説明

回路用接続部材及び回路板

【課題】電子部品と回路基板の接続に用いられ、回路接続界面でのストレスを緩和でき、信頼性試験後においても接続部での接続抵抗の増大や接着剤の剥離がなく、接続信頼性が大幅に向上する回路用接続部材及び接続信頼性に優れる回路板を提供する。
【解決手段】ICチップとプリント基板の接続、又は、ICチップとフレキシブル配線板の接続に用いられ、かつ、相対峙する回路電極を加熱、加圧によって、加圧方向の電極間を電気的に接続する回路用接続部材であって、その回路用接続部材が(A)0.02〜1ミクロンの直径を有するゴム粒子が分散したエポキシ樹脂(B)エポキシ樹脂の潜在性硬化剤を必須成分とする接着剤組成物を含有することを特徴とする回路用接続部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板同士またはICチップ等の電子部品と回路基板の接続に用いられる回路用接続部材及び回路板に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板同士またはICチップや電子部品と回路基板の接続とを電気的に接続する際には、接着剤または導電粒子を分散させた異方導電接着剤が用いられている。すなわち、これらの接着剤を電極間に配置して、加熱、加圧によって電極同士を接続後、加圧方向に導電性を持たせることによって電気的接続を行うことができる。例えば、特許文献1では、エポキシ樹脂をベースとした回路接続用接着剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−16147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エポキシ樹脂をベース樹脂とした従来の接着剤を用いた接着剤は、熱衝撃試験、PCT試験などの信頼性試験を行うと接続基板の熱膨張率差に基づく内部応力によって接続部において接続抵抗の増大や接着剤の剥離が生じるという問題がある。特に、チップを接着剤を介して直接基板に搭載する場合、接続基板としてFR−4基材を用いたプリント基板、あるいはポリイミドやポリエステルを基材とするフレキシブル配線板を用いると、接続後チップとの熱膨張率差に基づく内部応力によってチップ及び基板の反りが発生しやすい。本発明は、回路基板同士またはICチップ等の電子部品と回路基板の接続に用いられ優れた接続信頼性を可能とする回路用接続部材及び接続信頼性に優れる回路板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の回路用接続部材は、ICチップとプリント基板の接続、又は、ICチップとフレキシブル配線板の接続に用いられ、かつ、相対峙する回路電極を加熱、加圧によって、加圧方向の電極間を電気的に接続する回路用接続部材であって、その回路用接続部材が
(A)0.02〜1ミクロンの直径を有するゴム粒子が分散したエポキシ樹脂
(B)エポキシ樹脂の潜在性硬化剤を必須成分とする接着剤組成物を含有することを特徴とする。
【0006】
また上記の回路用接続部材では、接着剤組成物にフェノキシ樹脂を含有することができ、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は20000〜60000が好ましい。また上記の回路用接続部材では、接着剤組成物に、平均粒径1〜18ミクロンの導電粒子を分散することができ、導電性粒子の含有量は、接着剤組成物100容量部に対して、0.1〜20容量部が好ましい。回路用接続部材の形状はフィルム状であることができ、回路用接続部材の接続後の面積は、接続する前の面積に対して2.0〜5.0倍であるようにすることができる。
【0007】
本発明の回路板は、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に回路用接続部材を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させた回路板であって、上記第一の回路部材がICチップであり、上記第二の回路部材がプリント基板又はフレキシブル配線板であり、前記回路用接続部材が、
(A)0.02〜1ミクロンの直径を有するゴム粒子が分散したエポキシ樹脂
(B)エポキシ樹脂の潜在性硬化剤を必須成分とする接着剤組成物を含有する接着剤であることを特徴とする。
【0008】
また、上記0.02〜1ミクロンの直径を有するゴム粒子は、全ゴム粒子の70容量%以上であると好ましく、90容量%以上であるとより好ましい。さらには、上記プリント基板がFR−4基板であると好適であり、上記フレキシブル配線板の基材がポリイミド又はポリエステルであると好適である。上述の回路接続用部材は異方導電性が付与されていると好ましい。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明の回路接続部材及び回路板によれば、回路接続界面でのストレスを緩和でき、信頼性試験後においても接続部での接続抵抗の増大や接着剤の剥離がなく、接続信頼性が大幅に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に用いるエポキシ樹脂は、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、AD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂やナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独にあるいは2種以上を混合して用いることが可能である。これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることがエレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0011】
