説明

基板の帯電防止装置及び帯電防止方法

【課題】基板に帯電防止処理を行う装置において、継続して使用しても静電気の帯電防止効率を低下させず、パーティクルを発生させない。
【解決手段】帯電防止装置24には、ガラス基板Gの裏面に紫外線を照射する照射部120が設けられている。ガス供給部110とガス排出部111は照射部120を挟んで配置されている。ガス供給部110へ酸素含有ガスを供給するガス供給経路Mと、ガス排出部111からガスを排出するガス排出経路Nとの間には、戻し経路Rが接続されている。ガス排出経路Nを流れるガスは、その一部が戻し経路Rを流れて、ガス供給経路Mに戻される。ガス排出経路Nに排出されるガスのオゾン濃度は、オゾンモニター124によって測定され、その結果に基づいて、制御部125は、戻し経路Rに設けられたファン121の回転数を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に帯電防止処理を行う基板の帯電防止装置と、基板の帯電防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶ディスプレイの製造プロセスのフォトリソグラフィ工程では、ガラス基板上にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布処理、ガラス基板の加熱処理、ガラス基板の疎水化処理等の各種処理が行われている。
【0003】
これらの処理において、ガラス基板は導電性が低いため、例えば熱板による加熱処理の際には、ガラス基板と熱板との間に生じる摩擦やガラス基板が熱板から剥離する際に生じる剥離帯電により、ガラス基板が帯電していた。ガラス基板に帯電した静電気の帯電量が大きくなると、ガラス基板上にスパークが発生して基板上のデバイスや回路が破壊するおそれがある。またパーティクルを吸着しやすくなって、付着したパーティクルが露光処理の際のデフォーカスの原因となるおそれがある。最近では、基板に対する各種処理は高精細化しているので、このような静電破壊やデフォーカスは、ただちに製品の不良化につながる。
【0004】
そこで従来より、水平方向にガラス基板を搬送する搬送ローラに対して、対向する位置に2個のイオナイザ(除電、及び帯電防止手段)を配置して、ガラス基板に静電気の除電、並びに帯電防止処理を行う方法が提案されている(特許文献1)。イオナイザは搬送されるガラス基板の幅方向に延びるイオナイザ本体と、この本体に沿って配列された複数のノズルとを有している。イオナイザ本体内には放電電極が設けられており、放電電極の先端でコロナ放電を起こさせ、この先端近傍の空気の分子を正負にイオン化させる。イオン化された空気は各ノズルからガラス基板に対してその幅方向全域にわたり吹き付けられ、ガラス基板に帯電する静電気の電荷が逆極性のイオンにより中和されて除電され、また帯電が防止される。
【0005】
【特許文献1】特開2003−17457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的に、放電電極は導電性に優れたステンレス、タングステン、チタン等の金属材料により形成されており、コロナ放電をする際には、これら金属の屑が放電電極に発生していた。発生した金属の屑は放電電極に付着して蓄積し、その結果空気のイオン化効率が下がるために、静電気の帯電防止効率を下げるおそれがある。またそのような屑を除去するため、放電電極を相当期間毎にメンテナンスをする必要があり、メンテナンス中に基板の帯電防止処理できないという問題があった。さらにまた前記屑はパーティクルの原因となるおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、基板に帯電防止処理を行う装置において、継続して使用しても静電気の帯電防止効率を低下させず、しかもパーティクルを発生させないことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明の基板の帯電防止処理装置は、水平方向に基板を搬送中に、当該基板に帯電防止処理を行う基板の帯電防止装置であって、基板の裏面に対して紫外線を照射する照射部と、前記基板の裏面と前記照射部の間の空間に酸素含有ガスを供給するガス供給部と、前記空間の雰囲気を排出するガス排出部とを有し、前記ガス供給部と前記ガス排出部は、前記照射部を挟んで位置することを特徴としている。
【0009】
