説明

圧電振動子、圧電発振器、及び電子機器

【課題】電気的特性は従来の特性を有し、小型、低背、低コストの圧電振動子を得る。
【解決手段】圧電振動子1は、圧電振動素子13と、圧電振動素子13を搭載する絶縁基板4と、蓋部材30と、を備えている。圧電振動素子13は、圧電基板15と、圧電基板15の表裏面に配置された励振電極17a、17bと、各励振電極17a、17bから圧電基板15の端部に向けて延在するリード電極18a、18bと、を備えている。単層の絶縁基板4は、LTCC基板5と、LTCC基板5の表裏面に形成された素子搭載パッド7a、7b及び複数の実装端子8と、LTCC基板5を貫通形成され、各素子搭載パッド7a、7bと各実装端子8とを導通接続する複数のビア電極6と、を有し、各素子搭載パッド7a、7bは、圧電振動素子13の端縁から離間した領域に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子に関し、特に低背化、低価格化等を図った圧電振動子と、この圧電振動子を用いた圧電発振器、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装型圧電振動子は、小型であること、高精度、高安定な周波数が得られること、経年変化が少ないこと等の優れた電気的特性を有することから、通信用機器から民生用機器の基準周波数源として広く用いられている。近年、機器の小型化、軽量化と共に、表面実装型圧電振動子の更なる小型化、低背化及び低価格化が進められている。特に、周波数−温度特性が広温度範囲で滑らかな3次曲線を呈し、経年変化の少ない圧電振動子の小型化は、各方面から求められている。
【0003】
特許文献1には、平板状のセラミック単層基板と、金属製箱型キャップとを用いた圧電デバイス用パッケージと、それらを用いた圧電デバイスとが開示されている。圧電デバイスは、単層基板の一方の主面上に音叉型水晶振動片が搭載され、金属製キャップによって水晶振動片を含む基板が密閉されている。音叉型水晶振動片の一対の振動腕に形成された励振電極に電圧を印加するために、単層基板を貫通する複数の孔部が形成されている。この孔部を介して単層基板上のマウント部と裏面に形成された実装端子とが導通され、マウント部上には音叉型水晶振動片の基部が支持固定される。マウント部、内部配線及び外部配線は、銀白金や銀パラジウムなどの導電材料を用いて形成され、孔部の内周部も銀白金又は銀パラジウムがスルーホール印刷され焼成されている。この孔部に銀白金又は銀パラジウムの導電性ペーストを所定の量だけ充填して焼成するが、空気の流通が可能なように充填した部分に隙間が生じるようなっている。単層基板上に音叉型水晶振動片を搭載し内部を真空にした後、孔部に金錫等の低融点金属よりなるボールを溶融して気密封止して圧電デバイスが完成される。
【0004】
また、特許文献2には、水晶振動子の製造方法が開示されている。水晶振動子は、水晶振動素子と、パッケージ本体と、蓋部材と、を備えている。パッケージ本体の素子搭載パッドにシリコン系接着剤を塗布した後、水晶振動素子を搭載して接着・固定する。これを温度350℃の真空中で数時間の熱処理した後、気密封止して水晶振動子を構成する。このように構成することにより、プラスマイナス0.5ppm以下の経時変化特性を有する水晶振動子が得られたと開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、電子デバイス用パッケージの製造方法が開示されている。水晶振動素子を収納するパッケージは、セラミック基板と、蓋体とから構成されている。セラミック基板は無収縮ガラスセラミック基板(LTCC基板)で形成され、LTCC基板には、水晶振動素子を収容するキャビティ、素子搭載パッド、実装端子、素子搭載パッドと実装端子とを接続するビア電極、基板周縁に枠状に形成されたメタライズ層が形成されている。蓋体は、コバール等の帯材を加工し、ろう材を予め被着させてから、プレス抜き法で形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−186826公報
【特許文献2】特開2000−307367公報
【特許文献3】特開2004−186995公報
【特許文献4】特開2001−177363公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示のセラミック単層基板の外部配線及び内部配線、孔部、マウント部、実装端子には、高価な銀白金又は銀パラジウムが用いられ、パッケージが高価になるという問題と、高周波振動子(ATカット)用のパッケージ構造については開示が不十分であるという問題があった。また、本発明の課題の一つである圧電デバイスの周波数調整法に関しては開示されていない。
