説明

回転駆動機構の取付構造

【課題】歯車間のバックラッシの調整を作業者の経験等に依存することなく簡単に行うことができる回転駆動機構の取付構造を提供する。
【解決手段】従動回転機構20の第1歯車21と、回転駆動機構の1種である減速機40の第2歯車41とを噛合させる際のバックラッシを調整する。フレーム50の減速機取付部30に、同一円周上に位置するように等間隔で複数のボルト挿通孔80を形成し、減速機40のケーシング43にボルト挿通孔80と連通するように第2歯車41の回転中心に対して偏心した同一円周上に位置する複数のネジ穴70を形成する。ネジ穴70とボルト挿通孔80とが連通するようにケーシング43の取付位置を変更し、その際に第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシが所望の値となる状態を選び、ボルト挿通孔80を通してネジ穴70にボルト75を螺合し、ケーシング43を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーク溶接ロボット等の産業用ロボットの関節軸等に用いられる回転駆動機構の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットの1種であるアーク溶接ロボットとして、6軸関節構造を有するものが広く用いられており、各軸(各関節)の駆動には、モータの回転を直接に用いる直接駆動と、モータの回転をベルトや減速機等を介して用いる伝達駆動とが、適宜、使い分けられている。
【0003】
ここで、伝達駆動の形態としては、所定のアームを回動させる従動回転機構の従動回転軸に歯車(第1歯車)を取り付け、減速機の出力側回転軸に取り付けられた歯車(第2歯車)を第1歯車と噛合させ、減速機の入力側回転軸に取り付けられたプーリにベルトを用いてモータの回転を伝達する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、所定のアームを回動させる従動回転機構の従動回転軸に歯車(第1歯車)を取り付け、減速機の出力側回転軸に取り付けられた歯車(第2歯車)と第1歯車とを噛合させ、減速機の入力側回転軸に取り付けられた歯車(第3歯車)に、モータの駆動軸に取り付けられた歯車(第4歯車)を噛合させた構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。これらの構成のいずれにおいても、モータの駆動軸の回転が、減速機を介して従動回転機構の第1歯車に伝達されて、従動回転軸が回転する。
【0004】
このような複数の歯車を噛合させた伝達駆動では、歯車間のバックラッシ(バックラッシュ)を適切に調整する必要がある。一般的に、従動回転軸の位置は予め決定されており、減速機の位置を調整することで、歯車間のバックラッシを調整する。
【0005】
その方法として、特許文献2には、所定位置に円弧状のスリットが形成された円板部材の一方の面の中心に基軸が設けられ、他方の面の偏心位置に減速機の出力側回転軸となる偏心軸が設けられた構造を有するフランジを用いる方法が開示されている。より詳しくは、基軸をアームのフレームの所定位置に形成された孔に回転可能に挿通させると共に、偏心軸の位置を調整しながら、スリットと連通するようにフレームに形成された複数のネジ穴にスリットを通してボルトを螺合させて、円板部材をフレームに固定する。これにより、従動回転機構の第1歯車と偏心軸に取り付けられる第2歯車とのバックラッシを調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−169389号公報
【特許文献2】特開平6−297377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示されたバックラッシの調整方法では、減速機の出力側回転軸となる偏心軸の位置調整は、作業者の経験や勘に頼って行われるため、作業者によって減速機の取付位置が異なりやすい。この場合、減速機が必ずしも適切な位置に取り付けられるとは限らず、また、アームの回動性能がアーク溶接ロボットごとにばらつくおそれがある。さらに、一旦、円板部材をフレームに対して位置決めしても、円板部材をフレームに固定するためのボルト締めの作業中に、円板部材がフレームに対してずれるおそれもある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、歯車間のバックラッシの調整を作業者の経験等に依存することなく一定の条件で行うことができる回転駆動機構の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る回転駆動機構の取付構造は、産業用ロボットの所定のアームに設けられた従動回転機構を駆動するための回転駆動機構を、前記アームを構成するフレームに位置調整して取り付ける取付構造であって、前記従動回転機構は、前記フレームに回転自在に設けられた従動回転軸と、前記従動回転軸に軸支された第1歯車と、を備え、前記回転駆動機構は、前記第1歯車と噛合して前記第1歯車を回転させる第2歯車と、前記第2歯車を軸支する駆動回転軸と、前記駆動回転軸を回転自在に保持して前記フレームに取り付けられるケーシングと、を備え、前記フレームは、同一円周上に位置するように所定間隔で形成された複数のボルト挿通孔を有し、前記ケーシングは、前記複数のボルト挿通孔と連通可能となるように、前記駆動回転軸の軸中心から所定距離離れた点を中心とした同一円周上に位置するように所定間隔で形成された複数のネジ穴を有し、前記複数のネジ穴と前記複数のボルト挿通孔とが連通するようにして、前記フレームに対して前記ケーシングがボルトを用いて取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、前記複数のネジ穴と前記複数のボルト挿通孔とが連通するように前記フレームに対する前記ケーシングの取付位置を逐次変更し、その際に前記第1歯車と前記第2歯車との間のバックラッシが所望の値又は前記所望の値に近い値となる状態を選んで前記ケーシングを位置決めし、前記ボルト挿通孔を通して前記ネジ穴に所定のボルトを螺合することにより前記ケーシングが前記フレームに取り付けられる。