説明

基板処理装置

【課題】複数種類の処理ガスの混蝕を回避しつつ、ガス排気が正しく開始されなかった場合には直ちにそのことを認識可能にし、これにより排気完了までに多くの時間を要するのを抑制できるようにする。
【解決手段】基板を収容する処理室と、混蝕を避けるべき複数種類の処理ガスを当該処理ガスの流路である配管を通じて処理室内へ供給するガス供給系と、処理室内および配管内のガスを排気するガス排気系と、を有した基板処理装置において、配管内に滞留するガスの状態をガス残留状態、排気中状態、排気完了状態の少なくとも三段階で表示部に表示させる制御部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスでは、多種多様なガスを使用する。そのため、例えば可燃性ガスと支燃性ガスのように、組み合わせるガス種類によっては混蝕発火の危険性がある点に留意する必要がある。このことから、複数種類の処理ガスを使用する基板処理装置では、以下に述べる排気シーケンス制御によって、当該複数種類の処理ガスの混蝕を回避することが一般的に行われている。すなわち、基板を収容した処理室内へ処理ガスを供給した後、その処理室内およびこれに連なる配管内に滞留するガスの排気を開始すると、その排気開始から一定時間が経過するまでは排気動作を継続して行う。そして、一定時間が経過して処理室内および配管内に残存するガスがなくなったら、当該ガスの排気が完了した旨の情報表示をして、別種類の処理ガスの処理室内への供給を開始可能にする。このような排気シーケンスを、各種の処理ガスについて繰り返し行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した排気シーケンス制御を行う基板処理装置において、処理室内および配管内からの滞留ガスの排気は、当該配管におけるバルブ開閉状態の切り替えが正しく行われたことを契機にして開始される。しかしながら、バルブ開閉状態の切り替えは、例えば作業員がマニュアル操作で実行した場合には、作業ミスにより誤って行われるおそれがある。その場合に、作業員は、操作直後に誤りに気付くことは稀で、操作から一定時間が経過しても排気完了の情報表示がされないことによって初めて誤りに気付くことが殆どである。したがって、バルブ開閉状態の切り替えが誤って行われると、作業員がそのことに気付くのが遅れる分、排気シーケンスが完了するまでに多くの時間を要することになる。
【0004】
本発明は、複数種類の処理ガスの混蝕を回避しつつ、ガス排気が正しく開始されなかった場合には直ちにそのことを認識可能にし、これにより排気完了までに多くの時間を要するのを抑制できる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、基板を収容する処理室と、混蝕を避けるべき複数種類の処理ガスを当該処理ガスの流路である配管を通じて前記処理室内へ供給するガス供給系と、前記処理室内および前記配管内のガスを排気するガス排気系と、を有し、前記配管内に滞留するガスの状態をガス残留状態、排気中状態、排気完了状態の少なくとも三段階で表示部に表示させる制御部を設けたことを特徴とする基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る基板処理装置によれば、ガス排気が正しく開始されないと、直ちにそのことを認識できる。したがって、排気完了までに多くの時間を要してしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置が備える処理炉の概略構成図であり、(a)は処理炉の縦断面概略図を、(b)は処理炉の横断面概略図をそれぞれ示す図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる基板処理工程の手順を示すフロー図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる基板処理工程のプロセスシーケンスを示すチャート図である。
【図5】本発明の参考例となる従来構成による排気シーケンス制御のラダープログラム概要を示す模式図である。
【図6】本発明の参考例となる従来構成による排気シーケンス制御の一具体例を示す模式図であり、(a)は第1処理ガスの供給状態を示す図、(b)は正常設定による第1処理ガスの排気状態を示す図、(c)は異常設定による第1処理ガスの排気状態を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる排気シーケンス制御のラダープログラム概要を示す模式図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる排気シーケンス制御の一具体例を示す模式図であり、(a)は第1処理ガスの供給状態を示す図、(b)は正常設定による第1処理ガスの排気状態を示す図、(c)は異常設定による第1処理ガスの排気状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
まず、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置101の構成例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の概略構成図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態にかかる基板処理装置101は、筐体111を備えている。シリコン等からなるウエハ(基板)200を筐体111内外へ搬送するには、複数のウエハ200を収納するウエハキャリア(基板収納容器)としてのカセット110が使用される。筐体111内側の前方(図中の右側)には、カセットステージ(基板収納容器受渡し台)114が設けられている。カセット110は、図示しない工程内搬送装置によってカセットステージ114上に載置され、また、カセットステージ114上から筐体111外へ搬出されるように構成されている。
【0011】
カセット110は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させ、カセット110内のウエハ200を水平姿勢とさせ、カセット110のウエハ出し入れ口を筐体111内の後方を向かせることが可能なように構成されている。
【0012】
筐体111内の前後方向の略中央部には、カセット棚(基板収納容器載置棚)105が設置されている。カセット棚105には、複数段、複数列にて複数個のカセット110が保管されるように構成されている。カセット棚105には、後述するウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。また、カセットステージ114の上方には、予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0013】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置(基板収納容器搬送装置)118が設けられている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収納容器昇降機構)118aと、カセット110を保持したまま水平移動可能な搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収納容器搬送機構)118bと、を備えている。これらカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連携動作により、カセットステージ114、カセット棚105、
予備カセット棚107、移載棚123の間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0014】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構(基板移載機構)125が設けられている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、を備えている。なお、ウエハ移載装置125aは、ウエハ200を水平姿勢で保持するツイーザ(基板移載用治具)125cを備えている。これらウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連携動作により、ウエハ200を移載棚123上のカセット110内からピックアップして後述するボート(基板支持部材)217へ装填(チャージング)したり、ウエハ200をボート217から脱装(ディスチャージング)して移載棚123上のカセット110内へ収納したりするように構成されている。
【0015】
筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部には開口が設けられ、かかる開口は炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。なお、処理炉202の構成については後述する。
【0016】