また、特許文献2に開示の水晶振動子は、多層構造のパッケージを用いており、水晶振動子の形状が大きく成り過ぎるという問題があった。
また、特許文献3に開示された水晶振動子は、単層基板の素子搭載パッドに導電性接着を介して水晶振動素子が搭載され、蓋体によって密封された水晶振動子の断面図が開示されている。しかし、素子搭載パッドが水晶振動素子の圧電基板の外側に露出しており、本発明の課題の一つであり、特許文献4に開示されているアルゴン(Ar)イオンを用いたプラズマエッチングによる周波数調整法には、適さないという問題があった。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、アルゴン(Ar)イオンを用いたプラズマエッチングによる周波数調整法(プラズマエッチング法)に適し、小型化、低背化が可能であり、低価格の圧電振動子と、それを用いた圧電発振器と、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本発明に係る圧電振動子は、圧電振動素子と、該圧電振動素子を搭載する複数の素子搭載パッドを表面に備えた単層の絶縁基板と、前記圧電振動素子を含む該絶縁基板上の空間を気密封止する蓋部材と、を備えた圧電振動子であって、前記圧電振動素子は、圧電基板と、該圧電基板の表面及び裏面に夫々対向配置された前記励振電極と、を有し、前記単層の絶縁基板は、平板状の低温共焼成セラミック基板と、該低温共焼成セラミック基板の表面及び裏面に夫々形成された複数の前記素子搭載パッド及び複数の実装端子と、前記低温共焼成セラミック基板を貫通して配置されて前記各素子搭載パッドと前記各実装端子との間を導通接続する複数のビア電極と、を有し、前記各素子搭載パッドは、前記圧電振動素子の端縁から離間した領域内に形成され、前記領域は平面視的に前記圧電振動素子の主面に沿って前記端縁から離間した領域であることを特徴とする圧電振動子である。
【0010】
単層の低温共焼成セラミック基板の表裏面に、銀を主成分とする銀ペーストを用いて、素子搭載パッド、実装端子及びビア電極を形成して絶縁基板を構成する。この絶縁基板と圧電振動素子とを用いて圧電振動子を構成するので、小型、低背で低コストの圧電振動子が実現できるという効果がある。更に、素子搭載パッドが、圧電基板の端縁から内側の領域に形成されているので、周波数の調整に、調整時間が早く、精度が高いプラズマエッチング法を用いても、素子搭載パッドが酸化されず、圧電振動子のCIの劣化の虞がないという高効果がある。
【0011】
[適用例2]また圧電振動子は、圧電振動素子と、該圧電振動素子を搭載する複数の素子搭載パッドを表面に備えた単層の絶縁基板と、前記圧電振動素子を含む該絶縁基板上の空間を気密封止する蓋部材と、を備えた圧電振動子であって、前記圧電振動素子は、圧電基板と、該圧電基板の表面及び裏面に夫々対向配置された前記励振電極と、を有し、前記単層の絶縁基板は、平板状の低温共焼成セラミック基板と、該低温共焼成セラミック基板の表面及び裏面に夫々形成された複数の前記素子搭載パッド、中継電極及び複数の実装端子と、前記素子搭載パッドと前記中継電極とを電気的に接続する内部配線と、前記低温共焼成セラミック基板を貫通して配置されて前記各素子搭載パッド又は中継電極と前記各実装端子との間を導通接続する複数のビア電極と、を有し、前記各素子搭載パッド及び内部配線は、前記圧電振動素子の端縁から離間した領域内に形成されていることを特徴とする圧電振動子である。
【0012】
単層の低温共焼成セラミック基板の表裏面に、銀を主成分とする銀ペーストを用いて、素子搭載パッド、中継電極、内部配線、実装端子及びビア電極を形成して絶縁基板を構成する。この絶縁基板と圧電振動素子とを用いて圧電振動子を構成するので、小型、低背で低コストの圧電振動子が実現できるという効果がある。更に、素子搭載パッド、中継電極及び内部配線が、圧電振動素子の圧電基板の外周輪郭線から内側の領域に形成されているので、周波数の調整に、調整時間が早く、且つ精度の高いプラズマエッチング法を用いても、素子搭載パッド及び内部配線が酸化される虞がないという高効果がある。
【0013】
[適用例3]また圧電振動子は、前記絶縁基板が矩形であり、前記素子搭載パッドが、前記絶縁基板の短手方向に沿って離間配置されていることを特徴とする適用例1又は2に記載の圧電振動子である。