発明者らの知見によれば、基板の裏面に紫外線を照射することによって、基板の帯電を防止することができることが分かった。また、基板の裏面に紫外線を照射中、紫外線が照射される基板の裏面付近の空間の雰囲気は、オゾン濃度が高いほうが効率よく帯電を防止できることが分かった。したがって、本発明の帯電防止装置では、照射部によって基板の裏面に紫外線を照射することにより、基板の裏面を親水化して基板に静電気が帯電するのを防止する。同時に、ガス供給部から酸素含有ガスを供給して、この酸素含有ガス中の酸素を紫外線によってオゾンに変化させる。これによって、基板の裏面と照射部の間の空間の雰囲気のオゾン濃度が高くなり、基板の裏面の親水化が促進される。
そして、ガス供給部とガス排出部を、照射部を挟む位置に配置することによって、供給される酸素含有ガスは、排出部に向けて基板裏面を舐めるようにして一方向に流れる。このため、基板の裏面と照射部を挟む空間にガスが滞留しない。また、当該空間の周囲にガスが拡散されず、所望のオゾン濃度を保つことができる。
したがって、本発明の帯電防止装置を継続して使用しても、所望のオゾン濃度を保って基板の帯電を防止することができるので、静電気の帯電防止効率は低下しない。また、帯電防止処理を行う際に供給される酸素含有ガス及び紫外線から屑は発生しないので、パーティクルを発生させずに基板の帯電を防止することができる。
また、上述の帯電防止処理が行われて基板の裏面が親水化されると、後続の基板の処理工程において、基板が静電気に帯電することを防止できる。
さらに、すでに基板が帯電している場合でも、上述の基板の裏面の親水化により、基板に帯電した静電気を大気中に放電することができる。したがって、本発明の帯電防止装置を使用すると、基板を除電することもできる。
また、このように基板の裏面を親水化することにより、基板に付着した有機物、塵の洗浄をすることもできる。さらに、例えば基板に疎水化処理を行う前に、基板に静電気が帯電するのを防止する帯電防止剤を塗布する場合、この基板の裏面を親水化することにより、基板と帯電防止剤との密着性が向上して帯電防止剤の消費量を減少させることができる。
【0010】
前記ガス供給部へ酸素含有ガスを供給するガス供給経路と、前記ガス排出部からガスを排出するガス排出経路との間には戻し経路が接続され、この戻し経路には、前記ガス排出部から流れてくるガスの一部を前記ガス供給経路へと戻すためのファンが設けられていてもよい。ガス排出経路を流れるガスは、オゾンを含有している。このガスの一部が戻し経路のファンにより吸引され、吸引されたガスは戻し経路及びガス供給経路を通って、基板の裏面と照射部の間の空間に供給される。これによって、当該空間の雰囲気のオゾン濃度を向上させることができ、当該空間に供給される酸素含有ガスの供給量を減少させることができる。
【0011】
前記ガス排出経路には、排出するガスのオゾン濃度を測定するオゾンモニターが設けられ、前記オゾンモニターの測定結果に基づいて前記ファンの回転数を制御する制御部を有していてもよい。これによって、戻し経路を通じて再利用するガスの量を適切に調節することができる。
【0012】
前記戻し経路には、不純物を除去するフィルターが設けられてもよい。このフィルターにより、ガス排出経路から基板の裏面と照射部の間の空間に戻るガスに含まれる不純物を除去することができる。
【0013】
前記戻し経路には、ガス供給経路を流れる酸素含有ガスがこの戻し経路に流れるのを防止するための逆流防止弁が設けられていてもよい。これによって、新鮮な酸素含有ガスが、戻し経路を通じてそのまま排出されることはない。
【0014】
前記ガス供給部、前記照射部、及び前記ガス排出部は、基板の搬送方向に沿って配置してもよい。ガス供給部より供給される酸素含有ガスは、基板の搬送方向に流れ、ガス排出部から排出される。したがって、基板の裏面と照射部の間の空間で乱流が起きず、酸素含有ガスを円滑に一方向に流すことができる。
【0015】
前記ガス供給部と前記ガス排出部は、鉛直方向よりも照射部側に斜めに傾けて配置してもよい。これによって、ガス供給部より供給されて、帯電防止処理後に排出部に流れていくガスの流れをより円滑に整流できる。
【0016】
前記の帯電防止装置が搬送する基板の裏面側に配置され、前記の基板の裏面側に配置された帯電防止装置における照射部が、基板の表面に対して紫外線を照射するものである表面用帯電防止装置が、搬送する基板を挟んで前記裏面側に配置された帯電防止装置と上下に対向して配置されていてもよい。基板を挟んで、基板の表面側と裏面側の両面に対して帯電防止装置を設けることにより、基板の両面に紫外線が照射され、酸素含有ガスが供給される。したがって、基板の両面から帯電防止処理が行われ、基板の帯電を防止することができる。
【0017】
