説明

圧電デバイス

【課題】平面視略矩形の圧電振動片をワイヤボンディングさせた圧電デバイスの小型化を図る。
【解決手段】本発明の圧電デバイス10は、励振電極46が形成された振動部42と、振動部42と一体に形成され振動部42より厚く形成された厚肉部を備えた支持部とを有する圧電振動片40と、実装面に、圧電振動片40が実装され、接続端子32が形成された実装基板と、を備え、実装基板の実装面から厚肉部の上部までの最大高さよりも低い位置に励振電極46と電気的に接続された接続電極48が設けられ、接続電極48と実装基板の接続端子32とがワイヤ58により接続されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に圧電振動片の接続電極と搭載基板の接続端子をワイヤボンディングにより電気的に接続させた圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子や、圧電振動子と電子部品を同一パッケージに備えた圧電デバイスは、小型の情報機器などの電子機器に幅広く用いられている。近年、電子機器分野においてはその小型化・薄型化が急速に進んでおり、その電子機器に用いられる圧電デバイスについても、さらなる小型化・薄型化が要求されている。
【0003】
従来、圧電デバイスの小型化を図ったものの例として特許文献1を挙げることができる。特許文献1には、薄肉の振動部と振動部周囲を支持する厚肉の環状囲繞部とを一体的に構成し、その断面構造が凹型もしくは逆凹型の圧電振動片を電気部品とともにパッケージに収容した圧電デバイスが開示されている。
【0004】
図4はこの圧電デバイスの部分拡大図を示している。図4に示すように、圧電振動片1の接続電極2と、パッケージ3に設けた接続端子4とを電気的に接続する手段として、ワイヤ5が用いられている。圧電振動片1の接続電極2は、一般に厚肉の囲繞部6に設けられている。これはワイヤ圧着の際に接続電極2に外圧が作用するため、厚肉の囲繞部6で吸収できるようにするためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−258901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記構成による従来の圧電デバイスは、圧電振動片の厚肉の囲繞部に形成された接続電極と、パッケージベース上に形成された接続端子とがワイヤボンディングにより電気的に接続されているため、ワイヤを張ったときに高さが生じてしまう。従ってこのワイヤと蓋体との接触を回避するようにパッケージの側面の高さを設定しなければならず、パッケージ全体の低背化が困難となる問題があった。
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を解決するため、圧電振動片をワイヤボンディングにより電気的に接続させた圧電デバイスの低背化を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
〔適用例1〕励振電極が形成された振動部と、前記振動部と一体に形成され前記振動部より厚く形成された厚肉部を備えた支持部とを有する圧電振動片と、実装面に、前記圧電振動片が実装され、接続端子が形成された実装基板と、を備え、前記実装基板の前記実装面から前記厚肉部の上部までの最大高さよりも低い位置に前記励振電極と電気的に接続された接続電極が設けられ、前記接続電極と前記実装基板の前記接続端子とがワイヤにより接続されていることを特徴とする圧電デバイス。
【0008】
これにより圧電振動片の接続電極と搭載基板上の接続端子をワイヤにより接続させる際、圧電振動片の厚肉部の最大高さ(厚肉部の最大厚み)よりも低い(薄い)位置に接続電
極を設けることができ、接続電極と接続端子の高低差が小さくなる。したがって接続電極と接続端子をワイヤボンディングにより接続させた際にワイヤの高さを低くすることができ、圧電デバイス全体を低背化することができる。
【0009】
〔適用例2〕適用例1に記載の圧電デバイスにおいて、前記接続電極は、前記支持部の一部に形成された薄肉部に設けられていることを特徴とする圧電デバイス。
これにより厚肉部に薄肉部を形成し、この薄肉部に接続電極を設けることができる。したがって接続電極と接続端子をワイヤボンディングにより接続させた際にワイヤの高さを低くすることができ、圧電デバイス全体を低背化することができる。
【0010】
〔適用例3〕適用例1に記載の圧電デバイスにおいて、前記接続電極は、前記振動部に設けられていることを特徴とする圧電デバイス。
これにより振動部の表面の励振電極と接続電極の間の引き回し配線を短くすることができる。したがって発振出力が高周波信号の場合、インピーダンスの増加を抑えることができる。また接続電極と接続端子をワイヤボンディングにより接続させた際にワイヤの高さを低くすることができ、圧電デバイス全体を低背化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の圧電デバイスの第1実施形態の構成概略を示す図である。
【図2】第1実施形態の圧電振動片の部分拡大図である。
【図3】本発明の圧電デバイスの第2実施形態の説明図である。
【図4】従来の圧電振動片の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の圧電デバイスの実施形態を添付の図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
