説明

回転センサ

【課題】経年変化の影響を抑制しつつ、マグネットと回転ディスクとのギャップ管理をより簡単にできる回転センサを提供する。
【解決手段】回転センサ8は、スプール4に一体回転可能に支持されかつN極マグネット14NとS極マグネット14Sとが交互に隙間なく配設された多数のマグネット14を備えた回転ディスク10と、マグネット14を検出するホール素子12とからなる。ホール素子12は第1ホール素子12aと第2ホール素子12bの2個、それぞれ所定位置に来た対応するマグネット14に対向するように円環状のマグネット14の円周方向に沿って所定間隔を置いてブラケット11に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の回転量を検出する回転センサの技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車等の車両に装備されているシートベルト装置は、車両衝突時等の緊急時に、シートベルトで乗員を拘束することにより乗員のシートからの飛び出しを阻止し、乗員を保護している。このようなシートベルト装置においては、シートベルトを巻き取るシートベルトリトラクタを備えている。このシートベルトリトラクタでは、シートベルトは非装着時にはスプールに巻き取られているが、装着時には引き出されて乗員に装着される。そして、前述のような緊急時にシートベルトリトラクタのロック手段が作動してスプールのベルト引出方向の回転を阻止することにより、シートベルトの引出しが阻止される。これにより、緊急時にシートベルトは乗員を拘束し、保護するようになる。
【0003】
従来のシートベルト装置には、車両の走行状況およびシートベルト装置の使用状況等に応じて種々のベルトテンションモードが設定されているとともに、シートベルトリトラクタとしてシートベルトを巻き取るスプールをモータの動力で回転させるモータリトラクタを備えたシートベルト装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示のシートベルトリトラクタは、車両の走行状況およびシートベルト装置の使用状況等に応じて設定したベルトテンションモードのベルトテンションとなるように、コントローラが駆動手段である電動モータを駆動制御してスプールのベルト巻取りおよびベルト引出しを制御している。
【0004】
ところで、コントローラが電動モータの駆動を制御することでスプールのベルト巻取りおよびベルト引出しを制御するためには、スプールの回転量および回転方向を検出する必要がある。そこで、スプールの回転量および回転方向を検出する回転センサとして、スプールの回転軸にこのスプールと一体回転可能に支持された回転ディスクと、マグネットと、このマグネットを検出することで回転ディスクの回転を検出するホール素子(ホールIC)とからなる回転センサを備えるとともに、この回転センサにより検出されたスプールの回転量に基づいて電動モータを制御するようにしたシートベルトリトラクタが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この特許文献2に開示の回転センサは、図7(a)および(b)に示すように回転ディスク70の外周縁部に沿って多数の貫通孔71が周方向に等間隔を置いて穿設されているとともに、図7(c)および(d)に示すように回転ディスク70の一面側で所定位置の貫通孔71に対向する位置にN極(またはS極)のマグネット72が設けられ、更に回転ディスク70の他面側で所定位置の貫通孔71に対向する位置にマグネット72を検出するホール素子73が配置されている。そして、スプールが回転するにともなって回転ディスクがベルト引出し方向αあるいはベルト巻取り方向βに回転することで、ホール素子73は、貫通孔71が所定位置に来たとき貫通孔71を通してマグネット72を検出し、また回転ディスク70の貫通孔71以外の部分74が所定位置に来てマグネット72が遮蔽されたときマグネット72を検出しない。このホール素子73によるマグネット72の検出および非検出の繰返しにより、ホール素子73が出力する電流値が周期的に変化するので、この電流値の周期的変化をカウントすることにより、スプールの回転量が検出される。
【特許文献1】特開2005−271917号公報。
