説明

圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法

【課題】 電極間を確実に電気的接合するとともに圧電デバイス内に有害ガスや水分が含まれない圧電デバイスを提供する。
【解決手段】 圧電デバイス(100)は、一対の励振電極(104)が形成された圧電振動片(101)と圧電振動片を囲んで圧電振動片と一体に形成され一主面と他主面とを含む枠体(102)と励振電極から枠体の第1主面まで引き出された一対の引出電極(105)とを有する圧電振動板(10)と、一対の外部電極(115)を有する第1面(M1)と一対の外部電極から電気的に接続する一対の接続電極を有する第2面(M2)とを有し第2面が一主面に接合する第1板(11)と、第1板と枠体の第1主面とを接合するため枠体の一主面を周回するように環状に配置されたガラス封止材(SLa)と、一対の引出電極と一対の接続電極とを電気的に接続する導電性接着剤(13)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リッド、ベース及び振動片をウエハ単位で製造する際に、パッケージ内に不要なガスが残らないようにした圧電デバイスの製造方法及び圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスは、より一層の小型化が要求されている。特許文献1では量産化を実現するための技術として、例えば圧電振動片を有する圧電ウエハを、上下方向から同様の形状のリッドウエハ及びベースウエハで挟んで3層の基板を互いに接合する技術が提案されている。
【0003】
特許文献1では、圧電ウエハとベースウエハとの電極間を接続するために、可撓性を有する樹脂突起部の表面に電極を形成して、その突起状の電極を介して導通を行われる。また圧電ウエハ、リッドウエハ及びベースウエハはプラズマ接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−109528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プラズマ接合は大きな設備が必要であり、簡便な方法で圧電ウエハ、リッドウエハ及びベースウエハの接合が望まれている。また、簡便な方法で接合する際にも圧電ウエハとベースウエハとの電極間を確実に電気的接合する方法が求められ、さらに圧電デバイスの製品安定性を確保するため、圧電デバイス内に有害ガスや水分を除くことが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、電極間を確実に電気的接合するとともに圧電デバイス内に有害ガスや水分が含まれない圧電デバイスの製造方法、圧電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点の圧電デバイスは、一対の励振電極が形成された圧電振動片と圧電振動片を囲んで圧電振動片と一体に形成され一主面と他主面とを含む枠体と励振電極から枠体の第1主面まで引き出された一対の引出電極とを有する圧電振動板と、一対の外部電極を有する第1面と一対の外部電極から電気的に接続する一対の接続電極を有する第2面とを有し第2面が一主面に接合する第1板と、第1板と枠体の第1主面とを接合するため枠体の一主面を周回するように環状に配置されたガラス封止材と、一対の引出電極と一対の接続電極とを電気的に接続する導電性接着剤と、を備える。
【0008】
第2観点の圧電デバイスは、枠体は四辺からなる矩形形状であり、ガラス封止材は導電性接着剤を枠体の一辺の幅内で囲むように配置される。
第3観点の圧電デバイスは、第1面と第2面とを結ぶ側面に、第1板の中心方向に窪んだキャスタレーションと、キャスタレーションに形成され一対の外部電極から一対の接続電極を電気的に接続する一対の側面電極と、を備える。
【0009】
第4観点の圧電デバイスは、圧電振動片を密閉する他主面に接合する第2板と、第2板と枠体の第2主面とを接合するため枠体の他主面を周回するように環状に配置されたガラス接合材と、を備える。
第5観点の圧電デバイスの圧電振動片は、厚みすべり振動モードを有する圧電振動片である。
【0010】
第6観点の圧電デバイスの製造方法は、一対の励振電極が形成された圧電振動片と、圧電振動片を囲んで圧電振動片と一体に形成され一主面と他主面とを含む枠体と、励振電極から枠体の第1主面まで引き出された一対の引出電極と、を有する圧電振動板を複数有する圧電ウエハを用意する。そして製造方法は、一対の外部電極を含む第1面及び一対の接続電極を含み第1面と反対側の第2面とを有する第1板を複数含み、隣り合う第1板間に第1面から第2面まで貫通する貫通孔と貫通孔に外部電極と接続電極とを電気的に接続する側面電極とが形成された第1ウエハを用意する工程と、枠体又は第1板の周囲にガラス封止材を塗布し、ガラス封止材を仮焼成する工程と、ガラス封止材を仮焼成した後、引出電極又は接続電極に導電性接着剤を塗布する工程と、導電性接着剤を塗布する工程後に、圧電ウエハと第1ウエハとを接合する第1接合工程と、を備える。
