説明

回路基板用電気コネクタ

【課題】平型導体の仮保持を可能とし、かつ接続後は不用意な抜けの防止をより確実とする回路基板用電気コネクタを提供することを課題とする。
【解決手段】平型導体Fの抜けを防止するロック部材45とを有する回路基板用電気コネクタにおいて、ロック部材45は前後方向に延びるように板面部分に形成され連結部48で連結された上腕部46と下腕部47を有し、上腕部前部に平型導体を押圧する押圧部49が設けられ、下腕部前部に平型導体の被係止部F2と係止するロック突部52をそれぞれ有しており、ロック部材45はそれらの上腕部後部に可動部材30のカム部32Cが当接する受圧部50を有していて、可動部材30が閉位置へ移動した際に、受圧部50がカム部32Cに圧せられて、上記ロック部材の上腕部46が押圧部49での平型導体Fとの接圧を高めるように弾性変位する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路基板に取り付けられる電気コネクタであって、平型導体が接続された際にこの平型導体の抜けを防止するロック部材を有する回路基板用電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板用電気コネクタにあっては、FPC等の平型導体が接続される形式のものが多く用いられている。かかるコネクタは、平型導体が接続後に不用意に抜けないように、例えば、該平型導体の側縁に耳状に設けられた被係止部と係止するロック部材を有している。
【0003】
特許文献1では、金属板の平坦な板面を維持して作られ、上腕部と下腕部が連結部で連結された横H字状のロック部材が開示されている。下腕部はハウジングに固定的に保持され、上腕部が上記連結部を支点として梃子状に傾くように弾性変位することが可能となっている。上腕部は、平型導体の挿入側となる前部にロック突部を有し、後部に、回動する可動部材のカム部により圧せられる受圧部を有している。受圧部がカム部によりもち上げられると、上腕部の弾性変位によってロック突部は下方に変位する。ロック突部は下方への変位により、平型導体の被係止部と係止し、平型導体の抜出方向で該被係止部と干渉して平型導体の不用意な抜けを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−078908
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のコネクタにあっては、ロック突部は連結部を支点として傾くように弾性変位可能な上腕部に設けられているので、接続されている平型導体を抜出方向へ強く引くと、平型導体の被係止部から受ける力で上記上腕部が該平型導体から離れる方向に変位してしまい、ロック突部が被係止部から外れることがあり、その結果、平型導体が抜けてしまう。
【0006】
さらに、ロック突部は、平型導体を正規の位置へ挿入後に可動部材を操作することにより、初めて平型導体の被係止部と係止する。したがって、ロック突部は下方に向く突起として上腕部に設けられているので、平型導体の挿入直後で可動部材の操作前では、ロック突部は被係止部と全く係止しておらず、平型導体が前後方向で正規の挿入位置へ配されても、外力が少しでも作用すれば、この正規位置からずれてしまい、可動部材を閉位置へ向けて操作してもロック突部が平型導体の被係止部と係止しない、という事態が生じやすい。すなわち、平型導体を端子と接圧をもって接続させるために可動部材を閉位置へ向けて操作する時点以前に、平型導体を正規位置に維持しておく、いわゆる仮保持ができない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、平型導体の不用意な抜けを確実に防止し、仮保持を可能とする回路基板用電気コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る回路基板用電気コネクタは、金属板の信号端子と、複数の該信号端子を配列保持する電気絶縁材のハウジングと、該ハウジングの前部に形成された開口部へ平型導体を挿入可能とする開位置から該平型導体を信号端子の接触部へ圧する閉位置へ向け可動な可動部材と、挿入された平型導体の抜けを防止するロック部材とを有する。本発明は、上記課題を次の第一発明によっても、第二発明によっても解決する。
【0009】
<第一発明>
上述の回路基板用電気コネクタにおいて、本発明では、ロック部材は金属板の平坦な板面部分を有して作られ、該板面部分が信号端子の配列方向と直角をなすようにしてハウジングより保持されており、ロック部材は前後方向に延びるように板面部分に形成された上腕部と下腕部を有し、該上腕部と下腕部は連結部を介して連結されていて該連結部よりも前方の上腕部前部と下腕部前部との間に上記平型導体の挿入を可能としており、下腕部はハウジングによって固定的に保持され、上腕部が連結部を支点として上記板面部分の面を含む面内で上記下腕部に対して梃子状に傾くように弾性変位可能であり、ロック部材は上記上腕部前部に平型導体を押圧する押圧部が設けられ、ロック部材の下腕部前部に平型導体の被係止部と係止するロック突部をそれぞれ有しており、ロック部材はそれらの上腕部後部に可動部材のカム部が当接する受圧部を有していて、可動部材が閉位置へ移動した際に、受圧部がカム部に圧せられて、上記ロック部材の上腕部が押圧部での平型導体との接圧を高めるように弾性変位し、ロック部材の下腕部前部のロック突部が平型導体の被係止部と前後方向で干渉する位置にくるようになっていることを特徴としている。
【0010】
