説明

回路基板用部材およびその製造方法

【課題】可撓性フィルムを有機物層を介して補強板に貼り合わせ、寸法精度を維持することで高精度な回路パターンを形成する回路基板または回路基板用部材であって、ICのバンプ高さを現状より低くして微細なバンプピッチのIC接続可能な回路基板または回路基板用部材を提供する。
【解決手段】補強板、有機物層、可撓性フィルム、金属層がこの順に積層された回路基板用部材であって、金属層を30μmピッチ以下のパターンに形成し、得られた配線パターンの金属表面に高さが1μm以上50μm以下の突起部を設けた回路基板用部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度な回路パターンを形成し得る生産性に優れた回路基板材と回路基板用部材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス製品の軽量化と小型化に伴い、プリント回路基板のパターニングの高精度化が求められている。中でもプリント回路基板に用いられる可撓性フィルムは、その可撓性ゆえに三次元配線ができ、エレクトロニクス製品の小型化に適していることから需要が拡大している。しかしながら、液晶ディスプレイパネルへのIC(Integrated Circuit)接続に用いられるTAB(Tape Automated Bonding)技術は、比較的狭幅の長尺ポリイミドフィルムを加工することで樹脂回路基板としては高精細なパターンを得ることができる。しかしながら微細化の進展に関しては限界に近づきつつある。微細化には、ライン幅やライン間のスペース幅で表される指標と回路基板上のパターンの位置で表される指標がある。後者の指標、いわゆる位置精度は、回路基板とICなどの電子部品とを接続する際の電極パッドとプリント回路基板パターンとの位置合わせに係わり、ICの多ピン化の進展に従い要求される精度が厳しくなってきている。
【0003】
上記位置精度の点において、特に可撓性フィルム加工は改良が難しい状況になりつつある。回路基板加工プロセスでは、乾燥やキュアなどの熱処理プロセス、およびエッチングや現像などの湿式プロセスがあり、可撓性フィルムは、膨張と収縮を繰り返す。このときのヒステリシスは、回路基板上の回路パターンの位置ずれを引き起こす。また、プロセス内でアライメントを用いた工程が複数ある場合、可撓性フィルムの膨張と収縮の繰り返しが、形成されるパターン間でアライメントの位置ずれが発生する。可撓性フィルムの膨張と収縮による変形は、比較的大面積の基板寸法で加工を進めるFPC(Flexible Printing Circuit)の場合には更に大きな影響を及ぼす。また、位置ずれは引っ張りや捻れなどの外力でも引き起こされ、柔軟性を上げるためにより薄い可撓性フィルムを使う場合は特に注意を必要とする。
【0004】
一方、可撓性フィルムを有機物層を介して補強板に貼り合わせ、寸法精度を維持することで非常に微細な回路パターンを形成し、その後、可撓性フィルムを補強板から剥離して回路基板を得る方法がある(特許文献1参照)。
【0005】
また、ICと回路基板を接続する場合、ICと回路基板の熱膨張係数の差を緩和する、あるいはICと基板が接続する電極以外でショートしないという2つの点から、高さが十分にとられたバンプと呼ばれる金属製の突起がICの接続端子として形成されている。多くの場合、バンプには位置精度が求められるため、バンプはもともと位置精度の良いIC側に形成される(特許文献2参照)。また、位置精度があまり要求されない場合は回路基板側にハンダめっきをマスクとしたサブトラクティブ法を用いて金属柱を形成する方法もある(特許文献3参照)。
【特許文献1】国際公開第03/009657号パンフレット
【特許文献2】特開平11−330072号公報(第1−17頁)
【特許文献3】特開2000−315706号公報(第1−6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
可撓性フィルムを有機物層を介して補強板に貼り合わせて微細な回路パターンを形成し、可撓性フィルムを補強板から剥離して回路基板を得る技術では、回路基板の微細配線が位置精度よく形成できるようになるが、IC側の接続端子の微細化が困難となっている。通常ICと回路基板を接続する場合は、ICと基板が接続する電極以外でショートしないようにバンプ高さが十分に必要である。バンプはめっき加工にて形成されるが、無電解めっきを用いるめっき加工では金属結晶が高さ方向と横方向に等しく成長し、高さを確保しようとすると底辺も広がってしまい、IC電極の幅の微細化が課題となっている。また、電解めっきを用いるセミアディティブ法でICバンプ高さを確保しつつピッチを狭くしていくことは、ICバンプ断面形状を高アスペクト比にしていくことになり、高アスペクト比な断面形状を有するめっきレジストを形成する上で技術的に難しく、またコスト高につながる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。
(1)補強板、有機物層、可撓性フィルム、金属層がこの順に積層された回路基板用部材であって、金属層を30μmピッチ以下のパターンに形成し、得られた配線パターンの金属表面に高さが1μm以上50μm以下の突起部を設けた回路基板用部材。
(2)絶縁層と導体配線層が交互に複数積層され、各導体配線層が絶縁層を厚さ方向に横切ってスルーホールもしくはビアにより電気的に接続され、最表層に導体配線層が露出している多層回路基板を、有機物層を介して補強板に積層された回路基板用部材であって、多層回路基板の配線パターン表面に突起部が設けられている前記(1)記載の回路基板用部材。
(3)前記(1)または(2)記載の回路基板用部材の補強板を剥離し、得られるフレキシブル回路基板。
(4)補強板、有機物層、可撓性フィルム、金属層がこの順に積層された回路基板用部材の製造方法であって
[1]可撓性フィルムの表面に第1金属層を形成する工程と、
