説明

圧電デバイス、電子機器および圧電デバイスの製造方法

【課題】製品完成後に不慮に電圧が印加されても、内部の回路に異常が発生するのを防止した圧電デバイス、電子機器および圧電デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】圧電デバイスは、外部から情報を入力可能になっている記憶部をパッケージ30の内部に備えたものである。そして圧電デバイスは、記憶部に接続するとともに、パッケージ30の内面と外面とを導通した導通手段46を備えている。このパッケージ30の外面に調整端子42が設けてある。さらにパッケージ30の外面にこの調整端子42と導通手段46とを接続した配線パターン44が設けてある。この配線パターン44は、切断できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電デバイス、電子機器および圧電デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスには、様々なものがあるが、その一例としては圧電発振器を挙げることができる。この圧電発振器には、圧電振動片および集積回路(IC)チップをパッケージの内部に搭載したものがある。このパッケージの外面には、圧電発振器を基板に搭載するときに用いるユーザ端子や、圧電発振器の調整時のみに使用する調整端子が設けてある。そして圧電発振器の調整は、周波数をはじめとした諸特性を顧客の仕様に合わせるように、製造時に行っている。すなわち、この調整は、ICチップの回路内に設けられたメモリ回路を使って、圧電発振器の特性を目標性能に追い込む作業であり、調整項目は圧電発振器の種類によって様々である。このような調整作業は、圧電発振器の製造メーカ側で行う作業であり、この調整作業でメモリアクセスするために調整端子が必要となるが、圧電発振器を使用するユーザにとって調整端子は特に必要とするものではない。
【0003】
そして特許文献1に開示された圧電発振器は、容器体の下面の四隅部に外部接続用電極端子を備えるととともに、この外部接続用電極端子の間にデータ書込用電極パッドを備えている。
【0004】
また特許文献2に開示された圧電発振器は、パッケージの底面の四隅近傍に表面実装用のパッド電極を備えるととともに、パッケージの側面におけるパッド電極の近傍にデータを書き込むための側面電極を備えている。そしてパッケージを表面実装する際には、パッド電極が基板の配線パターンに半田付けされると同時に、側面電極に這い上がった半田によっても固定される。
【特許文献1】特開2007−103994号公報(4頁)
【特許文献2】特開2006−101276号公報(4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、電子機器が小型化されているのに伴い、これに搭載される圧電発振器に対しても小型化の要請がある。パッケージの底面にユーザ端子と調整端子を設けた場合に、圧電発振器の平面サイズを小型化すると、ユーザ端子と調整端子の間隔が狭くなってしまう。そして圧電発振器をユーザ側で基板に実装するときには、基板に設けた実装電極とユーザ端子が1対1に接合するようにしている。しかし実装ズレが起こった場合には、実装電極に調整端子が接合してしまう問題が生じる。その為、ユーザ側の半田実装精度に対応させた端子間距離を確保しなければならなく、圧電発振器の小型化を十分に達成できない、または広面積の調整端子を設けることができない問題があった。そしてメモリ回路は、本来、ユーザ使用時に調整端子がオープンであることを前提として設計されている。このため調整端子がユーザ端子とショートした場合は、圧電発振器の特性に異常をきたしてしまう。また、この様な実装ズレがなくても、何らかの外来ノイズが調整端子に加わると、メモリの状態が変わってしまう等という問題も生じる。
【0006】
またパッケージの側面に調整端子を設けた場合では、電子機器の小型化に伴って基板に搭載される電子デバイスの間隔も狭くなるので、実装時等に調整端子が他の電子デバイス等に触れやすくなったり、他の電子デバイスから電磁的な影響を受けやすくなったりしてしまう。この様なときに何らかの外来ノイズが調整端子に加わると、メモリの状態が変わってしまう等という問題が生じる。
【0007】