処理炉202の下方には、ボート217を昇降させて処理炉202内外へ搬送する昇降機構としてのボートエレベータ(基板支持部材昇降機構)115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台には、連結具としてのアーム128が設けられている。アーム128上には、ボート217を垂直に支持するとともに、ボートエレベータ115によりボート217が上昇したときに処理炉202の下端部を気密に閉塞する蓋体としてのシールキャップ219が水平姿勢で設けられている。
【0017】
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ200を、水平姿勢で、かつその中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に保持するように構成されている。ボート217の詳細な構成については後述する。
【0018】
カセット棚105の上方には、供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット134aが設けられている。クリーンユニット134aは、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0019】
また、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびボートエレベータ115側と反対側である筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給フアンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット(図示せず)が設置されている。図示しない前記クリーンユニットから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a及びボート217の周囲を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるように構成されている。
【0020】
(2)基板処理装置の動作
次に、本実施形態にかかる基板処理装置101の動作について説明する。
【0021】
まず、カセット110が、図示しない工程内搬送装置によって、ウエハ200が垂直姿勢となりカセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させられる。その結果、カセット110内のウエハ200は水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口は筐体111内の後方を向く。
【0022】
カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へ自動的に搬送されて受け渡されて一時的に保管された後、カセット棚105又は予備カセット棚107から移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0023】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200は、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cによって、ウエハ出し入れ口を通じてカセット110からピックアップされ、ウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作によって移載室124の後方にあるボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載機構125は、カセット110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0024】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、ウエハ200群を保持したボート217が処理炉202内へ搬入(ローディング)される。ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理が実施される。かかる処理については後述する。処理後は、ウエハ200およびカセット110は、上述の手順とは逆の手順で筐体111の外部へ払出される。
【0025】
(3)処理炉の構成
続いて、本発明の一実施形態にかかる処理炉202の構成について、図面を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置が備える処理炉の概略構成図であり、(a)は処理炉の縦断面概略図を、(b)は図2(a)に示す処理炉の横断面概略図をそれぞれ示している。
【0026】
(処理室)
本発明の一実施形態にかかる処理炉202は、反応容器(処理容器)を構成する反応管203を有している。反応管203は、例えば石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性を有する非金属材料から構成され、上端部が閉塞され、下端部が開放された円筒形状となっている。反応管203の下端部は、上述したボートエレベータ115が上昇した際に、例えばステンレス等の金属からなり円盤状に形成されたシールキャップ219により気密に封止されるように構成されている。反応管203の下端部とシールキャップ219との間には、処理室201内を気密に封止するOリングなどの封止部材220が設けられている。
【0027】
反応管203の内部には、基板としてのウエハ200が収容される処理室201が形成されている。処理室201内には、基板保持具としてのボート217が下方から挿入されるように構成されている。反応管203の内径は、ウエハ200を装填したボート217の最大外形よりも大きくなるように構成されている。
【0028】
ボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料によって形成され、複数枚(例えば75枚から100枚)のウエハ200を、略水平状態で所定の隙間(基板ピッチ間隔)をもって多段に保持するように構成されている。ボート217は、ボート217からの熱伝導を遮断する断熱キャップ218上に搭載されている。断熱キャップ218は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料によって形成され、回転軸255により下方から支持されている。回転軸255は、処理室201内の気密を保持しつつ、シールキャップ219の中心部を貫通するように設けられている。シールキャップ219の下方には、回転軸255を回転させる回転機構267が設けられている。回転機構267が回転軸255を回転させることで、処理室201内の気密を保持したまま、複数のウエハ200を搭載した
ボート217を回転させ得るように構成されている。
【0029】
反応管203の外周には、反応管203と同心円状に加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207が設けられている。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0030】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263は、垂直部と水平部とを有するL字形状に構成されている。温度センサ263の垂直部は、反応管203の内壁を沿うように鉛直方向に配設されている。温度センサ263で検出された温度情報に基づきヒータ207の加熱温度を調整することで、処理室201内が所望の温度分布となるように構成されている。
【0031】
(気化ガス供給系)
反応管203には、気化ガス導入部としての気化ガスノズル233aが設けられている。気化ガスノズル233aは、垂直部と水平部とを有するL字形状に構成されている。気化ガスノズル233aの垂直部は、反応管203の内壁を沿うように鉛直方向に配設されている。気化ガスノズル233aの垂直部側面には、気化ガス供給孔248aが鉛直方向に複数設けられている。気化ガス供給孔248aの開口径は、それぞれ下部から上部にわたって同一とされていてもよく、下部から上部にわたって徐々に大きくされていてもよい。気化ガスノズル233aの水平部は、反応管203の側壁を貫通するように設けられている。
【0032】
反応管203の側壁から突出した気化ガスノズル233aの水平端部(上流側)には、気化ガスを処理室201内へ供給する気化ガス供給管240aの下流端が接続されている。気化ガス供給管240aには、上流側から順に、開閉弁である開閉バルブ543、気化器(気化装置)500、流量制御器であるマスフローコントローラ(MFC)241a、開閉弁である開閉バルブ243aが設けられている。気化器260は、図示せぬ液体原料供給源から開閉バルブ543を介して供給される液体原料を受け取ると、これを所定温度に加熱して気化させ、気化ガス(原料ガス)を生成するように構成されている。マスフローコントローラ(MFC)241aは、気化ガスの流量をモニタして、気化器500での気化量のフィードバック制御を可能にするように構成されている。また、開閉バルブ243aを開けることにより、気化器500にて生成された気化ガスが処理室201内へ供給されるように構成されている。
【0033】