[2]可撓性フィルムを有機物層を介して補強板に貼り合わせる工程と、
[3]第1金属層の表面に金属配線パターン用の第1のめっきレジスト膜(第1めっきレジスト膜)を設け、電解めっきによって第2金属層のパターンを形成する工程と、
[4]第1めっきレジスト膜及び第2金属層の上にめっきにより形成する突起部用の第2めっきレジスト膜(第2めっきレジスト膜)を設け、電解めっきによって突起部を第3金属層で形成する工程と、
[5]第1及び第2めっきレジスト膜を剥離した後、エッチング液によって露出した第1金属層を除去する工程を有することを特徴とする前記(1)または(2)記載の回路基板用部材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板とICの距離を変更することなくICのバンプを低くすることができる。また微細なバンプピッチのICのバンプ形成が安易となり、微細ピッチIC接続が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のフレキシブル回路基板および回路基板用部材は、剥離可能な有機物を介して補強板に固定して金属からなる回路パターンおよび回路パターン表面上の突起部が形成される。
【0010】
本発明において用いられる補強板は、ソーダライムガラス、ホウケイ酸系ガラス、石英ガラスなどのガラス板、インバー合金、ステンレススチール、チタンなどの金属板、アルミナ、ジルコニアおよび窒化シリコンなどのセラミックス板やガラス繊維補強樹脂板などが挙げられる。これらは、いずれも熱膨張係数や吸湿膨張係数が小さい点で好ましい。また回路パターン製造工程の耐熱性と耐薬品性に優れている点、大面積で表面平滑性が高い基板が安価に入手しやすい点、および塑性変形しにくい点でガラス板が好ましい。中でも、アルミノホウケイ酸塩ガラスに代表されるホウケイ酸系ガラスからなるガラス板は、高弾性率でかつ熱膨張係数が小さいため、特に好ましく用いられる。
【0011】
金属板やガラス繊維補強樹脂板を補強板に採用する場合は、長尺連続体の製造もできるが、位置精度を確保しやすい点で、枚葉式で行うことが好ましい。枚葉とは、長尺連続体でなく、個別のシート状でハンドリングされる状態を言う。
【0012】
補強板に用いられるガラス板は、ヤング率が小さかったり厚さが小さいと、可撓性フィルムの膨張・収縮力で反りやねじれが大きくなり、平坦なステージ上に真空吸着したときにガラス板が割れることがある。また、真空吸着・脱着で可撓性フィルムが変形することになり位置精度の確保が難しくなる傾向がある。一方、ガラス板が厚いと、肉厚ムラにより平坦性が悪くなることがあり、露光精度が悪くなる傾向がある。また、ロボット等によるハンドリング時に負荷が大きくなり、素早い取り回しが難しくなって生産性が低下する要因になる他、運搬コストも増大する傾向がある。これらの点から、ガラス板の厚さは、0.3mmから1.1mmの範囲が好ましい。
【0013】
補強板に金属板を用いる場合、金属板のヤング率が小さかったり厚さが薄いと、可撓性フィルムの膨張力や収縮力で金属板の反りやねじれが大きくなり、平坦なステージ上に真空吸着できなくなったり、また、金属板の反りやねじれの分、可撓性フィルムが変形することにより、位置精度の保持が難しくなる。また、金属板に折れがあると、その時点で不良品になる。一方、金属板が厚いと、肉厚ムラにより平坦性が悪くなることがあり、露光精度が悪くなる。また、ロボット等によるハンドリング時に負荷が大きくなり、素早い取り回しが難しくなって生産性が低下する要因になる他、運搬コストも増大する。これらの点から、金属板の厚さは、0.1mmから0.7mmの範囲が好ましい。
【0014】
本発明において、補強板は可撓性フィルム全面を固定する必要はない。可撓性フィルム上において寸法精度の要求される部分のみ固定することでも目的は達成される。したがって可撓性フィルムと補強板の大きさは異なっても構わない。例えば可撓性フィルム上に搭載するIC等の電子部品と同等もしくは少し大きめの補強板を貼り合わせて固定しても構わない。可撓性に乏しいガラス板やセラミックス板を補強板に用いることもでき、長尺の可撓性フィルムを使用して長尺連続体の製造が可能である。
【0015】
本発明において、可撓性フィルムと補強板の貼り合わせに用いられる有機物層には、接着剤または粘着剤が使用される。接着剤または粘着剤としては、例えば、アクリル系またはウレタン系の再剥離剤と呼ばれる粘着剤を挙げることができる。可撓性フィルム加工中は十分な接着力があり、剥離時は容易に剥離でき、可撓性フィルム基板に歪みを生じさせないために、弱粘着から中粘着と呼ばれる領域の接着力のものが好ましい。このような接着剤または粘着剤として、タック性があるシリコーン樹脂、エポキシ系樹脂を使用することも可能である。
【0016】
また、有機物層として、低温領域で接着力が減少するもの、紫外線照射で接着力が減少するものや、加熱処理で接着力が減少するものも好適に用いられる。これらの中でも、接着力の変化が大きいという点で、紫外線照射で接着力が減少する有機物が好ましく用いられる。紫外線照射で接着力が減少するものの例としては、2液架橋型のアクリル系粘着剤が挙げられる。また、低温領域で接着力が減少するものの例としては、結晶状態と非結晶状態間を可逆的に変化するアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0017】
本発明において、剥離力は、有機物層を介して補強板と貼り合わせた1cm幅の可撓性フィルムを剥離するときの180°方向ピール強度で測定される。剥離力を測定するときの剥離速度は300mm/分とする。本発明において、剥離力は0.098N/mから98N/mの範囲であることが好ましい。
【0018】