【0014】
素子搭載パッドを絶縁基板の短手方向に沿って離間配置することにより、圧電振動素子を片持ち支持することができる。このため、圧電振動素子に生じるマウント歪が少なくなり、電気的特性の優れた圧電振動子が得られるという効果がある。
【0015】
[適用例4]また圧電振動子は、前記絶縁基板が矩形であり、前記素子搭載パッドが、前記絶縁基板の長手方向に沿って離間配置されていることを特徴とする適用例1又は2に記載の圧電振動子である。
【0016】
素子搭載パッドを絶縁基板の長手方向に沿って離間配置することにより、圧電振動素子を両持ち支持することができる。このため、耐衝撃性に強い圧電振動子が得られるという効果がある。
【0017】
[適用例5]また圧電振動子は、前記素子搭載パッド、前記実装端子、前記中継電極、前記内部配線及び前記ビア電極が、銀を主成分とする材料で形成されていることを特徴とする適用例1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動子である。
【0018】
素子搭載パッド、実装端子、中継電極、内部配線及びビア電極を、銀を主成分とするペースト材で形成することができるので、低コストの絶縁基板が得られるという効果がある。
【0019】
[適用例6]また圧電振動子は、前記絶縁基板の表面外周縁に沿って塗布した低融点のガラス材を介して前記蓋部材を接着固定したことを特徴とする適用例1乃至5の何れか一項に記載の圧電振動子である。
【0020】
圧電振動素子を搭載した絶縁基板と、蓋部材とをガラス材を溶融して融着密封することができるので、低コストの絶縁基板が得られると共に、ガラス材の幅は狭くすることが可能であり、抵抗溶接等に比べのり代も狭くできるので、小型の圧電振動子が得られるという効果がある。
【0021】
[適用例7]本発明に係る圧電発振器は、適用例1乃至6の何れか一項に記載の圧電振動子と、該圧電振動子を励振する発振回路を搭載したIC部品と、を備えたことを特徴とする圧電発振器である。
【0022】
本発明の圧電振動子と、発振回路を搭載したIC部品と、パッケージと、を備えた圧電発振器を構成すると、小型、低背で低コストの圧電発振器が得られるという効果がある。
【0023】
[適用例8]本発明に係る電子機器は、適用例1乃至6の何れか一項に記載の圧電振動子を備えたことを特徴とする電子機器である。
【0024】
本発明の圧電振動子を用いて電子機器を構成すると、小型で低コストの電子機器が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は第1の実施形態の圧電振動子の概略平面図であり、(b)は断面図。
【図2】(a)は絶縁基板の平面図であり、(b)は断面図。
【図3】(a)は第2の実施形態の圧電振動子の概略平面図であり、(b)は断面図。
【図4】(a)は絶縁基板の平面図であり、(b)は断面図。
【図5】第1の実施形態の絶縁基板の、(a)は表面図であり、(b)は裏面図。
【図6】第2の実施形態の絶縁基板の、(a)は表面図であり、(b)は裏面図。
【図7】絶縁基板の変形例1の、(a)は表面図であり、(b)は裏面図。
【図8】絶縁基板の変形例2の、(a)は表面図であり、(b)は裏面図。
【図9】圧電発振器の概略構成図。
【図10】電子機器の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1(a)は、蓋部材を除き、本発明の一実施形態に係る圧電振動子1の構成を示す概略平面図であり、同図(b)は、(a)のP−P断面図である。
圧電振動子1は、矩形平板状の圧電振動素子13と、表面に圧電振動素子13を搭載するための複数の素子搭載パッド7a、7bを有すると共に、裏面に外部回路との接続用の実装端子8を形成した単層の絶縁基板4と、圧電振動素子13を含む絶縁基板4上の空間を気密封止する蓋部材30と、を概略備えている。
圧電振動素子13は、矩形平板状の、例えば水晶ATカット基板等の圧電基板15と、圧電基板15の表面及び裏面に対向配置された励振電極17a、17bと、励振電極17a、17bから圧電基板15の短手方向の端部に向けて夫々延長形成されたリード電極18a、18bと、を備えている。ATカット基板の場合、圧電基板15の長辺方向をX軸に、短辺方向をZ’軸にするのが一般的である。また、励振電極17a(17b)は、例えば下地にクロム(Cr)、その上に金(Au)を用いる場合が多い。
