説明

圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法

【課題】圧電振動子と回路素子とが積層された圧電デバイスの、低コスト化を実現する。
【解決手段】圧電デバイスとしての圧電発振器10は、圧電振動子20Aと回路素子としの半導体素子30Aとを備え、半導体素子30Aは、貫通電極40の構成として、基材部37と層間絶縁膜34とが貫かれ第2の半導体素子電極31bに達する穴部と、基材部37が貫かれるとともに穴部41の外側が囲まれた環状の溝部42と、穴部41と溝部42とにより間に形成され、基材部37と絶縁された隔壁部43と、穴部41内に充填されて回路素子電極としての第2の半導体素子電極31bと接続されるとともに、外部接続端子49と接続された導電体44と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動素子と圧電振動素子を発振させる機能を含む回路素子とを有する圧電デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水晶等の圧電振動素子を用いた圧電振動子は、基準クロック等を発生する重要な部品として、様々な電子機器に搭載されている。そして、圧電振動子は、携帯機器の進展に伴う小型化が進むとともに、回路素子との複合化等の高機能化が進んでいる。
【0003】
従来から、圧電振動素子と圧電振動素子を発振させる機能を含む回路素子とを組み合わせた圧電デバイスの一例としての圧電発振器に関しては、様々な構造が提案されている。特に、小型化を実現するために、回路素子に設けた貫通電極を利用し、圧電振動子と回路素子とを積み重ねた構成とした圧電発振器が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、図4に示すような、圧電振動子300と、発振用の回路素子としての半導体素子1とを備えた圧電発振器100が提示されている。以下、半導体素子1において、回路部が形成される側の面を能動面10aとし、反対側の面を裏面10bと称す。
半導体素子1の能動面10a側の電極120、123には、電気的に接続されて貫通電極112a、112bが形成され、配線が裏面10bに引き出され、裏面10bの裏面電極115a、115bに接続されている。半導体素子1と圧電振動子300とは、裏面電極115a、115bを介して接続されている。
貫通電極112a、112bは、半導体素子基材部にあけられた穴部と、該穴部の側壁を覆う絶縁膜と、該絶縁膜の表面を覆う導電膜と、該穴部内に充填された導電体と、を有している。
また、圧電発振器100の製造方法として、半導体素子ウェーハーがガラスの支持部材に貼り付けられ、半導体素子ウェーハーが研磨薄型化され、貫通電極112a、112b等が形成された後、支持部材が剥離除去され、半導体素子1として個片化される。次に、個片化された半導体素子1が圧電振動子300と接合されるという工程が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−88865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の半導体素子1の貫通電極112a、112bの構造においては、穴部側壁の絶縁膜がCVD等で形成される薄膜のため、厚みバラツキや外部応力による変形等により、絶縁性を損なう場合があるという課題があった。
また、前述の圧電発振器100の製造方法は、半導体素子ウェーハーに支持部材の貼り付けを行い、貫通電極等の加工後に支持部材を剥離し、半導体素子として個片化後に圧電振動子と接合するという工程である。この製造方法においては、支持部材が必要なこと、支持部材の着脱が必要なこと、及び半導体素子と圧電振動子とを一個ずつ接合する必要があるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例の圧電デバイスは、圧電振動素子と電気的に接続され、前記圧電振動素子が収納された収納容器の外面に形成された振動子電極を有する圧電振動子と、前記圧電振動素子を発振させる機能を含む発振回路と接続された回路素子電極を有する回路素子とが、前記振動子電極と前記回路素子電極とによって電気的に接続された圧電デバイスであって、前記回路素子は、基材部と、前記基材部のオモテ面