説明

圧電デバイスの周波数調整方法

【課題】振動腕を加工することなく周波数調整を行うことができる音叉型圧電振動片を備える圧電フレームを提供する。
【解決手段】圧電フレーム21は、基部の一端側から第1方向に伸びる少なくとも一対の振動腕を有し、この一対の振動腕に励振電極を有する音叉型圧電振動片と、振動腕の両外側において第1方向に伸びる一対の支持腕と、音叉型圧電振動片を囲む外枠部22と、一対の支持腕と外枠部とを接続する所定幅を有する接続部26と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば水晶からなる圧電基板を用いて、周波数調整を行うことのできる支持腕を持つ圧電デバイスの周波数調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信機器やOA機器等の小型軽量化及び高周波数化に伴って、それらに用いられる圧電振動素子も、より一層の小型化及び高周波数化への対応が求められている。また、回路基板に表面実装(SMD:Surface Mount Device)が可能な圧電振動素子が要求されている。この小型化した圧電振動素子の製造では製造過程で生じる発振周波数のばらつきを個々に調整することで所望の周波数に合わせ込みする工程を必要としている。
【0003】
従来、発振周波数の調整は音叉型の圧電振動素子(以下「音叉型圧電振動片」とする)の振動腕の先端に形成した金属皮膜をレーザー光で蒸散させることで、周波数の調整を行っていた。
特許文献1によれば、図8に示すような構成により周波数の調整を行っていた。図8(a)は音叉型圧電振動片の振動腕210の先端部分を拡大した上面図であり、図8(b)は図8(a)の構成側面図である。
【0004】
特許文献1によれば、所定の周波数より低い音叉型圧電振動片に対しての発振周波数の調整は、図8に示すように振動腕210の先端に形成した周波数の粗調整用の金属皮膜201を蒸散させ、微調整用の金属皮膜202を蒸散させることで振動椀210を軽くし、周波数を上昇させて、音叉型圧電振動片の周波数を調整していた。また、所定の周波数より高い音叉型圧電振動片に対しての発振周波数の調整は、振動腕の先端付近の重り付け用金属皮膜203を蒸散させ、振動腕210に付着させることで重くし、周波数を下降させて音叉型圧電振動片の周波数を調整していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−060470
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、振動腕の重り付け用金属皮膜が蒸散させた際に、その蒸散して飛び散った金属の一部が励振電極に付着したりすることがあり、発振周波数の調整後のCI(クリスタルインピーダンス)値が上昇する場合や、不要な周波数成分であるスプリアス(spurious)が発生したりする場合がある。CI値の上昇やスプリアスの発生は音叉型圧電振動片の特性を劣化させ、製品の歩留まりを悪化させていた。さらに、周波数調整を行うために粗調整用の金属皮膜と微調整用の金属皮膜とを形成するなど余分な作業工程が必要となっていた。
【0007】
本発明の目的は、音叉型圧電振動片の特性を左右する振動腕を加工することなく周波数調整を行うことができる圧電デバイスの周波数調整方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の観点の圧電デバイスの周波数調整方法は、基部の一端側から第1方向に伸びる少なくとも一対の振動腕を有し、この一対の振動腕に励振電極を有する音叉型圧電振動片と、振動腕の両外側において第1方向に伸びる一対の支持腕と、音叉型圧電振動子を囲む外枠部と、一対の支持腕と外枠部とを接続する所定幅を有する接続部とを有する圧電フレームを形成する圧電フレーム形成工程と、励振電極への導通を取り、発振周波数を測定する測定工程と、測定工程で得られた測定結果に基づいて、接続部の所定幅を加工させる加工工程と、を備える。
この構成により、圧電フレームを形成した後に発振周波数を測定しながら、接続部の幅を加工することで金属膜が飛散することもない。このため、CI値を上昇させることなくまた不要なスプリアスを生じさせることない圧電デバイスを製造することができる。