【特許文献2】特開2005−297781号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この従来の回転センサにおいては、図8に示すようにホール素子73のマグネット72の検出信号(電流値)がN極(S極)マグネット72を検出した検出電流のピーク値とN極(S極)マグネット72を検出しない無電流(0)との間で正弦波となる。その場合、回転センサのホール素子73は初期時、実線で示す正弦波の電流値を出力するが、比較的長い時間が経過すると回転センサの経年変化(マグネット72の磁力低下、ホール素子73の感度低下等)により、一点鎖線で示す正弦波の電流値を出力するようになる。すなわち、回転センサの経年変化によりホール素子73の検出電流値が小さくなるように変化する。しかし、回転センサが経年変化してもN極(S極)マグネット72を検出しないときは、ホール素子73の出力は無電流(0)であり、変化しない。このため、回転センサの経年変化により、検出信号の電流の正弦波が初期時の実線で示す正弦波の中心線aと交わる時間(閾値)が時間Δtだけずれるようになり、ホール素子73の検出信号が回転センサの経年変化の影響を受ける。
【0007】
また、回転ディスク70に多数の貫通孔71を穿設しているので、回転ディスク70の強度を確保するためには、貫通孔71の数をそれほど多くすることは難しい。したがって、ホール素子73のマグネット検出信号を多くできなく、電動モータの駆動すなわちベルトテンションをきめ細かく駆動制御することにある程度制限される。
【0008】
更に、回転ディスク70の一面側にマグネット72を配設し、かつ回転ディスク70の他面側にホール素子73を配設して、回転ディスク70の両面でマグネット72の検出を行っているので、ホール素子73およびマグネット72と回転ディスク70とのギャップ管理が難しくなる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、経年変化の影響を抑制しつつ、マグネットと回転ディスクとのギャップ管理をより簡単にできる回転センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明に係る回転センサは、回転軸に一体回転可能に設けられた回転ディスクと、この回転ディスクの少なくとも一面側に、N極およびS極を交互にかつ回転ディスクと同心の円環状に隙間なく配設された所定数のマグネットと、所定位置に位置するマグネットを検出する磁気検出手段とを備えていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項2の発明に係る回転センサは、前記N極およびS極の周方向の幅が、いずれも同じ所定角度に設定されていることを特徴としている。
更に、請求項3の発明に係る回転センサは、前記磁気検出手段が、円環状に配設された所定数のマグネットの円周方向に互いに所定間隔を置いて配設された第1および第2ホール素子からなり、これらの第1および第2ホール素子の円周方向の間隔が、互いに隣接する2つの前記マグネットの円周方向の間隔の[自然数+(1/2)]倍に設定されていることを特徴としている。
【0012】
更に、請求項4の発明に係る回転センサは、前記第1および第2ホール素子からの検出信号の電流の極性の切り替え回数をそれぞれカウントすることで前記回転軸の回転量を検出することを特徴としている。
更に、請求項5の発明に係る回転センサは、前記第1ホール素子のマグネットの検出信
号が前記N極および前記S極のいずれか一方から他方へ切り替わるときに、前記第2ホール素子が前記N極および前記S極のマグネットのいずれか一方を検出するとき、前記回転軸の回転方向が一方向であり、また、前記第1ホール素子のマグネットの検出が前記N極および前記S極マグネットのいずれか一方から他方へ切り替わるときに、前記第2ホール素子が前記N極および前記S極マグネットのいずれか他方を検出していると判断したときは、前記回転軸の回転方向が、前記第2ホール素子が前記N極および前記S極のマグネットのいずれか一方を検出したときの前記回転軸の回転方向の一方向と逆の多方向であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