別の観点による本発明によれば、基板に対して帯電防止処理を行なう帯電防止方法であって、基板に対して疎水化処理を行なった後で、かつ基板に対して塗布液を塗布する前に、前記の基板の裏面側に設けられた帯電防止装置を用いて、基板に対して帯電防止処理を行なうことを特徴とする帯電防止方法が提供される。本発明においては、基板の表面に塗布液を塗布する前に、基板の表面と塗布液の密着性を高めるために基板に疎水化処理が行われる。従来は、この疎水化処理の際に基板に帯電する静電気が、後続の塗布処理を円滑に行う障害となっていた。そこで、疎水化処理の後でかつ塗布処理の前に、前記の基板の裏面側に帯電防止装置を配置することにより、基板の帯電防止処理を行うことができる。したがって、基板の塗布処理を円滑に行うことができる。
【0018】
さらに、基板に対して帯電防止処理を行なう帯電防止方法であって、前記の基板の両面に対して設けられた帯電防止装置を用いて、基板に対して帯電防止処理を行った後、続けて当該基板に対して疎水化処理を行なうことを特徴とする帯電防止方法が提供される。これによって、基板の表面を疎水化処理する前に、基板の表面と裏面の両面を親水化して基板の帯電を防止することができ、疎水化処理を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、所望のオゾン濃度を保って基板の裏面を親水化することにより、基板の帯電を防止することができるため、静電気の帯電防止効率は低下しない。また、帯電防止処理を行う際に供給される酸素含有ガス及び紫外線から屑は発生せず、パーティクルを発生させずに基板の帯電を防止することができる。また、この基板の裏面の親水化により、後続の基板の処理工程において、基板が静電気に帯電することを防止できる。さらに、すでに基板が帯電している場合でも、基板の裏面の親水化により、基板に帯電した静電気を大気中に放電して基板を除電することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる基板の帯電防止装置24を搭載した基板処理システムとしての塗布現像処理システム1の構成の概略を示す平面図である。図2は塗布現像処理システム1の正面図であり、図3は塗布現像処理システム1の背面図である。
【0021】
塗布現像処理システム1は、図1に示すように例えば複数のガラス基板Gをカセット単位で外部に対して搬入出するためのカセットステーション2と、フォトリソグラフィ工程の中で枚葉式に所定の処理を施す各種処理ユニットが配置された処理ステーション3と、処理ステーションに3に隣接して設けられ、処理ステーション3と露光装置4との間でガラス基板Gの受け渡しを行うインターフェイスステーション5とを一体に接続した構成を有している。
【0022】
カセットステーション2には、カセット載置台10が設けられ、当該カセット載置台10は、複数のカセットCをX方向(図1中の上下方向)に一列に載置自在になっている。カセットステーション2には、搬送路11上をX方向に向かって移動可能な基板搬送体12が設けられている。基板搬送体12は、カセットCに収容されたガラス基板Gの配列方向(Z方向;鉛直方向)にも移動自在であり、X方向に配列された各カセットC内のガラス基板Gに対して選択的にアクセスできる。
【0023】
基板搬送体12は、Z軸周りのθ方向に回転可能であり、後述する処理ステーション3側のエキシマUV照射ユニット20や第4の熱処理ユニット群34の各ユニットに対してもアクセスできる。
【0024】
処理ステーション3は、例えばY方向(図1の左右方向)に延びる2列の搬送ラインA、Bを備えている。この搬送ラインA、Bにおいては、コロ搬送やアームによる搬送などにより、ガラス基板Gを搬送できる。処理ステーション3の正面側であるX方向負方向側(図1の下側)の搬送ラインAには、カセットステーション2側からインターフェイスステーション5側に向けて順に、例えばガラス基板G上の有機物を除去するエキシマUV照射ユニット20、ガラス基板Gを洗浄するスクラバ洗浄ユニット21、ガラス基板Gを加熱処理する加熱処理ユニット22、ガラス基板Gの疎水化処理する疎水化処理装置としてのアドヒージョンユニット23、本発明にかかるガラス基板Gに帯電防止処理を行う帯電防止装置24、ガラス基板Gを冷却処理する冷却処理ユニット25、ガラス基板Gにレジスト液を塗布する塗布処理装置としてのレジスト塗布処理ユニット26、ガラス基板Gを減圧乾燥する減圧乾燥ユニット27及び第1の熱処理ユニット群28が直線的に一列に配置されている。
【0025】
第1の熱処理ユニット群28には、図2に示すように、ガラス基板Gにレジスト液塗布後の加熱処理を行うプリベーキングユニットが3段に積み重ねて設けられている。
【0026】
