説明

圧力センサー

【課題】加速度センサーを内部に有することにより、圧力センサーと加速度センサーを別個設けることを不要として、またこの加速度センサーの耐湿性を向上させた圧力センサーを提供する。
【解決手段】TFT基板1及び対向基板5の対向する面上に、夫々下部容量電極2及び対向基板容量電極6が設けられており、両基板の周辺部にシール材7を設け、このシール材7により、両基板間が所定の間隔になるようにシール材7により囲まれた空間が密封されている。この圧力センサーは、基板に加わる圧力を下部容量電極2と対向基板容量電極6間の容量変化から計測するが、圧力センサー内部のTFT基板上1に加速度センサー3が組み込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサーを内部に有する圧力センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
近時の技術発展に伴い、圧力センサー装置が実用化されている。従来の圧力センサーとしては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。図6は、特許文献1に記載の圧力感知素子の構造を示す断面図である。図6に示すように、この従来の圧力センサーは、対向する一対のダイヤフラム100の周辺部の間にスペーサ101を配置し、ダイヤフラム100が適長間隔をおいて対向するように形成されている。ダイヤフラム100はガラス、セラミック又は金属等からなる。但し、ダイヤフラム100が導電性でない場合には、対向する内面に電極(図示せず)が設けられる。この従来の圧力センサーにおいては、ダイヤフラム100に外部から圧力が加わると、ダイヤフラム100が撓み、ダイヤフラム100間の容量が次第に増加する。この容量を計測することで、印加された圧力を測定することができる。なお、特許文献1では、線温度係数ができるだけ小さい材料からなるスペーサ101を用いることで容量自体の温度変化を抑制し、更に、ダイヤフラムとして適切な材料を選択することで撓み量の温度変化も抑制し、これにより、温度変化の影響の少ない圧力センサーが得られるとしている。
【0003】
また、特許文献2には、圧力検知センサーとしての容量値検出センサーを設けた液晶表示装置が開示されている。この液晶表示装置は、対向配置された第1基板と第2基板との間に液晶層が設けられて構成された表示エリアにおいて、その各画素における第1基板の液晶層側の面に、各画素に加わる圧力を検知し、その検知したデータを出力する圧力検知センサーが設けられている。
【0004】
【特許文献1】特開昭56−27630号公報
【特許文献2】特開平11−259234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来の技術においては、圧力センサーの内部に別の種類のセンサーを作り込むことはなかった。即ち、圧力センサーと、例えば加速度センサーは別々のデバイスとして供給される。このような一例として、従来のTPMS(Tire Pressure Monitoring System)が挙げられる。そこでは、省電力動作のためにタイヤが回転してからタイヤの圧力センシング回路及びデータ送受信回路が動作する仕様となっており、圧力を計測するためには、タイヤの回転を検知するための加速度センサーを別に用意する必要があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、加速度センサーを内部に有することにより、圧力センサーと加速度センサーを別個設けることを不要として、またこの加速度センサーの耐湿性を向上させた圧力センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る圧力センサーは、第1の基板と、この第1の基板に対向して配置された第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間の空間を外部から遮蔽するシール材と、前記第1の基板と前記第2の基板の対向する面上に夫々形成され前記第1及び第2の基板に加わる圧力を容量変化として検出する第1及び第2の電極と、前記第1又は第2の基板の前記シール材に囲まれた領域の対向面上に形成された加速度センサーと、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明においては、対向する絶縁性基板の対向する面に夫々第1及び第2の電極を設け、両基板間の空間をシール材で密封する。基板に圧力が加わると第1及び第2電極間の距離が変化し、これに応じて容量も変化する。圧力センサーはこの容量の変化から圧力を測定する。また、本発明に係る圧力センサーにおいては、シール材に囲まれた密封空間内に加速度センサーが組み込まれているので、この加速度センサーの耐湿性が著しく向上する。
【0009】
加速度センサーは、上部電極と下部電極とを有し、上部電極と下部電極との電極間隔が加速度により変わる構造を持ち、それに伴う容量の変化から加速度を検出する加速度センサーとすることができる。
【0010】
また、第1又は第2の基板は回路素子及び検出回路が形成された基板とすることもでき。更に、第1又は第2の基板はTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)基板とすることができ、また、加速度センサーをTFT基板上に設けることができる。
【0011】
回路素子及びこれらの回路素子から構成される検出回路は、第1及び第2の基板とシール材により密閉された圧力センサーの内部に形成されており、回路素子及びこれらの回路素子から構成される検出回路の耐湿性が著しく向上する。また、TFT基板に対しても同様の効果が得られる。
【0012】