本発明のゴム粒子は、0.02〜1ミクロンの直径を有しエポキシ樹脂に分散される。ゴム粒子は一次粒子として均一にエポキシ樹脂に分散することができる。0.02〜1ミクロンの直径を有すゴム粒子は、全ゴム粒子の70容量%以上が好ましく、90容量%以上がより好ましい。0.02〜1ミクロンの直径を有するゴム粒子が分散したエポキシ樹脂(A)は、ゴムエマルジョンを前記エポキシ樹脂に直接混合、脱水処理して得らことができる。
【0012】
本発明では、ゴムエマルジョンとエポキシ樹脂の混合物(C)を使用することができる。この場合、ゴムエマルジョンに分散するゴム粒子の直径は、0.02から1ミクロンであることが好ましい。0.02〜1ミクロンの直径を有すゴム粒子は、全ゴム粒子の70容量%以上であることが好ましく、90容量%以上であることがより好ましい。
【0013】
本発明のゴムエマルジョンは、乳化重合、懸濁重合や溶液重合から得られるゴムの水分散体としたものであり、例えば、アクリルエマルジョン、SBR、NBRなどがあげられ、単独あるいは2種以上を混合したものが用いられ、特に、(メタ)アクリル酸エステル系モノマを乳化重合して得られる、ガラス転移温度が室温以下のアクリルゴムエマルジョンが好適である。前記ゴム粒子の粒子径は、0.02〜1ミクロン程度が好ましいが、エポキシ樹脂組成物にした際の硬化物性や作業性の点から0.1〜0.6ミクロンがより好ましい。このような粒径のゴム粒子は、全ゴム粒子の70容量%以上であることが好ましく、90容量%以上であることがより好ましい。
【0014】
本発明でゴムエマルジョンとエポキシ樹脂を混合・脱水して得られるエポキシ樹脂組成物は、ゴムエマルジョンを、エポキシ樹脂に直接混合して、常圧下、または減圧下で撹拌しながら水を除去して得られる。この際、水を除去後さらに高圧ホモジナイザで処理するとエポキシ樹脂組成物の粘度が低くなり、接着剤組成物を作製時の作業性が向上する。エポキシ樹脂組成物中に分散されるゴム粒子量は、エポキシ樹脂100重量部に対して1重量部〜60重量部が好ましく、さらに好ましくは2重量部から30重量部である。
【0015】
エポキシ樹脂の潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ジアミノマレオニトリル、メラミンおよびその誘導体、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等、及びこれらの変性物があり、これらは単独あるいは2種以上の混合体として使用できる。これらはアニオンまたはカチオン重合性の触媒型硬化剤であり、速硬化性を得やすく、また化学当量的な考慮が少なくてよいことから好ましい。硬化剤としては、その他にポリアミン類、ポリメルカプタン、ポリフェノール、酸無水物等の重付加型の適用や前記触媒型硬化剤との併用も可能である。
【0016】
アニオン重合型の触媒型硬化剤としては、第3アミン類やイミダゾール類を配合したエポキシ樹脂は、160〜200℃程度の中温で数10秒〜数時間程度の加熱により硬化するために可使時間(ポットライフ)が比較的長い。カチオン重合型の触媒型硬化剤としては、エネルギー線照射により樹脂を硬化させる感光性オニウム塩、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が主として用いられる。またエネルギー線照射以外に加熱によっても活性化してエポキシ樹脂を硬化させるものとして、脂肪族スルホニウム塩等がある。この種の硬化剤は速硬化性という特徴を有することから好ましい。
【0017】
これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質や、Ni、Cu等の金属薄膜及びケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長できるため好ましい。
【0018】
上記で得た接着剤組成物中には、通常の添加剤等として例えば、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃剤、チキソトロピック剤、カップリング剤及びフェノール樹脂やメラミン樹脂、イソシアネート類等の硬化剤等を含有することもできる。
【0019】