【0011】
第7観点の圧電デバイスの製造方法において、枠体は四辺からなる矩形形状であり、ガラス封止材を塗布する工程は、四辺の一辺の幅内で導電性接着剤が塗布される領域を囲むように塗布する。
第8観点の圧電デバイスの製造方法は、導電性接着剤を塗布する工程後と第1接合工程前に、導電性接着剤を仮焼成する。
第9観点の圧電デバイスの製造方法は、第2板を複数含む第2ウエハを用意する工程と、枠体又は第2板の周囲にガラス封止材を塗布しガラス封止材を仮焼成する工程と、第1接合工程後に、圧電ウエハと第2ウエハとを接合する第2接合工程と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、電極間を確実に電気的接合するとともに圧電デバイス内に有害ガスや水分が含まれない。また本発明の圧電デバイスは有害ガスや水分が含まれないため安定して振動又は発振する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1圧電デバイス100の分解斜視図である。
【図2】(a)は第1水晶フレーム10と第1ベース11と第1リッド12とが接合された後の断面図であり、図1のA−A’断面図である。 (b)は第1ベース11に封止材SLaが形成された時の平面図である。 (c)は第1ベース11に封止材SLcが形成された時の平面図である。
【図3】第1圧電デバイス100の製造を示したフローチャートである。
【図4】水晶ウエハ10Wの平面図である。
【図5】ベースウエハ11Wの平面図である。
【図6】リッドウエハ12Wの平面図である。
【図7】第2圧電デバイス110の分解斜視図である。
【図8】水晶ウエハ20Wの平面図である。
【図9】ベースウエハ21Wの平面図である。
【図10】第3圧電デバイス120の分解斜視図である。
【図11】水晶ウエハ30Wの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
以下の各実施形態において、圧電振動片として厚みすべり振動モードを有するATカットの水晶振動片が使われている。ここで、ATカットの水晶振動片は、主面(XZ面)が結晶軸(XYZ)のY軸に対して、X軸を中心としてZ軸からY軸方向に35度15分傾斜している。このため、第1実施形態に於いて第1圧電デバイス100の長手方向をX軸方向、第1圧電デバイス100の高さ方向をY’軸方向、X及びY’軸方向に垂直な方向をZ’軸として説明する。以下、第2実施形態、第3実施形態に於いても同様である。
【0015】
(第1実施形態)
<第1圧電デバイス100の全体構成>
第1圧電デバイス100の全体構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
図1は、第1圧電デバイス100の第1リッド12側から見た分割した状態の斜視図であり、図2(a)は第1水晶フレーム10と第1ベース11と第1リッド12とが接合された後の図1のA−A’断面図であり、(b)は第1ベース11に封止材SLaが形成された状態を示す平面図であり、(c)は(b)の変形例で、第1ベース11に封止材SLcが形成された状態を示す平面図である。
【0016】
図1及び図2で示されたように、第1圧電デバイス100はATカットの第1水晶フレーム10と、第1ベース11と第1リッド12とから構成される。第1ベース11と第1リッド12とは水晶材料からなる。また第1水晶フレーム10と第1ベース11とは封止材SLaで接合され、第1水晶フレーム10と第1リッド12とは封止材SLbで接合される。第1水晶フレーム10に第1ベース11と第1リッド12とが接合されキャビティCT(図2(a)を参照)が形成され、キャビティCT内は真空状態か又は不活性ガスで満たされた状態となる。
【0017】
第1水晶フレーム10はATカットされた水晶材料で形成され、−Y’軸側の水晶接合面M3と+Y’軸側の水晶接合面M4とを有している。第1水晶フレーム10は水晶振動部101と水晶振動部101を囲む外枠102とで構成されている。また、水晶振動部101と外枠102との間には、上下を貫通するL字型の間隙部103が形成され、間隙部103が形成されていない部分が水晶振動部101と外枠102との連結部109a、109bとなっている。水晶振動部101の両主面には励振電極104a、104b(図1、図2(a)を参照)がそれぞれ形成されている。外枠102の両面には励振電極104a、104bと接続された引出電極105a、105b(図1を参照)がそれぞれ形成されている。
【0018】