図1(b)の実施の形態に示した蓋部材30は、中央部に凸部(凹部)を有し、凸部の周縁が平坦部を有するように絞り加工した金属製の蓋部材であるが、蓋部材30は、必ずしも金属である必要はなく、絶縁材、ガラス等であってもよい。
【0027】
図2(a)は、パッケージ本体(以下、絶縁基板という)4の実施の形態例を示す平面図であり、同図(b)は(a)のQ−Q断面図である。絶縁基板4は、矩形平板状の低温共焼成セラミック基板(Low Temperature Co-fired Ceramics、以下、LTCC基板という)5と、LTCC基板5の表面に形成された複数の素子搭載パッド7a、7b(図2(a)の実施形態例では2個)及び中継電極7cと、裏面に形成された複数の実装端子8と、LTCC基板5を貫通して配置されて各素子搭載パッド7a、7bと各実装端子8との間を導通接続する複数のビア電極6と、を備えている。
図2の実施の形態例では、絶縁基板4の短辺側に形成した素子搭載パッド7a、7bの中、一方の素子搭載パッド7aは、ビア電極6を介して一つの実装端子8と導通接続されている。他方の素子搭載パッド7bは、内部配線9と、中継電極7cと、絶縁基板の領域に形成されたビア電極6とを介して他の実装端子8と導通接続されている。
更に、LTCC基板5の表面周縁に沿って、蓋部材の下面外周と接着して圧電振動素子13を気密封止するための低融点のガラス材10が塗布されている。
【0028】
本発明の特徴は、各素子搭載パッド7a、7b、内部配線9、中継電極7c、ビア電極6、及び複数の実装端子8が、銀(Ag)を主成分とした材料で構成されていることと、図2(a)に示すように各素子搭載パッド7a、7b、中継電極7c、及び内部配線9が、素子搭載パッド7a、7b上に接着保持された圧電振動素子13(圧電基板15)の外周輪郭線よりも内側の圧電基板15の領域に形成されていることである。各素子搭載パッド7a、7b、中継電極7c、内部配線9、及び複数の実装端子8を形成する際には、LTCC基板材面に銀ペーストを印刷してから低温でLTCC基板材と同時に焼成される。また、ビア電極6は、LTCC基板材の所定の位置に孔をあけ、孔の周縁及び上下の縁に無電解ニッケルメッキ等を施した後、この孔に銀ペースを充填し、LTCC基板材と同時に焼成して形成される。
【0029】
各素子搭載パッド7a、7b及び内部配線9は、LTCC基板5の加工精度(寸法精度)を略50μm、圧電振動素子13の搭載精度を略10μmとして、圧電基板15の設計搭載位置から、60μmだけ圧電基板15の面積の内側に形成する。
各素子搭載パッド7a、7b及び内部配線9を、搭載する圧電基板15の領域に形成する理由について以下に説明する。
【0030】
LTCC基板(低温共焼成セラミック基板)は、従来のアルミナセラミックに代表される基板の弱点を改善するために開発された基板である。アルミナセラミック基板に導体材料として用いられているタングステン(W)、モリブデン(Mo)などの高融点・高抵抗材料の代わりに、LTCC基板では、低導通抵抗金属である銀(Ag)、銅(Cu)等が用いられる。これらの金属は低融点であるため、アルミナセラミック基板の焼成温度である1、500℃〜1、600℃で、焼成することができない。アルミナセラミックの代わりに、800℃〜1、000℃で焼成可能なガラス−フィラー系の材料が用いられる。ガラス−フィラー系の材料を用いて焼成されたLTCC基板は、低誘電率、高寸法精度、高平坦性という特性を有し、無電解ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、金(Au)メッキが可能であるいう特性を備えている。このため、LTCC基板には高価な厚膜Au、Ag/Pd導体を使わないで、安価な基板が実現できるという特徴が、ある。
【0031】
また、圧電振動素子の周波数調整法には、質量を付加して周波数を調整する方法と、質量を削減して周波数を調整する方法と、がある。後者の方法には、レザー光線を用いて電極を蒸散させて周波数を調整する方法、イオンビームにより電極をエッチングする方法、特許文献4に開示されたアルゴン(Ar)イオンを用いたプラズマエッチングによる周波数調整法等がある。
アルゴン(Ar)イオンを用いたプラズマエッチングによる周波数調整法(以下、プラズマエッチング法という)では、筒体内にアルゴンガスを充填し、筒体内の電極棒に直流電流を印加すると、筒体内でアルゴンプラズマが発生する。このプラズマの作用によりアルゴンガスがイオン化され、このイオン化されたアルゴンガスが筒体の先端の開口から照射される。イオン化された粒子のアルゴンガスが圧電振動素子の励振電極に当てられ、励振電極のエッチングが起る。励振電極を形成する電極材料によりエッチングレートが異なり、電極材料を適切に設定することにより、粗調、微調を行うことができる。従って、プラズマエッチング法を用いる場合は、圧電振動素子の周波数は、所望の周波数より低く設定されている。