本発明に用いるフェノキシ樹脂について説明する。フェノキシ樹脂は、高速液体クロマトグラフィー(HLC)から求められた重量平均分子量が10000以上の高分子量エポキシ樹脂に相当し、エポキシ樹脂と同様に他にビスフェノールA型、AD型、AF型等の種類がある。これらはエポキシ樹脂と構造が類似していることから相溶性がよく、また接着性も良好な特徴を有する。分子量の大きい程フィルム形成性が容易に得られ、また接続時の流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。重量平均分子量としては10000〜80000のものが溶融粘度や他の樹脂との相溶性等の点からより好ましく、20000〜60000のフェノキシ樹脂がより好ましい。これらの樹脂は、水酸基やカルボキシル基等の極性基等を含有すると、エポキシ樹脂との相溶性が向上し、均一な外観や特性を有するフィルムが得られることや、硬化時の反応促進による短時間硬化を得る点からも好ましい。配合量としては、フィルム形成性や硬化反応の促進の点から樹脂成分全体に対して20〜80重量%とするのが好ましい。また溶融粘度調整等のために、スチレン系樹脂やアクリル樹脂等を適宜混合してもよい。
【0020】
導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等があり、これら及び非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等に前記した導通層を被覆等により形成したものでもよい。プラスチックを核とした場合や熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。導電性粒子は、接着剤成分100体積に対して0.1〜30体積%の広範囲で用途により使い分ける。過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止するためには0.1〜10体積%とするのがより好ましい。
【0021】
本発明の接着剤組成物は一液型接着剤として、とりわけ液晶パネルや半導体チップ接着用のフィルム状接着剤として特に有用である。この場合例えば、上記で得た接着剤組成物を溶剤あるいはエマルジョンの場合の分散液等として液状化して、離形紙等の剥離性基材上に形成し、あるいは不織布等の基材に前記配合液を含浸させて剥離性基材上に形成し、硬化剤の活性温度以下で乾燥し、溶剤あるいは分散液等を除去すればよい。この時、用いる溶剤は芳香族炭化水素系と含酸素系の混合溶剤が、材料の溶解性を向上させるため好ましい。ここに含酸素系溶剤のSP値は8.1〜10.7の範囲とすることが潜在性硬化剤の保護上好ましく、酢酸エステル類がより好ましい。また溶剤の沸点は150℃以下が適用できる。沸点が150℃を超すと乾燥に高温を要し、潜在性硬化剤の活性温度に近いことから潜在性の低下を招き、低温では乾燥時の作業性が低下する。このため沸点が60〜150℃が好ましく、70〜130℃がより好ましい。
【0022】
接着剤の接続後の面積と接続前の面積の比は、以下の手段によって測定する。すなわち、厚さ50μm、大きさ5mm角の接着剤を厚さ1.1mm、大きさ15mm角のガラス板2枚に挟んでおく。これを、加熱圧着機によって加熱温度180℃、加圧18kgf/cm、加圧時間20秒の条件で加熱、加圧を行い、加熱、加圧前の接着剤面積(A)及び、加熱、加圧の接着剤面積(B)を画像処理装置を用いて測定することによって、接着剤の接続後の面積と接続前の面積の比(B/A)を求めることができる。接着剤の接続後の面積と接続前の面積の比(B/A)が2.0未満になると、接続電極間、または接続電極と導電粒子界面の溶融接着剤の排除性が低下するため、接続電極間または接続電極と導電粒子間の電気的導通を確保でき難くなる。一方、接着剤の接続後の面積と接続前の面積の比(B/A)が5.0を越えると接続時の接着剤の流動性が高すぎるため、気泡がでやすく、結果として信頼性が低下する傾向にある。
【0023】
フィルム状接着剤の場合、接着剤層を多層化することもできる。例えば、異方導電性を付与するために導電粒子を充填させた接着フィルムと導電粒子を充填していない接着剤層をラミネート化した二層構成異方導電フィルムや導電粒子を充填させた接着フィルムの両側に導電粒子を充填していない接着剤層をラムネート化した三層構成異方導電フィルムを用いることができる。これらの多層構成異方導電フィルムは接続電極上に効率良く、導電粒子を捕獲できるため、狭ピッチ接続に有利である。また、回路部材との接着性を考慮して、回路部材1及び2に対してそれぞれ接着性に優れる接着フィルムをラミネートして多層化することもできる。
【0024】
本発明の回路板で用いられる回路部材としては、半導体チップ、トランジスタ、ダイオ−ド、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の電子部品、プリント基板、ポリイミドやポリエステルを基材としたフレキシル配線板やITOなどが回路形成されたガラス基板があげられる。半導体チップや基板の電極パッド上には、めっきで形成されるバンプや金ワイヤの先端をトーチ等により溶融させ、金ボールを形成し、このボールを電極パッド上に圧着した後、ワイヤを切断して得られるワイヤバンプなどの突起電極を設け、接続端子として用いることができる。上記の回路部材には接続端子が通常は多数(場合によっては単数でも良い)設けられており、前記回路部材の少なくとも1組をそれらの回路部材に設けられた接続端子の少なくとも一部を対向配置し、対向配置した接続端子間に接着剤を介在させ、加熱加圧して対向配置した接続端子どうしを電気的に接続して回路板とする。回路部材の少なくとも1組を加熱加圧することにより、対向配置した接続端子どうしは、直接接触により又は導電粒子を介して電気的に接続される。
