説明

基板装置

【課題】放熱用ヒートシンクを加工する必要がなく、電子部品の設置位置の自由度が広がり、コンパク化ができるとともに機械による実装ができ、省力化を図れる放熱構造を提供する。
【解決手段】貫通孔を形成した基板10と、有底筒体部21の開口縁に外向フランジ部22を形成したプレート部材20とを備えている。前記基板の貫通孔11に前記プレート部材の有底筒体部を嵌着するとともにその底面を前記基板の表面と略面一にし、前記プレート部材の有底筒体部の底面に電子部品30を設置するとともに前記プレート部材の外向フランジ部に放熱用ヒートシンク40を接触させた基板装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板装置に関し、基板の表面に電子部品を実装し、電子部品による発熱を裏面側に放熱させる場合に使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるこの種の基板装置は、図4に示すように、基板10に貫通孔11を形成するとともに放熱用ヒートシンク40に嵌挿部45を形成し、前記嵌挿部45が前記貫通孔11に嵌挿した状態で、前記基板10の裏面に、前記放熱用ヒートシンク40を当接したものであり、前記嵌挿部45の頂面は前記基板10の表面と略面一であり、この頂面に電子部品30を設置していた。
そして、電子部品30による発熱は、前記嵌挿部45を介して前記基板10の裏面側に位置する前記放熱用ヒートシンク40に放熱していた(特開2004−23096)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−23096号公報
【特許文献2】特開2010−263003号公報
【特許文献3】特開2003−179324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の基板装置にあっては、放熱用ヒートシンク40における前記嵌挿部45を当該基板10の貫通孔11に略隙間なく嵌挿しなければならないため、基板10における前記貫通孔11の位置にあわせて、前記嵌挿部45を前記放熱用ヒートシンク40に加工しなければならず、この結果、製造コストが高額化せざるを得ないという不都合を有した。
さらに、基板表面の回路パターンの銅箔を厚くして、発熱による当該銅箔の剥がれを防止することも考えられていたが、製造コストが高額化せざるを得ないという不都合を有した。
【0005】
この発明の課題はこれらの不都合を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記不都合を解消するために、この発明に係る基板装置においては、貫通孔を形成した基板と、有底筒体部の開口縁に外向フランジ部を形成したプレート部材とを備え、前記基板の貫通孔に前記プレート部材の有底筒体部を嵌着するとともにその底面を前記基板の表面と略面一にし、前記プレート部材の有底筒体部の底面に電子部品を設置するとともに前記プレート部材の外向フランジ部に放熱用ヒートシンクを接触させたことを特徴とする基板装置。
【0007】
この場合、前記プレート部材における有底筒体部の底面に切り起こし切片を設けることができる。
【0008】
さらに、前記プレート部材の外向フランジ部の前記基板側に所要数の突部を一体形成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る基板装置は上記のように構成されているため、即ち、貫通孔を形成した基板と、有底筒体部の開口縁に外向フランジ部を形成したプレート部材とを備え、前記基板の貫通孔に前記プレート部材の有底筒体部を嵌着するとともにその底面を前記基板の表面と略面一にし、前記プレート部材の有底筒体部の底面に電子部品を設置するとともに前記プレート部材の外向フランジ部に放熱用ヒートシンクを接触させたため、前記基板の表面に設置した電子部品による発熱を、前記プレート部材の前記有底筒体部及び前記外向フランジ部を介して前記基板の裏面側に位置する前記放熱用ヒートシンクに放熱することができるものである。
【0010】
よって、この基板装置を使用すれば、基板の貫通孔の位置に前記プレート部材を設置するのみで、電子部品の発熱を実装面の裏側に配置した放熱用ヒートシンクに放熱することができるため、従来のように前記放熱用ヒートシンクを加工する必要がない結果、電子部品の設置位置の自由度が広がり、当該基板装置のコンパク化ができるとともに機械による実装ができ、省力化を図れるとともに製造コストを低額化させることができる。特に、基板に複数の電子部品を設置し、これらの電子部品を絶縁するために前記プレート部材と前記放熱用ヒートシンクとの間には絶縁シートを介在させ、熱伝導が低下した場合にその利用価値は増大する。
【0011】
この場合、前記プレート部材における有底筒体部の底面に切り起こし切片を設ければ、前記切り起こし切片を電気回路として使用して電気容量を増大することができるため、回路パターンの銅箔を厚くすることなく、発熱による当該銅箔の剥がれを防止することができ、この結果、製造コストを従来よりも抑えることができる。
【0012】
さらに、前記プレート部材の外向フランジ部の前記基板側に所要数の突部を一体形成すれば、突部の衝突する基板と外向フランジ部との間に回路パターンの設置スペースを採ることができ、基板装置自体をコンパクト化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明に係る、この発明に係る基板装置は実施するにあたって下記の構成に最も主要な特徴を有する。
【0014】
貫通孔を形成した基板と、有底筒体部の開口縁に外向フランジ部を形成したプレート部材とを備えている。
【0015】
基板の貫通孔にプレート部材の有底筒体部を嵌着するとともにその底面を基板の表面と略面一にする。また、前記外向フランジ部の前記基板側には所要数の突部が一体形成されている。
【0016】
前記基板上における前記プレート部材の有底筒体部の底面に電子部品を半田付けする。
【0017】
前記プレート部材の外向フランジ部に絶縁シートを介在して放熱用ヒートシンクを接触させた状態で設置する。このとき、前記外向フランジ部の突部は前記基板に当接している。
【実施例】
【0018】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1はこの発明に係る基板装置の一部を省略した正面断面図、図2は図1におけるII矢視図、図3は図2におけるIII−III線断面図である。