【0032】
しかし、アルゴンイオンを用いたプラズマエッチング法では、金(Au)材料はエッチングされるだけであるが、銀(Ag)材料の場合はエッチングされると同時に酸化され、抵抗率が大きくなるという問題がある。そこで、アルゴンイオンの照射を避ける手段が必要になる。つまり、図1(a)、図2(a)の実施の形態に示すように、素子搭載パッド7a、7b、中継電極7c、及び内部配線9が、圧電基板15により覆われるように圧電振動子を構成することにより、アルゴンイオンの照射が避けられ、銀(Ag)材料の酸化を防止するこが可能になる。
【0033】
圧電振動子1の構成は、単層のLTCC基板5の表裏面に素子搭載パッド7a、7b、中継電極7c、内部配線9、実装端子8を形成し、且つ表面の周縁に沿ってガラス部材10を備えた絶縁基板4を用意し、その素子搭載パッド7a、7bに導電性接着剤22、例えばシリコン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤、ビスマレイミド系接着剤等の何れかを適量塗布し、その上に圧電振動素子13を載置して荷重をかける。
絶縁基板4に塗布した導電性接着剤22を硬化させるために、所定の温度の高温炉に所定の時間入れる。アニール処理を施した後、周波数調整は、上記のプラズマエッチング法を用いて、励振電極17a、17bの質量を削減して行われる。絶縁基板4の上面周縁に塗布した低融点のガラス材10に蓋部材30を載置し、略300℃の真空炉の中でガラス材10を溶融して、絶縁基板4と蓋部材30とを気密封止する。絶縁基板4と蓋部材30とからなるキャビティ内が真空状態の圧電振動子1が完成する。
【0034】
図1の実施の形態例に示すように、単層の低温共焼成セラミック基板(LTCC基板)5の表裏面に、銀を主成分とする銀ペーストを用いて、素子搭載パッド7a、7b、中継電極7c、内部配線9、ビア電極6及び実装端子8を形成して、絶縁基板を構成する。この絶縁基板4と圧電振動素子13とを用いて、圧電振動子1を構成するので、小型、低背で低コストの圧電振動子1が実現できるという効果がある。更に、素子搭載パッド7a、7b、中継電極7c、及び内部配線9が、圧電振動素子13の圧電基板15の外周輪郭線から内側の領域に形成されているので、周波数の調整に調整時間が早く且つ精度の高いアルゴンイオンを用いたプラズマエッチング法を用いても、素子搭載パッド7a、7b、中継電極7c、及び内部配線9が酸化される虞がない。つまり、CIの劣化がない圧電振動子が構成できるという高効果がある。
また、素子搭載パッド7a、7bを、絶縁基板4の短手方向に沿って離間配置することにより、圧電振動素子13を片持ち支持することができる。このため、圧電振動素子13に生じるマウント歪を少なくすることが可能であり、電気的特性の優れた圧電振動子1が得られるという効果がある。
【0035】
素子搭載パッド7a、7b、実装端子8、中継電極7c、内部配線9及びビア電極6を、銀を主成分とするペースト材で形成することができるので、低コストの絶縁基板4が得られるという効果がある。
また、圧電振動素子13を搭載した絶縁基板4と、蓋部材30とをガラス材10を溶融して融着密封することができるので、低コストの絶縁基板4が得られると共に、ガラス材の幅は狭くすることが可能であり、抵抗溶接等に比べのり代も狭くすることができるので、小型化の圧電振動子1が得られるという効果がある。
【0036】
図3(a)は、第2の実施の形態の圧電振動子1の構成を示す平面図であり、同図(b)は、(a)のP−P断面図である。図4(a)は、第2の実施の形態例の絶縁基板4の構成を示す平面図であり、同図(b)は、(a)のP−P断面図である。
素子搭載パッド7a、7bは、図3、図4に示すように、絶縁基板4の長手方向に沿って離間配置されており、図2(a)で示した内部配線9及び中継電極7cを必要としない。素子搭載パッド7a、7bは、搭載される圧電振動素子13の外周輪郭線の内側、即ち圧電基板15の領域で、且つ長手方向に離間配置されたビア電極6により実装端子8と導通している。
図1には片持ち支持の圧電振動子1の例を示したが、図3の第2の実施の形態例のように、圧電振動素子13を両持ち支持して構成する場合もある。両持ち支持の方が、片持ち支持に比べ耐衝撃性が強いという特徴がある。