図1は本発明の圧電デバイスの第1実施形態の構成概略を示す図である。同図(1)は圧電デバイスの平面図を示し、(2)は(1)のA−A断面図をそれぞれ示している。なお(1)は、IC素子の端子及びワイヤを省略している。図2は第1実施形態の圧電振動片の部分拡大図である。また本発明の圧電デバイスは、一例として、パッケージに圧電振動片とIC素子を備えた圧電デバイスを用いて以下説明するが、圧電デバイスはこれに限らず、少なくともパッケージに圧電振動片を備えた圧電デバイスであれば良い。
【0013】
図示のように圧電デバイス10は、パッケージベース20と、圧電振動片40と、IC素子60と、蓋体70を主な基本構成としている。
パッケージベース20は、第1の基板22、第2の基板24、第3の基板26、第4の基板28を下から順に積層させて、後述する圧電振動片40及びIC素子60を収容するキャビティが形成されている。
【0014】
第1の基板22は、平面視略矩形の平板状であって、実装面にIC素子60を実装する基板である。実装面にはIC素子60と電気的に接続する実装端子が複数形成されている。第2の基板24は、第1の基板22と同様にIC素子60の端子と電気的に接続する実装端子が複数形成されている。第3の基板26は圧電振動片40を実装する基板であり、実装面にマウント電極30と、接続端子32が形成されている。第4の基板28は、上面に蓋体70を接合させる基板である。
【0015】
IC素子60は、一例として電圧制御回路、温度補償回路などを用いることができ、能動面に複数の端子(不図示)が形成されている。複数の端子のうち少なくとも2つは圧電振動片40と電気的に接続する接続端子としている。その他の端子は一例として、VDD端子、GND端子、出力端子、電圧入力端子等とすることができる。
蓋体70は、パッケージベース20のキャビティに圧電振動片40及びIC素子60を
搭載した後、キャビティの開口を気密に封止するものである。
【0016】
図2に示すように圧電振動片40は、振動部42とその側方に囲繞部44を一体形成した平面視略矩形の基板である。
振動部42は圧電振動片40の振動領域となり、中央に励振電極46を形成している。励振電極46は振動部42の表裏面に対向するように形成している。振動部42は、高い周波数を得るため、予め定めた所定の薄さに設定し、かつ振動漏れを防止するため励振電極46の周囲を所定の大きさに設定している。
【0017】
囲繞部44は、振動部42よりも厚く形成されている厚肉部を有しており、第3の基板26に圧電振動片40を搭載する際の支持部の役割を担っている。また囲繞部44は、平面視略矩形基板の一部を切り欠いた薄肉部52が形成されている。薄肉部52は、実装基板となる第3の基板26の圧電振動片40を実装する実装面から囲繞部44の上部までの最大高さよりも低くなるように形成されている。
【0018】
薄肉部52には、第3の基板26の接続端子と電気的に接続する接続電極48が形成されている。接続電極48は、リード電極50を介して励振電極46と電気的に接続されている。囲繞部44は、ワイヤボンディングを用いて電気的に接続させるため所定の厚みに設定されている。励振電極46、リード電極50、接続電極48は、図1に示すように、圧電振動片40の表裏面に真空蒸着またはスパッタ蒸着等により一体形成することができる。
【0019】
このような圧電振動片40の製造方法は、エッチングにより振動部42と、薄肉部52を形成する。ついで真空蒸着等により圧電振動片40の表裏面に励振電極46、リード電極50、接続電極48を一体形成する。
【0020】
上記構成による本発明の圧電デバイス10は、まずパッケージベース20の第1の基板22にIC素子60を実装する。そして圧電振動片40を第3の基板26に実装する場合、圧電振動片40の裏面に形成された接続電極48と第3の基板26上のマウント電極30とを導電性接着剤56を用いて電気的に接続する。これにより圧電振動片40が水平に片持ち支持されている。ついで薄肉部52の上面の接続電極48と、第3の基板26に形成された接続端子32とをワイヤ58により電気的に接続する。本発明のワイヤボンディングは、一例として金(Au)線のワイヤを用いている。圧電振動片40を搭載した後、キャビティの開口を蓋体70で気密に封止している。
【0021】
上記構成による第1実施形態の圧電デバイス10によれば、圧電振動片40の接続電極48を、圧電振動片40を実装した実装基板となる第3の基板26の実装面から囲繞部44の上部までの最大高さよりも低い薄肉部52に設けることができる。
【0022】
これにより圧電振動片の接続電極と実装基板の接続端子をワイヤボンディングにより電気的に接続する際、ワイヤの高さを低くすることができる。従って圧電振動片をワイヤボンディングにより接続させた圧電デバイスの定背化を図ることができる。
【0023】
なお圧電振動片40は、図1(1)に示す形状のほか、図2(2)に示すような形状とすることができる。具体的に図2(2)に示す圧電振動片40aは、振動片の平坦面が下面となり、上面に振動部42aの凹面が形成されている。そして、囲繞部44aに設けられた薄肉部52aは、第1実施形態の圧電振動片40と同様に実装基板となる第3の基板26の実装面から囲繞部44aの上部までの最大高さよりも低くなるように形成されている。このような圧電振動片40aであっても、第1実施形態と同様に圧電振動片の接続電極を、圧電振動片40aを実装した実装基板となる第3の基板26の実装面から囲繞部4
