説明

圧電振動子

【課題】 接合安定性のよい錫を主成分とした低融点金属ろう材を用いながら、低融点金属ろう材の錫の成分の拡散を抑制し、電極膜の膜食われや励振電極への流れ出しを抑制することができるより信頼性の高い電極構造が得られる鉛フリー対応した圧電振動子を提供する。
【解決手段】 リード端子21,22が植設された気密端子用のベース2と、励振電極13,14と電極パッド16,17とこれらを接続する引出電極とが形成された圧電振動片1とを有し、前記リード端子の先端部分に対して圧電振動片の電極パッドを錫が含有された鉛フリー低融点金属ろう材により電気機械的に接合してベースに圧電振動片を搭載してなる圧電振動子であって、前記電極パッドには、前記引出電極と比較して錫が拡散しやすい拡散電極部172,182を形成し、当該拡散電極部を前記引出電極の形成領域外に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電振動子は、通信機器の基準発振源、あるいはマイクロコンピュータのクロック源として用いられる。例えば特許文献1に示すようなシリンダー型の圧電振動子では、金属製のシェルに絶縁ガラスが充填され、当該絶縁ガラスにリード端子が貫通固定されたベースを用い、ベース上面に圧電振動片を取着し、キャップをベースに圧入することにより、圧電振動片等を気密封止する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−68007号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の電子部品の鉛フリー要請により、上述の圧電振動子においても鉛フリー製品が求められている。このような要請に対応して、圧電振動片を支持する低融点金属ろう材も鉛フリー製品が採用されるようになっている。このような低融点金属ろう材としては、電極膜に対する濡れ性が高く接合の安定性がよい錫(Sn)を主成分としたものが用いられる。錫(Sn)を主成分とした低融点金属ろう材は鉛はんだ材に対してより電極での拡散が生じやすい。特に、例えば銀(Ag)や金(Au)、銅(Cu)などの導通性の高い電極膜の上部に対して、錫(Sn)を主成分として構成される鉛フリーはんだ材や鉛フリー低融点金属ろう材を用いると、前記導電性の高い電極膜(電極パッド)の厚み方向に対して、錫(Sn)成分が拡散(膜拡散)して膜食われ現象を引き起こすことがあった。さらに前記導電性の高い電極膜上面を錫(Sn)成分が拡散(平面拡散)する現象が生じやすくなるという問題が顕著であった。熱履歴によって錫(Sn)成分の膜拡散が進行すると電極パッドなどの電極膜が食われて電極膜の剥がれが生じやすくなり、結果としてリード端子との断線が生じることがあった。錫(Sn)成分の平面拡散が進行して励振電極の領域におよぶと、周波数変動などの電気的な不具合が生じることがあった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、接合安定性のよい錫を主成分とした低融点金属ろう材を用いながら、低融点金属ろう材の錫の成分の拡散を抑制し、電極膜の膜食われや励振電極への流れ出しを抑制することができるより信頼性の高い電極構造が得られる鉛フリー対応した圧電振動子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するためになされたもので、請求項1に示すように、リード端子が植設された気密端子用のベースと、励振電極と電極パッドとこれらを接続する引出電極とが形成された圧電振動片とを有し、前記リード端子の先端部分に対して圧電振動片の電極パッドを錫が含有された鉛フリー低融点金属ろう材により電気機械的に接合してベースに圧電振動片を搭載してなる圧電振動子であって、前記電極パッドには、前記引出電極と比較して錫が拡散しやすい拡散電極部を形成し、当該拡散電極部を前記引出電極の形成領域外に形成したことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、前記電極パッドには、前記引出電極と比較して錫が拡散しやすい拡散電極部を形成し、当該拡散電極部を前記引出電極の形成領域外に形成しているので、低融点金属ろう材に含有された錫を拡散電極部に拡散させることで電極パッドの電極膜の膜食われを抑制するとともに電極パッドから励振電極へ錫が拡散するのを抑制することができる。結果として電極膜の剥がれによるリード端子との断線が生じることがなくなり、錫が励振電極に拡散することによる周波数変動が生じたり、電気的特性が低下するといった問題もなくすことができる。
