説明

回路装置及び車両運行システム

【課題】現行車両の回路構成にほとんど変更を加えずに、既存の車両回路の構成に応じて最小限の回路変更で直流及び交流の何れの電源でも蓄電部に充電することができる回路装置を提供する。
【解決手段】この回路装置は、電流電圧制御手段と、モータと、パンタグラフと、蓄電手段と、パンタグラフと蓄電手段との内の一方を電流電圧制御手段の一端に電気的に接続する第1の切替手段と、電流電圧制御手段の他端をモータと複数のリアクトルの一端との内の一方に電気的に接続する第2の切替手段と、複数のリアクトルの他端と蓄電手段との間に設けられた開閉手段とを備え、電流電圧制御手段が、モータを駆動する際にPWMインバータとして作動し、パンタグラフからの電気エネルギーで蓄電手段を充電する際にチョッパ動作を行い、モータからの回生エネルギーで蓄電手段を充電する際にPWMコンバータとして作動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気車両の列車に搭載されるバッテリなどの蓄電器に充電を行う回路装置及び車両運行システムに関する。特には、既存の車両回路の構成に応じて最小限の回路変更で直流及び交流の何れの電源でも蓄電部に充電することができる回路装置及び車両運行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気車両において、架線などの外部からの電源による車両の運行に加えて、車両内部に設けられたバッテリなどの蓄電部からの電源で車両を運行する方式が考えられている。
【0003】
この様な電気車両による列車の運行の場合には、できるだけエネルギーの損失を抑え、いかに効率よく蓄電部を充電するかが問題となる。
【0004】
例えば、パンタグラフとインバータとの間に接触器を設け、回生ブレーキ時に接触器の回路を開いて、モータからの回生エネルギーを架線に逃がさずにバッテリに蓄積することができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。また、モータとバッテリとの間にDC/DCコンバータを設け、このDC/DCコンバータを制御して、モータからの回生エネルギーをバッテリに蓄積することができるようになっているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−199354号公報
【特許文献2】特開2003−199203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来からの装置によれば、停車中や走行中に拘わらず、何れの場合でも効果的に蓄電部に充電することができるものがなかった。特に、直流インバータ電車の場合には、停車中の給電では、地上設置の直流供給設備が必要となりコストがかかってしまうという課題があった。また、直流インバータ電車にも電力変換器を余分に付加する必要があり、車両回路の設計変更が生じ、コストがかかるという課題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、直流インバータ電車などの現行車両の回路構成にほとんど変更を加えずに、既存の車両回路の構成に応じて最小限の回路変更で直流及び交流の何れの電源でも蓄電部に充電することができ、また、停車中のみならず走行中も蓄電部に充電することができる回路装置及び車両運行システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る車両の回路装置は、電流と電圧を制御する電流電圧制御手段と、電流電圧制御手段から供給される電力で動作するモータと、架線に接続されるパンタグラフと、電気エネルギーを蓄える蓄電手段と、パンタグラフと蓄電手段との内の一方を電流電圧制御手段の一端に電気的に接続する第1の切替手段と、電流電圧制御手段の他端をモータと複数のリアクトルの一端との内の一方に電気的に接続する第2の切替手段と、複数のリアクトルの他端と蓄電手段との間に設けられた開閉手段とを備え、モータを駆動する際に、第1の切替手段が、パンタグラフ又は蓄電手段から供給される直流電圧を電流電圧制御手段に出力し、電流電圧制御手段が、第1の切替手段から出力される直流電圧を交流電圧に変換するPWMインバータとして作動し、第2の切替手段が、電流電圧制御手段から供給される交流電圧をモータに出力し、パンタグラフからの電気エネルギーで蓄電手段を充電する際に、第1の切替手段が、パンタグラフから供給される直流電圧を電流電圧制御手段に出力し、電流電圧制御手段が、第1の切替手段から出力される直流電圧に基づいてチョッパ動作を行い、第2の切替手段が、電流電圧制御手段から供給される電気エネルギーを複数のリアクトル及び開閉手段を介して蓄電手段に出力し、モータからの回生エネルギーで蓄電手段を充電する際に、第2の切替手段が、モータから供給される交流電圧を電流電圧制御手段に出力し、電流電圧制御手段が、第2の切替手段から出力される交流電圧を直流電圧に変換するPWMコンバータとして作動し、第1の切替手段が、電流電圧制御手段から供給される直流電圧を蓄電手段に出力する。
【0009】
また、本発明の1つの観点に係る車両運行システムは、本発明の1つの観点に係る車両の回路装置を有する電気車両と、電気車両に電力を供給するための架線とを備え、電気車両のパンタグラフが架線に接続される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の1つの観点に係る車両の回路装置及び車両運行システムによれば、電流電圧制御手段が、モータを駆動する際にPWMインバータとして作動し、パンタグラフからの電気エネルギーで蓄電手段を充電する際にチョッパ動作を行い、モータからの回生エネルギーで蓄電手段を充電する際にPWMコンバータとして作動する。これにより、直流インバータ電車などの現行車両の回路構成にほとんど変更を加えずに、既存の車両回路の構成に応じて最小限の回路変更で直流及び交流の何れの電源でも蓄電部に充電することができ、また、停車中のみならず走行中も蓄電部に充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の車両の回路装置を示す図である。
【図2】電気車両に給電するための電源供給装置を示す図である。
【図3】図2の摺動導電板装置10Aの回路構成を示す図である。
【図4】本発明の車両の回路装置を示す図である。
【図5】電気車両に給電するための電源供給装置を示す図である。
【図6】図5の摺動導電板装置10Bの回路構成を示す図である。
【図7】電気車両に給電するための電源供給装置を示す図である。
【図8】本発明の車両の回路装置を示す図である。
【図9】本発明の車両の回路装置を示す図である。
【図10】本発明の車両の回路装置を示す図である。
【図11】本発明の車両の回路装置を示す図である。
【図12】切替器の構成を示す図である。
【図13】本発明の車両の回路装置を示す図である。
【図14】本発明の車両の回路装置を示す図である。
【図15】本発明の車両の回路装置を示す図である。
【図16】本発明の車両の回路装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の車両の回路装置及び車両運行システムの実施形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の車両の回路装置を示す図である。この回路装置は、電流と電圧を制御する電流電圧制御部2Aと、電流電圧制御部2Aからの出力で動作するモータ5と、モータ5の駆動時に電源を供給する蓄電部1と、蓄電部1に電源を供給するための充電接触子3Aと、電流電圧制御部2Aとモータ5との間の回路の開閉を行う接触器(開閉手段)4Aと、車両の空調や照明などの補機に電源を供給するためのスタティック・インバータ(SIV)6と、電流電圧制御部2A及びSIV6側にそれぞれ設けられたリアクトル7及び直流コンデンサ8とを備えている。
【0014】
ここで、電流電圧制御部2Aは、蓄電部1からモータ5に電源を供給する際には、直流を交流に変換するPWMインバータとして作動し、充電接触子3Aから蓄電部1に電源を供給する際には、位相同期方式のPWMコンバータとして作動する。また、充電接触子3Aは、交流電源に接続される3相充電接触子である。また、接触器4Aは、モータが磁石機(同期電動機)の場合には通常装備されるものであり、新たな追加が不要であることが多い。この図においては、モータ5は、誘導電動機である。
【0015】