このとき、回転駆動機構のケーシング取付位置が、ネジ穴の数と位置によって限定されるため、回転駆動機構を位置調整する作業者の経験や勘に依存してその取付位置が異なるということがなく、従動回転機構の第1歯車と回転駆動機構の第2歯車との間のバックラッシを所定値の状態又は所定値に近い状態に、確実に調整することができる。また、フレームに対する前記ケーシングの取付位置が、前記ネジ穴と前記ボルト挿通孔によって限定されるため、このバックラッシの調整作業の労力を大きく軽減することができる。
【0011】
本発明に係る回転駆動機構の取付構造では、前記回転駆動機構が減速機であることが好ましく、この場合には、前記減速機の出力側回転軸を前記駆動回転軸とする。なお、前記駆動回転軸に軸支される前記第2歯車と、前記駆動回転軸を回転自在に保持するケーシングは、前記減速機の構成部品となる。前記減速機としては、波動歯車装置が好適に用いられる。
【0012】
このような構成においては、減速機を動作させるためにモータ等の駆動源が必要となるが、従動回転機構に対して減速機を前記の通りに位置決めしてフレームに取り付けた後には、モータと減速機との間での回転の伝達は、例えば、ベルトを用いて容易に調整することができるため、減速機自体の動作の調整を簡単に行うことができる。また、波動歯車装置はコンパクトな構造であるため、波動歯車装置を用いることによって、アームを省スペース化することができる。
【0013】
本発明に係る回転駆動機構の取付構造では、前記ケーシングにおいて前記複数のネジ穴は円周上に等間隔で形成され、かつ、前記フレームにおいて前記複数のボルト挿通孔は円周上に等間隔で形成されており、前記複数のネジ穴の数が前記複数のボルト挿通孔の数の自然数倍となっているか、又は、前記複数のボルト挿通孔の数が前記複数のネジ穴の数の自然数倍となっていることが好ましい。
【0014】
ネジ穴の数が複数のボルト挿通孔の数の自然数倍となっている構成では、フレームに形成するボルト挿通孔の数を少なく抑えながら、ケーシングの取付位置の選択肢をネジ穴の数だけ確保することができる。逆に、ボルト挿通孔の数がネジ穴の数の自然数倍となっている場合には、ケーシングに形成するネジ穴の数を少なく抑えながら、ケーシングの取付位置の選択肢をボルト挿通孔の数だけ確保することができる。
【0015】
本発明に係る回転駆動機構の取付構造は、アーク溶接用ロボットに好適に適用される。すなわち、前記産業用ロボットがアーク溶接用ロボットであって、前記所定のアームは、溶接トーチを保持する手首部材を揺動自在に支持するアームであり、前記従動回転機構の駆動によって前記手首部材が揺動自在となるように、前記手首部材が前記従動回転軸に軸支されていることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、アーク溶接用ロボットにおいて、溶接トーチの揺動性能を良好な状態に、簡単に設定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、産業用ロボットのアームを構成するフレームに、回転駆動機構を位置調整して取り付ける際に、作業者に依存してその取付位置がばらつくということがなく、これにより、従動回転機構の揺動性能を良好な状態に設定することができる。また、産業用ロボットごとの従動回転機構の揺動性能にばらつきが生じることを抑制することができる。さらに、従動回転機構の歯車と回転駆動機構の歯車との間のバックラッシを所定値の状態又は所定値に近い状態に確実に調整することができ、その調整作業の労力を大きく軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るアーク溶接ロボットの概略構成を示す側面図である。
【図2】(a)は本発明に係る手首揺動軸J5回りの駆動機構を示す概略断面図であり、(b)は(a)に記した矢印Aから見た駆動機構の側面図である。
【図3】本発明に係る減速機のケーシングに形成されたネジ穴の配置例を示す模式図である。
【図4】(a)は本発明に係る減速機取付部に形成されたボルト挿通孔の配置例を示す模式図であり、(b)は図3に示したネジ穴と(a)に示したボルト挿通孔とを連通させた状態の一例を示す模式図である。
【図5】本発明に係る各ボルト挿通孔に対して連通させるネジ穴の位置を変えた場合の第1歯車に対する第2歯車の位置の変化の形態を示す第1の模式図である。
【図6】本発明に係る各ボルト挿通孔に対して連通させるネジ穴の位置を変えた場合の第1歯車に対する第2歯車の位置の変化の形態を示す第2の模式図である。
【図7】本発明に係る各ボルト挿通孔に対して連通させるネジ穴の位置を変えた場合の第1歯車に対する第2歯車の位置の変化の形態を示す第3の模式図である。
