説明

基板に組成物の平坦な上面を有する堆積物を塗布することを包含する方法

【課題】電子部品において平坦な上面を有するパッドを作製する方法を提供する。
【解決手段】a)第一電子基板上202に硬化性シリコーン組成物の平坦な上面を有する堆積物205をステンシル印刷する過程であって、第一電子基板が半導体ダイ又は半導体ダイ取り付け部材から選択され、平坦な上面を有する堆積物のステンシル印刷がダウンステップステンシルを通したスクイジーにより行われる、堆積物をステンシル印刷する過程と、b)平坦な上面を有する堆積物を硬化させる過程であって、それにより、平坦な上面を有するパッドを形成する、堆積物を硬化させる過程と、任意にc)平坦な上面を有するパッドの上面に第二電子基板206を接着する過程であって、第二電子基板は半導体ダイ又は半導体ダイ取り付け部材から選択される、第二電子基板を接着する過程、並びに、任意にd)過程a)、b)及びc)を反復する過程を包含する、パッドを作製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品用途に用いられ得る平坦な上面を有する(flat-top)パッドの製造方法に関する。特に本発明は、ダイ(die)付着接着剤として用いられ得る平坦な上面を有するパッドの印刷方法に関する。
【0002】
[背景技術]
ケイ素ウェハーのような基板上の、並びに電子部品用途に有用なその他の基板上に印刷されるパッドは、ダイ付着接着剤として用いられ得る。パッドは、基板、別のダイ又はその他の電子部品に半導体ダイを結合するために用いられ得る。例えばプラズマ処理又は化学蒸着といった方法により、パッドが接着のために活性化される場合、接着を生成するか又は改良するためのパッド物質の後硬化(post-cure)表面処理のために、これが適用され得る。しかしながらこれらの方法は、パッドの上面が平坦でないことがあるという欠点を蒙り得る。エッジヒル(edgehill)のような欠陥が存在し得る。パッドの上面が欠陥を有する場合、欠陥は結合表面間の不完全な接触を引き起こし、その結果不十分な接着を生じ得る。したがって、平坦な上面を有するパッドを提供する方法が電子部品産業において引き続き必要とされている。
【0003】
[本発明により解決されるべき問題]
理論に制約はされたくないが、印刷工程で用いられる慣用的スクリーン又はステンシルのような、蒸着ツール中の開口部の側壁と、基板上に蒸着される組成物との間の相互作用のため、基板上のパッドの形成中にエッジヒルが生成すると考えられる。この相互作用は、開口部の側壁の全部又は一部の近くに蒸着される組成物の高さを、開口部の残余部を通して(through)蒸着された組成物の高さより大きくさせ、それにより、その結果生じる堆積物の外辺部の少なくとも一部の周辺にエッジヒルを形成する。エッジヒルは、堆積物を硬化させることにより、パッドの上面への平坦基板の接着に有害作用を及ぼし得る。
【0004】
[概要]
本発明は、エッジヒルを低減し、且つ平坦な上面を有するパッドを製造する方法に関する。平坦な上面を有するパッドの製造方法は、a)第一基板上に組成物の平坦な上面を有する堆積物を塗布すること、並びにb)平坦な上面を有する堆積物を硬化させること、を包含する。この方法は、c)平坦な上面を有する堆積物の上面に第二基板を接着すること、及び、任意にd)過程a)、b)及びc)を反復すること、をさらに包含し得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1a】本発明の方法において有用なダウンステップステンシルの上面図を示す。
【図1x】(b)は、図1aにおけるステンシルの一部分の上面図を示す。(c)は、(b)におけるステンシルの一部分の線Aに沿って切り取られた側面横断図である。(d)は、(b)におけるステンシルの一部分の線Bに沿って切り取られた側面横断図である。
【図2】本発明の方法により作製され得る積層チップモジュールの模式図を示す。
【図3】比較例1の半導体ダイの写真である。
【図4】(a)は実施例1の半導体ダイの写真である。(b)は実施例1のパッドの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[発明の詳細な説明]
量、パーセンテージ及び比はすべて、別記しない限り、重量単位である。以下は、本明細書中で用いる場合の定義の一覧である。
【0007】
定義
「エッジヒル」とは、物質の外辺部の少なくとも一部の周辺の領域であって、物質の残余部より大きい高さを有する領域を意味する。
【0008】
「プラズマ処理」とは、外部から加えられたエネルギーの形態により活性化された気体状態(gaseous state)に一表面を曝露することを意味し、例としては、コロナ放電処理、誘電バリヤー放電処理、火炎処理、プラズマジェット処理、低圧グロー放電処理及び大気圧グロー放電処理が挙げられるが、これらに限定されない。プラズマ処理に用いられる気体は、空気、アンモニア、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素、ヘリウム、水素、クリプトン、ネオン、窒素、亜酸化窒素、酸素、オゾン、水蒸気、及びそれらの組合せ等であり得る。あるいはその他のより反応性の気体又は蒸気、例えばヘキサメチルジシロキサン、シクロポリジメチルシロキサン、シクロポリ水素メチルシロキサン類、シクロポリ水素メチルコジメチルシロキサン類、反応性シラン類及びそれらの組合せは、工程適用圧での気体のそれらの標準状態で用いられ得るし、あるいはそうでなければ液体状態から適切な装置で気化され得る。
【0009】
方法
本発明は、平坦な上面を有するパッドを製造する方法に関する。この方法は、
a)第一基板上に組成物の平坦な上面を有する堆積物を塗布すること、
b)平坦な上面を有する堆積物を硬化させること、
c)平坦な上面を有する堆積物の上面に第二基板を接着すること、及び
d)過程a)、b)及びc)を任意に反復すること
を包含する。
【0010】
平坦な上面を有する堆積物は、側壁に取り囲まれた少なくとも1つの開口部を有する蒸着ツールに組成物を通過させることにより、基板に塗布され得る。側壁の高さは、蒸着ツールの平均高と比較して、蒸着ツール上の開口部の外辺部の少なくとも一部の周辺で低減される。例えば平坦な上面を有する堆積物は、印刷のようなプロセスにより第一基板上に塗布され得る。適切な印刷プロセスの例としては、ダウンステップステンシルにより例示される蒸着ツールを用いたステンシル印刷や、複数の開口部を有し、各開口部が側壁に取り囲まれるスクリーンにより例示される蒸着ツールを用いたスクリーン印刷が挙げられる。側壁の高さは、スクリーンの平均厚と比較して、スクリーン上の各開口部の外辺部の少なくとも一部の周辺で低減される。適切なダウンステップステンシルの一例は、図1a及び図1xに示されている。図1aは、複数の正方形開口部101を含むダウンステップステンシル100の上面図を示す。各開口部101は、後縁周囲のエッチングされた領域102を有する。エッチングされた領域102は、ステンシル100の残余部の高さ100zより小さい高さ102zを有する。当業者は、選択される的確なステンシル形状は、種々の因子、例えば平坦な上面を有する堆積物を生成するために選択される組成物、並びに所望の平坦な上面を有する堆積物のサイズ及び形状に応じて決まる、と認識するであろう。ステンシルは、図1aに示されるような正方形隅を有する開口部、あるいは丸みのある隅を有する開口部を有し得る。あるいはステンシルは、各開口部の全外辺部周囲のエッチングされた領域を有し得る。ステンシルは、任意に電気研磨され得る。基板は、エレクトロニクス用途、例えばポリマー類、金属及び半導体に有用な基板であり得る。基板の適切な例は、以下に記載される。