図2は、電気車両に給電するための電源供給装置を示す。図2において、この電源供給装置は、交流電源を供給する地下トラフや電柱などの電源供給部11Aと、電源供給部11Aからの交流電源をそのまま交流電源として電気車両に給電する摺動導電板装置10Aとを備えている。
【0016】
図3は、摺動導電板装置10Aの回路構成を示す図である。図3において、この摺動導電板装置10Aの回路構成は、単純なトランス12のみの構成であり、電源側端子12Aからの6600[V]〜22000[V]の3相交流の電源を440[V]〜600[V]の3相交流にして車両側接触子12Bから出力する。車両の停車中に、この車両側接触子12Bと車両の充電接触子3Aとが電気的に接続されて、蓄電部1が充電される。
【0017】
充電中は、接触器4Aが開放され、電流電圧制御部2Aは、PWMコンバータとして作動する。また、蓄電部1は、リチウム(Li+)バッテリで構成するとよい。また、モータ5からの回生エネルギーを蓄電部1に蓄える際には、電流電圧制御部2Aは、PWMコンバータとして作動する。
【0018】
図4は、本発明の車両の回路装置を示す図である。この回路装置は、走行及び停車中に電源を供給するパンタグラフ9Aと、電流と電圧を制御する電流電圧制御部2A,2Bと、電流電圧制御部2Aからの出力で動作するモータ5と、モータ5の駆動時に電源を供給する蓄電部1と、蓄電部1に電源を供給するための充電接触子3Bと、電流電圧制御部2Aとモータ5との間の回路の開閉を行う接触器(開閉手段)4Aと、車両の空調や照明などの補機に電源を供給するためのSIV6と、電流電圧制御部2A,2B及びSIV6側にそれぞれ設けられたリアクトル7及び直流コンデンサ8と、回路構成上のグランドである車輪9Bとを備えている。
【0019】
ここで、充電接触子3Bは、交流電源に接続される3相充電接触子及び直流電源に接続される2極充電接触子で構成されている。そして、電流電圧制御部2Bは、蓄電部1に電源を供給する際に、充電接触子3Bが3相充電接触子で作用する場合にはPWMコンバータとして作動し、充電接触子3Bが2極充電接触子で作用する場合にはDC/DCコンバータとして作動し、3相ブリッジのチョッパ動作を行う。また、接触器4Aは、磁石機であり、モータ5は、誘導電動機である。
【0020】
図5は、電気車両に給電するための電源供給装置を示す。図5において、この電源供給装置は、交流電源を供給する地下トラフや電柱などの電源供給部11Aと、電源供給部11Aからの交流電源を直流電源に変換して電気車両に給電する摺動導電板装置10Bとを備えている。
【0021】
図6は、摺動導電板装置10Bの回路構成を示す図である。図6において、この摺動導電板装置10Bの回路構成は、電源側端子12Aからの6600[V]〜22000[V]の3相交流の電源を440[V]〜600[V]の3相交流に変換するトランス12と、トランス12からの交流を直流に変換して車両側接触子13Aから出力する位相制御整流器13とを備えている。充電接触子3Bが2極充電接触子として作用する場合には、車両の停車中に、パンタグラフ9Aがたたまれて架線と離れることで、充電接触子3Bが架線から電気的に切り離される。そして、摺動導電板装置10Bとの接触により、車両側接触子13Aと充電接触子3Bとが電気的に接続されて、蓄電部1が充電される。
【0022】
充電接触子3Bが2極充電接触子として充電中は、接触器4Aが開放され、電流電圧制御部2Bは、DC/DCコンバータとして作動する。このとき、車輪9Bに接続される相の下側アームを常時通電し、パンタグラフ9Aに接続される相による単相チョッパ動作を行う。一方、充電接触子3Bが3相充電接触子で作用する場合には、図2及び図3の構成の充電装置を利用し、電流電圧制御部2Bは、3相PWMコンバータとして作動する。また、蓄電部1は、例えば、リチウムイオン(Li+)バッテリで構成するとよい。また、モータ5からの回生エネルギーを蓄電部1に蓄える際には、電流電圧制御部2Aは、PWMコンバータ(PWMインバータの回生動作)として作動する。
【0023】