処理ステーション3の背面側であるX方向正方向側(図1の上方側)の搬送ラインBには、インターフェイスステーション5側からカセットステーション2側に向けて順に、例えば第2の熱処理ユニット群30、ガラス基板Gを現像処理する現像処理ユニット31、ガラス基板Gの脱色処理を行うi線UV照射ユニット32、第3の熱処理ユニット群33及び第4の熱処理ユニット群34が直線状に一列に配置されている。
【0027】
第2の熱処理ユニット群30には、図3に示すように、ガラス基板Gを冷却処理する冷却処理ユニット、露光後現像処理前の加熱処理を行うポストエクスポージャーベーキングユニットが2段、下から順に積み重ねて設けられている。
【0028】
第3の熱処理ユニット群33及び第4の熱処理ユニット群34には、図3に示すように、冷却処理ユニット、ガラス基板Gに現像後の加熱処理を行うポストベーキングユニットが2段、それぞれ下から順に積み重ねて設けられている。また、第3の熱処理ユニット群33と第4の熱処理ユニット群34との間には、このユニット群33、34間のガラス基板Gの搬送を行う搬送体40が設けられている。
【0029】
搬送ラインAの第1の熱処理ユニット群28と搬送ラインBの第2の熱処理ユニット群30との間には、このユニット群28、30間のガラス基板Gの搬送を行う搬送体41が設けられている。この搬送体41は、後述するインターフェイスステーション5のエクステンション・クーリングユニット60に対してもガラス基板Gを搬送できる。
【0030】
搬送ラインAと搬送ラインBとの間には、Y方向に沿った直線的な空間50が形成されている。空間50には、ガラス基板Gを載置して搬送可能なシャトル51が設けられている。シャトル51は、処理ステーション3のカセットステーション2側の端部からインターフェイスステーション5側の端部まで移動自在であり、例えば支持ピンによりガラス基板Gを保持して搬送するようになっている。
【0031】
インターフェイスステーション5には、例えば冷却機能を有しガラス基板Gの受け渡しを行うエクステンション・クーリングユニット60と、ガラス基板Gを一時的に収容するバッファカセット61と、外部装置ブロック62が設けられている。外部装置ブロック62には、ガラス基板Gに生産管理用のコードを露光するタイトラーと、ガラス基板Gの周辺部を露光する周辺露光装置が設けられている。インターフェイスステーション5には、上記エクステンション・クーリングユニット60、バッファカセット61、外部装置ブロック62及び露光装置4に対して、ガラス基板Gを搬送可能な基板搬送体63が設けられている。
【0032】
次に、ガラス基板Gに帯電防止処理を行う帯電防止装置24について、図4及び図5に基づいて説明する。図4は本実施の形態にかかる帯電防止装置の斜視図であり、図5は帯電防止装置の断面図である。
【0033】
帯電防止装置24は、ガラス基板Gをいわゆるコロ搬送するための搬送ローラ100、100の間に配置され、ガラス基板Gの下側に近接して設けられている。帯電防止装置24はガラス基板Gの搬送方向に長い形状を有している。帯電防止装置24全体は、ガラス基板Gの上方からケーシング(図示せず)で覆われている。
【0034】
帯電防止装置24は、直方体の基台101を有している。基台101の内部は空洞になっており、中空部102が形成されている。基台101上には、第1のブロック103、第2のブロック104、第3のブロック105が、ガラス基板Gの搬送方向にこの順で設けられている。第1のブロック103、第2のブロック104、第3のブロック105は、それぞれの縦断面形状が台形であり、内部は中空となっている。第1のブロック103、第2のブロック104、第3のブロック105のガラス基板Gの短手方向の幅は、ガラス基板Gと同一幅を有している。
【0035】
第1のブロック103と第3のブロック105の向かい合う内側面103a、105aは、ガラス基板Gの搬送方向に対して上方にいくにつれて、相互に接近するようにテーパ形状を有している。そして第2のブロック104におけるこれら内側面103a、105aと対向する側面104a、104bは、内側面103a、105aと平行に対峙している。そして内側面103aと側面104aとによって形成される空間106の両側には、カバー107が設けられ、側面104bと内側面105aとによって形成される空間108の両側には、カバー109が設けられている。
【0036】
空間106の上方の開口端部は、ガス供給部110を形成している。空間108の上方の開口端部は、ガス排出部111を形成している。
【0037】