【図8】本発明に係る各ボルト挿通孔に対して連通させるネジ穴の位置を変えた場合の第1歯車に対する第2歯車の位置の変化の形態を示す第4の模式図である。
【図9】本発明に係る減速機のケーシングに形成するネジ穴の別の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、本発明に係る回転駆動機構の取付構造を、産業用ロボットの1つであるアーク溶接ロボットの手首揺動軸に適用した形態について説明することとする。また、各構成の位置関係については、デフォルメして示し極端に記載して説明することがある。
【0020】
<アーク溶接ロボットの概略構造>
図1にアーク溶接ロボットの概略構成を表した側面図を示す。このアーク溶接ロボットは、床面に固設されたベース11と、ベース11に設けられたアーム10とを備えている。アーム10は、基台12と、第1アーム13と、第2アーム14と、手首部材15とを有している。基台12は、旋回軸J1として機能するようにベース11上に旋回可能に設けられている。基台12の上面には、第1アーム13が縦設されており、第1アーム13は、前後揺動軸J2として機能するように揺動可能となっている。
【0021】
第1アーム13は上下揺動軸J3として機能するように、自由端側において第2アーム14を回動自在に軸支している。第2アーム14は、アーム回転軸J4として機能するように回転可能であり、その自由端側に手首部材15が設けられている。手首部材15は、手首揺動軸J5及び手首回転軸J6として機能するように揺動可能及び回転可能となっている。
【0022】
手首部材15には、トーチブラケット18を介して溶接トーチ17が配設されている。このトーチブラケット18は、手首回転軸J6で駆動される手首部材15により溶接トーチ17を支持している。また、溶接トーチ17は、先端面から後端面にかけて連通されており、後端面に供給された溶接ワイヤ16を溶接トーチ17内に挿通させて先端面から送り出す、消耗電極式の構造となっている。溶接トーチ17の軸心方向と溶接ワイヤ16の長さ方向とは実質的に平行となっている。溶接ワイヤ16の送り出し方向は、手首回転軸J6の軸線に沿って(あるいは、軸線に対して一定角度で交差するように)設定されている。
【0023】
このように構成されたアーク溶接ロボットでは、各軸J1〜J6により複数の自由度を備えることによって、3次元からなる空間座標(X,Y,Z)の任意の位置に溶接ワイヤ16の先端を移動させることができる。
【0024】
<手首揺動軸J5回りの構造>
図2(a)に手首揺動軸J5回りの駆動機構を表した概略断面図を示し、図2(b)に図2(a)に記した矢印Aから見た駆動機構の概略側面図を示す。なお、図2(a)に示した矢印Bは、後に説明する図3及び図4(a),(b)の矢視方向を示すものである。また、手首揺動軸J5回りの駆動機構が配設される第2アーム14には、手首揺動軸J5回りの駆動機構と干渉しないように、手首回転軸J6の駆動機構が配設されるが、これについては図示を省略している(図4〜8についても同様)。
【0025】
アーク溶接ロボットのアームの1つである第2アーム14を構成するフレーム50は、その内部に第2アーム14の長手方向に延びる空洞部51を備えた構造を有している。そして、フレーム50には、従動回転機構20と、従動回転機構20を直接に駆動する回転駆動機構としての減速機40と、この減速機40を動作させるためのモータ60と、が配設されている。手首揺動軸J5回りの駆動機構では、モータ60の駆動軸の回転が減速機40に入力され、減速機40において減速された回転出力によって、従動回転機構20が駆動される。
【0026】
〔従動回転機構〕
従動回転機構20は、第2アーム14の先端近傍に配設されている。従動回転機構20は、フレーム50に回転自在に取り付けられた従動回転軸22と、従動回転軸22に軸支された第1歯車21と、を備えている。従動回転軸22の一端は手首部材15に固定されており、従動回転軸22の回転によって手首部材15が揺動する。従動回転軸22は、ベアリング等を有する保持部材23に保持されており、中心軸Q(手首揺動軸J5と同義となる)回りに回転自在である。なお、第1歯車21としては平歯車が好適に用いられ、本実施形態では図2(b)に示されるように、平歯車が用いられているものとする。
【0027】
〔減速機(回転駆動機構)〕
第2アーム14の長手方向に沿って従動回転機構20と並ぶように、フレーム50に減速機40が配設されている。減速機40は、第1歯車21と噛合する第2歯車41と、第2歯車41を軸支する駆動回転軸45と、駆動回転軸45を回転自在に保持するケーシング43と、を備えている。第1歯車21が平歯車である場合には、第2歯車41としても平歯車が用いられる(図2(b)参照)。駆動回転軸45は減速機40における出力側回転軸であり、駆動回転軸45に取り付けられた第2歯車41が回転することにより、第2歯車41と噛合している第1歯車21が回転し、従動回転軸22を回転させることができる。
【0028】
減速機40を動作させるための入力側構成要素として、減速機40は、プーリ44と、このプーリ44を軸支する回転軸42とを備えており、回転軸42の回転は変換部46によって駆動回転軸45の回転へと変換される。回転軸42と駆動回転軸45とは、共通の中心軸Q回りに回転自在となるように、同軸に配置されている。
【0029】