に形成された層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上に形成された前記回路素子電極と、前記オモテ面と表裏関係をなす裏面から、前記基材部と前記層間絶縁膜とを貫通し、前記回路素子電極に達するように形成された穴部と、前記穴部の外周を囲む隔壁部と、前記裏面から前記基材部を貫通し、前記絶縁膜に達するように形成された、前記隔壁部を囲む環状の溝部と、前記穴部内に充填され、前記回路素子電極と接続された導電体とを含む貫通電極と、を有していることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、貫通電極の穴部は、隔壁部が層間絶縁膜に接し、さらに、隔壁部の外周に溝部が設けられていることにより回路素子の基材部と分離されている。これにより、貫通電極の穴部内に充填された導電体も、回路素子の基材部と分離される。
本適用例は、隔壁部と溝部とによって、穴部内に充填された導電体と回路素子の基材部との絶縁性を保つため、従来例のような厚みの小さい薄膜と比べ、絶縁部位の厚さを大きく取ることが可能となる。また、溝部により空間的に分離されるため、高い絶縁性が安定して保つことが可能となる。
【0010】
[適用例2]上記適用例に記載の圧電デバイスにおいて、前記溝部に、絶縁樹脂が充填されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、前記溝部が絶縁樹脂にて被覆されることから、前記圧電デバイスが他の回路基板に接続されて使用される際に、前記溝部に導電性異物が入り、前記隔壁部と前記基材部とが電気的に短絡することを防止できる。
【0012】
[適用例3]本適用例の圧電デバイスの製造方法は、圧電振動素子と電気的に接続され、前記圧電振動素子が収納された収納容器の外面に形成された振動子電極を有する圧電振動子と、前記圧電振動素子を発振させる機能を含む発振回路と接続された回路素子電極を有する回路素子とが、前記振動子電極と前記回路素子電極とによって電気的に接続されており、前記回路素子は、基材部と、前記基材部のオモテ面に形成された層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上に形成された前記回路素子電極と、前記オモテ面と表裏関係をなす裏面から、前記基材部と前記層間絶縁膜とを貫通し、前記回路素子電極に達するように形成された穴部と、前記穴部の外周を囲む隔壁部を有し前記裏面から前記基材部を貫通し、前記絶縁膜に達するように形成された環状の溝部と、前記穴部内に充填され、前記回路素子電極と接続された導電体とを含む貫通電極と、を有する圧電デバイスの製造方法であって、複数の前記圧電振動子が、平面的にマトリクス状に配置された圧電振動子シートと、複数の前記回路素子が平面的にマトリクス状に配置された回路素子シートとを接合シートを介して重ね合わせ、前記振動子電極と、対応する前記回路素子電極とを電気的に接続する工程と、前記回路素子の前記裏面の一部を厚さ方向に除去する工程と、前記回路素子の前記裏面から、前記回路素子の前記基材部を貫き前記層間絶縁膜に達する穴部と、前記基材部を貫き前記層間絶縁膜に達するように前記穴部の外側を囲んだ環状の溝部とを同時に形成することにより、前記穴部と前記溝部との間に隔壁部を形成する工程と、前記穴部の底部に存在する前記層間絶縁膜を除去し、前記回路素子電極の一部を露出させる工程と、前記穴部内に導電体を充填し、前記回路素子電極と接続する工程と、接続されている前記圧電振動子及び前記回路素子を、個片化する工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
この方法によれば、回路素子シートへ貫通電極を形成する際において、接合した圧電振動子シートが、回路素子シートに対する支持部材の機能を兼ねるため、特別に支持部材を製作することが不要となる。また、従来例では必要であった支持部材の剥離工程が不要となり、貫通電極形成工程を効率化することができる。さらに、回路素子と、圧電振動子との接合を、従来のように個々ではなく、シート状にて複数個を一括で接合できることから、組み立て工程を効率化できるという効果を有する。これらにより、製造コストを低減することが可能となることから、安価な圧電デバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる圧電発振器の概略図であり、(a)は、正断面図、(b)は、(a)の回路素子側から見た底面図。
