説明

基板処理装置

基板の表面を処理するために必要な反応性物質やキャリアガスなどを効率的に利用するとともに、ガスの移送のための設備を簡略化し、省エネルギー化を図ることができる基板処理装置を提供する。反応性物質を含むプロセスガスを供給するガス供給源12と、ガス供給源12に接続されプロセスガスを貯留するリザーバタンク14と、内部に配置された基板をプロセスガスに曝露する反応器10と、反応器10の内部のプロセスガスをリザーバタンク14に導入する第1の循環配管38と、リザーバタンク14内のプロセスガスの少なくとも一部を反応器10に導入する第2の循環配管42と、第2の循環配管42に設置され反応器10に導入されるプロセスガスの量を調整する流量調整バルブ44とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に係り、特に基板の表面を反応性物質に曝露して基板の表面の処理を行う基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などのガスを用いた基板の表面処理方法においては、反応性物質を含むプロセスガスに基板の表面を比較的長時間曝露し、ドープなどの表面処理を行っている。
反応後もプロセスガスが変質しない場合や、変質の有無にかかわらずプロセスガスが再利用可能である場合には、プロセスガスを再利用する試みがなされている。このようなプロセスガスの再利用は、基板そのものや人体、環境への有害性を低減する上でも、コストを低減する上でも好ましいものである。
【0003】
また、排出ガスを真空ポンプの軸シールのためのシールガスとして再利用する技術も知られている(例えば、特許文献1参照)が、この技術は、ガスに含まれる反応性物質の有効利用という点では十分なものではない。更に、真空チャンバから排気されたガスを真空チャンバに再循環させる半導体製造装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。この装置によれば、一定量のガスを流し続けるプロセスには対応できるが、断続的にガスを流す場合には対応できないという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2000−9037号公報
【特許文献2】特開平9−251981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、基板の表面を処理するために必要な反応性物質やキャリアガスなどを効率的に利用するとともに、ガスの移送のための設備を簡略化し、省エネルギー化を図ることができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような従来技術における問題点を解決するために、本発明の第1の態様は、反応性物質を含むプロセスガスを供給するガス供給源と、上記ガス供給源に接続され上記プロセスガスを貯留するリザーバタンクと、内部に配置された基板を上記プロセスガスに曝露する反応器と、上記反応器の内部のプロセスガスを上記リザーバタンクに導入する第1の循環配管と、上記リザーバタンク内のプロセスガスの少なくとも一部を上記反応器に導入する第2の循環配管と、上記第2の循環配管に設置され上記反応器に導入されるプロセスガスの量を調整する流量調整バルブとを備えたことを特徴とする基板処理装置である。ここで、「反応性」とは、化学的な反応だけでなく、物質の付着などにより基板の表面が元の状態と異なる状態になることも含んでいる。
【0007】
このような構成により、基板の表面を処理するために必要な反応性物質を含むプロセスガスを循環させることができるので、プロセスガスを再利用して効率的に利用することができる。また、ガスの移送のための設備を簡略化し、省エネルギー化を図ることができる。更に、排気されたガスをリザーバタンクに一旦溜めておき、必要な量のガスを必要なときに再利用できるので、本発明に係る基板処理装置は断続的にガスを流す場合にも対応することができる。
【0008】
本発明の好ましい一態様は、上記反応器から上記プロセスガスを吸引し、該プロセスガスを上記第1の循環配管を介して上記リザーバタンクに導入するポンプを更に備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上述したように、本発明によれば、基板の表面を処理するために必要な反応性物質を含むプロセスガスを循環させることができるので、プロセスガスを再利用して効率的に利用することができる。また、ガスの移送のための設備を簡略化し、省エネルギー化を図ることができる。
この出願は、日本国で2003年7月4日に出願された特願2003−191756号に基づいており、その内容は本出願の内容として、その一部を形成する。
また、本発明は以下の詳細な説明によりさらに完全に理解できるであろう。本発明のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明により明らかとなろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の実例は、本発明の望ましい実施の形態であり、説明の目的のためにのみ記載されているものである。この詳細な説明から、種々の変更、改変が、本発明の精神と範囲内で、当業者にとって明らかであるからである。