空間106の下方端には、中空部102に通ずる連通口112が形成され、中空部102の一端から連通口112までの空間114と、空間106とで、ガス供給経路Mが構成される。中空部102の一端は、酸素含有ガス供給源(図示せず)に通じている。空間108の下方端には、中空部102に通ずる連通口113が形成され、中空部102の他端から連通口113までの空間115と、空間108とで、ガス排出経路Nが構成される。そして前記テーパ形状により、ガス供給部110とガス排出部111は、鉛直方向よりも照射部120側に斜めに傾けて配置されている。中空部102における空間114と空間115の間の空間は、戻し経路Rを構成している。
【0038】
第2のブロック104の上面は、第1のブロック103及び第3のブロック105の上面より低くなっている。そして、第1のブロック103、第2のブロック104、第3のブロック105、及びガラス基板Gの裏面に囲まれた空間は、ガラス基板Gに帯電防止処理を行う帯電防止空間116を形成している。ガス供給経路1Mを流れる酸素含有ガスは、ガス供給部110より帯電防止空間116に供給され、帯電防止空間116において帯電防止処理に供された後、ガス排出部111からガス排出経路Nに排出される。
【0039】
第2のブロック104の上面には紫外線を透過する例えば無色透明なガラス104cが設けられ、ガラス104cの下側には、ガラス基板Gの裏面に対して紫外線を照射する照射部120が設けられている。
【0040】
戻し経路Rの内部には、ガス排出経路Nを流れるガスの一部を戻し経路Rに吸引するファン121が設けられている。ファン121は、ガス排出経路N側の端部に設けられている。ファン121の下流側には、戻し経路Rを流れるガスに含まれた不純物を除去するフィルター122が設けられている。さらに戻し経路N内のガス供給経路M側の端部には、逆流防止弁123が設けられている。
【0041】
ガス排出経路Nにおける空間108には、ガス排出経路Nを流れるガスのオゾン濃度を測定するオゾンモニター124の検出部124aが設けられている。オゾンモニター124で測定されたオゾン濃度は制御部125に伝達される。制御部125では、測定されたオゾン濃度に基づいて、戻し経路Rに戻されるガスの戻し量が算出される。そして算出された戻し量に基づいて、ファン121の回転数が算出される。
【0042】
本実施の形態にかかる帯電防止装置24は、以上のような構成を有しており、次にこの帯電防止装置24を使用してのガラス基板Gの帯電防止プロセスを、塗布現像処理システム1で行われるフォトリソグラフィ工程のプロセスと共に説明する。
【0043】
先ず、カセットステーション2のカセットC内の複数のガラス基板Gが、基板搬送体12によって、順に処理ステーション3のエキシマUV照射ユニット20に搬送される。エキシマUV照射ユニット20では、ガラス基板Gの表面改質・有機物除去処理が行われる。次にスクラバ洗浄ユニット21において、ガラス基板Gが水平に搬送されながら洗浄処理及び乾燥処理が行われる。続いて加熱処理ユニット22において加熱処理され、アドヒージョンユニット23において、ガラス基板Gとレジスト膜との密着性を高めるために、ガラス基板GにHMDSガスを噴霧してガラス基板Gの表面を疎水化する処理が行われる。この後、帯電防止装置24において、ガラス基板Gに帯電防止処理が行われる。そして、冷却処理ユニット25において冷却処理が行われる。
【0044】
次に、ガラス基板Gはレジスト塗布処理ユニット26に搬送され、レジスト液が塗布された後、減圧乾燥ユニット27において減圧乾燥処理が行われる。その後、ガラス基板Gは第1の熱処理ユニット群28におけるプリベーキングユニットにて加熱処理が行われた後、搬送体41によって第2の熱処理ユニット群30に輸送され、冷却処理ユニットにて冷却処理が行われる。
【0045】
冷却処理の終了したガラス基板Gは、搬送体41によって、インターフェイスステーション5に搬送され、エクステンション・クーリングユニット60において冷却処理される。その後、基板搬送体63によって、外部装置ブロック62あるいは露光装置4に搬送され、ガラス基板Gに露光処理が行われる。
【0046】
露光装置4において露光処理の終了したガラス基板Gは、基板搬送体63によってインターフェイスステーション5に戻され、搬送体41によって処理ステーション3の第2の熱処理ユニット群30におけるポストエクスポージャーベーキングユニットに搬送され、現像処理前の加熱処理が行われる。その後、冷却処理ユニットにて冷却処理が行われる。
【0047】
冷却処理が行われたガラス基板Gは、現像処理ユニット31に搬送される。現像処理ユニット31では、ガラス基板Gは水平に搬送されながら現像処理、リンス処理及び乾燥処理が行われる。その後、ガラス基板Gはi線UV照射ユニット32に搬送され、ガラス基板Gの脱色処理が行われる。
【0048】