このように構成された本発明の回転センサによれば、回転軸と一体回転する回転ディスクの一側の表面の外周縁部に、多数のN極のマグネットと多数のS極のマグネットとを交互にかつ回転ディスクと同心の円環状に配置するとともに、これらのマグネットを磁気検出手段で検出するように回転量検出手段を構成しているので、磁気検出手段の検出信号の極性切替わり点が経年変化により変化するのを抑制することができる。すなわち、磁気検出手段の検出信号に対する回転センサの経年変化の影響を抑制することができる。
【0014】
これにより、回転軸の回転を長期にわたってほぼ一定に制御できるとともに、経年変化の影響を抑制することができるので、回転センサの信頼性を一層向上することができる。
【0015】
また、回転ディスクに、N極のマグネットおよびS極のマグネットを交互にかつ等間隔に配置しているだけであることから回転ディスクに貫通孔を設けることはなく、回転ディスクの強度を確保できるので、N極およびS極のマグネット数をより多く配設することができる。したがって、磁気検出手段のマグネット検出信号を多くできるので、回転軸をより一層きめ細かく駆動制御することができる。
【0016】
更に、回転ディスクの一面側のみで磁気検出手段によるマグネットの検出を行うようにすることで、磁気検出手段とマグネットとの間のギャップ管理を簡単にすることができる。これにより、回転センサによる回転軸の回転検出をより安定して行うことができる。しかも、回転ディスクの一面のみ側で磁気検出手段が回転ディスク上のマグネットを検出することから、回転軸の軸方向において回転センサをコンパクトにでき、この軸方向のスペースを小さくできる。これにより、回転センサのユニット化も容易となる。
【0017】
また、回転ディスクの両面側から磁気検出手段によりマグネットを検出する場合には、前述の回転ディスクの一面側のみからマグネットを検出する場合の作用効果は得られないが、2つの磁気検出手段の回転軸の軸方向と直交する方向の配置がコンパクトにできる。
【0018】
特に、本発明の回転センサによれば、互いに隣接する2つのマグネットの円周方向の間隔の[自然数+(1/2)]倍に設定された所定間隔を置いて互いに配置された2つの第1および第2ホール素子でマグネットを検出しているので、回転軸の回転方向を効果的に検出することができる。
【0019】
また、本発明の回転センサによれば、回転ディスクをスプールの回転軸にこのスプールと一体回転可能に支持しているので、回転センサを更に一層コンパクトに形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は本発明にかかる回転センサが適用されたシートベルトリトラクタの実施の形態の一例を模式的にかつ部分的に切り欠いて示す図である。
【0021】
図1に示すように、この例のシートベルトリトラクタ1はシートベルト装置に用いられるモータリトラクタとして構成されており、従来公知のモータリトラクタと同様に、コ字状のフレーム2、シートベルト3、フレーム2に回転自在に支持されてシートベルト3を巻き取るスプール4、フレーム2に支持されてスプール4を常時巻取り方向に付勢するスプリング手段5、フレーム2に支持されてスプール4を回転するための駆動手段である電動モータ6、フレーム2に支持されて電動モータ6の動力を変速してスプール4に伝達する動力伝達機構7、フレーム2に支持されてスプール4の回転量を検出する回転センサ、および回転センサ8から入力される回転量検出信号に基づいて電動モータ6を制御するコントローラ(CPU)9をそれぞれ備えている。
【0022】
そして、コントローラ(CPU)9は、スプール4のベルト巻取りによるベルトテンションが前述の特許文献1に記載のシートベルト装置のようにシートベルト装置に種々設定されているベルトテンションモードのうち、車両の走行状況およびシートベルト装置の使用状況の少なくとも一方に応じて設定したベルトテンションモードのベルトテンションとなるように、回転量検出信号に基づき電動モータ6の回転方向(ベルト巻取り方向あるいはベルト引出し方向)および回転量を制御する。
【0023】
この例の回転センサ8は、スプール4の回転軸4aにこのスプール4と一体回転可能に支持された回転ディスク10、フレーム2にブラケット11により支持された磁気検出手段であるホール素子(ホールIC)12、およびフレーム2に支持されてこれらの回転ディスク10およびホール素子12を覆うカバー13から構成されている。ホール素子12はコントローラ9に電気的に接続されている。なお、ホール素子12はカバー13に支持することもできる。
【0024】