このような構成の本発明の回路基板用電気コネクタにあっては、可動部材が開位置にあって、平型導体の挿入直後は、該平型導体の被係止部は上方から配されてロック部材の下腕部に設けられたロック突部へ前後方向で係止し合うように位置しており、また、この下腕部は固定的に保持されていて弾性変位しないので、該平型導体が単純に抜出方向に引かれても、同時に上方に向けもち上げられない限り、平型導体は抜出されない。すなわち、平型導体は仮保持がなされて、信号端子の接触部との接続のための正規位置を維持する。
【0011】
この仮保持の状態で、次に可動部材を閉位置へ向け移動させる。この閉位置では、可動部材は平型導体を信号端子の接触部と接続せしめ所定の接続状態を確保かつ維持する。可動部材は、上記閉位置にて、該可動部材のカム部がロック部材の上腕部後部に設けられた受圧部を圧して上腕部を傾け、上腕部前部の押圧部を下方に変位させる。押圧部はこの下方への変位により平型導体を同方向に押圧する。したがって、平型導体は、抜出方向に引かれると同時に上方へもち上げるような力を受けても、上記押圧部からの押圧力により上方へ浮き上がることはない。したがって、可動部材が閉位置にあるときには、平型導体はどの方向に力を受けても抜けることはない。
【0012】
本発明おいて、信号端子は連結部で連結された前後方向に延びる上腕部と下腕部を有し、上腕部前部に平型導体と接触する接触部をそして上腕部後部に可動部材のカム部が当接する受圧部を有していて、可動部材が閉位置へ移動した際に、受圧部がカム部に圧せられて、上記上腕部が接触部での平型導体との接圧を高めるように弾性変形するように形成することが可能である。下腕部前部が接触部となっている点を除いて、上腕部そして下腕部はロック部材と同様となっている。可動部材が開位置のときに、平型導体は、上記上腕部前部と下腕部前部との間に挿入され、可動部材が閉位置のときに、上腕部後部の受圧部が可動部材のカム部により上方に圧せられて、上腕部が連結部を支点として押圧部が下方に変位するように傾く。その結果、押圧部は平型導体を圧して下腕部前部の接触部の接圧を高める。この信号端子の押圧部での下方への押圧力は、平型導体と信号端子の接触部との接圧を高めるだけでなく、平型導体を下方へ圧するので、該平型導体の上方への浮き上がりによるロック突部からの外れをも阻止するのに貢献する。
【0013】
本発明において、ハウジングは、信号端子の少なくとも配列範囲を覆うシールド部を有する金属シェルが取り付けられており、該金属シェルの一部がロック部材として形成され、該ロック部材と上記シールド部とが一部材となっているようにすることができる。
【0014】
このようにロック部材とシールド部が金属シェルとして一部材に形成されていることにより、ロック部材とシールド部材とを個々に設ける場合に比して、部品点数の低減、製造そして組込み作業の簡単化はもとより、両者間の結合部分の存在により、部材自体の強度の向上、ひいてはハウジングによる保持強度の向上が図れる。
【0015】
本発明において、ロック部材は下腕部そして上腕部の少なくとも一方に平型導体のグランド回路部と接触するグランド接触部を有していてグランド部材をも兼ねているようにすることもできる。こうすることにより、平型導体のグランド回路部と接触する部材を別途設ける必要がないので、部品点数の低減そして部材の簡単化が図れると共に、平型導体がロック部材の上腕部に設けられた押圧部により圧せられる結果、上記グランド接触部における接圧が高められる。
【0016】
本発明において、金属シェルはシールド部とロック部材をつなぐ部分で回路基板の面に接面する半田固定部を有し、該固定部で回路基板の対応部と半田固定が可能となっているようにすることができる。こうすることにより、シールド部とロック部材とをつなぐ部分を半田固定部として利用でき、別途部材としてあるいは金属シェルの他の部位に半田固定部を設けずともよい。部材の簡単化が図れる。
【0017】
本発明において、ロック部材は、板面部分が端子配列方向で離間して位置し互いに連結された平行な面の二部位として形成され、一方の部位に押圧部そして他方の部位にロック突部がそれぞれ設けられているようにすることができる。
【0018】
上記板面部分が一つの平面上に位置して、押圧部とロック突部が端子配列方向で同一位置にあるようにすることもできるが、上記のごとく、端子配列方向で離間した二部位に板面部分を有して、それぞれに押圧部とロック突部とを位置せしめた場合は、前後方向、すなわち、平型導体の挿抜方向において押圧部を被係止部の範囲内に位置せしめることが可能となり、押圧力により平型導体の被係止部での浮き上がりをより強力に阻止できる。
【0019】
<第二発明>
本発明は、第二発明では、ロック部材は金属板の平坦な板面部分を有して作られ、該板面部分が信号端子の配列方向と直角をなすようにしてハウジングより保持されており、ロック部材は前後方向に延びるように板面部分に形成された上腕部と下腕部を有し、該上腕部と下腕部は互いの後部にて連結部を介して連結されていて該上腕部と下腕部との間に上記平型導体の挿入を可能としており、下腕部はハウジングによって固定的に保持され、上腕部が連結部を支点として上記板面部分の面を含む面内で上記下腕部に対して梃子状に傾くように弾性変位可能であり、ロック部材は上記上腕部に上記可動部材の軸部を案内支持する案内支持部が設けられ、ロック部材の下腕部に平型導体の被係止部と係止するロック突部をそれぞれ有しており、可動部材が閉位置へ移動した際に、上記案内支持部が上記可動部材の軸部に圧せられて、上記可動部材が該軸部からの反力としての押圧力によって平型導体との接圧を高め、ロック部材の下腕部のロック突部が平型導体の被係止部と前後方向で干渉する位置にくるようになっていることを特徴としている。
【0020】