【図2】(a)〜(d)は、本発明の第1実施形態にかかる圧電発振器の製造フローを示す断面図。
【図3】(e)〜(i)は、本発明の第1実施形態にかかる圧電発振器の、図2(d)に続く製造フローを示す断面図。
【図4】従来の圧電発振器の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかる圧電デバイスの実施形態を、図面を用いて説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、圧電デバイスの一例としての圧電発振器の第1実施形態を示し、(a)は、正断面図、(b)は、(a)の第1実施形態の圧電発振器をP方向から見た底面図である。
図1に示すように、圧電デバイスとしての圧電発振器10は、圧電振動素子(図示せず)が内包された圧電振動子20Aと、圧電振動素子を発振させる機能を少なくとも含む回路素子としての半導体素子30Aとが積層されている。なお、本例では、半導体素子30A上に圧電振動子20Aが重なった状態で接続されている。
【0017】
圧電振動子20Aは、例えば水晶などの圧電材料を用いて形成された圧電振動素子が内包されている。圧電振動子20Aの外面には、表面が金(Au)、半田(PbSn)、或いは錫(Sn)等から形成された圧電振動子電極21が備えられている。圧電振動素子と圧電振動子電極21は、電気的に接続されている。
【0018】
半導体素子30Aは、シリコン等からなる基材部37の発振回路35、層間絶縁膜34などを含む能動面33側に回路素子電極の一例としての第1の半導体素子電極31a、及び回路素子電極の一例としての第2の半導体素子電極31bを有している。なお、層間絶縁膜34は、酸化シリコン等から形成され、基材部37に接している。発振回路35は、少なくとも圧電振動素子を駆動させる機能を有し、基材部37の層間絶縁膜34の形成される側に形成されている。
第1の半導体素子電極31aの半導体素子能動面33側の面であるオモテ面(表面)31cには、金(Au)、半田(PbSn)、或いは錫(Sn)等からなるバンプ32aが形成されている。バンプ32aは、第1の半導体素子電極31aと電気的に接続されている。第2の半導体素子電極31bの半導体素子能動面33側の面であるオモテ面(表面)31dには、バンプ32aと同様に形成されたバンプ32bが形成されている。バンプ32bは、第2の半導体素子電極31bと電気的に接続されている。能動面33と反対側にあたる半導体素子裏面36には、半導体素子裏面36から第2の半導体素子電極31bに向かって形成された貫通電極40が設けられている。そして、貫通電極40の半導体素子裏面36側の開口端部には、外部接続端子49が設けられている。
【0019】
貫通電極40は、穴部41、溝部42、隔壁部43、及び導電体44を有している。穴部41は、半導体素子裏面36から半導体素子30Aの層間絶縁膜34と基材部37とを貫通し、第2の半導体素子電極31bの裏面が露出される状態に形成される。隔壁部43は、一端が層間絶縁膜34の表面に達し、穴部41の外周を囲むように形成されている。これにより、隔壁部43は、基材部37と絶縁されることとなる。溝部42は、隔壁部43の外周面に沿って環状に設けられており、半導体素子裏面36側から基材部37を貫き、層間絶縁膜34の表面が露出される状態に形成される。穴部41の内部には、銅等の素材からなる導電体44が充填されている。この導電体44によって、半導体素子能動面33側にある第2の半導体素子電極31bと、半導体素子裏面36側にある外部接続端子49とが半導体素子30Aの層間絶縁膜34と基材部37とを貫通した状態で電気的に接続されている。
このように、溝部42によって、穴部41に充填された導電体44と基材部37との絶縁が保持されると共に、導電体44によって第2の半導体素子電極31bと、外部接続端子49とが層間絶縁膜34と基材部37とを貫通した状態での電気的接続が可能となる。
【0020】
外部接続端子49は、半田ボール等により形成されており、圧電発振器10が他の回路基板に搭載される際に使用される。
【0021】
