回転型位置検出装置
【課題】 検出装置の小型化、簡素化。
【解決手段】 ステータ部10には所定交流信号で励磁されるコイル11,12を配置し、2次コイルは持たない。ロータ部20には回転位置θに応じて各コイル11,12のインピーダンスを変化させるように所定形状の磁性体又は導電体からなる磁気応答部材21を設ける。このインピーダンス変化に基づき所定の回転角範囲にわたって各コイル11,12の端子間電圧が増減変化する。回転位置θの影響を受けない箇所に設けられた交流励磁されるコイル13により、前記増減変化の中点に対応する基準電圧を発生し、各コイル11,12から取り出した電圧と演算することで、零点を中心にして正負に振れる第1及び第2の周期的振幅関数を振幅係数として持つ第1及び第2の交流出力信号sinθsinωtとcosθsinωtを生成する。この振幅位相成分θにより回転位置θが検出される。
【解決手段】 ステータ部10には所定交流信号で励磁されるコイル11,12を配置し、2次コイルは持たない。ロータ部20には回転位置θに応じて各コイル11,12のインピーダンスを変化させるように所定形状の磁性体又は導電体からなる磁気応答部材21を設ける。このインピーダンス変化に基づき所定の回転角範囲にわたって各コイル11,12の端子間電圧が増減変化する。回転位置θの影響を受けない箇所に設けられた交流励磁されるコイル13により、前記増減変化の中点に対応する基準電圧を発生し、各コイル11,12から取り出した電圧と演算することで、零点を中心にして正負に振れる第1及び第2の周期的振幅関数を振幅係数として持つ第1及び第2の交流出力信号sinθsinωtとcosθsinωtを生成する。この振幅位相成分θにより回転位置θが検出される。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、交流励磁されるコイルとこのコイルに対して相対的に変位する磁性体又は導電体とを含んで構成される回転型位置検出装置に関し、1回転又は所定角度範囲にわたる回転位置の検出に適したものであり、特に、1相の交流で励磁される1次コイルのみを使用して複数相の振幅関数特性を示す出力交流信号を検出対象回転位置に応じて生成するものに関する。
【0002】
【従来の技術】誘導型の回転位置検出装置として、1相励磁入力で2相出力(サイン相とコサイン相の出力)を生じるものは「レゾルバ」として知られており、1相励磁入力で3相出力(120度ずれた3相)を生じるものは「シンクロ」として知られている。最も古いタイプの在来型のレゾルバは、ステータ側に90度の機械角で直交する2極(サイン極とコサイン極)の2次巻線を配し、ロータ側に1次巻線を配したものである。このようなタイプのレゾルバはロータの1次巻線に電気的にコンタクトするためのブラシを必要としているので、これが欠点となっている。これに対して、ブラシを不要としたブラシレス・レゾルバの存在も知られている。ブラシレス・レゾルバは、ロータ側においてブラシに代わる回転トランスを設けたものである。しかし、このようなブラシレス・レゾルバはロータ側に回転トランスを具備する構成の故に、装置を小型化することが困難であり、小型化には限度があるし、また、回転トランスの分だけ装置構成部品点数が増すので製造コストの上昇にもつながってしまう。
【0003】一方、ステータ側の複数の凸極に1次巻線と2次巻線を配し、ロータを所定形状(偏心円形状、あるいは楕円形状、あるいは突起を持つ形状)の磁性体で構成し、ステータ凸極とロータ磁性体との間のギャップが回転位置に応じて変化することに基づき、回転位置に応じた磁気抵抗変化を生成し、これに応じた出力信号を得るようにした、無接触式・可変磁気抵抗型の回転位置検出装置が、古くは商品名「マイクロシン」として知られている。また、同様の可変磁気抵抗原理に基づく回転位置検出装置が、例えば、特開昭55−46862号、特開昭55−70406号、特開昭59−28603号などにおいて示されている。なお、この場合、出力信号に基づく位置検出方式は、位相方式(検出した位置データが出力信号の電気的位相角に対応している方式)と電圧方式(検出した位置データが出力信号の電圧レベルに対応している方式)のどちらもが知られている。例えば、位相方式を採用する場合は、2相励磁入力又は3相励磁入力等、異なる機械角で配置された各1次巻線を位相のずれた複数相で励磁し、回転位置に応じて電気的位相角がずれた1相の出力信号を生ずる。また、電圧方式を採用する場合は、1次巻線と2次巻線の関係が上記位相方式とは逆になり、上記「レゾルバ」のように1相励磁入力で複数相出力を生ずる。
【0004】「レゾルバ」のように1相励磁入力で複数相出力を生ずる回転位置検出装置においては、典型的には、サイン相出力とコサイン相出力の2相出力を生じるように構成されている。そのために、従来の無接触式・可変磁気抵抗型のレゾルバタイプの回転位置検出装置は、最低でもステータは4極構成とされ、各極が機械角で90度の間隔で配置され、第1の極をサイン相とすると、それから90度離れた第2の極はコサイン相とされ、更に90度離れた第3の極はマイナスサイン相とされ、更に90度離れた第4の極はマイナスコサイン相とされる。その場合、各ステータ極に対して回転に応じた磁気抵抗変化を生じさせるためにロータは、磁性体又は導電体からなり、その形状が偏心円形状や楕円形状あるいは歯車形状等の周期的な形状に形成される。そして、各ステータ極には1次コイルと2次コイルが設けられ、各ステータ極とロータ間のギャップがロータの回転位置に対応して変化することにより該ステータ極を通る磁気回路の磁気抵抗が変化し、これに基づき該ステータ極における1次コイルと2次コイルとの間の磁気結合度が回転位置に対応して変化し、こうして回転位置に対応する出力信号が2次コイルに誘導されるようにしており、各ステータ極の出力信号のピーク振幅特性は周期的関数特性を示す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の無接触式・可変磁気抵抗型のレゾルバタイプの回転位置検出装置は、1次コイルと2次コイルを設ける1次−2次誘導タイプであるために、コイル数が多くなり、故に、構造を小型化するのに限度があり、また、コストを低減するのにも限度があった。更に、従来の回転位置検出装置は、複数のステータ極が1回転の全体にわたって均等間隔で配置される構成であるため、その構造上の制限から適用可能な場所やスペースに限度があった。また、従来の回転位置検出装置においては、サインとコサインの2相出力を得る場合であっても、ステータを単純な2極構成とすることはできず、4極構成としなければならなかったので、構造を小型化するのに限度があった。
【0006】本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、小型かつシンプルな構造を持つ回転型位置検出装置を提供しようとするものである。また、利用可能な位相角範囲を広くとることができ、更には、検出対象の変位が微小でも高分解能での検出が可能であり、温度特性の補償も容易な、回転型位置検出装置を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の観点に係る回転型位置検出装置は、交流信号で励磁される少なくとも1つのコイルを配置してなるコイル部と、前記コイル部に対して相対的に回転変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象の回転に応じて該部材と前記コイル部との相対的回転位置が変化し、この相対的回転位置に応じて前記コイルのインピーダンスを変化させ、このインピーダンス変化に基づき前記相対的回転位置が所定の回転角範囲にわたって変化する間で前記コイルの端子間電圧が増減変化するようにしたものと、所定の基準電圧を発生する回路と、前記コイルに生じる電圧を取り出し、前記基準電圧と演算することで、所定の周期的振幅関数を振幅係数として持つ交流出力信号を少なくとも2つ生成する演算回路であって、前記各交流出力信号の前記周期的振幅関数はその周期特性において所定位相だけ異なっているものとを具える。
【0008】磁気応答部材は、典型的には、磁性体及び導電体の少なくとも一方を含んでなるものである。磁気応答部材が磁性体からなる場合は、該部材のコイルに対する近接の度合いが増すほど、該コイルのインダクタンスが増加して、該コイルの電気的インピーダンスが増加し、該コイルに生じる電圧(すなわち端子間電圧)が増加する。反対に、該磁気応答部材のコイルに対する近接の度合いが減少するほど、該コイルのインダクタンスが減少して、該コイルの電気的インピーダンスが減少し、該コイルの端子間電圧が減少する。こうして、検出対象の回転に伴い、コイルに対する磁気応答部材の相対的回転位置が所定の回転角範囲にわたって変化する間で該コイルの端子間電圧は、増減変化することになる。
【0009】ここで、コイルを流れる交流信号をsinωtで示し、一例として、この増減変化によって生ずる振幅係数成分を、回転角θを変数とする関数A(θ)で示すと、コイルの端子間電圧はA(θ)sinωtで表すことができる。この場合、振幅係数成分A(θ)は回転に伴って増減変化はするが、その値は正の値しかとらない。例えば、この振幅係数成分A(θ)の増減変化のカーブがサインカーブに近似する特性を示すとし、そのピーク値をPとすると、A(θ)=P0+Psinθのような式で典型的には示されるものである。ここで、P0≧Pである。すなわち、Psinθの値を或るオフセット値P0でプラス方向にオフセットしたような特性である。
【0010】本発明の第1の観点によれば、所定の基準電圧を発生し、前記コイルの端子間電圧を取り出して、前記基準電圧と演算することで、所定の周期的振幅関数を振幅係数として持つ交流出力信号を生成するようにしたことを特徴としている。例えば基準電圧をP0sinωtとすれば、引き算によって、A(θ)sinωt−P0sinωt=(P0+Psinθ)sinωt−P0sinωt=Psinθsinωtが得られ、1つのコイルの出力信号と基準電圧とを演算することで、振幅係数成分が正負に振れる真のサイン関数sinθ(又はコサイン関数)の振幅係数特性を示す出力信号を得ることができる。従って、本発明によれば、コイル構成が簡単である。更に、本発明によれば、1次コイルのみを設ければよく、2次コイルは不要であるため、一層、小型かつシンプルな構造の回転型位置検出装置を提供することができる。
【0011】本発明の一実施形態としては、前記コイル部は、前記相対的回転位置の変化方向に沿って所定角度だけずらされて配置された2つの前記コイルを有し、前記基準電圧を発生する回路は、前記コイルに生じる電圧の増減変化の中点に対応する基準電圧(例えば上記P0sinωt)を発生するものであり、前記演算回路は、前記2つのコイルのうち第1のコイルの端子間電圧から前記基準電圧を減算することで、該基準電圧分の電圧オフセットを解消し、零点を中心にして正負に振れる第1の周期的振幅関数を振幅係数として持つ第1の交流出力信号(例えばsinθsinωt)を生成し、前記2つのコイルのうち第2のコイルの端子間電圧から前記基準電圧を減算することで、該基準電圧分の電圧オフセットを解消し、零点を中心にして正負に振れる第2の周期的振幅関数を振幅係数として持つ第2の交流出力信号(例えばcosθsinωt)を生成するものである。この場合、2つのコイルを設けるだけで、レゾルバと同様のサイン相出力信号(sinθsinωt)とコサイン相出力信号(cosθsinωt)を得ることができる。
【0012】本発明の別の実施形態としては、前記演算回路は、1つの前記コイルに生じる電圧と前記基準電圧とを用いて所定の第1の演算及び第2の演算をそれぞれ行うことで、第1の振幅関数を振幅係数として持つ第1の交流出力信号と、第2の振幅関数を振幅係数として持つ第2の交流出力信号とをそれぞれ生成する。この場合は、追って詳しく説明するように、所定の限られた機械的回転角範囲の回転変位に関して、360度フルの位相検出スケールではなく、所定の限られた範囲内の位相検出スケールで(例えば90度の範囲)位置検出データを得ることができる。すなわち、ただ1つのコイルを用いるだけで、所定の限られた範囲内の検出スケールではあるが、レゾルバと同様の2つの交流出力信号、つまりサイン相出力信号(sinθsinωt)とコサイン相出力信号(cosθsinωt)、を得ることができる。
【0013】一実施形態として、前記基準電圧を発生する回路は、前記磁気応答部材の変位の影響を受けない位置に配置された所定インピーダンスのコイル(ダミーコイル)を含んでいてよい。そのようなダミーコイルを用いることにより、前記コイル部に設けられた検出用のコイルの温度ドリフト特性の補償に役立つ。勿論、基準電圧を発生する回路は、コイルに限らず、抵抗等、その他適宜の構成からなる電圧生成回路を使用してよい。
