説明

地図表示装置、及び該地図配信システム

【課題】処理負荷を軽減しつつも更新内容が反映された道路地図を表示するのに好適な地図表示装置を提供すること。
【解決手段】道路網をノードとリンクとで管理する第一の道路レイヤを有する地図データを格納した地図格納手段と、道路網に含まれない別の道路を画像として管理する第二の道路レイヤの道路データであって、該画像中の少なくとも2点を地図データに対応する座標と関連付けてメタ情報として保持する道路データを取得する道路データ取得手段と、第一の道路レイヤの道路網を描画して道路網画像を生成する画像生成手段と、メタ情報として付帯する座標を用いて第二の道路レイヤの画像を道路網画像に重ね合わせる地図画像重畳手段と、重ね合わせられた地図画像を所定の表示画面に表示する表示手段とにより地図表示装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路地図を表示する地図表示装置、及び該地図表示装置を有する地図配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)は、地球を周回するGPS衛星から発信されるGPS信号を用いて対象物の位置情報等を測定するための測位システムであり、日常生活においても広く利用されている。
【0003】
GPSでは、複数のGPS衛星がCDMA(Code Division Multiple Access)方式によって同じ周波数帯を共用してGPS信号を送信する。具体的には、GPS信号は、クロック情報やGPS衛星の軌道情報を含む通信信号としての航法メッセージと、GPS衛星毎に定められた拡散符号としてのPRNコード(Pseudo Random Noise code)とにより、1575.42MHzのキャリアをBPSK(Binary Phase Shift Keying)変調したものである。GPSレシーバは、原理上必要とされる個数以上のGPS衛星を選択してGPSアンテナにより受信し、受信したGPS衛星に対応するPRNコードを生成し、生成されたPRNコードの位相をGPS信号に同期させて乗じることにより航法データを復調する。GPSレシーバは、復調処理により得られた航法データを用いて演算を行い、対象物の位置情報、方位情報、移動速度情報等を生成する。以下においては、説明の便宜上、GPSレシーバによるGPS信号を利用した対象物の位置測定、方位測定、移動速度測定等を「GPS測位」と記す。
【0004】
GPSレシーバを備えるエンドユーザ向け製品には、例えば一般乗用車等の車両に搭載されるカーナビゲーション装置がある。カーナビゲーション装置は、GPS測位に加えてDR(Dead Reckoning)センサを用いた位置測定、方位測定、移動速度測定等(以下、「DR測位」と記す。)も行い、2つの測位方式の弱点を補完するように、両方式による測位結果から最終的な測位結果を演算する。カーナビゲーション装置は、演算して得られた最終的な測位結果に基づいて、地図画面上に表示する自車位置を更新する。カーナビゲーション装置は、目的地が設定されている場合、地図画面上の自車位置の更新と併せて当該目的地に向けたナビゲーションを行う。
【0005】
ところで、カーナビゲーション装置は、ローカルに保存されている地図データを参照してナビゲーションを行うため、地図データにない新しい道路や一時的な迂回路等に対応することができない。最新の道路地図に対応するためには、地図データを格納するCD−ROMやDVD−ROM等の記憶媒体を入れ替えたり、地図情報提供業者のサーバにアクセスして更新データをダウンロードしたりする必要がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−24555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、地図データは、道路レイヤ、施設レイヤ、背景レイヤ等の複数のレイヤデータで構成されている。このうちの道路レイヤは、道路の主要地点(交差点その他道路網表現上の結節点等)に対応するノードと、隣接するノードを連結するリンク(隣接ノード間の道路区間)とを関連付けてデータベース化して、道路データとして管理している。そのため、カーナビゲーション装置は、地図の更新データをダウンロードした際に、当該更新データを適用してデータベースを再構築するという処理を行う必要がある。しかし、道路レイヤのデータベースを再構築するという処理は、カーナビゲーション装置のような、CPU(Central Processing Unit)の性能やメモリ容量等のリソースが限られる装置にとって負荷が大きすぎるという問題が指摘される。