図2(a)および(b)に示すように、回転ディスク10の表面の一面側には、多数のマグネット14が回転ディスク10の外周縁部に沿って回転ディスク10と同心の円環状に配設されている。これらのマグネット14は、N極マグネット14NとS極マグネット14Sとから構成され、いずれのマグネット14N,14Sも円周方向に所定角度(図示例では4°としているが、これに限定されない;以下のこの説明では、4°として説明する)の周方向幅で形成されている。そして、各マグネット14N,14Sがそれぞれ交互に隙間なく配置されている。したがって、各マグネット14N,14Sはそれぞれ周方向幅と同じ所定間隔をおいて配設されている。その場合、マグネット14は、N極およびS極を周方向に交互にかつ隙間なく着磁したプラマグを回転ディスク10に貼付することにより構成されている。なお、回転ディスク10とマグネット14とは一体成形で設けることもできる。
【0025】
また、図2(c)および(d)に示すように、ホール素子12は第1ホール素子12aと第2ホール素子12bの2個、それぞれ所定位置に来た対応するマグネット14に対向するように円環状のマグネット14の円周方向に沿って所定間隔を置いてブラケット11に取り付けられている。その場合、2個の第1および第2ホール素子12a,12bの円周方向の間隔は、隣接する2つのマグネット14N,14Sの円周方向の間隔(2つのマグネットの周方向中心間の距離)の[奇数+(1/2)]倍(図示例では、3.5倍であるが、これに限定されない)に設定されている。
【0026】
なお、第1および第2ホール素子12a,12bの円周方向の間隔は、2つのマグネット14N,14Sの円周方向の間隔の[偶数+(1/2)]倍に設定することもできる。つまり、第1および第2ホール素子12a,12bの円周方向の間隔は、2つのマグネット14N,14Sの円周方向の間隔の[自然数+(1/2)]倍に設定することもできる。以下の説明では、図2(c)に示すように第1および第2ホール素子12a,12bの
円周方向の間隔が、2つのマグネット14N,14Sの円周方向の間隔の[奇数+(1/2)]倍に設定するものとして説明する。
また、第1および第2ホール素子12a,12bは回転ディスク10上のマグネット14との間には所定のギャップGが形成されて配置されている。
【0027】
そして、図3に示すように、第1および第2ホール素子12a,12bはいずれもコントローラ9に電気的に接続されている。このように構成されたこの例の回転検出センサ8においては、スプール4がベルト引出し方向αに回転すると、第1ホール素子12aがN極マグネット14NおよびS極マグネット14Sのいずれか一方のマグネット14を検出するので、図4に示すように第1ホール素子12aがオンして所定値以上の大きさの電流による検出信号をコントローラ9に出力する。その後、スプール4がベルト引出し方向αに更に4°回転すると、第2ホール素子12bがN極マグネット14NおよびS極マグネット14Sのいずれか一方のマグネット14を検出し、同様にして第2ホール素子12bがオンして電流による検出信号をコントローラ9に出力する。
【0028】
スプール4がベルト引出し方向αに更に回転すると、第1ホール素子12aはこの一方のマグネット14を検出しなくなりオフとなった後、続いてN極マグネット14NおよびS極マグネット14Sのいずれか他方のマグネット14を検出するので、図4に示すように第1ホール素子12aがオンして前述と逆極性の所定値以上の大きさの電流による検出信号をコントローラ9に出力する。すなわち、第1ホール素子12aからの検出信号の電流の極性が切り替わる。その後、スプール4がベルト引出し方向αに更に4°回転すると、第2ホール素子12bがN極マグネット14NおよびS極マグネット14Sのいずれか他方のマグネット14を検出し、同様にして第2ホール素子12bがオンして前述と逆極性の電流による検出信号をコントローラ9に出力する。すなわち、第2ホール素子12aからの検出信号の電流の極性が切り替わる。
【0029】
そして、コントローラ9は、第1および第2ホール素子12a,12bからの検出信号の電流の極性の切り替え回数をカウントすることで、スプール4の回転量を検出する。また、スプール4がベルト引出し方向αに回転するときは、第1ホール素子12aからの検出信号の位相が第2ホール素子12bからの検出信号の位相より4°先に進んでいる。したがって、コントローラ9は、第1ホール素子12aのマグネットの検出がN極マグネット14NおよびS極マグネット14Sのいずれか一方から他方へ切り替わるときに、第2ホール素子12bがN極マグネット14NおよびS極マグネット14Sのいずれか一方を検出していると判断したときは、スプール4の回転方向がベルト引出し方向αであると判断する。