出願人は、記載された実施の形態のいずれをも公衆に献上する意図はなく、開示された改変、代替案のうち、特許請求の範囲内に文言上含まれないかもしれないものも、均等論下での発明の一部とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る基板処理装置の実施形態について図1を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態における基板処理装置の全体構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態における基板処理装置は、処理する基板を内部に配置する反応器10と、反応性物質を含む第1のプロセスガスを反応器10に供給する第1のガス供給源12と、第1のガス供給源12に接続されたリザーバタンク14と、第2のプロセスガスを反応器10に供給する第2のガス供給源16と、バルブ18を介して反応器10に接続されたターボ分子ポンプ20と、ターボ分子ポンプ20の下流側に配置されたドライポンプ22とを備えている。
【0011】
リザーバタンク14には、配管24を介してドライポンプ26が接続されており、このドライポンプ26によってリザーバタンク14の内部が減圧されるようになっている。リザーバタンク14とドライポンプ26とを接続する配管24にはバルブ28が配置されている。また、リザーバタンク14と第1のガス供給源12とを接続する配管30にはバルブ32が配置されている。
【0012】
また、反応器10には、バルブ34を介して加圧ポンプ36が接続されている。この加圧ポンプ36は、(第1の)循環配管38を介してリザーバタンク14に接続されており、この循環配管38にはバルブ40が配置されている。また、リザーバタンク14は、(第2の)循環配管42を介して反応器10に接続されており、この循環配管42には、反応器10に導入される第1のプロセスガスの量を調節する流量調整バルブ44が配置されている。循環配管38により反応器10の内部のプロセスガスがリザーバタンク14に導入され、循環配管42によりリザーバタンク14内のプロセスガスの少なくとも一部が反応器10に導入されるようになっている。また、第2のガス供給源16は、配管46を介して反応器10に接続されており、この配管46には、反応器10に導入される第2のプロセスガスの量を調節する流量調整バルブ48が配置されている。
【0013】
次に、上述の構成の基板処理装置を用いて基板を処理する工程について説明する。まず、第1のガス供給源12とリザーバタンク14との間のバルブ32及びドライポンプ26とリザーバタンク14との間のバルブ28を開き、リザーバタンク14と反応器10との間の流量調整バルブ44及び加圧ポンプ36とリザーバタンク14との間のバルブ40を閉じる。この状態で、ドライポンプ26を駆動してリザーバタンク14の内部を所定の圧力Prまで減圧し、第1のガス供給源12から第1のプロセスガスをリザーバタンク14内に導入し貯留する。
【0014】
本実施形態では、リザーバタンク14の内部を減圧するためにドライポンプ26を用いているが、ドライポンプ26を用いずに、バルブ18及び流量調整バルブ44、あるいはバルブ18,34,40を開いた状態で、ターボ分子ポンプ20及びドライポンプ22を駆動してリザーバタンク14の内部を減圧してもよい。また、第1のガス供給源(ボンベ)12の内部が十分高圧であれば、ドライポンプ22,26やターボ分子ポンプ20を用いなくても、リザーバタンク14の内部に第1のプロセスガスを導入することができる。また、本実施形態では、第1のガス供給源12から反応性物質を含むプロセスガスを供給しているが、第1のガス供給源12からキャリアガスを供給し、このキャリアガスと反応性物質とを第1のガス供給源12の下流側で混合して第1のプロセスガスとしてもよい。
【0015】
その後、ターボ分子ポンプ20の上流側のバルブ18を開き、ターボ分子ポンプ20及びドライポンプ22を駆動して、反応器10の内部をリザーバタンク14の内部圧力Pr以下に減圧する。そして、バルブ18を閉じることにより反応器10の内部に密閉空間を形成する。
【0016】
この状態で、加圧ポンプ36の上流側のバルブ34、加圧ポンプ36とリザーバタンク14との間のバルブ40、及びリザーバタンク14と反応器10との間の流量調整バルブ44を開き、その他のバルブを閉じることで、高圧側のリザーバタンク14内の第1のプロセスガスが低圧側の反応器10に流れ込み、反応器10内に第1のプロセスガスが導入される。このとき、流量調整バルブ44の開度を制御することにより、反応器10内に導入されるプロセスガスの量を調整する。
【0017】
反応器10の内部に配置された基板は、反応器10の内部に導入された第1のプロセスガスに曝露され、基板の表面には、第1のプロセスガスに含まれる反応性物質が付着する(付着工程)。ここで、反応器10、加圧ポンプ36、循環配管38、リザーバタンク14、循環配管42によって第1のプロセスガスの循環系が形成されており、加圧ポンプ36を駆動して反応器10とリザーバタンク14との間に圧力差を生じさせることにより、第1のプロセスガスを連続的に循環させることができる。このとき、バルブ40の開閉を行うことで、第1のプロセスガスを断続的に循環させてもよい。
【0018】
本実施形態では、加圧ポンプ36を用いて第1のプロセスガスを循環させているが、ポンプ以外の循環機構を用いて第1のプロセスガスを循環させてもよい。また、プロセスガス中の好ましくない物質(凝集物など)を除去する除去装置(例えばフィルターなど)を循環配管38又は42に設けてもよい。
【0019】
このように、本実施形態では、第1のガス供給源12からの第1のプロセスガスが上述した循環系により再利用される。したがって、プロセスガスを再利用して効率的に利用することができ、また、ガスの移送のための設備を簡略化し、省エネルギー化を図ることができる。
【0020】