脱色処理が行われたガラス基板Gは、第3の熱処理ユニット群33又は第4の熱処理ユニット群34に搬送さる。これら熱処理ユニット群33、34におけるポストベーキングユニットにて加熱処理が行われ、冷却処理ユニットにて冷却処理が行われる。
【0049】
第3の熱処理ユニット群33又は第4の熱処理ユニット群34において冷却処理の終了したガラス基板Gは、基板搬送体12によってカセットステーション2のカセットCに戻されて、一連のフォトリソグラフィー工程が終了する。
【0050】
次に、帯電防止装置24におけるガラス基板Gの帯電防止プロセスについて、図6、図7、及び図8に基づいて詳しく説明する。
【0051】
先ず、搬送ローラ100によって搬送されたガラス基板Gは、帯電防止空間116まで搬送される(図6)。そして、ガラス基板Gが帯電防止空間116上を搬送されている間(図7)、照射部120からガラス基板Gの裏面に対して紫外線が照射される。またそれと同時に、ガス供給経路Mに酸素含有ガスを流し、ガス供給部110から酸素含有ガスを帯電防止空間116に供給する。
【0052】
照射部120より照射された紫外線によって、ガラス基板Gの裏面が親水化され、ガラス基板Gの帯電が防止される。また、この照射された紫外線によって、帯電防止空間116に供給される酸素含有ガスに含まれた酸素がオゾンに変化して、ガラス基板Gの裏面の親水化が促進される。
【0053】
帯電防止空間116においてガラス基板Gの裏面の親水化に寄与した後のオゾンを含有するガスは、ガス排出部111からガス排出経路Nに排出される。そしてガス排出経路Nを流れるガスの一部は、ファン121によって戻し経路Rに吸引される。戻し経路Rに吸引されたガスは、ガス供給経路Mを通じて、再び帯電防止空間116へと供給される。
【0054】
ここで、戻し経路Rにガスを吸引するファン121の回転数の制御について説明する。
ガス排出経路Nを流れるガスは、オゾンモニター124によって、そのガス中に含まれるオゾン濃度が測定される。測定されたオゾン濃度は制御部125に伝達される。制御部125では、測定されたオゾン濃度に基づいて戻し経路Rに戻すガスの戻し量が算出される。ガスの戻し量は、ガス排出経路Nを流れるガスのオゾン濃度が所定の濃度に一定になるように算出される。すなわち、帯電防止空間116の雰囲気のオゾン濃度が所定の濃度に一定になるように算出される。さらに、算出された戻し量に基づいて、戻し経路Rに戻すガスを吸引するファン121の回転数を算出する。例えば、測定されたオゾン濃度が所定の濃度より低い場合、ガスの戻し量を増加させ、ファン121の回転数を増加させる。また、測定されたオゾン濃度が所定の濃度より高い場合、ガスの戻し量を減少させ、ファン121の回転数を減少させる。あるいはガスを戻し経路Rに戻さず、ファン121を停止させてもよい。算出されたファン121の回転数は、制御部125からファン121に伝達される。そして、ファン121が回転し、戻し経路Rにガスが吸引される。
【0055】
このように戻し経路Rに吸引されたガスはフィルター122によって、ガス中に含まれる不純物が除去された後、逆流防止弁123を通って、ガス供給経路Mに流れる。そして、ガス供給経路M内で酸素含有ガスと合流し、再び帯電防止空間116に供給される。
【0056】
このような一連の帯電防止処理は、ガラス基板Gが帯電防止空間116を通過したときに終了し(図8)、照射部120からの紫外線の照射、ガス供給部110からの酸素含有ガスの供給が停止される。
【0057】
本実施の形態によれば、帯電防止空間116において、照射部120からガラス基板Gの裏面に紫外線が照射されることにより、ガラス基板Gの裏面が親水化してガラス基板Gの帯電が防止される。同時に、ガス供給部110から帯電防止空間116に供給される酸素含有ガス、及び戻し経路Rから戻されて再び酸素含有ガスと共に供給されるガスによって、基板の親水化が促進される。そして帯電防止空間116において親水化に供された後のガスはガス排出部111へと流れていく。また特に本実施の形態においては、ガス供給部110とガス排出部111は、鉛直方向よりも照射部120側に斜めに傾けて配置されているので、ガス供給部110から供給された酸素含有ガスは、帯電防止空間116において基板Gの裏面を舐めるようにして流れ、その後ガス排出部111から排出されていく。したがって円滑に一方向に流れ、帯電防止空間116にガスが滞留しない。すなわち、帯電防止空間116のオゾン濃度を一定に保って、基板の帯電防止処理をすることができる。また、帯電防止処理を行う際に供給される紫外線及びガスからはパーティクルが発生しないので、帯電防止装置24を継続して使用しても、静電気の帯電防止効率は低下しない。
【0058】