図7は、電気車両に給電するための電源供給装置を示す。図7において、この電源供給装置は、交流電源を供給する地下トラフや電柱などの電源供給部11Aと、パンタグラフ9A(図4)に電源を供給する剛体架線11Bと、電源供給部11Aからの交流電源を直流電源に変換して剛体架線11Bまたは電気車両に給電する摺動導電板装置10Bとを備えている。図7の構成によれば、パンタグラフ9Aから直流電源が供給され、接触器4Aが開放され、電流電圧制御部2BがDC/DCコンバータとして作動することによって、蓄電部1が充電される。パンタグラフ9Aからの給電を専らとする場合には、摺動導電板装置10Bには摺動導電部を設けず、交流を直流に変換する機能のみを装備させることもできる。
【0024】
図8は、本発明の車両の回路装置を示す図である。この回路装置は、走行及び停車中に電源を供給するパンタグラフ9Aと、電流と電圧を制御する電流電圧制御部2A,2Cと、電流電圧制御部2Aからの出力で動作するモータ5と、モータ5の駆動時に電源を供給する蓄電部1と、蓄電部1に電源を供給するための充電接触子3Cと、電流電圧制御部2Aとモータ5との間の回路の開閉を行う接触器(開閉手段)4Aと、車両の空調や照明などの補機に電源を供給するためのSIV6と、電流電圧制御部2A,2C及びSIV6側にそれぞれ設けられたリアクトル7及び直流コンデンサ8と、回路構成上のグランドである車輪9Bとを備えている。なお、接触器4Aは、モータ5が磁石機(同期電動機)で、モータごとに電流電圧制御部2が対応する場合に必要となる。
【0025】
充電接触子3Cは、2極充電接触子であり、図5〜図7の構成の充電装置を利用して蓄電部1が充電され、充電中は、電流電圧制御部2Cが、DC/DCコンバータとして作動する。図8は、電流電圧制御部2Cが単相チョッパ動作する場合の図として描かれているが、3相出力各々にリアクトルを接続してまとめることで3相チョッパ動作を行うことができる。また、蓄電部1は、リチウムイオン(Li+)バッテリ、電気二重層キャパシタ(EDLC)、フライホイール(FW)などで構成することができる。フライホイールの場合には、電流電圧制御部2Cの3相分出力回路に3相フライホイールモータを接続する。また、モータ5からの回生エネルギーを蓄電部1に蓄える際には、電流電圧制御部2Aは、PWMコンバータ(PWMインバータの回生動作)として作動する。
【0026】
図9は、本発明の車両の回路装置を示す図である。この回路装置は、走行及び停車中に電源を供給するパンタグラフ9Aと、電流と電圧を制御する電流電圧制御部2Aと、電流電圧制御部2Aからの出力で動作するモータ5と、モータ5の駆動時に電源を供給する蓄電部1と、蓄電部1に電源を供給するための充電接触子3Aと、電流電圧制御部2Aとモータ5との間の回路の開閉を行う接触器(開閉手段)4Aと、車両の空調や照明などの補機に電源を供給するためのスタティック・インバータ(SIV)6と、電流電圧制御部2A及びSIV6側にそれぞれ設けられたリアクトル7及び直流コンデンサ8と、電流電圧制御部2Aに接続する電源の供給源を、蓄電部1又はパンタグラフ9Aの何れかに切り替える切替器14Aと、回路構成上のグランドである車輪9Bとを備えている。
【0027】
ここで、電流電圧制御部2Aは、蓄電部1からモータ5に電源を供給する際には、直流を交流に変換するPWMインバータとして作動し、充電接触子3Aから蓄電部1に電源を供給する際には、PWMコンバータとして作動する。また、充電接触子3Aは、交流電源に接続される3相充電接触子である。また、接触器4Aは、モータ5が磁石機(同期電動機)の場合には通常装備されるものであり、新たな追加が不要であることが多い。この図では、モータ5は、誘導電動機である。図9の構成においては、充電接触子3Aからの充電の際には、切替器14Aを蓄電部1側に接続し、図1〜図3で説明したように充電する。また、モータ5からの回生エネルギーを蓄電部1に蓄える際には、電流電圧制御部2Aは、PWMコンバータ(PWMインバータの回生動作)として作動する。
【0028】