主に、気化ガスノズル233a、気化ガス供給管240a、気化器500、マスフローコントローラ(MFC)241a、開閉バルブ243aにより、本実施形態に係るガス供給系の一つである気化ガス供給系が構成されている。気化ガス供給系によって、例えば、シリコン原料ガス、すなわちシリコン(Si)を含むガス(シリコン含有ガス)が、処理室201内に供給される。シリコン含有ガスとしては、例えばヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCD)ガスを用いることができる。なお、シリコン原料ガスは、常温常圧で固体、液体、及び気体のいずれであっても良いが、ここでは液体として説明する。シリコン原料ガスが常温常圧で気体の場合は気化器500を設ける必要はない。
【0034】
(反応ガス供給系)
反応管203には、反応ガス導入部としての反応ガスノズル233bが設けられている。反応ガスノズル233bは、垂直部と水平部とを有するL字形状に構成されている。反応ガスノズル233bの垂直部は、反応管203の内壁を沿うように鉛直方向に配設されている。反応ガスノズル233bの垂直部側面には、反応ガス供給孔248bが鉛直方向に複数設けられている。反応ガス供給孔248bの開口径は、それぞれ下部から上部にわたって同一とされていてもよく、下部から上部にわたって徐々に大きくされていてもよい
。反応ガスノズル233bの水平部は、反応管203の側壁を貫通するように設けられている。
【0035】
反応管203の側壁から突出した反応ガスノズル233bの水平端部(上流側)には、反応ガスを処理室201内へ供給する反応ガス供給管240bの下流端が接続されている。反応ガス供給管240bの上流側には、第1の処理ガス供給管(以下、単に「第1供給管」という。)240cの下流端と、第2の処理ガス供給管(以下、単に「第2供給管」という。)240dの下流端が接続されている。すなわち、反応ガス供給管240bの上流側は、第1供給管240cの下流端と第2供給管240dの下流端との両方に繋がっている。
【0036】
第1供給管240cには、上流側から順に、開閉弁である開閉バルブ243c、流量制御器であるマスフローコントローラ(MFC)241c、開閉弁である開閉バルブ244cが設けられている。第1供給管240cの上流端には図示せぬ第1処理ガス供給源が接続されており、開閉バルブ243cおよび開閉バルブ244cを開けることにより、第1処理ガス供給源からの第1処理ガスが、第1供給管240cおよび反応ガス供給管240bを介して処理室201内へ供給されるように構成されている。なお、処理室201内への第1処理ガスの供給流量は、マスフローコントローラ(MFC)241cによって制御可能に構成されている。
【0037】
主に、反応ガスノズル233b、反応ガス供給管240b、第1供給管240c、開閉バルブ243c、マスフローコントローラ(MFC)241c、開閉バルブ244cにより、本実施形態に係るガス供給系の一つである第1処理ガス供給系が構成されている。第1処理ガス供給系によって、例えば窒素(N)を含むガス(窒素含有ガス)が、第1処理ガスとして処理室201内に供給される。窒素含有ガスとしては、例えばアンモニア(NH)ガスを用いることができる。
【0038】
第2供給管240dには、上流側から順に、開閉弁である開閉バルブ243d、流量制御器であるマスフローコントローラ(MFC)241d、開閉弁である開閉バルブ244dが設けられている。第2供給管240dの上流端には図示せぬ第2処理ガス供給源が接続されており、開閉バルブ243dおよび開閉バルブ244dを開けることにより、第2処理ガス供給源からの第2処理ガスが、第2供給管240dおよび反応ガス供給管240bを介して処理室201内へ供給されるように構成されている。なお、処理室201内への第2処理ガスの供給流量は、マスフローコントローラ(MFC)241dによって制御可能に構成されている。
【0039】
主に、反応ガスノズル233b、反応ガス供給管240b、第2供給管240d、開閉バルブ243d、マスフローコントローラ(MFC)241d、開閉バルブ244dにより、本実施形態に係るガス供給系の一つである第2処理ガス供給系が構成されている。第2処理ガス供給系によって、例えば酸素(O)を含むガス(酸素含有ガス)が、第2処理ガスとして処理室201内に供給される。酸素含有ガスとしては、例えば酸素(O)ガスを用いることができる。
【0040】
(キャリアガス供給系)
第1供給管240cにおけるマスフローコントローラ(MFC)241cと開閉バルブ244cの間には、キャリアガス供給管240eの下流端が接続されている。また、第2供給管240dにおけるマスフローコントローラ(MFC)241dと開閉バルブ244dの間には、キャリアガス供給管240fの下流端が接続されている。これらキャリアガス供給管240eおよびキャリアガス供給管240fの上流端は、いずれも、キャリアガスとしてのヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、窒素(N)等の不
活性ガスを供給する図示しないキャリアガス供給源に接続されている。
【0041】
キャリアガス供給管240eには、開閉弁である開閉バルブ243eが設けられている。開閉バルブ243eを開けることにより第1供給管240c内にキャリアガスが供給され、第1処理ガスとキャリアガスとの混合ガスが第1供給管240cおよび反応ガス供給管240bを介して処理室201内に供給されるように構成されている。
【0042】
キャリアガス供給管240fには、開閉弁である開閉バルブ243fが設けられている。開閉バルブ243fを開けることにより第2供給管240d内にキャリアガスが供給され、第2処理ガスとキャリアガスとの混合ガスが第2供給管240dおよび反応ガス供給管240bを介して処理室201内に供給されるように構成されている。
【0043】
主に、キャリアガス供給管240e,240f、開閉バルブ243e,243f、図示しないキャリアガス供給源により、本実施形態に係るキャリアガス供給系が構成されている。
【0044】
(パージガス供給管)
気化ガス供給管240aにおける開閉バルブ243aの下流側には、第1パージガス管240gの下流端が接続されている。第1パージガス管240gには、上流側から順に、Nガス等の不活性ガスを供給する図示しないパージガス供給源、マスフローコントローラ(MFC)241g、開閉弁である開閉バルブ243gが設けられている。開閉バルブ243gを開けることにより、処理室201内へのパージガスの供給を行い、気化ガス供給管240a内および処理室201内からの気化ガスの排出を促すように構成されている。
【0045】
同様に、反応ガス供給管240bには、第2パージガス管240hの下流端が接続されている。接続箇所は、第1供給管240cにおける開閉バルブ244cおよび第2供給管240dにおける開閉バルブ244よりも下流側に位置している。第2パージガス管240hには、上流側から順に、Nガス等の不活性ガスを供給する図示しないパージガス供給源、マスフローコントローラ(MFC)241h、開閉バルブ243hが設けられている。開閉バルブ243hを開けることにより、処理室201内へのパージガスの供給を行うように構成されている。さらに詳しくは、開閉バルブ243h,244cを開け、開閉バルブ243c,243e,244dを閉じることで、処理室201内へのパージガスの供給を開始して、第1供給管240c内、反応ガス供給管240b内、処理室201内からの第1処理ガスの排出を促すことが可能となる。また、開閉バルブ243h,244dを開け、開閉バルブ243d,243f,244cを閉じることで、処理室201内へのパージガスの供給を開始して、第2供給管240d内、反応ガス供給管240b内、処理室201内からの第2処理ガスの排出を促すことが可能となる。
【0046】
主に、第1パージガス管240g、第2パージガス管240h、開閉バルブ243g,243h、図示しないパージガス供給源により、本実施形態に係るパージガス供給系が構成されている。
【0047】
(ガス排気系)
反応管203の側壁には、処理室201内の雰囲気を排気する排気系としての排気管231が接続されている。排気管231には、上流側から順に、圧力検出器としての圧力センサ245、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ246、真空排気装置としての真空ポンプ247が設けられている。真空ポンプ247を作動させつつ、APCバルブ246の開閉弁の開度を調整することにより、処理室201内を所望の圧力とし、処理室201内およびこれに連なる気化ガス供給管
240a内、反応ガス供給管240b内、第1供給管240c内、第2供給管240d内等からの滞留ガスの排気を行うことが可能なように構成されている。
【0048】
主に、排気管231、圧力センサ245、APCバルブ246、真空ポンプ247により、本実施形態に係るガス排気系が構成されている。
【0049】
(コントローラ)
