説明

圧縮機および自動販売機

【課題】冷却/加温を同一の圧縮機で実現する為に圧縮機の運転条件に着目して信頼性を向上させ、加温時の消費電力量を削減でき、省エネルギー化を実現する圧縮機および自動販売機を提供する。
【解決手段】冷却運転と加温運転とを切替え可能な冷却加温サイクル110に備えられた冷温用圧縮機109は、複数の回転数で運転されるインバータ圧縮機であり、冷却加温サイクル110には冷媒としてR600aが封入されており、冷却加温サイクル110が加温運転時の最高運転回転数を冷却運転時の最高運転回転数より低くすることで、圧縮機内部での耐荷重性や高圧配管の耐久性を確保でき、冷温用圧縮機の信頼性を向上させ、さらに圧縮機の消費電力量を大幅に低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶飲料などの商品を加温あるいは冷却して販売する自動販売機において、圧縮機で圧縮された冷媒が凝縮する際に生じる潜熱を利用して加温を行う自動販売機および、このような自動販売機等に適用される圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動販売機に対する消費電力量削減の要求が高まってきており、消費電力量削減手段として、冷却によって生じる廃熱を利用したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、図面を参照しながら従来の自動販売機を説明する。
【0004】
図7は従来の自動販売機の冷媒回路図である。
【0005】
図7に示すように、従来の自動販売機は、冷却/加温切替室1、冷却専用室2、第二の冷却専用室3からなる貯蔵室4を備え、冷却/加温切替室1内に設置された室内熱交換器5、冷却専用室2内に設置された蒸発器6、第二の冷却専用室3内に設置された第二の蒸発器7、貯蔵室4の外に設置された室外熱交換器8、圧縮機9で構成された冷却加温サイクル10を有する。
【0006】
また、膨張弁A11、膨張弁B12、膨張弁C13はそれぞれ通過する冷媒の圧力を低下させるとともに閉塞機能を有したものであり、開閉弁A14、開閉弁B15、開閉弁C16、開閉弁D17はそれぞれ冷媒の流れの有無を制御するものである。
【0007】
以上のように構成された自動販売機について、以下その動作を説明する。
【0008】
冷却/加温切替室1を冷却する場合、開閉弁A14と開閉弁D17を開とし、開閉弁B15と開閉弁C16を閉として、圧縮機9を駆動する。圧縮機9から吐出された冷媒は、室外熱交換器8で凝縮された後、それぞれ膨張弁A11、膨張弁B12、膨張弁C13で減圧されて、室内熱交換器5、蒸発器6、第二の蒸発器7へ供給される。そして、室内熱交換器5、蒸発器6、第二の蒸発器7で蒸発した冷媒が圧縮機9へ還流する。
【0009】
このとき、冷却/加温切替室1、冷却専用室2、第二の冷却専用室3のうち所定の温度に達した貯蔵室4は、当該する膨張弁A11、膨張弁B12、膨張弁C13を閉塞して冷媒の供給を停止する。さらに、すべての貯蔵室4が所定の温度に達すると圧縮機9の運転を停止する。
【0010】
次に、冷却/加温切替室1を加温する場合、開閉弁A14と開閉弁D17および膨張弁A11を閉とし、開閉弁B15と開閉弁C16を開として、圧縮機9を駆動する。圧縮機9から吐出された冷媒は、室内熱交換器5で一部が凝縮し、再度室外熱交換器8で凝縮された後、それぞれ膨張弁B12、膨張弁C13で減圧されて、蒸発器6、第二の蒸発器7へ供給される。そして、蒸発器6、第二の蒸発器7で蒸発した冷媒が圧縮機9へ還流する。
【0011】
また、冷却専用室2、第二の冷却専用室3のうち所定の温度に達した貯蔵室4は、当該する膨張弁B12、膨張弁C13を閉塞して冷媒の供給を停止する。さらに、すべての貯蔵室4が所定の温度に達すると圧縮機9の運転を停止する。
【0012】
ここで、冷却専用室2および第二の冷却専用室3を冷却する際に生じる冷媒の凝縮廃熱を用いて、冷却/加温切替室1を効率よく加温することができるので、電気ヒータなどの別の加熱手段を用いて冷却/加温切替室1を加温する場合に比べて、消費電力量を削減することができる。
【特許文献1】特開平5−233941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来の構成では、冷却飲料の温度が約5℃、加温飲料の温度が約55℃の自動販売機において、冷却/加温切替室を単一の圧縮機で実現するためには、蒸発温度−40℃〜+10℃でかつ凝縮温度40℃〜70℃の範囲といった厳しい条件の下で使用可能な圧縮機を新たに開発する必要があるという課題を有していた。
【0014】
また、上記課題に加え、自動販売機という戸外に設置する冷却加温サイクルに搭載する為、十分に信頼性が高く、かつ近年の地球温暖化を抑制する為に省エネルギー化を実現できるよう消費電力を低減した圧縮機および冷凍システムを開発する必要があるという課題を有していた。
【0015】
また、従来用いられていた冷媒である低沸点冷媒であるR407CやR290やCOといった冷媒を用いて単一の圧縮機で冷却加温サイクルを実現しようと、加温時の高圧圧力および圧縮機の内部の温度が非常に高くなり、圧縮機内部での耐荷重性や高圧配管の耐久性の低下、または内部部品の温度劣化等が発生しやすくなることから圧縮機の信頼性を確保することが難しかった。こういった信頼性の確保の課題は、特に戸外に設置される為に外気温度の大きな変動下に設置される自動販売機に搭載される場合には、より顕著となる。一方で、高沸点冷媒として冷蔵庫等に一般的に使用されているR134aを用いた場合でも、R600aと比較すると倍程度の高圧圧力となり、圧縮機の内部温度も高くなるものであった。
【0016】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、冷却/加温を同一の圧縮機で実現する為に圧縮機の運転条件に着目して信頼性を向上させ、加温時の消費電力量を削減でき、省エネルギー化を実現する圧縮機および自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記従来の課題を解決するために、本発明の圧縮機は、冷却運転と加温運転とを切替え可能な冷却加温サイクルに用いる冷温用の圧縮機であって、密閉容器と、前記密閉容器の内部に備えられた電動圧縮要素とを有し、冷媒としてR600aが適用され、かつ、インバータ駆動回路により複数の回転数で運転されるとともに、加温運転時の前記インバータ駆動回路による最高運転回転数を冷却運転時の前記インバータ駆動回路による最高運転回転数より低い回転数としたものである。