かかる第二発明では、可動部材が閉位置へ移動した際、該可動部材の軸部を案内支持する上腕部の案内支持部が軸部からの力に対して反力として押圧力を生ずる。すなわち、案内支持部は押圧部として機能し、その押圧力が可動部材を介して平型導体へ伝えられる。既述の第一発明では、押圧力が上腕部の押圧部から直接的に平型導体へ伝えられたのに対し、この第二発明では可動部材を介して間接的に平型導体へ伝えられる点に特徴がある。ロック突部については第一発明の場合と同じである。かくして、第二発明でも、押圧部として機能する案内支持部とロック突部とが相俟って、平型導体の不用意な抜出を確実に阻止する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上のように、平型導体の被係止部と係止するロック部材のロック突部を固定的に保持される下腕部に設け、可動部材が閉位置にきたときに、平型導体を上腕部に設けられた押圧部で直接的に、あるいは上腕部に設けられた案内支持部で間接的に下方へ圧することとしたので、平型導体の接続時は、不用意な抜出力が平型導体に作用しても被係止部は不動のロック突部に係止したままであり、また、抜出力が上向き成分を有していても、平型導体は上方から押圧部により圧せられていて上方にもち上がらず上記ロック突部から外れずに確実に平型導体の抜けを防止する。また、可動部材が開位置のときは、ロック突部によって平型導体を正規位置へ挿入した状態に保ち、仮保持を可能とする。このように、接続時には平型導体の接続状態を安定して確保し、接続前は正規位置を保って接続操作が確実に行うことが可能となる。また、ロック突部と受圧部、さらに押圧部を一体化することにより、部品点数を減らすことができ、その分、部品の管理が容易となり、また製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施形態の電気コネクタとこれに接続されるべき平型導体の接触前における前方から見た斜視図である。
【図2】二種の信号端子が配列された図1のコネクタについて、信号端子の配列方向に見た断面図であり、(A)は一種の信号端子の位置、(B)は他種の信号端子の位置でそれぞれ断面され、可動部材が開位置の状態で示されている。
【図3】図1のコネクタに取り付けられる金属シェルの斜視図であり、(A)は上方から、(B)は下方からそれぞれ見た状態を示している。
【図4】図1のコネクタを、図1の場合とは逆方向である後方から見た、部分拡大斜視図であり、(A)は金属シェル取付前、(B)は取付後を示している。
【図5】図1のコネクタを示す断面図であり、端子配列方向で図3のV−Vに対応するロック部材の位置で断面されていて、(A)は可動部材が開位置、(B)は閉位置にある状態を示している。
【図6】本発明の変形例としての金属シェルの斜視図であり、ロック部材の押圧部とロック突部が別の板面部分に形成されている例を示す。
【図7】本発明の他の変形例として、シールド部を有しておらず、ロック部材が半田固定部そして支持腕部と一体となっている部材の斜視図である。
【図8】本発明のさらに他の変形例として、シールド部を有しておらず、ロック部材が半田固定部と一体となっている部材の斜視図である。
【図9】本発明の第二実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態のコネクタと、これに接続されるべき平型導体とを示す斜視図である。
【0025】
図1において、符号1は本実施形態のコネクタであり、符号Fはコネクタ1に接続される平型導体である。コネクタ1は、電気絶縁材で作られたハウジング10と、該ハウジング10により保持されている金属板製の複数の信号端子20と、接続される平型導体Fを信号端子20に押圧する可動部材30と、ハウジング10に取り付けられる金属板製の金属シェル40とを有している。
【0026】
平型導体Fは、例えば、可撓性シートの下面に各信号端子20と接触する対応回路部が形成されており、コネクタ1に挿入される部分となる先端部分の上面に補強シートF1が取り付けられている。この平型導体は、補強シートF1が設けられている部分の側縁にコネクタのロック腕部と係止して該平型導体の抜けを防止するための被係止部としての係止凹部F2が形成されている。
【0027】
ハウジング10は、例えば、金属板の平坦な板面を維持したまま形状づけられた二種の複数の信号端子20(20Aおよび20B)をその板面で直角な方向に所定間隔で配列し保持している。このハウジング10は、上記二種の信号端子20A,20Bのそれぞれの位置で該信号端子20の板面に平行な面での断面を示す図2(A),(B)に見られるように、前後方向(図2(A),(B)にて左右方向)に貫通する空間が形成されており、上壁12そして下壁13を有している。上壁12は後部域(図2(A),(B)にて右部域)が切欠かれていて上方に開放された空間14をなしていて、この空間14に後述の可動部材30が配されている。
【0028】
ハウジング10の上壁12と下壁13のそれぞれの内面には、前後方向に貫通して延びる端子挿入溝15,16が形成されている。この端子挿入溝15,16の溝幅(図2(A),(B)にて紙面に直角方向での溝内幅)は、信号端子20の板厚とほぼ同じで、信号端子20を挿入かつ支持可能な寸法となっている。上記端子挿入溝15,16は、端子配列方向で同一位置にある上下一組の端子挿入溝15,16で一つの信号端子を支持する。二種の信号端子20A,20Bは、上記端子挿入溝15,16に対し、例えば、交互に圧入されている。図2(A),(B)に見られるように、一種の信号端子20Aそして他種の信号端子20Bは、端子挿入溝15,16に対して、それぞれ右方からそして左方から圧入されている。信号端子をより確実に保持するために、端子挿入開始側で下壁13の端部を肉薄としてここに信号端子を固定せしめる固定部16Aが形成されている。
【0029】