【0030】
また、スプール4がベルト巻取り方向βに回転するときは、第2ホール素子12bからの検出信号の位相が第1ホール素子12aからの検出信号の位相より4°先に進んでいる。したがって、コントローラ9は、第1ホール素子12aのマグネットの検出がN極マグネット14NおよびS極マグネット14Sのいずれか一方から他方へ切り替わるときに、第2ホール素子12bがN極マグネット14NおよびS極マグネット14Sのいずれか他方を検出していると判断したときは、スプール4の回転方向がベルト巻取り方向βであると判断する。
【0031】
なお、この例では、各マグネット14N,14Sの周方向幅が4°であるとしているが、2つの第1および第2ホール素子12a,12bによるスプール4の回転方向の検出は、各マグネット14N,14Sの周方向幅を前述の4°の半分の2°程度まで小さく設定し、この2°の角度を第1および第2ホール素子12a,12bで検出して、それらの検出値の差から演算して求めることもできる。
【0032】
このように構成されたこの例の回転センサ8においては、図5に示すように、第1および第2ホール素子12a,12bのいずれのホール素子12のマグネット14の検出信号(電流値)がN極マグネット14Nの検出電流のピーク値とS極マグネット14Sの検出電流のピーク値との間で正弦波となる。その場合、第1および第2ホール素子12a,12bは初期時、実線で示す正弦波の電流値を出力するが、比較的長い時間が経過すると回転センサの経年変化(マグネット14の磁力低下、ホール素子12の感度低下等)により、一点鎖線で示す正弦波の電流値を出力するようになる。すなわち、回転センサの経年変化により第1および第2ホール素子12a,12bの電流値が小さくなる。しかし、コントローラ9がカウントする検出信号の電流の極性の切り替わる時間(閾値)は変化しない。つまり、回転センサ8が経年変化しても、検出信号の電流の正弦波が初期時の実線で示す正弦波の中心線aと交わる時間(閾値)は初期時と同じであり、変化しない。
【0033】
このように構成されたこの例の回転センサ8およびこれを備えたシートベルトリトラクタ1によれば、スプール4と一体回転する回転ディスク10の一側の表面の外周縁部に、多数のN極のマグネット14Nと多数のS極のマグネット14Sとを交互に円環状に配置するとともに、これらのマグネット14を第1ホール素子12aあるいは第2ホール素子12bで検出するように回転センサ8を構成しているので、コントローラ9がカウントするホール素子12の検出信号の極性切替わり点が経年変化により変化するのを抑制することができる。すなわち、ホール素子12の検出信号に対する回転センサ8の経年変化の影響を抑制することができる。
【0034】
これにより、電動モータ9の駆動を長期にわたってほぼ一定に制御でき、シートベルトリトラクタ1に設定されている前述の種々のベルトテンションモードの設定タイミングを安定させかつより一層高度にさせることができる。しかも、経年変化による回転センサ8への影響を抑制することができるので、回転センサ8の信頼性を一層向上することができる。
【0035】
また、互いに所定間隔を置いて配置された2つの第1および第2ホール素子12a,12bでマグネット14を検出しているので、スプール4の回転方向がベルト引出し方向αおよびベルト巻取り方向βのいずれかであることを効果的に検出することができる。
【0036】
更に、回転ディスク10に、N極およびS極を交互にかつ等間隔に配置して着磁したプラマグを貼付しているだけであることから回転ディスク14の強度を確保できるので、N極およびS極のマグネット数をより多く配設することができる。したがって、第1および第2ホール素子12a,12bのマグネット検出信号を多くできるので、電動モータ9をより一層きめ細かく駆動制御することができる。これにより、ベルトテンションもより一層きめ細かく制御することができるので、種々のベルトテンションモードをより効果的にかつより緻密に設定することができる。
【0037】