【0018】
これによって、冷却/加温を単一の圧縮機で実現した場合でも、高圧圧力が非常に小さいR600aを用いることで、圧縮機内部での耐荷重性や高圧配管の耐久性を確保でき、また圧縮機内部の温度上昇も抑えることができる。
【0019】
さらに、冷却加温サイクルの運転条件の中でも最も高圧圧力が高くなる為に圧縮機の信頼性上において厳しい条件となる加温運転時において、インバータ圧縮機の最高運転回転数を、冷却運転時の最高運転回転数より低くすることで、加温運転時における信頼性をより向上させることが可能となる。
【0020】
また、電気ヒータなどの加温効率が1程度の加熱手段に比べて2倍程度の加温効率を実現することができ、さらに冷却運転時および加温運転時のどちらの運転条件においてもインバータ駆動によって圧縮機が運転されることで、高負荷時には高い回転数で運転して冷凍能力の増大を図った上で、低負荷時には低い回転数で連続運転でき、消費電力の大幅な低減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の圧縮機は、冷却/加温を単一の圧縮機で実現した上で、冷温用圧縮機の信頼性を向上させることができ、さらに圧縮機の消費電力量を大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
請求項1に記載の発明は、冷却運転と加温運転とを切替え可能な冷却加温サイクルに用いる冷温用の圧縮機であって、密閉容器と、前記密閉容器の内部に備えられた電動圧縮要素とを有し、冷媒としてR600aが適用され、かつ、インバータ駆動回路により複数の回転数で運転されるとともに、加温運転時の前記インバータ駆動回路による最高運転回転数を冷却運転時の前記インバータ駆動回路による最高運転回転数より低い回転数としたものである。
【0023】
これによって、冷却/加温を単一の圧縮機で実現した場合でも、高圧圧力が非常に小さいR600aを用いることで、圧縮機内部での耐荷重性や高圧配管の耐久性を確保でき、また圧縮機内部の温度上昇も抑えることができる。
【0024】
さらに、冷却加温サイクルの運転条件の中でも最も高圧圧力が高くなる為に圧縮機の信頼性上において厳しい条件となる加温運転時において、インバータ圧縮機の最高運転回転数を、冷却運転時の最高運転回転数より低くすることで、加温運転時における信頼性をより向上させることが可能となる。
【0025】
また、電気ヒータなどの加温効率が1程度の加熱手段に比べて2倍程度の加温効率を実現することができ、さらに冷却運転時および加温運転時のどちらの運転条件においてもインバータ駆動によって圧縮機が運転されることで、高負荷時には高い回転数で運転して冷凍能力の増大を図った上で、低負荷時には低い回転数で連続運転でき、消費電力の大幅な低減を図ることが可能となる。
【0026】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、加温運転時の最高運転回転数における冷媒循環量が、冷却運転時の最高運転回転数における冷媒循環量と近似する程度に、加温運転時の最高運転回転数を冷却運転時の最高運転回転数よりも低くしたものである。
【0027】
これによって、蒸発温度が高い加温運転で冷媒循環量が増大して電動圧縮要素に備えられたバルブにかかる応力やバルブの開閉距離が大きくなり、バルブへの負担が増大することに加え、多量の冷媒を圧縮する為に圧縮時の負荷が増大することでクランクシャフトや軸受等の摺動条件が厳しくなることが避けられ、信頼性の高い冷却加温サイクルを提供することができる。
【0028】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、加温運転時における電動圧縮要素に備えられたバルブ機構に付加される応力もしくは衝撃を緩和する程度に、加温運転時の最高運転回転数を冷却運転時の最高運転回転数よりも低くしたものである。
【0029】
これによって、電動圧縮要素に備えられたバルブ機構である吸入リードや吐出リードに付加される応力もしくは衝撃がその耐久信頼性を確保できる程度に緩和され、冷温用圧縮機の信頼性を向上させることができ、信頼性の高い冷却加温サイクルを提供することができる。
【0030】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、圧縮機の冷却運転時の最高運転回転数に対する加温運転時の最高運転回転数の比率が0.5以上0.9以下の範囲としたものであり、冷却運転時に対する加温運転時の冷媒循環量の増加の比率に合わせて最高運転回転数の比率を設定しているため、請求項1から3のいずれか一項に記載の効果に加えてさらに確実に冷温用圧縮機の信頼性を向上させることができ、信頼性の高い冷却加温サイクルを提供することができる。
【0031】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、密閉容器を備え、前記密閉容器の内部空間が冷却加温サイクルの低圧側となるものであり、冷却加温サイクル内への冷媒封入量を抑制することができるため、請求項1から4のいずれか一項に記載の効果に加えて可燃性冷媒であるR600aを用いた場合でも防爆性が高く安全性が高い冷却加温サイクルを提供することができる。
【0032】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、密閉容器内にコイルばねを介して電動圧縮要素を弾性支持するものであって、前記電動圧縮要素はシリンダを形成するブロックと、前記シリンダ内で往復運動するピストンとを備えた往復動型圧縮機としたものであり、ロータリ型やスクロール型といった回転式の圧縮機と比較して、低回転時の効率を大幅に向上させることができる為、特に冷却運転時や低負荷運転における消費電力を低減することができるので、一般に戸外に備えられている為に外気温の大きな変動にさらされ、消費電力も大きくなりがちな自動販売機において、夜間等の低負荷運転における消費電力を抑え、省エネルギー化を実現することができる。