4aの上部までの最大高さよりも低い薄肉部52aに設けることができる。よって圧電振動片をワイヤボンディングにより接続させた圧電デバイスの定背化を図ることができる。
【0024】
次に本発明の第2実施形態の圧電デバイスについて以下説明する。図3は本発明の圧電デバイスの第2実施形態の説明図である。第2実施形態の圧電デバイスと第1実施形態の圧電デバイス10との構成上の違いは圧電振動片の形状である。その他の構成は第1実施形態と同様であり、その詳細な説明を省略する。
【0025】
第2実施形態の圧電振動片40bは、図3(1)に示すように振動部42bに接続電極48bが形成されている。具体的に接続電極48bは、振動部42bの励振電極46bとリード電極50bを介して薄肉の振動部42bの領域内に形成されている。そして圧電振動片40bを第3の基板26に実装する際には、圧電振動片40bの裏面に形成された接続電極48bと第3の基板26上のマウント電極30とを導電性接着剤56を用いて電気的に接続する。このとき接続電極48bの下面が第3の基板26上に配置、すなわち圧電振動片40bを平面視して接続電極48bと第3の基板26が重なるように配置している。これは接続電極48bにワイヤボンディングにより接続する際に圧着による外圧を吸収できるようにするためである。ついで振動部42bの上面の接続電極48bと、第3の基板26に形成された接続端子32とをワイヤ58により電気的に接続する。
【0026】
このような第2実施形態の圧電デバイスによれば、圧電振動片40bの接続電極48bを、圧電振動片40bを実装した実装基板となる第3の基板26の実装面から囲繞部44bの上部までの最大高さよりも低い振動部42bに設けることができる。
【0027】
これにより圧電振動片の接続電極と実装基板の接続端子をワイヤボンディングにより電気的に接続する際、ワイヤの高さを低くすることができる。従って圧電振動片をワイヤボンディングにより接続させた圧電デバイスの定背化を図ることができる。また、圧電振動片に設ける励振電極46bと接続電極48bの引き回し配線を短くすることができる。従って、発振出力が高周波信号の場合、インピーダンスの増加を抑えることができる。
【0028】
図3(2)は、第2実施形態の圧電振動片の変形例を示している。図示のように圧電振動片40cは、上下面を凹状にエッチングすることにより、振動部42cと囲繞部44cが形成されている。さらに囲繞部44cの支持側上面に設ける接続電極48cが配置されている部分が厚肉となるように囲繞部44cが形成されている。
【0029】
このような圧電振動片40cによれば、圧電振動片40cの接続電極48cを、圧電振動片40cを実装した実装基板となる第3の基板26の実装面から囲繞部44cの上部までの最大高さよりも低い振動部42cに設けることができる。これにより圧電振動片の接続電極と実装基板の接続端子をワイヤボンディングにより電気的に接続する際、ワイヤの高さを低くすることができる。従って圧電振動片をワイヤボンディングにより接続させた圧電デバイスの定背化を図ることができる。また、圧電振動片に設ける励振電極と接続電極の配線パターンを短くすることができる。従って、発振出力が高周波信号の場合、インピーダンスの増加を抑えることができる。
【符号の説明】
【0030】
1………圧電振動片、2………接続電極、3………パッケージ、4………接続端子、5………ワイヤ、6………囲繞部、10………圧電デバイス、20………パッケージベース、22………第1の基板、24………第2の基板、26………第3の基板、28………第4の基板、30………マウント電極、32………接続端子、40………圧電振動片、42………振動部、44………囲繞部、46………励振電極、48………接続電極、50………リード電極、52………薄肉部、56………導電性接着剤、58………ワイヤ、60……
…IC素子、70………蓋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励振電極が形成された振動部と、前記振動部と一体に形成され前記振動部より厚く形成された厚肉部を備えた支持部とを有する圧電振動片と、
実装面に、前記圧電振動片が実装され、接続端子が形成された実装基板と、を備え、
前記実装基板の前記実装面から前記厚肉部の上部までの最大高さよりも低い位置に前記励振電極と電気的に接続された接続電極が設けられ、
前記接続電極と前記実装基板の前記接続端子とがワイヤにより接続されていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電デバイスにおいて、
前記接続電極は、前記支持部の一部に形成された薄肉部に設けられていることを特徴とする圧電デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の圧電デバイスにおいて、
前記接続電極は、前記振動部に設けられていることを特徴とする圧電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−219993(P2010−219993A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65703(P2009−65703)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】