説明

呼吸加熱器の閉ループ制御のためのPID係数調整

【課題】流量の測定を必要とせず呼吸システム内の温度測定に依拠する信頼性のあるPIDフィードバック制御を提供すること。
【解決手段】呼吸システム(10)のために設けられる加熱器システム(16)は、PIDフィードバック制御(100)を有し、PIDフィードバック制御(100)では、ウォームアッププロセスなどの際に係数が調整され、係数は、流量または湿度レベルを直接監視することを必要とせずに、温度目標値に関する熱入力と熱出力の間の差に基づいて、加熱された水(27)のチャンバ(20)を通る気体の推定流量に対応するように調整される。目標値に関する測定された温度の挙動に基づく係数の定常状態調整もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸ガス(respiratory gas)を加熱するためのフィードバック制御に関し、より詳細には、そのPID閉ループ制御に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸システムは、患者による呼吸を補助または促進するために、酸素、麻酔ガス、および/または空気など、呼吸可能な気体を、患者の口、鼻、または気道に直接提供する。呼吸可能な気体を、呼吸回路の吸息肢ホースまたは導管を通して患者へと押し進めるために、換気装置を呼吸システムの一部として使用することができる。呼吸回路はまた、吐き出された空気およびその他の(1種類または複数種の)気体を患者から換気装置へと戻して運搬するための、呼息肢ホースまたは導管も備えることができる。
【0003】
通常、呼吸可能な気体を患者に提供する前に、呼吸可能な気体を温め、それに湿度を与えることが望ましい。そのために、多くの呼吸システムは、加湿システムを備え、加湿システムは、水を保持するためのチャンバと、チャンバを取り外し可能に装着することができる加熱器ユニットとを有する。加熱器ユニットは、加熱器を備え、加熱器は、1つまたは複数の加熱要素と、熱板を画成する金属板とを備えることができる。チャンバの底面など、チャンバの壁部は、熱伝導性を有し、加熱器の熱板と熱接触してチャンバ内の水を加熱する。チャンバは、手作業で充填可能とすることができ、または、チャンバが空になると、それを選択的に充填するための水源があってもよい。呼吸可能な気体は、チャンバに結合され、加熱および加湿されるようにチャンバを通過させられる。加熱器ユニットおよびチャンバ構成の例が、米国特許第6,988,497号および同第5,943,743号に示されている。吸息肢は、加熱および加湿された気体を、患者および存在する場合は呼息肢へと運搬し、呼息および場合によっては他の気体を患者から運搬する。吸息肢および呼息肢のいずれかまたは両方を、加熱器回路などにより加熱することができ、加熱器回路は、ホースまたは導管内部を通りまたはそれらに沿って延びるワイヤで構成することができる。加熱される肢部を有する呼吸回路の一例が、米国特許第6,078,730号に示されている。いくつかの設定では、(1つまたは複数の)肢部を、加熱しないことができる。
【0004】
適当な加熱構成では、サーモスタットなどを用いて温度目標値が設定される。温度が低下して目標値より低くなると、温度を目標値に戻すために、加熱器への電力がオンにされ、または増大させられる。温度が目標値より高くなる場合、温度が目標値まで降下することを可能にするために、加熱器要素への電力が低減され、またはオフにされる。多くの応用例では、PIDまたは比例-積分-微分制御に基づくより高度な制御を利用することによって、温度のより精密な制御を提供することが可能である。よく知られているように、フィードバック制御は、システムの変数の現在状態を示す、入力信号を獲得し、入力信号と所望の値を表す目標値との間の差分または誤差信号を取得し、システムを目標値に向かって駆動するためにシステムによって使用される修正信号を出力することによって動作する。PIDフィードバック制御では、フィードバックループは、誤差信号の比例相、積分相、および微分相それぞれについて、実験またはその他の方法により決定された係数を用いる計算を含む。
【0005】
PIDフィードバック制御の係数は通常、システムの挙動に影響を及ぼす可能性がある変数の性質に関係して決定される。呼吸システムの関連では、入力値は、測定温度からとられ、出力は、温度を目標値に近付けようとする際に加熱器への電力を調節するために使用される。流量および/または湿度レベルなどの変数は一般に、制御のために監視されず、または知られていないが、それらは(1つまたは複数の)加熱要素の制御の信頼性への影響を有する可能性があり、かつ、患者に到達する気体の温度および湿度レベルに影響を及ぼす可能性がある。例として、係数は、流量が常に一定の範囲内となることを想定して、予め決定されることがある。実際の流量がより低い場合、気体がチャンバを通って流れるときにチャンバから失われる熱が予想よりも少なくなり、たとえば目標値を望ましくなく上回りまたは下回る温度逸脱など、結果的な温度における大きな揺れを生じるおそれがある。同様に、実際の流量が想定される流量より高い場合、予想より大きい熱が失われ、制御により温度を所望の目標値にすることができなくなるおそれがある。したがって、流量および/または湿度レベルの変化が知られておらず、またはそれらを直接決定することができないが、それらがシステムの性能に影響を有する可能性がある場合に、環境内の温度測定値に依拠して信頼性の高いPIDフィードバック制御を提供することが課題となっている。
【特許文献1】米国特許第6,988,497号
【特許文献2】米国特許第5,943,743号
【特許文献3】米国特許第6,078,730号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流量の測定を必要とせず呼吸システム内の温度測定に依拠する信頼性のあるPIDフィードバック制御を提供する。そのために、また本発明の原理によれば、PIDフィードバック制御に使用するための係数は、特に加熱器が比較的低温の状態などからウォームアッププロセスを経ているとき、目標値に関する熱入力と熱出力の差に基づいて調整される。熱入力は、加熱器の温度を測定することによって得ることができ、熱出力は、チャンバの出口の温度を測定することによって得ることができる。その点に関して、ウォームアッププロセス中の目標値に関する加熱器とチャンバ出力との温度差は、チャンバを通る気体の推定流量を示すことが決定されてきた。次いで、推定流量と相関するように係数を調整して、PIDフィードバック制御の動作の正常または定常状態の動作に使用することができる。ただし、流量または湿度レベルを直接監視する必要はない。
【0007】