【0033】
また、電動圧縮要素から密閉容器へ伝播する振動をコイルばねにより低減できるため、自動販売機への振動伝達を低減できることとなり、振動に起因する配管や冷却加温サイクルの耐久性の低下を抑え、信頼性の高い自動販売機を提供することができる。
【0034】
請求項7に記載の発明は、商品を収納し、室温を切替えられる冷却/加温切替室と、前記冷却/加温切替室の冷却または加温を行う為に冷却運転と加温運転とを切替え可能な冷却加温サイクルとを備え、前記冷却加温サイクルには請求項1から6のいずれか一項に記載の圧縮機が備えられた自動販売機である。
【0035】
これによって、冷却/加温を同一の圧縮機で実現した上で、圧縮機内部での耐荷重性や冷却加温サイクルの高圧配管の耐久性を確保できるので自動販売機の信頼性を向上させることができ、さらに自動販売機の消費電力量を大幅に低減することができる。
【0036】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、圧縮機の密閉容器の外側に断熱カバーが備えられたものである。
【0037】
これによって、低外気温時に冷温用圧縮機全体の温度低下を防止することができる。従って、加温運転時の冷温用圧縮機の吸入ガス温度の低下を防ぐことができるため、冷温用圧縮機の効率低下を防止して冷却加温サイクルの消費電力を抑えることができる。
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、従来例または先に示した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0039】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における自動販売機の冷媒回路図、図2は同実施の形態における冷温用圧縮機の断面図である。
【0040】
図1、図2において、本発明の自動販売機は、冷却/加温切替室101、冷却専用室102、第二の冷却専用室103からなる貯蔵室104を備え、冷却/加温切替室101内に設置された室内熱交換器105、冷却専用室102内に設置された蒸発器106、第二の冷却専用室103内に設置された第二の蒸発器107、貯蔵室104の外に設置された室外熱交換器108、冷温用圧縮機109で構成された冷却加温サイクル110を有する。
【0041】
ここで、冷却加温サイクル110には温暖化係数の低い炭化水素系冷媒であるR600aを封入している。
【0042】
また、膨張弁A111、膨張弁B112、膨張弁C113はそれぞれ通過する冷媒の圧力を低下させるとともに閉塞機能を有したものであり、開閉弁A114、開閉弁B115、開閉弁C116、開閉弁D117はそれぞれ冷媒の流れの有無を制御するものである。
【0043】
次に、冷温用圧縮機109の構成について説明する。
【0044】
圧延鋼板を深絞りにより成形してなるすり鉢状の下容器120と逆すり鉢状の上容器121を係合し、係合部分を全周溶接して密閉容器122が形成される。密閉容器122の下部には、冷凍機油124として鉱油を貯留しているとともに、電動圧縮要素130が配置されている。電動圧縮要素130は、密閉容器122の底部にコイルばね132を介して弾性支持されている。
【0045】
電動圧縮要素130は、ブロック134の下方に固定されインバータ駆動回路(図示せず)とつながっている固定子136と、永久磁石を内蔵し主軸部138の下方に固定された回転子140から構成され、インバータ駆動用の電動モータを形成しており、インバータ駆動回路によって、商用電源周波数を下回る運転周波数を含む複数の運転周波数で駆動される。
【0046】
また、電動圧縮要素130は、シリンダ142を形成するブロック134と、シリンダ142のボア孔143内に往復自在に嵌入されたピストン144と、ブロック134の軸受146に軸支される主軸部138と偏芯軸部148からなるクランクシャフト150と、偏芯軸部148とピストン144を連結するコンロッド152とを備えており、クランクシャフト150の回転運動がピストン144の往復運動に変換される。
【0047】
これに伴い、ピストン144とボア孔143内とで形成される圧縮室151の空間体積が、ピストン144の往復運動により増減変化することで、密閉容器122内の内部空間122aに充満している冷媒は、吸入マフラー152の吸入口153から吸込まれ、シリンダヘッド154の内部に設けられたバルブ(図示せず)を介して圧縮室151内にて吸入、圧縮された後、吐出細管156、密閉容器122に備えられた吐出配管である吐出チューブ157を経て、密閉容器122外に吐出される。
【0048】
このように、本実施の形態の冷温用圧縮機109は、密閉容器122の内部空間が冷却加温サイクル110の低圧側となり、電動圧縮要素130によって圧縮が行われた後の吐出細管156、吐出チューブ157は冷却加温サイクル110の高圧側となるような内部低圧型の圧縮機である。
【0049】
以上のように構成された自動販売機について、以下その動作を説明する。
【0050】
冷却/加温切替室101を冷却する場合、開閉弁A114と開閉弁D117を開とし、開閉弁B115と開閉弁C116を閉として、冷温用圧縮機109を駆動する。冷温用圧縮機109から吐出された冷媒は、室外熱交換器108で凝縮された後、それぞれ膨張弁A111、膨張弁B112、膨張弁C113で減圧されて、室内熱交換器105、蒸発器106、第二の蒸発器107へ供給される。そして、室内熱交換器105、蒸発器106、第二の蒸発器107で蒸発した冷媒が冷温用圧縮機109へ還流する。
【0051】
このとき、冷却/加温切替室101、冷却専用室102、第二の冷却専用室103のうち所定の温度に達した貯蔵室104は、当該する膨張弁A111、膨張弁B112、膨張弁C113を閉塞して冷媒の供給を停止する。この時、立ち上がり運転時よりも必要な冷凍能力が少ない場合には、インバータ駆動回路によって、必要な冷凍能力に見合う程度の低回転にて圧縮機を運転することで能力調節を行う。さらに、すべての貯蔵室104が所定の温度に達すると冷温用圧縮機109の運転を停止する。