減速機40としては、波動歯車装置が好適に用いられる。波動歯車装置は、減速比が大きく、小型かつ軽量で大きなトルク容量を有しており、構成部品点数も少ないことから、第2アーム14を軽量化したり、細く構成したりすることが可能になる。また、波動歯車装置は、同時噛み合い歯数が多いことから、歯のピッチ誤差や累積ピッチ誤差の回転精度への影響が平均化されるために高い位置精度と回転精度が得られる等の優れた特徴を有している。
【0030】
ケーシング43は、フレーム50の一部である減速機取付部30に取り付けられる。減速機取付部30は、フレーム50における取付領域(図2では側面から一段凹んだ位置)を示しており、この原則機取付部30へのケーシング43の取付方法については、後に、図3〜9を参照して詳細に説明することとし、ここではその概要を説明する。図2(a)に示されるように、ケーシング43には複数箇所にネジ穴70(後記するネジ穴70a〜70hを総称する)が設けられており、減速機取付部30には、ネジ穴70と連通可能な位置にボルト挿通孔80(後記するボルト挿通孔80a〜80hを総称する)が形成されている。ボルト挿通孔80を通してボルト75をネジ穴70に螺合させることにより、減速機取付部30にケーシング43が取り付けられる。
【0031】
〔モータ〕
第2アーム14の長手方向に沿って、減速機40の横にモータ60が配設されている。モータ60の本体部分はフレーム50に取り付けられており、モータ60の駆動軸62が空洞部51へ突出し、駆動軸62に軸支されたプーリ61が空洞部51に位置している。モータ60のプーリ61と減速機40のプーリ44との間には、ベルト63が一定の張力の掛かった状態で架け渡されており、モータ60の駆動軸62の中心軸Q回りの回転が減速機40のプーリ44へ伝達され、プーリ44を軸支する回転軸42の回転速度が変換部46によって減速されて駆動回転軸45が回転し、第2歯車41を回転させる。これにより、第2歯車41と噛合している第1歯車21が回転し、第1歯車21を軸支する従動回転軸22が回転し、手首部材15が揺動する。
【0032】
〔第1歯車と第2歯車との間のバックラッシの調整方法〜減速機取付部に対するケーシングの位置調整と取付方法〕
第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシの調整方法、すなわち、減速機取付部30に対するケーシング43の位置調整と取付方法について、図3〜図8を参照して説明する。図3はケーシングに形成されたネジ穴の配置を示す模式図であり、図2(a)に示されている矢印Bから見た図である。図4(a)は減速機取付部に形成されたボルト挿通孔の配置を示す模式図であり、図2(a)に示されている矢印Bから見た図である。図4(b)は、図3に示したネジ穴と図4(a)に示したボルト挿通孔とを連通させた状態の一例を示す模式図である。また、図5は、各ボルト挿通孔に対して連通させるネジ穴の位置を変えた場合の第1歯車に対する第2歯車の位置の変化の形態を示す第1の模式図であり、図6は第2の模式図であり、図7は第3の模式図であり、図8は第4の模式図である。
【0033】
図3〜図8では、図2(a)に示した矢印Bの方向から見たときの従動回転軸22の中心軸Qの位置を回転中心qで示し、駆動回転軸45の中心軸Qの位置を回転中心qで示している。回転中心qは第1歯車21の回転中心であり、回転中心qは第2歯車41の回転中心であるから、以下の説明において、適宜、「第1歯車21の回転中心q」、「第2歯車41の回転中心q」ということとし、図3〜図8では従動回転軸22と駆動回転軸45に代えて、第1歯車21と第2歯車41を模式的に図示することとする。図3〜8では、第1歯車21と第2歯車41について、歯(歯車として機能する外周の凹凸(図2(b)参照))の詳細な描画を省略し、第1歯車21については円弧M,M間の領域が、第2歯車41については円弧N,N間の領域がそれぞれ、歯(凹凸)の領域であるものとする。
【0034】
図3に示されるように、ケーシング43においては、第2歯車41の回転中心qから径方向に距離Sだけ離れた点P(以下「中心点P」という)を中心とした半径rの円周C上の8箇所に等間隔で、ネジ穴70a,70b,70c,70d,70e,70f,70g,70h(位置を示す観点から、黒点で描くこととする)が形成されている。ここでは、ネジ穴70aとネジ穴70eとを結ぶ線上においてネジ穴70e側に第2歯車41の回転中心qが位置するように、中心点Pの位置を定めている。
【0035】
なお、距離Sの値は、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシの調整可能長さである。後記するように、この距離Sの2倍の長さの範囲内の所定値で、バックラッシを調整することができる。図3,図4(a),図5〜図8では、ケーシング43の取付位置による第1歯車21と第2歯車41の噛合領域の変化を明瞭に示すために、距離Sの値を大きく取っており、これに起因して、図3〜図8では、第1歯車21と第2歯車41の各歯(凹凸)の領域を広く取っている。
【0036】
図4(a)に示されるように、減速機取付部30においては、第1歯車21の回転中心qから一定の距離Rだけ離れた点P(以下「中心点P」という)を中心とした半径rの円周C上の8箇所に等間隔で、ボルト挿通孔80a,80b,80c,80d,80e,80f,80g,80hが形成されている。この距離Rは不変であり、第1歯車21と第2歯車41の各直径、歯の深さを考慮して定められる。
【0037】