さらに、第1水晶フレーム10のX軸方向の両側には、水晶キャスタレーション106a、106bが形成されている。また、水晶キャスタレーション106aには水晶側面電極107aが形成される。水晶側面電極107aは引出電極105aに接続される。同様に、水晶キャスタレーション106bには水晶側面電極107bが形成される。水晶側面電極107bは引出電極105bに接続されている。水晶キャスタレーション106a、106bは角丸の長方形貫通孔BH1(図4を参照)がダイシングされた際に形成される。
【0019】
第1ベース11は、実装面M1及び接合面M2を有している。また、第1ベース11の実装面M1には一対の外部電極115a、115bが形成され、第1ベース11のX軸方向の両側には側面キャスタレーション116a、116bが形成されている。また、側面キャスタレーション116aには外部電極115aと接続された側面電極117aが形成され、側面キャスタレーション116bには外部電極115bと接続された側面電極117bが形成されている。接合面M2には側面電極117aと接続された接続電極118aが形成され、側面電極117bには接続電極118bが形成されている。なお側面キャスタレーション116a、116bは角丸の長方形貫通孔BH1(図5を参照)がダイシングされた際に形成される。
【0020】
第1リッド12は接合面M5を有している。第1リッド12のX軸方向の両側には、側面キャスタレーション126a、126bが形成されている。側面キャスタレーション126a、126bは角丸の長方形貫通孔BH1(図6を参照)がダイシングされた際に形成される。
【0021】
封止材SLa,SLbは、バナジウムなどを含む低融点ガラスである。封止材SLa,SLbは、シート状に形成された状態で描かれているが、塗布されたりしてもよい。つまり第1ベース11の接合面M2、水晶接合面M3、水晶接合面M4又は第1リッド12の接合面M5に塗布されて形成されてもよい。
【0022】
封止材SLa,SLbとなる低融点ガラスでは、耐水性・耐湿性に優れるので、空気中の水分がキャビティ内に進入したりキャビティ内の真空度を悪化させたりすることが防止できる。また、低融点ガラスは350℃から400℃で溶融する鉛フリーのバナジウム系ガラスである。バナジウム系ガラスはバインダーと溶剤とが加えられたペースト状であり、焼成され冷却されることで他の部材と接着する。また、このバナジウム系ガラスは接着時の気密性と耐水性・耐湿性などの信頼性が高い。さらに、バナジウム系ガラスはガラス構造を制御することにより熱膨張係数も柔軟に制御できる。
【0023】
図2(a)に示されるように、第1ベース11の接合面M2と第1水晶フレーム10の外枠102の水晶接合面M3との間に塗布された封止材SLaは、第1水晶フレーム10と第1ベース11とを接合する。第1リッド12の接合面M5と第1水晶フレーム10の水晶接合面M4との間に塗布された封止材SLbは、第1水晶フレーム10と第1リッド12とを接合する。このようにして第1水晶フレーム10と第1ベース11と第1リッド12とが接合される。
【0024】
図2(b)に示されるように、第1ベース11は、接合面M2に接続電極118aおよび接続電極118bを有する。接続電極118aは外部電極115aと側面電極117aとに電気的に接続している。接続電極118bは外部電極115bと側面電極117bとに電気的に接続している。また接続電極118a、118bに導電性接着剤13が形成されている。図2(b)では導電性接着剤13は1個載置されているが複数個載置してもよい。
【0025】
図2(a),(b)に示されるように、封止材SLaは、接合面M2の接続電極118aおよび接続電極118bの外周を囲むように覆い導電性接着剤13を封じ込む空間119が形成される。封止材SLa及び導電性接着剤13は、第1ベース11と第1水晶フレーム10とが窒素ガス中又は真空中で300〜400°Cに加熱され押圧されることで第1水晶フレーム10と第1ベース11とを接合すると同時に、第1水晶フレーム10の引出電極105a、105bと接続電極118a、118bとを電気的に接続させる。このため、第1水晶フレーム10と第1ベース11と第1リッド12とで形成されるキャビティCTは外部との気密性が保持され、導電性接着剤13から発生したガスがキャビティCT内部に侵入することを防止する。
【0026】
図2(c)は、封止材SLの変形例を示している。封止材SLcは導電性接着剤13を封じ込む空間119が広域になっている。図2(b)で示された封止材SLaは接続電極118a及び接続電極118bの外周に沿って形成されているが、図2(c)で示された封止材SLcは、接続電極118a及び接続電極118b並びにそれらの周囲を囲むように形成されている。
【0027】
<第1圧電デバイス100の製造方法>
図3は、第1圧電デバイス100の製造を示したフローチャートである。また、図4は水晶ウエハ10Wの平面図で、図5はベースウエハ11Wの平面図で、図6はリッドウエハ12Wの平面図である。