【0020】
図1〜3において、Bはこの発明に係る基板装置、10はその金属基板であり、本願発明の基板に該当する。11,11,…は貫通孔であり、前記基板10に所定の間隔で形成されている。この貫通孔11は略真円状をしている。12,12,…は取付孔であり、前記貫通孔10の四隅に形成されている。この取付孔12の用途は後記する。
【0021】
20は銅製又は銅合金製のプレート部材であり、その有底筒体部21を前記貫通孔11に嵌着することによって前記基板10に設置されている。この際、この有底筒体部21の底面は前記基板10の表面(部品実装面)と略面一に位置している。22は外向フランジ部であり、前記プレート部材20における有底筒部21の開口縁に一体形成されている。この外向フランジ部22は略正方形状をしている(図2参照のこと)。23,23,…は突部であり、前記外向フランジ部22における前記有底筒部21の周囲に形成されている。また、24,24,…は切り起こし切片であり、前記外向フランジ部22の四隅に上方に向かって形成されている。前記プレート部材20は、前記突部23,23,…を前記基板10の裏面に当接させた状態で、前記切り起こし切片24,24,…を前記基板10の取付孔12,12,…に内嵌し、半田付けによって固定されている。なお、前記突部23,23,…が前記基板10に衝突しているため、前記外向フランジ部22と前記基板10との間に回路パターン設置スペースSを採ることができる。
【0022】
30は電子部品であり、前記プレート部材20における前記有底筒体部21の底面に、クリーム半田によって半田付けされている(t=150um)。この電子部品30の例としては、FET(Field effect
Transistor)、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスター)等があげられるがいずれの電子部品も該当する。なお、これらの電子部品30は、一つのプレート部材20に一つの割合で設置される。
【0023】
40はヒートシンクであり、前記プレート部材20における前記外向フランジ部22の下面に、絶縁シート41を介して密着されている。この絶縁シート41はシリコン樹脂製である。また、42は押さえ板であり、前記電子部品30,30,…の頂面に載置されている。この押さえ板42を貫通した固定ビス43を前記ヒートシンク40に螺子止めすることによって、前記基板10は前記ヒートシンク40にされる。
【0024】
前記基板装置Bは上記のように構成されているため、電子部品30によって発生する熱量は、半田付層を介してプレート部材20の有低筒部21に放熱され、外向フランジ部22において拡散され、部品実装面とは逆の面に設置されたヒートシンク40に伝達される。前記プレート部材20を有低筒部21と外向フランジ部22によって形成したのは放熱面積を拡大し、冷却効果を向上させるためである。
【0025】
また、この基板装置Bは前記プレート部材20を電気回路として使用できるため、回路パターンの銅箔を厚くすることなく、電気容量を増大させることができるものである。
【0026】
さらに、基板10の裏面にヒートシンク40を設置することができるため、電子部品を基板の端縁に一列に配置していた従来と異なり、電子部品を多数列に配列することができる結果、基板装置の設計の自由度が向上し、コンパクト化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明に係る基板装置は、基板の貫通孔の位置に前記プレート部材を設置するのみで、電子部品の発熱を実装面の裏側に配置した放熱用ヒートシンクに放熱することができるため、従来のように前記放熱用ヒートシンクを加工する必要がない結果、電子部品の設置位置の自由度が広がり、当該基板装置のコンパク化ができるとともに機械による実装ができ、省力化を図れるとともに製造コストを低額化させることができる。よって、産業上の利用可能性は高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1はこの発明に係る基板装置の一部を省略した正面断面図である。
【図2】図2は図1におけるII矢視図である。
【図3】図3は図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】図4は従来例の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
B … 基板装置
10 … 金属基板(基板)
11 … 貫通孔
12 … 取付孔
20 … プレート部材
21 … 有底筒体部
22 … 外向フランジ部
23 … 突部
24 … 切り起こし切片
30 … 電子部品
40 … ヒートシンク
41 … 絶縁シート
42 … 押さえ板
43 … 固定ビス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を形成した基板と、有底筒体部の開口縁に外向フランジ部を形成したプレート部材とを備え、前記基板の貫通孔に前記プレート部材の有底筒体部を嵌着するとともにその底面を前記基板の表面と略面一にし、前記プレート部材の有底筒体部の底面に電子部品を設置するとともに前記プレート部材の外向フランジ部に放熱用ヒートシンクを接触させたことを特徴とする基板装置。
【請求項2】
請求項1の基板装置において、前記プレート部材における有底筒体部の底面に切り起こし切片を設けたことを特徴とする基板装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記プレート部材の外向フランジ部の前記基板側に所要数の突部が一体形成されていることを特徴とする基板装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−227192(P2012−227192A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90639(P2011−90639)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(301076119)アストム株式会社 (1)
【出願人】(511095665)有限会社 アリカワ (1)
【Fターム(参考)】