更に、回転ディスク10の一面側でホール素子12によるマグネット14の検出を行っているので、ホール素子12とマグネット14とのギャップ管理を簡単にすることができる。これにより、回転センサ8によるスプール4の回転検出をより安定して行うことができる。しかも、回転ディスク10の一面側でホール素子12が回転ディスク10上のマグネット14を検出することから、スプール4の軸方向におけるシートベルトリトラクタ1をコンパクトにでき、この軸方向のスペースを小さくできる。しかも、回転ディスク10をスプール4の回転軸4aにこのスプール4と一体回転可能に支持しているので、シートベルトリトラクタ1を更に一層コンパクトに形成することができる。これにより、回転センサ8のユニット化も容易となる。
【0038】
なお、前述の例では、マグネット14、第1および第2ホール素子12a,12bを回
転ディスク10の一面側のみに設けて、マグネットの検出を回転ディスク10の一面側のみから行うようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、回転ディスク10の両面からマグネット14を検出するようにすることもできる。その場合、円環状に配置されたマグネット14を回転ディスク10の両面に、この回転ディスク10と同心に設けることが望ましい。このように、回転ディスク10の両面からマグネット14を検出する場合には、回転ディスク10の一面側にマグネット14と回転ディスク10の他面側にマグネット14とを同位相で設ける(両面のマグネットが互いに対向しかつ互いに対向するマグネットがともに同じ極性)かあるいはマグネット14の周方向幅(図示例では4°)だけ円周方向に位相をずらして設ける(両面のマグネットが互いに対向しかつ対向するマグネットが互いに逆極性)とともに、両面側にそれぞれ設けられる第1および第2ホール素子12a,12bを、それぞれ、互いに円周方向に位相をマグネット14の周方向幅(図示例では4°)以外の大きさ(望ましくは、周方向幅の「(0または自然数)+(1/2)」倍)(図示例では、≠[4の倍数]°)だけずらして配設する。あるいは、回転ディスク10の一面側のマグネット14と回転ディスク10の他面側のマグネット14とをそれぞれ、互いに円周方向に位相をマグネット14の周方向幅(図示例では4°)以外の大きさ(望ましくは、周方向幅の「(0または自然数)+(1/2)」倍)(図示例では、≠[4の倍数]°)ずらして設けるとともに、両面側にそれぞれ設けられる第1および第2ホール素子12a,12bを、それぞれ、互いに対向するように配設する。
【0039】
このように、回転ディスク10の両面側からマグネット14を検出する場合には、前述の回転ディスク10の一面側からマグネット14を検出する場合の作用効果は得られないが、2つのホール素子のスプール4の軸方向と直交する方向の配置がコンパクトにできる。
また、前述の例では、互いに隣接するマグネット14を円周方向に隙間なく配置するものとしているが、互いに隣接するマグネット14の間に円周方向に隙間を設けて配置することもできる。その場合には、マグネット14の周方向の配置間隔と、マグネット14の周方向幅とは異なる。
【0040】
この例の回転センサ8を備えるシートベルトリトラクタ1は、従来公知のシートベルト装置に用いられているシートベルトリトラクタ1に適用することができる。この例のシートベルトリトラクタ1が適用されるシートベルト装置としては、例えば図6に示すように車体に固定されたシートベルトリトラクタ1、このシートベルトリトラクタ1から引き出されるとともに先端のベルトアンカー3aが車体の床あるいは車両シート15に固定されるシートベルト3、シートベルトリトラクタ1から引き出されたシートベルト3を乗員のショルダーの方へガイドするガイドアンカー16、このガイドアンカー16からガイドされてきたシートベルト3に摺動自在に支持されたタング17、車体の床あるいは車両シート15に固定されかつタング17が係脱可能に挿入係合されるバックル18から構成されるシートベルト装置19がある。
【0041】
このように、この例のシートベルトリトラクタ1をシートベルト装置19に適用することで、乗員をシートベルト3で、長期にわたりかつ車両走行状況およびシートベルト装置19の使用状況等に応じて効率よく拘束することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の回転センサは、回転軸の回転量を検出する回転センサに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は本発明にかかる回転センサを備えるシートベルトリトラクタの実施の形態の一例を模式的にかつ部分的に切り欠いて示す図である。