本発明は、製品完成後に不慮に電圧が印加されても、内部の回路に異常が発生するのを防止した圧電デバイスおよびこれの製造方法を提供することを目的とする。また前記圧電デバイスを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]外部から情報を入力可能になっている記憶部をパッケージの内部に備えた圧電デバイスであって、前記記憶部に接続するとともに、前記パッケージの内面と外面とを導通した導通手段を備え、前記パッケージの外面に調整端子を設けるとともに、前記調整端子と前記導通手段とを接続して切断可能になっている配線パターンを設けた、ことを特徴とする圧電デバイス。
記憶部へ情報を書き込み等した後に配線パターンを切断すれば、この切断後に外来ノイズ等の影響を受けて記憶部への誤書き込み等が発生するのを防止できる。したがって、圧電デバイスの平面サイズを小型化できるとともに、圧電デバイスが完成後に不慮に電圧が印加されても、内部の回路に異常が発生するのを防止できる。
【0010】
[適用例2]それぞれ1つの前記調整端子、前記配線パターンおよび前記導通手段で構成される調整要素を複数備え、前記各調整要素の前記配線パターンを隣接して前記パッケージの外面に設けたことを特徴とする適用例1に記載の圧電デバイス。
各配線パターンが隣接して配設してあるので、この配線パターンを1回の工程で切断できる。これにより配線パターンを切断する工程を複数回行う必要がないので、加工時間を短縮でき、また安定した品質の圧電デバイスを得ることができる。
【0011】
[適用例3]適用例1または2に記載の圧電デバイスを備えたことを特徴とする電子機器。
これにより圧電デバイスを基板に実装するときに実装ずれが生じて、本来オープンであるべき調整端子が実装電極とショートしてしまった場合や、調整端子に外来ノイズが入ってきた場合でも、回路的に異常を起こすことを防止できる。
【0012】
[適用例4]情報が入力される電極パッドを有する記憶部と、外面に調整端子と該調整端子と導通した配線パターンとを有するパッケージを備えた圧電デバイスの製造方法であって、前記パッケージの内部に前記記憶部を搭載し、且つ、前記電極パッドと前記調整端子とを前記配線パターンを介して導通接続し、前記記憶部の記憶情報を書き換えるために必要な前記情報を前記調整端子に入力し、前記記憶部内に情報を記憶した後、前記配線パターンを切断する、ことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
記憶部へ情報を書き込み等した後に配線パターンを切断すれば、この切断後に外来ノイズ等の影響を受けて記憶部への誤書き込み等が発生するのを防止できる。したがって、圧電デバイスの平面サイズを小型化できるとともに、圧電デバイスが完成した後に不慮に電圧が調整端子に印加されても、内部の回路に異常が発生するのを防止できる。
【0013】
[適用例5]前記配線パターンを介して前記記憶部に接続する前記調整端子を複数形成するとともに、前記各配線パターンを隣接して形成し、前記記憶部に前記情報を入力した後、前記配線パターンのうち互いに隣接している箇所を1回の工程で切断することを特徴とする適用例4に記載の圧電デバイスの製造方法。
各配線パターンが隣接して配設してあるので、この配線パターンを1回の工程で切断できる。これにより配線パターンを切断する工程を複数回行う必要がないので、加工時間を短縮でき、また安定した品質の圧電デバイスを得ることができる。
【0014】
[適用例6]前記記憶部に前記情報を入力した後、前記調整端子および前記配線パターンを除去することを特徴とする適用例4に記載の圧電デバイスの製造方法。
記憶部への情報の書き込み等を行った後に、配線パターンおよび調整端子をパッケージの外面から取り除いているので、圧電デバイスが完成すると、パッケージの外面に配線パターンおよび調整端子が存在しないこととなる。このような圧電デバイスは、この圧電デバイスを電子機器に実装するときに、前記実装電極とショートする等の悪い要因を完全に無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る圧電デバイス、電子機器および圧電デバイスの製造方法についての最良の実施形態について説明する。まず圧電デバイスについて説明するが、この圧電デバイスには様々な種類がある。このため以下の実施形態では、外部から情報を入力可能になっている記憶部をパッケージ内に備えた圧電デバイスの一例として、温度補償型圧電発振器について説明する。
【0016】
図1は温度補償型圧電発振器の底面図である。図2は温度補償型圧電発振器の構成を説明するブロック図である。温度補償型圧電発振器10は、圧電振動片12やICチップ14を内部に搭載したパッケージ30を備えている。このパッケージ30は、例えば、内部に凹陥部(図示せず)を備え、この凹陥部内に圧電振動片12やICチップ14を搭載した回路基板であるパッケージベースと、このパッケージベースの上面に接合して前記凹陥部を気密封止する蓋体(図示せず)とを備えた構成であればよい。また他の例として、パッケージ30は平板の絶縁基板を備え、圧電振動片12を気密封止した圧電振動子とICチップ14とを前記絶縁基板上に搭載して、前記圧電振動子とICチップ14の周囲を樹脂等でモールドした構成であってもよい。