可撓性フィルムを補強板から剥離するときの剥離力は、0.098N/mより小さいと回路パターン形成中に可撓性フィルムが有機物層から剥離する恐れがある。一方、剥離力が98N/mより大きいと、剥離後の可撓性フィルムが変形したりカールする恐れがある。剥離の界面は、補強板と有機物層との界面でも有機物層と可撓性フィルムとの界面でもどちらでも良いが、可撓性フィルムから有機物層を除去する工程が省略できるので、有機物層と可撓性フィルムとの界面で剥離する方が好ましい。
【0019】
補強板と有機物層との接着力を向上させるために、補強板にシランカップリング剤塗布などのプライマー処理を行っても良い。プライマー処理以外に、紫外線処理あるいは紫外線オゾン処理などによる洗浄や、ケミカルエッチング処理、サンドブラスト処理あるいは微粒子分散層形成などの表面粗化処理なども好適に用いられる。
【0020】
本発明の有機物層の厚さは、0.1μmから20μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.3μmから10μmの範囲である。
【0021】
本発明で用いられる可撓性フィルムは、プラスチックフィルムが好ましく、この場合回路パターン製造工程および電子部品実装での熱プロセスに耐えるだけの耐熱性を備えている必要がある。本発明で好適に用いられる可撓性フィルムとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミドおよび液晶ポリマーなどからなるフィルムを採用することができる。中でもポリイミドフィルムは、耐熱性に優れるとともに耐薬品性にも優れているので好適に採用される。また、低誘電損失など電気的特性が優れている点で、液晶ポリマーフィルムが好適に採用される。可撓性フィルムとして、可撓性のガラス繊維補強樹脂板を採用することも可能である。ガラス繊維補強樹脂板の樹脂としては、エポキシ、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、マレイミド、ポリアミドおよびポリイミドなどの樹脂が挙げられる。
【0022】
可撓性フィルムの厚さは、電子機器の軽量化や小型化、あるいは微細なビアホール形成のためには薄い方が好ましい。一方、機械的強度を確保するためや平坦性を維持するためには厚い方が好ましいことから、4μmから125μmの範囲であることが好ましい。
【0023】
本発明において、可撓性フィルムは補強板への貼り合わせに先立って、調湿されていることが好ましい。可撓性フィルムは熱や湿度など環境によって膨張や収縮を繰り返す特性を有する。例えば温度や湿度で膨張した可撓性フィルムを補強板に貼り合わせ、高精度の回路パターンを形成すると、補強板からの剥離後に可撓性フィルムが収縮するために可撓性フィルム上の回路パターンの位置精度は低下する。あるいは、温度や湿度で収縮した可撓性フィルムを補強板に貼り合わせ、高精度の回路パターンを形成すると、補強板からの剥離後に可撓性フィルムが膨張するために可撓性フィルム上の回路パターンの位置精度は低下する。以上より、調湿は、0℃超、100℃未満の温度条件、25%RH以上75%RH以下の湿度条件下で、可撓性フィルムを重ねないで行うことが好ましい。補強板から剥離後に可撓性フィルムの回路パターンと、電子部品や他の回路基板とを接合する際の温湿度環境がわかっている場合は、その環境に合わせることが好ましい。
【0024】
本発明において、可撓性フィルムは調湿される前に、熱処理されていることが好ましい。熱処理をすることによって、回路基板の製造工程の熱履歴のために可撓性フィルムに熱収縮歪みが蓄積されるのを抑制することができる。熱処理温度は100℃以上であることが好ましく、回路基板製造工程の最高温度以上であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明において突起部の高さは1μm以上、より好ましくは4μm以上が良い。また50μm以下であることが望ましく、25μm以下であることが良い。ICと回路基板の熱膨張係数の差を緩和するためには、ICと回路基板はお互いの距離を8μmから50μm離してICが搭載されていることが望ましい。ICと回路基板の距離は突起部の高さとICのバンプ高さの和に相当するため突起部の高さは最大50μmであることが望ましい。また、バンプ高さバラツキが1μm程度発生することがあるため、IC搭載時にバンプ高さ方向に1μm程度加圧圧縮して平坦性を確保する。したがって、突起部の高さが有効になるのは1μm以上である。さらに突起部の高さは突起部の高さとICバンプ高さの和の半分程度であることが好ましい。
また、突起部とICバンプの両方の断面形状が微細ピッチ形成に有利な低アスペクト比になるためには、突起部とICバンプの高さがほぼ同じであることが必要となる。例えばICと回路基板の距離が10μmであるとき、突起部の高さが5μmに近い値で微細ピッチに一番有利な形状であるといえる。ICと回路基板の距離は8μmから50μmであるため、突起部の高さは突起部の高さとICバンプ高さの和の半分である4μm以上、25μm以下であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明において、第1金属層は、電解めっき給電用として好適に用いられるものであり、可撓性フィルムとの接着性を高めるためのクロム、ニッケル、チタン、タングステンおよびこれらの合金の少なくとも1種からなる接着改良用下地層と銅膜で構成されることが好ましく、特に、接着力が高い点でスパッタ法で形成されたものであることが好ましい。
【0027】
本発明の回路基板用部材を枚葉方式で製造するのに先立って、長尺の可撓性フィルムが電解めっき給電用の第1金属層を備えていることは、生産性の向上に有効である。
【0028】
本発明において第1金属層は、厚さが0.01μm以上3μm以下の範囲であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。第1金属層が3μmを超えると、回路層をパターニングするとき、エッチングに多大な時間を要するだけでなく、パターン幅が減少し、パターン痩せやパターン消滅という問題を引き起こす可能性がある。また、配線幅の減少を1μm以下にするためには第1金属層の厚みは0.2μm以下であることが好ましい。また、第1金属層が0.01μm未満の場合は抵抗が高く電圧降下の影響が大きいため、電流が流れにくくなり電解めっき膜厚バラツキが大きくなることがある。