【0014】一実施形態として、前記コイル部が、1回転内の限られた所定の角度範囲に設けられており、該限られた所定の角度範囲における回転位置の検出を行うのに適するようになっていてよい。このような偏ったコイル部の配置は、既存の機械内に本発明に係る回転型位置検出装置を後から設置するような場合に有効である。例えば、検出対象回転軸における所定の角度範囲においては既に障害物が存在していて、1回転フルにわたるステータコイルの設置が不可能なような場合、障害物が存在していない角度範囲の場所に偏った配置のコイル部を設置することができるので有利である。
【0015】なお、磁気応答部材として、銅のような良導電体を使用した場合は、渦電流損によってコイルのインダクタンスが減少し、磁気応答部材の近接に応じてコイルの端子間電圧が減少することになる。この場合も、上記と同様に検出することが可能である。磁気応答部材として、磁性体と導電体を組合わせたハイブリッドタイプのものを用いてもよい。
【0016】本発明の第2の観点に従う回転型位置検出装置は、交流信号で励磁される少なくとも2対のコイルを配置してなるコイル部であって、1つのコイル対における各コイルは所定の回転角に対応する間隔で離隔されて配置されており、前記コイル部に対して相対的に回転変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象の回転に応じて該部材と前記コイル部との相対的回転位置が変化し、この相対的回転位置に応じて前記コイルのインピーダンスを変化させ、このインピーダンス変化に基づき前記相対的回転位置が所定の回転角範囲にわたって変化する間で前記コイルの端子間電圧が増減変化するようにし、1つのコイル対における各コイルの端子間電圧の増減変化が差動的な特性を示すようにしたものと、各コイル対毎に各コイルの端子間電圧の差をそれぞれ取り出し、所定の周期的振幅関数を振幅係数として持つ交流出力信号を各コイル対毎に生成する回路であって、前記各交流出力信号の前記周期的振幅関数はその周期特性において所定位相だけ異なっているものとを具える。
【0017】本発明の第2の観点によれば、例えば1つのコイル対をサイン相とすると、該1つのコイル対における各コイルの端子間電圧の増減変化が差動的な特性を示すので、一方が(P0+Psinθ)sinωtとすると、他方が(P0−Psinθ)sinωtとなる。その両者の差を取り出すと、(P0+Psinθ)sinωt−{(P0−Psinθ)sinωt}=2Psinθsinωtとなる。もう一方のコイル対をコサイン相とすると、該コイル対における各コイルの端子間電圧の増減変化が差動的な特性を示すことにより、その両者の差を取り出すと、(P0+Pcosθ)sinωt−{(P0−Pcosθ)sinωt}=2Pcosθsinωtとなる。このような差動合成原理は、従来知られたレゾルバと共通しているが、従来のレゾルバは、1次及び2次コイルを必要としていたが、本発明の第2の観点によれば、1次コイルのみを設ければよく、2次コイルは不要であるため、コイル構成が簡単であり、シンプルな構造の回転型位置検出装置を提供することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明しよう。図1は、サイン及びコサイン関数特性を示す振幅をそれぞれ持つ2つの交流出力信号において、電気角で0度から360度までのフルの範囲での振幅変化が得られるようにする実施例を示す。図1(A)は、この実施例に係る回転型位置検出装置におけるステータ部10側の検出用コイル11,12とロータ部20側の磁気応答部材21との物理的配置関係の一例を正面略図によって示すもの、同図(B)はその側断面略図、同図(C)はステータ部10側の検出用コイル11,12に関連する電気回路及び電子回路の一例を示すブロック図である。検出対象たる回転軸22に所定形状、例えば偏心円板状、の磁気応答部材21が取り付けられて、ロータ部20が構成される。一例として、磁気応答部材21の材質は鉄のような磁性体からなっているものとして説明を進める。ロータ部20に対してスラスト方向に向き合うような形でステータ部10が配置される。
【0019】ステータ部10は、検出用コイルとして2つのコイル11及び12を含んでいる。各コイル11,12は、ステータ基板14上において円周方向に所定間隔で離隔して配置されており、この間隔は例えば回転軸22に関して90度をなすような間隔である。各コイル11,12は、それぞれ鉄心(磁性体コア)15,16に巻回されており、コイル内を通る磁束が回転軸22の軸方向を指向する。各コイル11,12の鉄心15,16の端面と、ロータ部20の磁気応答部材21の表面との間に空隙が形成され、ロータ部20はステータ部10に対して非接触で回転する。この空隙の距離は、一定に保たれるように、ロータ部20とステータ部10の相対的配置が図示しない機構を介して定められる。ロータ部20の磁気応答部材21の所定の形状、例えば偏心円板状、の故に、空隙を介して磁気応答部材21と向き合うコイル鉄心15,16の端面の面積が、回転位置に応じて、変化する。この対向空隙面積の変化によって、鉄心15,16を通ってコイル11,12を貫く磁束量が変化し、もって、コイル11,12の自己インダクタンスが変化する。このインダクタンス変化は、各コイル11,12のインピーダンス変化でもある。
【0020】ロータ部20の磁気応答部材21の所定の形状は、理想的なサイン関数のカーブが得られるように、適切に設計される。例えば、回転軸22の1回転につき1周期のサイン関数のカーブが得られるようにするには、その形状は、一般的には上記のように偏心円板に近いものと言ってもさしつかえないが、正確には、コイルや鉄心形状等の設計条件に応じて、適宜ゆがんだ形状あるいはハート型に類似した形状となりうることが知られている。この形状をいかに設計するかは本発明の目的ではなく、かつ、公知/未公知のこの種の可変磁気抵抗型回転検出器で採用されているロータ形状を採用してよいので、ロータ形状についてのこれ以上の言及は差し控える。重要なことは、ロータ部20の磁気応答部材21の所定の形状が如何なる形状であるかということではなく、要するに、ロータ部20の回転位置の変化に応じた各コイル11,12のインダクタンス変化つまりインピーダンス変化が、理想的なサイン関数のカーブと同じようになるようにできるだけ適切に設計されていればよい。
【0021】図2(A)は、回転角度θの変化に対する一方のコイル11のインピーダンス変化の理想的なサイン関数のカーブをA(θ)で示している。回転角度θの変化に対する他方のコイル12のインピーダンス変化の理想的なサイン関数のカーブをB(θ)で示す。明らかなように、他方のコイル12は、コイル11に対して90度ずれた配置の故に、そのカーブB(θ)はコサイン関数に相当している。かくして、各カーブA(θ),B(θ)の増減変化の中点をP0とし、振れの振幅をPとすると、A(θ)=P0+PsinθB(θ)=P0+Pcosθと表せる。なお、Pは1とみなして省略しても説明上不都合はないので、以下の説明ではこれを省略することにする。
【0022】図1(C)に示すように、各コイル11,12は、交流発生源30から発生されるの所定の1相の高周波交流信号(仮にsinωtで示す)によって定電圧又は定電流で励磁される。各コイル11,12の端子間電圧をそれぞれVs,Vcで示すと、検出対象たる回転角θを変数として、これらは下記のように表せる。
Vs=A(θ)sinωt=(P0+sinθ)sinωtVc=B(θ)sinωt=(P0+cosθ)sinωt
【0023】コイル(ダミーコイル)13は、基準電圧Vrを発生するものであり、例えば、前記カーブA(θ),B(θ)の増減変化の中点P0に相当する所定インピーダンスを持つ。例えば、コイル13は、図1(A),(B)に示されるように、ステータ基板14上に配置されるが、ロータ部20の磁気応答部材21の変位の影響を受けない位置に配置されていて、検出用のコイル11,12と温度ドリフト条件が同じになるようになっている。このことは、検出用のコイル11,12の温度ドリフト誤差を補償するのに役立つ。コイル(ダミーコイル)13も交流励磁されており、その端子間電圧つまり基準電圧Vrは下記のように表せる。
Vr=P0sinωt
【0024】各コイル11,12,13の出力電圧Vs,Vc,Vrは、アナログ演算回路31に入力され、下記演算式に従って演算されることで、アナログ演算回路31から検出対象位置θに応じたサイン及びコサイン関数特性を示す振幅をそれぞれ持つ2つの交流出力信号(つまり互に90度位相のずれた振幅関数特性を持つ2つの交流出力信号)が生成される。すなわち、検出用の各コイル11,12の出力電圧Vs,Vcから基準電圧Vrを減算する。
Vs−Vr=(P0+ sinθ)sinωt−P0sinωt= sinθ sinωtVc−Vr=(P0+ cosθ)sinωt−P0sinωt= cosθ sinωt
【0025】以上のように、検出用の各コイル11,12の端子間電圧Vs,Vcと基準電圧Vrとを演算することで、基準電圧Vr分のオフセットを解消し、増減変化の中点を零点として正負に振れる2つの周期的振幅関数(sinθ及びcosθ)を振幅係数として持つ2つの交流出力信号(sinθsinωt及びcosθsinωt)を生成することができる。図2(B)は、この状態をθ成分についてのみ模式的に示すものである(時間tの成分は示していない)。このように、2つの検出用コイル11,12を設けるだけで、従来より知られたレゾルバと同様のサイン相出力信号(sinθsinωt)とコサイン相出力信号(cosθsinωt)を得ることができる。
【0026】演算回路31から出力されたサイン及びコサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおける振幅関数sinθ及びcosθの位相成分θを、位相検出回路(若しくは振幅位相変換手段)32で計測することで、検出対象回転位置θをアブソリュートで検出することができる。この位相検出回路32としては、例えば本出願人の出願に係る特開平9−126809号公報に示された技術を用いて構成するとよい。例えば、第1の交流出力信号sinθsinωtを電気的に90度シフトすることで、交流信号sinθcosωtを生成し、これと第2の交流出力信号cosθsinωtを加減算合成することで、sin(ωt+θ)およびsin(ωt−θ)なる、θに応じて進相および遅相方向に位相シフトされた2つの交流信号(位相成分θを交流位相ずれに変換した信号)を生成し、その位相θを測定することで、回転位置検出データを得ることができる。あるいは、公知のレゾルバ出力信号を処理するために使用されるR−Dコンバータを、この位相検出回路32として使用するようにしてもよい。位相検出回路32における位相成分θの検出処理は、ディジタル処理に限らず、積分回路等を使用したアナログ処理で行ってもよい。また、ディジタル位相検出処理によって回転位置θを示すディジタル検出データを生成した後、これをアナログ変換して回転位置θを示すアナログ検出データを得るようにしてもよい。勿論、位相検出回路32を設けずに、演算回路31の出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtをそのまま出力するようにしてもよい。例えば、シンクロと同様の3相信号を演算回路31から出力したような場合は、そのような応用形態もありうることである。なお、図1(B)において示された、ステータ部10の基板14の裏側のブロック33は、この部分に必要な回路を搭載してよいことを示している。例えば、演算回路31のみ、または更に交流発生源30と位相検出回路32を含む図1(C)のすべての回路をブロック33の場所に搭載してよい。交流発生源30と位相検出回路32をディジタル回路で構成する場合、LSI化できるので、小型となり、これらの回路をステータ基板14の裏側に一体的に搭載することができる。