制御は、まず、第1の流量に相関させられた1組の係数を用いて開始することができる。本発明の特定の実施形態では、流量帯はそれぞれ、それに関連付けられた1組のPID係数を有し、係数は、目標値に関する加熱器とチャンバ出力の間の、測定された温度差に基づく熱入力および熱出力の差に関して、適当な係数の組を選択することによって調整される。その実施形態では、たとえば、ウォームアッププロセス(warm-up process)の際に、ウォームアップがシステムの起動である場合、係数はまず最も低い流量帯用の係数に対応して設定され、ウォームアップが動作の休止後である場合、係数は最後に使用された係数に設定される。システムを一定の期間(「ウォームアップウィンドウ」)にわたり稼動させた後に、(その時点で、またはウォームアップウィンドウ中のセグメント時間にわたる示度(readings)の平均に基づいて)熱入力(加熱器のところで測定された温度など)と熱出力(チャンバ出力にて測定された温度など)との間の温度差が得られ、目標値温度に基づき下方境界および上方境界に対して比較される。温度差が下方境界以下である場合、係数は、PID制御の定常状態動作中に使用するための、より低い流量(次に低い流量帯流量など)用の適当な係数に調整される。測定された温度が上方境界以上である場合、係数は、PID制御の定常状態動作中に使用するための、より高い流量(次に高い流量帯など)用の適当な係数に調整される。
【0008】
有利な実施形態では、(たとえば5 lpmより低い)最も低い流量用、(たとえば10 lpmより高い)最も高い流量用、および(たとえば5〜10 lpmの)中流量用の、3つの流量帯が使用される。その実施形態では、温度差が下方境界以下である場合、最も低い流量帯用のPID係数が使用され、温度差が上方境界以上である場合、最も高い流量帯用のPID係数が使用され、温度差が下方境界と上方境界との間である場合、中流量帯用のPID係数が使用される。係数はこうして、必要に応じて、ウォームアッププロセス中に使用されている現在の組から、定常状態動作中に使用されるべき適当な流量帯用の組へと調整される。
【0009】
熱入力と熱出力の差を示す容易に得られる温度測定値に基づいて1組の係数を選択することなどによる、ウォームアッププロセス中の係数の調整により、定常状態動作中に使用される係数を、流量などを直接監視しまたは得ることなく、システムの推定流量に基づいて設定することが可能になる。さらに、ウォームアッププロセス中の係数の調整は、加熱器が所望の温度に到達するのに必要な時間を大幅に短縮することができる。
【0010】
いくつかの状況ではまた、システムの定常状態中の係数を調整することが望ましいこともある。ウォームアッププロセス中に使用されるのと同じプロセスを用いて、係数を適宜調整することができるが、定常状態動作中にウォームアッププロセスを使用することは、特に呼吸回路が加熱されていない場合には有利ではないことがある。そのため、また本発明の別の態様によれば、係数を定常状態中に、目標値に関して測定された温度の挙動に基づいて調整することができる。特に、流量が、ウォームアッププロセス中に生じ得ると考えられていた流量から逸脱する場合、2つの状況のうちの一方が展開し得ることが分かっている。実際の流量が、現在の係数の組に関する推定流量より低い場合、測定された温度と目標値の間の誤差が、目標値より高いまたは低いリンギングまたは温度逸脱を示す標準偏差またはRMS誤差を表す。標準偏差が許容可能な最小閾値を超える場合、係数はより低い推定流量用に調整される。一方、実際の流量が現在の係数の組に関する推定流量より高い場合、推定された温度と目標値の間の誤差は、比較的一定となるが、許容可能な最小閾値より高くなる。その状況が生じた場合、係数は、より高い推定流量用に調整される。
【0011】
容易に得られる温度測定値を目標値温度と比較することにより決定される誤差をもとに、定常状態動作中に係数を調整することにより、この場合も流量などを直接監視しまたは得ずに、定常状態中の係数をシステムの推定流量の変化またはずれに基づいて調整することが可能になる。
【0012】
上記を鑑みると、流量の測定を必要とせずに呼吸システム内の温度測定に依拠する信頼性のあるPIDフィードバック制御が提供される。本発明のこれらおよびその他の目的、利点、および特徴は、添付の図面と併せて読まれる以下の詳細な説明を検討することによって、より容易に当業者に明らかになるであろう。
【0013】
本明細書に組み込まれ本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の一実施形態を示しており、上記の本発明の全体的な説明および下記の実施形態の詳細な説明とともに、本発明の原理を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、呼吸可能な気体を患者12に供給するための例示的な呼吸システム10である。図示の実施形態では、呼吸システム10は、換気装置14と、加熱器ユニット18および使い捨てチャンバ20など水用の加熱可能な容器を有する加熱器システム16と、呼吸回路21とを備え、呼吸回路21は、吸息肢(inspiratory limb)22を画成する第1の細長いホースまたは導管22、および呼息肢(expiratory limb)24を画成する第2の細長いホースまたは導管24を有する(いくつかの実施形態では、呼吸回路21は呼息肢を備えないことがある)。換気装置14は、酸素、麻酔ガス、および/または空気など、呼吸可能な気体を、気体導管26を通しチャンバ20の空気入口内へと押し進める。水27は、バッグまたはボトルなど給水部28から手動または自動のいずれかで注入されることにより、チャンバ20内で受けられ、かつ、通気することができる。チャンバ20は、加熱器ユニット18によって加熱されて、その中で水27を加熱する。加熱された水蒸気29もまた、チャンバ20内で、その中の水27の水面の上方に生成されることができる。導管26からの気体は、加熱および加湿された気体としてチャンバ20を出る前に、加熱された水27上もしくは加熱された水27内、および/または加熱された水蒸気29内を通過して加熱および加湿される。加熱器システムの例が、上述の米国特許第6,988,497号および同第5,943,743号、ならびに同時係属中の2006年8月31日出願の米国特許出願第11/469,086号、および2006年8月31日出願の同第11/469,113号において示されている。これら4つの開示はすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
加熱および加湿された気体は、吸息肢22を通過することにより、チャンバ20から患者12へと流れる。吸息肢22の第1の端部は、連結部材または接合部30によってチャンバ20に結合され、吸息肢22の第2の端部は、そこを通過する気体の送達を促進する呼吸用アタッチメント32によって患者12に結合される。呼吸用アタッチメント32は、気体配送を増進する、気管内チューブなど侵襲的な装置、またはマスクなど非侵襲的な装置(いずれも図示しない)に結合することができる。気体は、吸息肢22を通り呼吸用アタッチメント32へと進む間に、吸息肢22に連結された加熱器回路34によってさらに加熱することができる。呼息肢24は、患者12から吐出された呼息および他の気体が、換気装置14、大気、または他の場所に戻ることを可能にする。別の加熱器回路36もまた、吐き出された気体を加熱するために呼息肢24に連結することができる。図示の実施形態では、加熱器回路34および加熱器回路36はそれぞれ、コイルの形でその関連する肢部に沿ってまたはそれを通って延びる1つまたは複数の細長い加熱器ワイヤで構成することができるが、その他の加熱器回路構成も可能とすることができる。
