説明

基板内蔵コンデンサと基板

【課題】 必要な容量のコンデンサが内蔵された信頼性の高いコンデンサ内蔵基板を提供する。
【解決手段】 複数の内部電極層を有する基板に内蔵されたコンデンサであって、そのコンデンサを構成する2つの対向電極のうちの少なくとも一方の対向電極は、第1内部電極層に配線領域を挟んで分離されるように形成された2つの第1電極と、第2内部電極層に配線領域に対向するように形成された第2電極とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ内蔵基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板にIC等の電子部品を実装する際に、プリント基板からの伝送・放射ノイズを抑制するために、バイパスコンデンサが用いられている。
図1は従来のバイパスコンデンサの実装方法の一例を示す図である。図1の従来例では、電源パターン101とGNDパターン102が形成されたプリント基板100上にボールグリッドアレイ(以下、BGAと略す)タイプのIC104が設けられている。そして、バイパスコンデンサ103が電源パターン101とGNDパターン102間に接続されている。バイパスコンデンサ103はインダクタンス成分を減らすために、IC104の近くに配置される。
【0003】
しかし、バイパスコンデンサをICの近くに配置しても、IC等の電源端子とバイパスコンデンサ103には、例えば、実装上の制約により、最小限の間隔をあける必要があり、その距離に比例して、電源パターン配線によるインダクタンス成分が生じる。この配線長によるインダクタンス成分が無視できる周波数では、バイパスコンデンサとして作用するが、無視できない高周波数帯域では、伝送・放射ノイズの抑制が不十分となる。この問題を解決するためのバイパスコンデンサの接続方法と形成方法が、例えば、特開平9−102663に示されているが、その方法では、BGAタイプのパッケージを用いたICには適用できない。
【0004】
また、特開平9−82557には、BGA内にコンデンサを形成することによりインダクタンス成分をなくし、伝送・放射ノイズを抑制できる構造が示されているが、BGAの製造に手間がかかるという問題がある。そこで、インダクタンス成分をなくして伝送・放射ノイズを抑制できる基板内蔵型コンデンサ形成方法が、特開平8−204341に示されている。
【特許文献1】特開平9−102663号公報
【特許文献2】特開平9−82557号公報
【特許文献3】特開平8−204341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の基板内蔵型コンデンサ形成方法では、図4に模式的に示すように、例えば、6層のベース基板内の第3層202と第4層203を使ってコンデンサを作成した場合、ICベアチップ54から引き出した配線156を第4層203に接続する場合には必ず第1のコンデンサ電極106を大きく迂回しなければならず、ICとしての信頼性にかけてしまうといった課題があった。
また、4層のベース基板内でコンデンサを形成するならば、配線の引き回しのために第1のコンデンサ電極106や第2のコンデンサ電極107に穴を開けなければならず、コンデンサの容量を確保することが難しくなるという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、必要な容量のコンデンサが内蔵された信頼性の高いコンデンサ内蔵基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するために、本発明に係る基板内蔵コンデンサは、複数の層を有する基板に内蔵されたコンデンサであって、上記コンデンサを構成する2つの対向電極のうちの少なくとも一方の対向電極は、上記複数の層のうちの任意の一つの層であるA層に配線領域を挟んで分離されるように形成された一対の第1電極と、上記A層以外の任意の一つの層であるB層に上記配線領域に対向するように形成された第2電極とを含んでなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成された本発明に係る基板内蔵コンデンサは、例えば、ICのパッケージに内蔵することができ、短い配線で外部端子に接続することが可能であり、配線の伝送損失の増大や放射ノイズを抑制することができるので信頼性の高いパッケージを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態の基板内蔵コンデンサについて説明する。
本実施の形態の基板内蔵コンデンサは、例えば、BGAパッケージを構成するためのベース基板5に内蔵される容量素子であり、その構成要素である対向電極がそれぞれ複数の層に渡って形成されていることを特徴とするものである。
尚、図2及び図3は、ベース基板5を用いて構成した集積回路の断面図であり、それぞれ以下のように構成される。
【0010】
図2に示す集積回路では、ベース基板5上にICベアチップがいわゆるフェイスアップボンディングされており、ICベアチップ54の端子はボンディングワイヤ51によってベース基板5上の電極に接続されて樹脂50で封止されている。ICベアチップの入出力端子は、ベース基板5内の内部配線によりIC端子52に接続される。
図3に示す集積回路では、ベース基板5上にICベアチップがいわゆるフェイスダウンで接続されており、ICベアチップ54はバンプ53によりベース基板5上の電極に接続され、ベース基板5内の内部配線によりIC端子52に接続される。ICベアチップ54は、バンプ53とともに樹脂50により封止される。
【0011】
本実施の形態の基板内蔵コンデンサは、係る集積回路において、例えば、ICベアチップ54の電源端子に接続されて高周波ノイズを除去するバイパスコンデンサとして形成されるものであり、好ましくは、ベース基板5において実装されるICベアチップ54の直下の位置に形成される。