【0008】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、処理負荷を軽減しつつも更新内容が反映された道路地図を表示するのに好適な地図表示装置、及び該地図配信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る地図表示装置は、地図を構成するオブジェクトを種別毎に別個のレイヤで管理する地図データであって、道路網をノードとリンクとで管理する第一の道路レイヤを有する地図データを格納した地図格納手段と、道路網に含まれない別の道路を画像として管理する第二の道路レイヤの道路データであって、該画像中の少なくとも2点を地図データに対応する座標と関連付けてメタ情報として保持する道路データを所定の外部装置と通信して取得する道路データ取得手段と、第一の道路レイヤの道路網を描画して道路網画像を生成する画像生成手段と、メタ情報として付帯する座標を用いて第二の道路レイヤの画像を道路網画像に重ね合わせる地図画像重畳手段と、重ね合わせられた地図画像を所定の表示画面に表示する表示手段とを有することを特徴とした装置である。
【0010】
かかる構成によれば、更新後の道路を表示するにあたり、ノードとリンクからなるデータベースを再構築する必要がない。そのため、地図表示装置の処理負荷が過大になるという不都合の発生を有効に避けつつも、最新の道路地図をユーザに提示することができる。また、当該構成によれば、廉価版の地図表示装置の設計に有利である。
【0011】
本発明に係る地図表示装置は、GPS航法と自律航法の少なくとも一方を使用して現在位置を測定する位置測定手段と、測定された現在位置に対応する地図画像中の位置を計算する位置計算手段と、計算された位置を第一の道路レイヤの道路上の位置に補正するマップマッチング手段と、補正された位置に所定のマークを配置するマーク配置手段とを更に有する構成としてもよい。
【0012】
本発明に係る地図表示装置は、例えば第二の道路レイヤの道路を走行中であっても、地図画面上の現在位置マークが、第一の道路レイヤの道路上の位置に強制的に補正されるという不都合を解消するため、次のように構成されている。
【0013】
すなわち、本発明に係る地図表示装置は、測定された現在位置に基づいて第二の道路レイヤの道路が該現在位置周辺に存在するか否かを検知する検知手段と、検知手段によって第二の道路レイヤの道路が検知された場合に、マップマッチング手段による第一の道路レイヤの道路上への位置の補正機能を停止する補正機能停止手段とを更に有する構成が想定される。
【0014】
また、本発明に係る地図表示装置は、測定された現在位置に基づいて第二の道路レイヤの道路が該現在位置周辺に存在するか否かを検知する検知手段と、検知手段によって第二の道路レイヤの道路が検知された場合に、GPS航法の測位結果と、自律航法の測位結果との差が所定の基準値以下であるか否かを判定すると共に、該自律航法又は該GPS航法によって測定された位置と、該位置に最も近い第一の道路レイヤの道路との距離が所定距離以上であるか否かを判定する判定手段と、上記差が所定の基準値以下であると同時に上記距離が所定距離以上であると判定された場合に、マップマッチング手段による第一の道路レイヤの道路上への位置の補正機能を停止する補正機能停止手段とを更に有する構成が想定される。
【0015】
また、本発明に係る地図表示装置は、測定された現在位置に基づいて第二の道路レイヤの道路が該現在位置周辺に存在するか否かを検知する検知手段と、検知手段によって第二の道路レイヤの道路が検知された場合に、GPS航法の測位結果と、自律航法の測位結果との差が所定の基準値以下であるか否かを判定すると共に、該自律航法又は該GPS航法による測位結果をそのまま反映したときの表示画面上の位置と、該表示画面上において該位置の最も近くに配置される該第二の道路レイヤの道路の画像位置との距離が所定距離以下であるか否かを判定する判定手段と、上記差が所定の基準値以下であると同時に上記距離が所定距離以下であると判定された場合に、マップマッチング手段による第一の道路レイヤの道路上への位置の補正機能を停止する補正機能停止手段とを更に有する構成が想定される。