【0029】
本発明において電解めっき給電用第1金属層上に電解めっき用のレジストパターンが形成されていることが好ましい。フォトリソグラフィーの技術を用いて配線を配置する場所のレジストを除去してレジストパターンを形成する。このレジストパターンを用いてパターンめっきを行うセミアディティブ法にて微細配線を形成する。
【0030】
配線上に形成される突起物は通常金属である。金属の突起物を形成する方法は、一般的なめっき法や、金属粉体を有機物と混ぜてペースト状にしてスクリーン印刷やインクジェットで印刷し、熱処理することで任意の場所に金属粉を積み上げて固める印刷法等を挙げることができる。めっき法を用いる場合はフォトリソグラフィーの技術を用いて配線上の任意の箇所に突起部を作製する。配線上にフォトレジストを形成し、突起部を形成する場所のフォトレジストを除去してレジスト開口部を形成する。そしてレジストパターンの開口部にめっき法を用いて金属の突起物を形成形成する。めっきは電解めっきであることが好ましい。電解めっきを用いた場合、無電解めっきに比較してめっき皮膜純度が高い。無電解めっきは反応領域が中性からアルカリ領域であるため使用困難なめっきレジストの使用が電解めっきでは容易である。また、電解めっきは無電解と比較して反応速度が早く、処理コストも安価であるためである。配線パターンがサブトラクティブ法により形成されている場合は、配線に電解めっき給電用のリード線を形成することで電解めっきが可能となる。
【0031】
配線がセミアディティブ法を用いられている場合は、セミアディティブ法に用いる給電目的の第1金属層を突起物形成時の電解めっき給電層として用いる。この場合、突起物をめっき析出させた後でセミアディティブ法を使用した給電目的の配線間にある第1金属層を除去する。この場合リード線が不要であるため、(1)リード線面積分の配線密度が高くなる、(2)アンテナ効果や信号の反射等からノイズ発生の原因となるリード線と信号線の分岐を排除することにより高速信号に対応できるメリットが生まれる。金属の種類としては配線やICとの端子接続に用いられている金、銀、銅、ニッケル、コバルト、錫を含む金属であることが好ましい。印刷の場合は配線形成後に有機バインダーを含む金属粉体を配線上に形成する。
【0032】
本発明によれば、形成された突起物の位置と設計値の位置とのズレを小さくすることができる。従来のフィルム基板においては0.04%以上の位置精度誤差を生じる。これは、フィルムの熱により不可逆且つ不均一な収縮と吸湿と温度による収縮による発生するためである。500mm四角の基板の場合であれば、基板の両端で約200μmの位置精度誤差が発生し、コントロールすることはできない。本発明によれば。例えば配線の中央部に突起部を形成する場合、500mm四角の基板のどの位置であっても、突起部中心と配線中央の位置ずれは1μm以下にすることが可能である。この位置精度により30μmピッチの配線であっても、10μmピッチの配線であっても突起部を配線上に形成することが可能となる。
【0033】
形成された配線の配線間の樹脂表面はエッチングした方が好ましい。これは絶縁信頼性を低下させる給電用第1金属層の残渣を樹脂表面ごとエッチングし、除去する。樹脂表面の除去厚みは1nm以上500nm以下であることが好ましい。エッチング液としては濃硫酸、アルカリ系水溶液、有機溶剤、クロム酸、アルカリ過マンガン酸溶液等を用いる方法とプラズマアッシングによりエッチングする方法がある。
【0034】
突起部の幅は配線幅より小さくしてもよい。ICと回路基板の接合方法が接着剤シートを介して搭載し、バンプと突起部が接着剤シートを貫通して接合する場合、突起部幅は接着シートを貫通させやすいように小さい方が望ましい。
【0035】
また、突起部の幅は配線幅より大きくしても良い。突起部表面に錫めっきを施し、金バンプを使用する金/錫のハンダ接合をIC搭載に用いる場合は、ハンダ接合面積が大きいほど接着強度が大きく電気抵抗が小さいため突起部の幅を大きくする方が有利である。
【0036】
次に、図1〜3に基づいて本発明の回路基板用部材の製造方法を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
厚さ0.7mmのアルミノホウケイ酸塩ガラス板(基板)101に、スピンコーター、ブレードコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーターまたはスクリーン印刷機などで、シランカップリング剤を塗布する。間欠的に送られてくる枚葉基板に、比較的低粘度のシランカップリング剤の薄膜を均一に塗布するためには、スピンコーターの使用が好ましい。ガラス基板にシランカップリング剤塗布後、加熱乾燥や真空乾燥などにより乾燥し、厚さが20nmのシランカップリング剤層を得る。
【0038】
次に、上記シランカップリング剤層上に、スピンコーター、ブレードコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーターまたはスクリーン印刷機などで、紫外線硬化型有機物102を塗布する。間欠的に送られてくる枚葉基板のシランカップリング剤層上に比較的粘度が高い有機物を均一に塗布するためには、ダイコーターの使用が好ましい。シランカップリング剤層上に有機物102を塗布後、加熱乾燥や真空乾燥などにより乾燥し、厚さ2μmの有機物層を得る。この有機物層102に、ポリエステルフィルムルム上にシリコーン樹脂層を設けた空気遮断用フィルムを貼り付けて1週間熟成させる。空気遮断用フィルムを貼り合わせる代わりに、窒素雰囲気中や真空中で保管することもできる。また、有機物層を長尺フィルム基体に塗布し、乾燥後、枚葉基板に転写することも可能である。