【0008】
また請求項2に示すように、上記請求項1の構成において、前記電極パッドには、前記リード端子の先端部分が直接接合される接合電極部と、当該接合電極部に隣接する拡散電極部を形成したことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、前記電極パッドには、前記リード端子の先端部分が直接接合される接合電極部と、当該接合電極部に隣接する拡散電極部を形成しているので、低融点金属ろう材に含有された錫の余剰分を接合に直接寄与しない隣接した拡散電極部に平面拡散させることができる。特に錫の拡散は電極の平面方向に沿って平面拡散させることで、電極の厚み方向に膜拡散する場合に比べてより拡散速度を高めることができるため、接合電極部に隣接する位置に拡散電極部を形成することで、錫の拡散をより俊敏に効果的なものとし、接合電極部内部への膜拡散や励振電極など不要な電極領域への平面拡散を抑制するのに望ましい構成となる。加えて拡散電極部へ錫を拡散させることで、接合電極部の電極膜の膜食われを抑制し、電極膜の剥がれをなくすのに好ましい。
【0010】
また請求項3に示すように、上記請求項2の構成において、前記拡散電極部は電極パッドのうちの前記引出電極と離隔された位置に形成してもよい。
【0011】
上記構成によれば、上述の作用効果に加え、前記拡散電極部を電極パッドのうちの前記引出電極と離隔された位置に形成していることで、引出電極に向かって錫が平面拡散するのが抑制される。結果として励振電極への錫の平面拡散を抑制するのにより望ましい構成となる。
【0012】
また請求項4に示すように、上記構成において、前記拡散電極部の上面が金層でもよい。
【0013】
上記構成によれば、上述の作用効果に加え、錫の平面拡散が促進され、電極としての安定性に優れた最適な拡散電極部として好ましい電極材料となる。特に拡散電極部へ錫を拡散させることで、接合電極部の電極膜の膜食われを抑制し、電極膜の剥がれをなくすのに好ましい。
【0014】
また請求項5に示すように、上記構成において、前記接合電極部の上面が銅層でもよい。
【0015】
上記構成によれば、上述の作用効果に加え、低融点金属ろう材の接合性を低下させることなく、錫の膜拡散を抑えるのに好ましい電極材料となる。特に接合電極部自身の電極膜の膜食われを抑制し、電極膜の剥がれをなくすのに好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接合安定性のよい錫を主成分とした低融点金属ろう材を用いながら、低融点金属ろう材の錫の成分の拡散を抑制し、電極膜の膜食われや励振電極への流れ出しを抑制することができるより信頼性の高い電極構造が得られる鉛フリー対応した圧電振動子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による実施形態を示す圧電振動子の分解側面図。
【図2】図1の圧電振動片をベースに搭載した状態の斜視図。
【図3】図1のX−X線に沿った断面図。
【図4】図1のY−Y線に沿った断面図。
【図5】図1のY−Y線に沿った変形例の断面図。
【図6】図1のY−Y線に沿った変形例の断面図。
【図7】図1のY−Y線に沿った変形例の断面図。
【図8】図1のY−Y線に沿った変形例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による好ましい実施形態について音叉型圧電振動子を例にとり、図面に基づいて説明する。図1は本実施形態による音叉型圧電振動子の分解側面図であり、図2は図1の圧電振動片をベースに搭載した状態の斜視図、図3は図1のX−X線に沿った断面図であり、図4は図1のY−Y線に沿った断面図である。また図5〜図8は他の変形例を示す断面図である。
【0019】
本発明の音叉型圧電振動子は、音叉型振動片(圧電振動片)1と、この音叉型振動片が搭載され接合されるリード端子21,22(22については図示せず)を有するベース2と、音叉型振動片1とリード端子21,22とを接合する錫(Sn)が含有された鉛フリー低融点金属ろう材としての鉛フリーはんだ材H、図示しないキャップとから構成されている。
【0020】
音叉型振動片1は、水晶からなりXYカットやNTカットなどの屈曲振動する切断角度のものが用いられ、基部10と当該基部の一端部側101から同一方向へ平行にのびる2本の脚部11,12を構成している。基部10は脚部11,12とつながる2つの主面103,104(104については図示せず)と2つの側面105,106とを有している。