【0009】
第2の観点の圧電デバイスの周波数調整方法は、外枠部に形成され励振電極に導通する接続電極が形成されており、測定工程は接続電極にプローブを当てて発振周波数を測定する。
直接励振電極にプローブを当てず接続電極にプローブを当てることで完成品の圧電デバイスに近い発振状態で周波数調整を行うことができる。
【0010】
第3の観点の圧電デバイスの周波数調整方法は、第1又は第2の観点において、圧電フレームを支えるとベースを圧電フレームに接合する第1接合工程を備え、この第1接合工程の後に、測定工程と加工工程とを行う。
この構成により、完成品の圧電デバイスに近い状態にしてから周波数調整を行うことができる。
【0011】
第4の観点の圧電デバイスの周波数調整方法は、加工工程後に、真空状態で圧電フレームを覆う蓋部を接合する第2接合工程を備える。
真空中で蓋部を接合することで、長期間の使用にも耐えうる圧電デバイスとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の音叉型圧電振動片は支持腕を持ち、支持腕と外枠部との接合領域に周波数の接続部を設けることで、音叉型圧電振動片の特性を保ちながら周波数調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】圧電デバイス90の構成を示す図である。
【図2A】接続部付きの水晶フレーム20の構成を示す上面図である。
【図2B】別の接続部付きの水晶フレーム20の構成を示す上面図である。
【図3】(a)は、第1圧電デバイス100の第1リッド11aの内面図である。 (b)は、第1圧電デバイス100の接続部付きの水晶フレーム20の上面図である。 (c)は、第1圧電デバイス100の第1ベース31aの内面図である。 (d)は、第1圧電デバイス100の断面構成図である。
【図4】(a)は、第2圧電デバイス110の第2リッド11bの内面図である。 (b)は、第2圧電デバイス110の接続部付きの水晶フレーム20の上面図である。 (c)は、第2圧電デバイス110の第1ベース31bの内面図である。 (d)は、第2圧電デバイス110の断面構成図である。
【図5A】(a)は、水晶フレーム20のフォトム秒レーザーFRの照射位置を示す図である。 (b)は、基部方向の接続部26を切削する場合を示した拡大図である。 (c)は、振動腕24の先端方向の接続部26を切削する場合を示した拡大図である。 (d)は、基部方向と振動腕24の先端方向との両側を切削する場合を示した拡大図である。
【図5B】長さLの接続部26の一部を切削する場合を示した拡大図である。
【図6】両側調整腕幅Wと周波数fとの関係を示したグラフである。
【図7】周波数調整工程のフローチャートである。
【図8】従来の音叉型圧電振動片の振動腕210を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の圧電デバイス90は図1に示すようにリッド10と、水晶フレーム20と、ベース30との3層で形成され、これら3層が水晶基板で形成されている。図1は表面実装(SMD)タイプの圧電デバイス90をベース30のベース部側からみた図である。水晶フレーム20の音叉型圧電振動片は枠部と支持腕とを接続する部分に周波数調整するための接続部26を形成している。なお、リッド10とベース30とはガラスで形成してもよい。
【0015】
以下は第1実施形態として、水晶基板である圧電フレームは音叉型水晶振動片とその周囲に形成した枠部と、この枠部と音叉型水晶振動片とを接続する支持腕及び接続部を有する。その圧電フレーム(以下「接続部付きの水晶フレーム20」とする)の構成を示す。
【0016】
第2実施形態は水晶フレーム20に第1実施形態の接続部付きの水晶フレーム20を用い、リッド10とベース30とをガラスで形成した場合を示す。第1圧電デバイス100はこの接続部付きの水晶フレーム20と、ガラス製のリッド10及びベース30と、を接合した圧電デバイスである。
【0017】