【0028】
ステップS10では、第1水晶フレーム10が製造される。ステップS10はステップS101〜S104を含んでいる。
ステップS101において、水晶ウエハ10W(図4を参照)に、エッチングにより複数の第1水晶フレーム10の外形が形成される。すなわち、水晶振動部101と、外枠102と、間隙部103とが形成され、各第1水晶フレーム10の短辺に図4に示されたように水晶ウエハ10Wを貫通するように角丸の長方形貫通孔BH1が形成される。角丸の長方形形貫通孔BH1が2分割されると1つのキャスタレーション106a又は106b(図1を参照)になる。
【0029】
ステップS102において、スパッタリングまたは真空蒸着によって水晶ウエハ10Wの両面及び角丸の長方形貫通孔BH1にクロム層及び金層が順に形成される。ここで、下地としてのクロム層の厚さは例えば0.05μm〜0.1μmであり、金層の厚さは例えば0.2μm〜2μmである。
【0030】
ステップS103において、金属層の全面にフォトレジストが均一に塗布される。そして露光装置(不図示)を用いて、フォトマスクに描かれた励振電極104a、104b、引出出極105a、105b及び水晶側面電極107a、107bのパターンが水晶ウエハ10Wに露光される。次に、フォトレジストから露出した金属層がエッチングされる。これにより、図1及び図2に示されたように水晶ウエハ10W両面に励振電極104a、104b及び引出出極105a、105bが形成され、角丸の長方形貫通孔BH1に水晶側面電極107a、107bが形成される。
【0031】
ステップS104において、水晶ウエハ10Wの枠部102のM3面(図1を参照)に封止材SLaが均一に形成される。例えば低融点ガラスである封止材SLaは、スクリーン印刷で水晶ウエハ10Wの枠部102のM3面に形成され仮焼成される。また、封止材SLaはベースウエハ11WのM2面(図1を参照)に形成してもよい。
【0032】
ステップS11では、第1ベース11が製造される。ステップS11はステップS111〜S114を含んでいる。
ステップS111において、ベースウエハ11Wを用意する。そして、エッチングによりベースウエハ11WのX軸方向の両辺にはベースウエハ11Wを貫通するように角丸の長方形貫通孔BH1(図5を参照)が形成される。角丸の長方形貫通孔BH1が2分割されると1つのキャスタレーション116a又は116b(図1を参照)になる。
【0033】
ステップS112において、スパッタリングまたは真空蒸着によってベースウエハ11Wの実装面M1及び角丸の長方形貫通孔BH1にクロム層及び金層が順に形成される。ここで、下地としてのクロム層の厚さは例えば0.05μm〜0.1μmであり、金層の厚さは例えば0.2μm〜2μmである。
【0034】
ステップS113において、金属層にフォトレジストが均一に塗布される。そして露光装置(不図示)を用いて、フォトマスクに描かれた外部電極115a、115b、側面電極117a、117b及び接続電極118a、118bのパターンがベースウエハ11Wに露光される。次に、フォトレジストから露出した金属層がエッチングされる。これにより、図1及び図2に示されたようにベースウエハ11Wの実装面M1に外部電極115a、115bが形成され、角丸の長方形貫通孔BH1に側面電極117a、117bが形成され、ベース接合面M2に接続電極118a、118bが形成される。
【0035】
ステップS114において、ベースウエハ11Wの接続電極118a、118bに導電性接着剤13を塗布又は載置した後仮焼成する。仮焼成によって導電性接着剤13から発生するガスは取り除かれる。
【0036】
ステップS12では、第1リッド12が製造される。ステップS12はステップS121〜S122を含んでいる。
ステップS121において、リッドウエハ12Wを用意する。そして、エッチングによりリッドウエハ12Wの短辺にリッドウエハ12Wを貫通するように角丸の長方形貫通孔BH1(図6を参照)が形成される。角丸の長方形貫通孔BH1が2分割されると1つのキャスタレーション126a又は126b(図1を参照)になる。
【0037】
ステップS122において、リッドウエハ12Wの接合面M5(図1を参照)に封止材SLbが均一に形成される。例えば低融点ガラスである封止材SLbは、スクリーン印刷で第1水晶フレーム10の枠部102に対応するリッドウエハ22Wの接合面M5に形成され仮焼成される。
【0038】
図3において、第1水晶フレーム10の製造ステップS10と、第1ベース11の製造ステップS11と第1リッド12との製造ステップS12とは別々に並行して行うことができる。
【0039】