【0039】
本発明において、有機物層102は、最初に可撓性フィルム側に形成されていても良いし、補強板側に形成されていても良く、両方に形成されていても良い。形成の容易さや剥離界面を可撓性フィルムと有機物層となるように制御するためには、有機物層は補強板側に形成されることが好ましい。
【0040】
次に、上記空気遮断用フィルムを剥がしてポリイミドフィルム103を貼り付ける。ポリイミドフィルム103の厚さは、4μmから125μmの範囲であることが好ましい。ポリイミドフィルム103の片面または両面に金属層があらかじめ形成されていても良い。ポリイミドフィルムの補強板貼り合わせ面側に金属層を設けておくと、電磁波遮断用のためのグラウンド層などとして利用することができる。ポリイミドフィルムは、あらかじめ所定の大きさのカットシートにしておいて貼り付けても良いし、長尺ロールから巻きだしながら、貼り付けと切断をしてもよい。貼り付け作業には、ロール式ラミネーターや真空ラミネーターを使用することができる。ポリイミドフィルム103を貼り付けた後、紫外線硬化型有機物層に紫外線を照射して架橋を進行させる。
【0041】
次に、ポリイミドフィルムの貼り合わせ面とは反対側の面に、セミアディティブ法で回路パターンを形成する。セミアディティブ法は、例えば、以下のようなプロセスである。まず、回路パターンを形成する面に、クロム、ニッケル、チタン、タングステンおよびこれらの合金の少なくとも1種からなる第1金属層104を形成する。第1金属層104の厚さは、通常、1nmから1000nmの範囲である。第1金属層の上に、銅膜をスパッタ法で、50nmから3000nm積層することが、後に続く電解めっきのために十分な導通を確保したり、金属層の接着力向上やピンホール欠陥防止に効果がある。第1金属層104形成に先立ち、ポリイミドフィルム103表面に接着力向上のために、プラズマ処理、逆スパッタ処理、プライマー層塗布あるいは接着剤層塗布が適宜行われる。中でもエポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリイミド樹脂系あるいはNBR系などの接着剤層塗布は接着力改善効果が大きい。これらの処理や塗布は、ガラス基板貼り合わせ前に実施されても良いし、ガラス基板貼り合わせ後に実施されても良い。ガラス基板貼り合わせ前に、長尺のポリイミドフィルム103に対してロールツーロールで連続処理されることにより、生産性向上を図ることができる。図1−(1)は第1金属層104の形成直後のガラス板101に貼り付けられたポリイミドフィルム103の断面模式図である。このようにして形成しされた電解めっき給電用第1金属層104上に、フォトレジスト105をスピンコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーターまたはスクリーン印刷機などで塗布して、乾燥する。該フォトレジストを所定パターンのフォトマスクを介して露光、現像して、めっき膜が不要な部分に配線形成用レジスト層105を形成する[図1−(2)]。
【0042】
次いで、該電解めっき給電用第1金属層を電極として電解銅めっきを行う。電解銅めっき液としては、硫酸銅めっき液、シアン化銅めっき液およびピロ燐酸銅めっき液などが用いられる。電解銅めっきの電流密度は、生産性を損なわない範囲で、小さい程好ましい。電流密度が大きいほど、電圧降下が大きくなり、めっき膜バラツキが大きくなるからである。硫酸銅めっき液の場合、電流密度は0.2〜2A/dmが望ましく、0.2〜1A/dmがさらに好ましい。厚さ2μmから20μmの銅めっき膜106の形成を行う[図1−(3)]。
【0043】
さらに銅めっき膜106の配線上の突起部201をめっきにて形成する。配線形成用レジスト105上に突起部形成用のめっきレジスト107を任意の厚みに形成する[図1−(4)]。突起部形成用レジストとしては10〜25μmが好ましい。突起部形成用レジスト107はフォトレジストをスピンコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーターまたはスクリーン印刷機などで塗布して、乾燥する。該フォトレジストを所定パターンのフォトマスクを介して露光、現像して、ICチップ実装端子部分等の突起部が必要な箇所に、開口部を形成した突起部形成用レジスト層107を形成する。そして配線形成のめっき時に使用した給電用第1金属層104を電極として電解めっきを行う。電解めっきの金属の種類としては配線やICチップ実装に使用される銅、金、銀、ニッケル、コバルト、錫を含むものを使用する。銅めっきを20μm厚まで析出させた後、最表面に金めっき1μm厚形成するような多層金属のめっき突起部201形成も可能である[図2−(1)]。突起部部分にめっき析出した後、フォトレジストを剥離し[図2−(2)]、続いてスライトエッチングにて電解めっき給電用第1金属層を除去する[図2−(3)]。さらに必要に応じてICなどの電子部品接続端子部やその他の接続部に金、ニッケルまたは錫などのめっきを施す。
【0044】
必要に応じて、回路パターン上にソルダーレジスト膜を形成する[図2−(4)]。微細回路パターンに対しては、感光性のソルダーレジストの採用が好ましい。スピンコーター、ブレードコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーターまたはスクリーン印刷機などで回路パターン上に感光性ソルダーレジストを塗布し、乾燥させた後、所定のフォトマスクを介して紫外線露光をし、現像して、ソルダーレジストパターンを得る。次に、100℃から200℃の温度でキュアをする。
【0045】