【図2】図1に示す例の回転検出センサを示し、(a)は回転ディスクを示す図、(b)は(a)におけるIIB−IIB線に沿う断面図、(c)はマグネットとホール素子との関係を示す図、(d)は(c)におけるIID−IID線に沿う断面図である。
【図3】図1に示す例のホール素子とコントローラとの電気接続を示す図である。
【図4】図1に示す例のホール素子ホール素子によるマグネットの検出を示す図である。
【図5】図1に示す例のホール素子によるマグネット検出の電流値の経年変化を説明する図である。
【図6】図1に示す例のシートベルトリトラクタが適用されたシートベルト装置の一例を示す図である。
【図7】従来例のシートベルトリトラクタにおける回転検出センサを示し、(a)は回転ディスクを示す図、(b)は(a)におけるVIIB−VIIB線に沿う断面図、(c)はマグネットとホール素子との関係を示す図、(d)は(c)におけるVIID−VIID線に沿う断面図である。
【図8】図7に示す従来例のホール素子によるマグネット検出の電流値の経年変化を説明する図である。
【符号の説明】
【0044】
1…シートベルトリトラクタ、3…シートベルト、4…スプール、6…電動モータ、8…回転センサ、9…コントローラ(CPU)、10…回転ディスク、12…ホール素子(ホールIC)、12a…第1ホール素子、12b…第2ホール素子、14…マグネット、14N…N極マグネット、14S…S極マグネット、17…タング、18…バックル、19…シートベルト装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に一体回転可能に設けられた回転ディスクと、この回転ディスクの少なくとも一面側に、N極およびS極を交互にかつ回転ディスクと同心の円環状に隙間なく配設された所定数のマグネットと、所定位置に位置するマグネットを検出する磁気検出手段とを備えていることを特徴とする回転センサ。
【請求項2】
前記N極およびS極の周方向の幅が、いずれも同じ所定角度に設定されていることを特徴とする回転センサ。
【請求項3】
前記磁気検出手段は、円環状に配設された所定数のマグネットの円周方向に互いに所定間隔を置いて配設された第1および第2ホール素子からなり、これらの第1および第2ホール素子の円周方向の間隔が、互いに隣接する2つの前記マグネットの円周方向の間隔の[自然数+(1/2)]倍に設定されていることを特徴とする請求項2記載の回転センサ。
【請求項4】
前記第1および第2ホール素子からの検出信号の電流の極性の切り替え回数をそれぞれカウントすることで前記回転軸の回転量を検出することを特徴とする請求項3記載の回転センサ。
【請求項5】
前記第1ホール素子のマグネットの検出信号が前記N極および前記S極のいずれか一方から他方へ切り替わるときに、前記第2ホール素子が前記N極および前記S極のマグネットのいずれか一方を検出するとき、前記回転軸の回転方向が一方向であり、また、前記第1ホール素子のマグネットの検出が前記N極および前記S極マグネットのいずれか一方から他方へ切り替わるときに、前記第2ホール素子が前記N極および前記S極マグネットのいずれか他方を検出していると判断したときは、前記回転軸の回転方向が、前記第2ホール素子が前記N極および前記S極のマグネットのいずれか一方を検出したときの前記回転軸の回転方向の一方向と逆の多方向であることを特徴とする請求項3または4記載の回転センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−275636(P2008−275636A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158983(P2008−158983)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【分割の表示】特願2006−160609(P2006−160609)の分割
【原出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】