【0011】
平坦な上面を有する堆積物は、任意の便利な手段により、例えば組成物がホットメルト(hot melt)接着剤である場合は、冷却により、あるいは例えば組成物が硬化性(curable)である場合には、硬化(curing)により、硬化(harden)され得る。硬化させるための的確な方法は、選択される組成物の種類に応じて決まる。組成物の適切な例は、以下に記載される。
【0012】
過程c)は、過程b)の前、最中又は後、あるいはそれらの組合せで行われ得る。例えば、過程c)が過程b)の前に行われる場合、第二基板が湿潤組成物(wet composition)に取り付けられる。過程c)が過程b)中に行われる場合、第二基板はB段階の(B-staged)(部分的に硬化した)組成物に取り付けられ得る。過程c)は、i)平坦な上面を有するパッドの上面を活性化すること、及び、ii)その後、平坦な上面を有するパッドの上面に第二基板を取り付けること、を包含するプロセスにより行われ得る。平坦な上面を有するパッドの上面の活性化は、既知の方法により、例えばプラズマ処理により行われ得る。適切なプラズマ処理プロセスの例は、公開番号2003/0145940を有する、2001年10月9日付けで出願された米国特許出願第09/973498号明細書に開示され、その記載内容は、プラズマ処理プロセスを開示する目的のために、参照により本明細書中で援用される。
【0013】
平坦な上面を有するパッドは、プラズマ処理後できるだけすぐに、第二基板と接触され得る。あるいは当該方法は任意に、過程i)の後及び過程ii)の前に、平坦な上面を有するパッドを保存することをさらに包含し得る。プラズマ処理は、平坦な上面を有するパッドの表面の全部又は一部で、あるいは平坦な上面を有するパッド及び第二基板の両方で行われ得る。
【0014】
接着は、室温で数秒間、過程ii)を遂行することにより得ることができる。あるいは過程ii)は、高温、高圧、又はその両方で実行され得る。過程ii)のために選択される的確な条件は、種々の因子、例えば当該方法の特定の用途に応じて決まる。接着を得るための適切な方法は、例えば、公開番号2003/0145940を有する、2001年10月9日付けで出願された米国特許出願第09/973498号明細書に開示され、その記載内容は、接着を創出するための方法を開示する目的のために、参照により本明細書中で援用される。
【0015】
本発明の方法は、電子部品を作製(prepare)するのに用いられ得る。電子部品は、例えば、
a)第一電子基板上に硬化性シリコーン組成物の平坦な上面を有する堆積物をステンシル印刷することであって、
第一電子基板が半導体ダイ又は半導体ダイ取り付け部材から選択され、
平坦な上面を有する堆積物のステンシル印刷がダウンステップステンシルを通したスクイジー(squeegee)により行われる、
ステンシル印刷することと、
b)平坦な上面を有するパッドを形成するために、平坦な上面を有する堆積物を硬化させることと、
任意に、c)半導体ダイ又は半導体ダイ取り付け部材から選択される第二電子基板を、平坦な上面を有する堆積物の上面に接着することと、
任意に、d)過程a)、b)及びc)を反復することと
を包含する方法により作製され得る。硬化性シリコーン組成物は、硬化して例えばダイ付着接着剤を形成し得る。
【0016】
図2は、本発明の方法により作製され得る積層チップモジュール200の一例を示す。積層チップモジュール200は、第一ダイ付着接着剤203を介して基板201に結合された第一ICチップ202を有する基板201を包含する。第一ICチップ202は、電線204を介して基板201に電気的に接続される。第二ダイ付着接着剤205は、第一ICチップ202上に形成される。第二ICチップ206は、第二ダイ付着接着剤205に連結される。第二ICチップ206は、電線207を介して基板に電気的に接続される。基板201は、第一ダイ付着接着剤203の反対側の表面にハンダボール208を有する。
【0017】
積層チップモジュール200は、例えば、本発明の方法に従って、ダウンステップステンシル、例えば図1aおよび図1xに示されたダウンステップステンシル100を通して基板201に第一硬化性シリコーン組成物の平坦な上面を有する堆積物を塗布し、第一硬化性シリコーン組成物を一部又は全部硬化して、平坦な上面を有する第一ダイ付着接着剤203を生成することにより、作製され得る。次に第一ダイ付着接着剤203の上面は、表面を活性化するためにプラズマ処理され、第一ICチップ202が圧力を用いて活性化表面に取り付けられ得る(applied)。第一ダイ付着接着剤203は、任意に、たとえば第一ICチップ202の取り付け中又は後に、あるいはその両方で加熱されて、第一ダイ付着接着剤203をさらに硬化し得る。
【0018】
次に、第二硬化性液体組成物(第一硬化性液体組成物と同一であるか又は異なり得る)の平坦な上面を有する堆積物は、本発明の方法に従ってダウンステップステンシルを用いて、例えば図1aおよび図1xに示されたダウンステップステンシル100を用いて、第一ICチップ202の上面に再び塗布され得る。第二硬化性液体組成物は、部分的に又は全体的に硬化されて、平坦な上面を有する第二ダイ付着接着剤205を生成し得る。第二ダイ付着接着剤205の上面は次に、表面を活性化するためにプラズマ処理され、第二ICチップ206が圧力を用いて活性化表面に適用され得る。第二ダイ付着接着剤205は、任意に、たとえば第一ICチップ202の取り付け中又は後に、あるいはその両方で加熱されて、第二ダイ付着接着剤206をさらに硬化し得る。
【0019】
次にワイヤボンディングが行われて、電線204を介して基板201に第一ICチップ202を電気的に接続し、電線207を介して基板201に第二ICチップ206を電気的に接続し得る。ハンダボール208は、第一ダイ付着接着剤203の反対側の表面で基板201に取り付けられ得る。ICチップ202、206及び電線204、207を保護するために、オーバーモールディング209が付加され得る。
【0020】
組成物