図3にはICチップ301を実装したときの断面模式図を示す。ガラス板101に貼り合わせて加工された高精度の回路パターンに、ICチップ301等の電子部品を接合する。電子部品搭載装置は、光学的位置検出機能と可動ステージなどの位置合わせ機能を有し、搭載精度を確保できるものが好ましく使用される。本発明は、特に接合ピッチが小さく、かつピン数が大きい大規模LSIの実装精度確保に効果が大きい。また、電子部品と回路基板との接合方法としては、回路基板の接合部に形成された金属層と半導体部品の接合部に形成された金属層とを加熱圧着し金属接合させる方法が挙げられる。また、回路基板の接合部の金属層と半導体部品の接合部に形成された金属層とを圧着しつつ回路基板と半導体部品間に配置した異方導電性接着剤または非導電性接着剤を硬化させ、機械的に接合させる方法などを挙げることもできる。ICチップ301のIC側接合端子302の高さが、十分高くなくても、突起部201が1〜50μmの高さがあるので、上記の異方導電性接着剤や非導電性接着剤を用いた接合の際に、これらの接着剤が接合部において流動する空隙を十分確保することができ、確実な接合ができる。金属接合においても配線と電子部品の接触を回避したり、アンダーフィルの充填が容易になる効果がある。また、配線基板と電子部品との接合部のトータル高さを大きくすることによって温度サイクルなどの接合信頼性を高めることができる。IC実装後は応力緩和目的のアンダーフィル剤303がICチップ301と回路基板用部材の間に挿入される。この後、有機物層102を含むガラス板101を剥がすことでICチップ実装された回路基板を得ることが出来る。
【0046】
可撓性フィルムの両面に高精細の回路パターンを形成する場合は、可撓性フィルムをガラス基板に貼り合わせて、サブトラクティブ法、セミアディティブ法やフルアディティブ法でガラス基板貼り合わせ面とは反対側の面に回路パターンを形成し、次いで、別のガラス基板に、可撓性フィルムの回路形成面側を貼り合わせてから、最初のガラス基板を剥離し、他方の面に、セミアディティブ法で回路パターンとその上の突起部を形成する方法が好ましく用いられる。この場合ICとの接続端子の直下には基板反対側の銅回路を形成することが好ましい。もしくは接続端子直下に剛性のある金属やガラス等の板状のものを埋め込むことが好ましい。IC接続時に接続端子の沈む込みを防ぐためである。接続端子の沈み込みが大きいとICのエッジと配線が接触して短絡する場合がある。
【0047】
本発明は多層基板にも用いることが可能である。前述した両面基板作製と同じ方法で作製した補強板で固定された両面基板用部材の上にビルドアップ層を形成することで多層基板を得て最表層に突起部を形成する方法が好ましく用いられる。この場合もIC接続時に接続端子の沈む込みを防ぐため、接続端子直下には剛性のあるものを用意することが好ましい。例えば、接続端子直下にフィルドビアを直列に形成することが挙げられる(図5)。 回路パターンが形成された可撓性フィルムを補強板から剥離することによって回路基板が得られる。剥離する方法としては、可撓性フィルムの端部をロールに固定し、ロールに巻き取る形で剥離する方法や、可撓性フィルムの端部表面に粘着テープを押しつけ、粘着テープ部を引き上げることで剥離する方法などが挙げられる。剥離のタイミングは、電子部品を接合してから行うことが、電子部品実装を高精度に保つために好ましい。また、電子部品接合後、さらに可撓性フィルム上の回路パターンの一部を他の回路基板に接合してから剥離することは該接合の精度を高く保つために好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
実施例1
本発明の一実施形態である補強板、有機物層、可撓性フィルム、金属層がこの順に積層された回路基板用部材であって、金属層表面に突起部が設けられている回路基板用部材の一例を図1、図2、図3を用いて以下に説明する。
【0050】
可撓性フィルム基板である、25μm厚のポリイミドフィルム絶縁樹脂基板103(”カプトン”(登録商標)100EN 東レ・デュポン(株)製)を剥離可能な有機物層102(紫外線硬化型粘着剤”SKダイン”SW22 線研化学(株)製)を介して平坦なガラス補強板101に固定した。固定材料102はガラス補強板101を固定後に1J/cmのUV照射を行い、接着力を低下させた。
【0051】
次に電解めっき給電目的の導電層として可撓性フィルム基板103の表面に2nm厚のNi−0.1Crスパッタ後に100nm厚Cuスパッタ層104を形成した(図1−(1))。
【0052】
次に前記スパッタ金属層上にめっきレジスト105を形成した(図1−(2))。めっきレジストとしては東京応化(株)の”PMER P−LA900PM”を使用し、レジスト厚13μmでテスト用パターンを形成した。テスト用マスクパターンは、以下のようにして形成した(図6)。すなわち、インナーリード(IL)として、15mm×2mmの長方形401の2つの長辺上に、25μmピッチで、1辺あたり600個ずつ、10μm×50μmの長方形の接合パッド402を並べた。接合パッドの10μmの辺を上記の15mm×2mmの長方形の長辺と平行に配置し、接合パッドの50μmの辺の中心を該長方形の長辺上に配置した。また、アウターリード(OL)として、IL長方形と中心を同じくする、30mm×30mmの長方形404の2つの長辺上に、50μmピッチで、1辺あたり600個ずつ、24μm×50μmの長方形の接合パッド405を並べた。IL接合パッドとOL接合パッドは、一対一に対応しており、幅10μmの配線403で結んだ。これらを1ユニットとして、これを335mm×250mmのポリイミドフィルム上に、40mmピッチで8行×6列に均等配置した。電解Cuめっきは硫酸銅めっき液を用い、めっき条件は電流密度1A/dmで表層Cu厚み8μmの金属膜106を形成した(図1−(3))。その上にめっきレジスト107を形成した(図1−(4))。めっきレジストは東京応化(株)の”PMER P−LA900PM”を使用し、10μm×50μmの長方形の接合パッド金属膜106上レジスト厚12μmでφ10μmの円形の開口部を形成した。平坦なガラスで基板全体が固定されているため開口部の位置ズレ精度は1μm以下であった。この開口部に電解金めっきバンプ201として突起部を8μmの厚さに形成した(図2−(1))。