第1歯車21の回転中心qと円周Cの中心点Pとを結ぶ方向をX方向とし、このX方向及び中心軸Q(中心軸Qは、回転中心qを通り、紙面に垂直である)と直交する方向をY方向とする。さらに、円周Cの中心点Pを原点として、第2歯車41の回転中心qの位置を示すX−Y座標系を、図4(a)に示した通りに定める(図5〜図8において同様)。
【0038】
図4(b)に示されるように、ネジ穴70とボルト挿通孔80は共に半径rの円周C,C上に同じ間隔で同じ数だけ形成されているので、[ボルト挿通孔80−ネジ穴70]の組合せが、例えば、[80a−70a],[80b−70b],・・・,[80g−70g],[80h−70h]となるように、ケーシング43を減速機取付部30にボルト75(図2(a)参照)を用いて取り付けることができる。
【0039】
前記したように、第1歯車21の回転中心qと減速機取付部30に設定された円周Cの中心点Pとの距離はRで一定であり、前記したように、qとPの距離はSであるため、図4(b)に示された状態で、図4(a)で定めたX−Y座標系にしたがって、第2歯車41の回転中心qの座標(X,Y)を定めると、その座標は(X,Y)=(S,0)となる。つまり、第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとの距離は“R+S”となる。
【0040】
手首揺動軸J5回りの駆動機構では、減速機40の減速機取付部30への取り付けに際して、[ボルト挿通孔80−ネジ穴70]の組合せを変えることによって、第2歯車41の回転中心qの座標が変わる。これによる第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとの距離の変化を利用して、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシを調整する。これについて図5〜8を参照しながら、さらに詳細に説明する。
【0041】
図5(a)には図4(b)と同じ状態が示されている。第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとのX方向距離は“R+S”である。この図5(a)は、第2歯車41を第1歯車21に最も遠ざけて配置した状態を示している。
【0042】
図5(b)は、図5(a)に示した状態からケーシング43を左回り(反時計回り)に45°回転させて、[ボルト挿通孔80−ネジ穴70]の組合せが、[80a−70h],[80b−70a],・・・,[80g−70f],[80h−70g]となるように、ケーシング43を減速機取付部30に取り付けた状態を示しており、第2歯車41の回転中心qの座標(X,Y)は(S/21/2,S/21/2)となる。図5(b)に示した状態では、第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとのX方向における距離は“R+S/21/2”となる。つまり、図5(b)に示した状態は、図5(a)に示した状態と対比すると、第2歯車41を第1歯車21に距離“S−(S/21/2)”だけX方向で近付けることにより、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシが調整された状態を示している。
【0043】
ここで、図5(b)に示される状態では、第2歯車41はY方向にも“S/21/2”だけ変位して配置された状態となる。このような状態、つまり、本来ならY方向にずれることなくX方向のみに変位した状態であればより良いが、Y方向(例えば、上下方向)にずれたとしてもX方向にも変位して、X、Y方向に変位した状態になっても、第1歯車21と第2歯車41との噛合状態に何ら悪影響は生じない。これは、第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとの距離が一定であると仮定すると、第1歯車21の径方向のどの方向に第2歯車41が配置されても、第1歯車21と第2歯車41との噛合状態は実質的に同じとなるから、図5(b)に示される状態は、第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとの距離が、当初は“R+S”であったものを、“[(R+S/21/2+(S/21/21/2”となるように、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシを調整したものに他ならないからである。
【0044】
ケーシング43の減速機取付部30への取り付けにおいては、第2歯車41が、図5,6に示されるように+Y方向に変位しようと、図7,8に示されるように−Y方向に変位しようと、その変位量の絶対値は、第2歯車41の回転中心qのX方向座標に応じて一義的に決定される。そのため、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシの調整においては、第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとの実際の距離をその調整のためのパラメータとすることなく、第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとのX方向距離を調整対象とすることができる。
【0045】