【0017】
このパッケージ30は、この外面にユーザ端子34と調整端子42(第1調整端子42a、第2調整端子42b)を備えている。すなわち前述したパッケージ30の例示では、前記パッケージベースの外面や、前記絶縁基板の外面に、ユーザ端子34と調整端子42を備えていればよい。そして図1に示す場合のユーザ端子34と調整端子42は、パッケージ30の基板実装面32に設けてある。
【0018】
調整端子42は、ユーザ端子34の間に配設してある。この調整端子42には、配線パターン44の一端が接続している。配線パターン44は、パッケージ30の外面(基板実装面32)を引き回しており、またレーザ等によって切断できるようになっている。この配線パターン44の他端は、導通手段46に接続している。導通手段46は、パッケージ30の外面から内面に貫通しており、調整端子42とパッケージ30の内部側とを導通するようになっている。そして導通手段46の具体的な一例としては、スルーホールやビアホール等であればよい。
【0019】
なお導通手段46は、ユーザ端子34から最も離れた場所に配設するのが好ましい。これは調整端子42やユーザ端子34の表面を除いた、配線パターン44や導通手段46の表面には保護膜を形成しているが、レーザ等で配線パターン44を切断する時に前記保護膜が剥がれるおそれがあるので、このときの導通手段46とユーザ端子34とのショートの可能性を最小限にするためである。
このような調整端子42、配線パターン44および導通手段46で構成される調整要素40は、図1等に示す場合、パッケージ30に2つ設けてある。
【0020】
またユーザ端子34は、表面実装することが可能な端子であり、パッケージ30の内部側と導通するようになっている。ユーザ端子34は、図2に一例を示すように、グランド接続端子(GND端子)、電源端子(Vcc端子)、共用端子(Vcont/Clock端子)および出力端子(OUT端子)になっている。これらのユーザ端子34は、ICチップ14の電極パッドに導通している。そして完成した温度補償型圧電発振器10を発振動作させるために、前記グランド接続端子は、接地されICチップ14の基準電位を設定している。前記電源端子は、電源に接続されICチップ14に電力を供給している。そして前記電源端子と前記グランド接続端子は、これらの距離があらゆる2つのユーザ端子34間の距離の中で最も離れるように、パッケージ30の基板実装面32において対角の位置に設けることもできる。また前記共用端子は、ユーザと温度補償型圧電発振器10の製造メーカが共用するようになっている。そして前記共用端子には、ユーザが完成した温度補償型圧電発振器10を発振動作させるときにICチップ14に内蔵した電圧制御型の可変容量ダイオード(可変容量素子)の容量値を制御するための制御電圧(Vcont)が入力される。また前記共用端子には、製造メーカが使用するとき(温度補償型圧電発振器10の製造時)にクロック信号(Clock)が入力されて、ICチップ14に供給するようになっている。前記出力端子は、ICチップ14から外部に前記出力信号を出力するようになっている。
【0021】
またICチップ14は、導通手段46および配線パターン44を介して調整端子42と導通しているとともに、ユーザ端子34と導通している。このICチップ14は、記憶部16、圧電振動片12の共振周波数を制御する為の制御回路である温度補償回路18および発振回路20等を備えている。記憶部16は、制御回路の設定条件に関わるデータを記憶するものである。発振回路20は圧電振動片12と接続するとともに、前記共用端子に接続して制御電圧(Vcont)を入力するようになっている。そして発振回路20は、圧電振動片12との間で信号を増幅・発振して、前記出力端子を介して出力信号を出力するようになっている。
【0022】