また第3実施形態は第1実施形態の接続部付きの水晶フレーム20を用い、リッド10とベース30とを水晶基板で形成した場合を示す。第2圧電デバイス110は接続部付きの水晶フレーム20と、水晶製のリッド10及びベース30と、を接合した圧電デバイスである。
また第4実施形態は接続部付きの水晶フレーム20の周波数調整方法を示す。
【0018】
<第1実施形態:接続部付きの水晶フレーム20の構成>
接続部付きの水晶フレーム20は図2Aに示すように基部23及び振動腕24からなる音叉型水晶振動片21と、水晶外枠部22と、支持腕25と、接続部26とから構成され、同じ厚さで一体に水晶基板で形成されている。音叉型水晶振動片21は、たとえば32.768kHzで信号を発振する振動片で、極めて小型の振動片となっている。
【0019】
一対の振動腕24は基部23の一端からY方向に延びており、振動腕24の表裏両面には溝部27が形成されている。例えば、一本の振動腕24の表面には2箇所の溝部27が形成されており、振動腕24の裏面側にも同様に2箇所の溝部27が形成されている。つまり、一対の振動腕24には4箇所の溝部27が形成されている。溝部27の断面は略H型に形成され、音叉型水晶振動片21のCI値を低下させる効果がある。なお音叉型水晶振動片21は一本の振動腕24に2箇所の溝部27を形成しているが、1箇所又は複数箇所の溝部27を形成してもよく、また溝部27を形成しない場合においても周波数調整効果を持つことができる。
【0020】
振動腕24の先端付近は一定幅で幅広となりハンマー型の形状となっている。ハンマー型の形状部分は金属膜も形成することで錘の役目をしている。錘は振動腕24に電圧をかけた際に振動しやすくさせ、また安定した振動をするために形成されている。
【0021】
水晶外枠部22、基部23、支持腕25及び接続部26の表面に第1基部電極41と第2基部電極42とが形成され、裏面にも同様に第1基部電極41と第2基部電極42とが形成されている。表裏面の第1基部電極41と第2基部電極42とは、それぞれ水晶フレーム用のスルーホールTHで導通されている。
【0022】
表面側の第1基部電極41と第2基部電極42とは、周波数調整の際に直接プローブ針が接触するためキズがつくおそれがあるが、裏面側の第1基部電極41と第2基部電極42とにはプローブ針が接触することがないので、電気的導通が確保される。
【0023】
一対の振動腕24は、表面、裏面及び側面に第1励振電極43及び第2励振電極44が形成されており、第1励振電極43は第1基部電極41につながっており、第2励振電極44は第2基部電極42につながっている。
【0024】
一対の支持腕25は基部23の一端から振動腕24が伸びる方向(Y方向)に延びている。一対の支持腕25は振動腕24振動を圧電デバイス90の外部へ振動漏れとして伝えづらくさせ、またパッケージ外部の温度変化、または衝撃の影響を受けづらくさせる効果を持つ。
【0025】
水晶外枠部22はリッド10とベース30とを接合するために形成している。また水晶外枠部22は接続部26で支持腕25と接続している。接続部26は周波数を調整するために幅広(Y方向)でX方向に伸びた設計する。幅広に設計した接続部26は最終工程でフェトム秒レーザー等の切削技術を用いて接続部26の一部を削り、所定の周波数になるように幅狭に加工することで、音叉型圧電振動片の特性を維持した圧電デバイス90を製造することができる。
【0026】
接続部付きの水晶フレーム20は公知のフォトレジスト・エッチング技術を用いてその外形と溝部27とが形成される。また外形を形成した接続部付きの水晶フレーム20に対して公知のフォトレジスト・エッチング技術を用いて電極が形成される。これらの処理を経て図2Aに示す接続部付きの水晶フレーム20が完成する。
【0027】
図2Bは、別の接続部付きの水晶フレーム20を示したものであり、支持腕25が基部23とつながる根元の位置が図2Aと異なる。図2Bに示す一対の支持腕25は基部23から基部23の幅方向(X方向)に延びる部分25aを有し、その幅方向に延びた部分25aから振動腕24が伸びる方向(Y方向)に延びている。
【0028】
このような支持腕25は、より基部23から接続部26までの距離を長くすることができるため、振動腕24振動を圧電デバイス90の外部へ振動漏れとして伝えづらくさせ、またパッケージ外部の温度変化、または衝撃の影響を受けづらくさせる効果を持つ。