図10は、本発明の車両の回路装置を示す図である。この回路装置は、走行及び停車中に電源を供給するパンタグラフ9Aと、電流と電圧を制御する複数の電流電圧制御部2Aと、電流電圧制御部2Aからの出力で動作するモータ5と、モータ5の駆動時に電源を供給する蓄電部1と、蓄電部1に電源を供給するための充電接触子3Aと、複数の電流電圧制御部2Aに接続され、モータ5方向と、充電接触子3Aと、開放方向の3方向に切り替え可能な3相多回路一括3方向の切替器14Bと、車両の空調や照明などの補機に電源を供給するためのスタティック・インバータ(SIV)6と、複数の電流電圧制御部2A及びSIV6側にそれぞれ設けられたリアクトル7及び直流コンデンサ8と、複数の電流電圧制御部2Aに接続する電源の供給源を、蓄電部1又はパンタグラフ9Aの何れかに切り替える切替器14Aと、切替器14Bと充電接触子3Aとの間に設けられた平滑リアクトル7A,7Bと、回路構成上のグランドである車輪9Bとを備えている。
【0029】
ここで、電流電圧制御部2Aは、蓄電部1からモータ5に電源を供給する際には、直流を交流に変換するPWMインバータとして作動し、充電接触子3Aから蓄電部1に電源を供給する際には、位相同期方式のPWMコンバータとして作動する。また、充電接触子3Aは、交流電源に接続される3相充電接触子である。また、モータ5は、複数回路構成の永久磁石式の同期電動機である。電流電圧制御部2Aは、モータ5の1回路毎に設けられる。図10の構成においては、充電接触子3Aからの充電の際には、切替器14Aを蓄電器1側に接続し、切替器14Bは電流電圧制御部2Aと充電接触子3Aを接続して、図1〜図3で説明したように充電する。また、モータ5からの回生エネルギーを蓄電部1に蓄える際には、電流電圧制御部2Aは、PWMコンバータ(PWMインバータの回生動作)として作動する。
【0030】
図11は、本発明の車両の回路装置を示す図である。この回路装置は、走行及び停車中に電源を供給するパンタグラフ9Aと、電流と電圧を制御する電流電圧制御部2Aと、電流電圧制御部2Aからの出力で動作するモータ5と、モータ5の駆動時に電源を供給する蓄電部1と、蓄電部1に電源を供給するための充電接触子3Aと、電流電圧制御部2Aに接続され、モータ5方向と、充電接触子3A方向と、蓄電部1方向の3方向に切り替え可能な3相一括3方向の切替器14Cと、3相一括3方向の切替器14Cと蓄電部1との間に設けられた接触器(開閉手段)4Bと、車両の空調や照明などの補機に電源を供給するためのスタティック・インバータ(SIV)6と、電流電圧制御部2A及びSIV6側にそれぞれ設けられたリアクトル7及び直流コンデンサ8と、切替器14Cと接触器4Bとの間に設けられた平滑リアクトル7Aと、電流電圧制御部2Aに接続する電源の供給源を、蓄電部1又はパンタグラフ9Aの何れかに切り替える切替器14Aと、回路構成上のグランドである車輪9Bとを備えている。
【0031】
ここで、電流電圧制御部2Aは、蓄電部1からモータ5に電源を供給する際には、直流を交流に変換するPWMインバータとして作動し、充電接触子3Aから蓄電部1に電源を供給する際には、位相同期方式のPWMコンバータとして作動する。また、充電接触子3Aは、交流電源に接続される3相充電接触子である。また、モータ5は、誘導電動機である。図11の構成においては、充電接触子3Aからの充電の際には、切替器14Cで充電接触子3Aと平滑リアクトル7Aとを接続し、接触器4Bを閉じて、図1〜図3で説明したように充電する。また、モータ5からの回生エネルギーを蓄電部1に蓄える際には、切替器14Cでモータ5と電流電圧制御部2Aとを接続し、電流電圧制御部2Aは、PWMコンバータ(PWMインバータの回生動作)として作動する。さらに、パンタグラフ9Aを用いて、図7の剛体架線11Bから充電ができ、切替器14Aをパンタグラフ9A側に閉じ、切替器14Cで電流電圧制御部2Aと平滑リアクトル7を接続し、接触器4Bを閉じて蓄電部1に充電する。このとき、電流電圧制御部2Aは、3相ブリッジによる単相、2相、又は、3相チョッパ動作を行う。
【0032】
ここで、3相一括3方向の切替器14Cは、図12に示すように3つの3相接触器で構成し、3方向の切替は、当該3相接触器のインターロックによる方向切替で行うようにすることもできる。
【0033】