【0016】
本発明に係る地図表示装置としては、例えば車両に搭載された車載型装置が想定される。
【0017】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る地図配信システムは、上記の何れかに記載の地図表示装置と、第二の道路レイヤの道路データを蓄積する地図サーバとを有するシステムである。地図表示装置が地図格納手段に格納されている地図データのバージョンを所定のタイミングで地図サーバに送信すると、地図サーバは、受信したバージョンに基づいて第二の道路レイヤの道路データの差分を検出し、検出された差分データを地図表示装置に配信する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、処理負荷を軽減しつつも更新内容が反映された道路地図を表示するのに好適な地図表示装置、及び該地図配信システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態のカーナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態のカーナビゲーション装置が有するGPSレシーバの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態の地図配信システムの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態のカーナビゲーション装置で実行される地図更新データ取得処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態のカーナビゲーション装置で実行される地図表示処理を示すフローチャートである。
【図6】差分レイヤ画像を基本レイヤ画像に重ね合わせる処理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のカーナビゲーション装置について説明する。
【0021】
図1は、一般乗用車等の車両に搭載されるカーナビゲーション装置200の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、カーナビゲーション装置200は、GPSレシーバ100、ジャイロセンサ102、車速センサ104、A/D変換部102a、104a、CPU108、ROM(Read Only Memory)110、RAM(Random Access Memory)112、HDD(Hard Disk Drive)114、表示部116、入力部118、VRAM(Video Random Access Memory)120、通信インタフェース122を有している。
【0022】
CPU108は、カーナビゲーション装置200全体の制御を統括的に実行する。CPU108は、カーナビゲーション装置200の各構成要素と連携して動作して、各種機能を実現する。
【0023】
GPSレシーバ100は、複数のGPS衛星からGPS測位に必要な個数以上のGPS信号を捕捉、追尾してGPS測位を行い、得られたGPS測位結果をCPU108に出力する。GPSレシーバ100によるGPS測位は、例えば毎秒一回行われる。
【0024】
ジャイロセンサ102、車速センサ104は共に、周知のDRセンサである。ジャイロセンサ102は、カーナビゲーション装置200を搭載した車両の水平面における方位に関する角速度を計測して、その計測結果をA/D変換部102aに出力する。車速センサ104は、当該車両の左右の駆動輪の回転速度を検出して、その検出結果に応じたパルス数をA/D変換部104aに出力する。A/D変換部102a、104aに入力した信号は、A/D変換後、CPU108に入力する。
【0025】
ROM110は、ナビゲーション処理を実行するための各種プログラムを格納している。これらのプログラムは、システム起動時にRAM112のワークエリアにロードされる。CPU108は、ロードされたプログラムの実行を行う。
【0026】