図6(a)は、図5(a)に示した状態からケーシング43を左回りに90°回転(図5(b)に示した状態からケーシング43を左回りに45°回転)させて、[ボルト挿通孔80−ネジ穴70]の組合せが、[80a−70g],[80b−70h],・・・,[80g−70e],[80h−70f]となるように、ケーシング43を減速機取付部30に取り付けた状態を示しており、第2歯車41の回転中心qの座標(X,Y)は(0,S)となる。図6(a)に示した状態では、第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとのX方向距離は“R”となる。つまり、図6(a)に示した状態は、図5(a)に示した状態と対比すると、第2歯車41を第1歯車21に距離“S”だけX方向で近付けることにより、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシが調整された状態を示している。
【0046】
なお、図6(a)に示される状態は、第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとの距離が“(R+S1/2”となるように、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシを調整したものに他ならない。
【0047】
図6(b)は、図5(a)に示した状態からケーシング43を左回りに135°回転(図6(a)に示した状態からケーシング43を左回りに45°回転)させて、[ボルト挿通孔80−ネジ穴70]の組合せが、[80a−70f],[80b−70g]・・・[80g−70d],[80h−70e]となるように、ケーシング43を減速機取付部30に取り付けた状態を示しており、第2歯車41の回転中心qの座標(X,Y)は(−S/21/2,S/21/2)となる。図6(b)に示した状態では、第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとのX方向距離は“R−(S/21/2)”となる。つまり、図6(b)に示した状態は、図5(a)に示した状態と対比すると、第2歯車41を第1歯車21に距離“S+(S/21/2)”だけX方向で近付けることにより、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシが調整された状態を示している。
【0048】
なお、図6(b)に示される状態は、第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとの距離が“[(R−S/21/2+(S/21/21/2”となるように、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシを調整したものに他ならない。
【0049】
図7(a)は、図5(a)に示した状態からケーシング43を左回りに180°回転(図6(b)に示した状態からケーシング43を左回りに45°回転)させて、[ボルト挿通孔80−ネジ穴70]の組合せが、[80a−70e],[80b−70f]・・・[80g−70c],[80h−70d]となるように、ケーシング43を減速機取付部30に取り付けた状態を示しており、第2歯車41の回転中心qの座標(X,Y)は(−S,0)となる。図7(a)に示した状態では、第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとのX方向距離(第2歯車41の回転中心qのY座標は0(零)であるから実際の距離に等しい)は“R−S”となる。つまり、図7(a)に示した状態は、図5(a)に示した状態と対比すると、第2歯車41を第1歯車21に距離“2S”だけX方向で近付けることにより、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシが調整された状態を示している。
【0050】
図7(b)は、図5(a)に示した状態からケーシング43を左回りに225°回転(図7(a)に示した状態からケーシング43を左回りに45°回転)させて、[ボルト挿通孔80−ネジ穴70]の組合せが、[80a−70d],[80b−70e]・・・[80g−70b],[80h−70c]となるように、ケーシング43を減速機取付部30に取り付けた状態を示しており、第2歯車41の回転中心qの座標(X,Y)は(−S/21/2,−S/21/2)となる。図7(b)に示した状態では、第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとのX方向における距離は“R+S1/2”となる。つまり、図7(b)に示した状態は、図5(a)に示した状態と対比すると、第2歯車41を第1歯車21に距離“S+S/21/2”だけX方向に近付けることにより、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシが調整された状態を示している。
【0051】
なお、図7(b)に示した第1歯車21と第2歯車41との噛合状態は、図6(b)に示した第1歯車21と第2歯車41との噛合状態と同等となる。
【0052】
図8(a)は、図5(a)に示した状態からケーシング43を左回りに270°回転(図7(b)に示した状態からケーシング43を左回りに45°回転)させて、[ボルト挿通孔80−ネジ穴70]の組合せが、[80a−70c],[80b−70d]・・・[80g−70a],[80h−70b]となるように、ケーシング43を減速機取付部30に取り付けた状態を示しており、第2歯車41の回転中心qの座標(X,Y)は(0,−S)となる。図8(a)に示した状態では、第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとのX方向距離は“R”となる。つまり、図8(a)に示した状態は、図5(a)に示した状態と対比すると、第2歯車41を第1歯車21に距離“S”だけX方向で近付けることにより、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシが調整された状態を示している。