【0016】
呼吸システム10はまた、患者温度ケーブル(PTC)38も備え、患者温度ケーブル(PTC)38は、以下で説明する目的で温度示度の形の熱的フィードバックを加熱器ユニット18に提供するための、サーミスタ内蔵プローブなど1つまたは複数の温度応答デバイスを、40にて有する。温度ケーブル38は、第1の通信ケーブル42および第2の通信ケーブル44を備える。温度プローブ40の一つは、吸息肢22の入口にある接合部30に結合されており、チャンバ20から出る加熱および加湿された気体の実際に測定された温度(「出力温度」)を指示する温度示度を第1の通信ケーブル42を通じて提供する。出力温度は、チャンバ20の熱出力とみなすことができ、熱出力値として使用することができる。他のプローブ40は、吸息肢22の出口にある呼吸用アタッチメント32に結合されており、患者に提供される加湿された気体の、実際に測定された温度(「患者温度」)を指示する温度示度を第2の通信ケーブル44を通じて提供する。第1の通信ケーブル42は、出力温度を加熱器ユニット18に送信するための、加熱器ユニット18に電気的に結合された端部48を有する。同様に、第2の通信ケーブル44は、患者温度を加熱器ユニット18に送信するための、加熱器ユニット18に電気的に結合された端部50を有する。第1および第2のケーブル42、44を、加熱器ユニット18上の対合するソケット(図示せず)に結合することを容易にするために、端部48および50を、有利にはコネクタ52によって互いに固定することができる。適当なケーブル38およびプローブ40のさらなる詳細は、本出願と同時に出願した「Dual Potting Temperature Probe」という名称の、米国特許出願第11/927,020号(代理人整理番号MDXCP-24US)、および、本発明と同時に出願した「Environmentally Protected Thermistor for Respiratory System」という名称の、米国特許出願第11/927,077号(代理人整理番号MDXCP-33US)において提示されており、いずれの開示も、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
出力温度および患者温度示度は、55にて加熱器ユニット18の制御装置54に結合される。制御装置54は、57にて加熱器56に動作可能に連結される。加熱器56に熱的に結合されたサーミスタ58(図2)など温度感知デバイスは、加熱器56の実際に測定された温度(「入力温度」)の示度を制御装置54に提供する。入力温度は、チャンバ20への熱入力を表し、熱入力値として使用することができる。1つの適当な加熱器56の一例が、本出願と同時に出願した「Hot Plate Heater for a Respiratory System」という名称の、米国特許出願第11/926,982号(代理人整理番号MDXCP-27US)に記載されており、この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。チャンバ20を通過する呼吸可能な(1種類または複数種の)気体を、望ましく加熱および加湿するために、制御装置54は、以下で説明するように入力温度を利用して加熱器56への電力を調節し、それによりチャンバ20内の水27の温度を、設定された目標値に関する所望の温度に維持しようと試みる。制御装置54は、60、62にて、加熱器回路34、36に動作可能に連結することができ、かつ、独立して加熱器回路34、36に選択的に通電するように構成されることができる。
【0018】
図2により詳細に見られるように、制御装置54はプロセッサ70を備えており、プロセッサ70は、マイクロプロセッサもしくはその他のコンピュータ、またはプログラム可能な論理機構とすることができる。プロセッサ70は、A/D変換器72を通じて、加熱器56に結合された温度応答デバイス58から入力温度示度を受信し、そして、パルス幅変調器(「PWM」)など制御回路74を通じて、トライアックなど電力スイッチ76を駆動するための信号を出力して、加熱器56に選択的に通電し、それによりその温度を調節する。それぞれのプローブ40からの出力温度示度および患者温度示度もまた、それぞれのA/D変換器72を介してプロセッサ70に結合させることができる。同様に、加熱器回路34および36が存在し利用される場合は、プロセッサ70からの信号を、それぞれ、さらなる制御回路74およびさらなる電力スイッチ76に入力して、そのような加熱器回路34および36に選択的に通電することができる。制御装置54はまた、プロセッサ70によって使用される動作プログラムまたはアルゴリズムおよび制御データ、ならびに、82にて入力ダイヤルまたはキーボードを介してユーザ(図示せず)から得られる目標値温度などの入力データを記憶するためのメモリ80を備える。理解されるように、プロセッサ70に独立して結合される様々な装置を示したが、それらは1つまたは複数の共通のバス上で通信してもよい。
【0019】
有利には、プロセッサ70は、図3に図式的に示されるPIDフィードバック制御100を実施する。そのために、PIDフィードバック制御100は、このフィードバックは、メモリ80内に記憶することができる102における目標値温度Tspを、適用可能なA/D変換器72から得られるような適用可能な温度応答デバイス(プローブ40のうちの一方またはサーミスタ58など)からの適当な温度示度と比較するように構成されたフィードバックループの形式である。比較は、加算ブロック104内で達成され、測定された温度の適用可能な目標値温度からの逸脱を表す誤差または差分信号E(摂氏温度など)を生成する。誤差信号Eは、PIDフィードバックアルゴリズム106全体を通じて結合され、PIDフィードバックアルゴリズム106は、修正信号C(ワットなどで)を生成する。修正信号Cは、電力スイッチ76を調整するように制御回路74を駆動するために使用され、電力スイッチ76は、それをオンまたはオフにすることにより、あるいはそのコンダクタンスを必要に応じて変えることにより調整され、それにより、チャンバ20を通過する気体を所望どおりに加熱および加湿することを意図するように、加熱器56を選択的に通電する。
【0020】
制御回路74、スイッチ76、チャンバ20およびその中の水27の挙動、ならびに温度応答デバイス58はすべて、時間遅延を発生(interject)し、この時間遅延は、温度応答デバイス58からの示度を、平均化回路またはアルゴリズム108を用いてたとえば5つなどいくつかの時間間隔にわたり平均化することにより、A/D変換器72によって考慮され、そしてゼロ次保持回路(zero-order hold circuit)またはアルゴリズム110を用いてデジタル化されて、出力を加算要素104に提供する。アルゴリズム106は、z伝達領域内で展開され、誤差信号Eのゼロ次遅延回路またはアルゴリズム112を備え、誤差信号Eは、フィードバック制御に詳しい人には一般的に理解されるように、誤差信号Eの比例のスケーリングされた値、誤差信号Eの積分のスケーリングされた値、および誤差信号Eの微分のスケーリングされた値の組合せによって、修正信号Cを生成するように処理される。各相のためのスケーリングは、対応する係数に基づいており、比例相のための係数はKpと呼ばれ、積分相のための係数はKiと呼ばれ、微分相のための係数はKdと呼ばれる。