制御部(制御手段)であるコントローラ280は、ヒータ207、APCバルブ246、真空ポンプ247、回転機構267、ボートエレベータ215、開閉バルブ243a,243c,243d,243e,243f,243g,243h,244c,244d,543、マスフローコントローラ241a、241c、241d、241g,241h等に接続されている。コントローラ280により、ヒータ207の温度調整動作、APCバルブ246の開閉および圧力調整動作、真空ポンプ247の起動・停止、回転機構267の回転速度調節、ボートエレベータ215の昇降動作、開閉バルブ243a,243c,243d,243e,243f,243g,243h,244c,244d,543の開閉動作、マスフローコントローラ241a、241c、241d、241g,241hの流量調整等の制御が行われる。また、コントローラ280は、上記の各種制御機能に加えて、タイマー機能および情報記憶機能を有している。
【0050】
(ガスパターンパネル)
コントローラ280には、表示部(表示手段)であるガスパターンパネル281が接続されている。ガスパターンパネル281には、後述するガス排気状態についての情報を表示する表示部分であるLED(Light Emitting Diode)表示器が設けられている。LED表示器は、気化ガス供給系、第1処理ガス供給系、第2処理ガス供給系、処理室201のそれぞれについて個別に設けられている。ただし、必ずしも個別である必要はなく、これらの一部または全部について兼用するように設けられていてもよい。
【0051】
(4)基板処理工程
続いて、本発明の一実施形態としての基板処理工程について、図3および図4を参照しながら説明する。図3は、本発明の一実施形態としての基板処理工程の手順を示すフロー図である。図4は、本発明の一実施形態としての基板処理工程におけるプロセスシーケンスを示すチャート図である。
【0052】
本実施形態で説明する基板処理工程は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法の中の1つであるALD法を用いてウエハ200の表面に成膜をする方法であり、半導体装置の製造工程の一工程として実施される。ここでは、気化ガスとしてシリコン含有ガスであるHCDガスを、反応ガスのうちの第1処理ガスとして窒素含有ガスであるNHガスを、反応ガスのうちの第2処理ガスとして酸素含有ガスであるOガスをそれぞれ用い、ウエハ200上に絶縁膜としてシリコン酸窒化膜(SiON膜)を形成する例について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置101を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0053】
(基板搬入工程)
まず、複数枚のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)する。そして、複数枚のウエハ200を保持したボート217を、ボートエレベータ115によって持ち上げて処理室201内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。基板搬入工程(S10)においては、開閉バルブ243g、開閉バルブ243hを開けて、処理室201内にパージガスを供給し続けることが好ましい。
【0054】
(減圧および昇温工程)
続いて、開閉バルブ241g、開閉バルブ241hを閉め、処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように、処理室201内を真空ポンプ247により排気(圧力調整)する。この際、処理室201内の圧力を圧力センサ245で測定して、この測定された圧力に基づき、APCバルブ246の開度をフィードバック制御する。また、処理室201内が所望の温度となるように、ヒータ207によって加熱(温度調整)する。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサが検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合をフィードバック制御する。そして、回転機構267によりボート217を回転させ、ウエハ200を回転させる。
【0055】
(成膜工程)
続いて、成膜工程を実施する。成膜工程では、ウエハ200上にHCDガスを供給するHCD供給工程(ステップ11)と、HCDガスの残留ガスを除去する残留ガス除去工程(ステップ12)と、ウエハ200上にNHガスを供給するNH供給工程(ステップ13)と、NHガスの残留ガスを除去する残留ガス除去工程(ステップ14)と、ウエハ200上にOガスを供給するO供給工程(ステップ15)と、Oガスの残留ガスを除去する残留ガス除去工程(ステップ16)と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返す。
【0056】
(HCD供給工程(ステップ11))
HCD供給工程(ステップ11)では、気化ガス供給管240aの開閉バルブ543,243aを開き、気化器500を介して気化ガス供給管240a内にHCDガスを流す。気化ガス供給管240a内を流れたHCDガスは、マスフローコントローラ241aにより流量調整される。流量調整されたHCDガスは気化ガスノズル233aの気化ガス供給孔248aから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。このとき、同時に開閉バルブ243gを開き、第1パージガス管240g内にNガス等の不活性ガスを流す。第1パージガス管240g内を流れたNガスは、マスフローコントローラ241gにより流量調整される。流量調整されたNガスはHCDガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0057】
このとき、APCバルブ246を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241aで制御するHCDガスの供給流量は、例えば100〜1000sccmの範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241gで制御するNガスの供給流量は、例えば200〜1000sccmの範囲内の流量とする。HCDガスをウエハ200に晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜120秒間の範囲内の時間とする。このときヒータ207の温度は、処理室201内でCVD反応が生じる程度の温度、すなわちウエハ200の温度が、例えば300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。なお、ウエハ200の温度が300℃未満となるとウエハ200上にHCDが吸着しにくくなる。また、ウエハ200の温度が650℃を超えるとCVD反応が強くなり、均一性が悪化しやすくなる。よって、ウエハ200の温度は300〜650℃の範囲内の温度とするのが好ましい。
【0058】
HCDガスの供給により、ウエハ200表面の下地膜上に、シリコンを含む第1の層が形成される。すなわち、ウエハ200上(下地膜上)に1原子層未満から数原子層のシリコン含有層としてのシリコン層(Si層)が形成される。シリコン含有層はHCDの化学吸着層であってもよい。なお、シリコンは、それ単独で固体となる元素である。ここでシリコン層とはシリコンにより構成される連続的な層の他、不連続な層やこれらが重なってできる薄膜をも含む。なお、シリコンにより構成される連続的な層を薄膜という場合もあ
る。また、HCDの化学吸着層とはHCD分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、ウエハ200上に形成されるシリコン含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ13での窒化の作用がシリコン含有層の全体に届かなくなる。また、ウエハ200上に形成可能なシリコン含有層の最小値は1原子層未満である。よって、シリコン含有層の厚さは1原子層未満から数原子層とするのが好ましい。なお、HCDガスが自己分解する条件下では、ウエハ200上にシリコンが堆積することでシリコン層が形成され、HCDガスが自己分解しない条件下では、ウエハ200上にHCDが化学吸着することでHCDの化学吸着層が形成される。なお、ウエハ200上にHCDの化学吸着層を形成するよりも、ウエハ200上にシリコン層を形成する方が成膜レートを高くすることができ好ましい。
【0059】
シリコン含有ガスとしては、HCDガスの他、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl、略称:TCS)ガス、モノシラン(SiH)ガス等の無機原料だけでなく、アミノシラン系のテトラキスジメチルアミノシラン((Si(N(CH))、略称:4DMAS)ガス、トリスジメチルアミノシラン((Si(N(CH))H、略称:3DMAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(Si(N(C、略称:2DEAS)ガス、ビスターシャリーブチルアミノシラン(SiH(NH(C))、略称:BTBAS)ガスなどの有機原料を用いてもよい。
【0060】
(残留ガス除去工程(ステップ12))