【0027】ここで、温度ドリフト特性の補償について説明すると、温度に応じて各コイル11,12,13のインピーダンスが変化し、その出力電圧Vs,Vc,Vrも変動する。例えば、図2(A)で実線のカーブに対して破線で示すように各電圧が一方向に増加または減少変動する。しかし、これらを演算合成したサイン及びコサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおいては、「Vs−Vr」及び「Vc−Vr」の演算によって、温度ドリフトが完全に補償されているので、図2(B)に示すように、温度ドリフトの影響を受けない。従って、基準電圧Vrの発生回路としてダミーコイル13を使用する実施形態においては、周辺環境の温度変化に応じて基準電圧Vrの値も変化する(温度ドリフトする)ので、差演算を行ったときに検出用コイル11,12の温度ドリフト特性が自動的に補償されることとなり、精度のよい位置検出が期待できる。勿論、基準電圧Vrの発生回路は、コイルに限らず、コイルと抵抗の組合せ、あるいは抵抗のみなど、その他適宜の回路を用いてもよい。例えば、少し面倒ではあるが、検出動作前に前記カーブA(θ),B(θ)の最大値と最小値を検出する作業を行い、その平均値を求めること、該カーブA(θ),B(θ)の値増減変化の中点P0に相当する電圧を求め、これを基準電圧Vrとして発生してもよい。
【0028】図1の実施例では、各コイル11,12の鉄心(磁性体コア)15,16の端部は回転軸22のスラスト方向を指向しているが、本発明の実施にあたっては、これに限らず、ラジアル方向を指向するように配置してもよいのは勿論である。図3は、各コイル11,12の鉄心(磁性体コア)15,16が回転軸22のラジアル方向を指向するように配置構成した例を示し、(A)は正面略図、(B)は側断面略図である。図3で図1と同一符号は同一機能の要素を示すので、上記説明を援用し、同じ説明の繰り返しを省略する。図3では、各コイル11,12の鉄心15,16の端部が回転軸22のラジアル方向を内向きに指向し、空隙を介してロータ部20の磁気応答部材21の外周側面に向き合う構造である。この場合、ロータ部20の磁気応答部材21の所定の形状(例えば偏心円板状あるいはハート形状など適切に設計した形状)の故に、コイル鉄心15,16の端部と磁気応答部材21の外周側面との間でラジアル方向に関して形成される空隙の距離が、回転位置に応じて、変化する。この対向空隙距離の変化によって、鉄心15,16を通ってコイル11,12を貫く磁束量が変化し、もって、コイル11,12の自己インダクタンスが変化し、各コイル11,12のインピーダンスが変化する。よって、図1と同様に動作して、回転位置の検出を行うことができる。図3の場合、ロータ部20の磁気応答部材21の外周側面の軸方向の長さを幾分長くしておく。これによって、検出対象回転軸22がスラスト方向に機械的ぶれを多少起こしたとしても、コイル鉄心15,16の端部と磁気応答部材21の外周側面との間でラジアル方向に関して形成される空隙の距離は変化せず、検出精度が低下しない。従って、図3のように空隙をラジアル方向に関して形成する構造は、検出対象回転軸22がスラスト方向に機械的ぶれを起こし易いような環境又は機械において本発明を適用する場合に、該スラスト方向に機械的ぶれの影響を受けない回転位置検出を可能にする、という利点をもたらす。図4以降に示された他の実施例においても、図3と同様の変形があり得るのは勿論である。
【0029】図1及び図3のいずれの実施例も、コイル11,12の配置は、1回転内の限られた所定の角度範囲(90度より或る程度広い範囲)に設けられているだけである。従って、ステータ基板14のサイズは、図1及び図3に示したようなロータ部20のフル回転に対応する広いものである必要はなく、図4に示すように、ほぼ半回転分位の限られた範囲に対応する大きさとすることができる。そうすれば、図4に示すような箇所に障害物40があったとしても、これを避けて検出装置を設置することができる。このようなステータ部10における偏ったコイル11,12の配置は、既存の機械内に本発明に係る回転型位置検出装置を後から設置するような場合に有効である。すなわち、回転軸22の所定の回転角度範囲においては既に障害物40が存在していて、1回転フルに対応する大きさのステータ部10の設置が不可能なような場合、障害物40が存在していない角度範囲の場所に対して、偏った配置のコイル11,12を配置したステータ部10を設置することで対応することができるので有利である。勿論、いずれの実施例においても、検出対象回転軸22それ自体は、フル1回転以上の連続的回転が可能であってもよいし、あるいは、1回転未満の限られた角度範囲でのみ回転(つまり往復揺動)するものであってもよい。
【0030】図1〜図4の例では、各コイル11,12の出力に基づき得られる交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおける振幅関数における位相成分θが回転軸22の機械的回転角度θに1対1で対応している。しかし、これに限らず、振幅関数における位相成分θが回転軸22の機械的回転角度のn倍又は1/n倍に対応するようにしてもよい。一例として、n=2倍とした例を図5に示す。図5は、図1(A)と同様の正面略図を示しており、2つのコイル11,12の配置間隔が回転軸22に関してほぼ45度とされ、ロータ部20の磁気応答部材21Aの形状を、例えば楕円に類似したような、回転軸22の機械的1回転につき2サイクルのサイン関数状のインピーダン増減変化を各コイル11,12にもたらすような形状に設計する。これにより、回転軸22の機械的回転角度θ’に対して、各コイル11,12の出力に基づき得られる交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおける振幅関数における位相成分θは2倍の値を示すものとなる。つまり、θ=2θ’である。図5に限らず、様々な変形例が実施可能である。
【0031】図6は、ステータ部10において1つの検出用コイル11のみを設け、この1つのコイル11の出力と基準電圧Vrに基づき2つの交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtと等価の信号を形成する実施例を示すもので、(A)はこの実施例に係るステータ部10側の検出用コイル11とロータ部20側の磁気応答部材21Bとの物理的配置関係の一例を正面略図によって示すもの、同図(B)はその側断面略図、同図(C)はステータ部10側の検出用コイル11に関連する電気回路及び電子回路の一例を示すブロック図である。この例の場合、ロータ部20の磁気応答部材21Bの形状が例えば渦巻カム形状をしており、交流出力信号の振幅関数における位相成分θが回転軸22の機械的回転角度範囲に関してほぼ90度の範囲の変化を示すように設計される。ロータ部20の渦巻カム形状の故に、回転軸22の1回転フルの回転検出には幾分不向きであるが、磁気応答部材21Bの渦巻カム形状の段差部分を除く1回転未満の所定の機械的回転角度範囲に関しての回転位置の検出に向いている。
【0032】図6の場合、コイル11の端子間電圧Vs’は、例えば図7に示すように、回転軸22の1回転未満の所定の機械的回転角度範囲において一方向に略直線的に増加(又は減少)するような特性を示す。このコイル11の端子間電圧Vs’の変化のうち、最小値又はそれに近い値Vmの2倍の値を基準電圧Vr’として設定し、ダミーコイル13によってこれを生成する。図6(C)に示すように各コイル11,13の出力電圧が演算回路31に入力される。図6(C)に示す演算回路31では、下記のように、基準電圧Vr’の1/2の電圧(つまりVm)をコイル11の端子間電圧Vs’から減算することで、図7で符号Vaに示すようなほぼ零レベルから増加する特性の振幅関数特性を持つ第1の交流出力信号を形成すると共に、基準電圧Vr’(つまり2Vm)からコイル11の端子間電圧Vs’を減算することで、図7の符号Vbに示すようなほぼVmから減少する特性の振幅関数特性を持つ第2の交流出力信号を形成する。
Va=Vs’−(Vr’/2)
Vb=Vr’−Vs’
【0033】図7に示した範囲Wにおけるこれらの交流出力信号の振幅関数特性は、サイン関数及びコサイン関数の1つの象限(90度の範囲)に等価的に対応づけることができる。例えば、第1の交流出力信号Vaはサイン関数に対応付けることができ、等価的に、sinθsinωtとして取り扱うことができる。また、第2の交流出力信号Vbはコサイン関数に対応付けることができ、等価的に、cosθsinωtとして取り扱うことができる。ただし、回転軸22の所定の機械的回転範囲Wに対する位相成分θの範囲は90度の範囲である。よって、図6(C)の位相検出回路32で検出する位相角θは、0度〜90度の範囲の値をとり、これが回転軸22の所定の機械的回転範囲Wにおける回転位置をアブソリュートで示すこととなる。
【0034】なお、図7に示すように、ほぼ直線的な振幅変化特性を示す第1及び第2の交流出力信号Va及びVbをsinθsinωt及びcosθsinωtに対応づけたとすると、その振幅特性sinθ,cosθは、回転軸22の機械的回転角度に対して幾分非線形性を示すこととなる。つまり、真のサイン及びコサイン関数特性を示していない。しかし、位相検出回路22では、見かけ上、この交流出力信号Va及びVbをそれぞれサイン及びコサイン関数の振幅特性を持つ信号sinθsinωt及びcosθsinωtをものとして位相検出処理する。その結果、検出した位相角θは、検出対象回転軸22の回転角に対して、線形性を示さないことになる。しかし、回転位置検出にあたっては、そのように、検出出力データ(検出した位相角θ)と実際の検出対象位置との非直線性はあまり重要な問題とはならない場合が多い。つまり、所定の反復再現性をもって位置検出を行なうことができればよいのである。また、必要とあらば、位相検出回路22の出力データを適宜のデータ変換テーブルを用いてデータ変換することにより、検出出力データと実際の検出対象位置との間に正確な線形性を持たせることが容易に行なえる。よって、本発明でいうサイン及びコサイン関数の振幅特性を持つ交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtとは、真のサイン及びコサイン関数特性を示していなければならないものではなく、図7に示されるように、実際は三角波形状のようなもの(線形の傾きを持つもの)であってよいものであり、要するに、そのような傾向を示していればよい。
【0035】図8は、基準電圧発生回路を省略し、その代わりに差動変化するコイル対を設けた実施例を示すもので、(A)はこの実施例に係るステータ部10側の各コイルとロータ部20側の磁気応答部材21の物理的配置関係の一例を正面略図によって示すもの、同図(B)はその側断面略図、同図(C)はステータ部10側の各コイルに関連する電気若しくは電子回路の一例を示すブロック図である。この実施例においては、ステータ部10おいて、サイン出力用のコイル11の180度反対側の角度位置にコイル11Aを鉄心15Aに巻回して設けると共に、コサイン出力用のコイル12の180度反対側の角度位置にコイル12Aを鉄心16Aに巻回して設け、基準電圧発生用のコイル13は省略する。ロータ部20側の磁気応答部材21の形状は図1の例と同様であってよい。この構成によって、1つのコイル対における各コイルのインピーダンスが差動的に変化し、よって各コイルの端子間電圧の増減変化が差動的な特性を示すものとなる。すなわち、サイン相のコイル11と11Aの対では、コイル11のインピーダンス変化つまり出力振幅変化が回転軸22の回転角度θに対して「P0+Psinθ」という関数特性を示すとすると、他のコイル11Aのインピーダンス変化つまり出力振幅変化は回転軸22の回転角度θに対して「P0−Psinθ」という関数特性を示す。同様に、コサイン相のコイル12と12Aの対では、コイル12のインピーダンス変化つまり出力振幅変化が回転軸22の回転角度θに対して「P0+Pcosθ」という関数特性を示すとすると、他のコイル12Aのインピーダンス変化つまり出力振幅変化は回転軸22の回転角度θに対して「P0−Pcosθ」という関数特性を示す。以下、前述と同様に、便宜上、Pを1とみなして省略する。
【0036】図8(C)に示すように、各コイル11,11A,12,12Aは所定の交流信号によって励磁され、それぞれの端子間電圧Vs,Vsa,Vc,Vcaは、下記のように、回転角度θに対応するそれぞれのインピーダンスに応じた大きさを示す。
Vs=(P0+sinθ)sinωtVsa=(P0−sinθ)sinωtVc=(P0+cosθ)sinωtVca=(P0−cosθ)sinωt演算回路31では、下記のように、各コイル対毎に各コイルの端子間電圧の差をそれぞれ取り出し、所定の周期的振幅関数を振幅係数として持つ交流出力信号を各コイル対毎に生成する。
Vs−Vsa=(P0+sinθ)sinωt−(P0−sinθ)sinωt =2sinθsinωtVc−Vca=(P0+cosθ)sinωt−(P0−cosθ)sinωt =2cosθsinωt