更に、第1又は第2の基板上のシール材の内側に温度センサーを設けることもできる。圧力センサーの内部に加速度センサー及び温度センサーを有することで、両センサーの耐湿性が向上する。また、温度センサーをTFT基板上に設けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、圧力センサーの内部には、加速度センサーが密閉されて形成されており、加速度センサーの耐湿性を著しく向上させることができる。また、圧力センサーを構成する基板に回路素子及びこれらの回路素子から構成される検出回路が形成されていれば、回路素子及び検出回路の耐湿性も向上し、更に、圧力センサーの内部に温度センサーが設けられていれば、温度センサーの耐湿性も著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照にして具体的に説明する。まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る圧力センサーを示す縦断面図であり、図2(a)は、図1に示す加速度センサーの構造を示す縦断面図であり、図2(b)はその平面図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る圧力センサーには、TFT基板1及び対向基板5が相互に平行に設置されており、両基板の間にはシール材7が設けられている。また、TFT基板1上には下部容量電極2が設けられ、対向基板5のTFT基板1と対向する面上には対向基板容量電極6が設けられている。TFT基板1と対向基板5は所定の電極間隔となるようにシール材7によって周囲が密閉されている。更に、シール材7の内側でTFT基板1上には、加速度によって電極間隔が変化することにより、容量の変化から加速度を検出する加速度センサー3が設けられている。対向基板容量電極6はトランスファー8を介してTFT基板1の対応する電極パターンと電気的に接続されており、回路素子により構成された検出回路により容量又は圧力が検出され、更に、送信回路により容量又は圧力のデータが外部に送信される。
【0016】
次に、加速度センサー3の構成及びその製造方法について説明する。図2(a)は、加速度センサー3の構造を示す縦断面図であり、図2(b)はその平面図である。図2(a)に示すように、ガラス基板9上に、保護膜10としてCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気層成長)法により酸化膜を例えば約100nm成長させた後、リンドープポリシリコンゲート電極11及びCr(クロム)ゲート電極12からなる積層ゲート電極を連続成膜し、フォトレジスト工程及びエッチング工程により所定の形状にパターニングする。ゲート電極上には、層間膜13として酸化膜をCVD法により例えば100nm成膜させ、次に、上部電極14となるITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を例えば50nmの厚さにスパッタにより成膜し、フォトレジスト工程及びエッチング工程によりパターニングする。その後、フォトレジスト工程及びエッチング工程により、Crゲート電極12と上部電極14との間の層間膜を除去して、電極間のギャップを形成する。なお、上部電極14としては、塑性変形しにくい硬い材質の導電体が用いられ、Cr、Mo(モリブデン)又はこれらの化合物等を用いてもよい。
【0017】
また、図2(b)に示すように、Crゲート電極12上には、上部電極のリード部15及び上部電極の容量電極部16からなる上部電極14が設けられており、層間膜除去領域17により電極間のギャップが形成されている。ここで、上部電極14は所定の加速度が得られるように、上部電極のリード部15を1層で撓み易くし、上部電極の容量電極部16を2層構造として重くして、電極間ギャップが加速度により変わりやすくした構造をとることもできる。
【0018】
次に、本実施形態に係る圧力センサーの動作について説明する。上述のように、圧力センサーは、TFT基板1及び対向基板5の夫々対向する面上に下部容量電極2及び対向基板容量電極6が設けられており、下部容量電極2及び対向基板容量電極6の周囲に設けられたシール材7により、このシール材7により囲まれた下部容量電極2及び対向基板容量電極6の空間が密封されている。また、このシール材7により、下部容量電極2及び対向基板容量電極6が、所定の間隔で離隔している。対向基板5に外側から圧力が加わると、電極が撓むことにより電極間の距離が変化し、これに応じて容量も変化する。圧力センサーはこの容量の変化から圧力を測定する。また、加速度センサー3は、加速度によって上部電極14が撓み、上部電極14とCrゲート電極12との間の距離が変化することによる容量変化を検出することで、加速度を測定する。
【0019】
次に、本実施形態の効果について説明する。上述の如く、本実施形態の圧力センサーの内部には加速度センサーが組み込まれている。また、TFT基板1の内面には回路素子及び検出素子が形成されている。このため、これらの加速度センサー、TFT、回路素子及び検出回路は圧力センサーの内部に密封されているので、これらの耐湿性が著しく向上する。
【0020】
なお、本実施形態においては、下部容量電極2を設けた基板をTFT基板としたが、圧力センサーのみが形成される基板であってもよい。この場合は、下部容量電極2が形成された基板には外部と接続するための端子部が設けられる。なお、TFT基板を使用した場合も、外部回路と接続する必要がある場合には、同様に端子部が設けられる。
【0021】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は、本実施形態に係る圧力センサーを示す縦断面図であり、図4(a)は、図3に示す温度センサーの縦断面図であり、図4(b)はその平面図である。図3に示すように、本実施形態に係る圧力センサーは、前述の第1の実施形態と比較して、TFT基板1上に温度センサー4が設けられている点が異なっている。本実施形態における上記以外の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0022】