前述した圧電振動子20Aと、半導体素子30Aとの接続について説明する。圧電振動子20Aと、半導体素子30Aとの接続は、圧電振動子20Aと、半導体素子30Aの半導体素子能動面33側とが対向し、圧電振動子電極21と、第1の半導体素子電極31aとが、突起状の電極であるバンプ32aを介して電気的に接続されている。接続された電極部以外の、圧電振動子20Aと半導体素子30Aとの隙間は、接着剤であるエポキシ等の接着樹脂50Aが充填されている。接着樹脂50Aは、半導体素子30Aへの湿度等に対する保護の役目も兼ねている。
【0022】
本実施形態によれば、貫通電極40において、隔壁部43は、底面が層間絶縁膜34に接しており、外周が溝部42により半導体素子の基材部37と分離されている。溝部42は、従来のような厚みが極めて薄い薄膜によって絶縁を保っている構成と比較して、溝幅を大きく取ることが可能なため、隔壁部43内側の穴部41内に充填された導電体44と、半導体である基材部37とをより大きく離すことができる。これにより、高い絶縁性が安定して保たれるという効果を有する。
【0023】
また、外部接続端子49が他の回路基板に接合されて使用される際に、使用環境の変化により圧電発振器10と他の回路基板との熱膨張係数差による熱応力が接続部に発生する。図4に示す従来のような、外部接続用端子137と半導体素子電極としての外部接続用電極122との間に再配置配線層130が設けられ、再配置配線層130は応力緩和を兼ねた絶縁層133を有した複雑な構成と比較して、本例によれば、外部接続端子49が、柱状の貫通電極40の先端に突起上の端子を設けた片持ち梁の構成であることから、弾性を有し、簡易な構成であるにも拘らず熱応力が吸収され、実装信頼性を確保できるという効果を有する。
【0024】
また、圧電振動子20Aと半導体素子30Aとが接続された状態において、従来のように半導体素子裏面の電極と圧電素子の電極とが接続されて発振回路と圧電振動子の間に貫通電極が介する構成と比較して、発振回路35が存在する半導体素子能動面33側の第1の半導体素子電極31aが、貫通電極を介さずに最短距離にて圧電振動子電極21と接続され、発振回路35と圧電振動子20A間の導通経路を短くできることから、浮遊容量が少なくなり電気特性が向上する、及びノイズに強くなるという効果を有する。
【0025】
(第2実施形態)
第1実施形態に記載の圧電デバイスの一例としての圧電発振器10において、溝部42に、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等からなる絶縁樹脂が充填されている。
【0026】
本実施形態によれば、溝部42が絶縁樹脂にて被覆されることから、外部接続端子49が他の回路基板に接合されて使用される際に、溝部42に導電性異物が入り、隔壁部43と基材部37とが電気的に短絡することを防止できる。
【0027】
また、前記接合時に、外部接続端子49に外力が加わり、外部接続端子49に接続されている導電体44及び隔壁部43が変形する。過度の外力により前記変形が過大になると、導電体44と第2の半導体素子電極31bの裏面との接続界面、及び隔壁部43と層間絶縁膜34との接続界面へダメージが及ぶ場合がある。本実施形態によれば、溝部42に充填された絶縁樹脂が過度の変形を押さえることにより、前記接続界面へのダメージを防止することができる。
【0028】
(第1実施形態の製造方法)
図2、および図3は、圧電デバイスの一例としての圧電発振器の第1実施形態の製造方法を示す断面図である。ここで図2(a)から(d)、および図3(e)から(i)は、製造工程順を示したものであり、以下図面を参照しながら説明する。
【0029】
図2(a)に示すように、圧電振動素子を内部に収納し封止されてなる圧電振動子部20Zが平面的に複数個マトリクス状に配置された圧電振動子シート20と、圧電振動子部20Zを発振させる機能を有する回路素子としての半導体素子部30Zが平面的に複数個マトリクス状に配置された回路素子シートとしての半導体素子ウェーハー30とを、エポキシ系等の接着剤からなる樹脂シート50を介して重ね合わせる。重ね合わせに際しては、圧電振動子シート20と、半導体素子ウェーハー30の発振回路35がある半導体素子能動面33側とを対向させる。なお、樹脂シート50は、接着剤中に金、半田等の導電粒子を含んだ異方性導電シートや、液状の接着剤でも良い。
【0030】