図2(A),(B)に見られるように、二種の信号端子20A,20Bは横H字状をなし、上腕部21A,21B、下腕部22A,22B、両腕を連結する連結部23A,23Bをそれぞれ有している。上腕部21A,21Bは、前端側(図にて左端側)に突起状の押圧部24A,24B、後端側に凹状あるいは没入型の受圧部25A,25Bを有している。該受圧部25A,25Bは後述の可動部材30のカム部から上方に向けた力を受ける部位であり、かかる力を受けると、上腕部21A,21Bは弾性を有する上記連結部23A,23Bを支点として梃子状に傾き、押圧部24A,24Bを下方に変位せしめて、該押圧部24A,24Bで平型導体を下方へ圧するようになっている。一種の信号端子20Aの上腕部21Aは他方の信号端子20Bの上腕部21Bよりも前方に向け長く延びており、したがって、押圧部24Aは押圧部24Bよりも前方に位置している。これに対し、受圧部25A,25Bは前後方向で同一位置にある。上記上腕部21A,21Bは、連結
部23A,23B近くでの上縁で端子挿入溝15の底面に圧せられて圧入状態となってはいるものの、上記連結部23A,23Bを支点にて傾けるように、上記端子挿入溝15と対向溝内面との間に僅かな隙間を形成している。
【0030】
下腕部22A,22Bは、下壁13の端子挿入溝16に収められる。一種の信号端子20Aでは、下腕部22Aは、連結部23Aよりも前方に延びる部分が前端側でもち上がっており上下方向での弾性を有し、前端に突状の接触部26Aを有し、連結部23Aよりも後方に延びる部分が後端側に接続部27Aと被固定部28Aを有している。接続部27Aはハウジング外に延出していて下縁が回路基板に接する位置にあり、該回路基板の対応回路部との半田接続に供する。被固定部28Aはこの接続部27Aの内縁をなすように溝状に形成されていて上記ハウジング10の下壁13の固定部16Aに嵌着される。接続部27Aと連結部23Aとの間の部分の上縁には係止凸部29Aが形成され、その前方位置に該係止凸部29Aの前縁とともに可動部材30のカム部の回動時に該カム部を支持する凹状の支持部29A−1が形成されている。
【0031】
他方の信号端子20Bでは、下腕部22Bは連結部23Bよりも前方に延びる部分の前端がハウジング外にあって接続部27Bと被固定部28Bを有している。上記一種の信号端子20Aに対し、接続部27Bと被固定部28Bは設けられている位置が逆で前端ではあるが、その形そして機能は上記一方の信号端子20Aの場合と同じであり、接続部27Bは回路基板に半田接続され、被固定部28Bはハウジング10の下壁13の固定部16Bに嵌着固定される。上記下腕部22Bは、連結部23Bと接続部27Bとの間において、前後方向で押圧部24Bとほぼ同位置に、突状の接触部26Bが設けられている。さらに、下腕部22Bは、連結部23Bよりも後方に延びる部分の直状上縁に、可動部材30のカム部の回動時に該カム部を支持する支持部29Bが形成されている。
【0032】
平型導体を信号端子20A,20Bの接触部26A,26Bに向け押しつけるために、上腕部21A,21Bの押圧部24A,24Bを下方に変位させるように、受圧部25A,25Bを上方にもち上げるための可動部材30は、本実施形態では、ハウジングと同様の電気絶縁材で作られていて、操作部31と、カム部32A,32Bとを有している。上記可動部材30は、ハウジング10の後部における空間14に配されていて、端子配列方向で各信号端子20A,20Bに対応する位置に、これらの信号端子20A,20Bの上腕部21A,21Bの後部の進入を許容するスリット状の溝部31A,31Bが形成されており、それらの溝部31A,31B内に溝内壁面を連結するように島状のカム部32A,32Bが設けられている。該カム部32A,32Bは本実施形態では、可動部材30が図2(A),(B)の開位置にあるときに、横長な長円形の島状をなし、該カム部32A,32Bと上記溝部31A,31Bの溝底33A,33Bとの間で上記上腕部21A,21Bの後部を溝部31A,31B内に受け入れている。上記可動部材30はカム部32A,32Bを中心に回動自在となっており、図2(A),(B)に示す縦長の姿勢をとる開位置から時計方向に90°回転して横長の姿勢をとる閉位置の間で往復回動操作を受ける。図2(A),(B)に示される開位置の姿勢で、上記可動部材30は、ハウジングの空間14から上方に延出する部分が操作部31となっていて、この操作部31で回動のための操作力を受ける。カム部32A,32Bは信号端子20A,20Bの支持部29A−1,29Bで支持された状態で閉位置への回動時に、横長な状態から縦長な状態になり、その上縁で信号端子20A,20Bの受圧部25A,25Bを上方へもち上げる。かくして、信号端子20A,20Bの上腕部21A,21Bは上述のように連結部23A,23Bを支点として梃子状に傾いて、押圧部24A,24Bで平型導体を下方に圧して、該平型導体と信号端子20A,20Bの接触部26A,26Bとの接圧を高める。
【0033】
ハウジング10に取りつけられる金属シェル40は、図3(A),(B)に見られるように、一枚の金属板を外形づけた後に屈曲加工して作られている。該金属シェル40は、
ハウジング10の上面に密着する平坦面を有する上部シールド部42とハウジング10の側部に位置する側部シールド部43とを備えたシールド部41と、該側部シールド部43から端子配列方向内側に屈曲された半田固定部44と、該半田固定部44から上方に屈曲されて上記側部シールド部43と平行、すなわち信号端子20A,20Bと平行な板面を有するロック部材45とを一部材として一体に有している。すなわち、ロック部材45は金属シェル40の一部として作られている。
【0034】