上記の方法に用いるのに適した組成物は、任意の便利なホットメルト接着性組成物又は硬化性組成物であり得る。適切な硬化性組成物としては、硬化性シリコーン組成物、硬化性シリコーン有機組成物及び硬化性有機組成物が挙げられる。硬化性シリコーン組成物は、例えばヒドロシリル化反応又は縮合(condensation)反応により硬化可能であり得る。適切な硬化性シリコーン有機組成物としては、シリコーン−フェノール組成物及びシリコーン−エポキシ組成物が挙げられる。適切な硬化性有機組成物は、エポキシ組成物により例示される。適切な硬化性組成物は、例えば熱、湿気、紫外線、マイクロ波、電子線、酸素又はそれらの組合せへの曝露により硬化可能であり得る。上記の方法で用いるための適切な組成物は、ダイ付着接着剤組成物であり得る。ダイ付着接着剤組成物は、硬化してシリコーンダイ付着接着剤を生成する硬化性シリコーン組成物、硬化してシリコーン有機ダイ付着接着剤を生成する硬化性シリコーン有機組成物、又は硬化して有機ダイ付着接着剤を生成する硬化性有機組成物を含み得る。適切な硬化性シリコーン組成物としては、公開番号2003/0145940を有する、2001年10月9日付けで出願された米国特許出願第09/973498号明細書におけるダイ付着接着剤組成物、並びに、A)1分子当たり平均で少なくとも2つの脂肪族系不飽和有機基を含有するポリオルガノシロキサンと、B)1分子当たり平均で少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含有するポリオルガノ水素シロキサンと、C)ヒドロシリル化反応触媒とを含むその他のヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物が挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、ダイ付着接着剤中に用いるのに適した1つ又は複数の任意の構成成分、例えばD)硬化修飾剤、E)充填剤、F)充填剤のための処理剤、G)スペーサー、H)接着促進剤、I)顔料、J)レオロジー修飾剤、K)空隙低減剤、及びL)溶媒をさらに含み得る。
【0021】
構成成分(A) ポリオルガノシロキサン
構成成分(A)は、1分子当たり平均で少なくとも2つの不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサンである。構成成分(A)は、線状、分岐状又は樹脂性構造を有し得る。構成成分(A)は、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。不飽和有機基は2〜12個の炭素原子を有するアルケニル基であってもよく、例としてはビニル、アリル、ブテニル及びヘキセニルが挙げられるが、これらに限定されない。不飽和有機基は2〜12個の炭素原子を有するアルキニル基であってもよく、例としてはエチニル、プロピニル及びブチニルが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、不飽和有機基はアクリレート官能基又はメタクリレート官能基を含有してもよく、例としてはアクリロイルオキシアルキル、例えばアクリロイルオキシプロピル及びメタクリロイルオキシアルキル、例えばメタクリロイルオキシプロピルが挙げられるが、これらに限定されない。構成成分(A)中の不飽和有機基は、末端基位置、中間(pendant)位置又は末端基位置及び側基位置の両方に位置し得る。
【0022】
構成成分(A)中の残りのケイ素結合有機基は、脂肪族不飽和を含有しない一価有機基であり得る。これらの一価有機基は1〜20個の炭素原子、あるいは1〜10個の炭素原子を有してもよく、例としてはアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル及びオクタデシル;シクロアルキル、例えばシクロヘキシル;アリール、例えばフェニル、トリル、キシリル、ベンジル及び2−フェニルエチル;並びにシアノ−官能基、例えば、シアノエチル及びシアノプロピルにより例示されるシアノアルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。構成成分(A)は、フッ素原子を含有しない。
【0023】
構成成分(A)の粘度は特に限定されないが、構成成分(A)は、25℃で0.05〜500Pa・s、又は25℃で0.1〜200Pa・sの粘度を有し得る。構成成分(A)は、100重量部(weight parts)の量で組成物に添加される。
【0024】
構成成分(A)は、次式:
(a)R13SiO(R12SiO)α(R12SiO)βSiR13
(b)R324SiO(R32SiO)χ(R34SiO)δSiR324、又は
(c)それらの組合せ
のポリオルガノシロキサンを含み得る。
【0025】
式(a)において、αは0〜2,000の平均値を有し、βは2〜2,000の平均値を有する。R1は、各々独立して、一価有機基である。適切な一価有機基としては、アクリル官能基、例えばアクリロイルオキシプロピル及びメタクリロイルオキシプロピル;アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル及びブチル;アルケニル基、例えばビニル、アリル及びブテニル;アルキニル基、例えばエチニル及びプロピニル;芳香族基、例えばフェニル、トリル及びキシリル;並びにシアノアルキル基、例えばシアノエチル及びシアノプロピルが挙げられるが、これらに限定されない。R2は、各々独立して、不飽和一価有機基である。R2の例としては、アルケニル基、例えばビニル、アリル及びブテニル、並びにアルキニル基、例えばエチニル及びプロピニル、並びにアクリル官能基、例えばアクリロイルオキシプロピル及びメタクリロイルオキシプロピルが挙げられる。
【0026】
式(b)において、χは0〜2,000の平均値を有し、δは0〜2,000の平均値を有する。R3は、各々独立して、一価有機基である。適切な一価有機基としては、アクリル官能基、例えばアクリロイルオキシプロピル及びメタクリロイルオキシプロピル;アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル及びブチル;アルケニル基、例えばビニル、アリル及びブテニル;アルキニル基、例えばエチニル及びプロピニル;芳香族基、例えばフェニル、トリル及びキシリル;並びにシアノアルキル基、例えばシアノエチル及びシアノプロピルが挙げられるが、これらに限定されない。R4は、各々独立して、不飽和有機炭化水素基である。R4の例としては、アルケニル基、例えばビニル、アリル及びブテニル;アルキニル基、例えばエチニル及びプロピニル;並びにアクリル官能基、例えばアクリロイルオキシプロピル及びメタクリロイルオキシプロピルが挙げられる。
【0027】
構成成分(A)は、ポリジオルガノシロキサン、例えば:
i)ジメチルビニルシロキシ末端化ポリジメチルシロキサン、
ii)ジメチルビニルシロキシ末端化ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
iii)ジメチルビニルシロキシ末端化ポリメチルビニルシロキサン、
iv)トリメチルシロキシ末端化ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
v)トリメチルシロキシ末端化ポリメチルビニルシロキサン、
vi)ジメチルビニルシロキシ末端化ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
vii)ジメチルビニルシロキシ末端化ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、
viii)フェニル、メチル、ビニル−シロキシ末端化ポリジメチルシロキサン、
ix)ジメチル−アクリロイルオキシプロピル−シロキシ末端化ポリジメチルシロキサン、
x)ジメチル−メタクリロイルオキシプロピル−シロキシ末端化ポリジメチルシロキサン、
xi)ジメチルヘキセニルシロキシ末端化ポリジメチルシロキサン、
xii)ジメチルヘキセニルシロキシ末端化ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xiii)ジメチルヘキセニルシロキシ末端化ポリメチルヘキセニルシロキサン、