【0021】
脚部11,12には異極の励振電極である第1励振電極13と第2励振電極14とが形成されている。脚部11には表裏主面に第1励振電極13a,13bと両側面に第2励振電極14c,14dが形成され、脚部12には表裏主面に第2励振電極14a,14bと両側面に第1励振電極13c,13dが形成されている。このうち脚部11の表裏主面の第1励振電極13a,13bと脚部12の両側面の第1励振電極13c,13dとが後述する引き回し電極(引出電極)や接続電極(引出電極)により同極で共通接続され、脚部12の表裏主面の第2励振電極14a,14bと脚部11の両側面の第2励振電極14c,14dとが後述する引き回し電極(引出電極)や接続電極(引出電極)により同極で共通接続されている。
【0022】
基部10には表裏主面に後述するベース2のリード端子21,22と鉛フリーはんだ材Hを用いて導電接合されるとともに前記第1励振電極と第2励振電極とを個別に導出する電極パッド17,18(18については図示せず)が基部の主面103,104(104については図示せず)のうち他端部側102の端部に接した状態かあるいは端部近傍(基部他端部あたり)のみに形成されている。図1では基部端部近傍に形成している。
【0023】
上述の各励振電極と各電極パッドとはお互いが離間した状態で以下に説明する複数の引き回し電極(引出電極)と接続電極(引出電極)により共通接続されている。また図1に示す音叉型振動片1の基部10を下側に配置した状態から表裏反転した状態に配置される裏面側の各電極は、図1に示す表面側の各電極と同様の配置や同様の形状で構成しているので、反転させた際に同位置に配置される電極については図中括弧書きで補足的に記載している。
【0024】
第1励振電極13は脚部11の表裏主面の第1励振電極13a,13bと脚部12の両側面の第1励振電極13c,13dにより構成されており、脚部11,12から離間した基部10に形成された電極パッド17へと導出されている。このうち表裏主面の第1励振電極13aと第1励振電極13bとは脚部11の先端付近に形成された引き回し電極15a,15bにより接続されており、第1励振電極13aと第1励振電極13cとは脚部12の付根付近に形成された引き回し電極15cにより接続され、第1励振電極13aと第1励振電極13dとは基部10に形成された引き回し電極15dにより接続されている。また、接続電極15eはお互いに離間した側面106の第1励振電極13dと主面103の電極パッド17との上面に一部が重なった状態でお互いを接続している。
【0025】
接続電極15eは基部の主面103から側面106に面方向が変更された状態で形成されているとともに、基部の他端部側102の側面106にはその他端部に接した状態かあるいはその他端部近傍に(基部他端部あたりに)接続電極15eのみが形成されている。図1では接続電極15eを基部他端部近傍に形成している。
【0026】
第2励振電極14は脚部12の表裏主面の第2励振電極14a,14bと脚部11の両側面の第2励振電極14c,14dにより構成されており、脚部11,12から離間した基部10に形成された電極パッド18(図示せず)へと導出されている。このうち表裏主面の第2励振電極14aと第2励振電極14bとは脚部12の先端付近に形成された引き回し電極16a,16bにより接続されており、第2励振電極14bと第2励振電極14dとは脚部11の付根付近に形成された引き回し電極16c(図示せず)により接続され、第2励振電極14bと第2励振電極14cとは基部10に形成された引き回し電極16d(図示せず)により接続されている。また、図示していないが、接続電極16eはお互いに離間した側面105の第1励振電極13dと主面103の電極パッド17との上面に一部が重なった状態でお互いを接続している。
【0027】
接続電極16eは基部の主面104(図示せず)から側面105に面方向が変更された状態で形成されているとともに、基部の他端部側102の側面105にはその他端部に接した状態かあるいはその他端部近傍に(他端部あたりに)接続電極16eのみが形成されている。
【0028】