【0052】
また、例えば外気温度30℃でプルダウンする場合は、通常300W程度で冷却する必要がある。この場合、冷温用圧縮機109は蒸発温度−30℃程度、凝縮温度50℃程度の圧力条件で、冷却時の最高回転数である例えば72rpsの高回転で連続運転するように制御される。そして貯蔵室104内の温度が下降するに伴って、冷温用圧縮機109の回転数を29rpsまで順次低下させて能力調整を行う。
【0053】
次に、冷却/加温切替室101を加温する場合、開閉弁A114と開閉弁D117および膨張弁A111を閉とし、開閉弁B115と開閉弁C116を開として、冷温用圧縮機109を駆動する。冷温用圧縮機109から吐出された冷媒は、まず室内熱交換器105で吐出後の最も高温状態の冷媒の一部が凝縮し、再度室外熱交換器108で凝縮された後、それぞれ膨張弁B112、膨張弁C113で減圧されて、蒸発器106、第二の蒸発器107へ供給される。そして、蒸発器106、第二の蒸発器107で蒸発した冷媒が冷温用圧縮機109へ還流する。
【0054】
このとき、冷却/加温切替室101が所定の温度に達すると冷温用圧縮機109の運転を停止する。
【0055】
また、例えば外気温度15℃でプルアップする場合は、通常400W程度で加温する必要がある。この場合、冷温用圧縮機109は蒸発温度5℃程度、凝縮温度65℃程度の圧力条件で、加温時の最高回転数である例えば54rps程度の回転数で連続運転するように制御される。そして冷却/加温切替室101内の温度が上昇するに伴って、冷温用圧縮機109の回転数を29rpsまで順次低下させて能力調整を行う。
【0056】
ここで、冷却専用室102および第二の冷却専用室103を冷却する際に生じる冷媒の凝縮廃熱を用いて、冷却/加温切替室101を効率よく加温することができるので、電気ヒータなどの別の加熱手段を用いて冷却/加温切替室101を加温する場合に比べて、消費電力量を大幅に削減することができる。
【0057】
このように、立ち上がり運転の際は高い回転数で冷温要圧縮機109を運転するが、定常運転時は、商用電源周波数よりも低く最低回転数では29rps程度までの低回転数での運転を行う為、本発明のような往復動型の圧縮機を用いることで、ロータリ型やスクロール型といった回転式の圧縮機と比較して、低回転時の効率を大幅に向上させることができる為、特に冷却運転時や低負荷運転における消費電力を低減することができるので、一般に戸外に備えられている為に外気温の大きな変動にさらされ、消費電力も大きくなりがちな自動販売機において、夜間等の低負荷運転における消費電力を抑え、省エネルギー化を実現することができる。
【0058】
また、冷却/加温切替室101を加温する場合は、冷却/加温切替室101を冷却する場合に比べて蒸発温度が高いため、冷媒の密度も高くなり冷却加温サイクル110中の冷媒循環量が増大する。このように冷媒循環量が増大すると、例えば冷温用圧縮機109内の冷媒流路に備えられた吸入側のバルブである吸入リードや吐出側のバルブである吐出リードなどのバルブ機構(図示せず)にかかる応力、衝撃やバルブの開閉距離も大きくなり、バルブへの負担が増大することに加え、多量の冷媒を圧縮する為に圧縮時の負荷が増大することでクランクシャフト150や軸受146等の摺動条件が厳しくなり、より信頼性の低下が懸念される。
【0059】
しかしながら本実施の形態においては、高圧圧力が大幅に低減できるR600a冷媒を用いた上で、さらに冷温用圧縮機109の冷却運転時の最高運転回転数に対する加温運転時の最高運転回転数を低く設定し、さらにこれらの比率を冷媒循環量の増加の比率に合わせて0.7から0.9の範囲とし、冷却加温サイクル110中の冷媒循環量の過大化を防ぐことで、シリンダヘッド154の内部に設けられたバルブ等の摺動部品の破損を防止して冷温用圧縮機109の信頼性を向上させることができる。
【0060】
具体的には、例えば冷却運転時の回転周波数が最高回転数で72rpsとした場合でも、加温運転時の最高回転周波数は冷却運転時の最高回転数72rpsの80%(冷却運転時の最高回転数に対する加温運転時の最高回転数の比率は0.8)である60rps以下である例えば54rps程度のとしたことで、冷媒循環量の過大化を防ぐことが可能である。この場合望ましくは、加温運転時の最高回転周波数は冷却運転時の最高回転数の80%以下とした方が信頼性上好ましいが、設計上の条件等で、冷却運転時の最高回転数も抑えた場合等では90%(冷却運転時の最高回転数に対する加温運転時の最高回転数の比率は0.9)以下でも信頼性の確保ができる。
【0061】
また、冷媒循環量があまりにも少なくなると、加温時の高負荷条件における冷凍能力が確保できなくなり、加温運転時に十分な加温ができなくなるのを避けるため、冷却運転時の最高回転数に対する加温運転時の最高回転数の比率の下限は0.7程度にすることが望ましく、少なくとも0.5以上は確保する必要がある。
【0062】
また、加温時の最低回転数に対する最高回転数の比率は2.0以下にすることが望ましく、例えば本実施の形態のように加温時の最低回転数を29rpsとした場合には、最高回転数は最低回転数の2倍の58rps以下で運転することが望ましい。
【0063】
なお、加温運転時の最高運転回転数の設定に関して、加温運転時の最高運転回転数における冷媒循環量が、冷却運転時の最高運転回転数における冷媒循環量に近くなるように、加温運転時の最高運転回転数を冷却運転時の最高運転回転数よりも低くしていくと、蒸発温度が高い加温運転により冷媒循環量が増大して電動圧縮要素に備えられたバルブにかかる応力やバルブの開閉距離が大きくなり、バルブへの負担が増大することに加え、多量の冷媒を圧縮する為に圧縮時の負荷が増大することでクランクシャフトや軸受等の摺動条件が厳しくなることが回避され、信頼性の高い冷却加温サイクルを提供することができる。
【0064】