残留ガス除去工程(ステップ12)では、シリコン含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、HCDガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ246は開いたままとして、真空ポンプ247により処理室201内を真空排気し、処理室201内、気化ガスノズル233a内および気化ガス供給管240a内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のHCDガスを、処理室201内、気化ガスノズル233a内および気化ガス供給管240a内から排除する。なお、このとき、バルブ243gは開いたままとして、Nガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内等に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のHCDガスを処理室201内等から排除する効果を高める。
【0061】
不活性ガスとしては、Nガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0062】
(NH供給工程(ステップ13))
NH供給工程(ステップ13)では、第1供給管240cの開閉バルブ243c,244cを開き、第1供給管240c内および反応ガス供給管240b内にNHガスを流す。第1供給管240c内および反応ガス供給管240b内を流れるNHガスは、マスフローコントローラ241cにより流量調整される。流量調整されたNHガスは、反応ガスノズル233bの反応ガス供給孔248bから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。なお、処理室201内に供給されたNHガスは、熱により活性化される。このとき、同時にバルブ243hを開き、第2パージガス管240h内にNガスを流す。NガスはNHガスと一緒に処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。
【0063】
NHガスを熱で活性化して流すときは、APCバルブ246を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば50〜3000Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241cで制御するNHガスの供給流量は、例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241hで制御するNガスの供給流量は、例えば200〜1000sccmの範囲内の流量とする。NHガスにウエハ200
を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜120秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、ステップ11と同様、ウエハ200の温度が300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。NHガスは反応温度が高く、上記のようなウエハ温度では反応しづらいので、処理室201内の圧力を上記のような高い圧力とすることにより熱的に活性化することを可能にしている。なお、NHガスは熱で活性化させて供給したほうが、ソフトな反応を生じさせることができ、後述する窒化をソフトに行うことができる。
【0064】
このとき、処理室201内に流しているガスは熱的に活性化されたNHガスであり、処理室201内にはHCDガスは流していない。したがって、NHガスは気相反応を起こすことはなく、活性化されたNHガスは、ステップ11でウエハ200上に形成された第1の層としてのシリコン含有層の一部と反応する。これによりシリコン含有層は窒化されて、シリコン(第1の元素)および窒素(第2の元素)を含む第2の層、すなわち、シリコン窒化層(SiN層)へと改質される。
【0065】
このとき、シリコン含有層の窒化反応は飽和させないようにする。例えばステップ11で数原子層のシリコン層を形成した場合は、その表面層(表面の1原子層)の一部を窒化させる。すなわち、その表面層のうちの窒化が生じ得る領域(シリコンが露出した領域)の一部もしくは全部を窒化させる。この場合、第1の層の全体を窒化させないように、第1の層の窒化反応が非飽和となる条件下で窒化を行う。なお、条件によっては第1の層の表面層から下の数層を窒化させることもできるが、その表面層だけを窒化させるほうが、シリコン酸窒化膜の組成比の制御性を向上させることができ好ましい。また、例えばステップ11で1原子層または1原子層未満のシリコン層を形成した場合も、同様にその表面層の一部を窒化させる。この場合も、第1の層の全体を窒化させないように、第1の層の窒化反応が非飽和となる条件下で窒化を行う。
【0066】
窒素含有ガスとしては、NHガス以外に、Nガス、NFガス、Nガス等を用いてもよい。
【0067】
(残留ガス除去工程(ステップ14))
残留ガス除去工程(ステップ14)では、シリコン含有層がシリコン窒化層へ改質された後、第1供給管240cの開閉バルブ243cを閉じ、NHガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ246は開いたままとして、真空ポンプ247により処理室201内を真空排気し、処理室201内、反応ガスノズル233b内、反応ガス供給管240b内および第1供給管240c内に残留する未反応もしくは窒化に寄与した後のNHガスを、処理室201内、反応ガスノズル233b内、反応ガス供給管240b内および第1供給管240c内から排除する。なお、このとき、バルブ243hは開いたままとして、Nガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内等に残留する未反応もしくは窒化に寄与した後のNHガスを処理室201内等から排除する効果を高める。
【0068】
不活性ガスとしては、Nガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0069】
(O供給工程(ステップ15))
供給工程(ステップ15)では、第2供給管240dの開閉バルブ243d,244dを開き、第2供給管240d内および反応ガス供給管240b内にOガスを流す。第2供給管240d内および反応ガス供給管240b内を流れるOガスは、マスフローコントローラ241dにより流量調整される。また、第2パージガス管240hの開閉バルブ243hを開き、第2パージガス管240h内および反応ガス供給管240b内に参
加反応抑制ガスとしてのNガスを流す。第2パージガス管240h内および反応ガス供給管240b内を流れるNガスは、マスフローコントローラ241hにより流量調整される。流量調整されたOガスは流量調整されたNガスと反応ガス供給管240b内で混合されて、反応ガスノズル233bの反応ガス供給孔248bから処理室201内に供給されつつガス排気管231から排気される。なお、処理室201内に供給されたOガスは、熱により活性化される。ただし、高周波電力の印加によりOガスをプラズマで活性化させるようにしてもよい。
【0070】
ガスを熱で活性化して流すときは、APCバルブ246を適正に調整して処理室201内の圧力を、例えば1〜3000Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ241dで制御するOガスの供給流量は、例えば100〜5000sccm(0.1〜5slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241hで制御する酸化反応抑制ガスとしてのNガスの供給流量は、Oガスの供給流量よりも大流量とし、例えば1000〜20000sccm(1〜20slm)の範囲内の流量とする。Oガスにウエハ200を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜120秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、ステップ11,13と同様、ウエハ200の温度が300〜650℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。Oガスは上記のような条件下で熱的に活性化される。なお、Oガスは熱で活性化させて供給したほうが、ソフトな反応を生じさせることができ、後述する酸化をソフトに行うことができる。
【0071】
このとき、処理室201内に流しているガスは熱的に活性化されたOガスであり、処理室201内にはHCDガスもNHガスも流していない。したがって、Oガスは気相反応を起こすことはなく、活性化されたOガスは、ステップ13でウエハ200上に形成された第2の層としてのSiN層の一部と反応する。これによりSiN層は酸化されて、シリコン(第1の元素)、窒素(第2の元素)および酸素(第3の元素)を含む第3の層、すなわち、シリコン酸窒化層(SiON層)へと改質される。
【0072】