【0021】
比例相は、ゼロ次保持112からの誤差信号Eの出力にKpを掛けることによって得られる。積分相は、ゼロ次保持112の現在の誤差信号Eの出力を、たとえば1/100秒遅延させられた、加算ブロック104からの以前の出力の値とともに加えることによって得られる。加算回路またはアルゴリズム120からの累算値にKiを掛けて、PIDアルゴリズムの積分項を生み出す。微分相は、時間tにおけるゼロ次保持112のEの出力と、減算回路またはアルゴリズム122内で決定されるようなEの遅延値との間の差を求め、その結果にKdを掛けることによって得られる。次いで3つの相は、加算回路またはアルゴリズム124にて論理的に加算されて、修正信号Cを生成する。以下は、上記の事柄は次式で表現される。
C = KpE(t)+Kd(dE(t)/dt)+Ki∫E(t)dt
【0022】
関心のある1つの領域は、PIDフィードバックアルゴリズム106内で使用される係数である。PIDフィードバック制御100は通常、所望される有利な温度制御を提供するが、チャンバ20を通る気体の流量がその制御の信頼性に影響を与える可能性があり、したがって、患者12に到達する気体の温度および湿度レベルに悪影響を及ぼすおそれがある。チャンバ20を通過する気体の流量は、1または2リットル/分(liter per minute; lpm)から、50 lpmと100 lpmの間まで、通常は2 lpmから70 lpm以内で、変化する可能性がある。気体がチャンバ20を通って流れるとき、大まかには、熱エネルギーが、気体流量に比例して水27から失われる。水27の温度を所望のレベルに上昇させるために、加熱器56は、チャンバ20を通って流れる気体によって奪われる熱を補償するのに十分な熱を供給しなければならない。従って、空気流量が低いと、水を加熱するために必要な熱はより少ないが、流量が高いと、水温を上昇させるためにはるかに大量の熱が必要となる。流量に依存するもう1つの変数は、水の熱時定数である。システムは、流量が高いと、流量が低いときよりはるかに速く温度を変化させる。
【0023】
制御装置54は、一般に、気体の流量を使用することができないので、システム10で予想される典型的な流量に基づく固定の一組の係数をメモリ80内に設定しプログラムすることが考えられてきた。しかし、メモリ80内にプログラムされた係数の組は、実際の流量に対して大きすぎる流量または低すぎる流量に基づくことになるおそれがある。例として、流量が常に一定の範囲内となることを想定して係数が選択される場合、実際の流量がより低い場合に、気体がチャンバ20を流れるときにチャンバ20から失われる熱が予想より小さくなる。その結果、たとえば目標値より望ましくなく高いまたは低い温度逸脱など、結果的な温度に大きな揺れが生じるおそれがある。同様に、実際の流量が想定される流量より高い場合、予想より大きい熱が失われ、制御100は、温度を所望の目標値にすることができなくなるおそれがある。したがって、流量および/または湿度レベルの変化が知られておらず、またはそれらを直接決定することができないが、それらがシステムの性能に影響を有する可能性がある場合に、環境内の温度測定値に依拠して信頼性のあるPIDフィードバック制御を提供することが課題となっている。
【0024】
本発明の原理によれば、係数は、特に加熱器56が比較的低温状態などからウォームアッププロセスを経る場合、熱入力と熱出力の間の差に関して調整される。定常状態動作のための係数を選択するために使用される1つのウォームアップアルゴリズムまたプロセス200について、図4を参照しながら説明する。ステップ202にて、システム10が予め選択された係数の組を使用して稼動している状態で、熱入力は、温度応答デバイス58から入力温度示度を得ることによって決定することができ、熱出力は、チャンバ20の出口に結合されたプローブ40から出力温度示度を得ることによって決定することができる。それらの温度示度はいずれも、適用可能なそれぞれのA/D変換器72から得られる。ステップ202は、1つのステップとして示されるが、実際は複数のステップで構成することができる。ステップ204にて、入力温度と出力温度の間の差など、熱量差(Td)が決定される。熱量差Tdは、ステップ206において目標値温度Tspと比較され、制御100で現在使用されている係数がチャンバ20を通る気体の推定流量に適切に相関させられているかどうかの指示(indication)を提供する。その点に関して、差Tdが目標値温度Tspとの期待された関係から逸脱する場合、流量はおそらく、現在の係数の流量と十分に近くなく、係数を推定流量に合うように調整しなければならない。そのためには、TdがTspに対して小さすぎる場合、流量はおそらく予想よりも低いので、係数は、ステップ208にてより低い流量用に調整される。同様に、TdがTspに対して大きすぎる場合、流量はおそらく予想より高いので、係数は、ステップ210にてより高い流量用に調整される。TdとTspの間の関係が許容可能である場合、ステップ212にて変更が行われない。
【0025】
図5に示す別のウォームアッププロセス220に関連付けて説明されるように、Tdは、有利には、流量以外の様々な外部の影響を加熱器56が克服するのに十分な期間(「ウォームアップウィンドウ」)の後に得ることができ、さらに有利には、そのウォームアップウィンドウ内の選択された時間区分にわたり、平均入力温度と平均出力温度を比較することにより得ることができる。図5のプロセスのために、3組の係数が予め決定され、たとえばテーブル内など、メモリ80内に記憶されている。各組は、低流量(たとえば5 lpmより低い)用の第1の組、高流量(たとえば10 lpmより高い)用の第2の組、および中流量(5 lpmから10 lpmなど)用の第3の組など、選択された流量帯に対応する。また、下方及び上方境界(それぞれLBおよびUB)が温度目標値Tspに関して固定された関係で設定され、図5のプロセスが開始されて、境界LBおよびUBに対するTdの関係に基づいて係数を調整する。
【0026】
境界および係数の組は、使用されるシステム10の特定の構成および構成要素の所望の性能が得られるように、それらのために実験により決定される。そのために、呼吸回路21を有する一実施形態のための係数は、次の表のように決定される。
【0027】
【表1】

【0028】
呼吸回路が加熱されない一実施形態のための係数は、次の表のように決定される。
【0029】
【表2】

【0030】
制御装置54は、本出願と同時に出願した「Heated Breathing Circuit Detection」という名称の米国特許出願第11/927,004号(代理人整理番号MDXCP-22US)に記載されるように、加熱された呼吸回路21が使用されているかどうかを決定するように構成されることができ、この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。あるいは、呼吸回路21が加熱されているかどうかを示すために、制御装置54にユーザ入力(図示せず)が設けられる。