【0029】
<第2実施形態:第1圧電デバイス100の構成>
リッド10とベース30とがガラスで形成された第1圧電デバイス100について、図面を参照して説明する。図3は、本発明の第2実施形態にかかる第1圧電デバイス100の概略図を示している。
図3(a)は、第1圧電デバイス100のリッド10であるガラス製の第1リッド11aの内面図であり、図3(b)は音叉型水晶振動片21を有する水晶フレーム20の上面図であり、図3(c)はベース30であるガラス製の第1ベース31aの上面図である。図3(d)は、図3(b)のA−A断面で第1圧電デバイス100を示した概略断面図である。
【0030】
第1圧電デバイス100は、水晶フレーム20の水晶外枠部22を挟み込むように、その水晶外枠部22の下に第1ベース31aが接合され、水晶外枠部22の上に第1リッド11aが接合されている。
【0031】
第1リッド11aおよび第1ベース31aはガラスで形成され、図3(a)に示すように第1リッド11aは、リッド用凹部12を水晶外枠部側の片面に有している。
図3(b)に示すように、第1実施形態で示した接続部付きの水晶フレーム20を使用する。本実施形態では水晶外枠部22の表面及び裏面に金属膜45を備える。金属膜45は、スパッタリング若しくは真空蒸着などの手法により形成する。金属膜45はアルミニュウム(Al)層から構成され、アルミニュウム層の厚みは1000Å〜1500Å程度とする。
【0032】
図3(c)に示すように、第1ベース31aは、ベース用凹部32を水晶外枠部側の片面に有している。第1ベース31aはガラスからなり、エッチングによりベース用凹部32を設ける際、同時に第1スルーホール33と第2スルーホール34とを形成する。第1ベース31aの表面には、第1接続電極46及び第2接続電極47を備えている。
【0033】
第1スルーホール33及び第2スルーホール34は、その内面に金属膜が形成され、その内面の金属膜は、第1接続電極46及び第2接続電極47と同時にフォトリソグラフィ工程で作成される。内面の金属膜は金(Au)層又は銀(Ag)層が形成される。第1ベース31aは、底面にメタライジングされた第1外部電極48及び第2外部電極49を備える。第1接続電極46は、第1スルーホール33を通じて第1ベース31aの底面に設けた第1外部電極48に接続する。第2接続電極47は、第2スルーホール34を通じて第1ベース31aの底面に設けた第2外部電極49に接続する。
【0034】
水晶外枠部22の裏面に形成された第1基部電極41と第2基部電極42とは、それぞれ第1ベース31aの表面の第1接続電極46及び第2接続電極47に接続する。つまり、第1基部電極41は第1外部電極48と電気的に接続し、第2基部電極42は第2外部電極49と電気的に接続している。
【0035】
図3(d)の概略断面図で示すように、圧電デバイスは図3(a)と図3(b)と図3(c)とを重ね合わせ、陽極接合を行う。例えば、第1リッド11a及び第1ベース31aは、パイレックス(登録商標)ガラス、ホウ珪酸ガラス及びソーダガラスなどを材料としており、これらはナトリウムイオンなどの金属イオンを含有するガラスである。水晶外枠部22は、表面及び裏面に金属膜45を備え、金属膜45はアルミニュウムで形成されている。音叉型水晶振動子21を有する水晶外枠部22を中心として、リッド用凹部12を備えた第1リッド11a及びベース用凹部32を備えた第1ベース31aを重ねる。なお、本実施形態では金属膜45にアルミニュウム(Al)を用いたが、陽極接合できる金属であればよく、チタン(Ti),クロム(Cr),コバルト(Co),ニッケル(Ni),カドミウム(Cd)、スズ(Sn)などの陽極酸化可能な金属を用いることができる。
【0036】
本発明の第1圧電デバイス100は圧電デバイスの製造途中に、周波数調整をする。周波数調整は真空中あるいは不活性ガス中で、第1ベース31aと水晶外枠部22とを陽極接合技術により接合し、周波数の調整をする。周波数調整は実施形態4で詳細を後述する。周波数調整を終了した第1ベース31aと水晶フレーム20とは真空中あるいは不活性ガス中で第1リッド11aと水晶外枠部22とを陽極接合技術により接合し、第1スルーホール33と第2スルーホール34とを金属材料で封止することで第1圧電デバイス100を完成させる。
