射状に突出し、一般的には、バフルの平均平面に対して平行であるか、またはバフルの平均平面に存在し得る。好ましくは、取り付け部材(留め具)は、キャリヤープレートと同じ材料から製造し、同じ射出成形工程でキャリヤープレートと一緒に一体に成形する。熱膨張性材料(B)は通常、留め具の基礎部(キャリヤープレートとの結合を形成する留め具の部分)を囲むように配置されるので、留め具が挿入されるキャリヤー壁開口部は、膨張し硬化した熱膨張性材料によって閉じられ、封止される。
【0057】
ピラー充填材またはバフルの分野では通例であるように、熱膨張性材料のための支持構造物と留め具とを場合により伴っていてよいキャリヤープレートは、キャリヤープレートのための溶融材料を型内に射出成形することによって製造する。本発明にしたがってキャリヤープレートを製造するためには、2つの手順が可能である。第一の手順では、型に射出する前に、キャリヤープレートを製造するための主ポリマー(A1)を1種以上の制振性ポリマー(A2)と混合する。この混合物は、溶融したポリマー(A1)および(A2)を混合するか、または加熱による溶融の前に固体ポリマーの粒子(例えば顆粒)を混合することによって調製することができる。第二の手順では、溶融したポリマー(A1)および(A2)を同時に共押出するが、別々に型に導入する。
【0058】
したがって、本発明は、本発明のキャリヤープレートの2つの製造方法も包含する。第一の態様では、本発明は、工程1としてキャリヤープレートを射出成形する工程を含む、本発明の封止および音響減衰のためのインサートの製造方法であって、工程1の前または工程1中に主ポリマー(A1)および1種以上の制振性ポリマー(A2)を混合する方法に関する。第二の態様では、本発明は、工程1としてキャリヤープレートを射出成形する工程を含む、本発明の封止および音響減衰のためのインサートの製造方法であって、工程1において、主ポリマー(A1)および1種以上の制振性ポリマー(A2)を同時に射出する方法に関する。
【0059】
好ましくは、工程2として、工程1で得た射出成形キャリヤープレートを熱膨張性材料(B)で重ね成形する。しかしながら、キャリヤープレートとは別に、例えばストランドとして押し出すことによって、熱膨張性材料(B)を製造することも可能である。次いで、このストランドを切断し、何らかの固定手段によってキャリヤープレートに固定する。
【0060】
最後に、本発明は、
a)縦キャビティ内の所定の位置に、本発明のキャビティ充填インサートを配置する工程、および
b)熱膨張性材料(B)が膨張してキャビティの内面と接触し、それによってキャビティを封止するのに有効な温度まで、熱膨張性材料を加熱する工程
を含む、縦キャビティにおける空気伝送振動または構造由来の振動を減衰する方法も含む。本発明の分野では通例であるように、加熱は、通常電着塗装塗膜からなる車体第一塗膜を硬化させる(焼付ける)炉内で実施する。この炉内では、車体を110〜150℃の範囲の温度まで加熱する。したがって好ましくは、熱膨張性材料がこの温度範囲で不可逆的に膨張して硬化するように、熱膨張性材料(B)を選択する。
【実施例】
【0061】
本発明の概念の利点を示すために、図1の2つの(発泡後)バフルの音響透過損失を計算した。比較計算では、キャリヤープレートの減衰特性は5%であると考えられた。SISトリブロックコポリマーを含有する本発明のキャリヤープレートについては、20%減衰が音響透過損失として計算された。いずれの場合も、キャリヤープレートの厚さは1.5mmであった。
【0062】
図2は、周波数の関数としての、計算された音響透過損失(単位:dB=デシベル)を示す。5%減衰についての曲線を20%減衰についての曲線と比較すると、計算値は、6dBまでの、第一共鳴周波数(約500Hz)および第二共鳴周波数(約1500Hz)の重要な領域における音響透過損失の向上を示している。
【0063】
図面
図1:
標準的なバフルの設計。バフルは、厚さ1.5mmのキャリヤープレート、およびその外周に沿って熱膨張性材料のための溝を形成する支持構造物からなり、ここでは断面図として示されている。未膨張状態において、熱膨張性材料(マスチック)はキャリヤー構造物の溝を充填し、バフルと車両のキャビティ内壁との間に空間を残す(左の図)。膨張および硬化後(右の図)、膨張した材料は、キャリヤープレートとキャビティ内壁との間の空間を充填する。
図2:
周波数の関数としての、図1のバフルについての計算された音響透過損失(単位:dB)。5%減衰を有するキャリヤープレート(標準的なナイロン、比較例)についての曲線、および本発明の20%減衰を有する(SISトリブロックコポリマー含有)キャリヤープレートについての曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)180℃以下の温度まで加熱したときに変形しないポリマー材料(A)から製造されたキャリヤープレートの1つ以上、および
b)熱膨張性材料(B)