次に、図2(b)に示すように、圧電振動子シート20及び半導体素子ウェーハー30を加熱しながら加圧することにより、圧電振動子シート20の、表面が金、錫、半田等からなる圧電振動子電極21と、半導体素子ウェーハー30の半導体素子能動面33側にある対応する第1の半導体素子電極31aとを、第1の半導体素子電極31aの図3(b)の下方側にあたるオモテ面(表面)に形成された金等からなる突起状の電極であるバンプ32aを介して接続する。接続とともに、圧電振動子シート20と半導体素子ウェーハー30との隙間に、樹脂シート50が変形し、接着樹脂が充填され、圧電振動子シート20と半導体素子ウェーハー30とが接着される。
以下、張り合わせた圧電振動子シート20に、半導体素子ウェーハー30を加工する際に支持する支持基板の機能を持たせて使用する。
【0031】
次に、図2(c)に示すように、半導体素子能動面33とは反対側となる半導体素子裏面36を研削等機械的手段にて削り、薄型化する。薄型化はエッチング等化学的手段でも良い。
【0032】
次に、図2(d)に示すように、半導体素子裏面36から、フォトリソ工程により半導体素子のシリコン等の基材部37を加工し、穴部41とともに穴部41の外側を囲んだ環状の溝部42を形成する。穴部41と溝部42とにより、間にシリコンの隔壁部43が形成される。
【0033】
次に、図3(e)に示すように、穴部41の底部に存在する層間絶縁膜34をフォトリソ工程により除去し、第2の半導体素子電極31bの裏面31e(図3(e)上方側の面)を露出させる。
【0034】
次に、図3(f)に示すように穴部41内に、印刷法、インクジェット法等の手段により、銅ペースト等の導電体44を充填し、硬化させ、第2の半導体素子電極31bの裏面と接続する。
【0035】
次に、図3(g)に示すように導電体44の穴部41からの露出部に接続して、半田ボール等の外部接続端子49を形成する。外部接続端子49の形成は、同様に、印刷法、インクジェット法等による。あるいは、予め球状等に成形された複数の半田ボールを機械的に導電体44の位置にプレーシングし、加熱溶融接合させてもよい。
【0036】
次に、図3(h)に示すように、複数の接続されている圧電振動子部20Zと半導体素子部30Zを、ダイシング装置等で、一点鎖線で示した位置にて切断することにより、個片化する。
【0037】
以上により、図3(i)に示すように、個片化された圧電振動子20Aと個片化された半導体素子30Aが積み重なり電気的に接続された圧電発振器10が完成する。
【0038】
本実施形態の製造方法によれば、半導体素子ウェーハー30を薄型化し、貫通電極40等を形成する際において、接合した圧電振動子シート20が、半導体素子ウェーハー30に対する支持部材の機能を兼ねるため、従来のように特別に支持部材を作成することや、支持部材を接着後剥離する工程を入れることが不要となり、製造工程を効率化できる。
【0039】
また、半導体素子30Aと、圧電振動子20Aとの接合を、従来のように個々ではなく、複数個を一括でウェーハー状及びシート状にて接合できることから、組み立て工程を効率化できる。
【0040】
また、貫通電極40の導電体44と、半導体である基材部37との絶縁を保つ手段として、従来のような穴部形成後の追加工程による絶縁膜形成ではなく、穴部41形成と同時の加工にて、外周の溝部42の形成を行うことにより、穴部41内に充填される導電体44と基材部37とを、容易に電気的に絶縁された状態とすることができることから、絶縁化工程を低コスト化できる。
【0041】
また、従来は、半導体ウェーハーを支持板から剥離後に個片化し、圧電素子と接合する工程があるため、取り扱い上半導体素子ウェーハーを大幅に薄型化することはできなかったが、本実施形態によれば、半導体素子ウェーハー30を圧電振動子シート20へ接着したまま、剥離せずに最終工程まで流動可能なため、半導体素子ウェーハー30を極限まで薄くすることができ、同一径の貫通電極でも深さを低減しアスペクト比を下げることができることから、貫通電極の形成が容易となるという効果を有する。
【0042】