CPU108は、各DRセンサの出力信号を用いてDR測位演算を行い、DR測位結果を取得する。次いで、取得されたDR測位結果と、GPSレシーバ100のGPS測位結果とを、夫々の測位結果に対する誤差の推定値を加味した上で比較する。CPU108は、比較結果を参照して、DR測位結果の精度が低下していないことを検知した場合、DR測位結果を最終的な測位結果として決定する。一方、DR測位結果の精度低下を検知した場合は、GPS測位結果を用いてDR測位結果に補正をかけて、最終的な測位結果を計算する。CPU108は、GPS測位結果の出力が無い場合には、上記の比較処理を行うことなくDR測位結果を最終的な測位結果とする。
【0027】
CPU108は、決定した測位結果をキーにHDD114内の地図データベース(以下、「ローカル地図データベース」と記す。)を検索して、自車位置周辺の地図を切り出す。RAM112の所定領域は、表示部116の画面サイズ(解像度)よりも広範なイメージバッファを構成している。CPU108は、切り出した地図データのイメージバッファへの描画を行うと共に、自車の方位等に合わせて地図を回転・移動等するジオメトリ処理を行い、処理結果に応じたイメージバッファ内のイメージ領域の指定を行う。また、CPU108は、マップマッチングによる地図上への自車位置マークの配置を行う。
【0028】
VRAM120は、表示部116に直接表示される内容を保持するメモリであり、表示部116の画面サイズに対応するイメージ領域を有している。VRAM120には、イメージバッファ内の指定イメージ領域に描画された内容が転送される。描画結果がVRAM120に転送されると、例えば自車位置を基準とした周辺地図が表示部116の表示画面上に表示される。
【0029】
なお、CPU108は、ユーザによる入力部118の操作によって目的地が設定されている場合、当該目的地に向けた周知のナビゲーション処理も併せて行う。
【0030】
図2は、GPSレシーバ100の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、GPSレシーバ100は、GPSアンテナ1、GPSレシーバモジュール3を有している。
【0031】
GPS衛星から発信されたGPS信号は、GPSアンテナ1によって受信される。GPSアンテナ1によって受信されたGPS信号は、GPSレシーバモジュール3が有するRFアナログ処理部32に入力する。RFアナログ処理部32に入力したGPS信号は、ダウンコンバータ32aにおいて、基準クロック32dの信号を基に所定周波数の信号を発生するシンセサイザ32cからの信号により、フィルタリング等の信号処理に適した中間周波数にダウンコンバートされる。ダウンコンバートされた中間周波数の信号は、A/Dコンバータ32bによってデジタル信号に変換されて、ベースバンドデジタル処理部33に出力される。
【0032】
ベースバンドデジタル処理部33は、スペクトラム拡散されているGPS信号を逆拡散するための処理を行う。A/Dコンバータ32bからキャリア相関部33aに出力される信号は、数値制御発信器であるキャリアNCO(Number Controlled Oscillator)33cからの信号と乗算され、次いで、乗算結果が積分され、それにより相関計算が行われる。この相関計算によるピーク値が得られるように、すなわち、搬送波との同期が確立するように、測位演算部33fは、キャリア追尾ループを介してキャリアNCO33cを制御する。
【0033】
キャリア相関部33aからの信号は、更に、PRNコード相関部33bに出力される。PRNコード相関部33bでは、キャリア相関部33aからの信号と、捕捉すべきGPS衛星と同じ疑似ランダムコードをコードNCO33eからの信号に基づいて発生するPRNコード発生部33dからの信号とが乗算され、次いで、乗算結果が積分され、それにより相関計算が行われる。この相関計算によるピーク値が得られるように、すなわち、GPS信号に含まれるPRNコード信号との同期が確立するように、測位演算部33fは、コード追尾ループを介してコードNCO33eを制御する。
【0034】
以上の信号処理により、GPS信号は、逆拡散される。また、PRNコード相関部33bによる相関出力からは、ベースバンド信号が得られる。測位演算部33fは、得られたベースバンド信号から衛星位置情報等を含むGPSメッセージを取得する。また、測位演算部33fは、GPSレシーバモジュール3側で発生するPRNコード信号の発生タイミングを基にGPS信号の飛行時間を取得して疑似距離の計測を行い、また、キャリアNCO33cの位相変化量を基に、GPSレシーバモジュール3自身の速度、方位等も算出する。