このとき、SiN層の酸化反応は飽和させないようにする。例えばステップ11〜13で数原子層のSiN層を形成した場合は、その表面層(表面の1原子層)の少なくとも一部を酸化させる。この場合、SiN層の全体を酸化させないように、SiN層の酸化反応が非飽和となる条件下で酸化を行う。なお、条件によってはSiN層の表面層から下の数層を酸化させることもできるが、その表面層だけを酸化させるほうが、シリコン酸窒化膜の組成比の制御性を向上させることができ好ましい。また、例えばステップ11〜13で1原子層または1原子層未満のSiN層を形成した場合も、同様にその表面層の一部を酸化させる。この場合も、SiN層の全体を窒化させないように、SiN層の酸化反応が非飽和となる条件下で酸化を行う。
【0073】
酸素含有ガスとしては、Oガス以外に、Oガス、NO、NOガス等を用いてもよい。酸化反応抑制ガスとしては、Nガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0074】
(残留ガス除去工程(ステップ16))
残留ガス除去工程(ステップ16)では、SiN層がSiON層へ改質された後、第2供給管240dの開閉バルブ243dを閉じ、Oガスの供給を停止する。このとき、ガス排気管231のAPCバルブ246は開いたままとして、真空ポンプ247により処理室201内を真空排気し、処理室201内、反応ガスノズル233b内、反応ガス供給管240b内および第2供給管240d内に残留する未反応もしくは酸化に寄与した後のOガスを、処理室201内、反応ガスノズル233b内、反応ガス供給管240b内および第2供給管240d内から排除する。このとき、バルブ243hは開いたままとして、
ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内等に残留する未反応もしくは酸化に寄与した後のOガスを処理室201内等から排除する効果を高める。なお、このとき、マスフローコントローラ241hを制御して、第2パージガス管240hから供給するNガスの供給流量を1000〜20000sccm(1〜20slm)から200〜1000sccm(0.2〜1slm)へと変更する。
【0075】
上述したステップ11〜16を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行うことにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン(第1の元素)、窒素(第2の元素)および酸素(第3の元素)を含む薄膜、すなわちシリコン酸窒化膜(SiON膜)を成膜することができる。なお、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。
【0076】
(パージおよび大気圧復帰工程)
所定圧のシリコン酸窒化膜(SiON膜)を形成する成膜工程がなされると、Nガス等の不活性ガスが処理室201内へ供給されつつ排気されることで処理室201内が不活性ガスでパージされる(ガスパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0077】
(基板搬出工程)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口されるとともに、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200はボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0078】
(5)排気シーケンス制御
次に、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置101のコントローラ280が実行する排気シーケンス制御について説明する。
【0079】
上述した基板処理工程では、HCDガス、NHガス、Oガスといった複数種類のガスを使用するが、HCDガスおよびNHガスは可燃性ガスであり、Oガスは支燃性ガスであることから、これらが混蝕してしまうのを回避する必要がある。また、異種ガスがウエハ200上以外の箇所で反応して当該箇所に堆積物を生成してしまうと、配管やノズル等の詰まりやパーティクル発生の要因となり得るため、この点からも異種ガス間の混蝕発生は回避すべきである。そのために、コントローラ280は、基板処理工程の過程において、以下に述べるような排気シーケンス制御を行う。
【0080】
以下の説明では、NH供給工程(ステップ13)において第1処理ガスとしてのNHガスを供給した後、残留ガス除去工程(ステップ14)を経て、O供給工程(ステップ15)での第2処理ガスとしてのOガスの供給開始に至るまでの間における排気シーケンス制御を例に挙げる。これは、NHガスとOガスとがいずれも反応ガス供給管240bおよび反応ガスノズル233bを通じて処理室201内に供給されるため、混蝕発生の危険性が高いからである。ただし、HCD供給工程(ステップ11)の後における残留ガス除去工程(ステップ12)と、O供給工程(ステップ15)の後における残留ガス除去工程(ステップ16)とについても、以下の説明と同様の排気シーケンス制御が行われるものとする。
【0081】
(比較例における排気シーケンス制御)
ここで、本実施形態の排気シーケンス制御の説明に先立ち、その比較例として従来構成による排気シーケンス制御について、図5および図6を参照しながら説明する。図5は、本発明の参考例となる従来構成による排気シーケンス制御のラダープログラム概要を示す
模式図である。図6は、本発明の参考例となる従来構成による排気シーケンス制御の一具体例を示す模式図である。
【0082】
図5に示すように、参考例の排気シーケンス制御では、コントローラ280からの指示に従いつつ、ガスパターンパネル281がガス排気状態について「ガス残留状態」(図中NG表示参照)と「排気完了状態」(図中OK表示参照)との二段階で表示する。また、コントローラ280は、残留ガス除去工程(ステップ14)でのガス排気に関連する全ての開閉バルブ243c,244c,243d,244d,243e,243fの開閉状態を認識し、バルブ開閉状態の切り替えが正しく行われたこと、すなわちバルブ開閉状態が所定排気条件に合致したことを契機にして、滞留ガスの排気を開始するとともに、タイマー機能による計時を開始する。そして、排気開始から一定時間が経過するまでは排気動作を継続して行い、一定時間が経過したら排気完了の信号をガスパターンパネル281へ出力する。これにより、ガスパターンパネル281での表示が「ガス残留状態」から「排気完了状態」へ切り替わることになる。
【0083】
このような参考例の排気シーケンス制御により、例えば図6(a)に示すNH供給工程(ステップ13)の実行中、すなわち開閉バルブ243c,244cが開状態でNHガスが第1供給管240c内および反応ガス供給管240b内を流れている状態では、ガスパターンパネル281が第1処理ガスであるNHガスについて「ガス残留状態」であることを表示する。その後、例えば図6(b)に示すように、残留ガス除去工程(ステップ14)において開閉バルブ243cが閉状態に切り替わると、NHガスに関する所定排気条件との合致を契機にしてタイマー機能による計時が開始される。そして、一定時間が経過すると、第1供給管240c内および反応ガス供給管240b内における滞留ガスの排気が完了したとみなし、ガスパターンパネル281での表示が「ガス残留状態」から「排気完了状態」へ切り替わる。第2処理ガスであるOガスについては、NH供給工程(ステップ13)および残留ガス除去工程(ステップ14)の実行中には供給または排気のいずれも行われていないので、ガスパターンパネル281における表示が「排気完了状態」のままである。
【0084】
ただし、バルブ開閉状態の切り替えは、コントローラ280が所定プログラムに従って自動制御する場合であれば問題が生じる可能性は極めて低いが、例えば作業員によるマニュアル操作に従って実行する場合には、作業ミスにより誤って行われるおそれがある。その場合には、例えば図6(c)に示すように、開閉バルブ243c,244cが閉状態に切り替わっても第1供給管240c内および反応ガス供給管240b内における滞留ガスの排気が開始されず、NHガスに関する所定排気条件に合致しないことからタイマー機能による計時も開始されず、バルブ切り替え作業から一定時間が経過してもガスパターンパネル281での表示が切り替わらずに「ガス残留状態」のままとなる。つまり、作業員は、操作直後に誤りに気付くことは稀で、操作から一定時間が経過しても「排気完了状態」への表示切り替えがされないことによって初めて誤りに気付くことが殆どである。したがって、バルブ開閉状態の切り替えが誤って行われると、作業員がそのことに気付くのが遅れる分、残留ガス除去工程(ステップ14)が完了するまでに多くの時間を要することになり、O供給工程(ステップ15)の開始が遅れてしまうことになる。
【0085】
(本実施形態における排気シーケンス制御)
本実施形態における排気シーケンス制御は、上述した参考例の排気シーケンス制御の問題点であった残留ガス排気時のバルブ開閉状態の誤りによる作業時間増大を抑制し、これにより次に行うガス供給行程を迅速に開始できるようにする。
【0086】