図13は、本発明の車両の回路装置を示す図である。この回路装置は、走行及び停車中に電源を供給するパンタグラフ9Aと、電流と電圧を制御する複数の電流電圧制御部2Aと、電流電圧制御部2Aからの出力で動作するモータ5と、モータ5の駆動時に電源を供給する蓄電部1と、蓄電部1に電源を供給するための充電接触子3Aと、複数の電流電圧制御部2Aに接続され、モータ5方向と、充電接触子3Aと、開放方向の3方向に切り替え可能な3相多回路一括3方向の切替器14Bと、車両の空調や照明などの補機に電源を供給するためのスタティック・インバータ(SIV)6と、複数の電流電圧制御部2A及びSIV6側にそれぞれ設けられたリアクトル7及び直流コンデンサ8と、複数の電流電圧制御部2Aに接続する電源の供給源を、蓄電部1又はパンタグラフ9Aの何れかに切り替える切替器14Aと、切替器14Bと充電接触子3Aとの間に設けられた平滑リアクトル7B,7Cと、平滑リアクトル7B,7Cと充電接触子3Aとの間に設けられ、充電接触子3Aと、蓄電部1方向の2方向に切り替え可能な3相多回路一括2方向の切替器14Dと、3相多回路一括2方向の切替器14Dと蓄電部1との間に設けられた接触器(開閉手段)4Bと、回路構成上のグランドである車輪9Bとを備えている。
【0034】
ここで、電流電圧制御部2Aは、蓄電部1からモータ5に電源を供給する際には、直流を交流に変換するPWMインバータとして作動し、充電接触子3Aから蓄電部1に電源を供給する際には、位相同期方式のPWMコンバータとして作動する。また、充電接触子3Aは、交流電源に接続される3相充電接触子である。また、モータ5は、永久磁石式の同期電動機である。図13の構成においては、充電接触子3Aからの充電の際には、切替器14Dで充電接触子3Aと平滑リアクトル7B、7Cとを接続し、切替器14Bで電流電圧制御部2Aと平滑リアクトル7B、7Cを接続し、さらに切替器14Aを蓄電部1側に閉じて、図1〜図3で説明したように充電する。また、モータ5からの回生エネルギーを蓄電部1に蓄える際には、切替器14Bでモータ5と電流電圧制御部2Aとを接続し、切替器14Aは蓄電部1側に閉じ、電流電圧制御部2Aは、PWMコンバータ(PWMインバータの回生動作)として作動する。さらに、パンタグラフ9Aを用いて、図7の剛体架線11Bから充電ができ、切替器14Aをパンタグラフ9A側に閉じ、切替器14Bで電流電圧制御部2Aと平滑リアクトル7B,7Cを接続し、切替器14Dで平滑リアクトル7B,7Cと接触器4Bを接続し、接触器4Bを閉じて蓄電部1に充電する。このとき、電流電圧制御部2Aは、3相ブリッジによる単相、2相、又は、3相チョッパ動作を行う。
【0035】
図14は、本発明の車両の回路装置を示す図である。この回路装置は、走行及び停車中に電源を供給するパンタグラフ9Aと、パンタグラフ9A側に設けられた、直流電源に接続される2極充電接触子である充電接触子3Cと、電流と電圧を制御する電流電圧制御部2Aと、電流電圧制御部2Aからの出力で動作するモータ5と、モータ5の駆動時に電源を供給する蓄電部1と、蓄電部1に電源を供給するための充電接触子3Aと、電流電圧制御部2Aに接続され、モータ5方向と、充電接触子3A方向と、蓄電部1方向の3方向に切り替え可能な3相一括3方向の切替器14Cと、3相一括3方向の切替器14Cと蓄電部1との間に設けられた接触器(開閉手段)4Bと、車両の空調や照明などの補機に電源を供給するためのスタティック・インバータ(SIV)6と、電流電圧制御部2A及びSIV6側にそれぞれ設けられたリアクトル7及び直流コンデンサ8と、切替器14Cと接触器4Bとの間に設けられた平滑リアクトル7Aと、電流電圧制御部2Aに接続する電源の供給源を、蓄電部1又はパンタグラフ9Aの何れかに切り替える切替器14Aと、回路構成上のグランドである車輪9Bとを備えている。
【0036】
ここで、電流電圧制御部2Aは、蓄電部1からモータ5に電源を供給する際には、直流を交流に変換するPWMインバータとして作動し、充電接触子3Aから蓄電部1に電源を供給する際には、位相同期方式のPWMコンバータとして作動する。また、充電接触子3Aは、交流電源に接続される3相充電接触子である。また、モータ5は、誘導電動機である。図14の構成においては、充電接触子3Aからの充電の際には、切替器14Cで充電接触子3Aと電流電圧制御部2Aとを接続し、切替器14Aを蓄電部1側に閉じて、図1〜図3で説明したように充電する。また、モータ5からの回生エネルギーを蓄電部1に蓄える際には、切替器14Cでモータ5と電流電圧制御部2Aとを接続し、電流電圧制御部2Aは、PWMコンバータ(PWMインバータの回生動作)として作動する。さらに、パンタグラフ9A側に設けられた充電接触子3C又はパンタグラフ9Aを用いて、図5及び図7の摺動導電板装置10B又は図7の剛体架線11Bから充電ができ、切替器14Aをパンタグラフ9A側に閉じ、切替器14Cで電流電圧制御部2Aと平滑リアクトル7を接続し、接触器4Bを閉じて蓄電部1に充電する。このとき、電流電圧制御部2Aは、3相ブリッジによる単相、2相、又は、3相チョッパ動作を行う。