【0037】
陽極接合は、接合界面にある金属が酸化されるという化学反応により成立する。例えば、水晶外枠部22と第1リッド11a及び第1ベース31aとの陽極接合では、水晶外枠部22の両面にスパッタなどにより形成した金属膜をガラス部材の接合面に当接させ、陽極接合を行う。
【0038】
陽極接合させるときには、金属膜を陽極としガラス部材の接合面に対向する面に陰極を配置し、これらの間に電界を印加する。これにより、ガラスに含まれているナトリウムなどの金属イオンが陰極側に移動し、この結果接合界面においてガラス部材に接触している金属膜が酸化され、両者が接続した状態が得られる。なお、本実施形態では、アルミニュウムなどの所定の金属と所定の誘電体を接触させて加熱(200°C〜400°C程度)し、500V〜1kV程度の電圧を印加することで、金属とガラスとを接合している。
【0039】
なお、図3では1つの水晶外枠部22と1つの第1リッド11a及び1つの第1ベース31aとを接合した図を示している。しかし実際の製造においては、1枚の水晶ウエハに数百から数千の水晶フレーム20と、1枚のガラスウエハに数百から数千の第1リッド11aと、1枚のガラスウエハに数百から数千の第1ベース31aとを用意し、それらウエハ単位で接合して一度に数百から数千の圧電デバイスを製造する。
【0040】
<第3実施形態:第2圧電デバイス110の構成>
リッド10と第2層とベース30とが水晶基板で形成された第2圧電デバイス110について、図面を参照して説明する。図4は、本発明の第3実施形態にかかる第2圧電デバイス110の概略図を示している。
【0041】
図4(a)は、第2圧電デバイス110のリッド10である水晶基板で形成した第2リッド11bの内面図であり、図4(b)は水晶フレーム20の上面図であり、図4(c)はベース30である水晶基板で形成した第2ベース31bの上面図である。図4(d)は、図4(b)のB−B断面で第2圧電デバイス110を示した概略断面図である。
【0042】
第2圧電デバイス110の構成は3層とも水晶基板で形成されていて、電極及びスルーホール及び形状等は第1圧電デバイス100と同様なため、以下に相違点のみを説明する。なお同一構造部分は同じ符号を使用している。
【0043】
図4(b)に示すように、第1実施形態で示した接続部付きの水晶フレーム20を使用する。本実施形態では第1圧電デバイス100で形成した金属膜45が不要となるため金属膜45を形成しない。金属膜45を使用しない理由は第2リッド11b及び水晶外枠部22並びに第2ベース31bはシロキサン接合(Si−O−Si)技術により接合するためである。
【0044】
本発明の第2圧電デバイス110も圧電デバイスの製造途中に、周波数調整をする。周波数調整は真空中あるいは不活性ガス中で、第2ベース31bと水晶外枠部22とをシロキサン接合技術により接合し、周波数を調整する。周波数調整は実施形態4で詳細を後述する。周波数調整を終了した第2ベース31bと接続部付きの水晶フレーム20とは真空中あるいは不活性ガス中で第2リッド11bと水晶外枠部22とをシロキサン接合技術により接合し、第1スルーホール33と第2スルーホール34とを金属材料で封止することで第2圧電デバイス110を完成させる。
【0045】
シロキサン結合の接合面は鏡面状態にしておく必要があるため、電極の厚み(3000Åから4000Å)でさえ接合不良の原因となる。このため、水晶外枠部22の裏面に形成した第1基部電極41及び第2基部電極42と対向する面はその配線電極の厚み以上の窪みを形成する必要がある。また、第2ベース31bの表面に形成した第1接続電極46及び第2接続電極47とはその接続電極の厚み分だけの深さで窪みを形成する必要がある。つまり、接合面はシロキサン結合を阻害しないように、各電極の窪み及びその対向する面を形成する。
【0046】