上記上部シールド部42は平坦面で長方形をなしていて、長手方向(端子配列方向)中央部で後縁に半円状と直状の内縁をもつ取付切欠部42Aが形成されている。この取付切欠部42Aは、上部シールド部42の前後方向の幅に比して小さく該上部シールド部42の強度を低下させる程でもシールド効果を低下させる程でもない、小域に形成されている。この取付切欠部42Aの後部をなす直状内縁には、係止突起42A−1が設けられている。
【0035】
側部シールド部43は、前後方向で上部シールド部42の側端の一部と連結されている前部43Aとこれから後方に延びる後部43Bとを有している。前部43Aは上記上部シールド部42との境界で屈曲されて下方に延びている。後部43Bは前部43Aの面をそのまま後方に延長して形成され腕状をなしている。上記前部43Aの下縁には切込み溝43A−1が形成されていて、該切込み溝43A−1より後方部分が端子配列方向内側に屈曲されており、上部シールド部42と平行な面の部分をなす半田固定部44が形成されている。該半田固定部44は底面が回路基板の面と接面可能となっており、回路基板の対応部と半田固定される。上記前部43Aは、上記切込み溝43A−1よりも前方の下縁部で上記後部43Bと同一面をなした脚部43A−2を有している。該脚部43A−2はその下端縁が回路基板上に位置するようになっていて上記半田固定部44と同様に回路基板との固定を補助する他の半田固定部を形成する。回路基板との半田固定は、上記半田固定部44又は脚部43A−2のいずれか一方のみでも良い。上記側部シールド部43の後部43Bには、その後端側下縁が段状に切取られていて軸支持部43B−1を形成している。この軸支持部43B−1は、後述の可動部材30が端子配列方向両端に回動軸を有しているときに、この軸支持部43B−1に該回動軸を収めて、これを回動支持する。
【0036】
ロック部材45は、信号端子20A,20Bと同様な横H状をなしている。このロック部材45はその前部で上記半田固定部44と連結されている。このロック部材45については、後に後述する。
【0037】
かかる金属シェル40を取り付ける観点から、上記ハウジング10について再度説明する。図1のコネクタ1を後方から見た部分拡大斜視図である図4(A),(B)に見られるように、ハウジング10には、金属シェル40のロック部材45を挿入する金属シェル保持溝17と、上部シールド部42の取付切欠部42Aとの係止のための突部18とを有している。上記金属シェル保持溝17は、ロック部材45が信号端子20A,20Bに類似する形状をなしている関係上、端子挿入溝15,16と同様の溝形状をなしている。
【0038】
この金属シェル保持溝17は、図4(A),(B)からも明らかなように、端子配列範囲、換言すれば端子挿入溝15,16は形成されている範囲の外側にあって、端子挿入溝15,16で保持される信号端子の板と平行な面に上記ロック部材45の板面が位置するように形成されている。上記ハウジング10の上面に設けられた突部18は、前方から金属シェル40がハウジング10に取り付けられたときに、金属シェル40の取付切欠部42Aが嵌着する位置に設けられており、取付切欠部42Aの内縁に形成された係止突起42A−1が該突部18の側面に喰い込むようになっている。これによって、端子配列方向に長い上部シールド部42はハウジング10の上面からの上方への浮き上がりが防止される。上記金属シェル40がハウジング10へ取り付けられるときには、ロック部材45はハウジング10の金属シェル保持溝17内に挿入される。
【0039】
金属シェル保持溝17内に挿入されたロック部材45は、図5(A),(B)に見られるように、対応せるハウジング10の金属シェル保持溝17へ前方から挿入されて、ここで保持される。この金属シェル保持溝17は、図2(B)の端子挿入溝15,16とほぼ同様に形成されているが、この端子挿入溝15,16に比し、ハウジング10の上壁12そして下壁13が前部で切り欠かれている点で相違している。ロック部材45は、図2(B)の信号端子20Bとかなり類似していて横H状をなしていて、上腕部46、下腕部47そして連結部48を有している。上腕部46は、信号端子20Bと同様に、前端側に押圧部49、後端側に受圧部50を有している。また下腕部47は、前端位置に上方へ突出するロック突部52を有していると共に、中間部にグランド接触部51そして後端側には、信号端子20と同様に、可動部材30のカム部を支持する支持部53を有している。上記ロック突部52は、図1に示されるコネクタ1に接続される平型導体Fに形成されている被係止部としての係止凹部F2に突入して、平型導体Fの抜けを防止するためのものである。このようにロック部材45は上記グランド接触部51をも有していることから、グランド端子としての機能も併せもつ。なお、本実施形態でハウジング10の上壁12が切り欠かれているのは、上記ロック突部52に平型導体Fの係止凹部F2が係止する際に、平型導体Fの先端がロック突部52に乗り上げるための空間を確保するためである。
【0040】
可動部材30は、図5(A),(B)に見られるように、上腕部46の後部分の進入を許容する溝部31Cが形成されていて、この溝部31Cに島状のカム部32Cが設けられている。この溝部31Cとカム部32Cの形状は、信号端子20A,20Bの溝部31A,31Bそしてカム部32A,32Bと同じである。かくして、可動部材30が閉位置へ回動すると、信号端子20A,20Bの場合と同様、上腕部46は連結部48を支点として、押圧部49が下方へ変位するようにして傾く。
【0041】
このような本実施形態のコネクタは、次の要領で使用され機能する。
【0042】
(1)先ず、コネクタの組立てに際しては、可動部材30と金属シェル40が取り付けられていない状態で、図2(A)に見られる信号端子20Aを右方から端子挿入溝15,16へ挿入し被固定部28Aでハウジング10の固定部16Aへ固定すると共に、図2(B)に見られる信号端子を左方から端子挿入溝15,16へ挿入し被固定部28Bでハウジング10の固定部16Bへ固定する。信号端子20Aと信号端子20Bは、多くの場合、交互に配されるが、要求に応じてこれとは異なる順序で混在するようにしてもよい。