図7は、本発明の一実施形態による排気シーケンス制御のラダープログラム概要を示す模式図である。図8は、本発明の一実施形態による排気シーケンス制御の一具体例を示す
模式図である。
【0087】
図7に示すように、本実施形態の排気シーケンス制御では、コントローラ280からの指示に従いつつ、ガスパターンパネル281がガス排気状態について「ガス残留状態」(図中NG表示参照)と「排気中状態」(図中矢印図形表示参照)と「排気完了状態」(図中OK表示参照)との少なくとも三段階で表示する。少なくとも三段階であるから、四段階以上で表示しても構わない。少なくとも三段階の表示態様は、それぞれを互いに識別し得るものであれば、図例の表示態様に限定されることはなく、適宜設定して構わない。
【0088】
少なくとも三段階の表示態様は、ガスパターンパネル281上における一つの表示部分であるLED表示器にて、切り替え表示されるように構成されている。すなわち、ガスパターンパネル281上には第1処理ガス供給系や第2処理ガス供給系等に個別に対応する複数のLED表示器が設けられているが、各LED表示器のそれぞれが少なくとも三段階の表示態様の切り替えを行うように構成されている。LED表示器における表示態様の切り替え手法は、公知技術を利用すればよいため、ここではその詳細な説明を省略する。なお、各LED表示器は、三段階以上の表示切り替えに対応したものに限定されることはない。例えば、一つのLED表示器にて少なくとも三段階の表示切り替えを行うのではなく、当該一つのLED表示器に代わって少なくとも三つのLED表示器を並べて配置し、各LED表示器の点灯・消灯を切り替えることで、少なくとも三段階の表示態様を識別可能に構成することも考えられる。また、ガスパターンパネル281は、バルブ開閉状態に関する情報を視認可能に出力するものであれば、LED表示器に代わる表示手段を用いたものであっても構わない。
【0089】
コントローラ280は、残留ガス除去工程(ステップ14)でのガス排気に関連する全ての開閉バルブ243c,244c,243d,244d,243e,243fのうちの少なくとも一つについて開状態から閉状態またはその逆の状態遷移があると、その状態遷移を契機にして、全ての開閉バルブ243c,244c,243d,244d,243e,243fの開閉状態を認識する。そして、認識結果を所定排気条件と比較して、バルブ開閉状態が所定排気条件に合致するか否か、すなわちバルブ開閉状態の切り替えが正しく行われているか否かを判断する。バルブ開閉状態の認識は、例えば電磁バルブの駆動信号を利用するといったように、公知技術を用いて行えばよい。「所定排気条件」については、これを特定する情報がコントローラ280の情報記憶機能に予め記憶保持されているものとする。また、ここでは残留ガス除去工程(ステップ14)について例に挙げているが、他の残留ガス除去工程(ステップ12,16)についても所定排気条件を特定する情報が予め記憶保持されているものとする。
【0090】
全ての開閉バルブ243c,244c,243d,244d,243e,243fについて、バルブ開閉状態の切り替えが正しく行われると、第1供給管240c内および反応ガス供給管240b内からの滞留ガスの排気が開始される。このとき、コントローラ280は、バルブ開閉状態が所定排気条件に合致したことを契機にして、排気開始であると判断し、タイマー機能による計時を開始する。さらに、コントローラ280は、排気条件が成立して滞留ガスの排気が開始された旨の信号を、ガスパターンパネル281に対して出力する。
【0091】
その後、コントローラ280は、タイマー機能による計時開始から一定時間が経過したら、第1供給管240c内および反応ガス供給管240b内における滞留ガスの排気が完了したとみなし、排気完了の信号をガスパターンパネル281に対して出力する。すなわち、排気開始から一定時間が経過すると、排気完了であると判断するのである。この判断基準となる「一定時間」については、装置仕様や実験で得られた経験則等に基づいて、滞留ガスの排気が完了し得る時間として予め特定し、コントローラ280の情報記憶機能に
記憶保持させておけばよい。
【0092】
コントローラ280からの出力信号を受け取ると、ガスパターンパネル281は、LED表示器における表示態様を切り替える。例えば、コントローラ280から排気開始の信号を受け取る以前は、LED表示器が排気開始の前の「ガス残留状態」を示す表示態様による表示を行う。その後、排気開始の信号を受け取ると、LED表示器は、その時点で「ガス残留状態」を示す表示態様を「排気中状態」を示す表示態様に切り替える。さらにその後、排気完了の信号を受け取ると、LED表示器は、その時点で「排気中状態」を示す表示態様を「排気完了状態」を示す表示態様に切り替える。つまり、ガスパターンパネル281におけるLED表示器は、排気開始から排気完了までの間においては、当該排気開始の前および当該排気完了の後とは異なる態様の「排気中状態」を示す表示を行うのである。
【0093】
以上のような排気シーケンス制御により、例えば図8(a)に示すNH供給工程(ステップ13)の実行中、すなわち開閉バルブ243c,244cが開状態でNHガスが第1供給管240c内および反応ガス供給管240b内を流れている状態では、ガスパターンパネル281が第1処理ガスであるNHガスについて「ガス残留状態」であることを表示する。第2処理ガスであるOガスについては、NH供給工程(ステップ13)の実行中には供給または排気のいずれも行われていないので、ガスパターンパネル281における表示態様が「排気完了状態」のままである。
【0094】
その後、例えば図8(b)に示すように、残留ガス除去工程(ステップ14)において開閉バルブ243cが閉状態に切り替わると、NHガスに関する所定排気条件との合致を契機にしてタイマー機能による計時が開始されるとともに、コントローラ280から排気開始の信号が出力される。この出力信号を受け取ると、ガスパターンパネル281では、信号受け取り時点で、第1処理ガスであるNHガスについてのLED表示器における表示態様が「ガス残留状態」から「排気中状態」に切り替わる。そして、一定時間が経過すると、コントローラ280から排気完了の信号が出力される。この出力信号を受け取ると、ガスパターンパネル281では、第1処理ガスであるNHガスについてのLED表示器における表示態様が「排気中状態」から「排気完了状態」へ切り替わる。このときも、第2処理ガスであるOガスについては、残留ガス除去工程(ステップ14)の実行中には供給または排気のいずれも行われていないので、ガスパターンパネル281における表示態様が「排気完了状態」のままである。
【0095】
また、例えば図8(c)に示すように、作業員によるマニュアル操作の作業ミス等によってバルブ切り替えが誤って行われ、開閉バルブ243c,244cが閉状態に切り替わった場合には、NHガスに関する所定排気条件と合致しないので、コントローラ280から排気開始の信号が出力されない。したがって、バルブ開閉について状態遷移があっても、ガスパターンパネル281では、第1処理ガスであるNHガスについてのLED表示器における表示態様が「ガス残留状態」のままであり、「排気中状態」には切り替わらない。そのため、マニュアル操作を行った作業員は、ガスパターンパネル281における表示態様を参照することで、バルブ開閉状態に関して作業ミス等があったことに直ちに気付くことになる。つまり、バルブ開閉状態の切り替えが誤って行われても、作業員がそのことに直ちに気付き、再作業によりバルブ開閉状態を正しく切り替えることが可能になるので、上述した参考例における排気シーケンス制御(図5、図6参照)の場合に比べると、残留ガス除去工程(ステップ14)が完了するまでに多くの時間を要するのを抑制することができる。
【0096】
(6)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0097】
本実施形態にかかる基板処理装置は、残留ガス除去工程(ステップ14)において反応ガス供給管240b内等(すなわちガス流路である配管内)に滞留するガスの状態を、ガスパターンパネル281が「ガス残留状態」、「排気中状態」、「排気完了状態」の少なくとも三段階で表示する。そのため、滞留ガスの排気が正しく開始されないと、ガスパターンパネル281での表示が「ガス残留状態」から「排気中状態」へ切り替わらず、直ちにそのことを認識することができる。したがって、NHガスとOガスの混蝕を回避するために一定時間の排気動作を継続する排気シーケンス制御を行う場合に、例えば作業ミスによりガス排気が正しく開始されなくても、直ちに作業をやり直してガス排気を正しく開始させることが可能となり、上述した比較例における排気シーケンス制御の場合に比べると排気完了までに多くの時間を要するのを抑制することができる。
【0098】
また、本実施形態にかかる基板処理装置は、残留ガス除去工程(ステップ14)のみならず、残留ガス除去工程(ステップ12)や残留ガス除去工程(ステップ16)等についても、同様の排気シーケンス制御を行う。すなわち、反応ガス供給管240b内等の他に、気化ガス供給管240a内や処理室201内等についても、ガスパターンパネル281が滞留ガスの状態についての表示を行う。このように、残留ガス除去工程(ステップ12,ステップ14,ステップ16)の少なくとも一工程において、処理室201内、気化ガス供給管240a内、反応ガス供給管240b内等の少なくとも一つについて滞留ガスの状態を表示することで、どの種類のガスを排気する場合においても、排気が正しく開始されなければ直ちにそのことが認識可能となり、その結果として基板処理装置を使用する者(例えばマニュアル操作の作業者)にとっての利便性が向上する。