このように、必ずしも加温運転時の最高運転回転数における冷媒循環量と冷却運転時の最高運転回転数における冷媒循環量を設計上近似範囲に調整する必要はないが、理論的には冷媒循環量をほぼ同等となる範囲に維持できるのであれば、加温運転時の負荷増大に備えて予め圧縮機内部のバルブ機構や摺動機構の負荷耐性の高い設計にする配慮が不要となって、コスト面でも設計の標準化面でも好都合となる。
【0065】
冷媒循環量を近似させる程度については、加温運転時の最高運転回転数における冷媒循環量と冷却運転時の最高運転回転数における冷媒循環量との差が、冷却運転時の最高運転回転数における冷媒循環量の±10%の範囲内であれば、上述の信頼性と加温能力のバランスを良好に維持する観点からは好都合である。
【0066】
また、本実施の形態の圧縮機では、クランクシャフト150に固着され、クランクシャフト150の回転を行う回転子140に永久磁石を内蔵していることで、回転に必要な磁力を永久磁石で得ることができる為、従来のインダクション用の回転子のように回転子の内部に電流が流れない為に、回転子140の温度上昇をより抑えることができ、クランクシャフト150と軸受146等の回転子140付近の温度上昇も抑えられることとなるので、高温による部品の熱劣化や冷凍機油124の粘度低下による摺動条件の悪化等に対してインダクション用の回転子よりも有利な条件となる。
【0067】
このように、本実施の形態では、加温運転時の冷温用圧縮機109の運転回転数を抑える為に、特に高温立ち上がりの際や温度上昇がしにくい高負荷条件時には加温のバックアップ用としての温度確保のためにヒータ等を冷却/加温切替室101に設置することも可能である。このようにヒータを併用することで、メインの加温はほぼ冷温用圧縮機109でまかなった上で、冷温用圧縮機109の信頼性の確保が難しくなるような高負荷の加温が必要な場合のみヒータ等を併用することで、年間としての消費電力はほぼ抑えた上で、自動販売機の信頼性を大幅に向上させることが可能である。
【0068】
このように本実施の形態では、冷却加温サイクル110には冷媒としてR600aが封入されており、冷却加温サイクル110が加温運転時の最高運転回転数が冷却運転時の最高運転回転数より低くすることで、冷却/加温を単一の圧縮機で実現した場合でも、高圧圧力が非常に小さいR600aを用いることで、圧縮機内部での耐荷重性や高圧配管の耐久性を確保でき、さらに、冷却加温サイクルの運転条件の中でも、最も高圧圧力が高くなる為に圧縮機の信頼性上において厳しい条件となる加温運転時において、インバータ圧縮機の最高運転回転数を、冷却運転時の最高運転回転数より低くすることで、加温運転時における信頼性の向上を図ることができる。
【0069】
また、電気ヒータなどの加温効率が1程度の加熱手段に比べて2倍程度の加温効率を実現することができ、さらに冷却運転時および加温運転時共にインバータ駆動によって圧縮機が運転されることで、高負荷時には高い回転数で運転でき、冷凍能力の増大が図れ、低負荷時には低い回転数で運転でき、加温運転時の消費電力を抑制することが可能となる。
【0070】
さらに、本実施の形態では、冷温用圧縮機109の密閉容器122内の圧力が冷却加温サイクル110の低圧圧力と同等である内部低圧型としたものであり、密閉容器の内部が高圧型の場合に比べてオイルへの冷媒の溶解量を少なくすることができるので、可燃性冷媒であるR600aの冷却加温サイクル110への封入量を抑制することができるため、安全性を高めることができる。
【0071】
また、本実施の形態では、電動圧縮要素130を弾性部材であるコイルばね132を介して密閉容器122に固定したので、電動圧縮要素130の振動が密閉容器122へ直接伝播せず、コイルばね132により低減できるため、自動販売機への振動伝達を低減できることとなり、振動に起因する騒音発生の無い高品位の自動販売機を提供することができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、冷温用圧縮機109は往復動型圧縮機としたものであり、ロータリ型やスクロール型といった回転式の圧縮機と比較して、低回転時の効率を大幅に向上させることができる為、特に冷却運転時や低負荷運転における消費電力を低減することができるので、特に戸外に備えられている為に夏場の冷却運転時の消費電力も大きくなる自動販売機において、冷却運転時においても消費電力を抑えることができる。
【0073】
なお、本実施の形態において、冷却加温サイクルという表現は冷却/加温サイクルもしくは冷却・加温サイクルの意味であり、また、冷温用圧縮機という表現は冷却/加温用圧縮機もしくは冷却・加温用圧縮機という意味である。
【0074】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における自動販売機の冷媒回路図、図4は、同実施の形態における冷凍サイクルを構成する冷凍装置の斜視図、図5は、同実施の形態における自動販売機の上方から見た冷温用圧縮機および冷却用圧縮機の平面断面図、図6は、同実施の形態における冷温用圧縮機の縦断面図である。
【0075】
また、冷温用圧縮機については、実施の形態1で説明したものと同様の構成については、その作用・効果も同様となり、本実施の形態での説明は省略している場合がある。
【0076】
図3から図6において、本発明の自動販売機は、冷却加温切替室201、冷却専用室202、第二の冷却専用室203からなる貯蔵室204を備え、断熱カバー205内に設置された冷温用圧縮機206、冷却加温切替室201内に設置された室内熱交換器208、貯蔵室204の外に設置された室外熱交換器210、冷却時と加温時に冷媒流路を切り換える四方弁211、膨張機構としての冷却用キャピラリチューブ212、加温用キャピラリチューブ213、ドライヤ214とからなり、冷却加温切替室201の冷却と加温を専用に行う冷却加温サイクル215を備えるとともに、冷却用圧縮機220、冷却専用室202内に設置された蒸発器221、第二の冷却専用室203内に設置された第二の蒸発器222、膨張機構としての膨張弁223、第二の膨張弁224、そして冷却加温サイクル215側と一体に形成された凝縮器225とからなり、冷却専用室202と第二の冷却専用室203とを専用に冷却する冷却サイクル226を備えている。
【0077】