【0043】
(2)次に、可動部材30を、図2(A),(B)そして図5(A)に示される開位置の状態で後方から取り付けられる。該可動部材30のカム部32A,32Bは、信号端子20A,20Bの支持部29A−1,29Bに接して位置するようになる。
【0044】
(3)しかる後、金属シェル40をハウジング10へ前方から取り付ける。該金属シェル40のシールド部41を成す上部シールド部42と側部シールド部43はハウジング10の上面そして側面にそれぞれ接面して位置し、ロック部材45は金属シェル保持溝17内に挿入される。上記上部シールド部42はその取付切欠部42Aがハウジング10の上面の突部18に嵌まり、取付切欠部42Aの内縁の係止突起42A−1が該突部18の側面に喰い込んで上記上部シールド部42の位置がしっかりと固定される。一方、金属シェル保持溝17内に挿入されたロック部材45は、図5(A)に見られるように、前後方向で連結部48の範囲で、上腕部46の上縁と下腕部47の下縁とで金属シェル保
持溝17の上下溝底間に対し圧入され保持される。また、下腕部47の下縁には、抜け防止のための係止突起が設けられており、その抜け防止はさらに強固となっている。
【0045】
(4)このようにして組み立てられたコネクタ1は、使用に際して、所定の回路基板上に配される。コネクタ1が回路基板上に配されると、信号端子20A,20Bの接続部27A,27B、金属シェル40の半田固定部44、さらには脚部43A−2は回路基板の対応部と接面する。しかる後、この対応部との半田が行なわれ、信号端子20A,20Bは対応回路と電気的に接続されるとともに固定され、金属シェル40の半田固定部44そして脚部43A−2は接地されるとともに固定される。
【0046】
(5)しかる後、図1に示される平型導体Fをコネクタ1へ挿入し、可動部材30を閉位置へ回動する。この閉位置への回動により可動部材30のカム部32A,32B,32Cは縦長状態となって信号端子20A,20Bの受圧部25A,25Bそしてロック部材45の受圧部50を上方に圧し、既述の梃子の原理により、信号端子20A,20Bの上腕部21A,21Bそしてロック部材45の上腕部46は前端の押圧部24A,24B,49が下方に変位するように傾き、これらの押圧部24A,24B,49が平型導体Fを下方へ圧する。下方へ圧せられた平型導体Fは信号端子20A,20Bの接触部26A,26Bとの接圧を高める。また、ロック部材45のグランド接触部51が平型導体のグランド部と接触すると共に、平型導体Fの係止凹部F2にはロック部材45のロック突部52が突入して平型導体Fの抜けが防止される。しかも、平型導体Fはロック部材45の上記押圧部49で下方に圧せられているので、平型導体Fは浮き上がることがなく、上記ロック突部52は係止凹部F2から外れない。
【0047】
本実施形態では、平型導体Fと信号端子20A,20Bとの電気的な接続は、該平型導体Fの下面に設けられた対応回路部と該信号端子20A,20Bの接触部26A,26Bとの接触によりなされているが、接続の形態はこれに限られない。
【0048】
例えば、平型導体Fの上面に対応回路部を設けて該対応回路部と信号端子20A,20Bの押圧部24A,24Bとの接触によりなされていてもよく、また、平型導体Fの上面および下面に対応回路部を設けて、上接点接続および下接点接続の両方によりなされていてもよい。また、該上接点接続および該下接点接続が端子配列方向で交互になされていてもよい。
【0049】
図1ないし図5に示された実施形態では、金属シェル40の一部として作られていたロック部材45は、一つの板面部分に押圧部49とロック突部52が位置していたが、互いに平行な二つの板面部分の一方に押圧部そして他方にロック突部を設けることも可能である。
【0050】
図6の変形例としての形態では、前部に押圧部49そして後部に受圧部50を有している。上腕部46と連結部48で連結されている下腕部47は、上記上腕部46と同一面に位置する第一下腕部47Aと、端子配列方向で、該第一下腕部47Aから離間した位置で該第一下腕部47Aと平行な板面部分をなす第二下腕部47Bとを有している。該第二下腕部47Bは、上記第一下腕部部47Aの前部下縁で屈曲されて側方に延びる延出部47Cにより該第一下腕部47Aと連結されている。第一下腕部47Aは、この延出部47Cのすぐ後方位置にグランド接触部51そして後端位置に支持部53を有している。このように、第一下腕部47Aは上腕部46とほぼ同じく長く延びているが、第二下腕部部47Bは、上記延出部47Cの位置よりも前方にのみ延びていて短く形成されている。この第二下腕部47Bは、延出部47Cの面に対して直角に屈曲されることにより上記第一下腕部47Aと平行な面を有している。そして、この第二下腕部47Bに上方へ突出するロック突部52が形成されている。なお、上記延出部47Cは、半田固定部44につながっていて同一面をなしており、半田固定部44の一部として回路基板との半田固定に供することが可能となっている。
【0051】
このような図6の形態にあっては、押圧部49とロック突部52とが端子配列方向、すなわち平型導体の幅方向にずれて位置しているので、ロック突部52が平型導体Fの係止凹部F2(図1参照)に突入して係止したときには、上記押圧部49は前後方向で係止凹部F2の範囲内でかつ該係止凹部F2の側縁近傍で平型導体Fを上方から押圧することもできる。この場合は、押圧部49による押圧位置が前後方向でロック突部52と一致するので、平型導体Fが上方にもち上げられるような外力を受けても、もち上げる方向のモーメントが生じなく、ロックのための押圧がきわめて効果的となる。