ステップS131では、図4に示されたように水晶ウエハ10Wの周縁部の一部にはオリエンテーションフラットOFが形成され、図5に示されたようにベースウエハ11Wの周縁部の一部にはオリエンテーションフラットOFが形成されている。したがって、オリエンテーションフラットOFを基準として、水晶ウエハ10Wとベースウエハ11Wとが精密に重ね合わせされる。そして封止材SLaが350℃から400℃程度に加熱され水晶ウエハ10Wとベースウエハ11Wとが押圧される。その加熱途中に、導電性接着剤13から発生したガスは、キャビティCTに残らず真空のチャンバー(不図示)に排出される。徐々に封止材SLaの温度が上がり封止材SLaが溶融し始めた状態で水晶ウエハ10Wとベースウエハ11Wとが押圧されると、導電性接着剤13は封止材SLaで囲まれた空間119(図2(a)参照)に封じ込まれる。この工程により、水晶ウエハ10Wと、ベースウエハ11Wとが接合され、ベースウエハ11Wの接続電極118a、118bと水晶ウエハ10Wの引出電極105a、105bとが導電性接着剤13で接合され電気的に接続される。次に1つ1つの水晶振動部101の振動周波数が測定される。
【0040】
振動周波数の調整には、励振電極104a(図1を参照)の厚みを調整する。励振電極104aに金属をスパッタリングして質量を増加させて周波数を下げたり、逆スパッタリングして励振電極104aから金属を昇華させて質量を低減させて周波数を上げたりする。なお、振動周波数の測定結果が所定範囲内であれば必ずしも振動周波数を調整する必要はない。
【0041】
ベースウエハ12Wには数百から数千個の第1水晶フレーム10が形成されている。ステップS131で1つの水晶振動部101の振動周波数を測定した後、ステップS142で1つの水晶振動部101の振動周波数を調整してもよい。このステップの繰り返しをベースウエハ12W上のすべての水晶振動部101に対して行う。また、ステップS131でベースウエハ12W上のすべての水晶振動部101の振動周波数を測定した後、ステップS131で1つずつ水晶振動部101の振動周波数を調整してもよい。
【0042】
ステップS141では、ベースウエハ11Wが接合された水晶ウエハ10WのM4面(図1参照)とリッドウエハ12WとがオリエンテーションフラットOFを基準として精密に重ね合わせされる。重ね合わされたウエハは、不活性ガスで満たされたチャンバー(不図示)又は真空のチャンバー(不図示)に配置される。重ね合わされたウエハは、キャビティCT内も不活性ガスで満たされ又は真空状態となる。
【0043】
そして封止材SLbが350℃から400℃程度に加熱され水晶ウエハ10Wとリッドウエハ12Wとが押圧される。その加熱途中に、封止材SLbから発生したガスは、キャビティCTに残らず真空のチャンバー(不図示)に排出される。その後封止材SLが室温まで冷却されると、水晶ウエハ10Wとリッドウエハ12Wとが接合される。
【0044】
ステップS142では、第1圧電デバイス100の振動周波数が測定される。振動周波数の調整には、励振電極104a(図1を参照)の厚みを調整する。振動周波数の測定結果が所定範囲内であれば必ずしも振動周波数を調整する必要はない。
【0045】
ステップS143において、接合された水晶ウエハ10Wとベースウエハ11Wとリッドウエハ12Wとを第1圧電デバイス100を単位として切断される。切断工程は、レーザーを用いたダイシング装置、またはブレードを用いたダイシング装置などを用いて図4、図5及び図6に示された一点鎖線のスクライブラインCLに沿って第1圧電デバイス100を単位として個片化する。これにより、数百から数千の正確な周波数に調整された第1圧電デバイス100が製造される。
【0046】
(第2実施形態)
<第2圧電デバイス110の全体構成>
第2圧電デバイス110の全体構成について、図7を参照しながら説明する。
図7は、第2圧電デバイス110の第2リッド22側から見た分割した状態の斜視図である。
【0047】
第2圧電デバイス110と第1圧電デバイス100とはキャスタレーションの形状及び第2ベース21に形成された接続電極218a、218bの位置、形状が異なっている。また、第1圧電デバイス100の第1水晶フレーム10に代わり、第2水晶フレーム20を装着している。第1実施形態と同じ構成要件には同じ符号を付して説明を省略し相違点について説明する。
【0048】
第2圧電デバイス110は第2水晶フレーム20と、第2ベース21と第2リッド22とから構成される。第2ベース21と第2リッド22とは水晶材料からなる。また第2水晶フレーム20と第2ベース21とは封止材SLeで接合され、第2水晶フレーム20と第2リッド22とは封止材SLdで接合される。キャビティCT(不図示)内は真空状態か又は不活性ガスで満たされた状態となる。
【0049】