xiv)トリメチルシロキシ末端化ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xv)ジメチルビニルシロキシ末端化ポリ(ジメチルシロキサン/メチルシアノプロピルシロキサン)、及び
xvi)それらの組合せ
を含み得る。
【0028】
構成成分(A)として用いるのに適したポリジオルガノシロキサン流体の製造方法、例えば対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合、あるいは環状ポリジオルガノシロキサンの平衡は、当該技術分野で既知である。
【0029】
構成成分(A)は、樹脂、例えば本質的にR53SiO1/2単位及びSiO4/2単位から成るMQ樹脂、本質的にR5SiO3/2単位及びR52SiO2/2単位から成るTD樹脂、本質的にR53SiO1/2単位及びR5SiO3/2単位から成るMT樹脂、本質的にR53SiO1/2単位、R5SiO3/2単位及びR52SiO2/2単位から成るMTD樹脂、又はそれらの組合せを含み得る。
【0030】
5は各々、一価有機基である。R5により表される一価有機基は、1〜20個の炭素原子、あるいは1〜10個の炭素原子を有し得る。一価有機基の例としては、アクリレート官能基、例えばアクリルオキシアルキル基、メタクリレート官能基、例えばメタクリルオキシアルキル基、シアノ−官能基及び一価炭化水素基が挙げられるが、これらに限定されない。一価炭化水素基としては、アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル及びオクタデシル;シクロアルキル、例えばシクロヘキシル;アルケニル、例えばビニル、アリル、ブテニル及びヘキセニル;アルキニル、例えばエチニル、プロピニル及びブチニル;並びにアリール、例えばフェニル、トリル、キシリル、ベンジル及び2−フェニルエチルが挙げられるが、これらに限定されない。シアノ官能基としては、例えばシアノアルキル基、例えばシアノエチル及びシアノプロピルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
樹脂は平均3〜30モル%の不飽和有機基を含有し得る。不飽和有機基は、アルケニル基、アルキニル基、アクリレート官能基、メタクリレート官能基、又はそれらの組合せであり得る。樹脂中の不飽和有機基のモル%は、樹脂中の不飽和基含有シロキサン単位のモル数対樹脂中のシロキサン単位の総モル数の比に100を掛けた値である。
【0032】
樹脂の調製方法は、当該技術分野で既知である。例えば樹脂は、ダウト(Daudt)他のシリカヒドロゾルキャッピングプロセスにより生成される樹脂コポリマーを、少なくとも1つのアルケニル含有末端ブロッキング試薬で処理することにより調製され得る。ダウト他の方法は、米国特許第2676182号明細書に開示されている。
【0033】
要するに、ダウト他の方法は、シリカヒドロゾルを、酸性条件下で、加水分解可能なトリオルガノシラン、例えばトリメチルクロロシラン、シロキサン、例えばヘキサメチルジシロキサン、又はそれらの混合物と反応させること、及びM単位及びQ単位を有するコポリマーを回収(recover)することを包含する。その結果生じるコポリマーは一般に、2〜5重量%のヒドロキシル基を含有する。
【0034】
2重量%未満のケイ素結合ヒドロキシル基を典型的には含有する樹脂は、ダウト他の産物を、最終産物中に3〜30モル%の不飽和有機基を提供するのに十分な量で、不飽和有機基含有末端ブロッキング剤及び脂肪族不飽和を含有しない末端ブロッキング剤と反応させることにより調製され得る。末端ブロッキング剤の例としては、シラザン(silazanes)、シロキサン及びシランが挙げられるが、これらに限定されない。適切な末端ブロッキング剤は当該技術分野で既知であり、米国特許第4584355号明細書、第4591622号明細書、及び第4585836号明細書で例示されている。単一末端ブロッキング剤又はこのような作用物質の混合物は、樹脂を調製するのに用いられ得る。
【0035】
構成成分(A)は、単一のポリオルガノシロキサン、あるいは、構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位及び配列のうちの少なくとも1つの特性において異なる2つ又はそれ以上のポリオルガノシロキサンから成る組合せであり得る。
【0036】
構成成分(B) 有機水素ポリシロキサン
構成成分(B)は、1分子当たり平均で少なくとも2つのケイ素結合水素原子を有する有機水素ポリシロキサンである。構成成分(B)は、ホモポリマー又はコポリマーであり得る。構成成分(B)は、線状、分岐状、環状又は樹脂性構造を有し得る。構成成分(B)中のケイ素結合水素原子は、末端基位置、側基位置又は末端基位置及び側基位置の両方に位置し得る。構成成分(B)は、フッ素原子を含有しない。
【0037】
構成成分(B)は、シロキサン単位、例えばHR62SiO1/2単位、R63SiO1/2単位、HR6SiO2/2単位、R62SiO2/2単位、R6SiO3/2単位及びSiO4/2単位(これらに限定されない)を含み得る。上記の式中、R6は、各々独立して、脂肪族不飽和を含有しない一価有機基から選択される。
【0038】
構成成分(B)は、次式:
(a)R73SiO(R72SiO)ε(R7HSiO)φSiR73、又は
(b)R82HSiO(R82SiO)γ(R8HSiO)ηSiR82H、
(c)それらの組合せ
の化合物を含み得る。
【0039】
式(a)において、εは0〜2,000の平均値を有し、φは2〜2,000の平均値を有する。R7は、各々独立して、脂肪族不飽和を含有しない一価有機基である。脂肪族不飽和を含有しない適切な一価有機基としては、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル及びブチル;芳香族基、例えばフェニル、トリル及びキシリル;並びに、シアノエチル及びシアノプロピルのようなシアノアルキル基により例示されるシアノ官能基が挙げられる。
【0040】
式(b)において、γは0〜2,000の平均値を有し、ηは0〜2,000の平均値を有する。R8は、各々独立して、脂肪族不飽和を含有しない一価有機基である。脂肪族不飽和を含有しない適切な一価有機基としては、アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル及びブチル;芳香族基、例えばフェニル、トリル及びキシリル;並びに、シアノエチル及びシアノプロピルのようなシアノアルキル基により例示されるシアノ官能基が挙げられる。
【0041】
構成成分(B)としては、以下のものが挙げられる:
i)ジメチル水素シロキシ末端化ポリジメチルシロキサン、
ii)ジメチル水素シロキシ末端化ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、
iii)ジメチル水素シロキシ末端化ポリメチル水素シロキサン、
iv)トリメチルシロキシ末端化ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン)、
v)トリメチルシロキシ末端化ポリメチル水素シロキサン、
vi)本質的にH(CH32SiO1/2単位及びSiO4/2単位から成る樹脂、及び