ここで、冷却加温サイクル215および冷却サイクル226には温暖化係数の低い炭化水素系冷媒であるR600aを封入している。
【0078】
室外熱交換器210および凝縮器225は、2パスのフィンチューブ熱交換器で構成され、一方のパスは冷却加温サイクル215と連結しており、冷却加温サイクル215の加温時は蒸発器として、冷却時は凝縮器として作用し、他方のパスは冷却サイクル226と連結している。
【0079】
また、室内熱交換器208と室外熱交換器210は2本の配管で連結されており、一方は冷却用キャピラリチューブ212と冷却用逆止弁227、ドライヤ214とが直列に連結され、他方は加温用キャピラリチューブ213と加温用逆止弁229とが直列に連結されている。
【0080】
ここで、冷却用逆止弁227はドライヤ214から冷却用キャピラリチューブ212に冷媒が流れる方向を正方向とし、冷却用キャピラリチューブ212からドライヤ214へ向かう逆方向には冷媒が流れないように設置される。また、加温用逆止弁228は加温用キャピラリチューブ213から室外熱交換器210へ冷媒が流れる方向を正方向とし、室外熱交換器210から加温用キャピラリチューブ213へ向かう逆方向には冷媒が流れないように設置される。
【0081】
また、断熱区画された貯蔵室204の前面には自動販売機への商品の投入時などに開閉を行う扉229を設けている。
【0082】
次に、冷温用圧縮機206の構成について説明する。
【0083】
圧延鋼板を深絞りにより成形してなるすり鉢状の下容器230と逆すり鉢状の上容器231を係合し、係合部分を全周溶接して密閉容器232が形成される。密閉容器232の下部には、冷凍機油234として鉱油を貯留しているとともに、電動圧縮要素240が配置されている。電動圧縮要素240は、密閉容器232の底部にコイルばね242を介して弾性支持されている。
【0084】
電動圧縮要素240は、ブロック244の下方に固定されインバータ駆動回路(図示せず)とつながっている固定子246と、永久磁石を内蔵し主軸部248の下方に固定された回転子250から構成され、インバータ駆動用の電動モータを形成しており、インバータ駆動回路によって、商用電源周波数で運転される冷却用圧縮機220とは異なる運転周波数で駆動される。
【0085】
また、電動圧縮要素240は、シリンダ252を形成するブロック244と、シリンダ252のボア孔253内に往復自在に嵌入されたピストン254と、ブロック244の軸受256に軸支される主軸部248と偏芯軸部258からなるクランクシャフト260と、偏芯軸部258とピストン254を連結するコンロッド262とを備えており、クランクシャフト260の回転運動がピストン254の往復運動に変換される。
【0086】
また、ピストン254とボア孔253内とで形成される圧縮室263の空間体積が、ピストン254の往復運動により増減変化することで、密閉容器232内の内部空間232bに充満している冷媒は、吸入マフラー264の吸入口265から吸込まれ、圧縮室263内にて吸入、圧縮された後、吐出細管269、密閉容器232に備えられた吐出配管である吐出チューブ270を経て、密閉容器232外に吐出される。
【0087】
さらに、冷却用圧縮機220も冷温用圧縮機206と同様に密閉容器280の下部には冷凍機油(図示せず)として鉱油を貯留しているとともに、電動圧縮要素282が配置されている。電動圧縮要素282は、密閉容器280の底部にコイルばね(図示せず)を介して弾性支持され、ピストン284がシリンダ286内を往復自在に嵌入された往復動型の構成としている。
【0088】
このように、本実施の形態の冷却用圧縮機220および冷温用圧縮機206は、密閉容器232,280の内部空間が冷却加温サイクル215および冷却サイクル226の低圧側となり、電動圧縮要素によって圧縮が行われた後の冷媒経路が冷却加温サイクル215の高圧側となるような内部低圧型の圧縮機である。
【0089】
ここで、冷温用圧縮機206のピストン254往復方向と冷却用圧縮機220のピストン284往復方向は略平行となるようにするとともに、冷温用圧縮機206および冷却用圧縮機220のピストン254、284を自動販売機の背面側に位置するように設置している。
【0090】
さらに、冷温用圧縮機206および冷却用圧縮機220のピストン254、284往復方向に対して略鉛直方向に室外熱交換器210および凝縮器225の長手方向を位置させている。
【0091】
よって、冷温用圧縮機206および冷却用圧縮機220および室外熱交換器210に備えられたフィン(図示せず)とはそれぞれ略平行になるように配置されている。
【0092】
以上のように構成された自動販売機について、以下その動作を説明する。
【0093】
冷却加温切替室201を冷却する場合、図3において点線矢印で示すように、冷温用圧縮機206から吐出された冷媒は、四方弁211を通り、室外熱交換器210で凝縮液化する。室外熱交換器210から出た液冷媒はドライヤ214、冷却用逆止弁227を経て冷却用キャピラリチューブ212で減圧されて、室内熱交換器208へ供給される。そして、室内熱交換器208で蒸発した冷媒が四方弁211を通り、冷温用圧縮機206へ還流する。
【0094】
このとき、例えば外気温度30℃でプルダウンする場合は、通常300W程度で冷却する必要がある。この場合、冷温用圧縮機206は蒸発温度−30℃程度、凝縮温度50℃程度の圧力条件において高回転で連続運転するように制御される。そして冷却加温切替室201内の温度が下降するに伴って、冷温用圧縮機206の回転数を順次低下させて能力調整を行う。
【0095】
次に、冷却加温切替室201を加温する場合、図3において実線矢印で示すように、冷温用圧縮機206から吐出された冷媒は、四方弁211で流路を切り換えて室内熱交換器208で凝縮液化する。室内熱交換器208から出た液冷媒は加温用キャピラリチューブ213で減圧されて、加温用逆止弁228を経て室外熱交換器210へ供給される。そして、室外熱交換器210で蒸発した冷媒が四方弁211で流路を切り換えて冷温用圧縮機206へ還流する。
【0096】