上述の各励振電極や各引き回し電極、各電極パッドは、マスク治具を用いるパターンニングによる手法やフォトリソグラフィー技術によるメタルエッチングなどによる手法で、例えば、クロム(Cr)やニッケル(Ni)の下地電極層に銀(Ag)や金(Au)の上部電極から構成された薄膜であり、真空蒸着法やスパッタリング法などにより形成されている。これらは導通性の高い電極膜として形成されている。これに対して接続電極15e,16eは、マスク治具を用いる手法で、例えば、クロム(Cr)やニッケル(Ni)の電極層のみから構成された薄膜であり、真空蒸着法やスパッタリング法などにより形成されている。これははんだ材の濡れ性の低い電極膜として形成されている。
【0029】
このように構成された音叉型振動片1(圧電振動片)に対して、本形態では、電極パッド17,18には、引出電極の一部であるクロム(Cr)やニッケル(Ni)の電極層のみから構成された接続電極15e,16eと比較して、後述する錫系の鉛フリーはんだ材Hの錫(Sn)成分が拡散しやすい上面が銅(Cu)や銀(Ag)、金(Au)から構成された拡散電極部172,182を有しており、接続電極15e,16eが形成されていない形成領域外に形成していることに特徴点がある。
【0030】
すなわち、図1に示すように、電極パッド17,18には、リード端子21,22の先端部分21a,22aが直接接合される接合電極部171,181(181については図示せず)と、当該接合電極部171,181に隣接する接合に直接寄与しない拡散電極部172,182を形成されている。加えて、拡散電極部172,182は電極パッド17,18のうちの接続電極15e,16eと離隔された反対側の位置(対向する位置)に引き出されて形成されている。図4は図1のY−Y断面図であり、電極パッド17,18と接続電極15e,16eの電極層の構成を示している。本形態では接合電極部171,181と拡散電極部172,182とは、クロム(Cr)やニッケル(Ni)の下地電極層D1に銅(Cu)や銀(Ag)、金(Au)の上部電極D2から構成された同じ層構成としている。これに対して接続電極15e,16eは、クロム(Cr)やニッケル(Ni)の下地電極層D1のみで構成されている。
【0031】
ベース2は、金属製のシェルと、当該シェル内に充填された図示しない絶縁ガラスGと、当該絶縁ガラスに貫通固定されたリード端子21,22とからなる。シェルは例えば42アロイを基体としており、上下に貫通した円筒形状を有している。なお、このシェルの材料は42アロイ以外に、コバールあるいは鉄ニッケル系合金を用いてもよい。
【0032】
リード端子21,22は例えばコバールを基体とし、線状に加工されている。これらリード端子は前記シェル内に所定の間隔をもって貫通配置されている。シェル内に充填された絶縁ガラスGは例えばホウケイ酸ガラスからなり、前記シェルとリード端子21,22とを各々電気的に独立させた状態で固定されている。
【0033】
ベースのシェルおよびリード端子21,22の表面には次の金属膜が形成される。シェルの基体表面およびリード端子の基体表面には、図示していないが、それぞれCu層からなる下地金属層が形成され、その上面にはSn−Cu層が形成されている。上記Cu層は例えば2〜5μmの厚さで形成され、上記Sn−Cu層は9〜15μmの厚さで形成される。これら層厚は一例であり、実施形態により適宜調整変更すればよい。なお、下地金属層としてNi層を用いてもよい。このようなSn−Cu層により鉛フリー(無鉛)対応ができ、また耐熱性を確保することができる。
【0034】
図2に示すように、このようなベース2のリード端子のインナー側21a,22aには前記音叉型水晶振動子片1が電気的機械的に接合される。すなわち基部10に形成された電極パッドの接合電極部171,181とリード端子のインナー側21a,22aとがSn−3Ag−0.5Cu等の錫系の鉛フリーはんだ材Hを用いたろう付け等により導電接合される。なお、錫系の鉛フリーはんだ材としては他の材料のものでもよい。
【0035】
図示しないキャップは洋白(Cu−Ni−Zn系合金)からなり、有底の円筒状を有している。キャップの外周および内周面にはニッケル層が3〜9μmの厚さでメッキ等の手段により形成されている。
【0036】
キャップの内径は前記ベースのシェル部分よりも若干小さく設計されており、例えば2〜5%小さな内径に設定されている。このようなキャップを真空雰囲気中で前記音叉型振動片1を被覆し、キャップ開口部をベース2に圧入することにより、ベース2とキャップが強く密着しキャップ内部が真空状態に保たれた気密封止を行うことができる。
【0037】