vii)それらの組合せ。
【0042】
構成成分(B)は、構造、平均分子量、粘度、シロキサン単位及び配列のうちの少なくとも1つの特性において異なる、2つ又はそれ以上の有機水素ポリシロキサンの組合せであり得る。
【0043】
構成成分(B)として用いるのに適した線状、分岐状及び環状有機水素ポリシロキサンの調製方法、例えばオルガノハロシランの加水分解及び縮合は、当該技術分野で既知である。構成成分(B)として用いるのに適した有機水素ポリシロキサン樹脂の調製方法はまた、米国特許第5310843号明細書、第4370358号明細書、及び第4707531号明細書で例示されているように既知である。
【0044】
構成成分(B)中のケイ素結合水素原子対構成成分(A)中の脂肪族不飽和基のモル比(SiHB/ViA)は、重要でない。
【0045】
構成成分(C) ヒドロシリル化触媒
構成成分(C)は、ヒドロシリル化触媒である。構成成分(C)は、組成物の重量を基にして、0.1〜1,000ppm、あるいは1〜500ppm、あるいは2〜200、あるいは5〜150ppmの白金族金属の量で、組成物に添加される。適切なヒドロシリル化触媒は当該技術分野で既知であり、市販されている。構成成分(C)は、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム又はイリジウム金属若しくはその有機金属化合物又はそれらの組合せから選択される白金族金属を含み得る。構成成分(C)の例としては、塩化白金酸、塩化白金酸六水化和物、二塩化白金、及び上記の化合物と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体、又はマトリックス若しくはコアシェル型構造中にマイクロカプセル封入された白金化合物のような化合物が挙げられる。白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体としては、白金との1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル封入されてもよい。
【0046】
構成成分(C)として適切なヒドロシリル化触媒は、例えば米国特許第3159601号明細書;第3220972号明細書;第3296291号明細書;第3419593号明細書;第3516946号明細書;第3814730号明細書;第3989668号明細書;第4784879号明細書;第5036117号明細書、及び第5175325号明細書、並びに欧州特許第0347895号明細書に記載されている。マイクロカプセル封入ヒドロシリル化触媒及びそれらの調製方法は、米国特許第4766176号明細書及びそこに引用されている参照並びに米国特許第5017654号明細書に例示されているように、当該技術分野で既知である。
【0047】
構成成分(D) 硬化修飾剤
構成成分(D)は、硬化修飾剤である。構成成分(D)は、本発明の組成物の保存寿命又は作用時間若しくはその両方を延長するために添加され得る。構成成分(D)は、組成物の硬化温度を上げるために添加され得る。適切な硬化修飾剤は当該技術分野で既知であり、市販されている。構成成分(D)の例としては、アセチレンアルコール、例えばメチルブチノール、エチニルシクロヘキサノール、ジメチルヘキシノール及びそれらの組合せ;シクロアルケニルシロキサン、例えば、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン及びそれらの組合せにより例示されるメチルビニルシクロシロキサン;エン−イン化合物、例えば3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン;トリアゾール、例えばベンゾトリアゾール;ホスフィン;メルカプタン;ヒドラジン;アミン、例えばテトラメチルエチレンジアミン、ジアルキルフマレート、ジアルケニルフマレート、ジアルコキシアルキルフマレート、マレエート及びそれらの組合せが挙げられる。適切な硬化修飾剤は、例えば米国特許第3445420号明細書;第3989667号明細書;第4584361号明細書、及び第5036117号明細書に開示されている。
【0048】
組成物に添加され得る構成成分(D)の量は、用いられる特定の硬化修飾剤、構成成分(C)の性質及び量、並びに構成成分(B)の組成による。しかしながら構成成分(D)の量は、組成物の重量を基にして、0.001%〜10%であり得る。
【0049】
構成成分(E) 充填剤
構成成分(E)は、充填剤である。組成物に付加され得る構成成分(E)の量は、種々の因子、例えば所望の流動学的特性及び選択される充填剤の種類による。構成成分(E)は、組成物の重量を基にして、0.1%〜90%の量で組成物に付加され得る。適切な充填剤としては、強化充填剤、例えばシリカ、チタニア及びそれらの組合せが挙げられる。適切な強化充填剤は当該技術分野で既知であり、市販されており、例えばU.S. Silica(ウェストバージニア州バークレースプリングス(Berkeley Springs))によりMIN−U−SILの名称で販売されている粉砕シリカ、又はCabot Corporation(マサチューセッツ州)によりCAB−O−SILの名称で販売されているヒュームドシリカが挙げられる。
【0050】
伝導性充填剤(即ち、熱伝導性、導電性又はその両方である充填剤)も、構成成分(E)として用いられ得る。適切な伝導性充填剤としては、金属粒子、金属酸化物粒子、及びそれらの組合せが挙げられる。適切な熱伝導性充填剤の例としては、窒化アルミニウム;酸化アルミニウム;チタン酸バリウム;酸化ベリリウム;窒化ホウ素;ダイアモンド;黒鉛;酸化マグネシウム;金属粒子、例えば銅、金、ニッケル又は銀;炭化ケイ素;炭化タングステン;酸化亜鉛及びそれらの組合せが挙げられる。
【0051】
伝導性充填剤は当該技術分野で既知であり、市販されている(例えば米国特許第6169142号明細書(第4列7〜33行)を参照)。例えばCB−A20S及びAl−43−Meは、昭和電工株式会社から市販されている種々の粒子サイズの酸化アルミニウム充填剤であり、AA−04、AA−2及びAA18は、住友化学株式会社から市販されている酸化アルミニウム充填剤である。銀充填剤は、Metalor Technologies U.S.A. Corp.(米国マサチューセッツ州アトルボロー(Attleboro))から市販されている。窒化ホウ素充填剤は、Advanced Ceramics Corporation(米国オハイオ州クリーブランド(Cleveland))から市販されている。
【0052】
伝導性充填剤粒子の形状は特に制限されないが、丸みを帯びた又は球形の粒子は、組成物中への熱伝導性充填剤の多量投入時の望ましくないレベルへの粘度増大を防止し得る。
【0053】
種々の粒子サイズ及び異なる粒子サイズ分布を有する充填剤の組合せが用いられ得る。例えば、最も近似した充填理論(packing theory)分布曲線に適合する割合で、比較的大きい平均粒子サイズを有する第1充填剤と、比較的小さい平均粒子サイズを有する第2充填剤とを組合せるのが望ましい場合がある。これは充填効率を改良し、粘度を低減し、及び熱移動を増強し得る。

構成成分(F) 処理剤