【0012】
以下、本実施の形態の基板内蔵コンデンサについて、図5に示すBGA用の8層からなるベース基板の内部に形成された例により詳細に説明する。ここでは、ICベアチップ54がベース基板の上面にフェースダウン(フリップチップ)実装されたものとして図示している。
【0013】
本実施の形態では、ベース基板において、基板内蔵コンデンサを構成する2つの対向電極のうちの一方の対向電極は、基板内部の第3層202(A層)に形成された第1のコンデンサ電極6と第4層203(B層)に形成された第2のコンデンサ電極7とからなり、他方の対向電極は、基板内部の第5層204(C層)に形成された第3のコンデンサ電極8と第6層205(D層)に形成された第4のコンデンサ電極9とからなっている。
【0014】
また、A層において、第1のコンデンサ電極6は配線領域(第1配線領域)を挟んで2つに分離されて一対の電極となっており、B層において、第2のコンデンサ電極7は配線領域(第2配線領域)を挟んで2つに分離されて一対の電極となっている。そして、分離された第1のコンデンサ電極6の1つはB層の第2配線領域に対向し、分離された第2のコンデンサ電極7の1つはA層における第1配線領域に対向している。そして、第1のコンデンサ電極6と第2のコンデンサ電極7は互いに一部で対向して重なるように形成されて、その重なった部分でビアホールを用いて接続されることにより一方の対向電極が構成される。
【0015】
さらに、C層に形成された他方の対向電極の一部を構成する第3のコンデンサ電極8は、2つに分離されてそれぞれ第1のコンデンサ電極6に対向するように形成され、D層に形成された第4のコンデンサ電極9は2つに分離されてそれぞれ第2のコンデンサ電極7に対向するように形成される。すなわち、C層において、第3のコンデンサ電極8は配線領域(第3配線領域)を挟んで2つに分離されており、D層において、第4のコンデンサ電極9は配線領域(第4配線領域)を挟んで2つに分離されている。そして、第3のコンデンサ電極8と第4のコンデンサ電極9は互いに一部で対向して重なるように形成されて、その重なった部分でビアホールを用いて接続されることにより他方の対向電極が構成される。
【0016】
尚、第1のコンデンサ電極6と第2のコンデンサ電極7からなる一方の対向電極と、第3のコンデンサ電極8と第4のコンデンサ電極9からなる他方の対向電極の間には、いうまでもなく基板を構成する絶縁体からなる誘電体が挟まれており、その誘電体の誘電率と2つの対向電極の対向面積とによって基板内蔵コンデンサの静電容量が決定される。
【0017】
このように構成された基板内蔵コンデンサにおいて、例えば、一方の対向電極は、図5に示すように、第2のコンデンサ電極7のある端部から引き出され、第4層203、第5層204、第6層205、第7層206を貫通するビアホールを用いて形成された配線57を介して第8層207のコンデンサ端子10に接続される。
また、他方の対向電極は、例えば、図5に示すように、第4のコンデンサ電極9のある端部から引き出され、第6層205及び第7層206を貫通するビアホールを用いて形成された配線58を介して第8層207のコンデンサ端子11に接続される。
【0018】
以上のように、内部に基板内蔵コンデンサを構成する対向電極が形成された多層基板においては、ICベアチップ54の端子のうち、外側に位置する端子は第1層200の配線55により外側に引き出され、第2から第7層を貫通するビアホールを介して第8層207に形成された所定の端子に接続される。
【0019】
また、ICベアチップ54の端子のうち内側に位置する端子(例えば、図5に示すICベアチップ54の端子60)は、56の符号を付して示す配線のように、第2層201を貫通するビアホールにより端子60の直下の位置で第1配線領域に形成された配線に接続されて第2コンデンサ電極7及び第4コンデンサ電極9を迂回するように引き出されて第3層202、第4層203、第5層204及び第6層205を貫通するビアホールにより第7層206に形成された配線に接続され、その配線と第7層206を貫通するビアホールを介して第8層207の端子61に接続される。
【0020】
以上のように構成された本実施の形態の基板内蔵コンデンサは、その容量を構成するための対向電極をそれぞれ複数の層に渡って形成しているので、必要な容量を確保するために必要な対向面積を確保しつつ、その対向電極に制約されることなく、比較的短い配線長でかつ容易にICベアチップ54の端子と基板の端子とを接続できる。
従って、従来例のように比較的大きな面積のコンデンサ電極を迂回して配線を長く引き回す必要がないので、配線長が長くなることに起因して生じる伝送損失の増加及び放射ノイズの発生を抑制することができる。
【0021】
また、本実施の形態では、ICベアチップ54の端子と基板内蔵コンデンサ間を基板内部で接続することなく、それぞれ基板の外部端子に接続しているので、ICベアチップ54のどの端子を基板内蔵コンデンサに接続するか、外部で選択できる。
これによって、ベース基板5を用いて構成された集積回路を実装するプリント基板の配線によりプリント基板上において基板内蔵コンデンサの接続を選択又は変更することが可能になる。
【0022】
尚、本実施の形態では、ICベアチップをフェイスダウンで接続された例で説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、ICベアチップをフェイスアップで実装した場合であっても同様に適用できる。
また、ベース基板が8層の場合を例にとって説明したが、8層に限定されるものではない。
また、本実施の形態では、2つの対向電極をそれぞれ相隣り合う層に形成するようにしたが、本発明はこれに限られるものではなく、2つの対向電極を任意の層に形成してもよい。
【0023】