【0052】
図1ないし図6の形態は、ロック部材45はシールド部41を有する金属シェル40の一部として作られていたが、本発明はロック部材45はシールド部41と一体的になっていることを要せず、ロック部材45は、シールド部以外の他の機能をもつ部分と一体となっていてもよい。例えば、図7に示す変形例としての形態は、ロック部材45と半田固定部44さらには支持腕部43’と一体となっている。図7の形態において、ロック部材45自体は、図3そして図5の形態と同様に押圧部49を有する上腕部46とロック突部52を有する下腕部47は同一面に位置していて、この下腕部47の前部で屈曲されて回路基板と平行な面をなす半田固定部44を有し、さらに屈曲されて上記ロック部材45と平行な面をなす支持腕部43’を有している。この支持腕部43’自体は、図3の形態の金属シェル40における側部シールド部43と同じ形をなしている。したがって、この図7におけるロック部材45、半田固定部44そして支持腕部43’を一体として有する部材は、図3における金属シェル40から上部シールド部42を切り去って、残る部材と同一形態である。図7において、上記支持腕部43’の前部は脚部43A−2をなし回路基板と半田接続が可能で上記半田固定部44と相俟ってコネクタの固定に供する。また、上記支持腕部43’の後部には、段状に切り取られた軸支持部43B−1が形成されていて、可動部材が端子配列方向両端に回動軸を有しているときに、上記軸支持部43B−1はこの回動軸を受けて支持する。
【0053】
図8は、ロック部材45と半田固定部とを一体とした変形例としての形態である。この図8の形態では、ロック部材45は、再び、押圧部49とロック突部52が端子配列方向で離した平行な二つの板面部分にそれぞれ形成されていて、図6のロック部材45と同じ形態である。すなわち、第二下腕部47Bの下縁で屈曲されて延出部47Cが延び、この延出部47Cから上方に向け屈曲されて突出するロック突部52が形成されており、上記延出部47Cは端子配列方向で上記ロック突部52の位置よりも先方まで同一面で延びる半田固定部44と一体的となっていて、該半田固定部44と相俟って回路基板との半田による固定に供する。図8の形態において、半田固定部44は、なくともよく、延出部47Cでの半田固定だけでも十分である。また、他の固定部での固定力が十分ならば、延出部47Cでの半田固定も不要である。
【0054】
図示された実施形態に係るコネクタは、回路基板に平行な方向で平型導体が挿入されていたが、本発明が適用されるコネクタは、これに限られず、例えば、ハウジングが上方に開口する開口部を有していて、平型導体が回路基板に直角な方向で該開口部へ上方から挿入されるようになっている、いわゆる縦型(バーチカルタイプ)のコネクタであってもよい。
【0055】
また、信号端子は、図示されてきたような金属板の平坦面を維持したものでなくとも、金属板の板厚方向に屈曲された、いわゆる曲げ端子でもよい。
【0056】
<第二実施形態>
第一実施形態で説明したコネクタは、信号端子およびグランド端子が上腕部と下腕部とを有し、両腕部がその長手方向中間位置で連結部により連結され、該連結部よりも前方で両腕部間に平型導体を受け入れ、連結部より後方で可動部材の作用によって上腕部を傾けることにより上腕部前端部で平型導体を下腕部前端の接触部へ押圧する、いわゆるバックフリップ型の端子を有するコネクタに取り付けられる形式のコネクタであった。これに対し、本実施形態では、本発明がフロントフリップ型の端子を有するコネクタとしても適用できることを示している。本実施形態に係るコネクタは、端子の形状および可動部材が前端側で回動自在に設けられている点で第一実施形態のコネクタと異なっているので、該端子および可動部材を中心に説明する。
【0057】
図9において、ロック部材60は、第一実施形態の場合と同様に、金属板の平面な板面を維持して作られている。上腕部61と下腕部62はそれらの後部にて連結部63にて連結されている。上腕部61は連結部63を支点として上下に撓むような弾性を有している。該上腕部61の前部には逆U字状の案内支持部64が形成されている。一方、下腕部62はハウジング70により固定的に支持されており、前部には上方に突出するロック突部66が設けられている。
【0058】
可動部材80は、一端側に操作部81を、そして他端側にロック部材60の上腕部61の前端部を受入れる溝部81Aが形成されていて、該溝部81Aには軸部82が設けられている。該可動部材80は、図9に見られるように横置された姿勢の閉位置と、上記軸部82を中心に時計方向まわりに回動して垂立した姿勢の開位置との間を移動可能となっている。該軸部82は上記ロック部材60の案内支持部64により、回動案内支持される。
【0059】
可動部材80が閉位置にきたときには、平型導体Fの被係止部F2へロック突部66が進入する。一方、平型導体Fを圧する可動部材80がその軸部82で上記ロック部材60の案内支持部64からの反力を受ける。この反力は、可動部材80を介して平型導体Fへの押圧力となる。したがって、平型導体Fは上方からこの押圧力を受けるので、不用意な外力を受けても上方へもち上がることなく、ロック突部66は、上記平型導体Fの被係止部F2から抜けないので、平型導体Fの抜出方向でのロック突部66との係止は確実に維持される。
【0060】
また、本実施形態において、上記平型導体Fの下面にグランド接点が形成されている場合は、上記下腕部62の上縁に形成されたグランド接触部67に上記グランド接点を接触させることで、ロック部材60はグランド端子としての機能を併せもつことができる。
【符号の説明】
【0061】
10 ハウジング 60 ロック部材