【0035】
ベースバンドデジタル処理部33は、キャリア相関部33a、PRNコード相関部33b、キャリアNCO33c、PRNコード発生部33d、コードNCO33eで構成される受信チャンネルを複数有する。図2においては、受信チャンネルが例えば8チャンネルあるとする。測位演算部33fは、各受信チャンネルで受信される受信信号のうち4つ以上から得られる疑似距離を基に、幾何学的な演算によりGPSレシーバモジュール3自身の位置を求める測位演算(3次元測位)を実行する。これら測位結果、速度、方位等のデータは、外部インタフェース部34を介してホストシステムに、ここではCPU108に渡される。
【0036】
測位演算部33fは、ベースバンドデジタル処理部33の各受信チャンネルにおいて受信された信号の受信C/Nを検出して、受信C/Nが所定の閾値を超えるもののみを選択して測位演算に用いている。測位演算部33fは、トラッキングしているGPS衛星の数が例えば3つの場合は2次元測位を、4つ以上の場合には3次元測位を行う。
【0037】
以上が、カーナビゲーション装置200で実行される基本的な処理動作である。ここで、カーナビゲーション装置200は、新しい道路や一時的な迂回路等に対応するため、ローカル地図データベースを更新する必要がある。本実施形態においては、外部サーバにアクセスして更新データをダウンロードし、ローカル地図データベースを更新する構成が採用されている。そして、ローカル地図データベースを更新する際のカーナビゲーション装置200の処理負荷を軽減するため、次に説明する構成を有している。
【0038】
図3は、本実施形態の地図配信システム10の構成を示すブロック図である。図3に示されるように、地図配信システム10は、カーナビゲーション装置200に加えて、外部サーバである地図配信サーバ300を有している。カーナビゲーション装置200と地図配信サーバ300は、互いが有する通信インタフェース122又は340により、周知のインターネット網400を介して双方向通信可能に接続されている。なお、図3においては、説明の便宜上、地図配信サーバ300に接続されるクライアント(カーナビゲーション装置200)を一台のみ示しているが、実際には複数台のクライアントが接続されている。クライアントの形態としては、カーナビゲーション装置以外に、簡易型ナビゲーション装置であるPND(Personal Navigation Device)や携帯電話端末等の移動体端末が想定される。
【0039】
地図配信サーバ300は、地図情報提供業者が保有するサーバであり、CPU310、メモリ320、地図データベース330、及び前述の通信インタフェース340を有している。CPU310は、メモリ320に格納されている各種プログラムの実行等を行う。地図データベース330には、所定範囲(例えば全国)の地図データがデータベース化され管理されている。地図データベース330は、現実の道路網に合わせて定期的に又は任意のタイミングで更新される。地図データは、道路、施設、背景等の各種オブジェクトを道路レイヤ、施設レイヤ、背景レイヤ等の別個のレイヤで管理するデータ構造を有している。
【0040】
図4は、カーナビゲーション装置200で実行される地図更新データ取得処理を示すフローチャートである。この地図更新データ取得処理は、例えばカーナビゲーション装置200のシステム起動と共に実行開始される。以降の本明細書中の説明並びに図面において、各処理ステップは、「S」と省略して記す。
【0041】
カーナビゲーション装置200は、地図配信サーバ300にアクセスして、地図データベース330の更新の有無を確認する(S1)。具体的には、地図配信サーバ300は、地図データベース330をバージョン管理している。地図配信サーバ300は、カーナビゲーション装置200のリクエスト・メッセージに含まれるローカル地図データベースのバージョンをチェックして、更新の要否を判定する。
【0042】
地図配信サーバ300は、地図データベース330とローカル地図データベースのバージョンが相違する場合、更新が必要と判定する。この場合、地図配信サーバ300は、バージョンの相違に応じた差分データを地図データベース330から抽出して、カーナビゲーション装置200に送信する。カーナビゲーション装置200は、差分データを受信すると(S2:YES)、当該差分データをローカル地図データベースに蓄積して(S3)、地図配信サーバ300とのセッションを終了する。