第2水晶フレーム20は水晶接合面M3と水晶接合面M4とを有している。第2水晶フレーム20は水晶振動部201を囲む外枠202を有している。また、外枠202の両面には励振電極104a、104bと導電された引出電極205a、205bがそれぞれ形成されている。さらに、第2水晶フレーム20の四隅には、水晶キャスタレーション206a、206bが形成されている。また、一対の水晶キャスタレーション206a、206bには、引出電極205a、205bにそれぞれ接続された水晶側面電極207a、207bが形成されている。水晶キャスタレーション206a、206bは円形貫通孔BH2(図8を参照)がダイシングされた際に形成される。
【0050】
第2ベース21は、実装面M1及び接合面M2を有している。また、第2ベース21の実装面M1には一対の外部電極215a、215bがそれぞれ形成され、第2ベース21の四隅には一対のキャスタレーション216a、216bが形成されている。また、キャスタレーション216aには外部電極215aに接続された側面電極217a及び接続電極218aが形成され、キャスタレーション216bには外部電極215bと接続された側面電極217b及び接続電極218bが形成されている。キャスタレーション216a、216bは円形貫通孔BH2(図9を参照)がダイシングされた際に形成される。
【0051】
第2リッド22は接合面M5を有している。第2リッド22の四隅には一対のキャスタレーション226a、226bが形成されている。キャスタレーション226a、226bは円形貫通孔BH2(不図示)がダイシングされた際に形成される。
【0052】
<第2圧電デバイス110の製造方法>
図7に示された第2圧電デバイス110の製造方法は第1実施形態で説明された図3のフローチャートと実質的に同じである。図8は水晶ウエハ20Wの平面図であり、図9はベースウエハ21Wの平面図である。第2圧電デバイス110の製造方法の相違点を図3に示したフローチャートを用い追加説明する。
【0053】
図3のフローチャートのステップを使って第2圧電デバイス110の製造方法を説明する。第2水晶フレーム20の製造ステップS101、第2ベース21の製造ステップS111及び第2リッド22の製造ステップS121では、円形貫通孔BH2を形成する。
【0054】
ステップS101では、エッチングにより複数の第2水晶フレーム20の外形が形成される際に、各第2水晶フレーム20の四隅に図8に示されたように水晶ウエハ20Wを貫通するように円形貫通孔BH2が形成される。ここで、円形貫通孔BH2の半分が1つのキャスタレーション206a又は206b(図7を参照)になる。
【0055】
ステップS111では、第2ベース21の四隅に図9に示されたようにベースウエハ21Wを貫通するように円形貫通孔BH2が形成される。ここで、円形貫通孔BH2の半分がそれぞれのキャスタレーション216a又は216b(図7を参照)になる。
【0056】
ステップS121では、第2リッド22の四隅にリッドウエハ22Wを貫通するように円形貫通孔BH2(不図示)が形成される。ここで、円形貫通孔BH2の半分がそれぞれのキャスタレーション226a又は226b(図7を参照)になる。
【0057】
ステップS104において、水晶ウエハ20W(図8を参照)の枠部202のM3面(図7を参照)に封止材SLeが均一に形成される。例えば低融点ガラスである封止材SLeは、スクリーン印刷で水晶ウエハ20Wの枠部202のM3面に形成され仮焼成される。また、封止材SLeはベースウエハ21WのM2面(図7を参照)に形成してもよい。
【0058】
ステップS113においてベースウエハ21Wの実装面M1に外部電極215a、215bが形成され、円形貫通孔BH2に側面電極217a、217bが形成され、ベース接合面M2に接続電極218a、218b(図9を参照)が形成される。
【0059】
ステップS114において、ベースウエハ21Wの接続電極218a、218bに導電性接着剤13を載置した後仮焼成する。仮焼成によって導電性接着剤13から発生するガスは取り除かれる。
【0060】
ステップS122において、リッドウエハ22Wの接合面M5(図7を参照)に封止材SLdが均一に形成される。低融点ガラスである封止材SLdは、スクリーン印刷で第2水晶フレーム20の枠部202に対応するリッドウエハ22Wの接合面M5に形成され仮焼成される。ステップS131以後の工程は第1実施形態で説明されたフローチャート(図3を参照)と実質的に同じである。
【0061】
(第3実施形態)
<第3圧電デバイス120の構成>
第3圧電デバイス120の全体構成について、図10を参照しながら説明する。
図10は、第3圧電デバイス120の第2リッド22側から見た分割した状態の斜視図である。
【0062】
第3圧電デバイス120と第2圧電デバイス110とは、第2圧電デバイス110の第2水晶フレーム20に代わり、第3水晶フレーム30を装着している点が異なっている。第2実施形態と同じ構成要件には同じ符号を付して説明を省略し相違点について説明する。