充填剤は任意に、処理剤で表面処理され得る。処理剤及び処理方法は、当該技術分野で既知である(例えば米国特許第6169142号明細書(第4列42行〜第5列2行)を参照)。充填剤は、充填剤を組成物の他の構成成分と併合する前に処理剤で処理してもよく、又は充填剤は、本来の場所で処理されてもよい。
【0054】
処理剤は、式:R9pSi(OR10(4-p)(式中、pは1、2又は3であり、あるいはpは3である)を有するアルコキシシランであり得る。R9は、少なくとも1個の炭素原子、あるいは少なくとも8個の炭素原子を有する置換又は非置換一価炭化水素基である。R9は、50個までの炭素原子、あるいは30個までの炭素原子、あるいは18個までの炭素原子を有する。R9の例としては、アルキル基、例えばヘキシル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル及びオクタデシル;並びに芳香族基、例えばベンジル、フェニル及びフェニルエチルが挙げられる。R9は、飽和又は不飽和、分岐状又は非分岐状、及び非置換であり得る。R9は、飽和、非分岐状及び非置換であり得る。
【0055】
10は、少なくとも1個の炭素原子を有する非置換飽和炭化水素基である。R10は、4個までの炭素原子、あるいは2個までの炭素原子を有し得る。処理剤の例としては、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルエチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0056】
アルコキシ官能オリゴシロキサンも、処理剤として用いることができる。アルコキシ官能オリゴシロキサン及びそれらの調製方法は、当該技術分野で既知である(例えば欧州特許第1101167号明細書参照)。例えば適切なアルコキシ官能オリゴシロキサンとしては、式(R11O)dSi(OSiR122134-dを有するものが挙げられる。この式中、dは1、2又は3であり、あるいはdは3である。R11は各々、アルキル基であり得る。R12は、各々独立して、1〜10個の炭素原子を有する飽和及び不飽和一価炭化水素基から選択され得る。R13は各々、少なくとも11個の炭素原子を有する飽和又は不飽和一価炭化水素基であり得る。
【0057】
金属充填剤は、アルキルチオール、例えばオクタデシルメルカプタン等、及び脂肪酸、例えばオレイン酸、ステアリン酸、チタネート、チタネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤、及びそれらの組合せで処理され得る。
【0058】
アルミナ又は不動態化窒化アルミニウムに対する処理剤としては、アルコキシシリル官能アルキルメチルポリシロキサン(例えばR14b15cSi(OR16(4-b-c)の部分加水分解縮合物、又は同時加水分解縮合物、あるいは混合物)、加水分解基がシラザン、アシルオキシ又はオキシモである類似の物質が挙げられ得る。これらのすべてにおいて、Siに繋がれる基、例えば上記の式中のR14は、長鎖不飽和一価炭化水素又は一価芳香族官能炭化水素である。R15は一価炭化水素基であり、R16は1〜4個の炭素原子を有する一価炭化水素基である。上記の式中で、bは1、2又は3であり、cは0、1又は2であるが、但し、b+cは1、2又は3である。当業者は、過度の実験をすることなく、充填剤の分布を促すよう特定の処理を最適化し得る。
【0059】
構成成分(G) スペーサー
構成成分(G)は、スペーサーである。スペーサーは、有機粒子、無機粒子又はそれらの組合せを含み得る。スペーサーは、熱伝導性、導電性又はその両方であり得る。スペーサーは、25μm〜250μmの粒子サイズを有し得る。スペーサーは、単分散ビーズを含み得る。構成成分(G)の量は、種々の因子、例えば粒子の分布、組成物の投入(placement)中に印加される圧力、投入温度等による。組成物は、構成成分(E)の一部の他に、又は代わりに添加される15%まで、あるいは5%までの構成成分(G)を含有し得る。
【0060】
構成成分(H) 接着促進剤
構成成分(H)は、接着促進剤である。構成成分(H)は、組成物の重量を基にして、0.01〜50重量部の量で組成物に付加され得る。構成成分(H)は、遷移金属キレート化合物、アルコキシシラン、アルコキシシランとヒドロキシ官能ポリオルガノシロキサンとの組合せ、又はそれらの組合せを含み得る。
【0061】
構成成分(H)は、不飽和又はエポキシ官能化合物であり得る。適切なエポキシ官能化合物は当該技術分野で既知であり、市販されている(例えば米国特許第4087585号明細書;第5194649号明細書;第5248715号明細書、及び第5744507号明細書、第4〜5列を参照)。構成成分(H)は、不飽和又はエポキシ官能アルコキシシランを含み得る。例えば官能アルコキシシランは、式R17μSi(OR18(4-μ)(式中、μは1、2又は3であり、あるいはμは1である)を有し得る。
【0062】
17は、各々独立して、一価有機基であるが、但し、少なくとも1つのR17が不飽和有機基又はエポキシ官能有機基である。R17としてのエポキシ官能有機基の例としては、3−グリシドキシプロピル及び(エポキシシクロヘキシル)エチルが挙げられる。R17に関する不飽和有機基の例としては、3−メタクリロイルオキシプロピル、3−アクリロイルオキシプロピル、及び不飽和一価炭化水素基、例えばビニル、アリル、ヘキセニル、ウンデシレニルが挙げられる。
【0063】
18は、各々独立して、少なくとも1個の炭素原子を有する非置換飽和炭化水素基である。R18は、4個までの炭素原子、あるいは2個までの炭素原子を有し得る。R18の例としては、メチル、エチル、プロピル及びブチルが挙げられる。
【0064】
適切なエポキシ官能アルコキシシランの例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシシラン及びそれらの組合せが挙げられる。適切な不飽和アルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ウンデシレニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン及びそれらの組合せが挙げられる。
【0065】
構成成分(H)は、エポキシ官能シロキサン、例えばヒドロキシ末端化ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能アルコキシシランとの上記のような反応生成物、又はヒドロキシ末端化ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能アルコキシシランとの物理的配合物を含み得る。構成成分(H)は、エポキシ官能アルコキシシラン及びエポキシ官能シロキサンの組合せを含み得る。例えば構成成分(H)の例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びヒドロキシ末端化メチルビニルシロキサンと3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応生成物の混合物、又は3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びヒドロキシ末端化メチルビニルシロキサンの混合物、又は3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びヒドロキシ末端化メチルビニル/ジメチルシロキサンコポリマーの混合物が挙げられる。反応生成物としてよりむしろ物理的配合物として用いられる場合、これらの構成成分は、多部キット中に別個に保存され得る。