【0037】
図3、図4の実施形態が図1に示した圧電振動子1と異なる点は、圧電振動素子13のリード電極18a、18bの引出し方向と、絶縁基板4の素子搭載パッド7a、7bの配置と、内部配線9を必要としないことである。
つまり、圧電振動素子13は、圧電基板15の表面及び裏面に対向配置された励振電極17a(17b)と、励振電極17a(17b)から圧電基板15の長手方向の対向する各端部に向けて夫々延在するリード電極18a、18bと、を備えている。
絶縁基板4は、矩形平板状のLTCC基板5と、LTCC基板5の表面に形成された複数の素子搭載パッド7a、7b(図4(a)の実施形態例では2個)と、裏面に形成された複数の実装端子8と、LTCC基板5を貫通して配置されて各素子搭載パッド7a、7bと、各実装端子8との間を導通接続する複数のビア電極6と、を備えている。
図4の実施の形態例では、絶縁基板4の長辺方向に沿い離間して素子搭載パッド7a、7bが形成されており、素子搭載パッド7a、7bは、夫々ビア電極6を介して実装端子8に導通接続されている。更に、絶縁基板4には、LTCC基板5の表面周縁に沿って、気密封止用の低融点のガラス材10が塗布されている。
なお、圧電振動子の構成は、上記の構成と同様であるので省略する。
【0038】
図3の第2の実施の形態例に示すように、単層の低温共焼成セラミック基板(LTCC基板)5の表裏面に、銀を主成分とする銀ペーストを用いて素子搭載パッド7a、7b、実装端子8及びビア電極6を形成して絶縁基板4を構成する。この絶縁基板4と圧電振動素子13とを用いて圧電振動子1を構成するので、小型、低背で低コストの圧電振動子1が実現できるという効果がある。更に、素子搭載パッド7a、7bが、圧電振動素子13の圧電基板15の端縁から内側の領域に形成されているので、周波数の調整に、調整時間が早く且つ精度の高いアルゴンイオンを用いたプラズマエッチング法を用いても、素子搭載パッド7a、7bが酸化されず、圧電振動子のCIの劣化の虞がないという高効果がある。
また、素子搭載パッド7a、7bを絶縁基板4の長手方向に沿って離間配置することにより、圧電振動素子13を両持ち支持することができる。このため、耐衝撃性に強い圧電振動子1が得られるという効果がある。
【0039】
図2、図4の実施の形態例では、絶縁基板4の裏面に形成する実装端子8の形状及び配置を示していないので、表面図と共に示す。図5(a)、(b)は、図1、図2に示した第1の実施の形態例の絶縁基板4の表面及び裏面の平面図である。片持ち用の絶縁基板4の素子搭載パッド7a、7bは、一方の短辺に偏位して配置されており、内部配線9とビア電極6とにより裏面の実装端子8と導通接続されている。
図6(a)、(b)は、図3、図4に示した第2の実施の形態例の絶縁基板4の表面及び裏面の平面図である。両持ち用の絶縁基板4の素子搭載パッド7a、7bは長手方向の中央に配置されており、ビア電極6により裏面の実装端子8と導通接続されている。
【0040】
図7(a)、(b)は、絶縁基板4の変形例1の表面及び裏面の平面図である。裏面の実装端子は4個であり、短手方向の一方に沿って並ぶ2個の実装端子8はダミー端子である。片持ち用の絶縁基板4の素子搭載パッド7a、7bは、他方の短手方向の辺に偏位して配置されており、ビア電極6により裏面の短手方向の他方に沿って並ぶ2個の実装端子8と導通接続されている。
図8(a)、(b)は、絶縁基板4の変形例2の表面及び裏面の平面図である。裏面の実装端子は4個であり、対角の一方の2個の実装端子8はダミー端子である。これは両持ち用の絶縁基板4であり、素子搭載パッド7a、7bは、長手方向に沿って点対称に配置されている。素子搭載パッド7a、7bの形状は、矩形と円形とを接続した鍵穴状をしており、円形の部分にビア電極6が形成され、対角の他方の裏面の実装端子8と導通接続されている。
図7(a)、図8(a)に示す絶縁基板4の場合も、素子搭載パッド7a、7bは、搭載される圧電振動素子13の面積(外周輪郭線)内に形成されている。
【0041】
図9は、圧電発振器2の概略構成図である。圧電発振器2は、上記の圧電振動子1と、圧電振動子1を励振する発振回路を搭載したIC部品40と、圧電振動子1及びIC部品40を収容するパッケージ45と、を備えている。
本発明の圧電振動子1と、発振回路を搭載したIC部品40と、パッケージ45と、を備えた圧電発振器2を構成すると、小型、低背化した低コストの圧電発振器2が得られるという効果がある。