【0037】従って、前述の実施例と同様に、検出対象回転軸22の回転角度θに対応する2つの周期的振幅関数(sinθ及びcosθ)を振幅係数として持つ、レゾルバと同様の、2つの交流出力信号(sinθsinωt及びcosθsinωt)を生成することができる。従来のレゾルバに比べて、本発明では、1次コイルのみを設ければよく、誘導出力用の2次コイルは不要であるため、コイル構成が簡単であり、シンプルな構造の回転型位置検出装置を提供することができる。なお、各コイル対毎に各コイルの端子間電圧の差をそれぞれ取り出すために、格別の演算回路31を使用せずに、コイル11と11Aを差動接続し、また、コイル12と12Aを差動接続することで、それぞれの差「Vs−Vsa」及び「Vc−Vca」に相当する出力交流信号を得るように、単純に回路を構成してもよい。
【0038】図9は、図8と同様にステータ部10が4コイル構成からなる実施例を示す。ただし、図9では、各コイル11,11A,12,12Aの鉄心コア15,15A,16,16Aが回転軸22のラジアル方向に向く、つまり、磁気応答部材21のカム状円筒側面に対向するようにしたものである。これに対しては図8(C)と同様の回路構成を適用してよい。
【0039】図10は、図8及び図9と同様にステータ部10が4コイル構成からなる実施例を示すものであるが、回転軸22と共に回転する磁気応答部材21が多歯(図では4歯)若しくは多花弁(図では4花弁)のような、1回転当り複数(N)周期の磁気抵抗変化をもたらすような形状をしており、各コイル11,11A,12,12Aは、1/N回転(つまり360度/N)分の狭い範囲内に配置される構造からなっている。図の例では、360度/N=360/4=90度の機械角範囲内に4つの各コイル11,12,11A,12Aが「90度/4=22.5度」の間隔で配置されている。図9と同様に、各コイル11,12,11A,12Aの鉄心コア15,15A,16,16Aが回転軸22のラジアル方向に向いており、1回転当り4周期の凹凸変化を持つ磁気応答部材21のカム状円筒側面に対向する。これに対しても図8(C)と同様の回路構成を適用してよい。ただし、得られるサイン関数sinθとコサイン関数cosθは、回転軸22の実際の機械角のN=4倍の精度を持つものである。例えば、回転軸22の実際の機械角をψとすると、sinθ=sinNψ,cosθ=cosNψである。この図10の例は、ステータ部10の各コイル11,11A,12,12Aが1/N回転(つまり360度/N)分の狭い範囲内に配置される構造からなっているので、図4と同様に、ステータ取付けスペースが狭い範囲に限定されるような応用に際して非常に適したものである。
【0040】図11は、図3と同様に、ステータ部10が2コイル構成からなると共に、各コイル11,12の鉄心コア15,16が回転軸22のラジアル方向に向く、つまり、磁気応答部材21のカム状円筒側面に対向するようにした実施例を示す。これに対しては図8(C)と同様の回路構成を適用してよい。この例では、ステータ部10を配置する箇所が、回転軸22に設けられた歯車41と下側から延びてきた障害物42との間の限られたスペースしかない。この点に鑑みて、ステータ部10は90度の機械角の間隔で配置された2つのコイル11,12しか持たない構成であるため、図4の例と同様に、ステータ部10の取付け又は取外しに際して、障害物42を避けて、矢印Rの方向から、限られた取付けスペースに対して容易にアクセスすることができる。なお、点線で示すように、ステータ部10の真中にダミーコイル13用のコアを配置してもよい。その場合、ダミーコイル13が、ロータ部20の磁気応答部材21の影響を受けないようにするために、所定の基準電圧発生用の固定的インダクタンスを該ダミーコイル13に生ぜしめるように、該ダミーコイル13用のコア端部を鉄又は銅等の磁気応答材質でマスキングするものとする。
【0041】なお、磁気応答部材21として、銅のような良導電体を使用した場合は、渦電流損によってコイルのインダクタンスが減少し、磁気応答部材21の近接に応じてコイルの端子間電圧が減少することになる。この場合も、上記と同様に位置検出動作することが可能である。また、磁気応答部材21として、磁性体と導電体を組合わせたハイブリッドタイプのものを用いてもよい。なお、1回転未満の回転範囲で揺動する動きの回転位置を検出するタイプのものにおいては、上記各実施例において、磁気応答部材21の方を固定し、検出用コイル11,12の方を検出対象の変位に応じて移動させるようにしてもよい。上記各実施例では、出力交流信号の数(相数)はサインとコサインの2相(つまりレゾルバタイプ)であるが、これに限らないのは勿論である。例えば、3相(各相の振幅関数が例えばsinθ,sin(θ+120),sin(θ+240)のようなもの)であってもよい。
【0042】なお、コイルの交流励磁の仕方としては、少なくとも2つのコイルの各々をsinωtとcosωtで別々に励磁する公知の2相励磁法を用いることも可能である。しかし、上記実施例で説明したような1相励磁の方が、構成の簡単化及び温度ドリフト補償特性等、種々の面で、優れている。
【0043】なお、この発明において、コイルに生じる電圧若しくはコイルの端子間電圧とは、必ずしも電圧検出タイプの回路構成に限定されるものではなく、広義に解釈されるべきであり、電流検出タイプの回路構成を採用するものも範囲に含まれる。要するにコイルのインピーダンス変化に応じたアナログ電圧または電流を生じ、これを検出することのできる回路構成であればよい。
【0044】
【発明の効果】以上のとおり、この発明によれば、1次コイルのみを設ければよく、2次コイルは不要であるため、小型かつシンプルな構造の回転型位置検出装置を提供することができる。また、1つのコイルの出力信号と基準電圧とを演算することで、振幅係数成分が正負に振れる真のサイン関数又はコサイン関数の振幅係数特性を示す出力信号を得ることができるので、コイル構成が簡単であり、一層、小型かつシンプルな構造の回転型位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る回転型位置検出装置の一実施例を示すもので、(A)はステータ部側の検出用コイルとロータ部側の磁気応答部材との物理的配置関係の一例を正面略図によって示すもの、(B)はその側断面略図、(C)はステータ部側の検出用コイルに関連する回路の一例を示すブロック図。
【図2】 図1の実施例の検出動作説明図であって、(A)は回転角度θの変化に対する各検出用コイルのインピーダンス変化の理想的なカーブを示し、(B)は、各検出用コイルの出力電圧を基準電圧で演算することにより得られる出力信号の回転角度θに対する振幅変化特性を示す図。
【図3】 本発明に係る回転型位置検出装置の別の実施例を示すもので、(A)は正面略図、(B)はその側断面略図。
【図4】 本発明に係る回転型位置検出装置の更に別の実施例を示すもので、(A)は正面略図、(B)はその側断面略図。
【図5】 本発明に係る回転型位置検出装置の更に他の実施例を示す正面略図。
【図6】 検出用コイルを1個とした本発明に係る回転型位置検出装置の一実施例を示すもので、(A)はステータ部側の検出用コイルとロータ部側の磁気応答部材との物理的配置関係の一例を正面略図によって示すもの、(B)はその側断面略図、(C)はステータ部側の検出用コイルに関連する回路の一例を示すブロック図。
【図7】 図1の実施例の検出動作説明図。
【図8】 基準電圧を使用しないタイプの本発明に係る回転型位置検出装置の一実施例を示すもので、(A)はステータ部側の検出用コイルとロータ部側の磁気応答部材との物理的配置関係の一例を正面略図によって示すもの、(B)はその側断面略図、(C)はステータ部側の検出用コイルに関連する回路の一例を示すブロック図。
【図9】 基準電圧を使用しないタイプの本発明に係る回転型位置検出装置の別の実施例の構造を略示する斜視図。
【図10】 本発明に係る高分解能タイプの回転型位置検出装置の他の実施例の構造を略示する斜視図。
【図11】 本発明に係る回転型位置検出装置の別の実施例を対象箇所に取り付けた状態で略示する斜視図。
【符号の説明】
10 ステータ部
11,12,11A,12A 検出用のコイル
13 基準電圧発生用のコイル(ダミーコイル)
14 ステータ基板
15,16,15A,16A 鉄心(磁性体コア)
20 ロータ部
21,21A,21B 磁気応答部材
22 回転軸
交流発生源30
アナログ演算回路31
位相検出回路32
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、交流励磁されるコイルとこのコイルに対して相対的に変位する磁性体又は導電体とを含んで構成される回転型位置検出装置に関し、1回転又は所定角度範囲にわたる回転位置の検出に適したものであり、特に、1相の交流で励磁される1次コイルのみを使用して複数相の振幅関数特性を示す出力交流信号を検出対象回転位置に応じて生成するものに関する。
【0002】
【従来の技術】誘導型の回転位置検出装置として、1相励磁入力で2相出力(サイン相とコサイン相の出力)を生じるものは「レゾルバ」として知られており、1相励磁入力で3相出力(120度ずれた3相)を生じるものは「シンクロ」として知られている。最も古いタイプの在来型のレゾルバは、ステータ側に90度の機械角で直交する2極(サイン極とコサイン極)の2次巻線を配し、ロータ側に1次巻線を配したものである。このようなタイプのレゾルバはロータの1次巻線に電気的にコンタクトするためのブラシを必要としているので、これが欠点となっている。これに対して、ブラシを不要としたブラシレス・レゾルバの存在も知られている。ブラシレス・レゾルバは、ロータ側においてブラシに代わる回転トランスを設けたものである。しかし、このようなブラシレス・レゾルバはロータ側に回転トランスを具備する構成の故に、装置を小型化することが困難であり、小型化には限度があるし、また、回転トランスの分だけ装置構成部品点数が増すので製造コストの上昇にもつながってしまう。
【0003】一方、ステータ側の複数の凸極に1次巻線と2次巻線を配し、ロータを所定形状(偏心円形状、あるいは楕円形状、あるいは突起を持つ形状)の磁性体で構成し、ステータ凸極とロータ磁性体との間のギャップが回転位置に応じて変化することに基づき、回転位置に応じた磁気抵抗変化を生成し、これに応じた出力信号を得るようにした、無接触式・可変磁気抵抗型の回転位置検出装置が、古くは商品名「マイクロシン」として知られている。また、同様の可変磁気抵抗原理に基づく回転位置検出装置が、例えば、特開昭55−46862号、特開昭55−70406号、特開昭59−28603号などにおいて示されている。なお、この場合、出力信号に基づく位置検出方式は、位相方式(検出した位置データが出力信号の電気的位相角に対応している方式)と電圧方式(検出した位置データが出力信号の電圧レベルに対応している方式)のどちらもが知られている。例えば、位相方式を採用する場合は、2相励磁入力又は3相励磁入力等、異なる機械角で配置された各1次巻線を位相のずれた複数相で励磁し、回転位置に応じて電気的位相角がずれた1相の出力信号を生ずる。また、電圧方式を採用する場合は、1次巻線と2次巻線の関係が上記位相方式とは逆になり、上記「レゾルバ」のように1相励磁入力で複数相出力を生ずる。
【0004】「レゾルバ」のように1相励磁入力で複数相出力を生ずる回転位置検出装置においては、典型的には、サイン相出力とコサイン相出力の2相出力を生じるように構成されている。そのために、従来の無接触式・可変磁気抵抗型のレゾルバタイプの回転位置検出装置は、最低でもステータは4極構成とされ、各極が機械角で90度の間隔で配置され、第1の極をサイン相とすると、それから90度離れた第2の極はコサイン相とされ、更に90度離れた第3の極はマイナスサイン相とされ、更に90度離れた第4の極はマイナスコサイン相とされる。その場合、各ステータ極に対して回転に応じた磁気抵抗変化を生じさせるためにロータは、磁性体又は導電体からなり、その形状が偏心円形状や楕円形状あるいは歯車形状等の周期的な形状に形成される。そして、各ステータ極には1次コイルと2次コイルが設けられ、各ステータ極とロータ間のギャップがロータの回転位置に対応して変化することにより該ステータ極を通る磁気回路の磁気抵抗が変化し、これに基づき該ステータ極における1次コイルと2次コイルとの間の磁気結合度が回転位置に対応して変化し、こうして回転位置に対応する出力信号が2次コイルに誘導されるようにしており、各ステータ極の出力信号のピーク振幅特性は周期的関数特性を示す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の無接触式・可変磁気抵抗型のレゾルバタイプの回転位置検出装置は、1次コイルと2次コイルを設ける1次−2次誘導タイプであるために、コイル数が多くなり、故に、構造を小型化するのに限度があり、また、コストを低減するのにも限度があった。更に、従来の回転位置検出装置は、複数のステータ極が1回転の全体にわたって均等間隔で配置される構成であるため、その構造上の制限から適用可能な場所やスペースに限度があった。また、従来の回転位置検出装置においては、サインとコサインの2相出力を得る場合であっても、ステータを単純な2極構成とすることはできず、4極構成としなければならなかったので、構造を小型化するのに限度があった。