また温度補償回路18は、発振回路20内に設けられた可変容量素子に、圧電振動片12の周波数温度特性を打ち消して発振回路20の周波数が温度に対して一定となるような補償電圧を生成し印加する。したがって温度補償回路18は、個々に異なる周波数温度特性のばらつきを持った圧電振動片12に対し、発振回路20の周波数が温度に対して安定となるよう、個々に最適な補償電圧を生成する必要がある。調整機能を持たせた温度補償回路18は、組み合わされた振動子に合わせて最適条件を求め、記憶部16を使って補正値データを記憶させる。このような作業を調整作業とよび、製造メーカ側が行なっている。調整後は、記憶部16の条件に従い温度補償回路18は動作する。これによって発振回路20は、温度に対して変動の少ない安定した周波数が出力されることになる。記憶部16は、調整端子42および前記共用端子に接続している。そして記憶部16は、前記共用端子からクロック信号(Clock)を入力するようになっている。また記憶部16は、調整端子42から情報を入力等するようになっている。なお前記情報の一例としては、前記補正値データである。
【0023】
このような温度補償型圧電発振器10の製造方法は、次のようになっている。まずユーザ端子34や調整端子42、配線パターン44、導通手段46を形成したパッケージ30に圧電振動片12やICチップ14を搭載する。この後、調整端子42にはICチップ14の記憶部16内のデータを書き換えるために必要な情報(一例として前記補正値データ)を入力する。第1調整端子42aは、CS(チップセレクト)端子であり、これに入力する信号のハイ(High)レベルまたはロウ(Low)レベルの違いによって、第2調整端子42bを介して記憶部16に情報の書き込みや読み出しの可否を制御する。例えば、第1調整端子42aがロウレベルの信号を入力した状態では第2調整端子42bに如何様な情報を入力しても記憶部16に情報の書き込み等ができなく、第1調整端子42aにハイレベルの信号を入力すれば記憶部16への書き込み等をできるように制御することができる。
【0024】
なお、上述の第2調整端子42bはDATA端子になっており、記憶部16に記憶させる情報を入力、または記憶部16に記憶されている情報を出力する端子になっている。
【0025】
この後、前記共用端子に入力されるクロック信号にあわせて、第2調整端子42bに情報を供給して、この情報を記憶部16に書き込む。書き込みが終了すると、第1調整端子42aへの信号の供給を止めて、記憶部16に書き込みができない状態にする。
【0026】
これにより記憶部16への情報の書き込みが終了するので、次に、記憶部16への誤書き込みを防止する処理を行う。この処理は、図1に破線で示す位置を切断する工程である。具体的には、調整端子42と記憶部16との間の導通経路である配線パターン44を切断して、調整端子42と導通手段46との間を断線(非導通化)させる工程である。そして断線処理は、レーザ等を配線パターン44に照射して行えばよい。また断線処理は、例えば、配線パターン44の切断処理を行う部分を露出するような開口を有するマスクでパッケージ30を覆った後、マスクの開口部分の配線パターン44をサンドブラスト等で除去する等の方法を用いて行ってもよい。これにより調整端子42は、情報を書き込んだり読み出したりするという機能を失うことになり、完成した温度補償型圧電発振器10を半田実装した際に、例えばユーザ端子34と調整端子42とが半田にて短絡してしまっても記憶部16への誤書き込みが防止され、更には温度補償型圧電発振器10の誤作動を防止する。なお記憶部16から情報を読み出す場合も、前述した情報を書き込む場合と同様にして行えばよい。この後、温度補償型圧電発振器10はユーザに提供され、このユーザによって電子機器を構成する基板に実装される。なお温度補償型圧電発振器10は、基板実装面32を前記基板に向けて実装される。
【0027】
以上説明した温度補償型圧電発振器10は、記憶部16への情報の書き込みや読み出し等が終了した後に、調整端子42と内部回路(ICチップ14)との導通を切断しているので、製品完成後に調整端子42に不慮に電圧が印加されても、誤書き込み等の記憶部16の状態に悪影響を与えるのを防止できる。
【0028】
また温度補償型圧電発振器10をユーザに提供した後に、電子機器を構成する基板に温度補償型圧電発振器10がずれて実装されてしまい、本来オープンであるべき調整端子42が基板上に設けた実装電極とショートしてしまった場合でも、記憶部16等の内部回路に異常を起こさない効果や、ユーザ端子34の負荷抵抗、負荷容量等が異常値になることを防止する効果を得ることができる。したがってユーザ側の半田実装精度に制限されることなくユーザ端子34と調整端子42との距離を決定することができるので、温度補償型圧電発振器10の平面サイズを小型化できる。
【0029】