【0043】
この差分データに含まれる道路データ(以下、「差分道路データ」と記す。)は、ノードとリンクの情報からなる一般的な道路レイヤのデータ構造を有さない。具体的には、差分道路データは、上記の道路レイヤとは別のレイヤデータであって、新しい道路網等を画像化した画像データである。差分道路データは、ファイル名等の一般的なプロパティに加えて、画像中の少なくとも2点を地図データに対応する座標(緯度、経度)と関連付けて、メタ情報として保持している。以下、説明の便宜上、差分道路データに対応するレイヤを、「差分道路レイヤ」と記す。
【0044】
地図配信サーバ300は、地図データベース330とローカル地図データベースのバージョンのバージョンが一致する場合には、その旨をカーナビゲーション装置200に通知する。カーナビゲーション装置200は、当該通知を受信すると(S2:NO)、地図配信サーバ300とのセッションを終了する。
【0045】
なお、図4の地図更新データ取得処理は、カーナビゲーション装置200のシステム起動時に限らず、システム動作中に定期的に又はユーザが指定するタイミング等で実行されてもよい。
【0046】
図5は、カーナビゲーション装置200で実行される地図表示処理を示すフローチャートである。この地図表示処理は、例えばカーナビゲーション装置200のシステム動作中継続的に実行される。
【0047】
図5に示されるように、カーナビゲーション装置200は、測位結果をキーにローカル地図データベースを検索して、自車位置周辺の地図を切り出す(S11)。カーナビゲーション装置200は、切り出されたエリアに含まれる道路レイヤ、施設レイヤ、背景レイヤ等の各レイヤに配置されたオブジェクトのイメージバッファへの描画を行う(S12)。
【0048】
カーナビゲーション装置200は、切り出されたエリアに含まれる差分道路レイヤの中から、切り出しエリア内の座標をメタ情報として保持する差分道路データを検索する(S13)。該当する差分道路データが検索された場合は(S14:YES)、その差分道路データの描画を行い、S12の処理で描画されたレイヤ画像に重ね合わせる(S15)。以下、説明の便宜上、S12の処理で描画されたレイヤ画像を「基本レイヤ画像」と記し、差分道路データの描画結果を「差分レイヤ画像」と記す。なお、該当する差分道路データが検索されない場合は(S14:NO)、イメージバッファに描画された基本レイヤ画像のうち、指定イメージ領域に描画された内容であって、ジオメトリ、マップマッチング等の各種処理後の結果がVRAM120を介して表示部116の表示画面上に表示される(S16)。
【0049】
図6(a)〜(c)は、S15の処理、つまり、差分レイヤ画像を基本レイヤ画像に重ね合わせるという処理を説明するための図である。図6(a)は、イメージバッファに描画された基本レイヤ画像を示す。図6(a)中、「A」は、自車位置マークを、「B」は、設定された目的地を、実線(細線)は、道路を、実線(太線)は、ナビゲーション処理によって検索されたルートを、それぞれ示す。「a」、「b」、「c」は、切り出されたエリア内の任意の座標に便宜上符号を付したものであり、画像として現れる要素ではない。図6(b)は、イメージバッファに描画される差分レイヤ画像を示す。図6(b)中、破線は、新しい道路を示す。「a’」、「b’」、「c’」は、当該差分道路データがメタ情報として保持する座標に便宜上符号を付したものであり、画像として現れる要素ではない。
【0050】
座標a’、b’、c’はそれぞれ、地図データベースにおいて、切り出されたエリア内の座標a、b、cと同一の座標で管理されている。CPU108は、図6(c)に示されるように、座標a’、b’、c’の各々が座標a、b、cと一致するように、差分レイヤ画像を基本レイヤ画像に重ね合わせる。なお、本実施形態においては、二次元地図を想定している。従って、この重ね合わせ処理の実行には、差分道路データで保持される座標が最低限2点あれば足りる。三次元地図の場合は、最低限3点の座標が必要である。
【0051】