20A,20B 信号端子 61 上腕部
26A,26B 接触部 62 下腕部
30 可動部材 63 連結部
40 金属シェル 64 案内支持部
41 シールド部 66 ロック突部
44 半田固定部 80 可動部材
45 ロック部材 81 軸部
51 グランド接触部 F 平型導体
52 ロック突部 F2 被係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の信号端子と、複数の該信号端子を配列保持する電気絶縁材のハウジングと、該ハウジングの前部に形成された開口部へ平型導体を挿入可能とする開位置から該平型導体を信号端子の接触部へ圧する閉位置へ向け可動な可動部材と、挿入された平型導体の抜けを防止するロック部材とを有する回路基板用電気コネクタにおいて、ロック部材は金属板の平坦な板面部分を有して作られ、該板面部分が信号端子の配列方向と直角をなすようにしてハウジングより保持されており、ロック部材は前後方向に延びるように板面部分に形成された上腕部と下腕部を有し、該上腕部と下腕部は連結部を介して連結されていて該連結部よりも前方の上腕部前部と下腕部前部との間に上記平型導体の挿入を可能としており、下腕部はハウジングによって固定的に保持され、上腕部が連結部を支点として上記板面部分の面を含む面内で上記下腕部に対して梃子状に傾くように弾性変位可能であり、ロック部材は上記上腕部前部に平型導体を押圧する押圧部が設けられ、ロック部材の下腕部前部に平型導体の被係止部と係止するロック突部をそれぞれ有しており、ロック部材はそれらの上腕部後部に可動部材のカム部が当接する受圧部を有していて、可動部材が閉位置へ移動した際に、受圧部がカム部に圧せられて、上記ロック部材の上腕部が押圧部での平型導体との接圧を高めるように弾性変位し、ロック部材の下腕部前部のロック突部が平型導体の被係止部と前後方向で干渉する位置にくるようになっていることを特徴とする回路基板用電気コネクタ。
【請求項2】
信号端子は連結部で連結された前後方向に延びる上腕部と下腕部を有し、上腕部前部に平型導体と接触する接触部をそして上腕部後部に可動部材のカム部が当接する受圧部を有していて、可動部材が閉位置へ移動した際に、受圧部がカム部に圧せられて、上記上腕部が接触部での平型導体との接圧を高めるように弾性変形するようになっていることとする請求項1に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項3】
ハウジングは、信号端子の少なくとも配列範囲を覆うシールド部を有する金属シェルが取り付けられており、該金属シェルの一部がロック部材として形成され、該ロック部材と上記シールド部とが一部材となっていることとする請求項1に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項4】
ロック部材は下腕部そして上腕部の少なくとも一方に平型導体のグランド回路部と接触するグランド接触部を有していてグランド部材をも兼ねていることとする請求項1ないし請求項3のうちの一つに記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項5】
金属シェルはシールド部とロック部材をつなぐ部分で回路基板の面に接面する半田固定部を有し、該固定部で回路基板の対応部と半田固定が可能となっていることとする請求項3に記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項6】
ロック部材は、板面部分が端子配列方向で離間して位置し互いに連結された平行な面の二部位として形成され、一方の部位に押圧部そして他方の部位にロック突部がそれぞれ設けられていることとする請求項1ないし請求項5のうちの一つに記載の回路基板用電気コネクタ。
【請求項7】
金属板の信号端子と、複数の該信号端子を配列保持する電気絶縁材のハウジングと、該ハウジングの前部に形成された開口部へ平型導体を挿入可能とする開位置から該平型導体を信号端子の接触部へ圧する閉位置へ向け可動な可動部材と、挿入された平型導体の抜けを防止するロック部材とを有する回路基板用電気コネクタにおいて、ロック部材は金属板の平坦な板面部分を有して作られ、該板面部分が信号端子の配列方向と直角をなすようにしてハウジングより保持されており、ロック部材は前後方向に延びるように板面部分に形成された上腕部と下腕部を有し、該上腕部と下腕部は互いの後部にて連結部を介して連結されていて該上腕部と下腕部との間に上記平型導体の挿入を可能としており、下腕部はハウジングによって固定的に保持され、上腕部が連結部を支点として上記板面部分の面を含む面内で上記下腕部に対して梃子状に傾くように弾性変位可能であり、ロック部材は上記上腕部に上記可動部材の軸部を案内支持する案内支持部が設けられ、ロック部材の下腕部に平型導体の被係止部と係止するロック突部をそれぞれ有しており、可動部材が閉位置へ移動した際に、上記案内支持部が上記可動部材の軸部に圧せられて、上記可動部材が該軸部からの反力としての押圧力によって平型導体との接圧を高め、ロック部材の下腕部のロック突部が平型導体の被係止部と前後方向で干渉する位置にくるようになっていることを特徴とする回路基板用電気コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−238512(P2010−238512A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84868(P2009−84868)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(390005049)ヒロセ電機株式会社 (383)
【Fターム(参考)】