【0053】
電解金めっき後はめっきレジスト107と105をアルカリ性の剥離液で除去した後(図2−(2))、過硫酸ナトリウム系のエッチング液を用いて配線間にある給電目的のスパッタ金属層104を除去して配線形成した(図2−(3))。
【0054】
次に10μm厚のソルダーレジスト202をスクリーン印刷にて形成した(図2−(4))。これにより補強板、有機物層、可撓性フィルム、金属層がこの順に積層された回路基板用部材であって、金属層とし25μmピッチの回路パターンと金属層表面に金バンプとして突起部を有する回路基板部材を得ることができた。
【0055】
25μmピッチで厚さ3μmの金バンプ302のあるICチップ301を加熱圧着したところ、金バンプ302と突起部201のセンターの位置ズレを1μm以下で接合することができた(図3)。これによりICチップと回路基板の距離を10μm離すことが出来るため、接続信頼性に優れた25μmピッチの端子接続が可能となった。
【0056】
実施例2
補強板、有機物層、多層回路基板がこの順に積層された回路基板用部材であって、多層回路基板の配線表面に突起部が設けられている回路基板用部の一例を図4を用いて以下に説明する。
【0057】
可撓性フィルム基板である、25μm厚のポリイミドフィルム絶縁樹脂基板103(”カプトン”(登録商標)100EN 東レ・デュポン(株)製)の片面に銅回路106が形成され、その上にソルダーレジスト202が形成された片面回路基板をソルダーレジスト面が剥離可能な有機物層102(紫外線硬化型粘着剤”SKダイン”SW22 線研化学(株)製)に接するようにして平坦なガラス補強板101に固定した。固定材料102はガラス補強板101を固定後に1J/cmのUV照射を行い、接着力を低下させた。
【0058】
次に任意の箇所にYAGレーザーを用いて孔を形成し、孔内を過マンガン酸で洗浄した。
その後、孔内と配線116をセミアディティブ法にて同時形成した。これ以後は、実施例1と同様にして回路基板用部材を得た(図4)。
【0059】
25μmピッチで厚さ3μmの金バンプ302のあるICチップ301を加熱圧着したところ、金バンプ302と突起部201のセンターの位置ズレを1μm以下で接合することができた(図3)。これによりICチップと回路基板の距離を10μm離すことが出来るため、接続信頼性に優れた25μmピッチの端子接続が可能となった。
【0060】
実施例3
補強板、有機物層、多層回路基板がこの順に積層された回路基板用部材であって、多層回路基板の配線表面に突起部が設けられている回路基板用部の一例を図5を用いて以下に説明する。
【0061】
可撓性フィルム基板である、25μm厚のポリイミドフィルム絶縁樹脂基板103(”カプトン”(登録商標)100EN 東レ・デュポン(株)製)の片面に銅回路106が形成され、その上にソルダーレジスト202が形成された片面回路基板をソルダーレジスト面が剥離可能な有機物層102(紫外線硬化型粘着剤”SKダイン”SW22 線研化学(株)製)に接するようにして平坦なガラス補強板101に固定した。固定材料102はガラス補強板101を固定後に1J/cmのUV照射を行い、接着力を低下させた。
【0062】
次に任意の箇所にYAGレーザーを用いて孔を形成し、孔内を過マンガン酸で洗浄した。
その後、孔内と配線116をセミアディティブ法にて同時形成した。このとき孔内は銅めっきにて充填するビアフィル用の電解銅めっき液を用いた。
【0063】
つぎにこの上に25μm厚のエポキシ樹脂層113をシートラミネートを用いて形成した。このエポキシ樹脂層113の任意の箇所にYAGレーザーを用いて孔を形成し、孔内を過マンガン酸で洗浄した。その後、孔内と配線126をセミアディティブ法にて同時形成した。このときも孔内は銅めっきにて充填するビアフィル用の電解銅めっき液を用いた。同様にしてエポキシ樹脂層123と配線136を形成した。これ以後は、実施例1と同様にして回路基板用部材を得た(図5)。
【0064】
25μmピッチで厚さ3μmの金バンプ302のあるICチップ301を加熱圧着したところ、金バンプ302と突起部201のセンターの位置ズレを1μm以下で接合することができた(図3)。これによりICチップと回路基板の距離を10μm離すことが出来るため、接続信頼性に優れた25μmピッチの端子接続が可能となった。
【0065】
実施例4
電解金めっきバンプ201として突起部を1μmの厚さに形成した以外は、実施例1と同様にして回路基板用部材を得た。このとき25μmピッチで厚さ9μmの金バンプ302のあるICチップ301を加熱圧着したところ、金バンプ302と突起部201のセンターの位置ズレを1μm以下で接合することができた(図3)。これによりICチップと回路基板の距離を10μm離すことが出来るため、接続信頼性に優れた25μmピッチの端子接続が可能となった。
【0066】
実施例5
10μm×50μmの長方形の接合パッド金属膜106上レジスト厚55μmでφ35μmの円形の開口部を千鳥状に配置して形成し(図7)、この開口部に電解金めっきバンプ201として突起部を50μmの厚さに形成した以外は、実施例1と同様にして回路基板用部材を得た。このとき25μmピッチで厚さ1μmの金バンプ302が金バンプ201と同様に千鳥状に配置されたICチップ301を加熱圧着したところ、金バンプ302と突起部201のセンターの位置ズレを1μm以下で接合することができた(図3)。これによりICチップと回路基板の距離を51μm離すことが出来るため、接続信頼性に非常に優れた25μmピッチの端子接続が可能となった。
【0067】
比較例1
電解金めっきバンプ201を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして回路基板用部材を得た。このとき25μmピッチで厚さ3μmの金バンプのあるICチップを接合した。ICチップと回路基板の距離が3μmと短いため、ICのエッジと配線の一部が接触して短絡した。