第1のプロセスガスの再利用が限界に達したとき、あるいは何らかの原因で第1のプロセスガスが再利用に適しないものとなったときには、ドライポンプ26とリザーバタンク14との間のバルブ28を開き、ドライポンプ26を駆動してプロセスガスを外部に排出する。
【0021】
一方、第2のプロセスガスを用いる場合には、第2のガス供給源16から流量調整バルブ48を介して第2のプロセスガスを反応器10に導入し、反応器10内で反応を行う。その後、流量調整バルブ48を閉じ、ターボ分子ポンプ20の上流側のバルブ18を開いて、ターボ分子ポンプ20及びドライポンプ22を駆動することにより、反応後の第2のプロセスガスを除害装置(図示せず)を通過させた後、装置の外部に排出する。
【0022】
一連の処理が終了した後、処理後の基板を反応器10から取り出し、次の基板を反応器10の内部に配置して、上述した処理が繰り返される。なお、反応器10には、基板を1枚ずつ導入してもよいし、数枚の基板をセットにして導入してもよい。
【0023】
本実施形態では、第1のガス供給源12と第2のガス供給源16とを設けた例を説明したが、第1のガス供給源12だけを設けてもよく、あるいは多種類のガス供給源を設けてもよい。また、同様に、リザーバタンクや循環配管、ポンプの数は図示のものに限られるわけではない。更に、基板処理装置の運転に必要な種々の測定器や制御装置を必要に応じて付設することもできる。
【0024】
本発明は、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition)に応用するのに適する。この方法では、基板の表面を反応性物質に曝露して超薄層を形成する処理を繰り返して、基板の表面を処理する。この原子層堆積法によれば、原子数個の厚さ(ナノメートル)のレベルの超薄層を基板の表面上に数十〜数百層積層することができ、微妙な膜厚を自在に調整することができる。この原子層堆積法は、反応性物質を含むガスを大量に使用するが、1回の反応では、わずかな反応性物質が基板の目的領域に付着するだけで、ほとんどの反応物質は未反応のまま残ってしまう。本発明によれば、未反応の反応性物質を十分に含むガスそのまま外部に排出することなく利用することができる。このため、反応性物質やキャリアガスなどが無駄に使用されることがなく、ガスの移送に用いるポンプ装置などの設備が大型化することを避けることができ、消費されるエネルギーも抑制することができる。このような実施の形態では、第1のプロセスガスとして、複数の成膜生成用ガスが用いられる。例えば窒化ケイ素の膜を生成する場合は、シラン系ガスとアンモニア系ガスを同時に或いは交互に流す。交互に流す場合は、その分もう一つのリザーバータンクを設けるとよい。
【0025】
第2のプロセスガスとしては、一方の成膜生成用ガスを反応器に入れた後、リザーバタンクで第1のプロセスガスと合流させて混合ガス濃度を調整してもよいし、循環を必要としない成膜後の反応器10をクリーニングするためのハロゲン系クリーニングガスを流してもよい。特に、成膜生成用ガスとクリーニングガスとの反応で副生成物が発生してしまう場合は、第2のプロセスガス(クリーニングガス)をリザーバタンクを迂回して流すことは有効である。
【0026】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態における基板処理装置の全体構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0028】
10 反応器
12 第1のガス供給源
14 リザーバタンク
16 第2のガス供給源
18,28,32,34,40 バルブ
20 ターボ分子ポンプ
22,26 ドライポンプ
24,30,46 配管
36 加圧ポンプ
38 第1の循環配管
42 第2の循環配管
44,48 流量調整バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性物質を含むプロセスガスを供給するガス供給源と;
前記ガス供給源に接続され前記プロセスガスを貯留するリザーバタンクと;
内部に配置された基板を前記プロセスガスに曝露する反応器と;
前記反応器の内部のプロセスガスを前記リザーバタンクに導入する第1の循環配管と;
前記リザーバタンク内のプロセスガスの少なくとも一部を前記反応器に導入する第2の循環配管と;
前記第2の循環配管に設置され前記反応器に導入されるプロセスガスの量を調整する流量調整バルブとを備えた;
基板処理装置。
【請求項2】
前記反応器から前記プロセスガスを吸引し、該プロセスガスを前記第1の循環配管を介して前記リザーバタンクに導入するポンプを更に備えた;
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記反応器に前記第1のプロセスガスとは別の反応物質を含む第2のプロセスガスを、前記リザーバを迂回して供給する第2のガス供給源を備えた;
請求項1又は請求項2に記載の基板処理装置。

【図1】
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【公表番号】特表2007−519216(P2007−519216A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516858(P2006−516858)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009577
【国際公開番号】WO2005/004215
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】