【0099】
また、本実施形態にかかる基板処理装置は、一定時間の排気動作を継続する排気シーケンス制御を行うので、例えばNHガスとOガスのように、混蝕を避けるべき複数種類の処理ガスを供給する場合に適用して好適である。すなわち、一定時間の排気動作を継続することで、例えば可燃性ガスであるNHガスと支燃性ガスであるOガスがいずれも反応ガス供給管240bを流路とする場合であっても、これらNHガスとOガスが混蝕してしまうのを確実に回避することができる。さらには、可燃性ガスと支燃性ガスによる混蝕発火の危険性を回避可能にするだけでなく、異種ガスがウエハ200上以外の箇所で反応して当該箇所に堆積物を生成してしまうことについても確実に回避できる。したがって、当該堆積物が配管やノズル等の詰まりやパーティクル発生の要因となってしまうことがない。このように、本実施形態にかかる基板処理装置は、混蝕を避けるべき複数種類の処理ガスを供給する場合に適用して好適なものであるが、単種の処理ガスを供給する場合についても適用可能であり、その場合にもガス排気が正しく開始されないことを直ちに認識できるという効果を奏する。
【0100】
また、本実施形態にかかる基板処理装置は、滞留ガスの排気開始から排気完了までの間、その前後とは異なる態様の表示をガスパターンパネル281が行うので、ガス排気が正しく開始されたこと、または、ガス排気が正しく開始されなかったことを、基板処理装置を使用する者(例えばマニュアル操作の作業者)が容易かつ的確に認識することができる。
【0101】
特に、本実施形態にかかる基板処理装置のように、滞留ガスの状態を「ガス残留状態」、「排気中状態」、「排気完了状態」の少なくとも三段階の表示態様で表示すれば、基板処理装置を使用する者(例えばマニュアル操作の作業者)にとっては、その表示内容の認識をより一層容易かつ的確に行うことができる。
【0102】
また、本実施形態にかかる基板処理装置は、ガスパターンパネル281上における一つのLED表示器が少なくとも三段階の表示態様を切り替え表示するので、当該切り替え表
示のために複数のLED表示器を並べた場合に比べると、必要とするパネル面積が小さくて済む。つまり、パネル面積の小型化を通じて、基板処理装置全体の小型化に寄与することが可能になる。
【0103】
また、本実施形態にかかる基板処理装置は、バルブ開閉状態が所定排気条件に合致すると、コントローラ280が排気開始であると判断し、排気開始の信号をガスパターンパネル281に対して出力する。したがって、排気開始についての判断基準が明確であり、排気開始であることを的確に判断し得るとともに、「ガス残留状態」から「排気中状態」への表示切り替えを適正に行うことが可能となる。
【0104】
また、本実施形態にかかる基板処理装置は、排気開始から所定時間が経過すると、排気完了であると判断し、排気完了の信号をガスパターンパネル281に対して出力する。つまり、タイマー機能による計時結果を用いて、排気完了であることを擬制する。したがって、排気完了についての判断基準を明確にしつつ、排気完了の判断のために例えばガス濃度計のような大掛かりな構成を備える必要がなく、基板処理装置の構成簡素化を容易に実現することが可能になる。
【0105】
以上のような本実施形態にかかる基板処理装置を用いて半導体装置の製造工程の一工程としての基板処理工程を実施すれば、ガス排気が正しく開始されない場合に直ちにそのことを認識でき、排気完了までに多くの時間を要してしまうのを抑制できるので、その結果として高効率の半導体装置の製造を行うことが実現可能となる。
【0106】
<本発明の他の実施形態>
上述した実施形態では、本発明をSiON膜の処理炉に適用させた場合を例に挙げているが、本発明はかかる形態に限定されない。すなわち、本発明は、膜種にはよらず、他の膜種の処理炉にも適用可能であり、例えば基板上に窒化膜、酸化膜、金属膜、半導体膜等の他の膜を形成する基板処理装置、および半導体装置の製造方法にも好適に適用可能である。
【0107】
また、上述した実施形態では、気化ガスと反応ガスとをウエハ200上へ交互に供給するALD法を実施する場合について説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の他の方法を実施する場合にも好適に適用可能である。
【0108】
また、本発明は色々な形態で実施され得るので、本発明の技術的範囲が上述の実施形態や実施例に限定されることはない。例えば、本発明は、1枚または2〜3枚のウエハを収容する収容室を有する枚葉装置を用いて1枚または2〜3枚の枚葉処理する場合についても適用可能である。
【0109】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0110】
本発明の一態様によれば、
基板を収容する処理室と、
処理ガスを当該処理ガスの流路である配管を通じて前記処理室内へ供給するガス供給系と、
前記処理室内および前記配管内のガスを排気するガス排気系と、
を有し、
前記処理室内と前記配管内の少なくとも一方における滞留ガスの状態について表示する表示部と、
前記滞留ガスの排気開始から排気完了までの間、当該排気開始の前および当該排気完了の後とは異なる態様の表示を前記表示部に行わせる制御部と、
を設けた基板処理装置が提供される。
【0111】
好ましくは、
前記ガス供給系は、混蝕を避けるべき複数種類の処理ガスを供給するものである。
【0112】
また好ましくは、
前記制御部は、前記滞留ガスの状態を、前記排気開始の前のガス残留状態を示す表示態様、前記排気開始から前記排気完了までの間の排気中状態を示す表示態様、前記排気完了の後の排気完了状態を示す表示態様の少なくとも三段階で前記表示部に表示させるものである。
【0113】
また好ましくは、
前記表示部は、一つの表示部分にて前記少なくとも三段階の表示態様を切り替え表示するものである。
【0114】
また好ましくは、
前記制御部は、前記配管におけるバルブ開閉状態が所定排気条件に合致すると、前記排気開始であると判断するものである。
【0115】
また好ましくは、
前記制御部は、前記排気開始から所定時間が経過すると、前記排気完了であると判断するものである。
【0116】
本発明の他の態様によれば、
基板を収容した処理室内へガス流路である配管を通じて第1処理ガスを供給する工程と、
前記処理室内および前記配管内の前記第1処理ガスを排気する工程と、
前記第1処理ガスと混蝕を避けるべき種類の第2処理ガスを前記処理室内へ前記配管を通じて供給する工程と、
前記処理室内および前記配管内の前記第2処理ガスを排気する工程と、
を1サイクル中に含み、このサイクルを少なくとも1回以上行うことで、前記基板に対する処理を行う半導体装置の製造方法であって、
前記第1処理ガスを排気する工程と前記第2処理ガスを排気する工程との両方またはいずれか一方では、
前記処理室内と前記配管内の少なくとも一方における滞留ガスの状態について表示する表示部を用い、
前記滞留ガスの排気開始から排気完了までの間、当該排気開始の前および当該排気完了の後とは異なる態様の表示を前記表示部に行わせる
半導体装置の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0117】
101 基板処理装置
201 処理室
231 排気管
233a 気化ガスノズル
233b 反応ガスノズル
240a 気化ガス供給管
240b 反応ガス供給管
240c 第1供給管
240d 第2供給管
241a マスフローコントローラ(MFC)
241c マスフローコントローラ(MFC)
241d マスフローコントローラ(MFC)
243a 開閉バルブ
243c 開閉バルブ
243d 開閉バルブ
244c 開閉バルブ
244d 開閉バルブ
245 圧力センサ
246 APCバルブ
247 真空ポンプ
280 コントローラ
281 ガスパターンパネル
500 気化器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容する処理室と、
混蝕を避けるべき複数種類の処理ガスを当該処理ガスの流路である配管を通じて前記処理室内へ供給するガス供給系と、
前記処理室内および前記配管内のガスを排気するガス排気系と、
を有し、
前記配管内に滞留するガスの状態をガス残留状態、排気中状態、排気完了状態の少なくとも三段階で表示部に表示させる制御部を設けた
ことを特徴とする基板処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−23138(P2012−23138A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158810(P2010−158810)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】