【0031】
境界LBおよびUBは、以下の式に従って目標値Tspに相関させられる。
UB=2.0399Tsp−36.3292
LB=1.2675Tsp−21.1213
【0032】
図5に戻ると、ステップ222にて、ウォームアッププロセス220中のシステム10の、初期動作のための特定の流量帯用に、1組の係数が選択される。システム10が最初にオンにされ、したがって加熱器56が低温であると予想される場合、ステップ222にて低流量帯用の係数を選択することができる。システム10が走っていたが休止された場合、ウォームアッププロセス220は、呼吸回路21が加熱された吸息肢22を備える場合に、再び開始され、または吸息肢22が加熱されていないがプローブ40における患者温度が30℃未満である場合に、再び開始される。吸息肢22が加熱されておらず、かつプローブ40における患者温度が30℃以上である場合、休止される前に最後に使用されていた流量帯用の係数が継続され、プロセスはその終了(ステップ236)へと迂回させられる。システム10が休止されていない場合、ステップ224にて、システム10が走っている状態で、温度応答デバイス58から入力温度示度を得ることによって熱入力を決定することができ、チャンバ20の出口に結合されたプローブ40から出力温度示度を得ることによって熱出力を決定することができる。それらの温度示度はいずれも、それぞれのA/D変換器72から得られる。ステップ224は、1つのステップとして示されるが、実際は2つのステップとすることができる。ステップ226にて、入力温度と出力温度の間の差など、熱量差(Td)が決定される。熱量差Tdは、ステップ228にて、1分間を超えるスライドセグメント時間などにわたり累算され平均化される。
【0033】
ステップ230にて、本明細書における図示の実施形態では10分または600秒と設定されたウォームアップウィンドウの終了に到達したかどうかが決定される。ウォームアップウィンドウの終了に到達していない場合は、プロセスは、ステップ224に戻ってループする。ステップ224とステップ230の間のループは、約1秒毎に生じ、それにより10秒のスライドセグメント内に10個の示度がとられる。しかしながら、ステップ230にてウォームアップウィンドウの終了に到達していた場合、プロセスはステップ232へと進み、そこで、平均化された熱量差がLBおよびUBと比較され、その結果、熱量差Tdが温度目標値Tspと比較される。その点に関して、ステップ232にて、平均化された熱量差がLB以下である場合、ステップ234にて、係数が低流量帯用の係数となるように調整され(これは低流量帯用の係数に維持されることも含むことができる)、236にてウォームアッププロセスが終了して、調整された係数を用いて定常状態動作が続行する。しかし、ステップ232にて、平均化された熱量差がUB以上である場合、ステップ238にて、係数が高流量用の係数となるように調整され(これは高流量用の係数に維持されることも含むことができる)、プロセスが終了して、調整された係数を用いて定常状態動作が続行する。さらに、ステップ232にて、平均化された熱量差がLBとUBの間である場合、ステップ240にて、係数が中流量帯用の係数となるように調整され(これは中流量帯用の係数に維持されることも含むことができる)、プロセスが終了して、調整された係数を用いて定常状態動作が続行する。係数を調整するために、メモリ80のテーブルから適当な組を取得し、プロセッサ70の動作中に使用されるメモリ80の一部にロードすることができる。流量帯は、差がLB未満の場合は低く、差がUBより大きい場合は高く、差がLBとUBの間またはそのいずれかと等しい場合は中間となるように選択することができることも理解されるであろう。
【0034】
使用に際しては、システム10がオンにされ、たとえば低流量用の組など1組の係数を使用して、加熱器56の加熱が開始される。システム10が遭遇する推定流量用のPIDフィードバック制御の係数を調整するために、図4または図5のウォームアッププロセスが開始される。その後、ウォームアッププロセス中に調整された係数を使用して、定常状態動作が続行する。システム10の動作の休止などにより定常状態動作が中断される場合、ウォームアッププロセスを再び開始して、定常状態動作に進む前に係数を調整するでき、または上記で説明したように、ウォームアッププロセスを迂回することができる。
【0035】
目標値と、熱入力と熱出力の差との関係を示す容易に得られる温度測定値に基づく1組の係数の選択など、ウォームアッププロセス中の係数の調整により、流量などを直接監視または取得せずに、定常状態動作中に使用される係数の組をシステムの推定流量に基づいて設定することが可能になる。さらに、ウォームアッププロセス中の係数の調整は、加熱器が所望の温度に到達するために必要な時間を大幅に短縮することができる。
【0036】
決定的に重要ではないが、測定された温度と入力温度と出力温度の熱量差との関係ではなく、測定された温度と目標値温度との関係に焦点を当てて、定常状態動作中にも係数を調整することが有利なことがある。そのために、また図6を参照しながら、定常状態プロセス250を説明する。この定常状態プロセス250では、目標値(呼吸回路21が加熱されない場合患者温度に設定され、呼吸回路が加熱される場合出力温度に設定される)に関する、測定された温度(呼吸回路21が加熱されない場合は患者温度、または呼吸回路が加熱される場合は出力温度)の挙動に基づいて、定常状態動作中に係数を調整することができる。
【0037】
ステップ252にて、適当なプローブ40からとられた温度示度が得られる。ステップ254にて、測定された温度と、その温度に期待される目標値との差を反映した誤差信号Eが決定される。定常状態プロセス250では、係数の調整をあまり頻繁に行う必要はなく、したがってステップ256にて、たとえば5分間のスライドセグメント時間にわたり、誤差信号が累算され平均化される。ステップ258にて、本明細書における図示の実施形態では、30分と設定されるアップデートウィンドウの終了に到達したかどうかが決定される。アップデートウィンドウの終了に到達していない場合、プロセスは、ステップ252に戻ってループする。ステップ252からステップ258の間のループは約10秒毎に生じ、それにより5分間のセグメント毎に30個の示度がとられる。しかしながら、ステップ258にてアップデートウィンドウの終了に到達している場合、プロセスはステップ260へと続き、ステップ260にて、平均化された誤差信号が、定常状態の差と標準偏差またはRMS誤差の両方について評価される。
【0038】