【0042】
図10は、電子機器3の概略構成図である。電子機器3は、上記の圧電振動子1を備えている。
本発明の圧電振動子1を用いて電子機器3を構成すると、小型で低コストの電子機器が得られるという効果がある。
【符号の説明】
【0043】
1…圧電振動子、4…絶縁基板、5…低温共焼成セラミック基板(LTCC基板)、6…ビア電極、7a、7b…素子搭載パッド、7c…中継電極、8…実装端子、9…内部配線、10…ガラス材、13…圧電振動素子、15…圧電基板、17a、17b…励振電極、18a、18b…リード電極、22…導電性接着剤、30…蓋部材、40…IC部品、45…パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子と、該圧電振動素子を搭載する複数の素子搭載パッドを表面に備えた単層の絶縁基板と、前記圧電振動素子を含む該絶縁基板上の空間を気密封止する蓋部材と、を備えた圧電振動子であって、
前記圧電振動素子は、圧電基板と、該圧電基板の表面及び裏面に夫々対向配置された前記励振電極と、を有し、
前記単層の絶縁基板は、平板状の低温共焼成セラミック基板と、該低温共焼成セラミック基板の表面及び裏面に夫々形成された複数の前記素子搭載パッド及び複数の実装端子と、前記低温共焼成セラミック基板を貫通して配置されて前記各素子搭載パッドと前記各実装端子との間を導通接続する複数のビア電極と、を有し、
前記各素子搭載パッドは、前記圧電振動素子の端縁から離間した領域内に形成され、前記領域は平面視的に前記圧電振動素子の主面に沿って前記端縁から離間した領域であることを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
圧電振動素子と、該圧電振動素子を搭載する複数の素子搭載パッドを表面に備えた単層の絶縁基板と、前記圧電振動素子を含む該絶縁基板上の空間を気密封止する蓋部材と、を備えた圧電振動子であって、
前記圧電振動素子は、圧電基板と、該圧電基板の表面及び裏面に夫々対向配置された前記励振電極と、を有し、
前記単層の絶縁基板は、平板状の低温共焼成セラミック基板と、該低温共焼成セラミック基板の表面及び裏面に夫々形成された複数の前記素子搭載パッド、中継電極及び複数の実装端子と、前記素子搭載パッドと前記中継電極とを電気的に接続する内部配線と、前記低温共焼成セラミック基板を貫通して配置されて前記各素子搭載パッド又は中継電極と前記各実装端子との間を導通接続する複数のビア電極と、を有し、
前記各素子搭載パッド及び内部配線は、前記圧電振動素子の端縁から離間した領域に形成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項3】
前記絶縁基板は矩形であり、前記素子搭載パッドは、前記絶縁基板の短手方向に沿って離間配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記絶縁基板は矩形であり、前記素子搭載パッドは、前記絶縁基板の長手方向に沿って離間配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電振動子。
【請求項5】
前記素子搭載パッド、前記実装端子、前記中継電極、前記内部配線及び前記ビア電極は、銀を主成分とする材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の圧電振動子。
【請求項6】
前記絶縁基板の表面外周縁に沿って塗布した低融点のガラス材を介して前記蓋部材を接着固定したことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の圧電振動子。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の圧電振動子と、該圧電振動子を励振する発振回路を搭載したIC部品とを備えたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の圧電振動子を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−175499(P2012−175499A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36798(P2011−36798)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】