【0068】
比較例2
可撓性フィルム基板である、25μm厚のポリイミドフィルム絶縁樹脂基板103(”カプトン”(登録商標)100EN 東レ・デュポン(株)製)を剥離可能な有機物層102(紫外線硬化型粘着剤”SKダイン”SW22 線研化学(株)製)を介して平坦なガラス補強板101に固定しなかったこと以外は、実施例1と同様にして回路基板用部材を得た。このとき10μm×50μmの長方形の接合パッド上の電解金めっきバンプ201の位置ズレが9μm発生する箇所があった。位置ズレが9μm発生した箇所ではICチップ実装すると電解金めっきバンプ201が倒れて隣接する配線と接触し短絡した。
【0069】
比較例3
電解金めっきバンプ201として突起部を0.5μmの厚さに形成した以外は、実施例1と同様にして回路基板用部材を得た。このとき25μmピッチで厚さ9μmの金バンプ302のあるICチップ301を加熱圧着したが、金バンプ高さのバラツキと圧着時の金バンプ変形で0.5μm厚の突起部の有効性を明確に確認することができなかった。
【0070】
比較例4
10μm×50μmの長方形の接合パッド金属膜106上レジスト厚60μmでφ30μmの円形の開口部を千鳥状に配置して形成し(図7)、この開口部に電解金めっきバンプ201として突起部を55μmの厚さに形成した以外は、実施例1と同様にして回路基板用部材を得た。このとき突起部の厚みを55μmとするためレジスト厚を60μmとした。レジスト解像度の限界のため開口部のサイズはφ38μmとした。めっき厚をこのとき25μmピッチで厚さ1μmの金バンプ302が金バンプ201と同様に千鳥状に配置されたICチップ301を加熱圧着したところ、金バンプ302と突起部201のセンターの位置ズレを1μm以下で接合することができた(図3)。これによりICチップと回路基板の距離を56μm離すことが出来るため、25μmピッチの端子接続が可能となった。しかし、金バンプ201がφ38μmと大きくなったため、配線と金バンプ201の間のスペースは1μmとなり、位置ズレの範囲内で隣接する配線と金バンプ201が接触し、短絡した。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の回路基板用部材およびその製造方法は、例えば、電子機器の配線板、ICパッケージ用インターポーザーおよびウェハレベルバーンインソケット用配線板などに好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の回路基板用部材の一態様を示す断面図。
【図2】本発明の回路基板用部材の一態様を示す断面図。
【図3】本発明の回路基板用部材の一態様を示す断面図。
【図4】本発明の回路基板用部材の一態様を示す断面図。
【図5】本発明の回路基板用部材の一態様を示す断面図。
【図6】本発明の回路基板用部材の実施例で使用したテストパターンを示す模式図。
【図7】本発明の回路基板用部材の実施例で使用したテストパターンを示す模式図。
【符号の説明】
【0073】
101 補強板
102 有機物層
103 可撓性フィルム
113、123 エポキシ樹脂層
104 第1金属層
105 配線形成用レジスト層
106、116、126、136 銅めっき膜
107 突起部形成用レジスト層
201、406 突起部
202、212 ソルダーレジスト
301 ICチップ
302 IC側接合端子
303 アンダーフィル材
401 テストパターンのインナーリード位置を決める長方形
402 テストパターンのインナーリード部
403 テストパターンにおけるインナーリード部とアウターリーダ部を結ぶ配線
404 テストパターンのアウターリード位置を決める四角形
405 テストパターンにおけるアウターリード部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強板、有機物層、可撓性フィルム、金属層がこの順に積層された回路基板用部材であって、金属層を30μmピッチ以下のパターンに形成し、得られた配線パターンの金属表面に高さが1μm以上50μm以下の突起部を設けた回路基板用部材。
【請求項2】
絶縁層と導体配線層が交互に複数積層され、各導体配線層が絶縁層を厚さ方向に横切ってスルーホールもしくはビアにより電気的に接続され、最表層に導体配線層が露出している多層回路基板を、有機物層を介して補強板に積層された回路基板用部材であって、多層回路基板の配線パターン表面に突起部が設けられている請求項1記載の回路基板用部材。
【請求項3】
請求項1または2記載の回路基板用部材の補強板を剥離し、得られるフレキシブル回路基板。
【請求項4】
補強板、有機物層、可撓性フィルム、金属層がこの順に積層された回路基板用部材の製造方法であって、
(1)可撓性フィルムの表面に第1金属層を形成する工程と、
(2)可撓性フィルムを有機物層を介して補強板に貼り合わせる工程と、
(3)第1金属層の表面に金属配線パターン用の第1のめっきレジスト膜(第1めっきレジスト膜)を設け、電解めっきによって第2金属層のパターンを形成する工程と、
(4)第1めっきレジスト膜及び第2金属層の上にめっきにより形成する突起部用の第2めっきレジスト膜(第2めっきレジスト膜)を設け、電解めっきによって突起部を第3金属層で形成する工程と、
(5)第1及び第2めっきレジスト膜を剥離した後、エッチング液によって露出した第1金属層を除去する工程を有することを特徴とする請求項1または2記載の回路基板用部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−13030(P2006−13030A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186007(P2004−186007)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】