なお、上記実施形態に限らず、接合電極部171,181の上面材料を引出電極の一部である接続電極15e,16eの上面材料と比較して錫(Sn)成分が拡散しやすい材料を選択しながら、拡散電極部172,182の上面材料を接合電極部171,181の上面材料より錫(Sn)成分が拡散しやすい材料を選択してもよい。この構成により本発明の拡散電極部172,182の機能をより一層高めるうえで好ましい構成とすることができる。
【0038】
具体的には、上記図4と同一箇所の断面図であり、別形態の図5、図6の断面図に示すように、接続電極15e,16eの上面材料をクロム(Cr)やニッケル(Ni)としながら、拡散電極部172,182の上面材料を金(Au)とした場合、接合電極部171,181の上面材料を銀(Ag)とする。
【0039】
この場合、図5に示すように、下地電極層D1は共通としながら、上部電極D2のみを異ならせる構成としてもよい。例えば、接合電極部171,181と拡散電極部172,182とはクロム(Cr)やニッケル(Ni)の共通の下地電極層D1とし、接合電極部171,181は銀(Ag)の上部電極D2を構成し、拡散電極部172,182は金(Au)の上部電極D2を構成してもよい。
【0040】
または、図6に示すように、下地電極層D1と一部の上部電極D2は共通としながら、拡散電極部のみさらに第2の上部電極D3を形成した構成としてもよい。例えば、接合電極部171,181と拡散電極部172,182とはクロム(Cr)やニッケル(Ni)の共通の下地電極層D1とし、その上面に共通の銀(Ag)の上部電極D2を構成し、拡散電極部172,182の上面にのみ金(Au)の第2の上部電極D3を構成してもよい。
【0041】
また、上記実施形態に限らず、接合電極部171,181の上面材料を引出電極の一部である接続電極15e,16eの上面材料と比較して錫(Sn)成分が拡散しやすい材料を選択しながら、接合電極部171,181の上面材料を部172,182の上面材料より錫(Sn)成分が拡散しにくい材料を選択してもよい。この構成により本発明の拡散電極部172,182の機能をより一層高めるうえで好ましい構成とすることができる。
【0042】
具体的には、上記図4と同一箇所の断面図であり、別形態の図7、図8の断面図に示すように、接続電極15e,16eの上面材料をクロム(Cr)やニッケル(Ni)としながら、拡散電極部172,182の上面材料を銀(Ag)や金(Au)とした場合、接合電極部171,181の上面材料を銅(Cu)とする。
【0043】
この場合、図7に示すように、下地電極層D1は共通としながら、上部電極D2のみを異ならせる構成としてもよい。例えば、接合電極部171,181と拡散電極部172,182とはクロム(Cr)やニッケル(Ni)の共通の下地電極層D1とし、接合電極部171,181は銅(Cu)の上部電極D2を構成し、拡散電極部172,182は銀(Ag)や金(Au)の上部電極D2を構成してもよい。
【0044】
または、図8に示すように、下地電極層D1と一部の上部電極D2は共通としながら、接合電極のみさらに第2の上部電極D3を形成した構成としてもよい。例えば、接合電極部171,181と拡散電極部172,182とはクロム(Cr)やニッケル(Ni)の共通の下地電極層D1とし、その上面に共通の銀(Ag)や金(Au)の上部電極D2を構成し、接合電極部171,181の上面にのみ銅(Cu)の第2の上部電極D3を構成してもよい。
【0045】
なお、図7と図8に示す銅(Cu)の接合電極部を構成する実施形態では、銅を含有した厚膜ペーストを印刷することにより1μm以上で形成してもよい。この構成では、比較的安価で容易に1μm以上の銅(Cu)の厚膜を形成することができるので、拡散電極部172,182の面積を増大させることなく、錫(Sn)の拡散を接合電極部171,181の厚み方向の拡散(膜拡散)で抑えることができる。結果として、電極パッド17,18全体としての電極面積も小さくでき、電極形成に伴う設計自由度が高まる。
【0046】
また、図5乃至図8に実施形態は単独で構成するだけでなく相互に組み合わせて構成してもよい。
【0047】
上記実施形態により、励振電極13,14と第1電極パッド17,18とはお互いが離間した状態で銀(Ag)や金(Au)などの導通性の高い電極膜により形成しているので、直列共振抵抗値などの圧電振動子の電気的特性を向上させながら錫(Sn)を主成分として構成される鉛フリー低融点金属ろう材Hが電極パッド17,18の内部でのみ濡れ拡がり、リード端子21,22との接合強度も安定する。
【0048】