【実施例】
【0025】
実施例1
ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(平均分子量30000)60gを一般的方法により作製し、これを重量比でトルエン(沸点110.6℃、SP値8.90)/酢酸エチル(沸点77.1℃、SP値9.10)=50/50の混合溶剤に溶解して、固形分30重量%のビスフェノール型Aフェノキシ樹脂溶液とした。アクリル酸エチル80重量部、メタクリル酸メチル10重量部、メタクリル酸グリシジル10重量部を末端アルキル基含有ポリマである乳化剤とともに乳化重合して得たアクリルゴムエマルジョン20重量部と80重量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂を混合撹拌、加熱して水を除いた後、高圧ホモジナイザによって処理して直径0.3ミクロンのアクリルゴム粒子が一次分散された液状エポキシ樹脂を得た。このアクリルゴム粒子分散液状エポキシ樹脂30重量部を前記の固形分30重量%のビスフェノール型Aフェノキシ樹脂溶液(樹脂重量部:30部)と混合した。ついでこの混合溶液に潜在性硬化剤であるノバキュア3941HPS(イミダゾール変性体を核とし、その表面をポリウレタンで被覆してなる平均粒径5μmのマイクロカプセル型硬化剤を、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂中に分散してなるマスターバッチ型硬化剤、活性温度125℃、旭化成工業株式会社製商品名)40部を加え、さらに導電性粒子(ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、さらにこのニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設け、平均粒径5μm、比重2.5の導電性粒子を作製)を5容量部(接着剤組成物100容量部に対して)配合分散させ、厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、75℃、10分の熱風乾燥により接着剤層の厚みが50μmの回路用接続部材を得た。
【0026】
(回路の接続)上述の回路用接続部材を用いて、金バンプ(面積:80μm×80μm、高さ:15μm)付きチップ(10mm×10mm)とライン幅50μm、ピッチ100μm、厚み18μmのNi/Auめっき銅回路を有するフレキシブル回路板(FPC)の接続を以下に示すように行った。回路用接続部材(12mm×12mm)をNi/AuめっきCu回路プリント基板に80℃、10kgf/cmで貼りつけた後、フッ素樹脂フィルムを剥離し、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路FPCの位置あわせを行った。ついで、170℃、30g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で6mΩ、平均で2mΩ、絶縁抵抗は10Ω以上であり、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
【0027】
実施例2
ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(平均分子量30000)60gを一般的方法により作製し、これを重量比でトルエン(沸点110.6℃、SP値8.90)/酢酸エチル(沸点77.1℃、SP値9.10)=50/50の混合溶剤に溶解して、固形分30重量%のビスフェノール型Aフェノキシ樹脂溶液とした。アクリル酸エチル80重量部、メタクリル酸メチル10重量部、メタクリル酸グリシジル10重量部を末端アルキル基含有ポリマである乳化剤とともに乳化重合して得たアクリルゴムエマルジョン20重量部と80重量部のビスフェノールA型エポキシ樹脂を混合撹拌、加熱して水を除いた後、高圧ホモジナイザによって処理して直径0.3ミクロンのアクリルゴム粒子が一次分散された液状エポキシ樹脂を得た。このアクリルゴム粒子分散液状エポキシ樹脂30重量部を前記の固形分30重量%のビスフェノール型Aフェノキシ樹脂溶液(樹脂重量部:30部)と混合した。ついでこの混合溶液に潜在性硬化剤であるノバキュア3941HPS(イミダゾール変性体を核とし、その表面をポリウレタンで被覆してなる平均粒径5μmのマイクロカプセル型硬化剤を、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂中に分散してなるマスターバッチ型硬化剤、活性温度125℃、旭化成工業株式会社製商品名)40部を加え、さらに導電性粒子(ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、さらにこのニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設け、平均粒径5μm、比重2.5の導電性粒子を作製)を5容量部(接着剤組成物100容量部に対して)配合分散させ、厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、75℃、10分の熱風乾燥により接着剤層の厚みが25μmの接着フィルムaを得た。ついで、前記フィルム塗工用溶液の作製の中で導電粒子を分散しない以外は同様な方法で作製したフィルム塗工用溶液を厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置塗布し、75℃、10分乾燥し厚み25μmの接着フィルムbを作製した。