なお温度補償型圧電発振器10(圧電デバイス)は、次のような調整要素40を備えていてもよい。図3は第1変形例に係る温度補償型圧電発振器の底面図である。この第1変形例に係る温度補償型圧電発振器50は、パッケージ30の基板実装面32に2つの調整要素40と複数のユーザ端子34を備えている。この調整要素40の一方の配線パターン44は、他方の配線パターン44に隣接してパッケージ30の基板実装面32に設けてある。そして一方の配線パターン44と他方の配線パターン44とが隣接している箇所44a(互いに向かいあっている箇所)の間には、導通手段46を設けていない。このため図3の破線で示す位置にレーザを照射する等して、一方の配線パターン44と他方の配線パターン44とを1回のレーザ照射工程で切断できるようになっている。
【0030】
そして配線パターン44の切断箇所を複数設定すると、それぞれの箇所で切断を行うための位置合わせを行う必要があるので、加工時間が長くかかり、また安定した品質のものが得られ難い等のおそれがある。しかしながら本変形例の温度補償型圧電発振器50は、切断箇所の位置合わせを1回行えばよいので、加工時間を短縮できる。また1つの温度補償型圧電発振器50について、配線パターン44毎に切断を行う場合に比べて、切断時に不具合が発生する可能性を小さくできるので、安定した品質のものを得ることができる。
【0031】
図4は第2の変形例に係る温度補償型圧電発振器の説明図である。ここで図4(A)は加工前の温度補償型圧電発振器の底面図、図4(B)は加工後の温度補償型圧電発振器の底面図である。この第2変形例に係る温度補償型圧電発振器52は、パッケージ30の基板実装面32に2つの調整要素40と複数のユーザ端子34を備えている。そして調整端子42および配線パターン44にレーザを照射する等して、図4(B)に示すように、調整端子42および配線パターン44を除去する。
【0032】
このような温度補償型圧電発振器52によれば、記憶部16への情報の書き込み等を行った後に、配線パターン44と調整端子42をパッケージ30の外面から取り除いているので、電子機器に実装するときに前記実装電極とショートする等の悪い要因を完全に無くすことができる。
【0033】
なお調整要素40は、前述した実施形態や変形例に示す形態に限定されることはなく、他の形態であってもよい。そして図5に示すように、第1変形例で説明したような、一方の配線パターン44と他方の配線パターン44とを隣接して設けた箇所44aを適宜設けることもできる。
【0034】
図6は第4の変形例に係る温度補償型圧電発振器の説明図である。ここで図6(A)は温度補償型圧電発振器の正面図、図6(B)は底面図である。第4の変形例に係る温度補償型圧電発振器54は、断面視してH型をしたパッケージ56を備えており、このパッケージ56の外面に調整要素40を設けたものである。すなわちパッケージ56は、下側に向けて開口した第1凹陥部58にICチップ14を収容するととともに、上側に向けて開口した第2凹陥部(図示せず)に圧電振動片12(図6には図示せず)を搭載して、この第2凹陥部の開口部分に蓋体60を設けて前記圧電振動片12を気密封止している。
【0035】
この温度補償型圧電発振器54の基板実装面32(第1凹陥部58を形成する側壁の下面)には、調整端子42とユーザ端子34が設けてある。そしてユーザ端子34には、基板実装面32とパッケージ56の側面を引き回した配線パターン44の一端が接続している。この配線パターン44の他端は、導通手段46に接続している。この導通手段46は、パッケージ56の外面から内面に配設しており、ICチップ14と導通するようになっている。
【0036】
このような温度補償型圧電発振器54であっても、レーザ等を用いて配線パターン44を切断しているので、製品完成後に調整端子42に不慮に電圧が印加されても、誤書き込み等の記憶部16の状態に悪影響を与えるのを防止できる。
【0037】
なお前述した実施形態および変形例で説明した調整要素40は、温度補償型圧電発振器10,50,52,54に2つ設けた形態であるが、本発明はこれに限定されることはない。すなわち圧電デバイスが備える調整要素40は、実施する形態に応じて1つであってもよく、3つ以上であってもよい。なお図7に示す温度補償型圧電発振器62は、調整要素40を4つ設けた形態の一例を示している。
【0038】