【0053】
なお、図8(a)に示した第1歯車21と第2歯車41との噛合状態は、図6(a)に示した第1歯車21と第2歯車41との噛合状態と同等となる。
【0054】
図8(b)は、図5(a)に示した状態からケーシング43を左回りに315°回転(図8(a)に示した状態からケーシング43を左回りに45°回転)させて、[ボルト挿通孔80−ネジ穴70]の組合せが、[80a−70b],[80b−70c]・・・[80g−70h],[80h−70a]となるように、ケーシング43を減速機取付部30に取り付けた状態を示しており、第2歯車41の回転中心qの座標(X,Y)は(S/21/2,−S/21/2)となる。図8(b)に示した状態では、第1歯車21の回転中心qと第2歯車41の回転中心qとのX方向距離は“R+S/21/2”となる。つまり、図8(b)に示した状態は、図5(a)に示した状態と対比すると、第2歯車41を第1歯車21に距離“S−S/21/2”だけX方向に近付けることにより、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシが調整された状態を示している。
【0055】
なお、図8(b)に示した第1歯車21と第2歯車41との噛合状態は、図5(b)に示した第1歯車21と第2歯車41との噛合状態と同等となる。
【0056】
図8(b)に示した状態からケーシング43を左回りに45°回転させると、図5(a)に示した状態に戻る。
【0057】
このように、ケーシング43を減速機取付部30に取り付ける際のバックラッシの調整量が取り得る値は、連続値ではなく、段階的な値となる。そのため、図5〜8に示される状態のうちのどの状態を、ケーシング43の減速機取付部30に対する取付位置として決定し、実際に取り付けるかは、第1歯車21と第2歯車との間のバックラッシについて予め定められた調整量を基準として行われる。
【0058】
具体的には、図5〜8に示される各状態(取付位置)を、減速機取付部30にケーシング43を仮止めする等して実現し、各状態での第1歯車21と第2歯車41のバックラッシを計測する。つまり、ネジ穴70とボルト挿通孔80とを個々に連通するように、ボルト挿通孔80a〜80hを結ぶ円周Cの中心点Pに対して第2歯車41の回転中心q(駆動回転軸45の中心軸Q)の位置をずらした状態(偏心状態)を作り、そのときの第1歯車21と第2歯車41のバックラッシを計測する。そして、ケーシング43がどのポジションにあるときにバックラッシの計測値が予め定められた調整量又はこの調整量に近い値となるかを判断し、1つのポジションを決定する。こうして決定されたポジションで、ボルト挿通孔80を通してネジ穴70に所定のボルト75を螺合し、ケーシング43を減速機取付部30に取り付ける。
【0059】
なお、ケーシング43を45°回転させた前後でのバックラッシの計測値が2つのポジションで同じである場合(微差により実質的に同じとみなせる場合を含む)には、いずれのポジションを選択しても、第2アーム14の駆動性能に影響はない。ベルト63のテンションの調整は、減速機40の位置決めが終了した後に行えばよい。
【0060】
このような第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシの位置調整、取付方法によれば、減速機40を位置調整してフレーム50に取り付ける際に、作業者に依存してその取付位置が異なるということがない。これにより、アーク溶接ロボットの手首部材の揺動性能を良好な状態に確保することができる。また、アーク溶接ロボットごとの手首部材15の揺動性能にばらつきが生じることを抑制することができる。また、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシを、所定値の調整量又はこの調整量に近い値に確実に調整することができ、その際の作業労力を軽減することができる。
【0061】
[ケーシングに形成されるネジ穴の別の実施形態]
図9に減速機のケーシングに形成するネジ穴の別の実施形態を表した模式図を示す。この図9は、図3と同じ態様で描かれている。このケーシング43には、16カ所のネジ穴70a〜70pが、円周C上に等間隔で形成されている。このように、円周C上に形成するネジ穴70の数を多くすることにより、第1歯車21と第2歯車41との間のバックラッシの調整を、より精密に行うことができるようになる。
【0062】
16カ所のネジ穴70a〜70pをケーシング43に形成した場合でも、減速機取付部30に形成するボルト挿通孔の数は、図4(a)に示される8カ所のままでよい。ネジ穴70の数がボルト挿通孔80の数の自然数倍となっていれば、全てのボルト挿通孔80が必ずネジ穴70と連通し、ケーシング43の減速機取付部30への取付位置の選択肢をネジ穴70の数だけ確保することができる。
【0063】