また、ガス排出経路Nを流れるガスの一部を再利用して再び帯電防止空間116に供給するようにしているので、酸素含有ガス供給源からの酸素含有ガスを節約することができる。かかる場合、ガスの戻し量をオゾンモニター124と制御部125を制御することにより、帯電防止空間116の雰囲気のオゾン濃度をより一定に保つことができる。
【0059】
さらに酸素含有ガスの供給と相俟って、ガラス基板Gの裏面を親水化することにより、ガラス基板Gに付着した有機物、塵を除去して基板裏面を洗浄することができる。また例えばガラス基板Gに疎水化処理を行う前に、ガラス基板Gに静電気が帯電するのを防止する帯電防止剤を塗布する場合、このガラス基板Gの裏面を親水化することにより、ガラス基板Gと帯電防止剤との密着性が向上して帯電防止剤の消費量を減少させることができる。
【0060】
以上の実施の形態では、帯電防止装置24はアドヒージョンユニット23とレジスト塗布処理ユニット26の間に設けられている。上述のようにガラス基板Gの裏面を親水化することにより、レジスト塗布処理ユニット26においてガラス基板Gが帯電するのを防止することができる。また、アドヒージョンユニット23での疎水化処理によってガラス基板Gが帯電した場合でも、このガラス基板Gの裏面の親水化により、ガラス基板Gに帯電した静電気を大気中に放電してガラス基板Gを除電することができる。すなわち、ガラス基板Gは、レジスト塗布処理ユニット26でレジスト液を塗布する前にこの帯電防止装置24によって除電される。したがって、次処理のレジスト液の塗布処理を円滑に行うことができる。
【0061】
なお、本実施の形態の塗布現像処理システム1におけるエキシマUV照射ユニット20に代えて、図9に示す帯電防止装置150を用いてもよい。帯電防止装置150は、ガラス基板Gの裏面側に設けられた帯電防止装置24を、ガラス基板Gの表面側にも設けた装置である。ガラス基板Gの表面側に設けられた帯電防止装置24は、その照射部120がガラス基板Gの表面を照射するように配置される。
【0062】
この場合、照射部120、120から照射される紫外線によって、ガラス基板Gの表面及び裏面の両面が同時に親水化され、ガラス基板Gの帯電を防止することができる。なお、ガラス基板Gの両面が親水化されることによって、従来のエキシマUV照射ユニット20で行われていた有機物の除去も行うことができる。そしてそのようにアドヒージョンユニット23の上流側に配置することで、ガラス基板Gの疎水化処理を行う前に、ガラス基板Gの帯電を防止することができる。したがって、ガラス基板Gの疎水化処理を円滑に行うことができる。
【0063】
なお、使用期間が長期に渡ると、照射部120を覆っている第2のブロック104のガラス104c表面が汚れてしまい、その分ガラス基板Gの裏面に照射される紫外線の量が減少して、帯電防止効率が低下することも考えられる。これを改善するため、例えば図10に示したように、ガラス104cの上面に、巻き上げ可能な透明なフィルム201を設けてもよい。
【0064】
図10に示した例において、第2のブロック104の上面には、繰り出しロール202と巻き上げロール203が設けられ、この繰り出しロール202と巻き上げロール203の間に透明なフィルム201が渡されている。繰り出しロール202と巻き上げロール203の両端には、ロール支持部204が設けられている。ロール支持部204は第2のブロック104の上面に固定されている。
【0065】
この例によれば、フィルム201が第2のブロック104のガラス104c上面を覆い、ガラス104c上面に不純物が付着するのを防止する。そして、フィルム201に不純物が相当量付着した場合には、フィルム201は巻き上げロール203によって巻き取られ、それと共に繰り出しロール202から未使用のフィルム201が繰り出されて、第2のブロック104のガラス104c上面を覆う。
【0066】
したがって、このようなフィルム201を適宜繰り出すことで、ガラス104c上面を所定の透明度に維持させることができる。これによって常に所定量の紫外線を透過させて、これをガラス基板Gの裏面に対して照射することができる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に相到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、例えばガラス基板等の基板に帯電防止処理を行う際に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施の形態にかかる塗布現像処理システムの構成の概略を示す平面図である。
【図2】図1に示す塗布現像処理システムの正面図である。