また、電極パッド17,18には、引出電極の一部である接続電極15e,16eと比較して錫(Sn)が拡散しやすい拡散電極部172,182を形成し、拡散電極部172,182を引出電極の一部である接続電極15e,16eの形成領域外に形成しているので、鉛フリー低融点金属ろう材Hに含有された錫(Sn)を拡散電極部172,182に拡散させることで電極パッド17,18の電極膜の膜食われを抑制するとともに電極パッド17,18から励振電極13,14へ錫(Sn)が拡散するのを抑制することができる。結果として電極膜の剥がれによるリード端子21,22との断線が生じることがなくなり、錫(Sn)が励振電極13,14に拡散することによる周波数変動が生じたり電気的特性が低下したりするといった問題もなくすことができる。
【0049】
また、電極パッド17,18には、リード端子21,22の先端部分21a,22aが直接接合される接合電極部171,181と、当該接合電極部171,181に隣接する接合に直接寄与しない拡散電極部172,182を形成されているので、鉛フリー低融点金属ろう材Hに含有された錫(Sn)の余剰分を接合に直接寄与しない隣接した拡散電極部172,182に平面拡散させることができる。特に錫(Sn)の拡散は電極の平面方向に沿って平面拡散させることで、電極の厚み方向に膜拡散する場合に比べてより拡散速度を高めることができるため、接合電極部171,181に隣接する位置に拡散電極部172,182を形成することで、錫の拡散をより俊敏に効果的なものとし、接合電極部171,181の厚み方向の内部への膜拡散や励振電極13,14など不要な電極領域への平面拡散を抑制するのに望ましい構成となる。加えて拡散電極部172,182へ錫(Sn)を拡散させることで、接合電極部171,181の電極膜の膜食われを抑制し、電極膜の剥がれをなくすのに好ましい。
【0050】
また、拡散電極部172,182は電極パッド17,18のうちの接続電極15e,16eと離隔された反対側の位置(対向する位置)に引き出されて形成されているので、引出電極の一部である接続電極15e,16eに向かって錫(Sn)が平面拡散するのが抑制される。結果として励振電極13,14への錫(Sn)の平面拡散を抑制するのにより望ましい構成となる。
【0051】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えば、音叉型圧電振動子に限らず、ATカット振動片を使用した厚みすべり振動子に本発明を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
水晶振動子等の圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 音叉型振動片(圧電振動片)
2 ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード端子が植設された気密端子用のベースと、励振電極と電極パッドとこれらを接続する引出電極とが形成された圧電振動片とを有し、前記リード端子の先端部分に対して圧電振動片の電極パッドを錫が含有された鉛フリー低融点金属ろう材により電気機械的に接合してベースに圧電振動片を搭載してなる圧電振動子であって、
前記電極パッドには、前記引出電極と比較して錫が拡散しやすい拡散電極部を形成し、当該拡散電極部を前記引出電極の形成領域外に形成したことを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
前記電極パッドには、前記リード端子の先端部分が直接接合される接合電極部と、当該接合電極部に隣接する拡散電極部を形成したことを特徴とする特許請求項1記載の圧電振動子。
【請求項3】
前記拡散電極部は電極パッドのうちの前記引出電極と離隔された位置に形成したことを特徴とする特許請求項2記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記拡散電極部の上面が金層からなることを特徴とする特許請求項1乃至3記載の圧電振動子。
【請求項5】
前記接合電極部の上面が銅層からなることを特徴とする特許請求項1乃至4記載の圧電振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−38718(P2013−38718A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175323(P2011−175323)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】