【0066】
適切な遷移金属キレート化合物としては、チタネート、ジルコネート、例えばジルコニウムアセチルアセトネート、アルミニウムキレート化合物、例えばアルミニウムアセチルアセトネート、及びそれらの組合せが挙げられる。遷移金属キレート化合物及びそれらの調製方法は、当該技術分野で既知である(例えば米国特許第5248715号明細書、欧州特許第0493791号明細書及び欧州特許第0497349号明細書を参照)。
【0067】
構成成分(I) 顔料
構成成分(I)は、顔料である。組成物に添加される構成成分(I)の量は、選択される顔料の種類に応じる。構成成分(I)は、組成物の重量を基にして、0.001%〜30%の量で組成物に付加され得る。顔料は当該技術分野で既知であり、市販されている。適切な顔料としては、カーボンブラック、例えばWilliamsのLB−1011Cカーボンブラック、酸化クロム顔料、例えばHarcros G−6099、二酸化チタン、例えばDuPontから入手可能なもの、及びUV活性染料(UV-active dyes)、例えばCiba Specialty ChemicalsからUVITEX OBの名称で市販されている(チオフェンジイル)ビス(t−ブチルベンゾキサゾール)が挙げられる。
【0068】
構成成分(J) レオロジー修飾剤
構成成分(J)は、レオロジー修飾剤である。レオロジー修飾剤は、組成物のチキソトロープ性を変えるために付加され得る。構成成分(J)の例としては、流動制御添加剤;反応性希釈剤;沈降防止剤;アルファ−オレフィン;ヒドロキシル末端化シリコーン有機コポリマー、例えばヒドロキシル末端化ポリプロピレンオキシド−ジメチルシロキサンコポリマー(これに限定されない);及びそれらの組合せが挙げられる。
【0069】
構成成分(K) 空隙低減剤
構成成分(K)は、空隙低減剤である。構成成分(K)は、空隙を低減するのに十分な量で組成物に付加され得る。適切な空隙低減剤は当該技術分野で既知であり、市販されている(例えば欧州特許第0850997号明細書並びに米国特許第4273902号明細書及び第5684060号明細書を参照)。適切な空隙低減剤は、ゼオライト、無水硫酸アルミニウム、分子篩(例えば、10Å又はそれ未満の孔直径を有する)、多孔質珪藻土、シリカゲル、活性炭、パラジウム化合物、例えばパラジウム金属、炭素又はアルミナにより例示される基板上に支持されるパラジウム金属、及び有機パラジウム化合物を含み得る。
【0070】
構成成分(L) 溶媒
構成成分(L)は、組成物に付加され得る溶媒である。構成成分(L)は、有機溶媒、例えばアルカン、アルコール、芳香族溶媒、ケトン又はそれらの組合せであり得る。
【0071】
基板
組成物が取り付けられ得る、エレクトロニクス用途において有用である適切な基板としては、ポリマー、例えばエポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(ブチレンテレフタレート)樹脂、ポリアミド樹脂及びそれらの配合物、例えばポリアミド樹脂とシンジオタクチックポリスチレンの配合物、例えばDow Chemical Company(米国ミシガン州ミッドランド(Midland))から市販されているもの、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、スチレン修飾ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(フェニレンスルフィド)、ビニルエステル、ポリフタルアミド、ポリイミド及びそれらの組合せ;金属、例えばアルミニウム、ステンレススチール合金、チタン、銅、ニッケル、銀、金及びそれらの組合せ;並びに半導体が挙げられるが、これらに限定されない。適切な基板は、リードフレーム又はパターン基板であり得る。半導体は当該技術分野で既知であり、市販されている(例えばJ. Kroschwitz編、 “Electronic Materials,” Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 4th ed., vol. 9, pp. 219-229, John Wiley & Sons, New York, 1994参照)。一般的半導体としては、ケイ素、ケイ素合金、例えば炭化ケイ素及び窒化ケイ素、ヒ化ガリウム、窒化ガリウムが挙げられる。半導体は、任意の便利な形態、例えばベアダイ、チップ、例えばICチップ又はLEDチップ、あるいはウェハーの形態を有し得る。
【0072】
[実施例]
これらの実施例は、当業者に本発明を例示するよう意図されており、特許請求の範囲に記述された本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。
【0073】
[実施例1]
ビニル機能性シリコーンポリマー、SiH官能シリコーンポリマー、Pt触媒、硬化修飾剤、5%のヒュームドシリカ及び接着促進剤を含有する硬化性シリコーン組成物を、印刷により、ケイ素ウェハーに約100マイクロメートル(μm)厚(ca 100 micrometer (μm) thickness)に塗布する。印刷は、図1aおよび図1xに示したダウンステップステンシル100を通して遂行する。ダウンステップステンシル100は、5ミル厚ステンシルから化学エッチングされる後縁で、最終厚み(最高1ミル)を有する。
【0074】
図1aおよび図1xは、実施例1に使用したダウンステップステンシル100を例示する。図1aは、複数の正方形開口部101を含むステンシル100の上面図を示す。各開口部101は、後縁周囲にエッチングされた領域102を有する。図1aにおいて、ステンシル100のスクイジーを用いて前縁(上部)から後縁(底部)に向かう方向に、硬化性シリコーン組成物を押すことにより、実施例1において印刷を遂行する。
【0075】
図1x(b)は、1つの開口部101及び1つのエッチングされた領域102を含む、図1aにおけるステンシル100の一部の上面図を示す。開口部101は、6mmの長さ101y及び6mmの幅101xを有する。エッチングされた領域102は、開口部101の後縁を通り越して、0.5mmの長さ105で延びる。エッチングされた領域102は、2mmの全長103+105を有する。エッチングされた領域102は、開口部101の各側面を通り越して、0.5mmの幅104で延びる。
【0076】
図1x(c)は、図1x(b)に示した開口部101を有するステンシル100の一部分の、線Aに沿って切り取られた側面横断図を示す。ステンシル100は、5ミルの厚み100zを有する。エッチングされた領域102は、4、3、2、1.5、又は1ミルの厚み102zを有する。
【0077】
図1x(d)は、図1x(b)における開口部101及びエッチングされた領域102を有するステンシル100の一部分の、線Bに沿って切り取られた側面横断図を示す。
【0078】
表1は、ステンシル100を通して組成物を印刷して、堆積物を形成し、堆積物を硬化させることにより作製されるパッドの後縁での、エッチングされた領域の高さ102z、及び、パッドの残余部の平均高と比較した場合のエッジヒルの高さにおける%差を示す。