【0063】
第3圧電デバイス120は第3水晶フレーム30と、第2ベース21と第2リッド22とから構成される。第2ベース21と第2リッド22とは水晶材料からなる。また第3水晶フレーム30と第2ベース21とは封止材SLfで接合され、第3水晶フレーム30と第2リッド22とは封止材SLdで接合される。キャビティCT(不図示)内は真空状態か又は不活性ガスで満たされた状態となる。
【0064】
第3水晶フレーム30は水晶接合面M3と水晶接合面M4とを有している。第3水晶フレーム30は水晶振動部301を囲む外枠302を有している。また、外枠302の両面には励振電極104a、104bと導電された引出電極305a、305bがそれぞれ形成されている。さらに、第3水晶フレーム30の四隅には、水晶キャスタレーション306a、306bが形成されている。また、一対の水晶キャスタレーション306a、306bには、引出電極305a、305bにそれぞれ接続された水晶側面電極307a、307bが形成されている。水晶キャスタレーション306a、306bは円形貫通孔BH2(図11を参照)をダイシングされた際に形成される。
【0065】
第3水晶フレーム30は、ATカットの水晶片301により構成され、その水晶片301の中央付近の両主面に、一対の励振電極104a,104bが対向して配置されている。また、励振電極104aにはATカットの水晶片301底面(−Y’)の−X端側まで伸びた引出電極305aが接続され、励振電極104bにはATカットの水晶片301底面(−Y’)の+X端側にまで伸びた引出電極305bが接続されている。所謂、引出電極305aはM3面(図10を参照)のX軸方向の一端に形成され,305bはM3面のX軸方向の他端に形成されている。第3水晶フレーム30は、導電性接着剤13(不図示)により第2ベース21の接続電極218a及び接続電極218bに接着される。
【0066】
<第3圧電デバイス120の製造方法>
図10に示された第3圧電デバイス120の製造方法は第1実施形態で説明された図3のフローチャートと実質的に同じである。図11は水晶ウエハ30Wの平面図である。第3圧電デバイス120の製造方法の相違点を図3に示したフローチャートを用い追加説明する。
【0067】
ステップS101では、エッチングにより複数の第3水晶フレーム30の外形が形成される際に、各第3水晶フレーム30の四隅に図11に示されたように水晶ウエハ30Wを貫通するように円形貫通孔BH2が形成される。ここで、円形貫通孔BH2の半分が1つのキャスタレーション306a又は306b(図10を参照)になる。
【0068】
ステップS104において、水晶ウエハ30W(図11を参照)の枠部302のM3面(図10を参照)に封止材SLfが均一に形成される。例えば低融点ガラスである封止材SLfは、スクリーン印刷で水晶ウエハ30Wの枠部302のM3面に形成され仮焼成される。また、封止材SLfはベースウエハ21WのM2面(図10を参照)に形成してもよい。以後の工程は第1実施形態で説明されたフローチャート(図3を参照)と実質的に同じである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。たとえば、本実施形態ではATカットの水晶振動片を用いているが、一対の振動片を有する音叉型の振動片にも適用できる。また、実施形態ではATカットの水晶振動片が使用されたが、水晶以外にタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの圧電材料を利用することができる。さらに圧電デバイスとして、発振回路を組み込んだICなどをパッケージ内に配置させた圧電発振器にも本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0070】
10、20,30 … 水晶フレーム
10W、20W,30W … 水晶ウエハ
11、21 … ベース
11W、21W … ベースウエハ
12,22 … リッド
12W、22W … リッドウエハ
13 … 導電性接着剤
100、110、120 … 圧電デバイス
101、201,301 … 水晶振動部
102、202,302 … 外枠
103、103a、203,203a,303,303a … 間隙部
104a、104b … 励振電極
105a、105b、205a、205b,305a,305b … 引出電極
106a、106b,206a、206b、306a … キャスタレーション
116a,116b,216a,216b,306b … キャスタレーション
126a,126b,226a,226b … キャスタレーション
107a、107b、207a、207b、307a、307b … 側面電極
109a,109b,209a、209b,309a,309b … 連結部
115a,115b,215a,215b … 外部電極