特に、ウォームアッププロセス中に生じると考えられていた推定流量(またはウォームアッププロセスが行われない場合は所定の係数の組)から流量が逸脱しているかどうかを、そのような状況下では2つの状態のうちの一方が展開するであろうという予想に基づき、プロセス250を用いて決定することができる。実際の流量が、現在の係数の組に関する推定流量よりも低い場合、測定された温度と目標値との間の誤差は、リンギングまたは目標値より高いまたは低い温度逸脱を示す標準偏差またはRMS誤差を表示する。ステップ260における標準偏差が、たとえば0.5℃など許容可能な最小閾値を超えていると決定される場合、ステップ262にて、たとえば次に低い流量帯用の係数を選択することにより、係数がより低い推定流量用に調整され、ステップ252にループバックしてプロセスを繰り返すことができる。
【0039】
一方、実際の流量が、現在設定されている係数に関する推定流量よりも高い場合、測定された温度と目標値との間の誤差は比較的一定となるが、目標値よりも低くなる。その状態が生じた場合、定常状態誤差は、ステップ260にてたとえば-1℃など最小閾値を超えていることが決定され、ステップ252に戻ってループする前に、ステップ264にて次に高い流量帯用の係数を選択することなどにより、係数がより高い推定流量用に調整される。いずれの状態も存在しない場合、すなわち、標準偏差および定常状態誤差の両方が高すぎない場合、係数の調整は必要なく、ステップ266にて、プロセスはステップ252にループバックすることができる。
【0040】
使用に際しては、システム10の定常状態動作中に温度を測定し、適用可能な目標値からの誤差を定常状態誤差および標準偏差に関して評価することができる。それらのいずれかがそれぞれの最小閾値を超える場合、係数が調整される。容易に得られる温度測定値を目標値温度と比較することから決定される誤差をもとに、定常状態中の係数を調整することにより、定常状態動作中の係数を、この場合も流量などを直接監視または取得せずに、システムの推定流量の変化に基づいて調整することが可能になる。
【0041】
加熱器ユニット18はまた、1つまたは複数の調整された直流電圧レベルを提供するために、制御装置54の様々な相への電力供給に使用するための電源(PS)を備えることができる。加熱器56には、交流電力を直接、または変圧器(TR)のタップAC1を介して電力を供給することができ、加熱器回路34、36には、その動作を上記のように調節する様々な電力スイッチ76を用いて、電源PSにより、または変圧器(TR)からのタップを介して、電力を供給することができる。加熱器ユニット18はまた、1つまたは複数の表示装置、ボタンおよびダイヤルなど入力制御部、ならびに警報指示器(全て図示せず)を備えることができ、さらに、交流電源(図示せず)に結合し、かつ加熱器回路34、36およびPTCケーブル38に結合するための様々なインタフェース入力および出力を有することができる。制御装置54はまた、様々な制御機能および電力管理機能を備えることができる。さらに、加熱器ユニット18は、自己整合ロックマウント(これも図示せず)を用いて取り付けることができる。上記各種は、本出願と同時に出願した、「Thermistor Calibration Circuit」という名称の米国特許出願第11/927,000号(代理人整理番号MDXCP-21US)、「Respiratory System Heater」という名称の米国特許出願第11/927,038号(代理人整理番号MDXCP-25US)、「Lockable Mounting Mechanism for a Respiratory System Heater Unit」という名称の米国特許出願第11/927,044号(代理人整理番号MDXCP-26US)、「Redundant Power Control for Respiratory System Heaters」という名称の米国特許出願第11/927,054号(代理人整理番号MDXCP-28US)、および「Power Failure Management for Respiratory System Heater Unit」という名称の米国特許出願第11/927,068号(代理人整理番号MDXCP-29US)に示されており、これら5つの開示は全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
上記を鑑みると、流量の測定を必要とせずに呼吸システム内の温度測定に依拠する信頼性のあるPIDフィードバック制御が提供される。
【0043】
本発明を、その1つまたは複数の実施形態の説明によって示し、実施形態をかなり詳細に説明してきたが、それらは、決して添付の特許請求の範囲の範囲をそのような詳細に制限または限定することを意図するものではない。さらなる利点および修正が、当業者には容易に明らかになるであろう。たとえば、係数の調整は、全ての係数への変更、またはそれらより少ない係数への変更を含むことができる。また、1つの有利な実施形態は、中流量帯用の1組の係数(すなわち第3の組)のみを有するが、それ以上またはそれ以外の流量帯をそれぞれの係数の組とともに用いることもできる。さらに、チャンバ20を通る気体を押し進めるものとして、換気装置14を示したが、病院の酸素供給装置、CPAP、またはBiPAPポンプ、あるいは他の空気または酸素給送システムからなど、他の気体システムを用いることができることを理解されたい。さらに、加熱器回路34、36が存在する場合、それらそれぞれを、適用可能なプローブ40からの測定された温度と、それぞれの加熱器回路34または36用の適用可能な制御回路74およびスイッチ76を駆動する修正信号Cとを用いて、図3のようなPIDフィードバック制御により制御することができる。ただし、その(1つまたは複数の)PIDフィードバック制御の係数を必ずしも調整しなくてもよく、係数を固定することができる。一実施形態では、加熱器回路34および36のPIDフィードバック制御の係数は、Kp = 200、Ki= 0.025、およびKd= 1000となるように決定される。加熱器回路34、36は、「Rainout Reduction in a Breathing Circuit」という名称の、米国特許出願第11/926,990号(代理人整理番号MDXCP-20US)に記載されるように、肢部22および/または24内のレインアウトを低減するために独立して制御することができ、この開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに、示されていないが、様々な温度を監視することができ、温度示度が最大レベルを超える場合に、システム10が遮断され、かつ/または警報装置が始動される。したがって、本発明はそのより広い態様において、図示および説明した具体的な詳細、代表的な装置および方法、ならびに例示的な例に限定されない。よって、出願人全体的な発
明の概念の範囲または精神から逸脱することなく、そのような具体例から逸脱可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の原理を実施する呼息加湿システムを示す図である。
【図2】図1の加熱器ユニットを示す概略図である。
【図3】本発明の原理を説明するための、図2の加熱器ユニットの制御装置内に実装されるPIDフィードバック制御を示す図である。
【図4】本発明の原理による図3のPIDフィードバック制御によって使用される係数を調整するための、1つのウォームアッププロセスのフローチャートである。