逆に、図示はしないが、ボルト挿通孔80の数がネジ穴70の数の自然数倍となっていてもよい。この場合には、ケーシング43に形成されたネジ穴70の全てが、常にボルト挿通孔80と連通した状態を作り出すことができるので、ケーシング43の取付位置の選択肢をボルト挿通孔80の数だけ確保することができる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について、ケーシング43のネジ穴70をケーシング43に設ける回転軸42の同心円から偏心した位置となるように形成する構成として説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではない。例えば、減速機40のケーシング43においてネジ穴70を1つの円周C上に設け、かつ、減速機取付部30においてボルト挿通孔80を1つの円周C上に設けたが、ネジ穴70とボルト挿通孔80を数多く設ける場合には、これらを同心円の2つの円周上に分けて形成してもよい。例えば、図9に示したケーシング43では、ネジ穴70i〜70pを、円周Cとは異なる半径の円周上に配置する。このとき、中心角(70a−P−70i),(70i−P−70b),・・・,(70h−P−70p),(70p−P−70a)の各角度が同じとなるように、ネジ穴70i〜70pを位置決めする。そして、減速機取付部30には、ネジ穴70i〜70pに対応するボルト挿通孔80をさらに形成すればよい。
【0065】
また、本発明に係る回転駆動機構の取付構造を、アーク溶接ロボットの関節軸に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られず、その他各種の産業用ロボット(スポット溶接ロボット、組み立てロボット、搬送ロボット等)の関節軸に適用することができる。また、回転駆動機構として減速機を用いた形態について説明したが、回転駆動機構としてモータを直接に用いてもよく、モータの位置調整と取り付けに、本発明に係る回転駆動機構の取付構造を用いることもできる。
【0066】
さらに、第1歯車21と第2歯車41として平歯車を例示したが、第1歯車21と第2歯車41は、前記した第1歯車21と第2歯車41のバックラッシの調整方法を実施できるものであればよく、例えば、テーパ歯車であってもよい。減速機40として、入力側回転軸(回転軸42)と出力側回転軸(駆動回転軸45)とが同軸構造となっているものを示したが、これらが平行軸となっているものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0067】
14 第2アーム
20 従動回転機構
21 第1歯車
22 従動回転軸
30 減速機取付部
40 減速機(回転駆動機構)
41 第2歯車
42 回転軸
43 ケーシング
44 プーリ
45 駆動回転軸
46 変換部
50 フレーム
60 モータ
61 プーリ
62 駆動軸
63 ベルト
70,70a〜70p ネジ穴
75 ボルト
80,80a〜80h ボルト挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットの所定のアームに設けられた従動回転機構を駆動するための回転駆動機構を、前記アームを構成するフレームに位置調整して取り付ける取付構造であって、
前記従動回転機構は、前記フレームに回転自在に設けられた従動回転軸と、前記従動回転軸に軸支された第1歯車と、を備え、
前記回転駆動機構は、前記第1歯車と噛合して前記第1歯車を回転させる第2歯車と、前記第2歯車を軸支する駆動回転軸と、前記駆動回転軸を回転自在に保持して前記フレームに取り付けられるケーシングと、を備え、
前記フレームは、同一円周上に位置するように所定間隔で形成された複数のボルト挿通孔を有し、
前記ケーシングは、前記複数のボルト挿通孔と連通可能となるように、前記駆動回転軸の軸中心から所定距離離れた点を中心とした同一円周上に位置するように所定間隔で形成された複数のネジ穴を有し、
前記複数のネジ穴と前記複数のボルト挿通孔とが連通するようにして、前記フレームに対して前記ケーシングがボルトを用いて取り付けられていることを特徴とする回転駆動機構の取付構造。
【請求項2】
前記回転駆動機構は減速機であり、
前記減速機の出力側回転軸を前記駆動回転軸とすることを特徴とする請求項1に記載の回転駆動機構の取付構造。
【請求項3】
前記減速機は、波動歯車装置であることを特徴とする請求項2に記載の回転駆動機構の取付構造。
【請求項4】
前記ケーシングにおいて前記複数のネジ穴は円周上に等間隔で形成され、かつ、前記フレームにおいて前記複数のボルト挿通孔は円周上に等間隔で形成されており、
前記複数のネジ穴の数が前記複数のボルト挿通孔の数の自然数倍となっているか、又は、前記複数のボルト挿通孔の数が前記複数のネジ穴の数の自然数倍となっていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転駆動機構の取付構造。
【請求項5】
前記産業用ロボットがアーク溶接用ロボットであって、
前記所定のアームは、溶接トーチを保持する手首部材を揺動自在に支持するアームであり、
前記従動回転機構の駆動によって前記手首部材が揺動自在となるように、前記手首部材が前記従動回転軸に軸支されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転駆動機構の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−20214(P2011−20214A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167136(P2009−167136)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】