【0006】本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、小型かつシンプルな構造を持つ回転型位置検出装置を提供しようとするものである。また、利用可能な位相角範囲を広くとることができ、更には、検出対象の変位が微小でも高分解能での検出が可能であり、温度特性の補償も容易な、回転型位置検出装置を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の観点に係る回転型位置検出装置は、交流信号で励磁される少なくとも1つのコイルを配置してなるコイル部と、前記コイル部に対して相対的に回転変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象の回転に応じて該部材と前記コイル部との相対的回転位置が変化し、この相対的回転位置に応じて前記コイルのインピーダンスを変化させ、このインピーダンス変化に基づき前記相対的回転位置が所定の回転角範囲にわたって変化する間で前記コイルの端子間電圧が増減変化するようにしたものと、所定の基準電圧を発生する回路と、前記コイルに生じる電圧を取り出し、前記基準電圧と演算することで、所定の周期的振幅関数を振幅係数として持つ交流出力信号を少なくとも2つ生成する演算回路であって、前記各交流出力信号の前記周期的振幅関数はその周期特性において所定位相だけ異なっているものとを具える。
【0008】磁気応答部材は、典型的には、磁性体及び導電体の少なくとも一方を含んでなるものである。磁気応答部材が磁性体からなる場合は、該部材のコイルに対する近接の度合いが増すほど、該コイルのインダクタンスが増加して、該コイルの電気的インピーダンスが増加し、該コイルに生じる電圧(すなわち端子間電圧)が増加する。反対に、該磁気応答部材のコイルに対する近接の度合いが減少するほど、該コイルのインダクタンスが減少して、該コイルの電気的インピーダンスが減少し、該コイルの端子間電圧が減少する。こうして、検出対象の回転に伴い、コイルに対する磁気応答部材の相対的回転位置が所定の回転角範囲にわたって変化する間で該コイルの端子間電圧は、増減変化することになる。
【0009】ここで、コイルを流れる交流信号をsinωtで示し、一例として、この増減変化によって生ずる振幅係数成分を、回転角θを変数とする関数A(θ)で示すと、コイルの端子間電圧はA(θ)sinωtで表すことができる。この場合、振幅係数成分A(θ)は回転に伴って増減変化はするが、その値は正の値しかとらない。例えば、この振幅係数成分A(θ)の増減変化のカーブがサインカーブに近似する特性を示すとし、そのピーク値をPとすると、A(θ)=P0+Psinθのような式で典型的には示されるものである。ここで、P0≧Pである。すなわち、Psinθの値を或るオフセット値P0でプラス方向にオフセットしたような特性である。
【0010】本発明の第1の観点によれば、所定の基準電圧を発生し、前記コイルの端子間電圧を取り出して、前記基準電圧と演算することで、所定の周期的振幅関数を振幅係数として持つ交流出力信号を生成するようにしたことを特徴としている。例えば基準電圧をP0sinωtとすれば、引き算によって、A(θ)sinωt−P0sinωt=(P0+Psinθ)sinωt−P0sinωt=Psinθsinωtが得られ、1つのコイルの出力信号と基準電圧とを演算することで、振幅係数成分が正負に振れる真のサイン関数sinθ(又はコサイン関数)の振幅係数特性を示す出力信号を得ることができる。従って、本発明によれば、コイル構成が簡単である。更に、本発明によれば、1次コイルのみを設ければよく、2次コイルは不要であるため、一層、小型かつシンプルな構造の回転型位置検出装置を提供することができる。
【0011】本発明の一実施形態としては、前記コイル部は、前記相対的回転位置の変化方向に沿って所定角度だけずらされて配置された2つの前記コイルを有し、前記基準電圧を発生する回路は、前記コイルに生じる電圧の増減変化の中点に対応する基準電圧(例えば上記P0sinωt)を発生するものであり、前記演算回路は、前記2つのコイルのうち第1のコイルの端子間電圧から前記基準電圧を減算することで、該基準電圧分の電圧オフセットを解消し、零点を中心にして正負に振れる第1の周期的振幅関数を振幅係数として持つ第1の交流出力信号(例えばsinθsinωt)を生成し、前記2つのコイルのうち第2のコイルの端子間電圧から前記基準電圧を減算することで、該基準電圧分の電圧オフセットを解消し、零点を中心にして正負に振れる第2の周期的振幅関数を振幅係数として持つ第2の交流出力信号(例えばcosθsinωt)を生成するものである。この場合、2つのコイルを設けるだけで、レゾルバと同様のサイン相出力信号(sinθsinωt)とコサイン相出力信号(cosθsinωt)を得ることができる。
【0012】本発明の別の実施形態としては、前記演算回路は、1つの前記コイルに生じる電圧と前記基準電圧とを用いて所定の第1の演算及び第2の演算をそれぞれ行うことで、第1の振幅関数を振幅係数として持つ第1の交流出力信号と、第2の振幅関数を振幅係数として持つ第2の交流出力信号とをそれぞれ生成する。この場合は、追って詳しく説明するように、所定の限られた機械的回転角範囲の回転変位に関して、360度フルの位相検出スケールではなく、所定の限られた範囲内の位相検出スケールで(例えば90度の範囲)位置検出データを得ることができる。すなわち、ただ1つのコイルを用いるだけで、所定の限られた範囲内の検出スケールではあるが、レゾルバと同様の2つの交流出力信号、つまりサイン相出力信号(sinθsinωt)とコサイン相出力信号(cosθsinωt)、を得ることができる。
【0013】一実施形態として、前記基準電圧を発生する回路は、前記磁気応答部材の変位の影響を受けない位置に配置された所定インピーダンスのコイル(ダミーコイル)を含んでいてよい。そのようなダミーコイルを用いることにより、前記コイル部に設けられた検出用のコイルの温度ドリフト特性の補償に役立つ。勿論、基準電圧を発生する回路は、コイルに限らず、抵抗等、その他適宜の構成からなる電圧生成回路を使用してよい。
【0014】一実施形態として、前記コイル部が、1回転内の限られた所定の角度範囲に設けられており、該限られた所定の角度範囲における回転位置の検出を行うのに適するようになっていてよい。このような偏ったコイル部の配置は、既存の機械内に本発明に係る回転型位置検出装置を後から設置するような場合に有効である。例えば、検出対象回転軸における所定の角度範囲においては既に障害物が存在していて、1回転フルにわたるステータコイルの設置が不可能なような場合、障害物が存在していない角度範囲の場所に偏った配置のコイル部を設置することができるので有利である。
【0015】なお、磁気応答部材として、銅のような良導電体を使用した場合は、渦電流損によってコイルのインダクタンスが減少し、磁気応答部材の近接に応じてコイルの端子間電圧が減少することになる。この場合も、上記と同様に検出することが可能である。磁気応答部材として、磁性体と導電体を組合わせたハイブリッドタイプのものを用いてもよい。
【0016】本発明の第2の観点に従う回転型位置検出装置は、交流信号で励磁される少なくとも2対のコイルを配置してなるコイル部であって、1つのコイル対における各コイルは所定の回転角に対応する間隔で離隔されて配置されており、前記コイル部に対して相対的に回転変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象の回転に応じて該部材と前記コイル部との相対的回転位置が変化し、この相対的回転位置に応じて前記コイルのインピーダンスを変化させ、このインピーダンス変化に基づき前記相対的回転位置が所定の回転角範囲にわたって変化する間で前記コイルの端子間電圧が増減変化するようにし、1つのコイル対における各コイルの端子間電圧の増減変化が差動的な特性を示すようにしたものと、各コイル対毎に各コイルの端子間電圧の差をそれぞれ取り出し、所定の周期的振幅関数を振幅係数として持つ交流出力信号を各コイル対毎に生成する回路であって、前記各交流出力信号の前記周期的振幅関数はその周期特性において所定位相だけ異なっているものとを具える。
【0017】本発明の第2の観点によれば、例えば1つのコイル対をサイン相とすると、該1つのコイル対における各コイルの端子間電圧の増減変化が差動的な特性を示すので、一方が(P0+Psinθ)sinωtとすると、他方が(P0−Psinθ)sinωtとなる。その両者の差を取り出すと、(P0+Psinθ)sinωt−{(P0−Psinθ)sinωt}=2Psinθsinωtとなる。もう一方のコイル対をコサイン相とすると、該コイル対における各コイルの端子間電圧の増減変化が差動的な特性を示すことにより、その両者の差を取り出すと、(P0+Pcosθ)sinωt−{(P0−Pcosθ)sinωt}=2Pcosθsinωtとなる。このような差動合成原理は、従来知られたレゾルバと共通しているが、従来のレゾルバは、1次及び2次コイルを必要としていたが、本発明の第2の観点によれば、1次コイルのみを設ければよく、2次コイルは不要であるため、コイル構成が簡単であり、シンプルな構造の回転型位置検出装置を提供することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照してこの発明の実施の形態を詳細に説明しよう。図1は、サイン及びコサイン関数特性を示す振幅をそれぞれ持つ2つの交流出力信号において、電気角で0度から360度までのフルの範囲での振幅変化が得られるようにする実施例を示す。図1(A)は、この実施例に係る回転型位置検出装置におけるステータ部10側の検出用コイル11,12とロータ部20側の磁気応答部材21との物理的配置関係の一例を正面略図によって示すもの、同図(B)はその側断面略図、同図(C)はステータ部10側の検出用コイル11,12に関連する電気回路及び電子回路の一例を示すブロック図である。検出対象たる回転軸22に所定形状、例えば偏心円板状、の磁気応答部材21が取り付けられて、ロータ部20が構成される。一例として、磁気応答部材21の材質は鉄のような磁性体からなっているものとして説明を進める。ロータ部20に対してスラスト方向に向き合うような形でステータ部10が配置される。
【0019】ステータ部10は、検出用コイルとして2つのコイル11及び12を含んでいる。各コイル11,12は、ステータ基板14上において円周方向に所定間隔で離隔して配置されており、この間隔は例えば回転軸22に関して90度をなすような間隔である。各コイル11,12は、それぞれ鉄心(磁性体コア)15,16に巻回されており、コイル内を通る磁束が回転軸22の軸方向を指向する。各コイル11,12の鉄心15,16の端面と、ロータ部20の磁気応答部材21の表面との間に空隙が形成され、ロータ部20はステータ部10に対して非接触で回転する。この空隙の距離は、一定に保たれるように、ロータ部20とステータ部10の相対的配置が図示しない機構を介して定められる。ロータ部20の磁気応答部材21の所定の形状、例えば偏心円板状、の故に、空隙を介して磁気応答部材21と向き合うコイル鉄心15,16の端面の面積が、回転位置に応じて、変化する。この対向空隙面積の変化によって、鉄心15,16を通ってコイル11,12を貫く磁束量が変化し、もって、コイル11,12の自己インダクタンスが変化する。このインダクタンス変化は、各コイル11,12のインピーダンス変化でもある。