【図3】図1に示す塗布現像処理システムの背面図である。
【図4】本実施の形態にかかる帯電防止装置の斜視図である。
【図5】図4に示す帯電防止装置の断面図である。
【図6】帯電防止装置における帯電防止プロセスを示す説明図である。
【図7】帯電防止装置における帯電防止プロセスを示す説明図である。
【図8】帯電防止装置における帯電防止プロセスを示す説明図である。
【図9】上下に対向配置した帯電防止装置の側面断面図である。
【図10】他の実施の形態にかかる帯電防止装置の断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 塗布現像処理システム
24 帯電防止装置
110 ガス供給部
111 ガス排出部
116 帯電防止空間
120 照射部
121 ファン
122 フィルター
123 逆流防止弁
124 オゾンモニター
125 制御部
G ガラス基板
M ガス供給経路
N ガス排出経路
R 戻し経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に基板を搬送中に、当該基板に帯電防止処理を行う基板の帯電防止装置であって、
基板の裏面に対して紫外線を照射する照射部と、
前記基板の裏面と前記照射部の間の空間に酸素含有ガスを供給するガス供給部と、
前記空間の雰囲気を排出するガス排出部とを有し、
前記ガス供給部と前記ガス排出部は、前記照射部を挟んで位置することを特徴とする、基板の帯電防止装置。
【請求項2】
前記ガス供給部へ酸素含有ガスを供給するガス供給経路と、前記ガス排出部からガスを排出するガス排出経路との間には戻し経路が接続され、
この戻し経路には、前記ガス排出部から流れてくるガスの一部を前記ガス供給経路へと戻すためのファンが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の基板の帯電防止装置。
【請求項3】
前記ガス排出経路には、排出するガスのオゾン濃度を測定するオゾンモニターが設けられ、
前記オゾンモニターの測定結果に基づいて前記ファンの回転数を制御する制御部を有することを特徴とする、請求項2に記載の基板の帯電防止装置。
【請求項4】
前記戻し経路には、不純物を除去するフィルターが設けられていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の基板の帯電防止装置。
【請求項5】
前記戻し経路には、ガス供給経路を流れる酸素含有ガスがこの戻し経路に流れるのを防止するための逆流防止弁が設けられていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の基板の帯電防止装置。
【請求項6】
前記ガス供給部、前記照射部、及び前記ガス排出部は、基板の搬送方向に沿って位置することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の基板の帯電防止装置。
【請求項7】
前記ガス供給部と前記ガス排出部は、鉛直方向よりも照射部側に斜めに傾けて配置されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の基板の帯電防止装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の帯電防止装置が搬送する基板の裏面側に配置され、
請求項1〜7のいずれかに記載の帯電防止装置における照射部が、基板の表面に対して紫外線を照射するものである表面用帯電防止装置が、
搬送する基板を挟んで前記裏面側に配置された帯電防止装置と上下に対向して配置されていることを特徴とする、基板の帯電防止装置。
【請求項9】
基板に対して帯電防止処理を行う帯電防止方法であって、
基板に対して疎水化処理を行なった後で、かつ基板に対して塗布液を塗布する前に、請求項1〜7のいずれかに記載の基板の帯電防止装置を用いて、基板に対して帯電防止処理を行うことを特徴とする、帯電防止方法。
【請求項10】
基板に対して帯電防止処理を行う帯電防止方法であって、
請求項8に記載の基板の帯電防止装置を用いて、基板に対して帯電防止処理を行った後、続けて当該基板に対して疎水化処理を行なうことを特徴とする、帯電防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−60221(P2008−60221A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233533(P2006−233533)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】