なお、図3では1つの水晶外枠部22と1つの第2リッド11b及び1つの第2ベース31bとを接合した図を示している。しかし実際の製造においては、1枚の水晶ウエハに数百から数千の水晶フレーム20と、1枚の水晶ウエハに数百から数千の第2リッド11bと、1枚の水晶ウエハに数百から数千の第2ベース31bとを用意し、それらウエハ単位で接合して一度に数百から数千の圧電デバイスを製造する。
【0047】
<第4実施形態:周波数調整方法>
周波数調整は第2実施形態及び第3実施形態で説明したように、圧電デバイスの製造工程の途中に行う。図5A(a)は、例えばフェトム秒レーザーFLを用いて接続部付きの水晶フレーム20を周波数調整する箇所を示した図である。周波数調整は接続部26のY方向の一部を削ることで調整が可能である。周波数調整は幅広(Y方向)の接続部26の一方の幅W1と他方の幅W2とを同じ幅に加工するため、両側の接続部幅Wについて説明する。また、図5A(b)、(c)及び(d)は図5A(a)の破線範囲KAを拡大した図である。
【0048】
図5A(b)は基部方向の接続部26の一部DEを切削することで周波数調整をし、図5A(c)は音叉先端方向の接続部26の一部DEを切削することで周波数調整をし、図5A(d)は基部側と音叉先端方向との2方向の接続部26の一部DEを切削することで周波数調整をする場合を示している。両側の接続部幅Wは図5A(b)、図5A(c)、または図5A(d)のいずれかの方法を用いてフェトム秒レーザーFLを用いて切削幅dで切削し、所望する幅にしている。なお、本実施形態では切削方法としてフェトム秒レーザーFLを用いたが、他の切削技術を用いても良い。
【0049】
図5Bは接続部26がX方向に距離Lと長い場合に、2方向の接続部26の一部DEを切削した場合を示している。図5A(d)と比較してわかるように、切削した一部DEは接続部26のX方向のすべての領域を切削したのではなく半分程度削除したのみである。このような場合でも周波数調整を行うことができる。切削する一部DEの幅を細くすることでレーザーにより削る量が少なくなるため、同じ量周波数調整する場合でも調整時間を短くする効果がある。
【0050】
図6は両側の接続部幅Wと周波数fとの関係を示した実験データである。実験は両側の接続部幅Wを300μmから150μmへ変化させた場合に周波数が3600ppm程度上昇している様子を示している。つまり圧電デバイスを低めの周波数に設計し、両側の接続部幅Wを幅広から幅狭にすることで、例えば32.768kHzに合わせることができる。以上のように、本発明の周波数調整方法は音叉型水晶振動子21の振動腕24を加工しないために、音叉型水晶振動子21の特性を変化させることなく周波数調整することができる。
【0051】
図7は周波数調整工程のフローチャートを示す。ここでは代表して第1圧電デバイス100においての周波数調整を説明するが、第2圧電デバイス110についても同様に周波数調整できる。
【0052】
ステップS11では、陽極接合された水晶外枠部22と第1ベース31aとを周波数調整工程に配置する。
【0053】
ステップS12において、周波数調整工程では周波数の測定のために水晶外枠部22の第1基部電極41と第2基部電極42とにプローブ(不図示)を当てる。そして第1基部電極41と第2基部電極42とを介して音叉型水晶振動子21を振動させ、その発振周波数を測定する。なお、プローブはプローブ針で直接に電極と接するため、電極に傷がつきやすい。このため、プローブ針は仮に傷が付いて電気的に導通が阻害されない箇所、例えば水晶フレーム20の上面側の第1基部電極41と第2基部電極42との末端部で接続する。
【0054】
ステップS13において、不図示の測定装置によって音叉型水晶振動子21の周波数をモニタリングする。
ステップS14において、フェトム秒レーザーFLを用いて、所定の発振周波数になるように所望の切削幅dだけ切削され、両側の接続部の幅Wを幅狭にする。
【0055】
ステップS15において、測定装置は所望の周波数になったかを判断し、所望の周波数に達してない場合はステップS13に戻りさらに接続部の幅Wを幅狭にし、所望の周波数になった場合は周波数調整処理を終了し、ステップS16に移る。
【0056】
ステップS16において、音叉型水晶振動子21は周波数の調整済みになったため、陽極接合工程に移り、真空雰囲気で水晶フレーム20の水晶外枠部22と第1リッド11aとを陽極接合する。