以上の各ステップの処理、及び、ジオメトリ、マップマッチング等の各種処理の実行を経て、表示部116の表示画面上には、イメージバッファ内の指定イメージ領域R(図6(c)参照)に描画された、新しい道路を含む地図画像が表示される(S16)。ここで、基本レイヤ画像と差分レイヤ画像は、相対的に固定した状態で管理されている。従って、ジオメトリ処理による地図の移動や回転、拡大、縮小等が行われた場合も、基本レイヤ画像の道路と差分レイヤ画像の道路とが相対的にずれるという不具合が発生することはない。
【0052】
このように、本実施形態のカーナビゲーション装置200においては、更新後の道路を表示するにあたり、ノードとリンクからなるデータベースを再構築する必要がない。そのため、カーナビゲーション装置200のリソースが限定的である場合も、処理負荷が過大になるという不都合の発生を有効に避けつつ、最新の道路地図をユーザに提示することができる。別の側面によれば、本実施形態の構成を採用した場合、廉価版のカーナビゲーション装置の設計に有利である。
【0053】
ところで、既存のマップマッチングは、道路レイヤで管理される(基本レイヤ画像の)道路に対してのみ行われる。従って、自車位置マークの表示位置は、差分道路レイヤで管理される(差分レイヤ画像の)新しい道路を走行中であっても、道路レイヤの道路上に強制的に補正される。そこで、本実施形態のカーナビゲーション装置200は、かかる不都合を解消すべく、次の処理(1)〜(3)の何れかを実行する。なお、処理(1)〜(3)の実行は、図5のS14の処理において差分道路データが検索されている、すなわち、自車位置周辺における新しい道路の存在が検知されていることが前提である。
【0054】
<処理(1)>
カーナビゲーション装置200は、マップマッチング機能を一時的に停止する。すなわち、マップマッチング機能自体の速やかな停止によって上記の不都合を解消する。マップマッチング機能の停止は、差分道路データが検索されないエリアに、すなわち新しい道路が存在しないエリアに車両が進入するまで継続する。
【0055】
<処理(2)>
(2−1)DR測位結果とGPS測位結果との差が所定の設定基準値以下である。
(2−2)DR測位による位置と、当該位置に最も近い道路レイヤ中の道路との距離が所定距離以上に拡大した。
カーナビゲーション装置200は、上記条件(2−1)と(2−2)とが同時に満たされる期間に限り、マップマッチング機能を停止する。すなわち、DR測位結果の精度が高いにも拘わらず、自車位置が道路レイヤ中の道路から大きく外れている場合は、車両が新しい道路を走行している可能性が高いと判断して、マップマッチング機能を一時的に停止する。なお、上記条件(2−2)の「DR測位による位置」は、「GPS測位による位置」に置き換えてもよい。
【0056】
<処理(3)>
前提条件として、差分道路レイヤの道路を他の何れのレイヤ画像でも使用されない特定の色で表示する。
(3−1)DR測位結果とGPS測位結果との差が所定の設定基準値以下である。
(3−2)DR測位結果をそのまま反映したときの自車の表示画面上の位置(座標)と、当該位置の最も近くに配置される上記特定の色を表示する座標との距離が所定距離以下に縮小した。
カーナビゲーション装置200は、上記条件(3−1)と(3−2)とが同時に満たされる期間に限り、マップマッチング機能を停止する。すなわち、差分道路レイヤの道路であると推定できる道路が高精度で信頼性の高いDR測位による位置近傍に存在する場合は、車両が新しい道路を走行している可能性が高いと判断して、マップマッチング機能を一時的に停止する。なお、上記条件(3−2)の「DR測位結果」は、「GPS測位結果」に置き換えてもよい。
【0057】
以上の処理(1)〜(3)の何れかを実行することにより、実際には新しい道路を走行しているにも拘わらず表示画面上では自車位置が道路レイヤの道路上に補正されるという不都合が有効に避けられる。
【0058】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 地図配信システム
100 GPSレシーバ
200 カーナビゲーション装置
300 地図配信サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図を構成するオブジェクトを種別毎に別個のレイヤで管理する地図データであって、道路網をノードとリンクとで管理する第一の道路レイヤを有する地図データを格納した地図格納手段と、
前記道路網に含まれない別の道路を画像として管理する第二の道路レイヤの道路データであって、該画像中の少なくとも2点を前記地図データに対応する座標と関連付けてメタ情報として保持する道路データを所定の外部装置と通信して取得する道路データ取得手段と、