【0020】ロータ部20の磁気応答部材21の所定の形状は、理想的なサイン関数のカーブが得られるように、適切に設計される。例えば、回転軸22の1回転につき1周期のサイン関数のカーブが得られるようにするには、その形状は、一般的には上記のように偏心円板に近いものと言ってもさしつかえないが、正確には、コイルや鉄心形状等の設計条件に応じて、適宜ゆがんだ形状あるいはハート型に類似した形状となりうることが知られている。この形状をいかに設計するかは本発明の目的ではなく、かつ、公知/未公知のこの種の可変磁気抵抗型回転検出器で採用されているロータ形状を採用してよいので、ロータ形状についてのこれ以上の言及は差し控える。重要なことは、ロータ部20の磁気応答部材21の所定の形状が如何なる形状であるかということではなく、要するに、ロータ部20の回転位置の変化に応じた各コイル11,12のインダクタンス変化つまりインピーダンス変化が、理想的なサイン関数のカーブと同じようになるようにできるだけ適切に設計されていればよい。
【0021】図2(A)は、回転角度θの変化に対する一方のコイル11のインピーダンス変化の理想的なサイン関数のカーブをA(θ)で示している。回転角度θの変化に対する他方のコイル12のインピーダンス変化の理想的なサイン関数のカーブをB(θ)で示す。明らかなように、他方のコイル12は、コイル11に対して90度ずれた配置の故に、そのカーブB(θ)はコサイン関数に相当している。かくして、各カーブA(θ),B(θ)の増減変化の中点をP0とし、振れの振幅をPとすると、A(θ)=P0+PsinθB(θ)=P0+Pcosθと表せる。なお、Pは1とみなして省略しても説明上不都合はないので、以下の説明ではこれを省略することにする。
【0022】図1(C)に示すように、各コイル11,12は、交流発生源30から発生されるの所定の1相の高周波交流信号(仮にsinωtで示す)によって定電圧又は定電流で励磁される。各コイル11,12の端子間電圧をそれぞれVs,Vcで示すと、検出対象たる回転角θを変数として、これらは下記のように表せる。
Vs=A(θ)sinωt=(P0+sinθ)sinωtVc=B(θ)sinωt=(P0+cosθ)sinωt
【0023】コイル(ダミーコイル)13は、基準電圧Vrを発生するものであり、例えば、前記カーブA(θ),B(θ)の増減変化の中点P0に相当する所定インピーダンスを持つ。例えば、コイル13は、図1(A),(B)に示されるように、ステータ基板14上に配置されるが、ロータ部20の磁気応答部材21の変位の影響を受けない位置に配置されていて、検出用のコイル11,12と温度ドリフト条件が同じになるようになっている。このことは、検出用のコイル11,12の温度ドリフト誤差を補償するのに役立つ。コイル(ダミーコイル)13も交流励磁されており、その端子間電圧つまり基準電圧Vrは下記のように表せる。
Vr=P0sinωt
【0024】各コイル11,12,13の出力電圧Vs,Vc,Vrは、アナログ演算回路31に入力され、下記演算式に従って演算されることで、アナログ演算回路31から検出対象位置θに応じたサイン及びコサイン関数特性を示す振幅をそれぞれ持つ2つの交流出力信号(つまり互に90度位相のずれた振幅関数特性を持つ2つの交流出力信号)が生成される。すなわち、検出用の各コイル11,12の出力電圧Vs,Vcから基準電圧Vrを減算する。
Vs−Vr=(P0+ sinθ)sinωt−P0sinωt= sinθ sinωtVc−Vr=(P0+ cosθ)sinωt−P0sinωt= cosθ sinωt
【0025】以上のように、検出用の各コイル11,12の端子間電圧Vs,Vcと基準電圧Vrとを演算することで、基準電圧Vr分のオフセットを解消し、増減変化の中点を零点として正負に振れる2つの周期的振幅関数(sinθ及びcosθ)を振幅係数として持つ2つの交流出力信号(sinθsinωt及びcosθsinωt)を生成することができる。図2(B)は、この状態をθ成分についてのみ模式的に示すものである(時間tの成分は示していない)。このように、2つの検出用コイル11,12を設けるだけで、従来より知られたレゾルバと同様のサイン相出力信号(sinθsinωt)とコサイン相出力信号(cosθsinωt)を得ることができる。
【0026】演算回路31から出力されたサイン及びコサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおける振幅関数sinθ及びcosθの位相成分θを、位相検出回路(若しくは振幅位相変換手段)32で計測することで、検出対象回転位置θをアブソリュートで検出することができる。この位相検出回路32としては、例えば本出願人の出願に係る特開平9−126809号公報に示された技術を用いて構成するとよい。例えば、第1の交流出力信号sinθsinωtを電気的に90度シフトすることで、交流信号sinθcosωtを生成し、これと第2の交流出力信号cosθsinωtを加減算合成することで、sin(ωt+θ)およびsin(ωt−θ)なる、θに応じて進相および遅相方向に位相シフトされた2つの交流信号(位相成分θを交流位相ずれに変換した信号)を生成し、その位相θを測定することで、回転位置検出データを得ることができる。あるいは、公知のレゾルバ出力信号を処理するために使用されるR−Dコンバータを、この位相検出回路32として使用するようにしてもよい。位相検出回路32における位相成分θの検出処理は、ディジタル処理に限らず、積分回路等を使用したアナログ処理で行ってもよい。また、ディジタル位相検出処理によって回転位置θを示すディジタル検出データを生成した後、これをアナログ変換して回転位置θを示すアナログ検出データを得るようにしてもよい。勿論、位相検出回路32を設けずに、演算回路31の出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtをそのまま出力するようにしてもよい。例えば、シンクロと同様の3相信号を演算回路31から出力したような場合は、そのような応用形態もありうることである。なお、図1(B)において示された、ステータ部10の基板14の裏側のブロック33は、この部分に必要な回路を搭載してよいことを示している。例えば、演算回路31のみ、または更に交流発生源30と位相検出回路32を含む図1(C)のすべての回路をブロック33の場所に搭載してよい。交流発生源30と位相検出回路32をディジタル回路で構成する場合、LSI化できるので、小型となり、これらの回路をステータ基板14の裏側に一体的に搭載することができる。
【0027】ここで、温度ドリフト特性の補償について説明すると、温度に応じて各コイル11,12,13のインピーダンスが変化し、その出力電圧Vs,Vc,Vrも変動する。例えば、図2(A)で実線のカーブに対して破線で示すように各電圧が一方向に増加または減少変動する。しかし、これらを演算合成したサイン及びコサイン関数特性の交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおいては、「Vs−Vr」及び「Vc−Vr」の演算によって、温度ドリフトが完全に補償されているので、図2(B)に示すように、温度ドリフトの影響を受けない。従って、基準電圧Vrの発生回路としてダミーコイル13を使用する実施形態においては、周辺環境の温度変化に応じて基準電圧Vrの値も変化する(温度ドリフトする)ので、差演算を行ったときに検出用コイル11,12の温度ドリフト特性が自動的に補償されることとなり、精度のよい位置検出が期待できる。勿論、基準電圧Vrの発生回路は、コイルに限らず、コイルと抵抗の組合せ、あるいは抵抗のみなど、その他適宜の回路を用いてもよい。例えば、少し面倒ではあるが、検出動作前に前記カーブA(θ),B(θ)の最大値と最小値を検出する作業を行い、その平均値を求めること、該カーブA(θ),B(θ)の値増減変化の中点P0に相当する電圧を求め、これを基準電圧Vrとして発生してもよい。
【0028】図1の実施例では、各コイル11,12の鉄心(磁性体コア)15,16の端部は回転軸22のスラスト方向を指向しているが、本発明の実施にあたっては、これに限らず、ラジアル方向を指向するように配置してもよいのは勿論である。図3は、各コイル11,12の鉄心(磁性体コア)15,16が回転軸22のラジアル方向を指向するように配置構成した例を示し、(A)は正面略図、(B)は側断面略図である。図3で図1と同一符号は同一機能の要素を示すので、上記説明を援用し、同じ説明の繰り返しを省略する。図3では、各コイル11,12の鉄心15,16の端部が回転軸22のラジアル方向を内向きに指向し、空隙を介してロータ部20の磁気応答部材21の外周側面に向き合う構造である。この場合、ロータ部20の磁気応答部材21の所定の形状(例えば偏心円板状あるいはハート形状など適切に設計した形状)の故に、コイル鉄心15,16の端部と磁気応答部材21の外周側面との間でラジアル方向に関して形成される空隙の距離が、回転位置に応じて、変化する。この対向空隙距離の変化によって、鉄心15,16を通ってコイル11,12を貫く磁束量が変化し、もって、コイル11,12の自己インダクタンスが変化し、各コイル11,12のインピーダンスが変化する。よって、図1と同様に動作して、回転位置の検出を行うことができる。図3の場合、ロータ部20の磁気応答部材21の外周側面の軸方向の長さを幾分長くしておく。これによって、検出対象回転軸22がスラスト方向に機械的ぶれを多少起こしたとしても、コイル鉄心15,16の端部と磁気応答部材21の外周側面との間でラジアル方向に関して形成される空隙の距離は変化せず、検出精度が低下しない。従って、図3のように空隙をラジアル方向に関して形成する構造は、検出対象回転軸22がスラスト方向に機械的ぶれを起こし易いような環境又は機械において本発明を適用する場合に、該スラスト方向に機械的ぶれの影響を受けない回転位置検出を可能にする、という利点をもたらす。図4以降に示された他の実施例においても、図3と同様の変形があり得るのは勿論である。
【0029】図1及び図3のいずれの実施例も、コイル11,12の配置は、1回転内の限られた所定の角度範囲(90度より或る程度広い範囲)に設けられているだけである。従って、ステータ基板14のサイズは、図1及び図3に示したようなロータ部20のフル回転に対応する広いものである必要はなく、図4に示すように、ほぼ半回転分位の限られた範囲に対応する大きさとすることができる。そうすれば、図4に示すような箇所に障害物40があったとしても、これを避けて検出装置を設置することができる。このようなステータ部10における偏ったコイル11,12の配置は、既存の機械内に本発明に係る回転型位置検出装置を後から設置するような場合に有効である。すなわち、回転軸22の所定の回転角度範囲においては既に障害物40が存在していて、1回転フルに対応する大きさのステータ部10の設置が不可能なような場合、障害物40が存在していない角度範囲の場所に対して、偏った配置のコイル11,12を配置したステータ部10を設置することで対応することができるので有利である。勿論、いずれの実施例においても、検出対象回転軸22それ自体は、フル1回転以上の連続的回転が可能であってもよいし、あるいは、1回転未満の限られた角度範囲でのみ回転(つまり往復揺動)するものであってもよい。
【0030】図1〜図4の例では、各コイル11,12の出力に基づき得られる交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおける振幅関数における位相成分θが回転軸22の機械的回転角度θに1対1で対応している。しかし、これに限らず、振幅関数における位相成分θが回転軸22の機械的回転角度のn倍又は1/n倍に対応するようにしてもよい。一例として、n=2倍とした例を図5に示す。図5は、図1(A)と同様の正面略図を示しており、2つのコイル11,12の配置間隔が回転軸22に関してほぼ45度とされ、ロータ部20の磁気応答部材21Aの形状を、例えば楕円に類似したような、回転軸22の機械的1回転につき2サイクルのサイン関数状のインピーダン増減変化を各コイル11,12にもたらすような形状に設計する。これにより、回転軸22の機械的回転角度θ’に対して、各コイル11,12の出力に基づき得られる交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtにおける振幅関数における位相成分θは2倍の値を示すものとなる。つまり、θ=2θ’である。図5に限らず、様々な変形例が実施可能である。