【0037】
図15は、本発明の車両の回路装置を示す図である。この回路装置は、走行及び停車中に電源を供給するパンタグラフ9Aと、電流と電圧を制御する電流電圧制御部2A,2Bと、電流電圧制御部2Aからの出力で動作するモータ5と、モータ5の駆動時に電源を供給する蓄電部1と、蓄電部1に電源を供給するための充電接触子3Dと、車両の空調や照明などの補機に電源を供給するためのSIV6と、電流電圧制御部2A,2B及びSIV6側にそれぞれ設けられたリアクトル7及び直流コンデンサ8と、回路構成上のグランドである車輪9Bとを備えている。
【0038】
ここで、充電接触子3Dは、交流電源に接続される3相充電接触子3D−1〜3及び直流電源に接続される2極充電接触子3D−1,3D−4で構成されている。そして、電流電圧制御部2Bは、蓄電部1に電源を供給する際に、充電接触子3Dが3相充電接触子で作用する場合には位相同期方式のPWMコンバータとして作動し、充電接触子3Dが2極充電接触子で作用する場合にはDC/DCコンバータとして作動し、3相ブリッジの1相分を用いて単相チョッパ動作を行う。また、モータ5は、誘導電動機である。
【0039】
充電接触子3Bが2極充電接触子3D−1,3D−4として作用する場合には、車両の停車中に、図6の車両側接触子13Aと車両の充電接触子3Dのパンタグラフ9A及び車輪9Bに接続されている接触子3D−1,3D−4とが電気的に接続されて、蓄電部1が充電される。このとき、電流電圧制御部2Bは、接触子3D−1に接続される相による単相DC/DCコンバータとして作動する。接触子3D−1,3D−2,3D−3の端子にリアクトルを各々接続してまとめることで、3相チョッパ動作を行うことも可能となる。一方、充電接触子3Dが3相充電接触子3D−1〜3で作用する場合には、図2及び図3の構成の充電装置を利用し、電流電圧制御部2Bは、位相同期方式のPWMコンバータとして作動する。また、蓄電部1は、例えば、リチウムイオン(Li+)バッテリで構成するとよい。また、モータ5からの回生エネルギーを蓄電部1に蓄える際には、電流電圧制御部2Aは、PWMコンバータ(PWMインバータの回生動作)として作動する。
【0040】
図16は、本発明の車両の回路装置を示す図である。この回路装置は、走行及び停車中に電源を供給するパンタグラフ9Aと、電流と電圧を制御する電流電圧制御部2A,2Cと、電流電圧制御部2Aからの出力で動作するモータ5と、モータ5の駆動時に電源を供給する蓄電部1と、蓄電部1に電源を供給するための充電接触子3Cと、車両の空調や照明などの補機に電源を供給するためのSIV6と、電流電圧制御部2A,2C及びSIV6側にそれぞれ設けられたリアクトル7及び直流コンデンサ8と、回路構成上のグランドである車輪9Bとを備えている。
【0041】
充電接触子3Cは、2極充電接触子であり、図5〜図7の構成の充電装置を利用して蓄電部1が充電され、充電中、電流電圧制御部2Cは、DC/DCコンバータとして作動する。また、蓄電部1は、リチウムイオン(Li+)バッテリ、電気二重層キャパシタ(EDLC)、フライホイール(FW)などで構成することができる。また、モータ5からの回生エネルギーを蓄電部1に蓄える際には、電流電圧制御部2Aは、PWMコンバータとして作動する。
【0042】
以上のように、本発明の車両の回路装置及び車両運行システムによれば、直流インバータ電車などの現行車両の回路構成にほとんど変更を加えずに、既存の車両回路の構成に応じて最小限の回路変更で直流及び交流の何れの電源でも蓄電部に充電することができ、また、停車中のみならず走行中も蓄電部に充電することができる。特に、パンタグラフを用いる場合には、停車中及び走行中に拘わらず、通常の架線区間からも充電を行える。
【符号の説明】
【0043】