このような温度補償型圧電発振器10,50,52,54,62(温度補償型圧電発振器10)は、電子機器に実装することができる。温度補償型圧電発振器10を備える電子機器には様々なものがあるが、一例としてはディジタル式携帯電話や携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ等を挙げることができる。この具体例のうち、ディジタル式携帯電話は、次のような構成になっている。図8はディジタル式携帯電話の概略構成図である。ディジタル式携帯電話70は、送受信信号の送信部72および受信部74等を有し、この送信部72および受信部74に、これらを制御する中央演算装置(CPU)76が接続している。またCPU76は、送受信信号の変調および復調の他に表示部や情報入力のための操作キー等からなる情報の入出力部78や、RAM,ROM等からなるメモリ80の制御を行っている。このためCPU76には圧電デバイス82が取付けてあり、その出力周波数をCPU76に内蔵された所定の分周回路(不図示)等により、制御内容に適合したクロック信号として利用するようにしている。またCPU76は温度補償型圧電発振器10と接続しており、この温度補償型圧電発振器10は送信部72と受信部74とに接続している。これによりCPU76からの基本クロックが、環境温度が変化した場合に変動しても、温度補償型圧電発振器10により修正されて、送信部72および受信部74に与えられるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】温度補償型圧電発振器の底面図である。
【図2】温度補償型圧電発振器の構成を説明するブロック図である。
【図3】第1変形例に係る温度補償型圧電発振器の底面図である。
【図4】第2の変形例に係る温度補償型圧電発振器の説明図である。
【図5】第3の変形例に係る温度補償型圧電発振器の底面図である。
【図6】第4の変形例に係る温度補償型圧電発振器の説明図である。
【図7】第5の変形例に係る温度補償型圧電発振器の底面図である。
【図8】ディジタル式携帯電話の概略構成図である。
【符号の説明】
【0040】
10,50,52,54,62………温度補償型圧電発振器、12………圧電振動片、14………集積回路(IC)チップ、16………記憶部、30,56………パッケージ、34………ユーザ端子、40………調整要素、42………調整端子、44………配線パターン、46………導通手段、70………ディジタル式携帯電話。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報が入力される電極パッドを有する記憶部をパッケージの内部に備えた圧電デバイスであって、
前記記憶部の電極パッドに導通するとともに、前記パッケージの内面と外面とを導通した導通手段を備え、
前記パッケージの外面に調整端子を設けるとともに、前記調整端子と前記導通手段とを接続して切断可能になっている配線パターンを設けた、
ことを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
それぞれ1つの前記調整端子、前記配線パターンおよび前記導通手段で構成される調整要素を複数備え、前記各調整要素の前記配線パターンを隣接して前記パッケージの外面に設けたことを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電デバイスを備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
情報が入力される電極パッドを有する記憶部と、外面に調整端子と該調整端子と導通した配線パターンとを有するパッケージを備えた圧電デバイスの製造方法であって、
前記パッケージの内部に前記記憶部を搭載し、且つ、前記電極パッドと前記調整端子とを前記配線パターンを介して導通接続し、
前記記憶部の記憶情報を書き換えるために必要な前記情報を前記調整端子に入力し、前記記憶部内に情報を記憶した後、前記配線パターンを切断する、
ことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記配線パターンを介して前記記憶部に接続する前記調整端子を複数形成するとともに、前記各配線パターンを隣接して形成し、
前記記憶部に前記情報を入力した後、前記配線パターンのうち互いに隣接している箇所を1回の工程で切断することを特徴とする請求項4に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記記憶部に前記情報を入力した後、前記調整端子および前記配線パターンを除去することを特徴とする請求項4に記載の圧電デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−81700(P2009−81700A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249834(P2007−249834)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】