【0031】図6は、ステータ部10において1つの検出用コイル11のみを設け、この1つのコイル11の出力と基準電圧Vrに基づき2つの交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtと等価の信号を形成する実施例を示すもので、(A)はこの実施例に係るステータ部10側の検出用コイル11とロータ部20側の磁気応答部材21Bとの物理的配置関係の一例を正面略図によって示すもの、同図(B)はその側断面略図、同図(C)はステータ部10側の検出用コイル11に関連する電気回路及び電子回路の一例を示すブロック図である。この例の場合、ロータ部20の磁気応答部材21Bの形状が例えば渦巻カム形状をしており、交流出力信号の振幅関数における位相成分θが回転軸22の機械的回転角度範囲に関してほぼ90度の範囲の変化を示すように設計される。ロータ部20の渦巻カム形状の故に、回転軸22の1回転フルの回転検出には幾分不向きであるが、磁気応答部材21Bの渦巻カム形状の段差部分を除く1回転未満の所定の機械的回転角度範囲に関しての回転位置の検出に向いている。
【0032】図6の場合、コイル11の端子間電圧Vs’は、例えば図7に示すように、回転軸22の1回転未満の所定の機械的回転角度範囲において一方向に略直線的に増加(又は減少)するような特性を示す。このコイル11の端子間電圧Vs’の変化のうち、最小値又はそれに近い値Vmの2倍の値を基準電圧Vr’として設定し、ダミーコイル13によってこれを生成する。図6(C)に示すように各コイル11,13の出力電圧が演算回路31に入力される。図6(C)に示す演算回路31では、下記のように、基準電圧Vr’の1/2の電圧(つまりVm)をコイル11の端子間電圧Vs’から減算することで、図7で符号Vaに示すようなほぼ零レベルから増加する特性の振幅関数特性を持つ第1の交流出力信号を形成すると共に、基準電圧Vr’(つまり2Vm)からコイル11の端子間電圧Vs’を減算することで、図7の符号Vbに示すようなほぼVmから減少する特性の振幅関数特性を持つ第2の交流出力信号を形成する。
Va=Vs’−(Vr’/2)
Vb=Vr’−Vs’
【0033】図7に示した範囲Wにおけるこれらの交流出力信号の振幅関数特性は、サイン関数及びコサイン関数の1つの象限(90度の範囲)に等価的に対応づけることができる。例えば、第1の交流出力信号Vaはサイン関数に対応付けることができ、等価的に、sinθsinωtとして取り扱うことができる。また、第2の交流出力信号Vbはコサイン関数に対応付けることができ、等価的に、cosθsinωtとして取り扱うことができる。ただし、回転軸22の所定の機械的回転範囲Wに対する位相成分θの範囲は90度の範囲である。よって、図6(C)の位相検出回路32で検出する位相角θは、0度〜90度の範囲の値をとり、これが回転軸22の所定の機械的回転範囲Wにおける回転位置をアブソリュートで示すこととなる。
【0034】なお、図7に示すように、ほぼ直線的な振幅変化特性を示す第1及び第2の交流出力信号Va及びVbをsinθsinωt及びcosθsinωtに対応づけたとすると、その振幅特性sinθ,cosθは、回転軸22の機械的回転角度に対して幾分非線形性を示すこととなる。つまり、真のサイン及びコサイン関数特性を示していない。しかし、位相検出回路22では、見かけ上、この交流出力信号Va及びVbをそれぞれサイン及びコサイン関数の振幅特性を持つ信号sinθsinωt及びcosθsinωtをものとして位相検出処理する。その結果、検出した位相角θは、検出対象回転軸22の回転角に対して、線形性を示さないことになる。しかし、回転位置検出にあたっては、そのように、検出出力データ(検出した位相角θ)と実際の検出対象位置との非直線性はあまり重要な問題とはならない場合が多い。つまり、所定の反復再現性をもって位置検出を行なうことができればよいのである。また、必要とあらば、位相検出回路22の出力データを適宜のデータ変換テーブルを用いてデータ変換することにより、検出出力データと実際の検出対象位置との間に正確な線形性を持たせることが容易に行なえる。よって、本発明でいうサイン及びコサイン関数の振幅特性を持つ交流出力信号sinθsinωt及びcosθsinωtとは、真のサイン及びコサイン関数特性を示していなければならないものではなく、図7に示されるように、実際は三角波形状のようなもの(線形の傾きを持つもの)であってよいものであり、要するに、そのような傾向を示していればよい。
【0035】図8は、基準電圧発生回路を省略し、その代わりに差動変化するコイル対を設けた実施例を示すもので、(A)はこの実施例に係るステータ部10側の各コイルとロータ部20側の磁気応答部材21の物理的配置関係の一例を正面略図によって示すもの、同図(B)はその側断面略図、同図(C)はステータ部10側の各コイルに関連する電気若しくは電子回路の一例を示すブロック図である。この実施例においては、ステータ部10おいて、サイン出力用のコイル11の180度反対側の角度位置にコイル11Aを鉄心15Aに巻回して設けると共に、コサイン出力用のコイル12の180度反対側の角度位置にコイル12Aを鉄心16Aに巻回して設け、基準電圧発生用のコイル13は省略する。ロータ部20側の磁気応答部材21の形状は図1の例と同様であってよい。この構成によって、1つのコイル対における各コイルのインピーダンスが差動的に変化し、よって各コイルの端子間電圧の増減変化が差動的な特性を示すものとなる。すなわち、サイン相のコイル11と11Aの対では、コイル11のインピーダンス変化つまり出力振幅変化が回転軸22の回転角度θに対して「P0+Psinθ」という関数特性を示すとすると、他のコイル11Aのインピーダンス変化つまり出力振幅変化は回転軸22の回転角度θに対して「P0−Psinθ」という関数特性を示す。同様に、コサイン相のコイル12と12Aの対では、コイル12のインピーダンス変化つまり出力振幅変化が回転軸22の回転角度θに対して「P0+Pcosθ」という関数特性を示すとすると、他のコイル12Aのインピーダンス変化つまり出力振幅変化は回転軸22の回転角度θに対して「P0−Pcosθ」という関数特性を示す。以下、前述と同様に、便宜上、Pを1とみなして省略する。
【0036】図8(C)に示すように、各コイル11,11A,12,12Aは所定の交流信号によって励磁され、それぞれの端子間電圧Vs,Vsa,Vc,Vcaは、下記のように、回転角度θに対応するそれぞれのインピーダンスに応じた大きさを示す。
Vs=(P0+sinθ)sinωtVsa=(P0−sinθ)sinωtVc=(P0+cosθ)sinωtVca=(P0−cosθ)sinωt演算回路31では、下記のように、各コイル対毎に各コイルの端子間電圧の差をそれぞれ取り出し、所定の周期的振幅関数を振幅係数として持つ交流出力信号を各コイル対毎に生成する。
Vs−Vsa=(P0+sinθ)sinωt−(P0−sinθ)sinωt =2sinθsinωtVc−Vca=(P0+cosθ)sinωt−(P0−cosθ)sinωt =2cosθsinωt
【0037】従って、前述の実施例と同様に、検出対象回転軸22の回転角度θに対応する2つの周期的振幅関数(sinθ及びcosθ)を振幅係数として持つ、レゾルバと同様の、2つの交流出力信号(sinθsinωt及びcosθsinωt)を生成することができる。従来のレゾルバに比べて、本発明では、1次コイルのみを設ければよく、誘導出力用の2次コイルは不要であるため、コイル構成が簡単であり、シンプルな構造の回転型位置検出装置を提供することができる。なお、各コイル対毎に各コイルの端子間電圧の差をそれぞれ取り出すために、格別の演算回路31を使用せずに、コイル11と11Aを差動接続し、また、コイル12と12Aを差動接続することで、それぞれの差「Vs−Vsa」及び「Vc−Vca」に相当する出力交流信号を得るように、単純に回路を構成してもよい。
【0038】図9は、図8と同様にステータ部10が4コイル構成からなる実施例を示す。ただし、図9では、各コイル11,11A,12,12Aの鉄心コア15,15A,16,16Aが回転軸22のラジアル方向に向く、つまり、磁気応答部材21のカム状円筒側面に対向するようにしたものである。これに対しては図8(C)と同様の回路構成を適用してよい。
【0039】図10は、図8及び図9と同様にステータ部10が4コイル構成からなる実施例を示すものであるが、回転軸22と共に回転する磁気応答部材21が多歯(図では4歯)若しくは多花弁(図では4花弁)のような、1回転当り複数(N)周期の磁気抵抗変化をもたらすような形状をしており、各コイル11,11A,12,12Aは、1/N回転(つまり360度/N)分の狭い範囲内に配置される構造からなっている。図の例では、360度/N=360/4=90度の機械角範囲内に4つの各コイル11,12,11A,12Aが「90度/4=22.5度」の間隔で配置されている。図9と同様に、各コイル11,12,11A,12Aの鉄心コア15,15A,16,16Aが回転軸22のラジアル方向に向いており、1回転当り4周期の凹凸変化を持つ磁気応答部材21のカム状円筒側面に対向する。これに対しても図8(C)と同様の回路構成を適用してよい。ただし、得られるサイン関数sinθとコサイン関数cosθは、回転軸22の実際の機械角のN=4倍の精度を持つものである。例えば、回転軸22の実際の機械角をψとすると、sinθ=sinNψ,cosθ=cosNψである。この図10の例は、ステータ部10の各コイル11,11A,12,12Aが1/N回転(つまり360度/N)分の狭い範囲内に配置される構造からなっているので、図4と同様に、ステータ取付けスペースが狭い範囲に限定されるような応用に際して非常に適したものである。
【0040】図11は、図3と同様に、ステータ部10が2コイル構成からなると共に、各コイル11,12の鉄心コア15,16が回転軸22のラジアル方向に向く、つまり、磁気応答部材21のカム状円筒側面に対向するようにした実施例を示す。これに対しては図8(C)と同様の回路構成を適用してよい。この例では、ステータ部10を配置する箇所が、回転軸22に設けられた歯車41と下側から延びてきた障害物42との間の限られたスペースしかない。この点に鑑みて、ステータ部10は90度の機械角の間隔で配置された2つのコイル11,12しか持たない構成であるため、図4の例と同様に、ステータ部10の取付け又は取外しに際して、障害物42を避けて、矢印Rの方向から、限られた取付けスペースに対して容易にアクセスすることができる。なお、点線で示すように、ステータ部10の真中にダミーコイル13用のコアを配置してもよい。その場合、ダミーコイル13が、ロータ部20の磁気応答部材21の影響を受けないようにするために、所定の基準電圧発生用の固定的インダクタンスを該ダミーコイル13に生ぜしめるように、該ダミーコイル13用のコア端部を鉄又は銅等の磁気応答材質でマスキングするものとする。
【0041】なお、磁気応答部材21として、銅のような良導電体を使用した場合は、渦電流損によってコイルのインダクタンスが減少し、磁気応答部材21の近接に応じてコイルの端子間電圧が減少することになる。この場合も、上記と同様に位置検出動作することが可能である。また、磁気応答部材21として、磁性体と導電体を組合わせたハイブリッドタイプのものを用いてもよい。なお、1回転未満の回転範囲で揺動する動きの回転位置を検出するタイプのものにおいては、上記各実施例において、磁気応答部材21の方を固定し、検出用コイル11,12の方を検出対象の変位に応じて移動させるようにしてもよい。上記各実施例では、出力交流信号の数(相数)はサインとコサインの2相(つまりレゾルバタイプ)であるが、これに限らないのは勿論である。例えば、3相(各相の振幅関数が例えばsinθ,sin(θ+120),sin(θ+240)のようなもの)であってもよい。
【0042】なお、コイルの交流励磁の仕方としては、少なくとも2つのコイルの各々をsinωtとcosωtで別々に励磁する公知の2相励磁法を用いることも可能である。しかし、上記実施例で説明したような1相励磁の方が、構成の簡単化及び温度ドリフト補償特性等、種々の面で、優れている。
【0043】なお、この発明において、コイルに生じる電圧若しくはコイルの端子間電圧とは、必ずしも電圧検出タイプの回路構成に限定されるものではなく、広義に解釈されるべきであり、電流検出タイプの回路構成を採用するものも範囲に含まれる。要するにコイルのインピーダンス変化に応じたアナログ電圧または電流を生じ、これを検出することのできる回路構成であればよい。
【0044】