前記第一の道路レイヤの道路網を描画して道路網画像を生成する画像生成手段と、
前記メタ情報として付帯する前記座標を用いて前記第二の道路レイヤの画像を前記生成された道路網画像に重ね合わせる地図画像重畳手段と、
前記重ね合わせられた地図画像を所定の表示画面に表示する表示手段と、
を有することを特徴とする地図表示装置。
【請求項2】
GPS(Global Positioning System)航法と自律航法の少なくとも一方を使用して現在位置を測定する位置測定手段と、
前記測定された現在位置に対応する前記地図画像中の位置を計算する位置計算手段と、
前記計算された位置を前記第一の道路レイヤの道路上の位置に補正するマップマッチング手段と、
前記補正された位置に所定のマークを配置するマーク配置手段と、
を更に有することを特徴とする、請求項1に記載の地図表示装置。
【請求項3】
前記測定された現在位置に基づいて前記第二の道路レイヤの道路が該現在位置周辺に存在するか否かを検知する検知手段と、
前記検知手段によって前記第二の道路レイヤの道路が検知された場合に、前記マップマッチング手段による前記第一の道路レイヤの道路上への前記位置の補正機能を停止する補正機能停止手段と、
を更に有することを特徴とする、請求項2に記載の地図表示装置。
【請求項4】
前記測定された現在位置に基づいて前記第二の道路レイヤの道路が該現在位置周辺に存在するか否かを検知する検知手段と、
前記検知手段によって前記第二の道路レイヤの道路が検知された場合に、前記GPS航法の測位結果と、前記自律航法の測位結果との差が所定の基準値以下であるか否かを判定すると共に、該自律航法又は該GPS航法によって測定された位置と、該位置に最も近い前記第一の道路レイヤの道路との距離が所定距離以上であるか否かを判定する判定手段と、
前記差が前記所定の基準値以下であると同時に前記距離が前記所定距離以上であると判定された場合に、前記マップマッチング手段による前記第一の道路レイヤの道路上への前記位置の補正機能を停止する補正機能停止手段と、
を更に有することを特徴とする、請求項2に記載の地図表示装置。
【請求項5】
前記測定された現在位置に基づいて前記第二の道路レイヤの道路が該現在位置周辺に存在するか否かを検知する検知手段と、
前記検知手段によって前記第二の道路レイヤの道路が検知された場合に、前記GPS航法の測位結果と、前記自律航法の測位結果との差が所定の基準値以下であるか否かを判定すると共に、該自律航法又は該GPS航法による測位結果をそのまま反映したときの前記表示画面上の位置と、該表示画面上において該位置の最も近くに配置される該第二の道路レイヤの道路の画像位置との距離が所定距離以下であるか否かを判定する判定手段と、
前記差が前記所定の基準値以下であると同時に前記距離が前記所定距離以下であると判定された場合に、前記マップマッチング手段による前記第一の道路レイヤの道路上への前記位置の補正機能を停止する補正機能停止手段と、
を更に有することを特徴とする、請求項2に記載の地図表示装置。
【請求項6】
車両に搭載された車載型装置であることを特徴とする、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の地図表示装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の地図表示装置と、
前記第二の道路レイヤの道路データを蓄積する地図サーバと、
を有し、
前記地図表示装置は、
前記地図格納手段に格納されている前記地図データのバージョンを所定のタイミングで前記地図サーバに送信し、
前記地図サーバは、
受信した前記バージョンに基づいて前記第二の道路レイヤの道路データの差分を検出し、検出された差分データを前記地図表示装置に配信することを特徴とする地図配信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−137695(P2011−137695A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297233(P2009−297233)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】