【図5】本発明の原理による図3のPIDフィードバック制御によって使用される係数を調整するための、別のウォームアッププロセスのフローチャートである。
【図6】本発明の原理による図3のPIDフィードバック制御の係数を調整するための、定常状態プロセスのフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
10 呼吸システム
12 患者
14 換気装置
16 加熱器システム
18 加熱器ユニット
20 チャンバ
21 呼吸回路
22 吸息肢
24 呼息肢
26 気体導管
27 水
28 給水部
29 水蒸気
30 接合部
32 アタッチメント
34 加熱器回路
36 加熱器回路
38 患者温度ケーブル(PTC)
40 温度応答デバイス
42 第1の通信ケーブル
44 第2の通信ケーブル
48 端部
50 端部
52 コネクタ
54 制御装置
56 加熱器
58 サーミスタ
70 プロセッサ
72 A/D変換器
74 パルス幅変調器
76 電力スイッチ
80 メモリ
100 PIDフィードバック制御
104 加算ブロック
106 PIDフィードバックアルゴリズム
108 平均化回路またはアルゴリズム
110 ゼロ次保持回路またはアルゴリズム
112 ゼロ次遅延回路またはアルゴリズム
120 加算回路またはアルゴリズム
122 減算回路またはアルゴリズム
124 加算回路またはアルゴリズム
200 ウォームアップアルゴリズムまたプロセス
220 ウォームアッププロセス
250 定常状態プロセス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1組の係数を有するPIDフィードバック制御(100)を使用して気体の加熱を制御する方法であって、チャンバ(20)内の水(27)を加熱するステップと、前記気体を加熱するために前記チャンバ(20)に前記気体を通過させるステップとを含み、前記水(27)への熱入力と前記チャンバ(20)からの熱出力との間の熱量差に基づいて前記係数を温度目標値との関連で調整することを特徴とする方法。
【請求項2】
熱入力値および熱出力値を得るステップと、それらの間の前記差を決定するステップとをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱入力値を得るステップが、前記チャンバ(20)内の前記水(27)を加熱するように構成された加熱器の温度示度を得るステップを含み、熱出力値を得るステップが、前記加熱された気体の温度示度を含み、前記差を決定するステップが、前記得られた温度示度の差を計算するステップを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記係数は、前記差が前記目標値に関して小さすぎる場合により低い流量に対応するように調整され、前記差が前記目標値に関して大きすぎる場合により高い流量に対応するように調整される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記関係が前記目標値に関して小さすぎる熱量差を伴う場合、前記係数がより低い流量に対応するように調整され、前記関係が前記目標値に関して大きすぎる熱量差を伴う場合、前記係数がより高い流量に対応するように調整される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記熱量差を、前記目標値に関する上方および下方境界と比較するステップと、前記熱量差が前記下方境界より低い場合に前記係数をより低い流量用に調整し、前記熱量差が前記上方境界より高い場合に前記係数をより高い流量用に調整するステップとをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記熱量差を前記目標値に関する上方および下方境界と比較するステップと、前記熱量差が前記下方境界以下である場合に前記係数をより低い流量用に調整し、前記熱量差が前記上方境界以上である場合に前記係数をより高い流量用に調整するステップとをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
複数の組の係数がそれぞれ、ぞれぞれの流量帯に対応し、すなわち第1組の係数が低流量帯に対応し、第2組の係数が高流量帯に対応し、および少なくとも第3組の係数が前記低流量帯と前記高流量帯との間の中流量帯に対応し、前記方法が、最初に1組の係数を用いて動作するステップをさらに含み、前記係数を調整するステップが、前記係数の組のうちの1つを選択するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上方および下方境界が前記目標値に関して設定され、前記熱量差が前記下方境界より低い場合に前記第1組の係数が選択され、前記熱量差が前記上方境界より高い場合に前記第2組の係数が選択され、前記熱量差が前記上方境界と前記下方境界の間である場合に前記第3組の係数が選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱量差が前記下方境界以下である場合に前記第1組の係数が選択される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記熱量差が前記上方境界以上である場合に前記第2組の係数が選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記熱量差が前記上方境界以上である場合に前記第2組の係数が選択される請求項9に記載の方法。
【請求項13】
初期動作が前記第1組の係数を用いて行われる請求項8に記載の方法。
【請求項14】
熱入力値を得るステップが、前記チャンバ内の前記水を加熱するようになされた加熱器の温度示度を得るステップを含み、熱出力値を得るステップが、前記加熱された気体の温度示度を得るステップを含み、差を決定するステップが、前記得られた温度示度の差を計算するステップを含み、前記差が前記係数の組を選択するために使用される請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記目標値が、前記チャンバから出るときの前記気体の所望の温度と相関する請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記係数の組のうちの1つを目標値温度と実際に測定された温度の間の誤差信号に関して選択することにより、前記係数を再調整するステップをさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記誤差信号の標準偏差が最小閾値を超える場合、次により低い流量帯用の係数の組が選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記誤差信号の定常状態が最小閾値を超える場合、次により高い流量帯用の係数の組が選択される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記目標値が、前記チャンバ(20)から出る前記気体の所望の温度と相関する請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記係数を、目標値温度と実際に測定された温度の間の誤差信号に関して再調整するステップをさらに含む請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記誤差信号の標準偏差が最小閾値を超える場合、前記係数がより高い流量用に再調整される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記誤差信号の定常状態が最小閾値を超える場合、前記係数がより低い流量用に再調整される請求項20に記載の方法。