第1ベース31aが陽極接合された状態で周波数調整を行うことができるため、第1リッド11aを接合した後であっても周波数はほとんど変動しない。また、このフローチャートでは水晶外枠部22と第1ベース31aとを最初に陽極接合しておいたが、冶具に水晶外枠部22を載せて水晶外枠部22のみで周波数調整してから、第1リッド11aと第1ベース31aとを陽極接合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上、本発明の好適実施例について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において上記各実施例に様々な変更・変形を加えて実施することができる。たとえば、本発明の音叉型圧電振動片21を有する水晶フレーム20は、水晶以外にニオブ酸リチウム等の様々な圧電単結晶材料を用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
10 … リッド
11a … 第1リッド
11b … 第2リッド
12 … リッド用凹部
20 … 水晶フレーム
21 … 接続部付の音叉型振動片
22 … 水晶外枠部
23 … 基部
24 … 振動腕
25 … 支持腕
26 … 接続部
27 … 溝部
30 … ベース
31a … 第1ベース
31b … 第2ベース
32 … ベース用凹部
33 … 第1スルーホール
34 … 第2スルーホール
41 … 第1基部電極
42 … 第2基部電極
43 … 第1励振電極
44 … 第2励振電極
45 … 金属膜
46 … 第1接続電極
47 … 第2接続電極
48 … 第1外部電極
49 … 第2外部電極
90 … 圧電デバイス
100 … 第1圧電デバイス
110 … 第2圧電デバイス
d … 切削幅
FL … フェトム秒レーザー
W … 両側調整腕幅(W1 … 一方の幅、W2 … 他方の幅)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部の一端側から第1方向に伸びる少なくとも一対の振動腕を有し、この一対の振動腕に励振電極を有する音叉型圧電振動片と、前記振動腕の両外側において前記第1方向に伸びる一対の支持腕と、前記音叉型圧電振動子を囲む外枠部と、前記一対の支持腕と前記外枠部とを接続する所定幅を有する接続部とを有する圧電フレームを形成する圧電フレーム形成工程と、
前記励振電極への導通を取り、発振周波数を測定する測定工程と、
前記測定工程で得られた測定結果に基づいて、前記接続部の所定幅を加工させる加工工程と、
を備えることを特徴とする圧電デバイスの周波数調整方法。
【請求項2】
前記外枠部に形成され前記励振電極に導通する接続電極が形成されており、
前記測定工程は前記接続電極にプローブを当てて発振周波数を測定することを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイスの周波数調整方法。
【請求項3】
前記圧電フレームを支えるとベースを前記圧電フレームに接合する第1接合工程を備え、
この第1接合工程の後に、前記測定工程と前記加工工程とを行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧電デバイスの周波数調整方法。
【請求項4】
前記加工工程後に、真空状態で前記圧電フレームを覆う蓋部を接合する第2接合工程を備えることを特徴とする請求項3に記載の圧電デバイスの周波数調整方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−273350(P2010−273350A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138828(P2010−138828)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【分割の表示】特願2008−2174(P2008−2174)の分割
【原出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】