次に、温度センサー4の構成について説明する。図4(a)及び(b)に示すように、温度センサーは上述の加速度センサーと同様の工程を経て形成される。異なる点は、スペーサ18を上部電極14の四隅に配することにより、上部電極14とCrゲート電極12との間にギャップを形成している点である。スペーサ18は、例えば約2μmの高さのアクリル樹脂であり、塗布、フォトレジスト工程及びベーク工程を経て形成される。本実施形態の動作は、前述の第1の実施形態と基本的に同じであり、温度センサーは加速度センサーと同様に、温度変化で電極間隔が変わることによる容量変化を検知することにより温度を検出する。本実施形態の効果は、第1の実施形態の効果と同様であり、圧力センサーの内部に加速度センサー及び温度センサーが密閉して設置されているので、各センサーの耐湿性が向上することである。
【0023】
次に、本発明の第2の実施形態の変形例について説明する。本変形例における構成は図3と同様であり、第2の実施形態と異なる点は、温度センサー4として、図5に示すようにダイオードを利用する点である。ここで、図5(a)は本変形例における温度センサー4の構成を示す縦断面図であり、図5(b)はその平面図である。次に、本変形例における温度センサー4の構成について説明する。図5(a)及び図5(b)に示すように、N+領域19の内側にP領域20、更にその内側にP+領域21が形成されている。それらは、フォトレジスト工程並びにリン及びボロンのドーピング工程を経て形成される。P領域20はダイオードの接合リークを防ぐのに有効である。そして、ELA(Excimer Laser Anneal)工程を経て結晶化された後、SiNのパッシベーション膜をCVD法により例えば約20nmの厚さで成膜し、コンタクト22を形成した後、アノード電極23及びカソード電極24の形状にパターニングをする。本変形例における温度センサーの動作は、第2の実施形態における温度センサーの動作とは異なり、pn接合ダイオードの順方向電圧降下(Vf)の温度依存性(ΔVf≒2mV/℃)を利用することで温度を検出する。本変形例におけるその他の動作は、前述の第2の実施形態における動作と同様である。また、本変形例における効果は、前述の第2の実施形態における効果と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、TPMS用センサー等に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る圧力センサーを示す縦断面図である。
【図2】(a)は、図1に示す加速度センサーを示す縦断面図であり、(b)はその平面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る圧力センサーを示す縦断面図である。
【図4】(a)は、図3に示す温度センサーを示す縦断面図であり、(b)はその平面図である。
【図5】(a)は、第2の実施形態の変形例における温度センサーを示す縦断面図であり、(b)はその平面図である。
【図6】特許文献1に記載の圧力感知素子の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1;TFT基板
2;下部容量電極
3;加速度センサー
4;温度センサー
5;対向基板
6;対向基板容量電極
7;シール材
8;トランスファー
9;ガラス基板
10;保護膜
11;リンドープポリシリコンゲート電極
12;Crゲート電極
13;層間膜
14;上部電極
15;上部電極のリード部
16;上部電極の容量電極部
17;層間膜除去領域
18;スペーサ
19;N+領域
20;P領域
21;P+領域
22;コンタクト
23;アノード電極
24;カソード電極
100;ダイヤフラム
101;スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、この第1の基板に対向して配置された第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間の空間を外部から遮蔽するシール材と、前記第1の基板と前記第2の基板の対向する面上に夫々形成され前記第1及び第2の基板に加わる圧力を容量変化として検出する第1及び第2の電極と、前記第1又は第2の基板の前記シール材に囲まれた領域の対向面上に形成された加速度センサーと、を有することを特徴とする圧力センサー。
【請求項2】
前記加速度センサーは、上部電極と下部電極とを有し、加速度により前記上部電極と前記下部電極との間隔が変化し、容量の変化から加速度を検出することを特徴とする請求項1に記載の圧力センサー。
【請求項3】
前記第1又は第2の基板が回路素子及び検出回路が形成された基板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力センサー。
【請求項4】
前記第1又は第2の基板がTFTを含む回路素子が形成された基板であることを特徴とする請求項3に記載の圧力センサー。
【請求項5】
前記加速度センサーが前記TFTを含む回路素子が形成された基板上に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の圧力センサー。
【請求項6】
前記第1又は第2の基板の前記シール材に囲まれた領域の対向面上に形成された温度センサーを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧力センサー。
【請求項7】
前記温度センサーが形成された基板がTFTを含む回路素子が形成された基板であることを特徴とする請求項6に記載の圧力センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−121107(P2007−121107A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313560(P2005−313560)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(303018827)NEC液晶テクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】