なお、上述の実施形態では、電子デバイスの一例として圧電発振器を用いて説明したが、電子デバイスとしてはこれに限らない。他の電子デバイスとしては、例えば、圧電振動素子を用いたセンサー素子とその発振回路を含む駆動回路を有するセンシングデバイス(例えば、ジャイロセンサー、圧力センサー等)などであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…圧電発振器、20…圧電振動子シート、20A…圧電振動子、20Z…圧電振動子部、21…圧電振動子電極、30…半導体素子ウェーハー、30A…半導体素子、30Z…半導体素子部、31a,31b…回路素子電極としての半導体素子電極、32a,32b…バンプ、33…半導体素子能動面、34…層間絶縁膜、35…発振回路、36…半導体素子裏面、37…基材部、40…貫通電極、41…穴部、42…溝部、43…隔壁部、44…導電体、49…外部接続端子、50…樹脂シート、50A…接着樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子と電気的に接続され、前記圧電振動素子が収納された収納容器の外面に形成された振動子電極を有する圧電振動子と、
前記圧電振動素子を発振させる機能を含む発振回路と接続された回路素子電極を有する回路素子とが、前記振動子電極と前記回路素子電極とによって電気的に接続された圧電デバイスであって、
前記回路素子は、
基材部と、
前記基材部のオモテ面に形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に形成された前記回路素子電極と、
前記オモテ面と表裏関係をなす裏面から、前記基材部と前記層間絶縁膜とを貫通し、前記回路素子電極に達するように形成された穴部と、前記穴部の外周を囲む隔壁部と、前記裏面から前記基材部を貫通し、前記絶縁膜に達するように形成された、前記隔壁部を囲む環状の溝部と、前記穴部内に充填され、前記回路素子電極と接続された導電体とを含む貫通電極と、
を有していることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記溝部に、絶縁樹脂が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
圧電振動素子と電気的に接続され、前記圧電振動素子が収納された収納容器の外面に形成された振動子電極を有する圧電振動子と、
前記圧電振動素子を発振させる機能を含む発振回路と接続された回路素子電極を有する回路素子とが、前記振動子電極と前記回路素子電極とによって電気的に接続されており、
前記回路素子は、
基材部と、
前記基材部のオモテ面に形成された層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に形成された前記回路素子電極と、
前記オモテ面と表裏関係をなす裏面から、前記基材部と前記層間絶縁膜とを貫通し、前記回路素子電極に達するように形成された穴部と、前記穴部の外周を囲む隔壁部を有し前記裏面から前記基材部を貫通し、前記絶縁膜に達するように形成された環状の溝部と、前記穴部内に充填され、前記回路素子電極と接続された導電体とを含む貫通電極と、
を有する圧電デバイスの製造方法であって、
複数の前記圧電振動子が、平面的にマトリクス状に配置された圧電振動子シートと、複数の前記回路素子が平面的にマトリクス状に配置された回路素子シートとを接合シートを介して重ね合わせ、前記振動子電極と、対応する前記回路素子電極とを電気的に接続する工程と、
前記回路素子の前記裏面の一部を厚さ方向に除去する工程と、
前記回路素子の前記裏面から、前記回路素子の前記基材部を貫き前記層間絶縁膜に達する穴部と、前記基材部を貫き前記層間絶縁膜に達するように前記穴部の外側を囲んだ環状の溝部とを同時に形成することにより、前記穴部と前記溝部との間に隔壁部を形成する工程と、
前記穴部の底部に存在する前記層間絶縁膜を除去し、前記回路素子電極の一部を露出させる工程と、
前記穴部内に導電体を充填し、前記回路素子電極と接続する工程と、
接続されている前記圧電振動子及び前記回路素子を個片化する工程と、
を有することを特徴とする圧電デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−155444(P2011−155444A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15133(P2010−15133)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】