を含んでなる、内面を有する縦キャビティの封止および音響減衰のためのインサートであって、ポリマー材料(A)が、
・キャリヤープレートに機械的強度を与える主ポリマー(A1)、および
・少なくとも1種の制振性ポリマー(A2)
を含んでなるインサート。
【請求項2】
主ポリマー(A1)が、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルイミド、およびポリフェニレンイミドからなる群から選択される、請求項1に記載のインサート。
【請求項3】
制振性ポリマー(A2)が、熱可塑性ポリウレタン、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、スチレン/イソプレンブロックコポリマー、水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマー、スチレン/イソプレン/スチレン/トリブロックコポリマー、および水素化スチレン/イソプレン/スチレントリブロックコポリマーからなる群から選択される、請求項1または2に記載のインサート。
【請求項4】
インサートが第一制振性ポリマー(A2)および第二制振性ポリマー(A2)を少なくとも含んでなり、第一制振性ポリマー(A2)が熱可塑性ポリウレタン、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、スチレン/イソプレンブロックコポリマー、および水素化スチレン/イソプレンブロックコポリマーからなる群から選択され、第二制振性ポリマー(A2)がスチレン/イソプレン/スチレン/トリブロックコポリマー、および水素化スチレン/イソプレン/スチレントリブロックコポリマーからなる群から選択される、請求項3に記載のインサート。
【請求項5】
制振性ポリマー(A2)が、純粋な状態で−25℃〜+30℃の範囲にガラス転移温度を有するポリマーまたはコポリマーから選択される、請求項1〜4のいずれかに記載のインサート。
【請求項6】
インサートが第一制振性ポリマー(A2)および第二制振性ポリマー(A2)を少なくとも含んでなり、第一制振性ポリマー(A2)が純粋な状態で−25℃〜0℃の範囲に、好ましくは−20℃〜−5℃の範囲にガラス転移温度を有し、第二制振性ポリマー(A2)が純粋な状態で0.1℃〜30℃の範囲に、好ましくは4℃〜20℃の範囲にガラス転移温度を有する、請求項5に記載のインサート。
【請求項7】
インサートが、制振性ポリマー(A2)として、スチレン/イソプレン/スチレントリブロックコポリマーを単独で、または他の制振性ポリマー(A2)との混合物として含んでなる、請求項1〜6のいずれかに記載のインサート。
【請求項8】
インサートのキャリヤープレートが、キャリヤープレートの総ポリマー含有量に対して10〜40重量%、好ましくは15〜25重量%の制振性ポリマー(A2)を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載のインサート。
【請求項9】
工程1としてキャリヤープレートを射出成形する工程を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の封止および音響減衰のためのインサートの製造方法であって、工程1の前または工程1中に主ポリマー(A1)および制振性ポリマー(A2)を混合する方法。
【請求項10】
工程1としてキャリヤープレートを射出成形する工程を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の封止および音響減衰のためのインサートの製造方法であって、工程1において、主ポリマー(A1)および制振性ポリマー(A2)を同時に型に射出する方法。
【請求項11】
工程2として、工程1で得た射出成形キャリヤープレートを熱膨張性材料(B)で重ね成形する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
a)縦キャビティ内の所定の位置に、請求項1〜8のいずれかに記載のキャビティ充填インサートを配置する工程、および
b)熱膨張性材料(B)が膨張してキャビティの内面と接触し、それによってキャビティを封止するのに有効な温度まで、熱膨張性材料を加熱する工程
を含む、縦キャビティにおける空気伝送振動または構造由来の振動を減衰する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−512057(P2012−512057A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541096(P2011−541096)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010711
【国際公開番号】WO2010/069339
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】