【発明の効果】以上のとおり、この発明によれば、1次コイルのみを設ければよく、2次コイルは不要であるため、小型かつシンプルな構造の回転型位置検出装置を提供することができる。また、1つのコイルの出力信号と基準電圧とを演算することで、振幅係数成分が正負に振れる真のサイン関数又はコサイン関数の振幅係数特性を示す出力信号を得ることができるので、コイル構成が簡単であり、一層、小型かつシンプルな構造の回転型位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る回転型位置検出装置の一実施例を示すもので、(A)はステータ部側の検出用コイルとロータ部側の磁気応答部材との物理的配置関係の一例を正面略図によって示すもの、(B)はその側断面略図、(C)はステータ部側の検出用コイルに関連する回路の一例を示すブロック図。
【図2】 図1の実施例の検出動作説明図であって、(A)は回転角度θの変化に対する各検出用コイルのインピーダンス変化の理想的なカーブを示し、(B)は、各検出用コイルの出力電圧を基準電圧で演算することにより得られる出力信号の回転角度θに対する振幅変化特性を示す図。
【図3】 本発明に係る回転型位置検出装置の別の実施例を示すもので、(A)は正面略図、(B)はその側断面略図。
【図4】 本発明に係る回転型位置検出装置の更に別の実施例を示すもので、(A)は正面略図、(B)はその側断面略図。
【図5】 本発明に係る回転型位置検出装置の更に他の実施例を示す正面略図。
【図6】 検出用コイルを1個とした本発明に係る回転型位置検出装置の一実施例を示すもので、(A)はステータ部側の検出用コイルとロータ部側の磁気応答部材との物理的配置関係の一例を正面略図によって示すもの、(B)はその側断面略図、(C)はステータ部側の検出用コイルに関連する回路の一例を示すブロック図。
【図7】 図1の実施例の検出動作説明図。
【図8】 基準電圧を使用しないタイプの本発明に係る回転型位置検出装置の一実施例を示すもので、(A)はステータ部側の検出用コイルとロータ部側の磁気応答部材との物理的配置関係の一例を正面略図によって示すもの、(B)はその側断面略図、(C)はステータ部側の検出用コイルに関連する回路の一例を示すブロック図。
【図9】 基準電圧を使用しないタイプの本発明に係る回転型位置検出装置の別の実施例の構造を略示する斜視図。
【図10】 本発明に係る高分解能タイプの回転型位置検出装置の他の実施例の構造を略示する斜視図。
【図11】 本発明に係る回転型位置検出装置の別の実施例を対象箇所に取り付けた状態で略示する斜視図。
【符号の説明】
10 ステータ部
11,12,11A,12A 検出用のコイル
13 基準電圧発生用のコイル(ダミーコイル)
14 ステータ基板
15,16,15A,16A 鉄心(磁性体コア)
20 ロータ部
21,21A,21B 磁気応答部材
22 回転軸
交流発生源30
アナログ演算回路31
位相検出回路32
【特許請求の範囲】
【請求項1】 交流信号で励磁される少なくとも1つのコイルを配置してなるコイル部と、前記コイル部に対して相対的に回転変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象の回転に応じて該部材と前記コイル部との相対的回転位置が変化し、この相対的回転位置に応じて前記コイルのインピーダンスを変化させ、このインピーダンス変化に基づき前記相対的回転位置が所定の回転角範囲にわたって変化する間で前記コイルに生じる電圧が増減変化するようにしたものと、所定の基準電圧を発生する回路と、前記コイルに生じる電圧を取り出し、前記基準電圧と演算することで、所定の周期的振幅関数を振幅係数として持つ交流出力信号を少なくとも2つ生成する演算回路であって、前記各交流出力信号の前記周期的振幅関数はその周期特性において所定位相だけ異なっているものとを具えた回転型位置検出装置。
【請求項2】 前記コイル部は、前記相対的回転位置の変化方向に沿って所定角度だけずらされて配置された2つの前記コイルを有し、前記基準電圧を発生する回路は、前記コイルに生じる電圧の増減変化の中点に対応する基準電圧を発生するものであり、前記演算回路は、前記2つのコイルのうち第1のコイルに生じる電圧から前記基準電圧を減算することで、増減変化の中点で正負に振れる第1の周期的振幅関数を振幅係数として持つ第1の交流出力信号を生成し、前記2つのコイルのうち第2のコイルに生じる電圧から前記基準電圧を減算することで、増減変化の中点で正負に振れる第2の周期的振幅関数を振幅係数として持つ第2の交流出力信号を生成するものである請求項1に記載の回転型位置検出装置。
【請求項3】 前記演算回路は、1つの前記コイルの電圧と前記基準電圧とを用いて所定の第1の演算及び第2の演算をそれぞれ行うことで、第1の振幅関数を振幅係数として持つ第1の交流出力信号と、第2の振幅関数を振幅係数として持つ第2の交流出力信号とをそれぞれ生成するものである請求項1に記載の回転型位置検出装置。
【請求項4】 前記基準電圧を発生する回路は、前記磁気応答部材の変位の影響を受けない位置に配置された所定インピーダンスのコイルを含む請求項1乃至3のいずれかに記載の回転型位置検出装置。
【請求項5】 前記コイル部が、1回転内の限られた所定の角度範囲に設けられており、該限られた所定の角度範囲における回転位置の検出を行う請求項1乃至4のいずれかに記載の回転型位置検出装置。
【請求項6】 前記コイル部の各コイルは磁性体コアを含み、該磁性体コアと前記磁気応答部材との空隙の間隔又は面積が回転に応じて変化することで、前記コイルのインピーダンス変化が生ぜしめられる請求項1乃至5のいずれかに記載の回転型位置検出装置。
【請求項7】 前記コイル部の各コイルの磁性体コアの端部は回転軸のスラスト方向を指向していて、前記磁気応答部材との空隙は回転軸のスラスト方向に関して形成されるものである請求項6に記載の回転型位置検出装置。
【請求項8】 前記コイル部の各コイルの磁性体コアの端部は回転軸のラジアル方向を指向していて、前記磁気応答部材との空隙は回転軸のラジアル方向に関して形成されるものであり、検出対象回転軸のスラスト方向の機械的ぶれの影響を受けにくいことを特徴とする請求項6に記載の回転型位置検出装置。
【請求項9】 交流信号で励磁される少なくとも2対のコイルを配置してなるコイル部であって、1つのコイル対における各コイルは所定の回転角に対応する間隔で離隔されて配置されており、前記コイル部に対して相対的に回転変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象の回転に応じて該部材と前記コイル部との相対的回転位置が変化し、この相対的回転位置に応じて前記コイルのインピーダンスを変化させ、このインピーダンス変化に基づき前記相対的回転位置が所定の回転角範囲にわたって変化する間で前記コイルに生じる電圧が増減変化するようにし、1つのコイル対における各コイルの電圧の増減変化が差動的な特性を示すようにしたものと、各コイル対毎に各コイルに生じる電圧の差をそれぞれ取り出し、所定の周期的振幅関数を振幅係数として持つ交流出力信号を各コイル対毎に生成する回路であって、前記各交流出力信号の前記周期的振幅関数はその周期特性において所定位相だけ異なっているものとを具えた回転型位置検出装置。
【請求項1】 交流信号で励磁される少なくとも1つのコイルを配置してなるコイル部と、前記コイル部に対して相対的に回転変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象の回転に応じて該部材と前記コイル部との相対的回転位置が変化し、この相対的回転位置に応じて前記コイルのインピーダンスを変化させ、このインピーダンス変化に基づき前記相対的回転位置が所定の回転角範囲にわたって変化する間で前記コイルに生じる電圧が増減変化するようにしたものと、所定の基準電圧を発生する回路と、前記コイルに生じる電圧を取り出し、前記基準電圧と演算することで、所定の周期的振幅関数を振幅係数として持つ交流出力信号を少なくとも2つ生成する演算回路であって、前記各交流出力信号の前記周期的振幅関数はその周期特性において所定位相だけ異なっているものとを具えた回転型位置検出装置。
【請求項2】 前記コイル部は、前記相対的回転位置の変化方向に沿って所定角度だけずらされて配置された2つの前記コイルを有し、前記基準電圧を発生する回路は、前記コイルに生じる電圧の増減変化の中点に対応する基準電圧を発生するものであり、前記演算回路は、前記2つのコイルのうち第1のコイルに生じる電圧から前記基準電圧を減算することで、増減変化の中点で正負に振れる第1の周期的振幅関数を振幅係数として持つ第1の交流出力信号を生成し、前記2つのコイルのうち第2のコイルに生じる電圧から前記基準電圧を減算することで、増減変化の中点で正負に振れる第2の周期的振幅関数を振幅係数として持つ第2の交流出力信号を生成するものである請求項1に記載の回転型位置検出装置。
【請求項3】 前記演算回路は、1つの前記コイルの電圧と前記基準電圧とを用いて所定の第1の演算及び第2の演算をそれぞれ行うことで、第1の振幅関数を振幅係数として持つ第1の交流出力信号と、第2の振幅関数を振幅係数として持つ第2の交流出力信号とをそれぞれ生成するものである請求項1に記載の回転型位置検出装置。
【請求項4】 前記基準電圧を発生する回路は、前記磁気応答部材の変位の影響を受けない位置に配置された所定インピーダンスのコイルを含む請求項1乃至3のいずれかに記載の回転型位置検出装置。
【請求項5】 前記コイル部が、1回転内の限られた所定の角度範囲に設けられており、該限られた所定の角度範囲における回転位置の検出を行う請求項1乃至4のいずれかに記載の回転型位置検出装置。
【請求項6】 前記コイル部の各コイルは磁性体コアを含み、該磁性体コアと前記磁気応答部材との空隙の間隔又は面積が回転に応じて変化することで、前記コイルのインピーダンス変化が生ぜしめられる請求項1乃至5のいずれかに記載の回転型位置検出装置。
【請求項7】 前記コイル部の各コイルの磁性体コアの端部は回転軸のスラスト方向を指向していて、前記磁気応答部材との空隙は回転軸のスラスト方向に関して形成されるものである請求項6に記載の回転型位置検出装置。
【請求項8】 前記コイル部の各コイルの磁性体コアの端部は回転軸のラジアル方向を指向していて、前記磁気応答部材との空隙は回転軸のラジアル方向に関して形成されるものであり、検出対象回転軸のスラスト方向の機械的ぶれの影響を受けにくいことを特徴とする請求項6に記載の回転型位置検出装置。
【請求項9】 交流信号で励磁される少なくとも2対のコイルを配置してなるコイル部であって、1つのコイル対における各コイルは所定の回転角に対応する間隔で離隔されて配置されており、前記コイル部に対して相対的に回転変位するよう配置された磁気応答部材であって、検出対象の回転に応じて該部材と前記コイル部との相対的回転位置が変化し、この相対的回転位置に応じて前記コイルのインピーダンスを変化させ、このインピーダンス変化に基づき前記相対的回転位置が所定の回転角範囲にわたって変化する間で前記コイルに生じる電圧が増減変化するようにし、1つのコイル対における各コイルの電圧の増減変化が差動的な特性を示すようにしたものと、各コイル対毎に各コイルに生じる電圧の差をそれぞれ取り出し、所定の周期的振幅関数を振幅係数として持つ交流出力信号を各コイル対毎に生成する回路であって、前記各交流出力信号の前記周期的振幅関数はその周期特性において所定位相だけ異なっているものとを具えた回転型位置検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図8】
【図11】
【図2】
【図3】
【図5】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図8】
【図11】
【公開番号】特開2001−235307(P2001−235307A)
【公開日】平成13年8月31日(2001.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−70795(P2000−70795)
【出願日】平成12年3月14日(2000.3.14)
【出願人】(591054196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成13年8月31日(2001.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成12年3月14日(2000.3.14)
【出願人】(591054196)
【Fターム(参考)】
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