118a、118b,218a,218b … 接続電極
119 … 空間
BH1、BH2 … 貫通孔
CL … スクライブライン
CT … キャビティ
M1 … 実装面、 M2 … ベース接合面、 M3、M4 … 水晶接合面
M5 … リッド接合面
SLa,SLb,SLc,SLd,SLe,SLf … 封止材
OF … オリエンテーションフラット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の励振電極が形成された圧電振動片と、前記圧電振動片を囲んで前記圧電振動片と一体に形成され一主面と他主面とを含む枠体と、前記励振電極から前記枠体の前記第1主面まで引き出された一対の引出電極とを有する圧電振動板と、
一対の外部電極を有する第1面と前記一対の外部電極から電気的に接続する一対の接続電極を有する第2面とを有し、前記第2面が前記一主面に接合する第1板と、
前記第1板と前記枠体の前記第1主面とを接合するため、前記枠体の前記一主面を周回するように環状に配置されたガラス封止材と、
前記一対の引出電極と前記一対の接続電極とを電気的に接続する導電性接着剤と、
を備える圧電デバイス。
【請求項2】
前記枠体は四辺からなる矩形形状であり、前記ガラス封止材は前記導電性接着剤を前記枠体の一辺の幅内で囲むように配置される請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記第1面と前記第2面とを結ぶ側面に、前記第1板の中心方向に窪んだキャスタレーションと、
前記キャスタレーションに形成され前記一対の外部電極から前記一対の接続電極を電気的に接続する一対の側面電極と、
を備える請求項1又は請求項2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記圧電振動片を密閉する前記他主面に接合する第2板と、
前記第2板と前記枠体の前記第2主面とを接合するため、前記枠体の前記他主面を周回するように環状に配置された前記ガラス接合材と、を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記圧電振動片は厚みすべり振動モードを有する圧電振動片である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の圧電デバイス。
【請求項6】
一対の励振電極が形成された圧電振動片と、前記圧電振動片を囲んで前記圧電振動片と一体に形成され一主面と他主面とを含む枠体と、前記励振電極から前記枠体の前記第1主面まで引き出された一対の引出電極とを有する圧電振動板を複数有する圧電ウエハを用意する工程と、
一対の外部電極を含む第1面及び一対の接続電極を含み前記第1面と反対側の第2面とを有する第1板を複数含み、隣り合う前記第1板間に前記第1面から前記第2面まで貫通する貫通孔と前記貫通孔に前記外部電極と前記接続電極とを電気的に接続する側面電極とが形成された第1ウエハを用意する工程と、
前記枠体又は前記第1板の周囲にガラス封止材を塗布し、前記ガラス封止材を仮焼成する工程と、
前記ガラス封止材を仮焼成した後、前記引出電極又は前記接続電極に導電性接着剤を塗布する工程と、
前記導電性接着剤を塗布する工程後に、前記圧電ウエハと前記第1ウエハとを接合する第1接合工程と、
を備える圧電デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記枠体は四辺からなる矩形形状であり、
前記ガラス封止材を塗布する工程は、前記四辺の一辺の幅内で前記導電性接着剤が塗布される領域を囲むように塗布する請求項6に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記導電性接着剤を塗布する工程後と前記第1接合工程前に、前記導電性接着剤を仮焼成する請求項6又は請求項7に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項9】
第2板を複数含む第2ウエハを用意する工程と、
前記枠体又は前記第2板の周囲にガラス封止材を塗布し、前記ガラス封止材を仮焼成する工程と、
前記第1接合工程後に、前記圧電ウエハと前記第2ウエハとを接合する第2接合工程と、
を備える請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の圧電デバイスの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−12977(P2013−12977A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145285(P2011−145285)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】