またさらに、本実施の形態では、2つの対向電極をそれぞれ複数の層に渡って形成するようにしたが、本発明はこれに限られるものではなく、いずれか一方の対向電極を複数層に渡って形成するようにしてもよい。
【0024】
また、本実施の形態では、一方の対向電極をA層に形成した一対の第1のコンデンサ電極6とB層に形成した一対の第2のコンデンサ電極7によって構成した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、一方の対向電極が、A層及び/又はB層に、一対の第1のコンデンサ電極6及び/又は一対の第2のコンデンサ電極7に加えてさらに、それぞれ配線領域を挟んで分離されてなる一対又は二対以上の電極を含んでいてもよい。尚、他方の対向電極についても同様である。
【0025】
また、本実施の形態では、ベース基板に1つの基板内蔵コンデンサを形成した例により説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、ベース基板に上述のように構成された基板内蔵コンデンサを複数個形成することができ、その複数の基板内蔵コンデンサをプリント基板側の配線により組み合わせることにより、コンデンサの容量を変更することも可能になる。
【0026】
また、本実施の形態では、2端子の基板内蔵コンデンサの例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、3端子コンデンサを構成することもでき、より効果的に伝送損失を抑え、放射ノイズをさらに抑制することも可能である。
【0027】
また、本発明では、ベース基板を構成する絶縁体として、種々の材料を使用することができ、例えば、ガラスエポキシ、ガラス熱硬化PPO樹脂などの高誘電率材料を用いることにより、より小さい面積又は体積でより静電容量の高い基板内蔵コンデンサを構成することが可能であり、より伝送特性を良好にし、放射ノイズを抑制することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明したように、本発明による基板内蔵コンデンサは、ICパッケージ内にコンデンサを形成することが可能になり、効率よく伝送・放射ノイズを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来例の基板上にICとバイパスコンデンサを実装した従来例の斜視図である。
【図2】ICベアチップがフェイスアップ実装されたBGAパッケージタイプの集積回路の断面図である。
【図3】ICベアチップがフェイスダウン実装されたBGAタイプの集積回路の断面図である。
【図4】従来の基板内蔵コンデンサの構成を示す分解斜視図である。
【図5】本発明に係る実施の形態の基板内蔵コンデンサの構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
5 ベース基板、6 第1のコンデンサ電極、7 第2のコンデンサ電極、8 第3のコンデンサ電極、9 第4のコンデンサ電極、10 コンデンサ端子、12 ビアホール、50 樹脂、51 ワイヤボンディング、52 IC端子、53 バンプ、54 ICベアチップ、55,56,57,58 配線、200 第1層、201 第2層、202 第3層、203 第4層、204 第5層、205 第6層、206 第7層、207 第8層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層を有する基板に内蔵されたコンデンサであって、
上記コンデンサを構成する2つの対向電極のうちの少なくとも一方の対向電極は、
上記複数の層のうちの任意の一つの層であるA層に配線領域を挟んで分離されるように形成された一対の第1電極と、上記複数の層のうちの上記A層以外の任意の一つの層であるB層に上記配線領域に対向するように形成された第2電極とを含んでなることを特徴とする基板内蔵コンデンサ。
【請求項2】
上記一対の第1電極はそれぞれその一部で上記第2電極に対向しており、その対向する部分でそれぞれ上記第2電極とビアホールを用いて接続されている請求項1記載の基板内蔵コンデンサ。
【請求項3】
上記2つの対向電極のうちの他方の対向電極は、上記一対の第1電極にそれぞれ対向するように上記A層と上記B層以外の任意の一つの層であるC層に配線領域を挟んで分離されるように形成された一対の第3電極と、上記第2電極と対向するように上記A層、上記B層及び上記C層以外の任意の一つの層であるD層に形成された第4電極とを含んでなる請求項1又は2記載の基板内蔵コンデンサ。
【請求項4】
上記一対の第3電極はそれぞれその一部で上記第4電極に対向しており、その対向する部分でそれぞれ上記第4電極とビアホールを用いて接続されている請求項3記載の基板内蔵コンデンサ。
【請求項5】
上記B層は上記A層と上記C層の間に位置し、上記C層は上記B層と上記D層の間に位置する請求項3又は4記載の基板内蔵コンデンサ。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の基板内蔵コンデンサを複数個含む基板。
【請求項7】
上記配線領域に上記コンデンサと電気的に分離された配線を形成した請求項6記載の基板。
【請求項8】
上記対向電極が上記基板表面の外部接続用端子に接続された請求項6又は7記載の基板。
【請求項9】
上記一方の対向電極は、上記一対の電極とは別にさらに、それぞれ配線領域を挟んで分離されている一対又は二対以上の電極を含む請求項1又は3に記載の基板内蔵コンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−32507(P2006−32507A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206730(P2004−206730)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】