【請求項23】
1組の係数を有するPIDフィードバック制御(100)を使用して気体の加熱を制御する方法であって、チャンバ(20)内の水(27)を加熱するステップと、前記気体を加熱するために前記チャンバ(20)に前記気体を通過させるステップとを含み、目標値温度と実際に測定された温度との間の誤差信号に関連して前記係数を調整することを特徴とする方法。
【請求項24】
前記誤差信号の標準偏差が最小閾値を超える場合、前記係数がより低い流量用に調整される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記誤差信号の定常状態が最小閾値を超える場合、前記係数がより高い流量用に調整される請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記目標値温度が、前記チャンバ(20)から出るときの前記気体の所望の温度に対応し、当該方法が、前記チャンバ(20)から出るときの前記気体の温度を測定することにより、前記実際に測定された温度を得るステップをさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項27】
チャンバ(20)内の水(27)を加熱するようになされた加熱器(56)と、前記加熱器(56)から前記水(27)への前記熱入力を示す信号を提供するようになされた温度応答デバイス(58)と、前記チャンバ(20)からの前記熱出力を示す信号を受信するようになされた入力(55)と、前記加熱器(56)を調節するようになされ、1組の係数を使用するPIDフィードバック制御(100)を有する制御装置(54)とを備え、前記プロセッサ(70)が、温度目標値に関する前記加熱器(56)から前記水(27)への前記熱入力を示す前記信号と、前記チャンバ(20)からの前記熱出力を示す前記信号との間の差に対応する熱量差とに基づいて前記係数を調整するように構成されたことを特徴とする加熱器システム。
【請求項28】
前記プロセッサ(70)は、前記差が前記目標値に関して小さすぎる場合に、前記係数をより低い流量に対応するように調整し、前記差が前記目標値に関して大きすぎる場合に、前記係数をより高い流量に対応するように調整するように構成された請求項27に記載の加熱器システム。
【請求項29】
前記プロセッサ(70)は、前記目標値に関する前記差を上方および下方境界と比較し、前記差が前記下方境界より低い場合に前記係数をより低い流量用に調整し、前記差が前記上方境界より高い場合に前記係数をより高い流量用に調整するように構成された請求項27に記載の加熱器システム。
【請求項30】
前記プロセッサ(70)が、前記差を前記目標値に関する上方および下方境界と比較し、前記差が前記下方境界以下である場合に前記係数をより低い流量用に調整し、前記差が前記上方境界以上である場合に前記係数をより高い流量用に調整するように構成された請求項27に記載の加熱器システム。
【請求項31】
それぞれの流量帯にそれぞれ対応する複数組の係数を記憶するメモリ(80)をさらに含み、第1組の係数が低流量帯に対応し、第2組の係数が高流量帯に対応し、少なくとも第3組の係数が前記低流量帯と前記高流量帯との間の中流量帯に対応し、前記PIDフィードバック制御(100)が、最初は1組の係数を用いて動作するようになされ、前記プロセッサ(70)が、前記メモリ(80)から1つの前記係数の組を選択して、それにより前記係数を調整するように構成された請求項27に記載の加熱器システム。
【請求項32】
前記プロセッサ(70)は、上方および下方境界を前記目標値に関して決定し、前記差が前記下方境界より低い場合に前記第1組の係数を選択し、前記差が前記上方境界より高い場合に前記第2組の係数を選択し、前記差が前記上方境界と前記下方境界の間にある場合前記第3組の係数を選択するように構成された請求項31に記載の加熱器システム。
【請求項33】
前記プロセッサ(70)は、前記差が前記下方境界以下である場合に前記第1組の係数を選択するように構成された請求項32に記載の加熱器システム。
【請求項34】
前記プロセッサ(70)は、前記差が前記上方境界以上である場合に前記第2組の係数を選択するように構成された請求項32に記載の加熱器システム。
【請求項35】
前記プロセッサ(70)は、前記PIDフィードバック制御(100)の初期動作のために前記第1組の係数を選択するように構成された請求項31に記載の加熱器システム。
【請求項36】
前記プロセッサ(70)は、目標値温度と、前記チャンバ(20)からの前記熱出力を前記入力にて示す信号との間の誤差信号に関して、前記係数の組のうちの1つを選択することにより前記係数を再調整するように構成された請求項31に記載の加熱器システム。
【請求項37】
前記プロセッサ(70)は、目標値温度と、前記チャンバ(20)からの前記熱出力を前記入力にて示す信号との間の誤差信号に関して、前記係数の組のうちの1つを選択することにより前記係数を再調整するように構成された請求項27に記載の加熱器システム。
【請求項38】
加熱器システムであって、チャンバ(20)内の水(27)を加熱するようになされた加熱器(56)と、温度を示す信号を受信するようになされた入力(55)と、前記加熱器(56)を調節するように構成された1組の係数を使用するPIDフィードバック制御(100)を有する制御装置(54)とを備え、前記制御装置(54)が、目標値温度と前記入力(55)にて温度を示す前記信号との間の誤差信号に関して、前記係数を調整するように構成されたプロセッサ(70)を備えた加熱器システム。
【請求項39】
前記プロセッサ(70)は、前記誤差信号の標準偏差が最小閾値を超える場合に前記係数をより高い流量用に調整するように構成された請求項38に記載の加熱器システム。
【請求項40】
前記プロセッサ(70)は、前記誤差信号の定常状態が最小閾値を超える場合に前記係数をより高い流量用に調整するように構成された請求項38に記載の加熱器システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−110520(P2009−110520A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−277056(P2008−277056)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(506246818)スミス・メディカル・エイエスディ・インコーポレーテッド (31)
【Fターム(参考)】