【0079】
比較例1
ダウンステップステンシルの代わりに、開口部の全外辺部周辺に127μm(5ミル)の均一高さを有する6mm×6mmの開口部を有するステンシルを用いた以外は、実施例1を反復した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
実施例1は、後縁でのエッジヒルの低減がステンシルのステップの深さに関連する、ということを示す。標準ステンシルを用いた6mm×6mm正方形を有するパッドの配列の印刷は、平均パッドより40%まで高い後縁でのリップを生じる。
【0082】
半導体ダイは、パッド上へのケイ素ダイの空気中での及び室温での結合における100ワット(W)での10秒間(s)のパッド表面のプラズマ処理により、実施例1及び比較例1において形成されたパッドの表面に付着される。比較例1において、図3(a)及び(b)に示すようなダイ付着プロセス中に相対的に長い接触時間(10秒間)が適用される場合でも、結合は、表面間の低界面接触(30〜40%)及び低ダイ剪断値を生じる。図3(a)は、比較例1のケイ素ダイ300を示し、図3(b)は、ダイ剪断後の比較例1のパッド301を示す。位置302でのエッジヒルは、ダイ及びパッド間の非接触域303を生じて、60〜70%の凝集破壊304を引き起こす。
【0083】
しかしながら、スクイジーの動きにより印刷中に後縁近くの区域に蒸着される組成物の量が低減するよう意図されたダウンステップステンシルの使用により、表面の凹凸がなくなる。相対的に短い接触時間(1秒間)を用いたケイ素ダイの空気中での及び室温での結合における100Wで10sの間の低減化エッジヒル表面のプラズマ処理は、図4に示したような高界面接触(〜100%)及び高ダイ剪断値をもたらす。図4は、ケイ素ダイ400及びダイ剪断後の印刷パッド401を示す。位置402におけるエッジヒルの低減は、ダイ及びパッド間の接触域403を改良して、80〜90%の凝集破壊404を引き起こす。
【0084】
[産業上の利用の可能性]
パッド及び別の表面間の接着は、表面粗さ(特にパッドの縁上のエッジヒル)を除去することにより改良され得る。本発明の方法は、例えば種々の電子デバイス、例えばMEMSデバイス及び積層チップモジュールの製造に用いられ得る。本発明の方法は、種々の電子パッケージング用途、例えばウェハー結合用途(wafer bonding applications)及びウェハーレベルパッケージング用途(wafer level packaging applications)に用いられ得る。
【符号の説明】
【0085】
100 ダウンステップステンシル
100z ステンシルの厚み
101 開口部
101x 開口部の幅
101y 開口部の長さ
102 エッチングされた領域
102z エッチングされた領域の厚み
103 長さ
104 長さ
105 長さ
200 積層チップモジュール
201 基板
202 第一ICチップ
203 ダイ付着接着剤
204 電線
205 ダイ付着接着剤
206 第二ICチップ
207 電線
208 ハンダボール
209 オーバーモールディング
300 ダイ
301 パッド
302 エッジヒルの位置
303 非接触域
304 凝集破壊域
400 ダイ
401 パッド
402 エッジヒルの位置
403 接触域
404 凝集破壊域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)直角の角を有する少なくとも1つの開口部を有する蒸着ツールに組成物を通させることにより、第一基板上に組成物の平坦な上面を有する堆積物を塗布することであって、
前記少なくとも1つの開口部は、前記直角の角によって連結される側壁に取り囲まれた外辺部を有し、
前記側壁は、前記蒸着ツール上の前記少なくとも1つの開口部の、2つ以上の前記側壁の外辺部の周辺において、前記蒸着ツールの平均高と比較して小さい高さを有し、
前記側壁の前記高さは、後縁全体に沿って前記小さい高さであり、
前記側壁の前記高さは、前記開口部において前記後縁に隣接する両側縁に沿って部分的に前記小さい高さである
堆積物を塗布することと、
b)前記平坦な上面を有する堆積物を硬化させることと、
c)前記平坦な上面を有する堆積物の前記上面に第二基板を接着することであって、過程c)は、過程b)の前、最中、又は後に、又はそれらの組合せで行われる、第二基板を接着することと、
d)任意に、過程a)、b)及びc)を反復することと
を包含する方法であって、前記第一基板及び前記第二基板のうちの少なくとも一方が半導体ダイである方法。
【請求項2】
前記堆積物が、修飾スクリーンを用いたスクリーン印刷により、又はダウンステップステンシルを用いたステンシル印刷により塗布される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ダウンステップステンシルが複数の開口部を包含し、各開口部がその後縁周辺にエッチングされた領域を有し、前記エッチングされた領域が前記ステンシルの残余部の高さより小さい高さを有する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記組成物がホットメルト接着剤又は硬化性組成物から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、硬化性シリコーン組成物、硬化性シリコーン有機組成物又は硬化性有機組成物から選択される硬化性組成物である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記組成物は、
A)1分子当たり平均で少なくとも2つの脂肪族系不飽和有機基を含有するポリオルガノシロキサンと、
B)1分子当たり平均で少なくとも2つのケイ素結合水素原子を含有するポリオルガノ水素シロキサンと、
C)ヒドロシリル化反応触媒と
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
過程c)が、
i)前記平坦な上面を有するパッドの前記上面を活性化することと、
ii)その後、前記平坦な上面を有するパッドの前記上面に前記第二基板を取り付けることと
を包含するプロセスにより行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ウェハー結合用途及びウェハーレベルパッケージング用途から選択される電子パッケージング用途における、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法の使用。

【図1a】
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【図1x】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−51428(P2013−51428A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−231885(P2012−231885)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2006−537969(P2006−537969)の分割
【原出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】