1 蓄電部
2A,2B,2C 電流電圧制御部
3A,3B,3C,3D 充電接触子
4A,4B 接触器
5 モータ
6 スタティック・インバータ(SIV)
7 リアクトル
7A,7B,7C 平滑リアクトル
8 直流コンデンサ
9A パンタグラフ
9B 車輪
10A,10B 摺動導電板装置
11A 電源供給部
11B 剛体架線
12 トランス
12A 電源側接触子
12B,13A 車両側接触子
13 位相制御整流器
14A,14B,14C,14D 切替器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流と電圧を制御する電流電圧制御手段と、
前記電流電圧制御手段から供給される電力で動作するモータと、
架線に接続されるパンタグラフと、
電気エネルギーを蓄える蓄電手段と、
前記パンタグラフと前記蓄電手段との内の一方を前記電流電圧制御手段の一端に電気的に接続する第1の切替手段と、
前記電流電圧制御手段の他端を前記モータと複数のリアクトルの一端との内の一方に電気的に接続する第2の切替手段と、
前記複数のリアクトルの他端と前記蓄電手段との間に設けられた開閉手段と、
を備え、前記モータを駆動する際に、前記第1の切替手段が、前記パンタグラフ又は前記蓄電手段から供給される直流電圧を前記電流電圧制御手段に出力し、前記電流電圧制御手段が、前記第1の切替手段から出力される直流電圧を交流電圧に変換するPWMインバータとして作動し、前記第2の切替手段が、前記電流電圧制御手段から供給される交流電圧を前記モータに出力し、前記パンタグラフからの電気エネルギーで前記蓄電手段を充電する際に、前記第1の切替手段が、前記パンタグラフから供給される直流電圧を前記電流電圧制御手段に出力し、前記電流電圧制御手段が、前記第1の切替手段から出力される直流電圧に基づいてチョッパ動作を行い、前記第2の切替手段が、前記電流電圧制御手段から供給される電気エネルギーを前記複数のリアクトル及び前記開閉手段を介して前記蓄電手段に出力し、前記モータからの回生エネルギーで前記蓄電手段を充電する際に、前記第2の切替手段が、前記モータから供給される交流電圧を前記電流電圧制御手段に出力し、前記電流電圧制御手段が、前記第2の切替手段から出力される交流電圧を直流電圧に変換するPWMコンバータとして作動し、前記第1の切替手段が、前記電流電圧制御手段から供給される直流電圧を前記蓄電手段に出力する、車両の回路装置。
【請求項2】
前記モータを駆動する際に、前記電流電圧制御手段が、前記第1の切替手段から出力される直流電圧を3相交流電圧に変換し、前記第2の切替手段が、前記電流電圧制御手段から供給される3相交流電圧を前記モータに出力する、請求項1記載の車両の回路装置。
【請求項3】
前記パンタグラフからの電気エネルギーで前記蓄電手段を充電する際に、前記電流電圧制御手段が、3相ブリッジによる単相、2相、又は、3相チョッパ動作を行う、請求項1又は2記載の車両の回路装置。
【請求項4】
前記第1の切替手段と前記電流電圧制御手段の一端との間に接続されたリアクトルと、
前記電流電圧制御手段の一端とグランド電位との間に接続されたコンデンサと、
をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項記載の車両の回路装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の車両の回路装置を有する電気車両と、
前記電気車両に電力を供給するための架線と、
を備え、前記電気車両の前記パンタグラフが前記架線に接続される、車両運行システム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−172192(P2010−172192A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46745(P2010−46745)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【分割の表示】特願2007−125540(P2007−125540)の分割
【原出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】