このとき、例えば外気温度15℃でプルアップする場合は、通常400W程度で加温する必要がある。この場合、冷温用圧縮機206は蒸発温度5℃程度、凝縮温度65℃程度の圧力条件において連続運転するように制御される。そして冷却加温切替室201内の温度が上昇するに伴って、冷温用圧縮機206の回転数を順次低下させて能力調整を行う。
【0097】
一方冷却サイクル226においては、冷却用圧縮機220から吐出された冷媒は、凝縮器225で凝縮液化する。凝縮器225から出た液冷媒はそれぞれ膨張弁223、第二の膨張弁224で減圧されて蒸発器221、第二の蒸発器222へ供給される。そして、蒸発器221、第二の蒸発器222で蒸発した冷媒が冷却用圧縮機220へ還流する。
【0098】
このとき、冷却専用室202、第二の冷却専用室203のうち所定の温度に達した貯蔵室204は、当該する膨張弁223、第二の膨張弁224を閉塞して冷媒の供給を停止する。さらに、すべての貯蔵室4が所定の温度に達すると冷却用圧縮機220の運転を停止する。
【0099】
ここで、冷温用圧縮機206とともに冷却用圧縮機220が稼動すると、冷却サイクル226と連結しているパス周辺のフィン温度は高温になる。そのため、冷却加温サイクル215の加温時と冷却サイクル226が同時に稼動した場合には、室外熱交換器210および凝縮器225のフィンを介してカスケード熱交換することができるとともに、凝縮器225により暖められた大気を蒸発器として作用する室外熱交換器210に吸い込ませることができ、0℃〜10℃程度の高蒸発温度で冷却加温サイクル215を稼動することが可能となる。これにより冷却加温サイクル215の圧縮比を低減でき、冷温用圧縮機206の効率向上が図れ、消費電力量を削減することができる。
【0100】
また本実施の形態においては、冷温用圧縮機206を断熱カバー205内に設置しているため、低外気温時に冷温用圧縮機206全体の温度低下を防止することができる。従って、冷温用圧縮機206の吸入ガス温度の低下を防ぐことができるため、冷温用圧縮機206の効率低下を防止して冷却加温サイクル215の高いサイクル効率を維持することができる。
【0101】
さらに本実施の形態では、図5に実線矢印で示すような風路を形成して凝縮器225から放熱するようにしているが、冷温用圧縮機206は断熱カバー205内に設置されているため、風路の影響を受けず全体の温度低下が抑制され、さらに高いサイクル効率を維持することができる。
【0102】
また、2パスのフィンチューブ熱交換器で構成されている室外熱交換器210および凝縮器225は、フィンを介して一体化しているため、冷却加温サイクル215および冷却サイクル226とそれぞれの配管からの振動の影響を受ける。
【0103】
特に、従来の自動販売機において一般的に搭載されていたロータリ型やスクロール型といった内部高圧型の圧縮機では、電動圧縮要素が密閉容器に直接固着されるため、圧縮に伴う振動が密閉容器へ直接伝達するため、振動が大きくなり、配管の振動も大きくなる傾向がある為、2台の圧縮機を1つの熱交換器で共用する場合には、これらの振動に起因する配管の折損が懸念されていた。
【0104】
特に、圧縮負荷が非常に大きくなる加温条件では、圧縮に伴う振動がより増大するため、さらに振動に起因する信頼性の低下が問題となる。
【0105】
しかしながら本実施の形態によれば、冷温用圧縮機206および冷却用圧縮機220は内部低圧型で、電動圧縮要素230が密閉容器222に対してコイルばね232等の弾性部材によって弾性支持されている往復動型圧縮機としたものであり、それぞれのピストン244、284の往復運動により発生する電動圧縮要素230、282の振動が密閉容器232、280へ直接伝播せず、コイルばね232により低減できるため、配管への振動伝達を低減できることとなり、2台の圧縮機の配管が一つの室外熱交換器210および凝縮器225と連結している場合であっても、配管の振動を抑制して配管の折損を防止できるため、振動に起因する信頼性の低下を防ぐことができ、この室外熱交換器210および凝縮器225からなる一体型凝縮器の高効率面のメリットを十分に生かすことができる。
【0106】
よって、振動に起因する信頼性の低下を防ぎ信頼性が高い自動販売機を提供することができるとともに、高い熱交換能力を実現した高品位の自動販売機を提供することができる。
【0107】
さらに冷温用圧縮機206と冷却用圧縮機220はそれぞれのピストン254、284往復方向を略平行となるようにすることで、2台の圧縮機の往復動方向が同一延長線上に位置しない為、振動発生源であるピストン254の往復運動に起因する振動が2つの圧縮機で共振もしくは増幅されることを防ぎ、複数の往復動型圧縮機を近傍に配置する場合の異常振動による配管折れ等の信頼性低下を防ぐことができる。
【0108】
また、冷温用圧縮機206と冷却用圧縮機220のそれぞれのピストン254、284を自動販売機の背面側に位置するように設置するとともに、ピストン254、284往復方向に対して略鉛直方向に室外熱交換器210および凝縮器225の長手方向を位置させていることで、冷温用圧縮機206および冷却用圧縮機220および室外熱交換器210に備えられたフィン(図示せず)とはそれぞれ略平行になるように配置されているため、図5の矢印に示した風路のように自動販売機の背面側から扉229側への風路が形成しやすく、かつ冷温用圧縮機206や冷却用圧縮機220の振動のうち往復動方向の振動が伝達された場合でも、フィンの配置方向と略平行方向で振動する為、フィンが振動に伴う周辺の空気抵抗を受けにくく、フィンからの振動や騒音を低減することができる。
【0109】
また、冷媒が圧縮される際に発生する振動が2つのパスを介して室外熱交換器210および凝縮器225のフィンへ伝達し、フィンの振動に起因する異常音の発生を防止できるので、低騒音、低振動の自動販売機を提供することができる。
【0110】
加えて、冷温用圧縮機206と冷却用圧縮機220は異なる運転周波数にて運転されるため、圧力脈動の主成分となる周波数も異なることになる。従って、冷却加温サイクル215と冷却サイクル226における配管振動が共振して振動が増大することを防ぐことができ、自動販売機の振動伝達を低減することができる。
【0111】