【0028】
(回路の接続)上述の回路用接続部材を用いて、金バンプ(面積:80μm×80μm、高さ:15μm)付きチップ(10mm×10mm)とライン幅50μm、ピッチ100μm、厚み18μmのNi/Auめっき銅回路を有するフレキシブル回路板(FPC)の接続を以下に示すように行った。回路用接続部材(12mm×12mm)の接着フィルムb側ををNi/AuめっきCu回路プリント基板に80℃、10kgf/cmで貼りつけた後、フッ素樹脂フィルムを剥離し、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路FPCの位置あわせを行った。ついで、170℃、30g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で4mΩ、平均で2mΩ、絶縁抵抗は10Ω以上であり、これらの値は−55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップとプリント基板の接続、又は、ICチップとフレキシブル配線板の接続に用いられ、かつ、相対峙する回路電極を加熱、加圧によって、加圧方向の電極間を電気的に接続する回路用接続部材であって、その回路用接続部材が
(A)0.02〜1ミクロンの直径を有するゴム粒子が分散したエポキシ樹脂、
(B)エポキシ樹脂のマイクロカプセル型潜在性硬化剤、及び
(C)フェノキシ樹脂、を必須成分とする接着剤組成物を含有することを特徴とする回路用接続部材。
【請求項2】
前記ゴム粒子がアクリルゴムからなる、請求項1に記載の回路用接続部材。
【請求項3】
前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量が20000〜60000である請求項1又は2記載の回路用接続部材。
【請求項4】
前記接着剤組成物に、平均粒径1〜18ミクロンの導電粒子が分散されている請求項1〜3各項記載の回路用接続部材。
【請求項5】
前記導電粒子の含有量が、接着剤組成物100容量部に対して、0.1〜20容量部である請求項4記載の回路用接続部材。
【請求項6】
形状がフィルム状である請求項1〜5各項記載の回路用接続部材。
【請求項7】
前記回路用接続部材の接続後の面積が、接続する前の面積に対して2.0〜5.0倍である請求項1〜6各項記載の回路用接続部材。
【請求項8】
前記0.02〜1ミクロンの直径を有するゴム粒子は、全ゴム粒子の70容量%以上である請求項1〜7各項記載の回路接続用部材。
【請求項9】
前記0.02〜1ミクロンの直径を有するゴム粒子は、全ゴム粒子の90容量%以上である請求項8記載の回路接続用部材。
【請求項10】
前記プリント基板がFR−4基板である請求項1〜9各項記載の回路接続用部材。
【請求項11】
前記フレキシブル配線板の基材がポリイミド又はポリエステルである請求項1〜10各項記載の回路接続用部材。
【請求項12】
異方導電性が付与されている請求項1〜11各項記載の回路接続用部材。
【請求項13】
第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に回路用接続部材を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させた回路板であって、
前記第一の回路部材がICチップであり、前記第二の回路部材がプリント基板又はフレキシブル配線板であり、
前記回路用接続部材が、
(A)0.02〜1ミクロンの直径を有するゴム粒子が分散したエポキシ樹脂、
(B)エポキシ樹脂のマイクロカプセル型潜在性硬化剤、及び
(C)フェノキシ樹脂、を必須成分とする接着剤組成物を含有する回路用接続部材であることを特徴とする回路板。
【請求項14】
前記ゴム粒子がアクリルゴムからなる、請求項13記載の回路板。
【請求項15】
前記0.02〜1ミクロンの直径を有するゴム粒子は、全ゴム粒子の70容量%以上である請求項13又は14に記載の回路板。
【請求項16】
前記0.02〜1ミクロンの直径を有するゴム粒子は、全ゴム粒子の90容量%以上である請求項15記載の回路板。
【請求項17】
前記プリント基板がFR−4基板である請求項13〜16各項記載の回路板。
【請求項18】
前記フレキシブル配線板の基材がポリイミド又はポリエステルである請求項13〜17各項記載の回路板。
【請求項19】
前記回路接続用部材に異方導電性が付与されている請求項13〜18各項記載の回路板。

【公開番号】特開2009−105449(P2009−105449A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27377(P2009−27377)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【分割の表示】特願2007−122765(P2007−122765)の分割
【原出願日】平成9年8月4日(1997.8.4)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】