さらに、本実施の形態の冷温用圧縮機206の脚272と弾性部材274との当接面Aは密閉容器232の下端面232aよりも上方に位置しているため、冷温用圧縮機206の上下方向の重心Bと、冷温用圧縮機206の脚272と脚272を弾性支持する弾性部材274との当接面Aとの距離Cは、冷温用圧縮機206の上下方向の重心Bと密閉容器232の下端面232aとの距離Dよりも短くなっている。
【0112】
これによって、冷温用圧縮機206の振動の振幅は、重心B付近が最も小さく重心Bから離れるにつれて振動が大きくなることから、冷温用圧縮機206のより重心Bに近い部分に脚272と弾性部材274との当接面Aを位置させることにより、冷温用圧縮機206全体の振動を低減することができるので、さらに、自動販売機への振動伝達を低減できることとなり、不快な振動や、振動に起因する騒音発生の無い高品位の自動販売機を提供することできる。
【0113】
なお、本実施の形態においては圧縮機の重心と、脚と弾性部材との当接面との位置関係を冷温用圧縮機206について規定したが、冷却用圧縮機220について同様に規定してもよい。
【0114】
また、本実施の形態では、冷温用圧縮機206の密閉容器232内の圧力が冷却加温サイクル215の低圧圧力と同等である内部低圧型としたものであり、密閉容器232の内部が高圧型の場合に比べて冷凍機油234への冷媒の溶解量を少なくすることができるので、可燃性冷媒であるR600aの冷却加温サイクル215への封入量を抑制することができるため、安全性を高めることができる。
【0115】
さらに、本実施の形態では、冷却用圧縮機220も冷温用圧縮機206と同様に内部低圧型としたものであり、冷却サイクル226へのR600aの封入量を冷却加温サイクル215と同様に抑制できるので、より安全性を高めることができることは言うまでもない。
【0116】
なお、本実施の形態において、冷却加温サイクルという表現は冷却/加温サイクルもしくは冷却・加温サイクルの意味であり、また、冷温用圧縮機という表現は冷却/加温用圧縮機もしくは冷却・加温用圧縮機という意味である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上のように、本発明にかかる圧縮機は、大幅な消費電力低減が図れ、かつ信頼性が高いので、冷温貯蔵区分を備えた自動販売機やショーケースやカップ自販機等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の実施の形態1における自動販売機の冷媒回路図
【図2】同実施の形態における冷温用圧縮機の断面図
【図3】本発明の実施の形態2における自動販売機の冷媒回路図
【図4】同実施の形態における冷凍サイクルを構成する冷凍装置の斜視図
【図5】同実施の形態における自動販売機の上方から見た冷温用圧縮機および冷却用圧縮機の平面断面図
【図6】同実施の形態における冷温用圧縮機の縦断面図
【図7】従来の自動販売機の冷媒回路図
【符号の説明】
【0119】
109,206 冷温用圧縮機(圧縮機)
110,215 冷却加温サイクル
122,232 密閉容器
122a,232b 内部空間
130,230 電動圧縮要素
132,242 コイルばね
134 ブロック
142 シリンダ
144,254 ピストン
205 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却運転と加温運転とを切替え可能な冷却加温サイクルに用いる冷温用の圧縮機であって、密閉容器と、前記密閉容器の内部に備えられた電動圧縮要素とを有し、冷媒としてR600aが適用され、かつ、インバータ駆動回路により複数の回転数で運転されるとともに、加温運転時の前記インバータ駆動回路による最高運転回転数を冷却運転時の前記インバータ駆動回路による最高運転回転数より低い回転数とした圧縮機。
【請求項2】
加温運転時の最高運転回転数における冷媒循環量が、冷却運転時の最高運転回転数における冷媒循環量と近似する程度に、加温運転時の最高運転回転数を冷却運転時の最高運転回転数よりも低くした請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
加温運転時における電動圧縮要素に備えられたバルブ機構に付加される応力もしくは衝撃を緩和する程度に、加温運転時の最高運転回転数を冷却運転時の最高運転回転数よりも低くした請求項1に記載の圧縮機。
【請求項4】
冷却運転時の最高運転回転数に対する加温運転時の最高運転回転数の比率が0.5以上0.9以下の範囲である請求項1から3のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項5】
密閉容器の内部空間が冷却加温サイクルの低圧側となる請求項1から4のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項6】
密閉容器内にコイルばねを介して電動圧縮要素を弾性支持するものであって、前記電動圧縮要素はシリンダを形成するブロックと、前記シリンダ内で往復運動するピストンとを備えた往復動型である請求項1から5のいずれか一項に記載の圧縮機。
【請求項7】
商品を収納し、室温を切替えられる冷却/加温切替室と、前記冷却/加温切替室の冷却または加温を行う為に冷却運転と加温運転とを切替え可能な冷却加温サイクルとを備え、前記冷却加温サイクルには請求項1から6のいずれか一項に記載の圧縮機が備えられた自動販売機。
【請求項8】
圧縮機の密閉容器の外側には前記密閉容器を覆うカバーが備えられた請求項7に記載の自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−218191(P2007−218191A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40581(P2006−40581)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【特許番号】特許第3960349号(P3960349)
【特許公報発行日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】